JP3752905B2 - ハロゲン化銀写真感光材料の処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハロゲン化銀写真感光材料の処理方法に関し、更に詳しくはエマルジョン型導電性組成物を含有したハロゲン化銀写真感光材料を、実質的にホウ素化合物を含まない定着液で処理するハロゲン化銀写真感光材料の処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ハロゲン化銀写真感光材料(以下単に感光材料ともいう)は、一般に電気導電性の低いプラスチック材料からなる支持体と感光性ハロゲン化銀乳剤層より構成されるものであるため、一般に支持体の電気伝導性に起因して静電気を帯電しやすい性質を有している。
【0003】
感光材料への帯電は、感光材料の製造時、連続撮影等の使用時、未使用感光材料の保管中や感光材料を輸送中に感光材料同士がお互いに接触し、こすれ合うこと等により発生しうるものである。
【0004】
帯電により発生し感光材料に蓄積された静電電荷の影響は、感光材料の写真性能に大きな影響を与えるものである。例えば、電荷が放電した場合に発生する光により感光材料が感光してしまうことにより、いわゆるスタチックマークが発生したり、感光材料表面に微細な塵やゴミを付着しやすくなり、この状態で撮影、現像処理を行うことにより、ノイズの入った画像情報を残してしまう。この様な問題は単に感光材料の商品価値の喪失を招くのみでなく、特に医療用感光材料では誤診を招くという、人命にかかわる大きな危険性をはらむものである。
【0005】
又、上記の様な写真性能への影響のみならず、ハロゲン化銀乳剤層の塗布工程において、支持体ロールとの接触剥離により発生する静電気の影響で、塗布ムラを発生させるという問題も発生する。
【0006】
この様なハロゲン化銀写真感光材料の帯電防止を目的として、従来より、導電性組成物や界面活性剤を感光材料中に用いる技術が開示されている。例えば、特開昭49−91165号及び同49−121523号には、ポリマー主鎖中に解離基を有するイオン型ポリマーを用いた技術が開示され、特開平2−9689号、同2−182491号には、導電性ポリマーを用いたものが、更に、特開昭63−55541号、同63−148254号、同63−148255号、同63−148256号、特開平1−134191号には界面活性剤を用いたものが開示されている。しかしながら、これらの技術は、感光材料を構成する支持体、ハロゲン化銀乳剤層、及び非感光層の種類によって特異的に効果を示すものであって、特定条件の感光材料でのみはじめて帯電防止という課題を達成するにすぎないものであった。又、水を溶媒として導電性組成物を感材中に添加させる技術として、特開平8−134148号、同9−101593号において、スルホン酸基とカルボン酸基とを有する水溶性ポリマーが存在する水溶液中において、重合性官能基を有するモノマーを乳化重合する技術が開示されている。しかしながら、水溶性ポリマーと反応しないモノマーを乳化重合した組成物を塗布乾燥して得た導電性層の導電性は、湿度等の環境影響を受けやすくなり、保存時の劣化を促進させるといった感材の耐久性に新たな問題を生じている。
【0007】
又、昨今のハロゲン化銀写真感光材料では、製造時の高速化や現像処理の調迅速化に耐えうる充分な耐久性が要求されるが、この様な導電性組成物を添加したものでは、帯電性が改良された反面、膜剥がれ、スリ傷、ひび割れといった耐久性の低下する物性的な問題を発生しやすい傾向を有するという問題も抱えている。
【0008】
この様に感光材料の種類に限定されることなく、導電性組成物が添加され、かつ物性的な耐久性を有するハロゲン化銀写真感光材料がのぞまれている。
【0009】
一方、ハロゲン化銀写真感光材料は、露光後、現像、定着、水洗、乾燥という一連の現像処理工程を経て画像情報を形成するものである。このうち、定着工程では、硬膜剤として水溶性アルミニウム塩を含有した定着処理液を使用することにより、乾燥時間の短縮や現像処理機内の搬送性を良好にすることが知られている。
【0010】
水溶性アルミニウム塩を含有する定着液は、そのpH値を低く設定することにより、水酸化アルミニウムに代表される難溶性アルミニウム塩の生成を防ぐことができるが、pHが低いほど、液中に含有されるチオ硫酸塩の経時劣化を促進させ、その結果定着液の硫化を発生させてしまう。従って、この相反する問題を解決するために、従来の1液濃縮キットでは、そのpH値を4.6〜5.0の範囲とすることが望ましいものとされていた。しかしながら、この範囲内でも、硫化の発生を抑え、かつ難溶性アルミニウム塩の生成を完全に防止することはきわめて困難である。この対策として、定着液中にホウ素化合物を大量に使用することで、上記のpH値の範囲内での難溶性アルミニウム塩の生成を防ぎ濃縮液キットの保存安定性の向上を達成させたが、1992年2月にホウ素化合物が、環境上好ましくない化学物質として、その環境基準が制定された。その結果、感光材料の処理工程においてホウ素化合物を含有する定着液が水洗工程に持ち込まれることにより、ホウ素化合物を含有した水洗廃液が環境中に放出されてしまうことが新たな問題となっている。
【0011】
この様にホウ素化合物を含有せず、かつ、充分な保存安定性を有する定着処理剤の1液濃縮キット、固形処理剤が切望されているのである。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、充分な帯電防止性能を有し、しかも膜剥がれ、スリキズ、ひび割れといった問題のない、耐久性を充分に有する導電性組成物を含有したハロゲン化銀写真感光材料の処理方法を提供するものであり、更に、環境負荷の大きいホウ素化合物を実質的に含有しなくとも安定性に優れた定着液を用いた処理方法を提供するものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は以下の手段により達成される。
【0014】
1.支持体上に、官能基を有するポリマー微粒子と水溶性ポリマーとを混合後、50℃以上90℃以下の温度で加熱処理することにより製造された導電性組成物と親水性コロイドを含有する帯電防止層を少なくとも1層有し、該帯電防止層の上に親水性コロイド層を有するハロゲン化銀写真感光材料を、自動現像機を用いて、実質的にホウ素化合物を含有しない定着液で処理することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料の処理方法。
【0015】
