JP3754723B2 - 二成分系現像剤及び画像形成方法 - Google Patents

二成分系現像剤及び画像形成方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、電子写真法あるいは静電印刷法などにおいて電気的潜像または磁気的潜像を現像するのに用いられる二成分系現像剤に関し、とりわけ耐久性と画質及び環境特性を著しく改良したキャリアを用いた二成分系現像剤及びその二成分系現像剤を用いた画像形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真の現像法としては、カスケード現像法や磁気ブラシ現像法など多くの方法があり、これら各種の現像法に使用される現像剤には一成分系現像剤と二成分系現像剤とがある。
【0003】
二成分系現像剤を構成するキャリアは、導電性キャリアと絶縁性キャリアに大別され、導電性キャリアとしては通常酸化又は未酸化の鉄粉が用いられる。この鉄粉キャリアを成分とする二成分系現像剤においては、トナーに対する摩擦帯電性が不安定であり、よって形成される可視像にカブリが発生しやすいと言う問題点がある。即ち、二成分系現像剤の使用に伴ない、鉄粉キャリア粒子の表面にトナー粒子が付着,蓄積(スペント・トナー)する為、鉄粉キャリア粒子の電気抵抗が増大して、バイアス電流が低下し、しかも摩擦帯電性が不安定となり、この結果形成される可視像の画像濃度が低下しカブリが増大する。従って鉄粉キャリアを含有する二成分系現像剤を用いて電子複写装置により連続的に複写を行なうと、少数枚の複写で二成分系現像剤が劣化する為、二成分系現像剤を早期に交換することが必要となり、結局コストが高いものとなる。
【0004】
このため、近年、上記鉄粉キャリアの欠点を解消するものとして、フェライト粒子をキャリアとして使用することが提案されている(特開昭52−56536号公報,特開昭58−202456号公報等)。
【0005】
しかしながら、従来実用化されているフェライトキャリアは、特定のトナーおよび電子写真機器で使用した時には、鉄粉キャリアに無い勝れた特性を発揮するものの、先述した諸要求特性を考慮すると、依然として改善すべき問題点を残しており、完全なものは今のところ知られていない。例えば、フェライト組成や焼成温度の変更により適正な抵抗のキャリアが得られても所望の磁気特性が得られない、あるいは抵抗及び磁気特性を適正範囲内に保てても帯電量がうまく制御できないなどの不都合があった。
【0006】
絶縁性キャリアとしては一般に鉄、ニッケル、フェライトの如き強磁性体より成るキャリア芯材の表面を絶縁性樹脂により均一に被覆したキャリアが代表的である。この絶縁性キャリアを用いた二成分系現像剤においてはキャリア表面にトナー粒子が融着することが導電性キャリアの場合に比べて著しく少なく、同時にトナーとキャリアとの摩擦帯電性を制御することが容易であり耐久性に優れ使用寿命が長い点で特に高速の電子写真複写機に好適であるという利点がある。
【0007】
絶縁性キャリアに対して要求される特性は種々あるが、特に重要な特性として適度な帯電性、耐衝撃性、耐摩耗性、コアと被覆材料との良好な密着性、電荷分布の均一性等を挙げることができる。
【0008】
さらに、近年、複写機の高精細、高画質化の要求が市場では高まっており、当該技術分野では、トナーの粒径を細かくして高画質カラー化を達成しようという試みがなされているが、粒径が細かくなると単位重量当りの表面積が増え、トナーの帯電気量が大きくなることに加えて帯電速度が遅くなる傾向にあり、画像濃度薄や、カブリ、トナー飛散の如き耐久劣化が懸念されるところである。
【0009】
すなわち、静電潜像保持体に保持されている静電潜像の現像において、トナーは比較的大粒子であるキャリアと混合され、電子写真用二成分系現像剤として用いられる。トナーとキャリアの両者の組成は、相互の接触摩擦により、例えばトナーが光導電層上の電荷と反対の極性を帯びるように選ばれる。両者の接触摩擦の結果、キャリアはトナーを表面に静電的に付着させ、現像剤として現像装置内を搬送し、静電潜像保持体の光導電層上にトナーを供給する。
【0010】
しかしながら、このような二成分現像剤を用い電子複写装置で多数枚連続複写を行うと、初期には鮮明で良好な画質を持った画像が得られるが、数万枚複写後は、カブリが多く、エッジ効果が著しく生じた、階調性及び鮮明性に乏しい画像となる。
【0011】
有彩色トナーを用いるカラー複写においては、連続階調性は画質に影響を及ぼす重要な因子であり、多数枚複写後に画像の周辺部のみが強調されるエッジ効果が生じることは画像の階調性を大きく損なう。実際の輪郭の近傍にエッジ効果による擬似輪郭を形成するなど、カラー複写における色再現性を含めた、複写再現性を貶めるものとなる。
【0012】
さらに、従来の白黒コピーで使用される画像面積は10%以下であり、画像としては、手紙,文献,報告書のように、ほとんどライン画像部分であるのに対して、カラー複写の場合、画像面積が最低でも20%以上であり、画像も写真,カタログ,地図,絵画のように階調性を有するベタ画像がかなりの頻度または領域を占めている。
【0013】
このような、画像面積が大きい原稿を用いて連続複写を行うと、通常、初期は高画像濃度の複写物が得られるが、しだいに二成分現像剤へのトナー補給が間に合わなくなり、濃度低下が生じたり、帯電不十分の状態で、補給トナーとキャリアとの混合がなされ、カブリの原因となったり、現像スリーブ上で部分的なトナー濃度(トナーとキャリアの混合比を示す)の増減が生じ画像のカスレや画像濃度の一様性が得られなくなる傾向がある。この傾向は、トナーを小径化した場合一層顕著である。
【0014】
これは、二成分系現像剤中のトナー内包量(すなわち、トナー濃度)が低すぎること、または補給トナーと二成分現像剤中のキャリア間のすみやかな摩擦帯電の立ち上りが悪く、非制御性な不十分な帯電量のトナーが現像に関与することなどにより、これらの現像不足やカブリが発生すると思われる。
【0015】
カラー現像剤としては大画像面積の原稿の連続的な複写で良画質の画像を常に出力できる能力は必須である。従来画像面積が大きくトナー消費量が非常に多い原稿に対処するため、現像剤自身の改良よりも現像装置の改良により多くは対応していた。すなわち、現像スリーブの静電潜像への接触機会を高めるために、現像スリーブの周速を早めたり、現像スリーブの大きさを大口径のものにすることなどが行われている。
【0016】
これらの対策は現像能力はアップするものの、現像装置からのトナー飛散による機内への汚染や、現像装置駆動への過負荷により装置寿命が著しく制限を受けることなどが生ずる。さらには、現像剤の現像能力不足を補うために多量の現像剤を現像装置内に投入することで対応する場合もあるが、これらも、装置全体の重量の増加、装置の大型化によるコストアップ、上述と同様に現像装置駆動への過負荷などを招く結果となり、あまり好ましいものではない。
【0017】
そこで長期にわたり、高画質を維持する目的でトナー,キャリア双方からの改良検討が報告されている。
【0018】
これまでに、画質をよくするという目的のために、いくつかの現像剤が提案されている。例えば特開昭51−3244号公報では、粒度分布を規制して、画質の向上を意図した非磁性トナーが提案されている。該トナーにおいて、8〜12μmの粒径を有するトナーが主体であり、比較的粗く、この粒径では本発明者らの検討によると、潜像への均密なる“のり”は困難であり、かつ、5μm以下が30個数%以下であり、20μm以上が5個数%以下であるという特性から、粒径分布はブロードであるという点も均一性を低下させる傾向がある。このような粗めのトナー粒子であり、且つブロードな粒度分布を有するトナーを用いて、鮮明なる画像を形成するためには、トナー粒子を厚く重ねることでトナー粒子間の間隙を埋めて見かけの画像濃度を上げる必要があり、所定の画像濃度を出すために必要なトナー消費量が増加するという問題点も有している。
【0019】
特開昭54−72054号公報では、前者よりもシャープな分布を有する非磁性トナーが提案されているが、中間の重さの粒子の寸法が8.5〜11.0μmと粗く、高解像性のトナーとしては、いまだ改良すべき余地を残している。
【0020】
特開昭58−129437号公報では、平均粒径が6〜10μmであり、最多粒子が5〜8μmである非磁性トナーが提案されているが、5μm以下の粒子が15個数%以下と少なく、鮮鋭さの欠けた画像が形成される傾向がある。
【0021】
本発明者らの検討によれば、5μm以下のトナー粒子が、潜像の輪郭を明確に再現し、且つ潜像全体への緻密なトナーののりの主要なる機能をもつことが知見された。特に、感光体上の静電荷潜像においては電気力線の集中のため、輪郭たるエッジ部は内部より電界強度が高く、この部分に集まるトナー粒子の質により、画質の鮮鋭さが決まる。本発明者らの検討によれば5μm以下の粒子の量が画質の鮮鋭さの問題点の解決に有効であることが判明した。
【0022】
そこで、本発明者らは、特開平2−222966号公報で、5μm以下のトナー粒子を15〜40個数%含有するトナーを提案したが、これにより、かなりの画質向上は達成されたがさらに向上した画質も望まれている。
【0023】
特開平2−877号公報で、5μm以下のトナー粒子が17〜60個数%含有するトナーが提案されているが、これにより、確かに画質,画像濃度は安定したが、写真原稿のように消費量の多いオリジナルを連続でプリントした場合、トナーとしての対策だけではトナーの粒度分布が変化してしまい、常に一定の画像を得るのが難しいことも判明した。
【0024】
一方、キャリアの平均粒径や粒度分布を示唆したものとして、特開昭51−3238号公報、特開昭58−144839号公報、特開昭61−204646号公報がある。特開昭51−3238号公報は大まかな粒度分布を言及している。しかしながら、現像剤の現像性や現像装置内での搬送性に密接に関係している磁気特性については具体的に開示していない。さらにキャリアの粒径に関しては、実施例中のキャリアは全て250メッシュ以上が約80重量%以上もあり、平均粒径も60μm以上である。
【0025】
特開昭58−144839号公報は、単にキャリアの平均粒径のみを開示するものであって感光体へのキャリア付着に影響を及ぼす微粉量や画像の鮮鋭性に影響を与える粗粉量まで言及しカラー複写の特性を考慮して詳細にその分布まで記載してはいない。
【0026】
特開昭61−204646号公報は複写装置と適当な現像剤の組合せを発明の骨子としており、キャリアの粒度分布や磁気特性については具体的に述べられていない。さらには、該現像剤がなぜその複写装置に有効なのかさえも開示されていない。
【0027】
特開昭49−70630号公報は、キャリアの磁気力に関して記載しているが、これはキャリア素材として、フェライトよりも比重の大きい鉄粉についてのものであり、飽和磁気も高いものである。鉄粉キャリアは従来多く使用されてきたが、比重が大きいために複写装置の重量化や駆動トルクの過負荷を生じやすく、さらに環境依存性も大きい。
【0028】
特開昭58−23032号公報に記載されているフェライトキャリアは、多孔性の空孔の多い材料についてのものであり、このようなキャリアはエッジ効果が発生しやすく耐久性に乏しいものであり、カラー用キャリアとしては不適当であることが判明している。
【0029】
