JP3758649B2 - 車両操舵装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ロック機構を備えた車両操舵装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ロック機構を備えた車両用の操舵装置としては、例えば特開2001−48032号公報に記載されるように、ハンドルに結合されるステアリングシャフトの途中に伝達比可変機構を設けてハンドル操舵量に対する車輪の転舵量を可変とし、その伝達比可変機構の入力軸と出力軸の相対的な回転を制限するロック機構を備えたものが知られている。このロック機構は、伝達比可変機構に内蔵されるモータのロータ側に設けられるロックホルダと、モータのステータ側に設けられるロックアームとを備えており、ロックホルダの周面に形成された凹部にロックアームを嵌合させることにより、ロックを行うものである。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−48032号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この装置において、ロックホルダの凹部の開口幅が狭いと、ロックできない場合がある。例えば、モータの回転時にロックしようとする場合など、ロックアームの係合位置にロックホルダの凹部がないと、うまくロックがかからない。
【0005】
このような不具合を解消するため、凹部の開口幅を広く形成することが考えられる。ところが、ロックホルダの凹部を広くすると、ロック状態となったときでも、ロックホルダとロックアームとの間に遊びがあるため、ロックホルダとロックアームとの位置関係を正確に検出することができない。この場合、操舵制御が適切に行えないこととなる。
【0006】
そこで本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、ロック状態においてロック機構におけるロックホルダとロックアームの位置関係を検出可能とし適切な操舵制御を可能とする車両操舵装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明に係る車両操舵装置は、ハンドル側に連結される入力軸と転舵輪側に連結される出力軸とを有しモータの回転駆動により入力軸−出力軸間の伝達比を変化させる伝達比可変手段と、入力軸と出力軸の相対的な回転を制限するロック機構とを備えた車両制御装置において、ロック機構は、モータのロータ側に取り付けられ、ロータとともに回転し、外周に周方向に沿って複数の第一凹部が形成され、第一凹部の一方側の端部のみに更に深く凹ましてなる第二凹部が形成されているロックホルダと、モータのステータ側に取り付けられ、ロックホルダに対し接近及び離間可能とし、その接近の動作によりロックホルダの第一凹部又は第二凹部に係合する係合部材とを備えて構成されていることを特徴とする。
【0008】
また本発明に係る車両操舵装置は、ハンドルの操舵角を検出する操舵角検出手段を更に備え、第一凹部の周方向の開口幅が第一凹部に係合される係合部材の幅より大きく形成され、第一凹部が係合部材と係合した際に、操舵角検出手段の出力が変化するように係合部材の遊動を許容して係合部材と係合することを特徴とする。
【0009】
また本発明に係る車両操舵装置は、モータの回転に伴って所定数の異なる検出信号を繰り返して出力しモータの回転軸の回転位置を検出する回転検出手段を備え、第一凹部が係合部材と係合したときのガタ角が、所定数の異なる検出信号がすべて出力される際のモータの回転角度以下であることを特徴とする。
【0010】
また本発明に係る車両操舵装置は、係合部材が第一凹部又は第二凹部に係合したときにモータを駆動させ、そのときに回転検出手段から出力される検出信号の出力状態に基づいて、検出信号の出力パターンとロックホルダの回転位置の関係を検知することを特徴とする。
【0011】
また本発明に係る車両操舵装置は、係合部材が第一凹部又は第二凹部に係合したときにモータを一定の方向に回転できるだけ回転させた後その逆の方向に回転させ、その逆の方向の回転の際の回転検出手段の出力変化が所定値未満である場合には係合部材が第二凹部に係合していると判断することを特徴とする。
【0012】
また本発明に係る車両操舵装置は、係合部材が第一凹部又は第二凹部に係合したときにモータを一定の方向に回転できるだけ回転させた後その逆の方向に回転させ、その逆の方向の回転の際の回転検出手段の出力変化が所定値以上である場合には係合部材が第一凹部に係合していると判断することを特徴とする。
【0013】
