JP3758271B2 - エチレン系共重合体ゴム組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エチレン系共重合体ゴム組成物に関わり、さらに詳しくは、メタロセン系触媒により製造されるエチレン系共重合体ゴムの課題である加工特性が優れ、加工特性と機械的特性および低温特性とのバランスに優れたエチレン系共重合体ゴム組成物、並びに共役ジエン系ゴムとの共加硫性および加工特性に優れた前記エチレン系共重合体ゴムを、共役ジエン系ゴムとブレンドしたエチレン系共重合体ゴム組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
エチレン/α−オレフィン/非共役ジエン共重合体は、耐候性、耐熱性、耐寒性、耐オゾン性等に優れており、従来、建築材料、自動車用部品、電線被覆材料等に広く用いられている。
また近年、メタロセン系触媒を用いたエチレン/α−オレフィン/非共役ジエン共重合体の製造に関する提案が数多くなされている。メタロセン系触媒は、エチレン、α−オレフィン、非共役ジエン等のコモノマーの共重合性に優れ、得られるポリマーの分子量分布が狭く、組成分布が均一である等の特徴を有し、また、従来のエチレン/α−オレフィン/非共役ジエン共重合体の製造用重合触媒であるバナジウム系触媒では重合が困難であったコモノマー(例えば長鎖のα−オレフィン)でも容易に重合させることができる特徴を有している。
例えば、特公平5−80493号公報では、エチレン、炭素数3〜10のα−オレフインおよび非共役ジエンの各含有率、極限粘度、分子量分布(Mw/Mn)、結晶化度、α−オレフイン・エチレン連鎖のモル分率に関連するB値、沸騰酢酸メチル可溶部量をそれぞれ特定し、13C−NMRスペクトル中に隣接した2個の第3級炭素原子間のメチレン連鎖に基づくαβシグナルおよびβγシグナルが観測されない低結晶性エチレン系ランダム共重合体が提案されている。
しかしながら、この共重合体から得られる加硫ゴムについては、モジュラス、引張強度、破断伸び、硬度等の機械的特性は検討されているが、これらに加え、加工特性、低温特性等のエチレン/α−オレフィン/非共役ジエン共重合体本来の特性を総合した面での検討がなされていない。
また近年、本発明者らは、特開平2−51512号公報において、7−メチル−1,6−オクタジエンに代表される非共役ジエンを用いることにより、5−エチリデン−2−ノルボルネンの場合より加硫速度が速く、エチレン/α−オレフィン/非共役ジエン系共重合体ゴムと共役ジエン系ゴムとの共加硫性を改良する方法を提案した。さらに、特開平5−262827号公報では、メタロセン系触媒を用いたエチレン/α−オレフィン/7−メチル−1,6−オクタジエン共重合体ゴムは低温特性に優れていることが開示され、また特開平6−128427号公報では、メタロセン系触媒を用いたエチレン/α−オレフィン/7−メチル−1,6−オクタジエン共重合体と共役ジエン系ゴムとのブレンド組成物は共加硫性が改良されることが開示されている。
しかしながら、元来エチレン/α−オレフィン/非共役ジエン共重合体と共役ジエン系ゴムとは相溶性が悪く、またメタロセン系触媒により得られるエチレン/α−オレフィン/非共役ジエン共重合体は、分子量分布が狭いため、加工性が悪い欠点を有しており、バンバリー等の混練り時に共役ジエン系ゴムとうまく混ざらず、加工性に劣る等の問題がある。このように、従来のエチレン/α−オレフィン/非共役ジエン共重合体を含有するゴム組成物では、加工特性の面で充分満足できない。
一方、メタロセン系触媒ポリマーの加工特性を改良する方法として、従来のバナジウム系触媒により製造されるエチレン/α−オレフィン/非共役ジエン共重合体の組成や分子量が異なる成分をブレンドする方法も考えられ、その具体例としては、共重合体を製造するリアクターを直列に数基つなぎ、連続的に重合を行う多段重合法や、リアクター内に反応性の異なる2種以上の触媒をチャージする方法等が挙げられる。しかしながら、これらの方法は、生産性が悪く、コストアップの原因となり、また重合コントロールも困難である等の問題点を抱えており、工業的にみて得策とは言い難い。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来技術における前記事情を鑑みてなされたもので、その課題は、第一に、メタロセン系触媒により製造されるエチレン/α−オレフィン/非共役ジエン共重合体ゴムの加工特性を改良し、加工特性と機械的特性および低温特性とのバランスに優れたエチレン系共重合体ゴム組成物を提供することにある。
また、本発明の課題は、第二に、共役ジエン系ゴムとの共加硫性および加工特性に優れた前記エチレン系共重合体ゴムを、共役ジエン系ゴムとブレンドすることにより、共役ジエン系ゴム本来の機械的特性および耐動的疲労性を実質的に損なうことなく、加工特性、低温特性、耐候性、耐オゾン性等に優れたエチレン系共重合体ゴム組成物を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定のエチレン系共重合体ゴムを含有する組成物が優れた特性バランスを具備することを見い出し、本発明を完成するに至った。
本発明の要旨は、第一に、
(a)エチレン、(b)プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセンおよび1−オクテンの群から選ばれるα−オレフィン、(c)6−メチル−1,5−ヘプタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、8−メチル−1,7−ノナジエンおよび9−メチル−1,8−デカジエンの群から選ばれる非共役ジエン並びに(d)1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンおよび1,9−デカジエンの群から選ばれるα,ω−ジエンからなり、下記(1)〜(6)の要件を満たすエチレン系共重合体ゴムと、加硫剤および/または架橋剤とを含有してなるエチレン系共重合体ゴム組成物(以下、「第1発明」という。)、からなる。
【0008】
記
(1)エチレンとα−オレフィンとのモル比(エチレン/α−オレフィン)が40/60〜90/10の範囲にあり、
(2)よう素価が5〜45の範囲にあり、
(3)ムーニー粘度(ML1+4 ,100℃)が20〜300の範囲にあり、
14)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めたポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)とポリスチレン換算数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が3〜10の範囲にあり、
(5)示差走査熱量計(DSC)により求めたガラス転移温度(Tg)が−56〜−75℃の範囲にあり、
(6)分岐度指数Bが0.70〜0.92の範囲にある。
【0009】
本発明の要旨は、第二に、
前記エチレン系共重合体ゴムと、共役ジエン系ゴムと、加硫剤および/または架橋剤とを含有してなり、前記エチレン系共重合体ゴムと前記共役ジエン系ゴムとの重量比(エチレン系共重合体ゴム/共役ジエン系ゴム)が、20/80〜90/10の範囲にあるエチレン系共重合体ゴム組成物(以下、「第2発明」という。)、からなる。