今まで、少量の現像剤で、画像面積の大きい画像を連続複写することが可能であり、耐久後もエッジ効果が生じないカラー複写特有の特性をも満足しうる現像剤が待望されている。現像剤及びキャリアに関して検討が行われているが、それらのほとんどは白黒複写を考慮して提案されたものであり、フルカラー複写用にも適用できるものとして提案されたものは極めてわずかである。さらに、ほとんどベタ画像に近い20%以上の画像面積をもつ画像を複写しつづける能力やエッジ効果の軽減、一枚の複写物中での画像濃度の一様性を保持しうる能力を有するキャリアが待望されている。
【0030】
そこで、特開平2−281280号公報では、微粉の存在量および粗粉の存在量をコントロールした粒度分布の狭いキャリアを提案して、現像特性の向上したキャリアが達成されている。
【0031】
しかしながら、先に述べたように、複写機の高精細、高画質化の要求が市場では高まっており、当該技術分野では、トナーの粒径を細かくして高画質カラー化を達成しようという試みがなされているが、トナーの粒径が細かくなると単位重量当りの表面積が増え、トナーの帯電気量が大きくなる傾向にあり、画像濃度薄や、耐久劣化が懸念されるところである。
【0032】
このように、トナー粒径を細かくしたことによる画像濃度薄や耐久劣化防止、あるいは、現像効率向上を目的としてキャリアの更なる小径化が試みられている。しかしながら、このようなキャリアにおいては、トナーの環境あるいは耐久による帯電量変化に対処できるだけの十分な品質が得られておらず、高画像濃度,高画質,良好なカブリ防止及びキャリア付着防止のすべてを達成することは難しいのが実情である。
【0033】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上述の如き問題点を解決した二成分系現像剤及び該二成分系現像剤を用いた画像形成方法を提供することにある。
【0034】
本発明の目的は、所望のキャリア抵抗及び磁気特性を損うことなく適正な帯電付与能を持つキャリアを提供することにある。
【0035】
また、さらなる目的は、該キャリアを用いることにより、特に画質,帯電特性及びその耐久性を大巾に改良した二成分系現像剤及び該二成分系現像剤を用いた画像形成方法を提供することにある。
【0036】
また、さらなる目的は、粒径の小さいトナーと組み合せた場合、帯電速度を高め、かつ、均一に帯電させることにより、カブリ及びトナー飛散の少ない高画質の画像を永続的に得ることを可能とするキャリア、該トナー及び該キャリアを有する二成分系現像剤及び該二成分系現像剤を用いた画像形成方法を提供することにある。
【0038】
【課題を解決するための手段及び作用】
本発明は、トナー及びキャリアを有する二成分系現像剤において、
該キャリアは、キャリア粒子及び該キャリア粒子表面を被覆する樹脂被覆層を有しており、
該樹脂被覆層は、シリコーン樹脂を有しており、
該キャリアは、重量平均粒径が10〜45μmであり、飽和磁化が20〜70Am2/kgであり、
該キャリアは下記式(I)
(Fe23x(MnO)y(A)z 式(I)
[式中、Aは、Na2O,K2O,CaO,SrO又はそれらの混合物を示し、x,y及びzは、モル分率を示し、かつ下記条件
0.3<x<0.8,0.01<y<0.5,
0<z<0.69,x+y+z≦1
を満足する。]
で示される磁性フェライト成分(モル分率で、ZnOを10%以上含有しているものを除く)を有し、
該トナーは、着色剤及び結着樹脂を含有するトナー粒子と外添剤とを有する負帯電性トナーであり、且つ、酸価が1〜20KOHmg/gであり、ガラス転移温度(Tg)が45〜70℃であり、重量平均粒径が1〜9μmであり、
該結着樹脂は、エーテル化ビスフェノール類と三価以上の多価カルボン酸を0.1〜20mol%(全酸成分基準)有する多価カルボン酸成分との共縮合によって得られたポリエステル樹脂を有しており、
該外添剤は、個数平均粒径が0.005μm乃至0.2μmの疎水化処理された無機微粉体を有することを特徴とする二成分系現像剤を提供する。
【0039】
さらに、本発明は、トナー及びキャリアを有する二成分系現像剤を現像剤担持体で循環搬送し、現像領域で静電潜像担持体に保持されている静電潜像を該現像剤担持体に担持されている該二成分系現像剤のトナーで現像する画像形成方法において、
該キャリアは、キャリア粒子及び該キャリア粒子表面を被覆する樹脂被覆層を有しており、
該樹脂被覆層は、シリコーン樹脂を有しており、
該キャリアは、重量平均粒径が10〜45μmであり、飽和磁化が20〜70Am2/kgであり、
該キャリアは下記式(I)
(Fe23x(MnO)y(A)z 式(I)
[式中、Aは、Na2O,K2O,CaO,SrO又はそれらの混合物を示し、x,y及びzは、モル分率を示し、かつ下記条件
0.3<x<0.8,0.01<y<0.5,
0<z<0.69,x+y+z≦1
を満足する。]
で示される磁性フェライト成分(モル分率で、ZnOを10%以上含有しているものを除く)を有し、
該トナーは、着色剤及び結着樹脂を含有するトナー粒子と外添剤とを有する負帯電性トナーであり、且つ、酸価が1〜20KOHmg/gであり、ガラス転移温度(Tg)が45〜70℃であり、重量平均粒径が1〜9μmであり、
該結着樹脂は、エーテル化ビスフェノール類と三価以上の多価カルボン酸を0.1〜20mol%(全酸成分基準)有する多価カルボン酸成分との共縮合によって得られたポリエステル樹脂を有しており、
該外添剤は、個数平均粒径が0.005μm乃至0.2μmの疎水化処理された無機微粉体を有することを特徴とする画像形成方法を提供するものである。
【0040】
本発明における電子写真用キャリアの特徴は、キャリアを構成する磁性フェライト成分がFe23及びMnOに加えて、さらにNa2O,K2O,CaO,SrO及びそれらの混合物の中から選ばれる一種以上の成分を必須成分とすることにある。
【0041】
Fe23は適正な磁気特性を得るために必要な成分であり、特に磁気ブラシ現像方法においては良好な画質を得ることができる。
【0042】
アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の酸化物を含有させることは、キャリア抵抗を適正範囲内に維持しながら帯電量を制御するのに効果的であるが、特にMnOと併用することによりその効果が飛躍的に増大する。
【0043】
但し、本発明者等の詳細な検討によると、全てのアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属が効果を持つ訳ではなく、ある特定範囲内の物性値を持つ金属原子にのみ効果が見られることが明らかとなった。
【0044】
すなわち、各組成成分が相互に固溶し合い、結晶格子を構成して電気抵抗及び帯電量の制御が可能となるのには、含有される金属において適正なイオン半径の範囲が必要であり、本発明者等が鋭意検討した結果、Li+,Be2+およびMg2+のイオン半径では適正範囲よりも小さく、また、Rb+およびCs+のイオン半径では適正範囲よりも大きく、いずれの場合も望ましいキャリア抵抗範囲よりも低くなってしまい、電子写真用キャリアとして用いるには不適当であった。また、帯電量の制御には、金属のイオン化ポテンシャルが低いこと及び高い原子価状態が存在することが必要であり、Ba2+のようにそれ以上高い原子価を持たない金属を含有させても高い帯電量が得られないことも明らかとなった。
【0045】
前述したようにMnOを共存させた場合、特に高い効果が得られる理由については明らかではないが、Mn酸化物はFe23と互いに固溶してスピネル構造を取り得ることからある程度の抵抗の制御が可能であり、また、イオン化ポテンシャルが低めでしかも高い原子価状態をとり得ることから比較的高い帯電能力をもつことが原因の一つと考えられている。すなわち、MnOとアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属を共存させることにより、格子構造あるいは金属原子価状態がお互いに摂動し合うため、それぞれの効果を相乗的に向上させ合うものと思われる。
【0046】
MnOを必須成分とするフェライトキャリアとしては、特開昭58−123552号公報,特開昭59−111159号公報,特公昭6−23866号公報にMnO及びMgOを必須成分とするフェライトキャリアが提案されており、特開昭58−215664号公報,特開昭59−111926号公報,特開昭62−297857号公報にはMnO及びLi2Oを必須成分とするフェライトキャリアが提案されている。しかしながら、本発明者等の検討によれば、MgOあるいはLi2OをMnOと共存させても抵抗調整の面で効果が不十分であった。これは、前述したように、Li+あるいはMg2+などでは安定で均一な結晶格子を構成するのに必要な適正イオン半径の範囲からずれているためと思われる。
【0047】
特公平6−23866号公報においては、フェライト組成中にMnO,MgOに加えて、さらにCu,Zn,Coの如き金属を共存させても良い旨の提案がなされている。しかしながら、本発明者等の検討によればこういった金属を含有させても、キャリアの帯電付与能力を高めることは容易でないことが明らかとなった。
【0048】
これは、一般にキャリア中に含有される金属のイオン化ポテンシャルとキャリアの帯電能力には相関が見られ、イオン化ポテンシャルが大きい程正帯電し難いからである。
【0049】
特公昭6−23866号公報に記載されているフェライト組成中に含有される金属と、本発明において磁性フェライト成分中に酸化物状態で含有される金属とのイオン化ポテンシャルを比較すると下記関係
Cu,Zn,Co>Na,K,Ca,Sr
(大 ← イオン化ポテンシャル → 小)
で示すような序列となり、Cu,Zn及びCoに比較してNa,K,Ca及びSrのネガイオン化ポテンシャルが小さく、キャリア中に含有された場合、より正帯電するよう作用する。
【0050】
本発明において用いられる磁性フェライト成分は、下記式(I)
(Fe23x(MnO)y(A)z 式(I)
[Aは、Na2O,K2O,CaO,SrO又はそれらの混合物を示し、
x,y及びzは、モル分率を示しかつ下記条件
0.3<x<0.8,0.01<y<0.5,
0<z<0.69,x+y+z≦1
を満足する。]
で示されるものである。
【0051】
上記式(I)において、より好ましくは、x,y及びzは下記条件
0.3<x<0.8,0.01<y<0.5,x+y<1,z=1−x−y
を満足することが、キャリアの帯電能力の向上の点において好ましいが、本発明においては、上記の磁性フェライト成分の有する効果を妨げない3重量%以下の範囲でその他の金属元素を磁性キャリア芯材粒子表面の結晶粒径の調整を目的として、焼成時の合一防止を目的として、或いは粒度分布調整剤として、磁性フェライト成分中に水酸化物、酸化物、硫化物又は脂肪酸化合物等の形態で含有させても良い。
【0052】
上記式(I)において、xが0.3モル%以下では抵抗が非常に高くなるため抵抗値の制御が困難となり、xが0.8モル%以上では磁気特性が低下するため磁気ブラシ現像法に用いた場合に良好な画質が得られ難い。yが0.01モル%以下ではキャリア抵抗及び磁気特性の両方を適正範囲内で制御することが難しく、yが0.5モル%以上では磁気特性が低下してしまう。zが0モル%の場合、すなわち(A)が含まれない場合には、特に微粒径トナーと組合せた場合、帯電能力が低下してしまい、耐久性が維持しにくくなる。
【0053】
zが0.69モル%以上の場合には、特に高湿下での帯電保持能が低下し、トナー飛散等が発生しやすくなってしまう。
【0054】
上記式(I)において、x,y及びzは、下記条件を満足することがより好ましい。