これらの発明によれば、ロックホルダの第一凹部の一方の端部に第二凹部を形成することにより、第一凹部に係合した係合部材を更に第二凹部に係合させることができる。係合部材を第二凹部に係合させることによって、第一凹部に係合された係合部材の位置を確実に検出することが可能となる。
【0014】
また本発明に係る車両操舵装置は、ロックホルダの少なくとも一つの第二凹部の周方向の開口幅が他の第二凹部の開口幅と異なっており、係合部材が第二凹部に係合したときにモータを駆動させ、そのときに回転検出手段から出力される検出信号の出力状態に基づいて係合部材の係合位置を検出することを特徴とする。
【0015】
この場合、例えば、ロックホルダの第二凹部は、それぞれ周方向の開口幅が異なって形成される。
【0016】
また本発明に係る車両操舵装置は、回転検出手段が所定の回転角度で検出不能角度を有する場合、その検出不能角度がロックホルダの第二凹部に係合部材が係合する回転範囲に設定されていないことを特徴とする。この場合、例えば、回転検出手段としては、モータ回転に伴って正弦信号及び余弦信号を出力するレゾルバが用いられる。
【0017】
このような発明によれば、第二凹部の開口幅が異なっていることにより、係合部材を第二凹部に係合させた状態でモータを駆動させ、その際の回転検出手段の出力の基づいて係合部材がどの第二凹部に係合しているか特定することができる。このため、ロックホルダと係合部材の位置関係及びハンドルの操舵位置とモータの回転位置の関係を正確に検出することができる。これにより、伝達比を変化させる操舵制御が適正に行える。
【0018】
また本発明に係る車両操舵装置は、ロックホルダの第二凹部は周方向の開口幅が回転の軸方向に沿って徐々に狭くなっており、係合部材は第二凹部に係合しているときにロックホルダが回転することにより軸方向に沿って第二凹部の開口幅の狭い方へ移動することを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、ガタつきの少ない状態で係合部材とロックホルダを係合させてロックすることが可能となる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0021】
(第一実施形態)
図1は第一実施形態に係る車両操舵装置の構成概要図である。
【0022】
本図に示すように、車両操舵装置1には、ハンドル2の操舵力を転舵輪3に伝達させる操舵伝達系に伝達比可変機構4が設けられている。伝達比可変機構4は、ハンドル2の操舵角と転舵輪3の転舵角の伝達比を可変とするものである。伝達比可変機構4の入力軸5は、ハンドル2に接続されている。また、伝達比可変機構4の出力軸6は、ラックアンドピニオン式などで構成されるギヤ装置7を介して転舵輪3、3に接続されている。ギヤ装置7は、出力軸6の回転入力によりタイロッド8を移動させて転舵輪3、3を転舵させる。
【0023】
入力軸5には、操舵角センサ10が設けられている。操舵角センサ10は、入力軸5の回転状態に基づいて、ハンドル2の操舵角度を検出する操舵角検出手段として機能する。また、伝達比可変機構4には、回転センサ21が設けられている。回転センサ21は、伝達比可変機構4に内蔵されるモータ30の回転軸33の回転角などの回転状態を検出するセンサである。
【0024】
操舵角センサ10及び回転センサ21の検出信号は、操舵制御器20に入力される。操舵制御器20は、車両操舵装置1の装置全体の制御を行うものであり、例えばCPU、ROM、RAM、入力信号回路、出力信号回路、電源回路などにより構成される。また、操舵制御器20には、車両に設置される車速センサ22の検出信号が入力される。操舵制御器20は、操舵角センサ10、車速センサ22などの検出信号に基づいて伝達比可変機構4に駆動信号を出力して伝達比を調整し操舵制御を行う。
【0025】
伝達比可変機構4には、モータ30、減速機40及びロック機構50が収容されている。モータ30は、操舵制御器20の駆動制御信号を受けて駆動する電動機である。モータ30のステータ31は、伝達比可変機構4のハウジング4aに取り付けられている。モータ30のロータ32は、減速機40を介して出力軸6に接続されている。減速機40は、モータ30の回転出力を減速して出力する減速手段である。減速機40の出力とハウジング4aを介して伝達される操舵力とが出力軸6に出力される。減速機40としては、例えば遊星歯車機構が用いられる。
【0026】
図2にロック機構50の説明図を示す。
【0027】
本図は、図1のII−IIにおけるロック機構の断面図である。本図に示すように、ロック機構50は、伝達比可変機構4の入力軸5と出力軸6の相対的な回転を制限するものであり、ロックホルダ51とロックアーム52を備えている。ロックホルダ51は、モータ30のロータ32側に取り付けられている。