【0010】
以下、第1発明および第2発明のエチレン系共重合体ゴム組成物を構成する各成分について、順次説明する。
第1発明および第2発明におけるエチレン系共重合体ゴムは、(a)エチレン、(b)プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセンおよび1−オクテンの群から選ばれるα−オレフィン(以下、単に「α−オレフィン」という。)、(c)6−メチル−1,5−ヘプタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、8−メチル−1,7−ノナジエンおよび9−メチル−1,8−デカジエンの群から選ばれる非共役ジエン、並びに(d)1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンおよび1,9−デカジエンの群から選ばれるα,ω−ジエンからなる共重合体である。
第1発明および第2発明において、α−オレフィンは、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
エチレン系共重合体ゴムにおけるエチレンとα−オレフィンとのモル比(エチレン/α−オレフィン)は、40/60〜90/10、好ましくは60/40〜87/13の範囲にある。この場合、前記モル比が40/60未満では、機械的強度が充分発現されず、また90/10を超えると、ゴム弾性が損なわれる。
【0011】
また、第1発明および第2発明において、非共役ジエンは、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
第1発明および第2発明において、α,ω−ジエンの使用量は、非共役ジエンとの合計量に対して、通常、0.5〜30モル%、好ましくは1.5〜15モル%の範囲である。 エチレン系共重合体ゴムのよう素価は、5〜45、好ましくは10〜35の範囲にある。この場合、ヨウ素価が5未満では、機械的強度が劣り、また45を超えると、ゴム弾性が損なわれる。
【0012】
エチレン系共重合体ゴムのムーニー粘度(ML1+4 ,100℃)(以下、単に「ムーニー粘度」という。)は、20〜300の範囲にある。
エチレン系共重合体ゴムのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、3〜10の範囲にある。
エチレン系共重合体の示差走査熱量計(DSC)により求めたガラス転移温度Tgは、−56〜−75℃の範囲にある。
さらに、エチレン系共重合体ゴムの分岐度指数Bは、0.70〜0.92の範囲にある。この分岐度指数Bの値は、粘度−GPC法(倉田道夫、日本ゴム協会誌,(45)1972)に準じて、分岐のないモデル共重合体ゴムの極限粘度〔η0 〕とポリスチレン換算重量平均分子量(Mw0)により求めた粘度式〔η0 〕=KMw0 (但し、Kは定数である。)を用い、対象となる共重合体ゴムのGPC測定により求めたMw1 から極限粘度〔η1 〕を算出し、次に対象となる共重合体ゴムの実測〔η2 〕を前記粘度式より算出した〔η1 〕で除して求めた。ここで、〔η1 〕および〔η2 〕はo−ジクロロベンゼン中135℃で求めた値であり、Mw1 はGPC測定法によりo−ジクロロベンゼン中135℃で求めた値である。
【0013】
第1発明および第2発明のエチレン系共重合体ゴムは、気相重合法、溶液重合法、スラリー重合法等の適宜の方法により製造することができる。これらの重合操作は、バッチ式でも連続式でも実施することができる。
前記溶液重合法あるいはスラリー重合法においては、反応媒体として、通常、不活性炭化水素が使用される。
このような不活性炭化水素溶媒としては、例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−デカン、n−ドデカン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等が挙げられる。これらの炭化水素溶媒は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。また、原料モノマーを炭化水素溶媒として利用することもできる。
【0014】
第1発明および第2発明のエチレン系共重合体ゴムを製造する際に用いられる重合触媒としては、例えば、V、Ti、ZrおよびHfから選ばれる遷移金属の化合物と有機金属化合物とからなるオレフィン重合触媒を挙げることができる。前記遷移金属の化合物および有機金属化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
このようなオレフィン重合触媒の特に好ましい例としては、メタロセン化合物と有機アルミニウム化合物または該メタロセン化合物と反応してイオン性錯体を形成するイオン性化合物とからなるメタロセン系触媒を挙げることができる。
以下、エチレン系共重合体ゴムを製造するための重合触媒についてより具体的に説明するが、場合により下記以外の重合触媒を使用することもできる。
前記メタロセン系触媒としては、例えば、下記成分(E)と成分(F)とからなる触媒、もしくは下記成分(G)と成分(H)とからなる触媒が挙げられる。
成分(E)は、下記一般式〔1〕で表される遷移金属化合物である。
R''s (C5 Rm)p (R' n E) q MQ4-p-q ...〔1〕
式中、Mは周期律表第4族金属であり、(C5 Rm)はシクロペンタジエニル基または置換シクロペンタジエニル基であり、各Rは同一でも異なってもよく、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜40のアリール基、炭素数7〜40のアルカリール基または炭素数7〜40のアラルキル基であるか、あるいは2つの隣接する炭素原子が結合して4〜8員の炭素環を作っており、Eは非結合電子対を有する原子であり、R’は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜40のアリール基、炭素数7〜40のアルカリール基または炭素数7〜40のアラルキル基であり、R''は炭素数1〜20のアルキレン基、ジアルキルけい素またはジアルキルゲルマニウムであって、2つの配位子を結合する基であり、sは1または0であり、sが1のとき、mは4、nはEの原子価より2少ない数であり、sが0のとき、mは5、nはEの原子価より1少ない数であり、n≧2のとき各R’は同一でも異なっていてもよく、また各R’は結合して環を作っていてもよく、Qは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜40のアリール基、炭素数7〜40のアルカリール基または炭素数7〜40のアラルキル基であり、pおよびqは0〜4の整数であり、かつ0<p+q≦4の関係を満たす。
【0015】