0.4<x<0.8,0.02<y<0.3,0<z<0.3,x+y+z≦1本発明においては、前記のフェライト成分に対して所定量のBi23を含有させ、キャリア抵抗をより広い範囲で所望の値に制御することが可能である。このBi23の含有量を前記のフェライト成分に対して0.01乃至3モル%の範囲内におさめることにより、キャリアの磁気特性や帯電能力を維持したままキャリア抵抗を調整することが可能となる。Bi23の含有量が0.01モル%未満ではキャリア抵抗の調整が難しく、3モル%を超えるとキャリアの磁気特性が変化し易い。
【0055】
本発明のさらなる特徴の一つとして、キャリアの重量平均粒径を50μm以下とした場合、前述したキャリア特性の制御効果がより顕著に現われ、二成分系現像剤としての性能がさらに向上することが挙げられる。
【0056】
その理由としては、明確ではないが、キャリア表面積が増加することによりキャリア同士の接触部分も増加し、キャリア粒子集合体としての抵抗のフェライト組成依存性が緩やかとなるため、高い精度での抵抗調整が可能となるためと思われる。
【0057】
本発明者等の検討によれば、より好ましいキャリアの重量平均粒径は10〜45μmであり、さらに好ましくは15〜40μmである。キャリアの重量平均粒径が50μmを超えると物質組成からの抵抗調整がやや困難となり、耐久試験を行なった場合、帯電量が若干低下する傾向が見られる。キャリアの重量平均粒径が小さくなりすぎると磁気ロールからのキャリアの飛び散りが目立ち、画像上に白ヌケの跡が発生しやすくなる。
【0058】
本発明のさらなる特徴の一つとして、キャリア粒子表面を樹脂被覆層で被覆することにより、磁気特性を維持したままでのキャリア抵抗のさらなる微調整およびトナースペントを防止できることによる耐久性の大巾な向上が挙げられる。
【0059】
この樹脂被覆層を形成するための被覆剤の塗布量としては、キャリア芯材粒子に対し0.05重量%〜10重量%、好ましくは0.1重量%〜5重量%が良い。0.05重量%未満では、キャリア芯材粒子の樹脂被覆層による被覆効果が十分でなく、10重量%を超える塗布量は無意味であり、また製造上からも過剰な樹脂が単独で存在する場合もあり、好ましくない。
【0060】
本発明キャリアの樹脂被覆層として用いられる樹脂は、以下のようなものを使用することができる。
【0061】
ビニル系化合物の重合体あるいは共重合体,ポリエステル樹脂,エポキシ樹脂,メラミン樹脂,シリコーン樹脂,フッ素あるいはハロゲンを含む樹脂を例示することができる。これらは単独でもしくは2種以上の組合せで使用することができる。
【0062】
キャリアへの被覆方法としては、乾式法あるいは湿式法の如き被覆層を形成できる方法であればいかなる方法でも良い。
【0063】
本発明において、キャリアは106〜1015Ω・cmの電気抵抗を有することが良い。キャリアの電気抵抗が1015Ω・cmを超える場合には、特に画像面積比率の高いオリジナル原稿等を連続複写した場合、補給トナーの帯電の立ち上がりが低下し、カブリやすくなってしまう。一方、106より小さい場合、特に高湿下での帯電量低下が大きく、トナー飛散等が発生してしまう。
【0064】
キャリアの磁気特性は現像スリーブに内蔵されたマグネットローラーによって影響され、二成分系現像剤の現像特性及び搬送性に大きく影響を及ぼすものである。
【0065】
本発明においては、マグネットローラーを内蔵した現像スリーブ上で、マグネットローラーを固定して現像スリーブを単体で回転し、磁性粒子からなるキャリアと絶縁性カラートナーを有する二成分系現像剤を現像担持体である現像スリーブ上で循環搬送し、該二成分系現像剤にて静電潜像保持体表面に保持された静電潜像を現像するに際して、▲1▼該マグネットローラーが反発極を有する極構成とし、▲2▼現像領域における磁束密度を500〜1200ガウスとし、▲3▼キャリアの飽和磁化が20〜70Am2/kgのとき、カラー複写において画像の均一性や階調再現性にすぐれ好適である。
【0066】
キャリアの飽和磁化が、70Am2/kg(3000エルステッドの印加磁場に対し)を超える場合であると、現像時に感光体上の静電潜像に対向した現像スリーブ上のキャリアとトナーにより構成されるブラシ状の穂立ちが固く締まった状態となり、階調性や中間調の再現が低下し、20Am2/kg未満であると、トナー及びキャリアを現像スリーブ上に良好に保持することが困難になり、キャリア付着やトナー飛散が生じ易くなる。
【0067】
本発明のキャリアをトナーと混合して磁性ブラシを形成する二成分系現像剤として使用する場合、トナーとしては結着樹脂中に着色剤を分散させた、通常電子写真法で使用されているいかなるトナーを使用することもでき、特に制限されないが、本発明者等の検討によれば、特に重量平均粒径1〜9μmより好ましくは、重量平均粒径2〜8μmのトナーを使用した場合に、その効果が多大であることが判明した。
【0068】
一般に、トナー粒径を微小化していくほど得られる電子写真画像は高精細化していくものの、トナーの帯電速とは遅くなり、かつ全トナー粒子を均一に帯電させることが困難となるため画像濃度の低下やカブリの悪化を招く。
【0069】
しかしながら、本発明のキャリアにおいては、フェライト成分組成の調整によりキャリア抵抗を適正値に規制することにより帯電速度の向上及び高い帯電能力によるトナー粒子個々の均一な帯電が可能であり、微小化されたトナーと組み合せた場合、画像濃度やカブリのレベルを維持したまま非常に高画質な画像を得ることが可能となる。
【0070】
本発明に係るキャリアとトナーと混合して二成分系現像剤を調整する場合、その混合比率は現像剤中のトナー濃度として1.0重量%〜15重量%、好ましくは3重量%〜12重量%にすると良好な結果が得られる。トナー濃度が1.0重量%未満では画像濃度が低くなり、15重量%を超える場合ではカブリや機内飛散を増加せしめ、現像剤の耐用寿命を短める。
【0071】
以下二成分系現像剤に用いられるトナーの好ましい形態について説明する。
【0072】
本発明に用いられるトナーは、前述の如く、重量平均粒径1〜9μmを有していることが好ましく、より好ましくは、2〜8μmを有しているものが画像の高精細化の点で良い。
【0073】
このトナーの重量平滑性が1μm未満の場合には、キャリアとの混合性が低下し、トナー飛散、カブリ等の欠陥を生じ、9μmを超える場合には、微小ドット潜像の再現性の低下、あるいは転写時の飛び散り等が生じ高画質化の妨げとなる。
【0074】
さらにトナーは、結着樹脂がポリエステル樹脂を主成分として有し、かつトナーは、1〜20KOHmg/gの酸価を有することが好ましい。
【0075】
すなわち、上記の1〜20KOHmg/gの酸価を有するトナーを使用することで、特に上記の特定の磁性フェライト成分を有するキャリアとの帯電安定性が向上し、迅速帯電が可能となり、画像比率の高いオリジナルを使用した場合でも、長期にわたって、カブリ、トナー飛散のない二成分系現像剤が達成される。
【0076】
ここで、酸価が1KOHmg/gより小さい場合は、帯電の立ち上がりが低下し、結果としてカブリが悪化しやすく、また、酸価が20KOHmg/gより大きいと、高湿下の帯電性が低下し結果としてカブリ、トナー飛散が生じてしまう。
【0077】
本発明に用いるトナーにおいては、トナーの酸価を1〜20KOHmg/gにコントロールし、かつトナーの低温定着性及び耐久性を向上させるために、結着樹脂の酸成分として三価以上の多価カルボン酸を0.1〜20mol%より好ましくは、0.1〜10mol%含有することが好ましい。さらに、好ましくは、前記ポリエステル樹脂を有するバインダー樹脂を含むトナーのガラス転移温度(Tg)が45〜70℃の範囲にあり、105ポイズの見掛け粘度を示す温度(Tm)が8〜120℃の範囲にあることが好ましい。
【0078】
特に好ましくは、下記式(II)
【0079】
【化1】
Figure 0003754723
(式中Rはエチレンまたはプロピレン基であり、x,yはそれぞれ1以上の整数であり、かつx+yの平均値は2〜10である。)
で示されるビスフェノール誘導体もしくは置換体の如きエーテル化ビスフェノール類をジオール成分とし、2価以上のカルボン酸またはその酸無水物またはその低級アルキルエステルとからなるカルボン酸成分(例えばフマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸など)とを共縮重合したポリエステル樹脂がシャープな溶融特性を有するのでより好ましい。
【0080】
本発明のトナーに使用する結着樹脂としては、さらに各種の材料樹脂を前述のポリエステル樹脂と組合せて使用しても良い。
【0081】
例えば、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリル共重合体等のスチレン系共重合体、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体のようなエチレン系共重合体、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリルフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、マレイン酸系樹脂があげられる。いずれの樹脂もその製造方法等は特に制約されるものではない。
【0082】
本発明に用いられるトナーは、少なくとも結着樹脂及び着色剤を有するトナー粒子及び無機微粉体を含む外添剤によって構成されていることが好ましい。トナーの外添剤として用いる無機微粉体としては、例えばアルミナ、酸化チタン及びシリカが挙げられるが、この中でも特にアルミナ又は酸化チタン微粒子がトナーの帯電をより安定化するため好ましい。
【0083】
さらに、上記無機微粉体は疎水化処理されていることが、トナーの帯電量の温度や湿度の如き環境依存性を少なくするため及びトナー表面からの遊離を防止するために良い。この疎水化処理剤としては、例えばシランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤の如きカップリング剤、シリコーンオイル、フッ素系オイル、各種変性オイルの如きオイルが挙げられる。上記の疎水化処理剤の中でも特にカップリング剤が、トナーの帯電の安定化、流動性付与の点で好ましい。
【0084】
よって、本発明に用いる外添剤としては、特に好ましくは、カップリング剤を加水分解しながら表面処理を行ったアルミナまたは酸化チタン微粒子が、帯電の安定化,流動性の付与の点で極めて有効である。
【0085】
上記の疎水化処理された無機微粉体は、好ましくは20乃至80%、より好ましくは、40乃至80%の疎水化度を有することが良い。
【0086】
無機微粉体の疎水化度が20%より小さいと、高湿下での長期放置による帯電量低下が大きく、ハード側での帯電促進の機構が必要となり、装置の複雑化となり、疎水化度が80%を超えると無機微粉体自身の帯電コントロールが難しくなり、結果として低湿下でトナーがチャージアップしやすくなる。
【0087】
上記疎水化処理された無機微粉体はトナー上に分散された状態で0.005μm乃至0.2μmの個数平均粒径を有することが、トナーの流動性及び耐久時におけるトナー粒子表面からの無機微粉体遊離防止の点で好ましい。
【0088】
この個数平均粒径が0.005μm未満の場合には、トナー粒子表面に無機微粉体が埋め込まれ易くなり、トナー劣化が生じて耐久性が低下し易く、0.2μmを超える場合には、トナーの流動性が充分に得られ難く、トナーの帯電が不均一になり易く、結果としてトナー飛散やカブリが生じ易くなる。
【0089】
上記の疎水化処理された無機微粉体は、400nmの光長における光透過率が40%以上であることが好ましい。
【0090】