【0028】
例えば、ロックホルダ51は、モータ30の回転軸33に取り付けられ、ロータ32の回転に伴って回転する。回転軸33に対するロックホルダ51の取り付けは、完全に固定でなく、所定以上のトルクが作用したときに回転軸33に対するロックホルダ51の回転を許容するように行うことが望ましい。この場合、取付部分をトルクリミッタとして機能させることができ、ロック機構50のロック時に所定以上のトルクが作用してもロックホルダ51、ロックアーム52などの構成部品が破損することを防止できる。
【0029】
ロックホルダ51の外周には、その周方向に沿って複数の第一凹部51aが形成されている。第一凹部51aは、例えば四つ形成される。第一凹部51aと第一凹部51aとの間は、外周から突出した状態となり、突起部51cが形成されている。
【0030】
第一凹部51aの一方の端部には、更に深く凹ましてなる第二凹部51bが形成されている。第二凹部51bは、各第一凹部51aにおいて同一方向の端部位置に形成されている。この第二凹部51bは、ハンドル2が左回りに操作されたときに、ロックアーム52が第一凹部51aの他端側から第二凹部51b側へ移動するような位置に形成することが望ましい。この場合、車両の運転者が右手でキー操作をした際、左手で左回りにハンドル操作して、第二凸部51bに掛止部52aを係合しやすくなる。
【0031】
ロックアーム52は、ロックホルダ51に対し接近及び離間可能に構成され、その接近の動作によりロックホルダ51の第一凹部51a及び第二凹部51bに係合可能とした係合部材である。ロックアーム52は、モータ30のステータ31側に取り付けられ、例えばステータ31が取り付けられるハウジング4aに取り付けられている。
【0032】
ロックアーム52の先端には、鉤状の掛止部52aが形成されている。ロックアーム52の中間位置にはピン52bが設けられ、このピン52bを中心にロックアーム52が回動可能となっている。また、ロックアーム52の基端位置には、ソレノイド52cが取り付けられている。ソレノイド52cの作動によりロックアーム52の基端位置が移動してロックアーム52が回動する。これにより、掛止部52aが第一凹部51a又は第二凹部51bに掛止され、ロックアーム52とロックホルダ51が係合し、ロック状態となる。
【0033】
図3に回転センサ21の構成概要図を示す。
【0034】
本図に示すように、回転センサ21は、モータ30の回転軸33と一体に回転するロータ部11と、そのロータ部11の周囲に配される検出部12とを備えて構成されている。ロータ部11は、リング状を呈し、回転軸33に外装され回転軸33と一体に回転するように設置されている。ロータ部11には、周方向に沿って複数のマグネット11aが配設され、例えば八つのマグネット11aが配設される。回転センサ21のロータ部11とロック機構50のロックホルダ51は回転軸33を介して一体的に回転し、通常状態では相対回転を生じることはない。
【0035】
マグネット11aは、ロータ部11が回転した際に、検出部12に向けて交互に異なる磁界を形成するように設けられ、例えば異なる方向の磁界が形成されるように設けられている。このため、回転軸33と共にロータ部11が回転することにより、検出部12周囲の磁界が変化する。その際、八つのマグネット11aによりロータ部11を構成する場合、回転角90度で一周期として磁界が変化する。ロータ部11とロックホルダ51の位置関係については後で詳細に説明するが、突起部51cと突起部51cの間が90度を形成しているので突起部51cが90度回転する時に、ロータ部11のマグネット11aの磁界も一周期として磁界が変化する構成となっている。その際、マグネット11aと検出部12の関係でセンサ出力が変化する位置とロックホルダ51の突起部51aの壁面の位置を一致させることが望ましい。
【0036】
検出部12は、磁界変化に基づいて回転軸33の回転位置を検出するものであり、例えば三つの磁気センサ12a〜12cを備えている。磁気センサ12a〜12cは、ロータ部11の周方向に沿って配列され、それぞれ操舵制御器20(図1参照)に接続されている。磁気センサ12a〜12cは、一つのマグネット11aの外周部を三等分するような間隔で配置されている。
【0037】
このため、ロータ部11がマグネット11aの幅の3分の1だけ回転すると、検出部12の出力が変化する。従って、回転軸33が15度(360/(8・3)度)回転する毎に検出部12の出力が変化し、15度の分解能で回転位置を検出することが可能となる。
【0038】
図4に検出部12の検出信号を具体的に示す。