成分(E)の具体例としては、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジブロミド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジフェニル、ジメチルシリルビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリルビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、メチレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(インデニル)ジルコニウムジメチル、ジメチルシリルビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、メチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジメチル、ジメチルシリルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジメチル、エチレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ジメチルシリルビス(3−メチル−1−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、メチレンビス(3−メチル−1−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(第3級ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリルビス(3−第3級ブチル−1−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリルビス(2,4−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(1,2,4−トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリルビス(2,3,5−トリメチル−1−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリルビス(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、(フルオレニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリル(フルオレニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリレン(フルオレニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、(第3級ブチルアミド)(1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリル(第3級ブチルアミド)(2,3,4,5−テトラメチル−1−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、メチレン(第3級ブチルアミド)(2,3,4,5−テトラメチル−1−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、(フェノキシ)(1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリル(oーフェノキシ)(2,3,4,5−テトラメチル−1−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、メチレン(o−フェノキシ)(2,3,4,5−テトラメチル−1−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(o−フェノキシ)(2,3,4,5−テトラメチル−1−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(ジメチルアミド)ジルコニウムジクロリド、ビス(ジエチルアミド)ジルコニウムジクロリド、ビス(ジ第3級ブチルアミド)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリルビス(メチルアミド)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリルビス(第3級ブチルアミド)ジルコニウムジクロリド等や、これらの化合物におけるジルコニウムを、チタニウムあるいはハフニウムに置換した化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。前記遷移金属化合物は、単独でまたは2種以上を組合せて使用することができる。
【0016】
また、成分(F)は、下記一般式〔2〕で表されるユニットを有するアルミノキサン化合物であり、その化学構造は未だ必ずしも明確ではないが、線状、環状またはクラスター状の化合物、あるいはこれらの化合物の混合物であると推定されている。
−〔Al(R)−O〕− ...〔2〕
式中、Rは炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜40のアリール基、炭素数7〜40のアルカリール基または炭素数7〜40のアラルキル基で、好ましくはメチル基、エチル基、イソブチル基であり、特に好ましくはメチル基である。前記アルミノキサン化合物は、前記R基を少なくとも1個有する有機アルミニウム化合物と水との反応を経る公知の方法によって製造することができる。
前記(E)成分と(F)成分との使用割合は、遷移金属とアルミニウム原子とのモル比(遷移金属/アルミニウム原子)で、通常、1/1〜1/100000、好ましくは1/5〜1/50000の範囲である。
【0017】
次に、成分(G)は、下記一般式〔3〕で表される遷移金属アルキル化合物である。
R''s (C5 Rm)p (R' n E)q MR''' 4-p-q ...〔3〕
式中、Mは周期律表第4族金属であり、(C5 Rm)はシクロペンタジエニル基または置換シクロペンタジエニル基であり、各Rは同一でも異なってもよく、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜40のアリール基、炭素数7〜40のアルカリール基または炭素数7〜40のアラルキル基であるか、あるいは2つの隣接する炭素原子が結合して4〜8員の炭素環を作っており、Eは非結合電子対を有する原子であり、R' は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜40のアリール基、炭素数7〜40のアルカリール基または炭素数7〜40のアラルキル基であり、R''は炭素数1〜20のアルキレン基、ジアルキルけい素またはジアルキルゲルマニウムであって、2つの配位子を結合する基であり、sは1または0であり、sが1のとき、mは4、nはEの原子価より2少ない数であり、sが0のとき、mは5、nはEの原子価より1少ない数であり、n≧2のとき各R' は同一でも異なっていても良く、また各R' は結合して環を作っていても良く、R''' は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜40のアリール基、炭素数7〜40のアルカリール基または炭素数7〜40のアラルキル基であり、pおよびqは0〜3の整数であり、かつ0<p+q≦4の関係を満たす。
【0018】