すなわち、本発明に使用される無機微粉体は、一次粒子径が小さいものであっても、実際トナー中に含有させた場合、必ずしも一次粒子の状態で分散しているわけでなく、二次粒子で存在している場合もありうる。したがって、いくら一次粒子径が小さくても、二次粒子としての挙動する実効径が大きくては、本発明の効果は低減してしまう。しかるに、可視領域の下限波長である400nmにおける光透過率が高いものほど、二次粒子径が小さく、流動性付与能,カラートナーの場合におけるOHPの投影像の鮮明さの点で良好な結果が期待できる。400nmを選択した理由は紫外と可視の境界領域であり、光波長の1/2以下の粒径のものは透過するといわれていることからも、それ以上の波長の透過率は当然大きくなり、あまり意味のないものである。
【0091】
本発明に使用されるトナーに含有される着色剤としては、公知の染顔料、例えばフタロシアニンブルー、インダスレンブルー、ピーコックブルー、パーマネントレッド、レーキレッド、ローダミンレーキ、ハンザイエロー、パーマネントイエロー、ベンジジンイエローを使用することができる。その含有量としては、OHP用フィルムの透過性に対し敏感に反映するよう、結着樹脂100重量部に対して好ましくは、12重量部以下、より好ましくは0.5〜9重量部が良い。
【0092】
本発明に用いるトナーには必要に応じてトナーの特性を損ねない範囲で添加剤を混合しても良いが、そのような添加剤としては、例えばテフロン、ステアリン酸亜鉛、ポリフッ化ビニリデンの如き滑剤、あるいは定着助剤(例えば低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレンなど)、有機樹脂粒子等があげられる。
【0093】
本発明に用いるトナーの製造にあたっては、熱ロール、ニーダー、エクストルーダーの如き熱混練機によって構成材料を良く混練した後、機械的な粉砕,分級によって得る方法、結着樹脂溶液中に着色剤の如きトナー原料を分散した後、噴霧乾燥することにより得る方法、又は、結着樹脂を構成し得る重合性単量体に所定材料を混合した後、この乳化懸濁液を重合させることによりトナーを得る重合トナー製造方法が応用できる。
【0094】
次に上記二成分系現像剤を用いた本発明の画像形成方法について説明する。
【0095】
本発明の画像形成方法は、トナー及びキャリアを有する二成分系現像剤を現像剤担持体上で循環搬送し、潜像保持体とそれに対向する現像担持体の現像領域で潜像保持体に保持されている潜像を該現像剤担持体上の二成分系現像剤のトナーで現像するものである。
【0096】
キャリアの磁気特性は現像スリーブに内蔵されたマグネットローラーによって影響され、現像剤の現像特性及び搬送性に大きく影響を及ぼすものである。
【0097】
本発明の画像形成方法においては、現像スリーブ(現像剤担持体)とこれに内蔵されたマグネットローラーのうち、例えばマグネットローラーを固定して現像スリーブを単体で回転し、磁性粒子からなるキャリアと絶縁性カラートナーからなる二成分系現像剤を現像スリーブ上で循環搬送し、該二成分系現像剤にて静電潜像保持体表面に保持された静電潜像を現像するものである。
【0098】
本発明の画像形成方法においては、前述の通り▲1▼該マグネットローラーが反発極を有する5極構成とし、▲2▼現像領域における磁束密度が500〜1200ガウスであり、▲3▼キャリアの飽和磁化が20〜70Am2/kgである場合には、カラー複写において画像の均一性や階調再現性にすぐれ好適である。
【0099】
本発明の画像形成方法においては、現像領域で現像バイアスを印加して静電潜像を二成分系現像剤のトナーで現像することが好ましい。
【0100】
特に好ましい現像バイアスについて以下に詳述する。
【0101】
本発明の画像形成方法においては、現像領域で潜像保持体から現像担持体にトナーを向かわせる第1電圧と、現像剤担持体から潜像保持体にトナーを向かわせる第2電圧と、該第1電圧と該第2電圧の間の第3電圧を現像剤担持体に印加し、潜像保持体と現像剤担持体との間に現像電界を形成することにより潜像保持体に保持されている潜像を現像剤担持体上の二成分系現像剤のトナーで現像することが好ましい。
【0102】
さらに、前述の潜像保持体から現像剤担持体にトナーを向かわせる第1電圧と現像剤担持体から潜像保持体にトナーを向かわせる第2電圧とを現像剤担持体に印加する合計時間(T1)よりも、該第1電圧と該第2電圧との間の第3電圧を現像剤担持体に印加する時間(T2)を長くすることが、潜像保持体上でトナーを再配列させ潜像に忠実に再現する目的で特に好ましい。
【0103】
具体的には、現像領域で潜像保持体と現像剤担持体との間に、潜像保持体から現像剤担持体にトナーが向かう電界と現像剤担持体から潜像保持体にトナーが向かう電界を少なくとも1回形成した後に、潜像保持体の画像部ではトナーが現像剤担持体から潜像保持体に向かい、潜像保持体の非画像部では、トナーが潜像保持体から現像剤担持体に向かう電界を所定時間形成することにより潜像保持体に保持されている潜像を現像剤担持体に担持されている二成分系現像剤のトナーで現像するものであり、この潜像保持体から現像剤担持体にトナーが向かう電界と現像剤担持体から潜像保持体にトナーが向かう電界を形成する合計時間(T1)より潜像保持体の画像部ではトナーが現像剤担持体から潜像保持体に向かい、潜像保持体の非画像部では、トナーが潜像保持体から現像剤担持体に向かう電界を形成する時間(T2)の方を長くすることが好ましい。
【0104】
前述の特定の現像電界、すなわち交番電界を形成して現像する現像方法で、定期的に交番をオフする現像電界を用いて現像を行なった場合にキャリア付着がより発生しづらいものである。この理由は、いまだ明確ではないが以下のように考えられる。
【0105】
すなわち、従来の連続的な正弦波あるいは矩形波においては、高画質濃度を達成しようとして電界強度を強くすると、トナーとキャリアは一体となって潜像保持体と現像剤担持体の間を往復運動し、結果として潜像保持体にキャリアが強く摺擦し、キャリア付着が発生する。この傾向は微粉キャリアが多い程顕著である。
【0106】
しかるに、本発明の如き特定の交流電界を印加すると、1パルスではトナーあるいはキャリアが現像剤担持体と潜像保持体間を往復しきらない往復運動をするため、その後の潜像保持体の表面電位と現像バイアスの直流成分の電位差VcontがVcont<0の場合には、直流成分がキャリアを現像剤担持体から飛翔させるように働くが、キャリアの磁気特性とマグネットローラーの現像領域での磁束密度をコントロールすることによって、キャリア付着は防止でき、Vcont>0の場合には、磁界の力および直流成分がキャリアを現像剤担持体側に引きつけるように働き、キャリア付着は発生しない。
【0107】
本発明の画像形成方法に用いることが可能な静電潜像担持体の好ましい形態について図6を用いて説明する。
【0108】
静電潜像保持体1は導電性支持体41上に感光層43及び保護層44が設けられており、少なくとも該保護層44が静電潜像保持体1表面の摩擦抵抗を低下させる為に、フッ素原子含有樹脂粒子を含有しており、且つ該保護層44が機械研磨され、該保護層44の平均面粗さが、好ましくはJIS規格B061で定義される10点平均面粗さRz(以下、単に平均面粗さと略す)が0.01〜1.5μmであることが良い。
【0109】
この平均面粗さが上記範囲内であればクリーニングブレード50と静電潜像保持体1表面との摩擦も充分に小さく、また繰り返し使用によっても画像欠陥が表れてくる事はなく、さらに、ハイライト再現も非常に優れたものになる。
【0110】
静電潜像保持体1表面の摩擦係数を有効に下げ得るフッ素原子含有樹脂微粒子の含有率は、保護層44中においては保護層44の全重量を基準として5〜40重量%、好ましくは10〜40重量%が良い。保護層44の膜厚は、好ましくは0.05μmから80μmの範囲であり、より好ましくは0.1μmから6.0μmの範囲であることが良い。
【0111】
本発明において感光層43部分にもフッ素原子含有樹脂微粒子を含有する場合には、薄膜の保護層44に較べて感光層43は厚いため、該微粒子の含有量は制限される。具体的には、感光層43中の含有率は、感光層43の全重量を基準として好ましくは10重量%以下であり、より好ましくは7重量%以下である。
【0112】
感光層43中のフッ素原子含有樹脂微粒子量を制限しても、感光層43の総厚が厚い場合、特に、フォトキャリアーが主に感光層43の支持体側で発生する場合には、光散乱による感度劣化、画像均一性の低下が著しい。感光層43が薄すぎても、感光層43の電気容量の増加による感度低下や帯電能の低下を引き起こすことがある。さらに、感光層43中に該微粒子を含まない場合においても、感光層43を極端に厚くすることは好ましくない。その理由は、該微粒子を含む保護層44が感光層43の上に積層されるため、保護層44は光散乱層となり、特に、フォトやキャリアーが主に温厚層の支持体側で発生する場合、フォトキャリアーの発生部が光散乱層から遠いほど、つまり、感光層43が厚いほど散乱後の光の光路長が長くなり、光散乱の影響が大きくなってしまうからである。
【0113】
従って、感光層43の厚さは保護層44との合計で好ましくは10〜35μm、より好ましくは15〜30μmである。感光層43中に含有される該微粒子はできるだけ少量であることが好ましく、それで感光層43と保護層44との合計膜厚中の該微粒子の平均含有率は感光層43と保護層44の全重量を基準として17.5重量%以下であることが良い。
【0114】
本発明において、静電潜像保持体に用いられるフッ素原子含有樹脂微粒子はポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリジクロロジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、及びテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体から選ばれた1種または2種以上から構成されているものである。市販のフッ素原子含有樹脂微粒子をそのまま用いることが可能である。0.3万〜500万の分子量のものが使用可能であり、0.01〜10μm、好ましくは0.05〜2.0μmの粒径のものが使用可能である。
【0115】
本発明において、静電潜像保持体の感光層43は有機光導電性物質として、少なくとも電荷発生材料及び電荷輸送材料を含有する。
【0116】
電荷発生材料の例としては、フタロシアニン顔料、多環キノン顔料、トリスアゾ顔料、ジスアゾ顔料、アゾ顔料、ペリレン顔料、インジゴ顔料、キナクリドン顔料、アズレニウム塩染料、スクアリウム染料、シアニン染料、ピリリウム染料、チオピリリウム染料、キサンテン色素、キノンイミン色素、トリフェニルメタン色素、スチリル色素、セレン、セレン−テルル合金、アモルファスシリコン、硫化カドミウムが挙げられる。
【0117】
電荷輸送材料の例としては、ピレン化合物、N−アルキルカルバゾール化合物、ヒドラゾン化合物、N,N−ジアルキルアニリン化合物、ジフェニルアミン化合物、トリフェニルアミン化合物、トリフェニルメタン化合物、ピラゾリン化合物、スチリル化合物、スチルベン化合物、ポリニトロ化合物、ポリシアノ化合物、さらに、これらの化合物をポリマー上に固定したペンダントポリマーが挙げられる。
【0118】
前記のフッ素原子含有樹脂微粒子、電荷発生材料、電荷輸送材料を、それぞれ成膜性を有する結着樹脂中に分散、含有させて、各保護層、感光層を形成する場合が多い。その様な結着樹脂としては、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリイミド、フェノール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、アリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリアミド−イミド、ナイロン、ポリサルフォン、ポリアリルエーテル、ポリアセタール、ブチラール樹脂が挙げられる。