2.支持体上に、官能基を有するポリマー微粒子と水溶性ポリマーとを混合後、50℃以上90℃以下の温度で加熱処理することにより製造された導電性組成物と親水性コロイドを含有する帯電防止層を少なくとも1層有し、該帯電防止層と支持体の間に少なくとも一層の下引き層を塗設してなり、該下引き層がスチレン−ジオレフィン系共重合体を含有する疎水性重合体を含有する下引層であり、該帯電防止層の上に親水性コロイド層を有するハロゲン化銀写真感光材料を、自動現像機を用いて、実質的にホウ素化合物を含有しない定着液で処理することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料の処理方法。
【0016】
3.支持体上に、官能基を有するポリマー微粒子と水溶性ポリマーとを混合後、50℃以上90℃以下の温度で加熱処理することにより製造された導電性組成物と親水性コロイドを含有する帯電防止層を少なくとも1層有し、該帯電防止層と支持体の間に少なくとも一層の下引き層を塗設してなり、該下引き層がポリエステルを溶解もしくは膨潤させる溶媒と親水性樹脂を含む組成物を塗設してなる下引層であり、該帯電防止層の上に親水性コロイド層を有するハロゲン化銀写真感光材料を、自動現像機を用いて、実質的にホウ素化合物を含有しない定着液で処理することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料の処理方法。
【0017】
4.支持体上に、官能基を有するポリマー微粒子と水溶性ポリマーとを混合後、50℃以上90℃以下の温度で加熱処理することにより製造され導電性組成物と親水性コロイドを含有する帯電防止層を少なくとも1層有し、該帯電防止層と支持体の間に少なくとも一層の下引き層を塗設してなり、該下引き層が塩化ビニリデン系共重合体を含有する下引層であり、該帯電防止層の上に親水性コロイド層を有するハロゲン化銀写真感光材料を、自動現像機を用いて、実質的にホウ素化合物を含有しない定着液で処理することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料の処理方法。
【0018】
5.支持体上に、官能基を有するポリマー微粒子と水溶性ポリマーとを混合後、50℃以上90℃以下の温度で加熱処理することにより製造された導電性組成物と親水性コロイドを含有する帯電防止層を少なくとも1層有し、該帯電防止層と支持体の間に少なくとも一層の下引き層を塗設してなり、該下引き層が活性メチレン基を有する重合体を含有する下引層であり、該帯電防止層の上に親水性コロイド層を有するハロゲン化銀写真感光材料を、自動現像機を用いて、実質的にホウ素化合物を含有しない定着液で処理することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料の処理方法。
【0019】
6.支持体上に、官能基を有するポリマー微粒子と水溶性ポリマーとを混合後、50℃以上90℃以下の温度で加熱処理することにより製造された導電性組成物と親水性コロイドを含有する帯電防止層を少なくとも1層有し、該帯電防止層と支持体の間に少なくとも一層の下引き層を塗設してなり、該下引き層が少なくとも2種のアクリル系重合体ラテックスを有し、そのうちの最も低いガラス転移点(Tg(L))を有する重合体ラテックスと最も高いガラス転移点(Tg(H))を有する重合体ラテックスのガラス転移点の差(Tg(H)−Tg(L))が10〜80℃である下引層であって、該帯電防止層の上に親水性コロイド層を有するハロゲン化銀写真感光材料を、自動現像機を用いて、実質的にホウ素化合物を含有しない定着液で処理することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料の処理方法。
【0020】
7.定着液が、下記一般式(1)で表される化合物、チオ硫酸塩、水溶性アルミニウム塩を含有し、実質的にホウ素化合物を含有しない1液濃縮定着液を希釈して得た定着液であることを特徴とする前記1〜6のいずれか1項に記載ハロゲン化銀写真感光材料の処理方法。
【0021】
【化2】
【0022】
(式中、R1、R2はそれぞれヒドロキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、アルコキシスルホニルアミノ基、メルカプト基、又はアルキルチオ基を表す。Xは5〜6員環を形成するに必要な非金属原子群を表す。)
8.定着液が、上記一般式(1)で表される化合物、チオ硫酸塩、水溶性アルミニウム塩を含有し、実質的にホウ素化合物を含有しない固形定着剤を水に溶解して得た定着液であることを特徴とする前記1〜6のいずれか1項に記載のハロゲン化銀写真感光材料の処理方法。
【0023】
9.定着液が、下記一般式(2)で表される化合物、チオ硫酸塩、水溶性アルミニウム塩を含有し、実質的にホウ素化合物を含有しない1液濃縮定着液を(所定の濃度に)希釈して得た定着液であることを特徴とする前記1〜6のいずれか1項に記載のハロゲン化銀写真感光材料の処理方法。
【0024】
一般式(2)
R0−(A0)n−COOM0
(式中、A0は側鎖に少なくとも1つ以上の水酸基を有するアルキレン基又はカルボニル基を表す。nは0以上の整数を表すが、R0が水素原子の場合はnは1以上の整数を表す。R0は水素原子又は水酸基を有するアルキル基を表す。又、R0やA0の部分にはカルボキシル基は置換せず、1分子内にトータルとして2つ以上含有しない。M0は水素原子、アルカリ金属原子又は4級アンモニウム基を表す。)
10.定着液が、上記一般式(2)で表される化合物、チオ硫酸塩、水溶性アルミニウム塩を含有し、実質的にホウ素化合物を含有しない固形定着剤を水に溶解して得た定着液であることを特徴とする前記1〜6のいずれか1項に記載のハロゲン化銀写真感光材料の処理方法。
【0025】
11.定着液が、前記一般式(1)及び(2)で表される化合物、チオ硫酸塩、水溶性アルミニウム塩を含有し、実質的にホウ素化合物を含有しない1液濃縮定着液を希釈して得た定着液であることを特徴とする前記1〜6のいずれか1項に記載のハロゲン化銀写真感光材料の処理方法。
【0026】
12.定着液が、前記一般式(1)及び(2)で表される化合物、チオ硫酸塩、水溶性アルミニウム塩を含有し、実質的にホウ素化合物を含有しない固形定着剤を水に溶解して得た定着液であることを特徴とする前記1〜6のいずれか1項に記載のハロゲン化銀写真感光材料の処理方法。
【0027】
本発明における、特定の官能基を有するポリマー微粒子と、水溶性ポリマーとを混合後、加熱処理して製造することを特徴とする導電性組成物について説明する。
【0028】