【0039】
本図に示すように、回転センサ21は、回転軸33の回転に伴って所定数、例えば六つの異なる出力パターンで検出信号を順次繰り返して出力する。図3において、磁気センサ12a〜12cの位置にロータ部11の同一マグネット11aが位置するときに、磁気センサ12a〜12cの出力は同一出力となり、例えば全てH(ハイ)となる(図4の出力パターン1)。そして、ロータ部11が回転すると、センサ12aの近傍に隣りのマグネット11aが移動してくるため、センサ12aの出力のみL(ロー)となる(出力パターン2)。更に、ロータ部11が回転すると、センサ12b、センサ12cの出力も順次Lとなる(出力パターン3)。
【0040】
そして、ロータ部11の回転により、磁気センサ12a〜12cの出力が変化し、検出部12の出力パターンは、図4の出力パターン5,6のようになる。そして、更にロータ部11が回転すると、検出部12の出力パターンは、出力パターン1に戻り、順次出力パターン2、3、…と変化する。
【0041】
この出力パターン1〜6の変化周期は、ロータ部11のマグネット11aの設置状態に依存する。図3のように、ロータ部11のS極とN極の二つのマグネット11a、11aを90度の範囲で配設する場合には、検出部12の出力パターン変化はロータ部11の90度の回転で一周期となる。
【0042】
図5にロータ部11の展開図を示す。
【0043】
本図は、円弧状のロータ部11の外周部を直線状に展開し、回転センサ21の出力パターンを対応させて示したものである。なお、本図では、説明を理解しやすくするため、ロックアーム52の掛止部52aの幅Wはないものとして表示している。図5中のd1は、第一凹部51aに掛止部52aが挿入されたときのガタ角(遊び角)の代表値である。ガタ角は、突起部51cの幅(W3)、ロックアーム52の掛止部52aの幅(W)、第一凹部51aの幅(W1)のいずれかを調整することで決定されることとなる。
【0044】
図5に示すように、ロックホルダ51とロータ部11の位置関係を予め決められた位置関係とすることにより、ロックホルダ51の突起部51cや第二凹部51bがどの位置にあるかについて、出力パターンに基づいて検出することができる。
【0045】
仮に、図5の二点鎖線で示すように、第一凹部51aの幅が90度以上となるように構成すると、回転センサ21の出力パターン1が右側の突起部51cと左側の突起部51cの2カ所で検出されるおそれがある。このような状況が生ずると、操舵制御器20がロックホルダ51の位置を正確に検出することができず、制御精度が低下する。
【0046】
一方、第一凹部51aの幅を狭くすると、より確実にロックホルダ51の位置検出が行えるが、ロックアーム52が挿入可能な位置が狭くなり、ロック機構50の作動性が悪化する。従って、ロック機構50の挿入性を確保しつつロックホルダ51の位置、つまりモータ30の回転位置を検出できるようにするため、第一凹部51aに掛止部52aが挿入されたときのガタ角d1を、回転センサ21において所定数の異なる検出信号がすべて出力される際のモータ30の回転角度d2(本実施形態では、75度)以下の大きさにすることが望ましい。
【0047】
図6にロック機構50の拡大図を示す。
【0048】
本図に示すように、ロックホルダ51の第一凹部51aの周方向の開口幅W1は、突起部51cの幅W3より大きく形成されている。望ましくは、第一凹部51aの開口幅W1は、突起部51cの幅W3の2倍以上の幅で形成される。そして、第一凹部51aの開口幅W1は、ロックアーム52の掛止部52aの幅Wより十分大きく形成されている。これにより、ロックアーム52の掛止部52aが第一凹部51aに嵌り込みやすく、ハンドル操作中などにロックする場合でも、ロックアーム52とロックホルダ51を確実に係合させてロックすることができる。
【0049】
また、第一凹部51aは、ロータ部11の磁界変化周期に対応して形成されている。例えば、第一凹部51aの開口幅W1と突起部51cの幅W3(突起部51c、51cの間隔)が、ロータ部11の磁界変化周期である90度の範囲で形成される。このため、第一凹部51aに掛止部52aが係合したときに、回転センサ21の出力に基づいて掛止部52aの係合位置とモータ30の回転軸33の回転位置の関係を検出することができる。
【0050】
第二凹部51bは、周方向の開口幅W2が第一凹部51aの開口幅W1より狭く形成され、掛止部52aが遊び少なく嵌り込むように形成されている。すなわち、第二凹部51bの開口幅W2は、ロックアーム52の掛止部52aの係合時における回転センサ21の検出出力の変化が第一凹部51aでの変化幅よりにも制限されるように掛止部52aを遊動させる幅寸法に設定される。これに対し、第一凹部51aの開口幅W1は、掛止部52aの係合時に、回転センサ21の検出出力が変化する程度に掛止部52aの遊動を許容する幅寸法に設定される。