【0119】
次に、静電潜像保持体の層構成を述べる。導電性支持体41は、鉄、銅、金、銀、アルミニウム、亜鉛、チタン、鉛、ニッケル、スズ、アンチモン、インジウムの如き金属や合金、或いは前記金属の酸化物、カーボン、導電性ポリマーが使用可能である。形状は円筒形、円柱形の如きドラム形状と、ベルト形状、シート状のものとがある。前記導電性材料は、そのまま成形加工される場合、塗料として用いられる場合、蒸着される場合や、エッチング、プラズマ処理により加工される場合もある。塗料の場合には、支持体として前記の金属や合金は勿論、紙、プラスチックも用いられる。
【0120】
静電潜像保持体1における感光層43は、単層構成であっても、積層構成であってもよい。積層構成の場合には、少なくとも電荷発生層43aと電荷輸送層43bにより構成されるが、導電性支持体41側に電荷発生層43aが設けられる場合と、電荷輸送層43bが設けられる場合とでは帯電極性、使用するトナー極性が異なる。電荷発生層43aの膜厚としては、好ましくは0.001〜6μmが良く、より好ましくは0.01〜2μmである。電荷発生層43aに含有される電荷発生材料の含有率は、電荷発生層の全重量を基準として10〜100重量%であることが好ましく、より好ましくは50〜100重量%である。電荷輸送層の厚さは、前記感光層43の膜厚から前記電荷発生層43aの膜厚を差し引いたものである。電荷輸送層43b中に含まれる電荷輸送材の含有量は、電荷発生層の全重量を基準として20〜80重量%が好ましく、より好ましくは30〜70重量%である。
【0121】
導電性支持体41と感光層43との間に下引き層42を設けても良い。下引き層42は、界面での電荷注入制御や接着層として機能する。下引き層42は、主に結着樹脂から成るが、前記金属や合金、またはそれらの酸化物、塩類、界面活性剤などを含んでいてもよい。下引き層42を形成する結着樹脂としては、前記感光層43の結着樹脂として挙げたものを使用でき、下引き層の膜厚は、0.05〜7μmが好ましく、より好ましくは0.1〜2μmである。
【0122】
保護層は、前述した様に感光層の上に設けられ、少なくとも高濃度のフッ素原子を含有する樹脂微粒子と結着樹脂とから構成されることが好ましい。
【0123】
静電潜像保持体の製造方法として蒸着又は塗布の方法が用いられる。塗布による方法は、薄膜から厚膜まで広い範囲で、しかもさまざまな組成の膜が形成可能である。具体的には、バーコレーター、ナイフコーター、浸漬塗布、スプレー塗布、ビーム塗布、静電塗布、ロールコーター、アトライター、粉体塗布の如き塗布方法を用いて塗布される。
【0124】
保護層を塗布する際に用いられる塗料は、結着樹脂及び溶剤中に、前記フッ素原子含有樹脂微粒子を分散させることにより得られる。分散の方法としては、ボールミル、超音波、ペイトンシェーカー、レッドデビル、サンドミルの如き方法が用いられる。導電性微粉や顔料、電荷発生材料が顔料の場合も同様の分散方法を用いることができる。
【0125】
本発明の画像形成方法を実施し得る画像形成装置を図1を用いて説明する。
【0126】
図1において、画像形成装置は、静電潜像保持体としての感光ドラム1を有し、現像装置4にて、現像容器16の内部は、隔壁17によって現像室(第1室)R1と撹拌室(第2室)R2とに区画され、撹拌室R2の上方には隔壁17を隔ててトナー貯蔵室R3が形成されている。現像室R1及び撹拌室R2内には現像剤19が収容されており、トナー貯蔵室R3内には補給用トナー(非磁性トナー)18が収容されている。なお、トナー貯蔵室R3には補給口20が設けられ、補給口20を経て消費されたトナーに見合った量の補給用トナー18が撹拌室R2内に落下補給される。
【0127】
現像室R1内には搬送スクリュー13が設けられており、この搬送スクリュー13の回転駆動によって現像室R1内の現像剤19は、現像スリーブ11の長手方向に向けて搬送される。同様に、貯蔵室R2内には搬送スクリュー14が設けられ、搬送スクリュー14の回転によって、補給口20から撹拌室R2内に落下したトナーを現像スリーブ11の長手方向に沿って搬送する。
【0128】
現像剤19は、非磁性トナーと磁性キャリアとを有した二成分系現像剤である。
【0129】
現像容器16の感光ドラム1に近接する部位には開口部が設けられ、該開口部から現像スリーブ11が外部に突出し、現像スリーブ11と感光ドラム1との間には間隙が設けられている。非磁性材にて形成される現像スリーブ11には、バイアスを印加するためのバイアス印加手段30が配置されている。
【0130】
現像スリーブ11内に固定された磁界発生手段としてのマグネットローラ、即ち磁石12は、上述したように、現像磁極S2とその下流に位置する磁極N2と、現像剤19を搬送するための磁極N3、S1、N1とを有する。磁石12は、現像磁極S2が感光ドラム1に対向するように現像スリーブ11内に配置されている。現像磁極S2は、現像スリーブ11と感光ドラム1との間の現像部の近傍に磁界を形成し、該磁界によって磁気ブラシが形成される。
【0131】
現像スリーブ11の上方に配置され、現像スリーブ11上の現像剤19の層厚を規制する規制ブレード15は、アルミニウム、SUS316の如き非磁性材料で作製される非磁性ブレード15の端部と現像スリーブ11面との距離は300〜1000μm、好ましくは400〜900μmである。この距離が300μmより小さいと、磁性キャリアがこの間に詰まり現像剤層にムラを生じやすいと共に、良好な現像を行うのに必要な現像剤を塗布することが出来ず濃度の薄いムラの多い現像画像しか得られないという問題点がある。現像剤中に混在している不用粒子による不均一塗布(いわゆるブレードづまり)を防止するためには400μm以上が好ましい。1000μmより大きいと現像スリーブ11上へ塗布される現像剤量が増加し所定の現像剤層厚の規制が行えず、感光ドラム1への磁性キャリア粒子の付着が多くなると共に現像剤の循環,非磁性ブレード15による現像規制が弱まりトナーのトリボが不足しカブリやすくなるという問題点がある。
【0132】
角度θ1は−5°〜35°、好ましくは0°〜25°である。θ1<−5°の場合、現像剤に働く磁気力,鏡映力,凝集力等により形成される現像剤薄層がまばらでムラの多いものとなり、θ>35°の場合は非磁性ブレードでは現像剤塗布量が増加し、所定の現像剤量を得ることが難しい。
【0133】
この磁性キャリア粒子層は、スリーブ11が矢印方向に回転駆動されても磁気力,重力に基づく拘束力とスリーブ11の移動方向への搬送力との釣合によってスリーブ表面から離れるに従って動きが遅くなる。もちろん重力の影響により落下するものもある。
【0134】
従って磁極N1とN2の配設位置と磁性キャリア粒子の流動性及び磁気特性を適宜選択する事により磁性キャリア粒子層はスリーブに近い程磁極N1方向に搬送し移動層を形成する。この磁性キャリア粒子の移動により現像スリーブ11の回転に伴なって現像領域へ現像剤は搬送され現像に供される。21は、上流側トナー飛散抑制部であり、22は下流側トナー飛散抑制部であり、この上流側トナー飛散抑制部21及び下流側トナー飛散抑制部22によってトナー飛散の発生を抑えている。
【0135】
本発明の画像形成方法を実施し得る画像形成装置の他の例を図7を用いて説明する。
【0136】
図7に示す現像装置は、現像容器102の現像室145内に、矢印a方向に回転される静電潜像保持体101に対向して現像剤担持体としての非磁性現像スリーブ(現像剤担持体)121を備え、この現像スリーブ121内に磁界発生手段としての磁性ローラー122が不動に放置されており、磁性(マグネット)ローラー122は略頂部の位置から矢印bの回転方向に順にS1、N1、S2、N2、N3に着磁されている。
【0137】
現像室145内には、トナー140と磁性キャリア143とを混合した二成分系現像剤141が収容されている。
【0138】
この現像剤141は、現像室145の一端で上端開口の隔壁148の図示しない一方の開口を通って現像容器102の撹拌室142内に送られると、トナー室147から撹拌室142内に供給されたトナー140が補給され、撹拌室142内の第1現像剤撹拌・搬送手段150によって混合しながら、撹拌室142の他端に搬送される。撹拌室142の他端に搬送された現像剤141は、隔壁148の図示しない他方の開口を通って現像室145内に戻され、そこで現像室145内の第2現像剤撹拌・搬送手段151と、現像室145内上部で搬送手段151による搬送方向と逆方向に現像剤を搬送する第3現像剤撹拌・搬送手段により、撹拌・搬送されながら現像スリーブ121に供給される。
【0139】
現像スリーブ121に供給された現像剤141は、上記の磁石ローラ122の磁力の作用により磁気的に拘束され、現像スリーブ121上に担持され、現像スリーブ121の略頂部上に設けた現像剤規制部材ブレード123での規制によって現像スリーブ121上で現像剤141の薄層に形成されながら、現像スリーブ121の矢印b方向への回転に伴い静電潜像保持体101と対向した現像部110へと搬送され、そこで静電潜像保持体101上の静電潜像の現像に供される。現像に消費されなかった残余の二成分系現像剤141は、現像スリーブ121の回転により現像容器102内に回収される。103は上流側トナー飛散抑制部であり、104は下流側トナー飛散抑制部であり、この上流側トナー飛散抑制部103及び下流側トナー飛散抑制部104によってトナー飛散の発生を抑えている。
【0140】
現像容器102内では同極のN2、N3間での反発磁界により現像スリーブ121上に磁気的に拘束されている現像残りの残余の二成分系現像剤141を剥取るようになっている。上記の磁極N2により二成分系現像剤141が磁力線に沿って穂立ちしたときのトナー飛散を防止するために、現像容器102の下部には弾性シール部材131がその一端を現像剤141と接触するようにして、固定、設置されている。
【0141】
さらに、本発明者らは、カラー画像形成方法の画像濃度、ハイライト再現性、細線再現性について鋭意検討した結果、後述の特定の粒度分布を有したトナーを、前述の特定の現像電界を形成した現像方法を用いた画像形成方法に用いたときに、高画像濃度、ハイライト再現、細線再現に優れた高画質化が達成できることを見い出したのである。
【0142】
すなわち、本発明で用いられるトナーは、少なくともトナー粒子と外添剤を含有し、該トナーの重量平均粒径が3〜7μmであり、該トナーは5.04μm以下の粒径を有するトナーを40個数%より多く含有し、4μm以下の粒径を有するトナーを10〜70個数%含有し、8μm以上の粒径を有するトナーを2〜20体積%含有し、10.08μm以上の粒径を有するトナーを0〜6体積%含有しているものが好ましい。
【0143】
前述の粒度分布を有するトナーは、感光体上に形成された潜像に忠実に再現することが可能であり、網点及びデジタルのような微小なドット潜像の再現性にも優れ、特にハイライト部の階調性及び解像性に優れた画像を与える。更に、コピー又はプリントアウトを続けた場合でも高画質を保持し、且つ、高濃度の画像の場合でも、従来の非磁性トナーより少ないトナー消費量で良好な現像を行うことが可能であり、経済性及び、複写機又はプリンター本体の小型化にも利点を有するものである。
【0144】