成分(G)の具体例としては、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジエチル、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジイソブチル、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジフェニル、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジ{ビス(トリメチルシリル)メチル}、ジメチルシリルビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ジメチルシリルビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジイソブチル、メチレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、エチレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ビス(インデニル)ジルコニウムジメチル、ビス(インデニル)ジルコニウムジイソブチル、ジメチルシリルビス(インデニル)ジルコニウムジメチル、メチレンビス(インデニル)ジルコニウムジメチル、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジメチル、ビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジメチル、ジメチルシリルビス(4,5,6,7−テトラヒドロ−1−インデニル)ジルコニウムジメチル、エチレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロ−1−インデニル)ジルコニウムジメチル、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ジメチルシリルビス(3−メチル−1−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ビス(第3級ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ジメチルシリルビス(3−第3級ブチル−1−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ビス(1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ビス(1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジイソブチル、ジメチルシリルビス(2,4−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、メチレンビス(2,4−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、エチレンビス(2,4−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ビス(1,2,4−トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ジメチルシリルビス(2,3,5−トリメチル−1−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ビス(フルオレニル)ジルコニウムジメチル、ジメチルシリルビス(フルオレニル)ジルコニウムジメチル、(フルオレニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ジメチルシリル(フルオレニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、イソプロピリレン(フルオレニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、(第3級ブチルアミド)(1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ジメチルシリル(第3級ブチルアミド)(2,3,4,5−テトラメチル−1−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、メチレン(第3級ブチルアミド)(2,3,4,5−テトラメチル−1−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、(フェノキシ)(1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ジメチルシリル(o−フェノキシ)(2,3,4,5−テトラメチル−1−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、メチレン(o−フェノキシ)(2,3,4,5−テトラメチル−1−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ビス(ジメチルアミド)ジルコニウムジメチル、ビス(ジエチルアミド)ジルコニウムジメチル、ビス(ジ第3級ブチルアミド)ジルコニウムジメチル、ジメチルシリルビス(メチルアミド)ジルコニウムジメチル、ジメチルシリルビス(第3級ブチルアミド)ジルコニウムジメチル等や、これらの化合物中のジルコニウムを、チタニウムあるいはハフニウムに置換した化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。前記遷移金属アルキル化合物は、単独でまたは2種以上を組合せて使用することができる。
前記遷移金属アルキル化合物は、予め合成して使用してもよいし、また前記一般式〔3〕におけるR''をハロゲン原子に置換した遷移金属ハライドと、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムモノクロリド、トリイソブチルアルミニウム、メチルリチウム、ブチルリチウム等の有機金属化合物とを,反応系内で接触させることにより形成させてもよい。
【0019】
また、成分(H)は、下記一般式〔4〕で表されるイオン性化合物である。
( [L] k+ )p ([M’A1 A2...An ] - )q ... 〔4〕
式中、 [L] k+はブレンステッド酸またはルイス酸であり、M’は周期律表第13〜15族元素であり、A1 〜An はそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜30のジアルキルアミノ基、炭素数1〜20のアルコキシル基、炭素数6〜40のアリール基、炭素数6〜40のアリールオキシ基、炭素数7〜40のアルカリール基、炭素数7〜40のアラルキル基、炭素数1〜40のハロゲン置換炭化水素基、炭素数1〜20のアシルオキシ基または有機メタロイド基であり、kはLのイオン価で1〜3の整数であり、pは1以上の整数であり、q=(k×p)である。