本発明の官能基を有するポリマー微粒子とは、粒径0.03〜10ミクロン、好ましくは粒径0.05〜0.5ミクロンの水不溶性樹脂の微粒子であって、導電性水溶性ポリマーと反応しうる官能基を有するポリマー微粒子である。官能基として、カルボキシル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、活性メチレンを有する基であり、これらのうち少なくとも一種を有するポリマー微粒子である。これらの官能基は2種以上含有していてもよい。
【0029】
これらの官能基の含有量は、モノマーユニットとして、5重量%以上100重量%以下であればよいが、好ましくは、10重量%以上60重量%以下である。
【0030】
微粒子の形成方法には、乳化重合法、懸濁重合法、樹脂の分散等の方法が挙げられるが、乳化重合法が目的粒径を達する上で好ましい。
【0031】
本発明における官能基を有するポリマー微粒子のポリマーの構造は、特に一般式(3)で表されるものが好ましい。
【0032】
一般式(3)
−(A)x−(B)y−(C)z−
式中、Aは下記一般式(4)で表される官能基を有するエチレン性不飽和モノマーより誘導される繰り返し単位を示し、Bは、単独重合体のガラス転移温度が35℃以下であるメタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、マレイン酸エステルから選ばれるエチレン性不飽和モノマーより誘導される繰り返し単位を表し、CはA、B以外のエチレン性不飽和モノマーより誘導される繰り返し単位を表す。ここでx、y、zはポリマーラテックス中の各成分の重量百分率比を表し、それぞれ10≦x≦60、5≦y≦90、x+y+z=100を表す。
【0033】
一般式(4)
CH2=CRa(La−Xa)
(式中、Raは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基またはハロゲン原子を表し、Laは単結合または二価の連結基を表す。Xaはカルボキシル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、活性メチレンを有する基のいずれかを含む一価の基を表す。)
ここで活性メチレンを有する基としては、具体的にアセトアセトキシ基、アセトアセトアミド基、シアノアセトキシ基、エトキシカルボニルアセチル基、シアノアセトアミド基、アセトアセチル基が挙げられる。
【0034】
以下に、本発明の一般式(4)で表される官能基を有するエチレン性不飽和モノマーの好ましいものを例示するが、これらに限定されるものではない。
【0035】
MN−1 2−アセトアセトキシエチルメタクリレート
MN−2 2−アセトアセトキシエチルアクリレート
MN−3 2−アセトアセトキシプロピルメタクリレート
MN−4 2−アセトアセトキシプロピルアクリレート
MN−5 2−アセトアセトアミドエチルメタクリレート
MN−6 2−アセトアセトアミドエチルアクリレート
MN−7 2−シアノアセトキシエチルメタクリレート
MN−8 2−シアノアセトキシエチルアクリレート
MN−9 N−(2−シアノアセトキシエチル)アクリルアミド
MN−10 2−プロピオニルアセトキシエチルアクリレート
MN−11 N−(2−プロピオニルアセトキシエチル)メタクリルアミド
MN−12 N−4−(アセトアセトキシベンジル)フェニルアクリルアミド
MN−13 エチルアクリロイルアセテート
MN−14 アクリロイルメチルアセテート
MN−15 N−メタクリロイルオキシメチルアセトアセトアミド
MN−16 エチルメタクリロイルアセトアセテート
MN−17 N−アリルシアノアセトアミド
MN−18 メチルアクリロイルアセトアセテート
MN−19 N−(2−メタクリロイルオキシメチル)シアノアセトアミド
MN−20 p−(2−アセトアセチル)エチルスチレン
MN−21 4−アセトアセチル−1−メタクリロイルピペラジン
MN−22 エチル−α−アセトアセトキシメタクリレート
MN−23 N−ブチル−N−アクリロイルオキシエチルアセトアセトアミド
MN−24 p−(2−アセトアセトキシ)エチルスチレン
MN−25 メタクリル酸および/又はそのアルカリ塩
MN−26 アクリル酸および/又はそのアルカリ塩
MN−27 マレイン酸および/又はそのアルカリ塩
MN−28 ヒドロキシエチルメタクリレート
MN−29 ヒドロキシエチルアクリレート
MN−30 グリシジルメタクリレート
一般式(3)におけるBで表される繰返し単位を与えるエチレン性不飽和モノマーは、その単独重合体のガラス転移温度が35℃以下となる様なモノマーであり、具体的には、アルキルアクリレート(例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、iso−ノニルアクリレート、n−ドデシルアクリレートなど)、アルキルメタクリレート(例えば、n−ブチルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、iso−ノニルメタクリレート、n−ドデシルメタクリレートなど)、ジエン類(例えば、ブタジエン、イソプレン)などを挙げることができる。これらのモノマーはB成分として単独で使用しても、複数使用してもよい。
【0036】
更に好ましいモノマーとしては、単独重合体のガラス転移温度が10℃以下のモノマーであり、この様なモノマーとしては炭素数2以上のアルキル側鎖を有するアルキルアクリレート(例えば、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、iso−ノニルアクリレート等)、炭素数6以上のアルキル側鎖を有するアルキルメタクリレート(例えば、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等)、ジエン類(例えば、ブタジエン、イソプレン)を例として挙げることができる。
【0037】
上記のポリマーのガラス転移温度の値については、J.Brandrup,E.H.Immergut共編「Polymer Handbook」第3版(John Wily & Sons,1989)VI/209〜VI/277頁に記載されている。
【0038】
一般式(3)のCで表される繰返し単位は、B以外の繰返し単位、すなわちその単独重合体のガラス転移温度が、35℃を超える様なモノマーより誘導される繰返し単位が好ましい。これらのモノマーはB成分として単独で使用しても、複数使用してもよく、後述の分散安定性向上に必要な成分もC成分としてカウントしてよい。
【0039】