しかしながら、本来、潜像再現性に優れたトナーであっても従来の連続的な正弦波あるいは矩形波においては、ハイライト潜像のように現像コントラストの小さい潜像にあっては電界強度が十分でないため、連続パルスでは、トナーが潜像保持体に到達しない割合が大きくなる。すなわち、上記の条件下のバイアスにおいては、トナーは現像剤担持体から潜像保持体に到達しないような振動運動をする。
【0145】
しかるに、本発明は現像領域で後述するような特定の現像電界を形成したことで、がさつきのない、良好なハイライト画像を得ることができる。すなわち、1パルスではトナーが現像剤担持体と静電潜像保持体間を往復しきらないよう振動運動するのは同じであるが、その後静電潜像保持体の表面電位と現像バイアスの直流成分の電位差VcontがVcont<0の場合には直流成分が現像剤担持体側にトナーを引きつけるように働き、トナーが現像剤担持体側に偏り、逆にVcont>0の場合においては直流成分が潜像電位に応じて、静電潜像保持体側にトナーを引きつけるように働き、潜像電位にみあった量のトナーが静電潜像保持体側に偏る。また、このような条件下で現像すると、潜像保持体上に到達したトナーはそこで振動を繰り返し、潜像部へ集中してくる。このためドット形状が均一化されてムラのない良好な画像を得ることができる。
【0146】
以上のことから、上記のような条件の現像バイアスで潜像を顕像化すると、ハイライト潜像の場合においても、ドットの欠落が発生しなくなる。さらに、潜像保持体上で振動を繰り返すことにより、潜像部にトナーが集中し、1つ1つのドットが忠実に再現され、二成分系現像剤においては磁気ブラシの接触状態によるムラのない均一なハーフトーン画像が出力できるようになる。
【0147】
以下に、本発明における測定方法について述べる。
【0148】
(1)キャリアの磁気特性の測定
装置は、BHU−60型磁化測定装置(理研測定製)を用いる。測定試料は約1.0g秤量し内径7mmφ、高さ10mmのセルにつめ、前記の装置にセットする。測定は印加磁場を徐々に加え最大3,000エルステッドまで変化させる。次いで印加磁場を減少せしめ、最終的に記録紙上に試料のヒステリシスカーブを得る。これより、飽和磁化,残留磁化,保磁力を求める。
【0149】
(2)キャリアの粒度分布の測定
装置は、マイクロトラック粒度分析計(日機装株式会社)のSRAタイプを使用し0.7〜125μmのレンジ設定で行なった。
【0150】
(3)キャリア粒子の電気抵抗の測定方法
キャリア粒子の抵抗値の測定は、図8に示すセルを用いて測定した。すなわち、セルAにキャリア粒子を充填し、該充填キャリア粒子に接するように電極81及び82を配し、該電極間に2kHzの正弦波交流電圧を印加し、その時流れる交流電流を測定することにより求めた。その測定条件は、充填キャリア粒子のセルとの接触面積S=2cm2、厚みd=3mm、上部電極の荷重15kg、印加電圧Vpp=100Vである。尚、83は絶縁体、84はアンペアメーター、85はボルトメーター、86はボルテージスタビライザー、87はキャリア粒子、88はガイドリングである。
【0151】
(4)トナーの粒度分布(重量平均粒径)の測定
トナーの平均粒径及び粒度分布はコールターカウンターTA−II型あるいはコールターマルチサイザー(コールター社製)を用いて測定可能であるが、本発明においてはコールターマルチサイザー(コールター社製)を用い、個数分布,体積分布を出力するインターフェイス(日科機製)及びPC9801パーソナルコンピューター(NEC製)を接続し、電解液は1級塩化ナトリウムを用いて1%NaCl水溶液を調製する。たとえば、ISOTON R−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)が使用できる。測定法としては前記電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩を0.1〜5ml加え、更に測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行ない前記コールターマルチサイザーによりアパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、2μm以上のトナーの体積,個数を測定して体積分布と個数分布とを算出した。それから、本発明に係わる所の体積分布から求めた体積基準の体積平均粒径(Dv:各チャンネルの中央値をチャンネルの代表値とする)及び重量平均粒径(D4)、個数分布から求めた個数基準の長さ平均粒径(D1)、及び体積分布から求めた体積基準の粒子比率(8.00μm以上及び3.17μm以下))、個数分布から求めた個数基準の粒子比率(5μm以下及び3.17μm以下)を求めた。
【0152】
(5)外添剤(無機微粉体)の個数平均粒径の測定
トナー粒子上の個数平均粒径は、走査電子顕微鏡を使用し、5万倍で観察し、視野中の100個の粒子をX線マイクロアナライザー(XMA)にて定性し、その粒子径を測定して、個数平均粒径を求める。
【0153】
(6)無機微粉体の疎水化度の測定
メタノール測定試験は、疎水化された表面を有する無機微粉体の疎水化度を確認する実験的試験である。
【0154】
処理された無機微粉体の疎水化度を評価するために本明細書において規定される“メタノール滴定試験”は次の如く行う。
【0155】
供試無機微粉体0.2gを容量250mlの三角フラスコ中の水50mlに添加する。メタノールをビューレットから無機微粉体の全量が湿潤されるまで滴定する。この際フラスコ内の溶液はマグネチックスターラーで常時撹拌する。その終点は無機微粉体の全量が液体中に懸濁されることによって観察され、疎水化度は終点に達した際のメタノールおよび水の液状混合物中のメタノールの百分率として表わされる。
【0156】
(7)光透過率の測定
Figure 0003754723
【0157】
上記配合を150ccガラス瓶に採取し、レッドデビル社製ペイントコンディショナーにて1時間分散を行う。
【0158】
▲2▼ 分散終了後、PETフィルムの表面とドクターブレードとの間隔を2mmに設定し、PETフィルムに前記分散液を塗布する。
【0159】
▲3▼ ▲2▼を120℃×10分間加熱し、焼き付けを行う。
【0160】
▲4▼ ▲3▼のシートを日本分光製U−BEST 50にて320〜800nmの範囲で光透過率を測定した。
【0161】
(8)比表面積の測定
島津粉比表面積測定装置(SS−100型)を用いて下記の手順により行う。1) 試料鉄粉充填のためパウダーテスターのオートスライダックの電源を入れ100Vに調整する。
2) パスダーテスターの切替えスイッチをタップにしてタイマーを1分間に調整する(50回±1回/1分間)。
3) プラスチック試料筒にフルイ板を入れその上にろ紙を一枚敷き、その上に試料を試料筒の1/3まで入れる。
4) 試料筒をパウダーテスターのタップ架台にセットし、スタートボタンを入れる(1分間タップ)。
5) さらにタップした試料筒に試料を試料筒の2/3まで入れる。
6) 上記4項と同一作業を行う。
7) 試料筒の上に補足筒(プラスチック)を差し込み、試料をその上から山盛りに入れる。
8) 上記4項、6項と同一作業を行う。
9) タップした試料筒をタップ架台から取り出し、補足筒を抜き取り余分の試料をヘラでカットする。
10) 比表面積の測定管のS目盛まで水を満たす。
11) 試料筒を測定管に接続する(試料充填後、すり合わせ面にグリスを塗る)。
12) 下部流出口のコックを開き、測定管の水面が0目盛りを通過する時に、ストップウォッチを始動させる(下部流出水はビーカーで受ける)。
13) 20目盛(単位はcc)まで水面が低下する時間を計る。
14) 試料筒を取り外し、試料の重量を測定する。
15) 比表面積の計算
【0162】
下記の計算式で比表面積を算出する。
【0163】
【数1】
Figure 0003754723
【0164】
SW:粉体の比表面積 cm2/g
e:試料充填層の空隙率
ρ:粉体の密度 g/cm3
η:流体の粘性係数 g/cm・sec
L:試料層の厚さ cm
Q:試料層透過流体量 cc
ΔP:試料層両端の圧力差 g/cm2
A:試料層の断面積 cm2
t:Qccの流体(空気)が試料層を透過するのに要する時間 sec
W:試料の重量 g
【0165】
(9)酸価測定法
サンプル2〜10gを200〜300mlの三角フラスコに秤量し、メタノール:トルエン=30:70の混合溶媒約50ml加えて樹脂を溶解する。溶解性がわるいようであれば少量のアセトンを加えてもよい。0.1%のブロムチモールブルーとフェノールレッドの混合指示薬を用い、あらかじめ標定されたN/10カ性カリ〜アルコール溶液で滴定し、アルコールカリ液の消費量からつぎの計算で酸価を求める。
【0166】
酸価=KOH(ml数)×N×56.1/試料重量
(ただしNはN/10KOHのファクター)
【0167】
(10)ガラス転移温度Tgの測定
本発明においては、示差熱分析測定装置(DSC測定装置)、DSC−7(パーキンエルマー社製)を用い測定する。
【0168】
測定試料は5〜20mg、好ましくは10mgを精密に秤量する。
【0169】
これをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを用い、測定温度範囲30℃〜200℃の間で、昇温速度10℃/minで常温常湿下で測定を行う。
【0170】
この昇温過程で、温度40〜100℃の範囲におけるメインピークの吸熱ピークが得られる。
【0171】
このときの吸熱ピークが出る前と出た後でのベースラインの中間点の線と示差熱曲線との交点を本発明におけるガラス転移温度Tgとする。
【0172】
(11)軟化点温度(Tm)
フローテスターCFT−500型(島津製作所製)を用いる。試料は60meshパス品を約1.0g秤量する。これを成形器を使用し、100kg/cm2の加重で1分間加圧する。
【0173】
この加圧サンプルを下記の条件で、常温常湿(温度約20〜30℃、湿度30〜70%RH)でフローテスター測定を行い、温度−見掛け粘度曲線を得る。得られたスムース曲線より、試料が50体積%流出した時の温度(=T1/2)を求め、これを軟化点温度(Tm)とする。
【0174】
RATE TEMP 6.0 D/M(℃1分)
SET TEMP 50.0 DEG(℃)
MAX TEMP 180.0 DEG
INTERVAL 3.0 DEG
PREHEAT 300.0 SEC(秒)
LOAD 20.0 KGF(kg)
DIE(DIA) 1.0 MM(mm)
DIE(LENG) 1.0 MM(mm)
PLUNGER 1.0 CM2(cm2
【0175】
【実施例】
以下の実施例において特に明示しないかぎり「部」及び「%」は「重量部」及び「重量%」を示す。尚、下記の製造例及び実施例において、キャリアNo.2は重量平均粒径が本発明の規定を超えている参考用キャリアであり、キャリアNo.6は樹脂被覆層が本発明の規定外である参考用キャリアであり、トナー1及び2は疎水化処理されていない無機微粉末を外添剤としている参考用トナーであり、またトナー5及び6はポリエステル樹脂の酸価が本発明の規定外である参考用トナーである。これらのキャリアもしくはトナーを用いた実施例1〜12、15、16、20及び24は、「参考例」として示した実施例である。
【0176】
(キャリア製造例1)
Fe23,MnO及び添加物としてNa2Oをそれぞれ表1に示すフェライト成分のモル分率になるようそれぞれ秤量し、ボールミルにより混合した。得られた混合粉を約900℃で仮焼した後、粉砕し、粉砕後の粉砕粒子の粒径を空気透過法を用いて測定した結果、平均粒径で約2.0μmであった。次いで、粉砕粒子に、バインダーとしてPVA(ポリビニルアルコール)の水溶液(PVA量としては0.5〜5.0重量%)を加え、スプレードライヤーにより造粒した。