成分(H)の具体例としては、テトラフェニルほう酸トリメチルアンモニウム、テトラフェニルほう酸トリエチルアンモニウム、テトラフェニルほう酸トリ−n−ブチルアンモニウム、テトラフェニルほう酸メチル(ジ−n−ブチル)アンモニウム、テトラフェニルほう酸ジメチルアニリニウム、テトラフェニルほう酸メチルピリジニウム、テトラフェニルほう酸メチル(2−シアノピリジニウム)、テトラフェニルほう酸メチル(4−シアノピリジニウム)、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ほう酸トリメチルアンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ほう酸トリエチルアンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ほう酸トリ−n−ブチルアンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ほう酸メチル(ジ−n−ブチル)アンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ほう酸ジメチルアニリニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ほう酸メチルピリジニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ほう酸メチル(2−シアノピリジニウム)、テトラキス(ペンタフルオロフェニルフェニル)ほう酸メチル(4−シアノピリジニウム)、テトラキス[3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニル]ほう酸ジメチルアニリニウム、テトラフェニルほう酸フェロセニウム、テトラフェニルほう酸銀、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ほう酸フェロセニウム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。前記イオン性化合物は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
前記(G)成分と(H)成分の使用割合は、モル比((G)/(H))で、通常、1/0.5〜1/20、好ましくは1/0.8〜1/10の範囲である。
第1発明および第2発明のエチレン系共重合体ゴムを製造する際に使用される前記メタロセン系触媒は、それらの成分の少なくとも一部を適当な担体に担持して用いることもできる。担体の種類については特に制限はなく、無機酸化物担体、それ以外の無機担体、および有機担体の何れも用いることができる。また担持方法についても特に制限はなく、公知の方法を適宜利用してよい。
【0020】
次に、第2発明における共役ジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム等や、それらの水素化ポリマーが挙げられ、好ましくは天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴムが用いられる。前記水素化ポリマーにおける水素化率は、通常、20〜99%、好ましくは50〜95%である。これらの共役ジエン系ゴムは、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
共役ジエン系ゴムのムーニー粘度は、10〜100が好ましく、さらに好ましくは20〜80である。
第2発明のエチレン系共重合体ゴム組成物におけるエチレン系共重合体ゴムと共役ジエン系ゴムとの重量比(エチレン系共重合体ゴム/共役ジエン系ゴム)は、20/80〜90/10、好ましくは30/70〜70/30、さらに好ましくは50/50〜70/30の範囲にある。この場合、前記重量比が20/80未満では、加硫ゴムの耐オゾン性が低下し、また90/10を超えると、加硫ゴムの機械的強度が不足することがあり好ましくない。
【0021】
次に、第1発明および第2発明に使用される加硫剤および架橋剤のうち、加硫剤としては、例えば、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄等の硫黄;塩化イオウ、セレン、テルル等の無機系加硫剤;モルホリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド類、チウラムジスルフィド類、ジチオカルバミン酸塩類等の含硫黄有機化合物等が挙げられる。これらの加硫剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
加硫剤の配合量は、第1発明においては、エチレン系共重合体ゴム100重量部に対して、通常、0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部であり、第2発明においては、エチレン系共重合体ゴムと共役ジエン系ゴムとの合計100重量部に対して、通常、0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部である。
また、前記加硫剤とともに、加硫促進剤を併用することもできる。
このような加硫促進剤としては、例えば、ヘキサメチレンテトラミン等のアルデヒドアンモニア類;ジフェニルグアニジン、ジ(o−トリル)グアニジン、o−トリルーピグアニド等のグアニジン類;チオカルバニリド、ジ(o−トリル)チオウレア、N,N’−ジエチルチオウレア、テトラメチルチオウレア、トリメチルチオウレア、ジラウリルチオウレア等のチオウレア類;メルカプトベンゾチアゾ−ル、ジベンゾチアゾールジスルフィド、2−(4−モルフォリノチオ)ベンゾチアゾール、2−(2,4−ジニトロフェニル)−メルカプトベンゾチアゾ−ル、(N,N’−ジエチルチオカルバモイルチオ)ベンゾチアゾール等のチアゾール類;N−第3級ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N,N’−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N,N’−ジイソプロピル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド等のスルフェンアミド類;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラ−n−ブチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等のチウラム類;ジメチルチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルチオカルバミン酸亜鉛、ジ−n−ブチルチオカルバミン酸亜鉛、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジメチルチオカルバミン酸テルル、ジメチルチオカルバミン酸鉄等のカルバミン酸塩類;ブチルチオキサントゲン酸亜鉛等のキサントゲン酸塩類等が挙げられる。これらの加硫促進剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
加硫促進剤の配合量は、第1発明においては、エチレン系共重合体ゴム100重量部に対して、通常、0.1〜20重量部、好ましくは0.2〜10重量部であり、第2発明においては、エチレン系共重合体ゴムと共役ジエン系ゴムとの合計100重量部に対して、通常、0.1〜20重量部、好ましくは0.2〜10重量部である。