【0051】
次に本実施形態に係る車両操舵装置の動作を説明する。
【0052】
図1において、車両のイグニションスイッチ(以下、「IG」という。)のオン操作によって、操舵制御器20から伝達比可変機構4にロック解除信号が出力される。これにより、図2に示すように、ソレノイド52cが作動し、ロックアーム52がピン52bを中心に回動し掛止部52aがロックホルダ51から離間する。これにより、ロック機構50のロック状態が解除される。
【0053】
例えば、IGのオフ時点で回転センサ21の出力パターンが「3」と記憶され、ロック状態の解除時点の出力パターンが「6」であった場合、モータ30の出力パターンが三つずれて制御開始したことが分かる。このようなセンサ出力パターンのずれは、IGオフ状態でハンドル操作したような場合に生ずるが、このような状態で始動しても、モータ位置を正確に検出することができ、モータ回転角の制御が正確に行われる。従って、制御の連続性が確保でき、制御精度が向上する。ここで、ロックホルダ51の第一凹部51aの幅W1とロックアーム52の掛止部52aの幅Wで決まるガタ角d1の間隔が、回転センサ21にて所定数の異なる検出信号がすべて出力される際のモータ30の回転角度d2(本実施形態では、75度)以下となっていることにより、センサ出力パターンに基づいて始動時のモータ位置が正確に検知できる。
【0054】
一方、車両のIGのオフ操作時などには、操舵制御器20から伝達比可変機構4にロック動作信号が出力される。これにより、図7に示すように、ロックアーム52が回動して掛止部52aがロックホルダ51に接近する。そして、掛止部52aが第一凹部51aに嵌り込み、ロックアーム52とロックホルダ51が係合し、ロック状態となる。
【0055】
以上の説明は、回転センサ21の出力パターン1〜6とロックホルダ51の形状の関係が予め分かっていることを想定している。しかし、上述したように、ロックホルダ51の位置が分からない場合がある。例えば、ロックホルダ51の位置がずれてしまったり、取り付け状態でロックホルダ51の位置が分からなかったり、操舵制御部20の記憶部のデータが変わってしまったりするような場合である。
【0056】
このように位置がわからない状態になったとき、ロックアーム52を挿入した状態でモータ30をある一定方向に回転できるだけ回転させ、ロックホルダ51が動かなくなる点を求める。その時点で、逆方向にモータ30を駆動させて回転できるか否かを検出する。すなわち、モータ30を回転させて、回転センサ21の出力パターンが変化する場合は回転可能と判断し、変化しない場合は回転不可能と判断する。
【0057】
回転可能の場合は、ロックホルダ51の突起部51cの右側の壁部にロックアーム52が当接、つまり第一凹部51aに入っていることが分かる。この場合にはロックアーム52が第一凹部51aに係合していると判断される。一方、回転できない場合は、ロックホルダ51の突起部51cの左側の壁部にロックアーム52が当接、つまり第二凹部51bに入っていることが分かる。この場合にはロックアーム52が第二凹部51bに係合していると判断される。このときの回転センサ21の出力パターンと第一凹部51aあるいは第二凹部51bの関係から、センサ出力パターンとロックホルダ51との位置関係の関連性を決定することができる。
【0058】
この学習制御を工場出荷時で行うとすれば、ロックホルダ51の位置を予め決めた位置に取り付ける選択組み付けが不要となる。また、走行時点でズレがあると考えられるときに、前述の学習を行うことで制御性を向上させることができる。
【0059】
以上のように、本実施形態に係る車両操舵装置1によれば、第一凹部51aの一方の端部に第二凹部51bを形成することにより、ロック機構50のロックの際にロックホルダ51とロックアーム52を相対的に回転させるなどして掛止部52aを第二凹部51bに掛止させることができる。これにより、掛止部52aが第一凹部51aの端部の位置を検出でき、回転センサ21の出力などによって、ロックホルダ51とロックアーム52の位置関係及びハンドル2の操舵位置とモータ30の回転位置の関係を検出することができる。これにより、伝達比を変化させる操舵制御が適正に行える。
【0060】
(第二実施形態)
次に第二実施形態に係る車両操舵装置について説明する。
【0061】
本実施形態に係る車両操舵装置は、第一実施形態に係る車両操舵装置とほぼ同様な構成を有するものであるが、ロックホルダ51における第二凹部51bの周方向の開口幅が異なる点で、第一実施形態に係る車両操舵装置と異なっている。