【0177】
得られた造粒粉を1,100〜1,300℃で焼成し、粉砕した後、分級により所望の粒度のキャリア粒子を得た。
【0178】
得られたキャリア粒子表面を樹脂被覆層で被覆するため、被覆層を形成する硬化型シリコーン樹脂材をキシレン中に溶かして固形分10%溶液とし、この被覆溶液を塗布機(岡田精工社製:スピラコータ)によりキャリア粒子に塗布した後、乾燥により溶剤を除去し、加熱して被覆キャリア1を得た。
【0179】
得られたキャリア1の諸特性を表1に記載する。
【0180】
(キャリア製造例2〜14)
表1で示すフェライト成分の組成,モル分率及び樹脂被覆層でキャリア製造例1と同様にして表1に示す物性を有する被覆キャリア2〜12を調製した。
【0181】
尚、キャリア粒子表面を被覆する樹脂被覆層の樹脂材料がシリコーン樹脂の場合には溶媒は、キシレンを用い、ポリテトラフルオロエチレン/ポリビニリデンフルオライド(PTEF/PVDF=5/5)の場合には、溶媒はメチルエチルケトンを用いた。
【0182】
得られたキャリア2〜14の諸特性を表1に記載する。
【0183】
【表1】
Figure 0003754723
【0184】
(トナー製造例1)
プロポキシ化ビスフェノールとフマル酸縮合 100部
して得られたポリエステル樹脂
フタロシアニン顔料 4部
ジ−tert−ブチルサリチル酸のクロム錯体 4部
【0185】
上記原料をヘンシェルミキサーにより十分予備混合を行い、二軸押出式混練機により溶融混練し、冷却後ハンマーミルを用いて約1〜2mm程度に粗粉砕し、次いでエアージェット方式による微粉砕機で微粉砕した。さらに得られた微粉砕物を分級して、重量平均粒径がそれぞれ8.5μmの負摩擦帯電性シアン色の粉体を得た。上記着色粉体100部に対し、1.0部の酸化チタン微粉末をヘンシェルミキサーにより添加混合し、シアントナー1を得た。
【0186】
(トナー製造例2)
プロポキシ化ビスフェノールとフマル酸縮合 100部
して得られたポリエステル樹脂
フタロシアニン顔料 4部
ジ−tert−ブチルサリチル酸のクロム錯体 4部
【0187】
上記原料をヘンシェルミキサーにより十分予備混合を行い、二軸押出式混練機により溶融混練し、冷却後ハンマーミルを用いて約1〜2mm程度に粗粉砕し、次いでエアージェット方式による微粉砕機で微粉砕した。さらに得られた微粉砕物を分級して、重量平均粒径がそれぞれ6.2μmの負摩擦帯電性シアン色の粉体を得た。上記着色粉体100部に対し、1.3部の酸化チタン微粉末をヘンシェルミキサーにより添加混合し、シアントナー2を得た。
【0188】
実施例1
トナー製造例1で得られたシアントナー1とキャリア1とをトナー濃度8%となるよう混合して二成分系現像剤を作製し、図1に示す画像形成装置に図3に示す交番電界を印加した。カラー複写機CLC−500(キヤノン製)を用い画像面積比率5.0%のオリジナル原稿を用いて、温度26℃,湿度60%RH下5万枚の画出しをした結果を表2に示した。表2より上述の二成分系現像剤は、耐刷試験における帯電量,画質,カブリの変動も小さく、さらに、5万枚後の機内の汚れも問題無く、非常に良好であることがわかる。
【0189】
なお、以下の比較例及び実施例も同様に表2に示した。
【0190】
実施例2
トナー1及びキャリア2を用い、トナー濃度を5%とする以外は実施例1と同様の実験を行ったところ、5万枚後の画質がわずかに低下していたものの実用上全く問題無く、表2に示すように良好な結果が得られた。
【0191】
実施例2
トナー1及びキャリア3を用い、実施例1と同様の実験を行ったところ、5万枚後の画質がわずかに低下していたものの実用上全く問題無く、表2に示すように良好な結果が得られた。
【0192】
実施例3
トナー2及びキャリア4を用い、トナー濃度を6%とする以外は実施例1と同様の実験を行ったところ、初期から5万枚後まで非常に高精細な画像が高い画像濃度で得られた。カブリ,機内の汚れも全く問題無かった。
【0193】
実施例5及び6
トナー1にキャリア4及び5をそれぞれ組合わせて用い実施例1と同様の実験を行ったところ、表2に示すように良好な結果が得られた。
【0194】
実施例7及び9
トナー2にキャリア5〜7をそれぞれ組合わせて用い実施例4と同様の実験を行ったところ、表2に示すように良好な結果が得られた。
【0195】
比較例1
トナー1及びキャリア8を用いて、実施例1と同様の実験を行ったところ、初期から5万枚後を通して画質が若干低いレベルであった。これは、磁気特性が適正でなく、磁気ブラシの形及び密度が好ましいものでないためと思われる。帯電量及びカブリも初期は問題無いものの、5万枚後は帯電量が低下しており、カブリの悪化及びトナーによる機内の汚れが認められた。これは、用いたキャリア芯材の抵抗及び帯電量が適正ではないため、初期特性は被覆材により改良されているものの、耐久により被覆層が劣化するにつれキャリアの抵抗及び帯電量が低下したためと思われる。
【0196】
比較例2〜7
トナー1にキャリア9〜14をそれぞれ組合わせて用いて、実施例1と同様の実験を行ったところ、いずれも初期特性は問題無かったが、耐久枚数と共に帯電量が低下し、カブリが悪化した。また、機内の汚れも見られた。いずれのキャリアもキャリア芯材の持つ抵抗,帯電量及び磁気特性のバランスが悪く、被覆材の劣化と共にキャリアとしての特性が低下していったためと思われる。
【0197】
【表2】
Figure 0003754723
【0198】
実施例11
実施例1で用いたトナー1とキャリア1とを組合わせた二成分系現像剤を用い、図1に示す画像形成装置を用いて現像スリーブが現像主極960ガウスを持つ5極構成のマグネットローラーを内蔵し、図4の交番電界を重畳して、現像条件をVcont=250V,Vback=−130Vに設定して、温度/湿度が26℃/60%RH下で画出し試験を行った。
【0199】
その結果、実施例1に比べ、さらに高精細な画像が得られ、耐久性も全く問題なかった。
【0200】
実施例12
実施例11で用いた交番電界に代えて図5に示す交番電界を用いることを除いては、実施例11と同様にして画出し試験を行った。その結果、実施例11に比べて、写真の再現性が若干低下したものの実施例11よりも良好な結果が得られた。
【0201】
(ポリエステル樹脂合成例1)
ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2ビス 45mol%
(4−ヒドロキシフェニル)プロパン
ポリオキシエチレン(2)−2,2−ビス 6mol%
(4−ヒドロキシフェニル)プロパン
フマール酸 47mol%
無水トリメリット酸 2mol%
【0202】
上記原料にジブチル錫オキサイドを触媒として加え、窒素気流下にて200℃にて縮重合反応を行い、ASTM E28−51Tに準ずる軟化点92℃に達したときに反応を終了させ、ポリエステル樹脂(I)を得た。
【0203】
該樹脂の酸価は9.5KOHmg/g,ガラス転移温度は57.2℃であった。
【0204】
(ポリエステル樹脂合成例2)
ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2ビス 45mol%
(4−ヒドロキシフェニル)プロパン
ポリオキシエチレン(2)−2,2−ビス 4mol%
(4−ヒドロキシフェニル)プロパン
フマール酸 40mol%
テレフタル酸 10mol%
無水トリメリット酸 1mol%
【0205】
上記原料にジブチル錫オキサイドを触媒として加え、窒素気流下にて200℃にて縮重合反応を行い、ASTM E28−51Tに準ずる軟化点91℃に達したときに反応を終了させ、ポリエステル樹脂(II)を得た。
【0206】
該樹脂の酸価は22.0KOHmg/g,ガラス転移温度は55.3℃であった。
【0207】
(ポリエステル樹脂合成例3)
ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2ビス 45mol%
(4−ヒドロキシフェニル)プロパン
ポリオキシエチレン(2)−2,2−ビス 10mol%
(4−ヒドロキシフェニル)プロパン
フマール酸 43mol%
1,2,5−ヘキサントリカルボン酸 2mol%
【0208】
上記原料にジブチル錫オキサイドを触媒として加え、窒素気流下にて200℃にて縮重合反応を行い、ASTM E28−51Tに準ずる軟化点95℃に達したときに反応を終了させ、ポリエステル樹脂(III)を得た。
【0209】
該樹脂の酸価は0.8KOHmg/g,ガラス転移温度は58.1℃であった。
【0210】
(ポリエステル樹脂合成例4)
ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2ビス 49mol%
(4−ヒドロキシフェニル)プロパン
テレフタル酸 49mol%
2,5,7−ナフタレントリカルボン酸 2mol%
【0211】
上記原料にジブチル錫オキサイドを触媒として加え、窒素気流下にて200℃にて縮重合反応を行い、ASTM E28−51Tに準ずる軟化点92℃に達したときに反応を終了させ、ポリエステル樹脂(IV)を得た。
【0212】
該樹脂の酸価は17.1KOHmg/g,ガラス転移温度は57℃であった。
【0213】
(ポリエステル樹脂合成例5)
ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2ビス 53mol%
(4−ヒドロキシフェニル)プロパン
フマール酸 45mol%
1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸 2mol%
【0214】
上記原料にジブチル錫オキサイドを触媒として加え、窒素気流下にて200℃にて縮重合反応を行い、ASTM E28−51Tに準ずる軟化点95℃に達したときに反応を終了させ、ポリエステル樹脂(V)を得た。
【0215】
該樹脂の酸価は2.2KOHmg/g,ガラス転移温度は59℃であった。
【0216】
(ポリエステル樹脂合成例6)
ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2ビス 50mol%
(4−ヒドロキシフェニル)プロパン
テレフタル酸 49.5mol%
無水トリメリット酸 0.5mol%
【0217】
上記原料にジブチル錫オキサイドを触媒として加え、窒素気流下にて200℃にて縮重合反応を行い、ASTM E28−51Tに準ずる軟化点103℃に達したときに反応を終了させ、ポリエステル樹脂(VI)を得た。
【0218】
該樹脂の酸価は8.7KOHmg/g,ガラス転移温度は61℃であった。
【0219】
(トナーの製造例3)
プロポキシ化ビスフェノールとフマル酸およびトリメリット酸 100部
トリメリット酸を縮合して得られたポリエステル樹脂(I)
フタロシアニン顔料 4部
ジ−tert−ブチルサリチル酸の金属錯体 4部
【0220】
上記をヘンシェルミキサーにより十分予備混合を行い、二軸押出式混練機により溶融混練し、冷却後ハンマーミルを用いて約1〜2mm程度に粗粉砕し、次いでエアージェット方式による微粉砕機で微粉砕した。さらに得られた微粉砕物を分級して、重量平均粒径が5.8μmである青色の粉体を得た。
【0221】
上記着色粉体100部と水/ブタノール混合媒体中でiso−C49−Si−(OCH33を20部で処理したアルミナ微粉末平均粒径0.02μm,疎水化度65%1.5部とをヘンシェルミキサーで混合しシアントナー3を得た。
【0222】