また、前記加硫剤および加硫促進剤に加え、必要に応じて加硫促進助剤を添加することもできる。
このような加硫促進助剤としては、例えば、酸化マグネシウム、亜鉛華、リサージ、鉛丹、鉛白等の金属酸化物;ステアリン酸、オレイン酸、ステアリン酸亜鉛等の有機酸(塩)類等が挙げられ、特に亜鉛華、ステアリン酸が好ましい。これらの加硫促進助剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
加硫促進助剤の配合量は、第1発明においては、エチレン系共重合体ゴム100重量部に対して、通常、0.5〜20重量部であり、第2発明においては、エチレン系共重合体ゴムと共役ジエン系ゴムとの合計100重量部に対して、通常、0.5〜20重量部である。
【0022】
さらに、架橋剤としては、例えば、1,1−ジ第3級ブチルペルオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ジ第3級ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、第3級ブチルクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(第3級ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(第3級ブチルペルオキシ−イソプロピル)ベンゼン等の有機過酸化物類等が挙げられる。これらの架橋剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
架橋剤の配合量は、第1発明においては、エチレン系共重合体ゴム100重量部に対して、通常、0.1〜15重量部、好ましくは0.5〜10重量部であり、第2発明においては、エチレン系共重合体ゴムと共役ジエン系ゴムとの合計100重量部に対して、通常、0.1〜15重量部、好ましくは0.5〜10重量部である。
また、前記架橋剤とともに、架橋助剤を併用することもできる。
このような架橋助剤としては、例えば、硫黄、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等の硫黄あるいは硫黄化合物;エチレンジ(メタ)アクリレート、ポリエチレンジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、メタフェニレンビスマレイミド、トルイレンビスマレイミド等の多官能性モノマー類;p−キノンオキシム、p,p’−ベンゾイルキノンオキシム等のオキシム化合物等が挙げられる。これらの架橋助剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
架橋助剤の配合量は、第1発明においては、エチレン系共重合体ゴム100重量部に対して、通常、0.5〜20重量部であり、第2発明においては、エチレン系共重合体ゴムと共役ジエン系ゴムとの合計100重量部に対して、通常、0.5〜20重量部である。
【0023】
また、第1発明および第2発明のエチレン系共重合体ゴム組成物には、充填剤あるいは軟化剤を配合することができる。
前記充填剤としては、例えば、SRF、FEF、HAF、ISAF、SAF、FT、MT等のカーボンブラックや、ホワイトカーボン、微粒子けい酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、クレー、タルク等の無機充填剤等が挙げられる。これらの充填剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
充填剤の配合量は、第1発明においては、エチレン系共重合体ゴム100重量部に対して、通常、10〜200重量部、好ましくは10〜100重量部であり、第2発明においては、エチレン系共重合体ゴムと共役ジエン系ゴムとの合計100重量部に対して、通常、10〜200重量部、好ましくは10〜100重量部である。
また、前記軟化剤としては、例えば、ゴムに通常用いられるアロマティック油、ナフテニック油、パラフィン油等のプロセスオイルや、やし油等の植物油、アルキルベンゼンオイル等の合成油等が挙げられる。これらのうち、プロセスオイルが好ましく、特にパラフィン油が好ましい。前記軟化剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
軟化剤の配合量は、第1発明においては、エチレン系共重合体ゴム100重量部に対して、通常、10〜130重量部、好ましくは20〜100重量部であり、第2発明においては、エチレン系共重合体ゴムと共役ジエン系ゴムとの合計100重量部に対して、通常、10〜130重量部、好ましくは20〜100重量部である。
さらに、第1発明および第2発明のエチレン系共重合体ゴム組成物は、他のエチレン/α−オレフィン/非共役ジエン共重合体、エチレン/α−オレフィン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン等の他のゴムあるいは樹脂を1種以上混合して使用することもできる。
【0024】
第1発明および第2発明のエチレン系共重合体ゴム組成物を調製する際には、従来から公知の混練機、押出機、加硫装置等を用いることができる。
エチレン系共重合体ゴムあるいはそれと共役ジエン系ゴムと共に混合される加硫剤および/または架橋剤、充填剤、軟化剤等の配合方法、配合順序としては、例えば、バンバリーミキサー等を用いて、エチレン系共重合体ゴムあるいはそれと共役ジエン系ゴム、充填剤、軟化剤等を混合したのち、ロール等を用いて加硫剤および/または架橋剤等を加える方法が挙げられるが、これに限定されるものではない。
次に、通常の加硫ゴムの製造に供される手法で、例えば、エチレン系共重合体ゴム組成物を金型内に入れて温度を高めることにより加硫を行うか、あるいは押出成形機を用いて任意の形状に成形したのち加硫槽内で加熱して加硫を行うことにより、加硫ゴムを製造することができる。
第1発明のエチレン系共重合体ゴム組成物は、各種電線、電気絶縁部品、ルーフィング、チューブ、ベルト、土木建築資材、ゴムロール、防振ゴム、スポンジ製品や、自動車部品としてウェザーストリップ、ラジエーターホース、ヒーターホース、ブレーキホース、プロテクター、マフラーハンガー、ラジエーターパッキング、ブレーキカップ、ランプ用パッキング、バンパー等の用途に好適に使用することができる。
また、第2発明のエチレン系共重合体ゴム組成物は、タイヤ、防振ゴム、窓枠、各種のウェザーストリップ、土木建築資材等の用途に好適に使用することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、実施例により、本発明の実施の形態をさらに具体的に説明する。但し、本発明は、これらの実施例に何ら制約されるものではない。
実施例および比較例中の測定・評価は、以下の方法により実施した。
(イ)α−オレフィン含量(モル%)
13C−NMR法により測定した。但し、各実施例および比較例におけるエチレン、α−オレフィンの含量(モル%)は、これらの合計量を100モル%としたときの値を示す。
(ロ)よう素価
赤外線吸収スペクトル法により測定した。
(ハ)ムーニー粘度
JIS K6300に準拠し、測定温度100℃、予熱1分、測定4分の条件で、測定した。