【0062】
図9に本実施形態に係る車両操舵装置のロックホルダを示す。
【0063】
図9に示すように、ロックホルダ51の第二凹部51bの少なくとも一つは、その周方向の開口幅W2が他の第二凹部51bの開口幅W2と異なる寸法で形成されている。例えば、ロックホルダ51の第二凹部51bは、周方向の開口幅W2−1、W2−2、W2−3、W2−4がそれぞれ異なるように形成される。
【0064】
このように第二凹部51bを形成することにより、ロックアーム52が第二凹部51bのいずれかに係合したときに、どの第二凹部51bに係合したかその係合位置を検出することができる。すなわち、ロックアーム52が第二凹部51bのいずれかに係合したときに、モータ30を駆動させ、そのときに回転センサ21から出力される検出信号の出力状態に基づいてロックアーム52の係合位置を検出する。
【0065】
具体的には、モータ30を所定の方向及びその逆の方向に回転できるだけ回転させる。その際、開口幅W2が狭い第二凹部51bに係合しているときには、モータ30が正逆転する間の回転センサ21の出力変化が小さく、逆に開口幅W2が広い第二凹部51bに係合しているときには回転センサ21の出力変化が大きい。このため、回転センサ21の出力変化に基づいて、ロックアーム52がどの第二凹部51bに係合しているか特定することができる。従って、モータ30が高速回転しているときに電気系統が瞬断しセンサ出力が読み飛ばされた場合などでも、360度の全周において、ロックホルダ51とロックアーム52の位置関係及びハンドル2の操舵位置とモータ30の回転位置の関係を検出することができる。これにより、伝達比を変化させる操舵制御が適正に行える。
【0066】
なお、センサ出力を読み飛ばしたときのハンドル2の操舵位置とモータ30の回転位置の関係の補正は、例えば、次のように行われる。読み飛ばし発生の直前における回転センサ21の出力値に対し加算補正して現状の回転センサ21の出力値とする場合と、読み飛ばし発生の直前における回転センサ21の出力値に対し減算補正して現状の回転センサ21の出力値とする場合とを対比し、その加算補正値が減算補正値以下の場合には、加算補正を行う。一方、加算補正値が減算補正値以下でない場合には、減算補正を行う。また、現状のハンドルトルクや操舵速度に応じて、加算補正するか減算補正するか決定してもよい。
【0067】
ところで、本実施形態に係る車両操舵装置においては、回転センサ21としてレゾルバを用いることが好ましい。レゾルバは、モータ30の回転に伴って正弦信号及び余弦信号を出力する回転検出手段であり、細かい回転角度の検出が可能となる。回転センサ21であるレゾルバの正弦信号及び余弦信号に基づいてモータ30の回転角を決定でき、モータ30の回転位置をリニアに検出することができる。従って、ロックアーム52が第二凹部51bに嵌っている状態において、モータ30を正転方向及び逆転方向に回転させることにより、第二凹部51bの開口幅W2をリニアに検出することができる。そして、検出した開口幅W2を予め設定された各第二凹部51bの開口幅W2の値と比較することにより、ロックアーム52がどの第二凹部51bに嵌っているかを精度良く検出することができる。
【0068】
図10に示すように、このレゾルバは、所定の回転角度で検出不能角度を有している。図10において、正弦信号又は余弦信号がゼロとなるときに、角度検出が不可能となる。例えば、正弦信号と余弦信号の比により角度検出を行う場合には、正弦信号又は余弦信号がゼロとなるときに正確な角度を特定することができない。
【0069】
このため、図9に示すように、正弦信号又は余弦信号がゼロとなる検出不能角度の位置Pxが、ロックアーム52が第二凹部51bに係合する回転範囲Sに設定されないようにすることが好ましい。このようにすることにより、ロックアーム52が第二凹部51bに係合した際に、上述したようにモータ30の正逆回転時の回転センサ21の出力に基づいて確実にロックアーム52の係合位置を検出することができる。
【0070】
また、本実施形態に係る車両操舵装置において、ロックホルダ51の位置がずれてしまったりして、回転センサ21の出力パターン1〜6とロックホルダ51の位置関係が分からなくなったときには、上述した第一実施形態に係る車両操舵装置と同様にして、ロックホルダ51の位置を検出することができる。すなわち、ロックアーム52を挿入した状態でモータ30をある一定方向に回転できるだけ回転させ、ロックホルダ51が動かなくなる点を求める。その時点で、逆方向にモータ30を駆動させ回転できるか否かを検出する。つまり、モータ30を回転させて、回転センサ21の出力パターンが変化する場合は回転可能と判断し、変化しない場合は回転不可能と判断する。このとき、モータ30を回転させて回転センサ21の出力パターンが所定以上変化する場合は回転可能と判断され、所定未満しか変化しない場合は回転不可能と判断される。