このトナーの酸価は、9.5KOHmg/g、Tmは90℃及びTgは55℃であった。
【0223】
(トナーの製造例4)
トナーの製造例3において、アルミナのかわりに、水媒体中で、n−C49−Si−(OCH33を25部で処理した酸化チタン微粉末(平均粒径0.03μm,疎水化度60%)を使用する以外はトナーの製造例3と同様にしてシアントナー4を得た。
【0224】
このトナーの酸価,Tm及びTgはトナー3と同じであった。
【0225】
(トナーの製造例5〜9)
トナーの製造例3において用いたポリエステル樹脂(I)に代えて、ポリエステル樹脂(II)〜(VI)を使用する以外は同様にして表3に示すトナー5〜9を得た。
【0226】
上記で得られたトナー3〜9の構成及び物性を表3に示す。
【0227】
【表3】
Figure 0003754723
【0228】
実施例13及び14
前述のシアントナー3及び4とキャリア1とをトナー濃度7%でそれぞれ混合して二成分系現像剤を作製し、カラー複写機CLC700(キヤノン製)を用い、静電潜像保持体の保護層中のフッ素原子含有樹脂粒子30重量%を含有する静電潜像保持体(I)、および交番電界として図2に示す非連続の電界を印加し、現像コントラスト300Vで、画像面積比率25%のオリジナル原稿を用いて、30℃/80%RH下,20℃/10%RH下で1万枚の画出しをした結果を表4に示した。
【0229】
実施例15〜18
実施例13及び14で用いたシアントナー3及び4に代えて、シアントナー5〜8を使用する以外は、実施例13及び14と同様にして画出しを行った結果を表4に示した。酸価が高いトナー5及び酸価が低いトナー6を用いた実施例15及び16は、実施例13及び14に比べてトナー飛散が若干悪化したが、実用上問題のないレベルであった。
【0230】
実施例19
実施例13及び14で用いたトナー3及び4に代えてトナー9を使用する以外は実施例13及び14と同様に行ったところ、画像光沢が低下し、画像濃度が若干低くなったものの表4に示す通り良好な結果が得られた。
【0231】
実施例20〜23
実施例13及び14で用いたキャリア1に代えてキャリア2,3,4及び5を使用する以外は、実施例13及び14と同様に画出しを行ったところ、表4に示す通り良好な結果が得られた。
【0232】
実施例24
実施例13及び14で用いたキャリア1に代えて、キャリア6を使用する以外は、実施例13及び14と同様に画出しを行ったところ、コート材がシリコーン系レジンでないため、若干耐久性が低下したが、表4に示す通り良好な結果が得られた。
【0233】
実施例25
実施例13及び14で用いたキャリア1に代えて、キャリア7を使用する以外は、実施例13及び14と同様に画出しを行ったところ、表4に示す通り良好な結果が得られた。
【0234】
実施例26〜28
実施例13及び14で用いた静電潜像保持体(I)に代えて静電潜像保持体の保護層中のフッ素原子含有樹脂粒子の含有量をそれぞれ20%,6%及び0%に変更した静電潜像保持体(II)〜(IV)を使用する以外は実施例13及び14と同様に行った結果を表4に示す。フッ素原子含有樹脂粒子含有量が減るに従って、ベタ均一性が若干悪化するが、実用上まったく問題はなかった。
【0235】
実施例29及び30
実施例13及び14で用いた交番電界に代えて、図5及び図4に示す交番電界をそれぞれ使用する以外は実施例13及び14と同様に行ったところ、表4に示す通り良好な結果が得られた。
【0236】
実施例31
実施例13及び14で用いた交番電界に代えて、交番電界として、図3に示す連続電界を使用する以外は、実施例13及び14と同様に行ったところ、画像濃度が若干低下し、ベタ均一性も若干悪化したが、表4に示す通り実用上問題ないレベルであった。
【0237】
【表4】
Figure 0003754723
【0238】
上記実施例において、帯電量,画質,カブリ及びトナー飛散は、以下の評価方法に基づいて評価した。
【0239】
[帯電量]
測定法を図面を用いて詳述する。
【0240】
図9はトナーのトリボ電荷量を測定する装置の説明図である。先ず、底に500メッシュのスクリーン93のある金属製の測定容器92に摩擦帯電量を測定しようとするトナーとキャリアの混合物(現像剤)約0.5〜0.9gを入れ金属製のフタ94をする。このときの測定容器92全体の重量を秤りW1(kg)とする。次に、吸引機91(測定容器92と接する部分は少なくとも絶縁体)において、吸引口97から吸引し風量調節弁96を調整して真空計95の圧力を250mmAqとする。この状態で充分、好ましくは約2分間吸引を行いトナーを吸引除去する。このときの電位計99の電位をV(ボルト)とする。ここで98はコンデンサーであり容量をC(mF)とする。また、吸引後の測定容器全体の重量を秤りW2(g)とする。このトナーの摩擦帯電量(mC/kg)は下式の如く計算される。
【0241】
トナーの摩擦帯電量(mC/kg)=(C×V)/(W1−W2
【0242】
[画質]
CLC SK紙(キヤノン販売)を3日間放置した後、画出しを行い、マクベス濃度0.6のハーフトーンの均一性(特に転写ムラ)を評価した。
【0243】
◎ :非常に良好(全く問題無し)
○ :良好
○△:多少レベル悪いが問題無し
△ :若干問題有り
【0244】
[カブリ]
カブリの評価は、東京電色社製のREFLECTOMETER MODEL
TC−6DSを使用して測定し、シアントナー画像ではamberフィルターを使用し、下記式より算出した。数値が小さい程、カブリが少ない。
【0245】
カブリ(反射率)(%)=標準紙の反射率(%)−サンプルの非画像部の反射率(%)
【0246】
[トナー飛散]
トナー飛散は、現像容器の上流側トナー飛散抑制部及び下流側トナー飛散抑制部の外表面のトナーによる汚れ、及び現像容器以外のトナーによる汚れを観察し下記評価基準に基づいて評価した。
【0247】
◎ 全く認められない。
【0248】
○ 現像容器の上流側トナー飛散抑制部外表面に汚れが若干認められるが、下流側トナー飛散抑制部外表面には汚れが認められない。
【0249】
△ 現像容器の上流側トナー飛散抑制部の外表面及び下流側トナー飛散防止部の外表面には汚れが認められるが、現像容器以外には汚れが認められない。
【0250】
× 現像容器以外まで汚れが認められる。
【0251】
【発明の効果】
本発明においては、キャリアが特定のフェライト成分で形成された磁性キャリア粒子からなることにより、抵抗,飽和磁化及び帯電量の特性バランスを適正範囲に保持し得るため、画質,帯電量などの初期の性能を耐久により損なうことなく長期に渡って保つことが可能であり、特に、粒径の小さい微小粒径のトナーと組み合せた場合、初期から耐久後を通して、カブリが少なく高画質濃度かつ非常に高精細な画像が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の画像形成方法に用いられる画像形成装置の概略図を示す。
【図2】実施例13〜28で用いる交番電界を示す図である。
【図3】実施例1〜10及び31で用いる交番電界を示す図である。
【図4】実施例11及び30で用いる交番電界を示す図である。
【図5】実施例12及び29で用いる交番電界を示す図である。
【図6】本発明の画像形成方法に用いることが可能な静電潜像保持体の好ましい形態を示す図である。
【図7】本発明の画像形成方法に用いられる画像形成装置の他の例を示す図である。
【図8】キャリア粒子の電気抵抗を測定する装置の説明図である。
【図9】トナーの摩擦帯電量を測定する装置の説明図である。

Claims (7)

  1. トナー及びキャリアを有する二成分系現像剤において、
    該キャリアは、キャリア粒子及び該キャリア粒子表面を被覆する樹脂被覆層を有しており、
    該樹脂被覆層は、シリコーン樹脂を有しており、
    該キャリアは、重量平均粒径が10〜45μmであり、飽和磁化が20〜70Am2/kgであり、
    該キャリアは下記式(I)
    (Fe23x(MnO)y(A)z 式(I)
    [式中、Aは、Na2O,K2O,CaO,SrO又はそれらの混合物を示し、x,y及びzは、モル分率を示し、かつ下記条件
    0.3<x<0.8,0.01<y<0.5,
    0<z<0.69,x+y+z≦1
    を満足する。]
    で示される磁性フェライト成分(モル分率で、ZnOを10%以上含有しているものを除く)を有し、
    該トナーは、着色剤及び結着樹脂を含有するトナー粒子と外添剤とを有する負帯電性トナーであり、且つ、酸価が1〜20KOHmg/gであり、ガラス転移温度(Tg)が45〜70℃であり、重量平均粒径が1〜9μmであり、
    該結着樹脂は、エーテル化ビスフェノール類と三価以上の多価カルボン酸を0.1〜20mol%(全酸成分基準)有する多価カルボン酸成分との共縮合によって得られたポリエステル樹脂を有しており、
    該外添剤は、個数平均粒径が0.005μm乃至0.2μmの疎水化処理された無機微粉体を有することを特徴とする二成分系現像剤。
  2. 該式(I)における、x,y及びzは下記条件
    0.3<x<0.8,0.01<y<0.5,x+y<1,z=1−x−y
    を満足することを特徴とする請求項1に記載の二成分系現像剤。
  3. 該式(I)におけるzが0.06≦z≦0.16であることを特徴とする請求項1又は2に記載の二成分系現像剤。
  4. 該キャリア芯材粒子は、Bi23を0.01乃至3モル%含有することを特徴とする請求項1又は3に記載の二成分系現像剤。
  5. 該トナーは、重量平均粒径2〜8μmを満たしていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の二成分系現像剤。
  6. トナー及びキャリアを有する二成分系現像剤を現像剤担持体で循環搬送し、現像領域で静電潜像担持体に保持されている静電潜像を該現像剤担持体に担持されている該二成分系現像剤のトナーで現像する画像形成方法において、
    該キャリアは、キャリア粒子及び該キャリア粒子表面を被覆する樹脂被覆層を有しており、
    該樹脂被覆層は、シリコーン樹脂を有しており、
    該キャリアは、重量平均粒径が10〜45μmであり、飽和磁化が20〜70Am2/kgであり、
    該キャリアは下記式(I)
    (Fe23x(MnO)y(A)z 式(I)
    [式中、Aは、Na2O,K2O,CaO,SrO又はそれらの混合物を示し、x,y及びzは、モル分率を示し、かつ下記条件
    0.3<x<0.8,0.01<y<0.5,
    0<z<0.69,x+y+z≦1
    を満足する。]
    で示される磁性フェライト成分(モル分率で、ZnOを10%以上含有しているものを除く)を有し、
    該トナーは、着色剤及び結着樹脂を含有するトナー粒子と外添剤とを有する負帯電性トナーであり、且つ、酸価が1〜20KOHmg/gであり、ガラス転移温度(Tg)が45〜70℃であり、重量平均粒径が1〜9μmであり、
    該結着樹脂は、エーテル化ビスフェノール類と三価以上の多価カルボン酸を0.1〜20mol%(全酸成分基準)有する多価カルボン酸成分との共縮合によって得られたポリエステル樹脂を有しており、
    該外添剤は、個数平均粒径が0.005μm乃至0.2μmの疎水化処理された無機微粉体を有することを特徴とする画像形成方法。
  7. 該二成分系現像剤は、請求項2乃至5から選択されるいずれかの二成分系現像剤であることを特徴とする請求項6に記載の画像形成方法。
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