具体的には、アクリル酸エステル類(例えば、t−ブチルアクリレート、フェニルアクリレート、2−ナフチルアクリレート等)、メタクリル酸エステル類(例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、フェニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、クレジルメタクリレート、4−クロロベンジルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、グリシジルメタクリレート等)、ビニルエステル類(例えば、安息香酸ビニル、ピバロイルオキシエチレン等)、アクリルアミド類(例えば、アクリルアミド、メチルアクリルアミド、エチルアクリルアミド、プロピルアクリルアミド、ブチルアクリルアミド、tert−ブチルアクリルアミド、シクロヘキシルアクリルアミド、ベンジルアクリルアミド、ヒドロキシメチルアクリルアミド、メトキシエチルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルアクリルアミド、フェニルアクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、β−シアノエチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなど)、メタクリルアミド類(例えば、メタクリルアミド、メチルメタクリルアミド、エチルメタクリルアミド、プロピルメタクリルアミド、ブチルメタクリルアミド、tert−ブチルメタクリルアミド、シクロヘキシルメタクリルアミド、ベンジルメタクリルアミド、ヒドロキシメチルメタクリルアミド、メトキシエチルメタクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、フェニルメタクリルアミド、ジメチルメタクリルアミド、ジエチルメタクリルアミド、β−シアノエチルメタクリルアミドなど)、スチレン類(例えば、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチレンスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロロスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロムスチレン、ビニル安息香酸メチルエステルなど)、ジビニルベンゼン、アクリルニトリル、メタアクリロニトリル、N−ビニルピロリドン、N−ビニルオキサゾリドン、塩化ビニリデン、フェニルビニルケトン等を挙げることができる。
【0040】
また、前記の一般式(3)で表されるポリマーにおいては、特公昭60−15935号、同45−3822号、同53−28086号、米国特許第3,700,456号等に記載されている様なアニオン性官能基(例えば、カルボキシル基、スルホン酸基)を有するモノマーをラテックスの分散安定性を向上させる等の目的で共重合してもよい。
【0041】
このようなモノマーとしては、以下の化合物を挙げることができる。アクリル酸;メタクリル酸;イタコン酸、マレイン酸;イタコン酸モノアルキル、例えば、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチルなど;マレイン酸モノアルキル、例えば、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチルなど;シトラコン酸;スチレンスルホン酸;ビニルベンジルスルホン酸;ビニルスルホン酸;アクリロイルオキシアルキルスルホン酸、例えば、アクリロイルオキシメチルスルホン酸、アクリロイルオキシエチルスルホン酸、アクリロイルオキシプロピルスルホン酸など;メタクリロイルオキシアルキルスルホン酸、例えば、メタクリロイルオキシメチルスルホン酸、メタクリロイルオキシエチルスルホン酸、メタクリロイルオキシプロピルスルホン酸など;アクリルアミドアルキルスルホン酸、例えば、2−アクリルアミド−2−メチルエタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルブタンスルホン酸など;メタクリルアミドアルキルスルホン酸、例えば、2−メタクリルアミド−2−メチルエタンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルブタンスルホン酸など;これらの酸はアルカリ金属(例えば、Na、Kなど)またはアンモニウムイオンの塩であってもよい。
【0042】
また、上記のアニオン性官能基を有する単量体は、その単独重合体のガラス転移温度の大小に依らず、ラテックスの安定付与等の必要に応じて用いることが可能であり、用いた場合の好ましい量は、ポリマーの全重量に対し、0.5ないし20重量%、特に好ましくは1ないし10重量%である。
【0043】
一般式(3)のx、y、zはポリマーラテックス中の各成分の重量百分率比を表す。x、y、zはそれぞれ5≦x≦60、5≦y≦90、x+y+z=100である。
【0044】
また、本発明のポリマーラテックスのガラス転移温度は−60℃以上であることが好ましく、さらに好ましくは−40℃以上である。
【0045】
官能基を有するポリマーラテックスは、好ましくは乳化重合法によって調製される。その分散粒子径は特に限定されないが、好ましい範囲は0.05〜0.5μmである。本発明における乳化重合法は、少なくとも一種類の乳化剤として水溶性ポリマーを用いてもよい。これに水あるいは水と水に混和しうる有機溶媒(たとえばメタノール、エタノール、アセトン等)の混和溶媒中でモノマーを乳化させ、ラジカル重合開始剤を用いて一般に30℃ないし約100℃、好ましくは40℃ないし約90℃の温度で行なわれる。水に混和しうる有機溶媒の量は、水に対して体積比で0〜100%、好ましくは0〜50%である。
【0046】
重合反応は、通常重合すべき単量体に対し0.05〜5重量%のラジカル重合開始剤と必要に応じて0.1〜10重量%の乳化剤を用いて行なわれる。重合開始剤としては、アゾビス化合物、パーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、レドックス触媒など、たとえば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、tert−ブチルパーオクタノエート、ベンゾイルパーオキサイド、イソプロピル−カーボネート、2,4−ジクロロベンジルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,2′−アゾビスイソブチレート、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)ハイドロクロライド、過硫酸カリウムと亜硫酸水素ナトリウムの組合せなどがある。