(ニ)Mw/Mn
o−ジクロロベンゼン中135℃の条件で、GPCにより測定した。
(ホ)ガラス転移温度Tg
デュポン・インスツルメント(現在は、ティ・エイ・インスツルメント)社製910型示差走査熱量計を用い、サンプルを18 0℃まで昇温し、次いで10℃/分の速度で−90℃まで冷却したのち、20 ℃/分の速度で昇温しながら測定した。
(ヘ)分岐度指数B
o−ジクロロベンゼン中、試料濃度0.15重量%、135℃の条件で、ウォータース社製150CV型GPCにより測定した。
(ト)ロール加工性
ロール加工性は、以下の5段階により判定した。
5:ゴムバンドがロールに完全に密着しており、バンクがスムーズに回転する。
4:ロールの頂点からバンクまでの間で、ゴムバンドがロール表面から時々離れる。
3:ロールの頂点からバンクまでの間で、ゴムバンドがロール表面からかなり離れる。
2:ロール表面にゴムバンドがよく密着せず垂れ下がり、ゴムバンドに手を添えないと、ロール加工ができない。
1:ロール表面にゴムバンドが全く密着せず垂れ下がり、ゴムバンドに手を添えないと、ロール加工ができない。
(チ)ロール作業時の粘着性
ロールへの粘着性を、優(◎)、良(○)、可(△)、不可(×)の4段階により判定した。
(リ)プラストミルのまとまり性
プラストミル混練時のゴムコムパウンドの排出性を、以下の4段階で評価した。
◎:排出性が優、
○:排出性が良、
△:排出されたゴムのまとまりがやや悪い、
×:排出されたゴムがまとまらない。
(ヌ)引張り試験
JIS K6301に準拠し、3号型試験片を用いて、測定温度25℃、引張速度500mm/分の条件で、引張強さTB(MPa)および引切断時伸びEB(%)を測定した。
(ル)硬さ試験
JIS K6301に準拠し、スプリング硬さ(JIS−A硬度)を測定した。
(ヲ)圧縮永久歪み試験
JIS K6301に準拠し、70℃×22時間の条件で測定した。
(ワ)低温ねじり試験(ゲーマン温度)
JIS K6301に準拠し、T5(℃)を測定した。
(カ)加硫特性試験
日本合成ゴム(株)製キュラストメーターV型を用い、160℃×30分間における加硫曲線から、トルク最大値MHを求めた。
(ヨ)伸長疲労特性試験
(亀裂成長試験)
JIS K6301記載の1号型ダンベル試験片を作製し、この試験片の縦方向の中心に予め亀裂を入れた試験片10本につき、伸長率75%、測定温度30℃、回転数300cpmの条件で伸長疲労させて、試験片が切断するまでのサイクル数の平均値を求めた。
(亀裂発生試験)
予め亀裂を入れていない試験片を用い、伸長率を100%とした以外は、前記亀裂成長と同一条件で試験を行い、試験片が切断するまでのサイクル数の平均値を求めた。
(タ)耐オゾン性試験
JIS K6301に準拠し、オゾン濃度50phm、伸長率50%の条件で、クラック発生時間を測定して、耐オゾン性の指標とした。試験期間は14日とした。
【0026】
【実施例】
実施例1
(エチレン系共重合体ゴムの製造)
充分に窒素置換した内容量3リットルのステンレス製オートクレーブに、精製トルエン1.45リットル、1−オクテン450ミリリットル、7−メチル−1,6−オクタジエン45ミリリットル、1,9−デカジエン1.7ミリリットル(8.9ミリモル)を加えて、30℃に昇温したのち、エチレンを14ノルマルリットル/分の速度で連続的に供給しつつ、容器内圧を5kg/cm2 に調整した。
これとは別に、充分に窒素置換し、磁気攪拌子を入れた内容量50ミリリットルのガラス製フラスコに、精製トルエン3.0ミリリットル中に溶解したイソプロピリレン(フルオレニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド3.0μモル、精製トルエン6.0ミリリットル中に溶解したトリイソブチルアルミニウム1.5ミリモルを入れて、室温で30分攪拌して反応させた。次いで、精製トルエン7.2ミリリットル中に溶解したテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ほう酸ジメチルアニリニウム3.6μモルを加え、室温で20分攪拌して反応させて、重合触媒とした。
この重合触媒を、前記オートクレーブに添加して、重合を開始させた。反応中は温度を30℃に保ち、連続的にエチレンを供給しつつ、容器内圧を5kg/cm2 に保持して、15分間重合を行った。次いで、少量のメタノールを添加して、反応を停止させたのち、スチームストリッピングにより脱溶し、6インチロールで乾燥して、155gのポリマーを得た。
このポリマーは、エチレン含量71.5モル%、1−オクテン含量28.5モル%、よう素価15.5、ムーニー粘度45、Mw/Mn5.5、Tg=−68.7℃、分岐度指数B=0.835のエチレン/1−オクテン/7−メチル−1,6−オクタジエン/1,9−デカジエン共重合体ゴムであった。このエチレン系共重合体ゴムを、共重合体ゴム(R1)とする。
以上の結果を、表−1に示す。
(ゴム組成物の調製と評価)
共重合体ゴム(R1)と、表−3に示す成分から加硫剤成分を除いた各成分とを、ラボプラストミル(内容量250ミリリットル)を用い、回転数60rpm、60℃で150秒間混練して、コンパウンド(i)を得た。次いで、コンパウンド(i)に表−3に示す残りの加硫剤成分を加え、50℃に保持した10インチロールで5分間混練して、コンパウンド(ii)を得た。
次いで、コンパウンド(ii)を、160℃に加熱した熱プレスにより、プレス圧150kgf/cm2 の圧力下で30分間加熱して、120×120×2mmの加硫シートおよび圧縮永久歪試験用サンプルを作製し、各種特性を評価した。その結果、共重合体ゴム(R1)を用いた組成物は、加工特性と機械的特性および低温特性とのバランスに優れていた。評価結果を、表−4に示す。
【0027】
実施例2
(エチレン系共重合体ゴムの製造)
充分に窒素置換した内容量3リットルのステンレス製オートクレーブに、精製トルエン1.9リットル、7−メチル−1,6−オクタジエン45ミリリットル、1,9−デカジエン1.7ミリリットル(8.9ミリモル)、精製トルエン15ミリリットル中に溶解したアルミニウム原子換算で18ミリモルのメチルアルミノキサンを加え、30℃に昇温したのち、エチレンを12ノルマルリットル/分、プロピレンを12ノルマルリットル/分の速度で連続的に供給しつつ、容器内圧を4kg/cm2 に調整した。次いで、トルエン4.5ミリリットル中に溶解したエチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド3.6μモルを添加して、重合を開始させた。反応中は温度を30℃に保ち、連続的にエチレンとプロピレンを供給しつつ、容器内圧を4kg/cm2 に保持して、15分間重合を行った。次いで、少量のメタノールを添加して、反応を停止させたのち、スチームストリッピングにより脱溶し、6インチロールで乾燥して、161gのポリマーを得た。
このポリマーは、エチレン含量75モル%、プロピレン含量25モル%、よう素価13、ムーニー粘度95、Mw/Mn4.8、Tg=−58.7℃、分岐度指数B=0.892のエチレン/プロピレン/7−メチル−1,6−オクタジエン/1,9−デカジエン共重合体ゴムであった。このエチレン系共重合体ゴムを、共重合体ゴム(R2)とする。
以上の結果を、表−1に示す。
(ゴム組成物の調製と評価)