【0071】
そして、回転可能の場合は、ロックホルダ51の突起部51cの右側の壁部にロックアーム52が当接、つまり第一凹部51aに入っていることが分かる。この場合にはロックアーム52が第一凹部51aに係合していると判断される。一方、回転できない場合は、ロックホルダ51の突起部51cの左側の壁部にロックアーム52が当接、つまり第二凹部51bに入っていることが分かる。この場合にはロックアーム52が第二凹部51bに係合していると判断される。このときの回転センサ21の出力パターンと第一凹部51aあるいは第二凹部51bの関係から、センサ出力パターンとロックホルダ51との位置関係の関連性を決定することができる。
【0072】
(第三実施形態)
次に第三実施形態に係る車両操舵装置について説明する。
【0073】
本実施形態に係る車両操舵装置は、第一実施形態及び第二実施形態に係る車両操舵装置とほぼ同様な構成を有するものであるが、ロックホルダ51の第二凹部51bの開口幅W2が回転の軸方向に沿って徐々に狭まっている点で、第一実施形態及び第二実施形態に係る車両操舵装置と異なっている。
【0074】
図11は、本実施形態に係る車両操舵装置におけるロックホルダを側方から見た図である。本図に示すように、ロックホルダ51の第二凹部51bにロックアーム52が係合しており、ロックアーム52の掛止部52aが第二凹部51bに挿入されている。
【0075】
第二凹部51bは、周方向の開口幅W2が回転の軸方向に沿って徐々に狭くなっている。例えば、第二凹部51bの側壁面55a、55bがそれぞれ軸方向に対し斜めに形成され、相互に非平行に形成されている。
【0076】
ロックアーム52は、軸方向に移動可能に支持されている。例えば、二つのバネ56とバネ57により両側から押し付けるように付勢され、軸方向に移動可能となっている。
【0077】
このようにロックアーム52が第二凹部51bに係合しているときに、モータ30の駆動によりロックホルダ51を所定の方向(図11上で、ロックホルダ51が手前に見えている側が右側へ移動する方向)に回転させる。すると、ロックアーム52の掛止部52aが第二凹部51bの一方の側壁面55aに当接し、ロックホルダ51の回転によって第二凹部51bの狭い方(図11では下方)へ移動する。
【0078】
これにより、図12に示すように、ロックアーム52は遊びの小さい状態で第二凹部51bに嵌り込む。このようなくさび効果により、ガタつきの少ない状態でロックアーム52とロックホルダ51を係合させてロックすることができる。
【0079】
一方、この図12の状態で、モータ30の駆動によりロックホルダ51を逆の方向(図11上で、ロックホルダ51が手前に見えている側が左側へ移動する方向)に回転させる。すると、ロックアーム52の掛止部52aが第二凹部51bの他方の側壁面55bに当接し、ロックホルダ51の回転によって第二凹部51bの広い方(図11では上方)へ移動する。
【0080】
これによって、ロックアーム52は遊びの大きい状態で第二凹部51bに嵌り込み、ロックアーム52の解除が容易な状態となる。
【0081】
以上のように、本実施形態に係る車両操舵装置によれば、上述した第一実施形態及び第二実施形態に係る車両操舵装置の作用効果に加え、ロックアーム52を第二凹部51bに係合した状態でロックホルダ51を回転させることにより、ガタつきの少ない状態でロックアーム52とロックホルダ51を係合させてロックすることができる。また、ロックホルダ51を逆の方向へ回転させることにより、ロックアーム52をロックホルダ51から係合解除しやすい状態とすることができる。
【0082】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、ロックホルダの第一凹部の一方の端部に第二凹部を形成することにより、第一凹部に係合した係合部材を更に第二凹部に係合させることができる。これにより、第一凹部内における係合部材の位置を確実検出することができ、適切な操舵制御が行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る車両操舵装置の構成図である。
【図2】図1の車両操舵装置におけるロック機構の説明図である。
【図3】図1の車両操舵装置における操舵角センサの説明図である。
【図4】図1の車両操舵装置における操舵角センサの説明図である。