【0047】
乳化剤としては、アニオン性、カチオン性、両性、ノニオン性の界面活性剤を用いることができる。界面活性剤の例としては、ラウリン酸ソーダ、ドデシル硫酸ナトリウム、1−オクチルオキシカルボニルメチル−1−オクチルオキシカルボニルメタンスルホン酸ナトリウム、ドデシルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルリン酸ナトリウム、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチレンアンモニウムクロライド、N−2−エチルヘキシルピリジニウムクロライド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンラウリンエステルなどがある。
【0048】
官能基を有するポリマーラテックスを乳化重合する際に、水溶性ポリマーを使用する事が好ましい。水溶性ポリマーとしては、分子構造中に水溶性のアニオン性基、カチオン性基、ノニオン性基を有する水溶性天然ポリマーや水溶性合成ポリマーのほとんどのものが使用でき、アニオン性基としてはカルボン酸またはその塩、スルホン酸またはその塩、リン酸またはその塩、カチオン性基としては第3級アミンまたはアンモニウム塩、ノニオン性基としては、水酸基、アミド基、メトキシ基、アルキレンオキシド基としてはオキシエチレン基、ヘテロ原子環としてピロリドン基等の基が好ましい。水溶性合成ポリマーの中では、アニオン性もしくはノニオン性のものが好ましく、アニオン性のポリマーが特に好ましい。さらに好ましくはスルホン酸塩を有するポリマーが挙げられ、ポリスチレンスルホン酸塩や共役ジエン系スルホン酸塩を含むポリマーがより好ましい。また、水溶性ポリマーを2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、水溶性ポリマーが、本発明の構成要素である官能基と反応しうる基を有する水溶性ポリマーと同じであっても良い。
【0049】
活性メチレンを有するポリマーラテックスを、乳化重合する際に使用する乳化剤としての水溶性ポリマーは、天然ポリマーあるいは半合成的な水溶性ポリマーなども含み、これらの例としてアルギン酸またはその塩、デキストラン、デキストラン硫酸塩、グリコーゲン、アラビアゴム、アルブミン、寒天、でんぷん誘導体、カルボキシメチルセルロースまたはその塩、ヒドロキシセルロース、セルロース硫酸エステル等を挙げることができるが、これらの誘導体も使用できる。
【0050】
本発明のポリマーラテックスを、乳化重合する際に使用する水溶性ポリマーを、下記に例示するが、これらに限定されるものではない。
【0051】
【化3】
【0052】
【化4】
【0053】
【化5】
【0054】
【化6】
【0055】
【化7】
【0056】
【化8】
【0057】
乳化重合においては、その目的に応じて、重合開始剤、濃度、重合温度、反応時間などを幅広く、かつ、容易に変更できることはいうまでもない。また、乳化重合反応は、モノマー、界面活性剤、水溶性ポリマー、媒体を予め容器に全量入れておき、重合開始剤を投入して行ってもよいし、必要に応じて各成分の一部あるいは全量を滴下しながら重合を行ってもよい。
【0058】
本発明において、ガラス転移温度(Tg)は、ブランドラップらによる“重合体ハンドブック”III−139頁からIII−179頁(1966年,ワイリー アンド サン社版)に記載の方法で求めたものである。
【0059】
共重合体のTgは下記の式で求められる。
【0060】
Tg(共重合体)(°K)=v1Tg1+v2Tg2+・・・+vnTgn
式中、v1、v2、・・・vnは共重合体中の単量体の重量分率を表し、Tg1、Tg2、・・・Tgnは共重合体中の各単量体から得られる単一重合体のTg(°K)を表す。
【0061】
上式に従って計算されたTgの精度は、±5℃である。
【0062】
本発明に用いることのできる官能基を有するポリマー微粒子について以下に例示するが、これらに限定されるものではない。共重合体における各成分の組成比を以下に示す。
【0063】
【化9】
【0064】
【化10】
【0065】
ここで、BAはブチルアクリレート、Stはスチレン、AAはアクリル酸、MAAはメタクリル酸、EAはエチルアクリレート、EMAはエチルメタクリレート、VAcは酢酸ビニル、AINはiso−ノニルアクリレート、CHMAはシクロヘキシルメタクリレート、GMAはグリシジルメタクリレート、HEMAはヒドロキシエチルメタクリレート、MMAはメチルメタクリレートを表す。
【0066】
官能基を有するポリマー微粒子の導電性組成物、画像形成材料上に塗設した層中の含有量は、固形分として10重量%以上90重量%以下であるが、好ましくは、30重量%以上70重量%以下である。
【0067】
本発明における上記、官能基を有するポリマーと混合後、加熱処理を行う水溶性ポリマーとは、23℃の水100gあたり1g以上溶解する高分子物質で、併用するポリマー微粒子と相互作用しうる基を有していれば特に限定されないが、スルホン酸基及びカルボキシル基を有する水溶性ポリマーが好ましい。
【0068】
特に好ましいポリマー構造を一般式(5)で表す。
【0069】
一般式(5)
−(D)a−(E)b−(F)c−
式中、Dはスルホン酸基を有するエチレン性不飽和モノマーユニットを示し、Eは、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和モノマーユニットを示す。Fは、D、E以外のエチレン性不飽和モノマーユニットを表す。a、b、cは水溶性ポリマー中の各ユニットのモル分率を表し、10≦a≦90、10≦b≦90、a+b+c=100を表す。好ましいモル分率は、40≦a≦90、10≦b≦60、c≦20である。
【0070】
Dのモノマーユニットは、スチレンスルホン酸、ビニルベンジルスルホン酸、ビニルスルホン酸、アクリロイルオキシメチルスルホン酸、アクリロイルオキシエチルスルホン酸、アクリロイルオキシプロピルスルホン酸、メタクリロイルオキシメチルスルホン酸、メタクリロイルオキシエチルスルホン酸、メタクリロイルオキシプロピルスルホン、2−アクリルアミド−2−メチルエタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルブタンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルエタンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルブタンスルホン酸などを挙げることができる。これらのスルホン酸のポリマーへの導入は、スルホン酸基を有するモノマーユニットを重合して得てもよいし、ポリマー重合後スルホン酸基を導入したものでもよい。これらの酸はアルカリ金属(例えば、Na、Kなど)またはアンモニウムイオンの塩であってもよい。