共重合体ゴム(R2)を用いた以外は、実施例1と同様にして、コンパウンド(i)およびコンパウンド(ii)の調製、各種特性評価を行った。
その結果、共重合体ゴム(R2)を用いた組成物は、加工特性と機械的特性および低温特性とのバランスに優れていた。評価結果を、表−4に示す。
【0028】
実施例3〜8
実施例1または実施例2と同様にして、表−1に示す共重合体ゴム(R3)〜(R8)を製造し、コンパウンド(i)およびコンパウンド(ii)の調製、各種特性評価を行った。
その結果、これらの共重合体ゴムを用いた組成物は、加工特性と機械的特性および低温特性とのバランスに優れていた。評価結果を、表−4に示す。
【0029】
比較例1〜4
実施例1または実施例2と同様にして、表−2に示す共重合体ゴム(r1)〜(r4)を製造し、コンパウンド(i)およびコンパウンド(ii)の調製、各種特性評価を行った。
その結果、これらの共重合体ゴムを用いた組成物は、加工特性と機械的特性および低温特性とのバランスが不十分であった。評価結果を表−5に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
【表3】
【0033】
【表4】
【0034】
【表5】
【0035】
実施例9〜10
共重合体ゴム(R2)または共重合体ゴム(R3)と、天然ゴムと、表−6に示す成分から加硫剤成分を除いた各成分とを、ラボプラストミル(内容量250ミリリットル)を用い、回転数60rpm、60℃で150秒間混練して、コンパウンド(i)を得た。次いで、コンパウンド(i)に表−6に示す残りの加硫剤成分を加え、50℃に保持した10インチロールで5分間混練して、コンパウンド(ii)を得た。
次いで、これらのコンパウンド(ii)を、160℃に加熱した熱プレスにより、プレス圧150kgf/cm2 の圧力下で30分間加熱して、120×120×2mmの加硫シートおよび圧縮永久歪試験用サンプルを作製し、各種特性を評価した。
その結果、これらの共重合体ゴムを用いた組成物は、共加硫性が優れ、かつ加工特性と機械的特性および耐動的疲労性とのバランスに優れていた。評価結果を、表−7に示す。
【0036】
比較例5〜7
共重合体ゴム(R2)または共重合体ゴム(R3)の代わりに、共重合体ゴム(r1)、共重合体ゴム(r3)または共重合体ゴム(r4)を用いた以外は、実施例9および実施例10と同様にして、コンパウンド(i)およびコンパウンド(ii)の調製、各種特性評価を行った。
その結果、これらの共重合体ゴムを用いた組成物は、共加硫性が劣り、かつ加工特性と機械的特性および耐動的疲労性とのバランスが不十分であった。評価結果を、表−7に示す。
【0037】
実施例11〜12
共重合体ゴム(R2)または共重合体ゴム(R3)と、天然ゴムと、表−8に示す成分から加硫剤成分を除いた各成分とを、ラボプラストミル(内容量250ミリリットル)を用い、回転数60rpm、60℃で150秒間混練して、コンパウンド(i)を得た。次いで、コンパウンド(i)に表−8に示す残りの加硫剤成分を加え、50℃に保持した10インチロールで5分間混練して、コンパウンド(ii)を得た。
次いで、これらのコンパウンド(ii)を、160℃に加熱した熱プレスにより、プレス圧150kgf/cm2 の圧力下で30分間加熱して、120×120×2mmの加硫シートおよび圧縮永久歪試験用サンプルを作製し、各種特性を評価した。
その結果、これらの共重合体ゴムを用いた組成物は、共加硫性が優れ、かつ加工特性と機械的特性および耐動的疲労性とのバランスに優れていた。評価結果を、表−9に示す。
【0038】
比較例8〜10
共重合体ゴム(R2)または共重合体ゴム(R3)の代わりに、共重合体ゴム(r1)、共重合体ゴム(r3)または共重合体ゴム(r4)を用いた以外は、実施例11および実施例12と同様にして、コンパウンド(i)およびコンパウンド(ii)の調製、各種特性評価を行った。
その結果、これらの共重合体ゴムを用いた組成物は、共加硫性が劣り、かつ加工特性と機械的特性および耐動的疲労性とのバランスが不十分であった。評価結果を、表−9に示す。
【0039】
【表6】
【0040】
【表7】
【0041】
【表8】
【0042】
【表9】
【0043】
【表10】
【0044】
【発明の効果】
第1発明のエチレン系共重合体ゴム組成物は、加工特性が優れ、かつ加工特性と機械的特性および低温特性とのバランスに優れている。また、第2発明のエチレン系共重合体ゴム組成物は、共加硫性に優れ、かつ加工特性と機械的特性および耐動的疲労性とのバランスに優れるとともに、低温特性、耐候性、耐オゾン性等も優れている。したがって、これらのエチレン系共重合体ゴム組成物は、幅広い用途に極めて好適に使用することができる。
Claims (3)
- (a)エチレン、(b)プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセンおよび1−オクテンの群から選ばれるα−オレフィン、(c)6−メチル−1,5−ヘプタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、8−メチル−1,7−ノナジエンおよび9−メチル−1,8−デカジエンの群から選ばれる非共役ジエン並びに(d)1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンおよび1,9−デカジエンの群から選ばれるα,ω−ジエンからなり、下記(1)〜(6)の要件を満たすエチレン系共重合体ゴムと、加硫剤および/または架橋剤とを含有してなるエチレン系共重合体ゴム組成物。
記
(1)エチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとのモル比(エチレン/α−オレフィン)が40/60〜90/10の範囲にあり、
(2)よう素価が5〜45の範囲にあり、
(3)ムーニー粘度(ML1+4 ,100℃)が20〜300の範囲にあり、
(4)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めたポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)とポリスチレン換算数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が3〜10の範囲にあり、
(5)示差走査熱量計(DSC)により求めたガラス転移温度(Tg)が−56〜−75℃の範囲にあり、
(6)分岐度指数Bが0.70〜0.92の範囲にある。 - 請求項1に記載のエチレン系共重合体ゴムと、共役ジエン系ゴムと、加硫剤および/または架橋剤とを含有してなり、前記エチレン系共重合体ゴムと前記共役ジエン系ゴムとの重量比(エチレン系共重合体ゴム/共役ジエン系ゴム)が、20/80〜90/10の範囲にあるエチレン系共重合体ゴム組成物。
- 共役ジエン系ゴムが天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ポリブタジエンゴムおよびポリイソプレンゴムの群の単独または2種以上の混合物である請求項2に記載のエチレン系共重合体ゴム組成物。
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