【図5】図1の車両操舵装置におけるロータ部の展開図である。
【図6】図1の車両操舵装置におけるロック機構の拡大図である。
【図7】図1の車両操舵装置における動作説明図である。
【図8】図1の車両操舵装置における動作説明図である。
【図9】第二実施形態に係る車両操舵装置の説明図である。
【図10】図9の車両操舵装置における回転センサの出力特性の説明図である。
【図11】第三実施形態に係る車両操舵装置の説明図である。
【図12】第三実施形態に係る車両操舵装置の説明図である。
【符号の説明】
1…車両操舵装置、2…ハンドル、3…転舵輪、4…伝達比可変機構(伝達比可変手段)、5…入力軸、6…出力軸、10…操舵角センサ、20…操舵制御器、30…モータ、40…減速機、50…ロック機構、51…ロックホルダ、51a…第一凹部、51b…第二凹部、51c…突起、52…ロックアーム(係合部材)、52a…掛止部。
Claims (9)
- ハンドル側に連結される入力軸と転舵輪側に連結される出力軸とを有しモータの回転駆動により入力軸−出力軸間の伝達比を変化させる伝達比可変手段と、前記入力軸と前記出力軸の相対的な回転を制限するロック機構とを備えた車両制御装置において、
前記ロック機構は、
前記モータのロータ側に取り付けられ、前記ロータとともに回転し、外周に周方向に沿って複数の第一凹部が形成され、前記第一凹部の一方側の端部のみに更に深く凹ましてなる第二凹部が形成されているロックホルダと、
前記モータのステータ側に取り付けられ、前記ロックホルダに対し接近及び離間可能とし、その接近の動作により前記ロックホルダの前記第一凹部又は前記第二凹部に係合する係合部材と、
を備えて構成されていること、
を特徴とする車両操舵装置。 - 前記モータの回転軸の回転位置を検出する回転検出手段を備え、
前記第一凹部は、周方向の開口幅が前記第一凹部に係合される前記係合部材の幅より大きく形成され、前記係合部材と係合した際に前記回転検出手段の出力が変化するように前記係合部材の遊動を許容して前記係合部材と係合すること、
を特徴とする請求項1に記載の車両操舵装置。 - 前記回転検出手段は、前記モータの回転に伴って所定数の異なる検出信号を繰り返して出力し、
前記第一凹部が前記係合部材と係合したときのガタ角は、前記回転検出手段にて前記所定数の異なる検出信号がすべて出力される際の前記モータの回転角度以下であること、
を特徴とする請求項2に記載の車両操舵装置。 - 前記係合部材が前記第一凹部又は前記第二凹部に係合したときに前記モータを駆動させ、そのときに前記回転検出手段から出力される前記検出信号の出力状態に基づいて、前記検出信号の出力パターンと前記ロックホルダの回転位置の関係を検知すること、
を特徴とする請求項3に記載の車両操舵装置。 - 前記係合部材が前記第一凹部又は前記第二凹部に係合したときに前記モータを一定の方向に回転できるだけ回転させた後その逆の方向に回転させ、その逆の方向の回転の際の前記回転検出手段の出力変化が所定値未満である場合には前記係合部材が前記第二凹部に係合していると判断すること、
を特徴とする請求項4に記載の車両操舵装置。 - 前記係合部材が前記第一凹部又は前記第二凹部に係合したときに前記モータを一定の方向に回転できるだけ回転させた後その逆の方向に回転させ、その逆の方向の回転の際の前記回転検出手段の出力変化が所定値以上である場合には前記係合部材が前記第一凹部に係合していると判断すること、
を特徴とする請求項4に記載の車両操舵装置。 - 前記ロックホルダの前記第二凹部の少なくとも一つは、その周方向の開口幅が他の第二凹部の前記開口幅と異なっており、
前記係合部材が前記第二凹部に係合したときに前記モータを駆動させ、その際に前記回転検出手段から出力される前記検出信号の出力状態に基づいて前記係合部材の係合位置を検出すること、
を特徴とする請求項2〜6のいずれか一項に記載の車両操舵装置。 - 前記回転検出手段は、所定の回転角度で検出不能角度を有し、前記検出不能角度が前記ロックホルダの前記第二凹部に前記係合部材が係合する回転範囲に設定されていないこと、
を特徴とする請求項2〜7のいずれか一項に記載の車両操舵装置。 - 前記ロックホルダの前記第二凹部は、周方向の開口幅が回転の軸方向に沿って徐々に狭くなっており、
前記係合部材は、前記第二凹部に係合しているときに前記ロックホルダが回転することにより前記軸方向に沿って前記第二凹部の前記開口幅の狭い方へ移動すること、
を特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の車両操舵装置。
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