【0071】
これらの中、好ましいモノマーユニットの例としては、スチレンスルホン酸を挙げることができる。
【0072】
Eのモノマーユニットの例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸などをあげる事ができる。また、これらの酸はアルカリ金属(例えば、Na、Kなど)またはアンモニウムイオンの塩であってもよい。これらの中、好ましいモノマーユニットの例として、マレイン酸を挙げることができる。
【0073】
Fで表されるD、E以外のモノマーユニットの例としては、一般式(3)のCで表される繰返し単位として挙げられたモノマーユニットと同じものが挙げられる。
【0074】
以下、前記微粒子ポリマーと混合後、加熱処理を行う水溶性ポリマーの例を挙げる。
【0075】
【化11】
【0076】
【化12】
【0077】
次に、本発明の混合後の加熱処理について説明する。
【0078】
官能基を有するポリマー微粒子とこれらの水溶性ポリマーとの混合は、水媒体中でおこない、混合比は、必要な導電性レベルや膜強度により任意に設定できるが、固形分の重量比率でポリマー微粒子を1としたとき、水溶性ポリマーはおおむね0.1〜10の割合で混合すればよく、好ましくは、0.5〜3の割合の混合比である。混合方法は、特に限定なく、全体が均一に混合できればよい。加熱処理は、水媒体の混合液を50℃以上の温度で10分以上保つことである。好ましくは、60℃以上90℃以下の温度を1時間から6時間保つことである。混合液には、前記ポリマー微粒子と水溶性ポリマー以外に、導電性組成物の成分として用いる素材を予め添加し、加熱処理してもよい。たとえば、塗布性を向上させるための界面活性剤や粘度調整剤、架橋剤、ワックスなどの塗膜の物性改良剤を必要に応じて添加していても構わない。加熱処理後は、30℃以下で保存すればよい。
【0079】
加熱処理によりどのような相互作用や反応が微粒子の表面で生じているのかは明らかではないが、該官能基がエポキシ基である場合のように水溶性ポリマー中のカルボキシル基と明らかに反応しうるものの場合以外にも、上記の様な官能基を有する微粒子をスルホ基及びカルボキシル基を有する水溶性ポリマーと加熱処理することにより特性が向上するのは驚くべきことである。これは水溶性ポリマー中のスルホ基乃至カルボキシル基とこれら官能基を有する微粒子の表面が加熱処理により何らかの相互作用を起こして、微粒子の安定性を増すことに寄与していると考えられる。これらの相互作用は明確な反応としては定義できないが、一部反応したり、或いは何らかの分子間力が働いた結果、微粒子表面と水溶性ポリマーとが何らかの相互作用のよる結合(必ずしも化学的な明確な結合とは限らない)をすることにより安定性に寄与するものと考えている。
【0080】
導電性組成物中の官能基を有するポリマー微粒子とこれら微粒子と相互作用しうる水溶性ポリマーの含有量は、60重量%以上あればよく、その他の成分の樹脂成分や無機微粒子を含有していてもよく、各種の増粘剤、無機フィラー、本発明以外のポリマーエマルジョン、架橋剤、熱硬化性ポリマー、造膜助剤、可塑剤、分散剤、湿潤剤、消泡剤、有機溶剤等を混合してもちいてもよい。
【0081】
本発明の導電性組成物を用いて、基材上に塗工して層を形成させ、導電性フィルムを作製することができる。基材としては、特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフテレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、酢酸セルロース、ポリスチレン、ポリカーボネートなどのフィルムあるいは複合体をあげることができる。好ましくは、ポリエステルフィルムあるいはその複合体である。
【0082】
本発明の導電性組成物は、画像形成材料の下引層として有用である。特に、現像液による現像処理や熱による処理を行い画像形成する写真感光材料について、画像形成後の導電性を充分に保つことができる。写真感光材料は、現像処理により画像を形成するものであれば特に限定されないが、たとえば、現像液で現像されるハロゲン化銀写真感光材料や加熱により画像が形成される材料が挙げられ、加熱により画像が形成される材料のなかでは、拡散転写・昇華型転写・銀塩の熱現像感光材料が挙げられる。
【0083】
以下、画像形成材料の例として、本発明の下引層が設けられたハロゲン化銀写真感光材料(以下、感光材料とも云う)の詳細を述べる。
【0084】
ハロゲン化銀乳剤層及びその他の親水性コロイド層のバインダーとしては、ゼラチンを全親水性コロイドに対して重量比で90%以上含有するのが好ましいが、100%即ち全部がゼラチンであってもよい。ゼラチン以外の親水性コロイドとしては、例えば、ゼラチン誘導体、ゼラチンと他の高分子とのグラフトポリマー、アルブミン、カゼイン等の蛋白質、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロース硫酸エステル等のごときセルロース誘導体、アルギン酸ソーダ、セルロース硫酸エステル、デキストリン、デキストラン、デキストラン硫酸塩などの糖誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール部分アセタール、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルピラゾール等の単一あるいは、共重合体の如き多種の合成親水性高分子を用いることができる。ゼラチンとしては、石灰処理ゼラチンのほか、酸処理ゼラチンを併用してもよく、さらにゼラチンの加水分解物、ゼラチンの酵素分解物をもちいることもできる。
【0085】
好ましい支持体としてはポリエチレンテレフタレート(PET)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)等が挙げられる。
【0086】
PETはポリエステルの成分が、全てポリエチレンテレフタレートからなるものであるが、ポリエチレンテレフタレート以外に、酸成分としてテレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、イソフタル酸、ブチレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、アジピン酸等と、グリコール成分としてエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、シクロヘキサンジメタノール等との変性ポリエステル成分が全ポリエステルの10モル%以下含まれたポリエステルであってもよい。
【0087】
シンジオタクチックポリスチレン(SPS)は通常のポリスチレン(アタクチックポリスチレン)と異なり、立体的に規則性を有したポリスチレンである。SPSの規則的な立体規則性構造部分をラセモ連鎖といい、2連鎖、3連鎖、5連鎖、あるいはそれ以上と規則的な部分がより多くあることが好ましく、ラセモ連鎖は、2連鎖で85%以上、3連鎖で75%以上、5連鎖で50%以上、それ以上の連鎖で30%以上であることが好ましい。SPSの重合は特開平3−131843号に記載の方法に準じて行うことが出来る。
【0088】
支持体の製膜方法及び下引製造方法は公知の方法を用いることができるが、好ましくは、特開平9−50094号の段落〔0030〕〜〔0070〕に記載された方法を用いることが出来るが、特に本発明には以下の下引き層を用いることが好ましい。
【0089】
本発明に用いられる下引層について説明する。
【0090】
1)スチレン−ジオレフィン系共重合体を含む疎水性重合体を含有する下引層。
【0091】
スチレン−ジオレフィン系共重合体としては、ジオレフィン系のゴム状物質が好ましい。ジオレフィン単量体は、1分子内に2個の二重結合をもつ単量体をいい、脂肪族不飽和炭化水素でも環式構造をもつものでもよい。
【0092】
具体的には、共役ジエンであるブタジエン、イソプレン、クロロプレン、非共役ジエンとして、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、3−ビニル−1,5−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、3−メチル−1,5−ヘキサジエン、3,4−ジメチル−1,5−ヘキサジエン、1,2−ジビニルシクロブタン、1,6−ヘプタジエン、3,5−ジエチル−1,5−ヘプタジエン、4−シクロヘキシル−1,6−ヘプタジエン、3−(4−ペンテニル)−1−シクロペンテン、1,7−オクタジエン、1,8−ノナジエン、1,9−デカジエン、1,9−オクタデカジエン、1−シス−9−シス−1,2−オクタデカトリエン、1,10−ウンデカジエン、1,11−ドデカジエン、1,12−トリデカジエン、1,13−テトラデカンジエン、1,14−ペンタデカジエン、1,15−ヘキサデカジエン、1,17−オクタデカジエン、1,21−ドコサジエン等を挙げることができる。
【0093】
これらのジオレフィン単量体の内、特に共役ジエンであるブタジエン、イソプレン、クロロプレンが好ましく用いられ、とりわけ、ブタジエンが好ましく用いられる。
【0094】
共重合体を形成する一方の単量体であるスチレンは、スチレン及びスチレン誘導体を指し、例えば、メチルスチレン、ジメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、シクロヘキシルスチレン、デシルスチレン、ベンチルスチレン、クロルメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレン、メトキシスチレン、4−メトキシ−3−メチルスチレン、ジメトキシスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、トリクロルスチレン、テトラクロルスチレン、トリクロルスチレン、テトラクロルスチレン、ペンタクロルスチレン、ブロムスチレン、ジブロムスチレン、ヨードスチレン、フルオロスチレン、トリフルオルスチレン、2−ブロム−4−トリフルオルメチルスチレン、4−フルオル−3−トリフルオルメチルスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチルエステル、ジビニルベンゼン、1,5−ヘキサジエン−3−イン、ヘキサトリエン等を挙げることができる。
【0095】
これらの共重合体中のジオレフィン単量体の含有量は共重合体全体の10〜60重量%、特に15〜40重量%であることが好ましい。スチレン類が共重合体全体の70〜40重量%であることが好ましい。また、本発明に用いられるこれらの共重合体には第3成分の単量体を組み込んでもよい。第3成分としてはアクリル酸エステル類、メタルクリル酸エステル類、ビニルエステル類、塩化ビニル等の塩素含有単量体等がよい。また分子内に2個以上のビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基を有する単量体を共重合することができる。
【0096】
これらとしては、ジビニルエーテル、ジビニルスルホン、ジアリルフタレート、ジアリルカルビノール、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート等を挙げることができる。
【0097】
重合終了後、得られた重合体は、成分の一つであるジエン系単量体が自己架橋するためにゲル化していて、あらゆる溶剤に不要となっている。
【0098】
これらの疎水性重合体をえる重合方法としては、例えば、乳化重合法、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、放射線重合法等が挙げられるが、乳化重合によるラテックス状のものが好ましい。また架橋性単量体を使用する場合はラテックスのゲル分率が50〜95重量%であることが好ましい。ここに、ゲルとは、共重合成分が3次元的に重合した状態のものをいう。本発明の如き組成の共重合体が3次元的に重合すると、その3次元重合の程度により、溶剤に対する溶解度が変化してくる。即ち3次元重合の程度が進む程、溶解し難くなる。従って、ゲルの3次元重合の程度はその溶解度から判断される。勿論、溶解度は使用する溶剤により異なるから溶剤毎に、ゲルの3次元重合の程度の定義は異なってくるが、ここでは、ゲルとは、3次元的に共重合した状態であり、かつその3次元重合の程度が、精製したテトラヒドロフランに20℃、48時間浸漬しても溶解しない程度のものをいう。
【0099】
溶液重合では、溶媒中で適当な濃度の単量体の混合物(通常、溶剤に対して40重量%以下、好ましくは10〜25重量%の混合物)を重合開始剤の存在下で約10〜200℃、好ましくは30〜120℃の温度で、約0.5〜48時間、好ましくは2〜20時間重合を行うことで得られる。
【0100】
溶媒としては、単量体の混合物を溶解するものであればよく、例えば、水、メタノール、エタノール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジオキサン、もしくはこれらの2種以上の混合溶媒等を挙げることができる。
【0101】
重合開始剤としては、重合溶媒に可溶なものならばよく、例えば、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、過酸化ジ(t)ブチル等の有機溶媒系重合開始剤、過硫酸アンモニウム(APS)、過硫酸カリウム、2,2′−アゾビス−(2−アミノプロパン)−ハイドロクロライド等の水溶性重合開始剤、またこれらとFe2+塩や亜硫酸水素ナトリウム等の還元剤を組み合わせたレドックス系重合開始剤等を挙げることができる。
【0102】
乳化重合法では、水を分散媒とし、水に対して10〜50重量%の単量体と単量体に対して0.05〜5重量%の重合開始剤、0.1〜20重量%の分散剤を用い、約30〜100℃、好ましくは60〜90℃で3〜8時間攪拌下重合させることによって得られる。単量体の濃度、重合開始剤量、反応温度、時間等は幅広くかつ容易に変更できる。
【0103】
分散剤(又は乳化剤)としては、水溶性高分子が用いられるが、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤のいずれも用いることができる。
【0104】
これらの共重合体は通常のジオレフィン含有ラテックスを得ると同様な公知の合成方法で得ることができる。特に水分散系で乳化重合することが後処理を必要とする有機溶媒中での均一重合より好ましい。重合に際しては、重合開始剤として、有機または無機パーオキサイド、過酢酸アセチルパーオキサイド、過酸化水素、過炭酸塩、過硫酸塩、過硼酸塩等の過酸塩等を用いることが出来る。重合開始剤の性能を補助するために、通常使用される有機または無機還元剤を併用してもよい。
【0105】
重合中または重合後のラテックスの分散安定性を高めるために各種の分散補助剤を使用出来る。分散補助剤としては、ポリビニルアルコール、ヒドロキシメチルセルロース等の高分子保護コロイド、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ、ラウリン酸ソーダ、ポリオキシエチレン脂肪酸モノエステル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル等のアニオン性またはノニオン性の活性剤を使用することが出来る。必要に応じて分子量調整剤であるメルカプタン類等を添加してもよい。重合は密封容器中で行い、各成分の重合系への添加方法、添加濃度、重合反応中の温度、圧力、撹拌条件に応じて変化させるべきである。ジオレフィン単量体はケイ酸量を加えてもよいし、また過剰量を加えて反応終了後回収してもよい。必要に応じて、グリシジル基の安定剤、反応促進剤、架橋剤等を合成前ないし合成中に添加してもよい。合成終了後のラテックスには更に停滞安定性を付与するための通常の方法であるpH調整及び活性剤、分散安定剤、湿潤剤を添加してもよい。これらの疎水性重合体の平均粒径は、0.01〜0.8μmが特に好ましく、0.005〜2.0μmのものであればいずれも好ましく使用することができる。
【0106】
これらの疎水性重合体は、有機溶剤中で重合される場合には、さらに水に分散させて減圧に引くことにより溶剤を水に置換することにより使用することができる。
【0107】
下引層に用いる疎水性重合体は水性分散液(ラテックス)とし、さらに必要により該水性分散液中に架橋剤、界面活性剤、膨潤剤、マット剤、帯電防止剤等を添加することが好ましい。架橋剤としては例えば、米国特許第3,325,287号、同第3,288,775号、同第3,549,377号、ベルギー特許第6,602,226号明細書等に記載のトリアジン系化合物、米国特許第3,291,624号、同第3,232,764号、仏国特許第1,543,694号、英国特許第1,270,578号明細書に記載のジアルデヒド系化合物、米国特許第3,091,537号明細書、特公昭49−26580号公報等に記載のエポキシ系化合物、米国特許第3,642,486号明細書等に記載のビニル系化合物、米国特許第3,392,024号明細書に記載のアジリジン系化合物、米国特許第3,549,378号明細書等に記載のエチレンイミン系化合物、及びメチロール系化合物がある。これらの化合物のうち、ジクロロトリアジン誘導体が好ましい。本発明においては、下記のような写真用ゼラチンのいわゆる硬膜剤は好ましく用いられる。
【0108】
本発明で好ましく使用出来る共重合体としては、例えば、スチレン−ブタジエン、スチレン−イソプレン、スチレン−クロロプレン、メチルメタクリレート−ブタジエン、アクリロニトリル−ブタジエン等を挙げることができる。この中でも、スチレン−ブタジエン系ラテックスが特に好ましい。また、市販されていてる共重合体も用いることが出来る。
【0109】
本発明の下引層の中には、塗布性を向上させるために、水溶性重合体を含有させることが好ましい。
【0110】
水溶性重合体としては、ヒドロキエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)、疎水性を有するよう変性したヒドロキシエチルセルロース(HMHEC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレンオキシド(PEO)、キサンタン、カチオン性ヒドロキシエチルセルロース(CATHEC)、ヒドロキシプロピルグアー(HPグアー)、グアー、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリルアミド、アルギン酸ナトリウム、及びカーボポール(Carbopol;登録商標)アクリルアミド増粘用組成物等がある。
【0111】
上記の水溶性重合体のうち、本発明を実施する上で特に有用なものは、カルボキシメチルセルロース(略してCMCという)である。この化合物の代表例は、例えば市販のCMC−7LX(アクアロン社製)であり、本品は通常、0.65〜0.80のカルボキシメチル置換度、及び水中5重量%の濃度にて200〜1000mPa.sの範囲の水溶液粘度を有するものである。上記以外の市販又は実験用の他の種々のCMCも使用できることは言うまでもなく、本発明に使用することのできるこれら他の種類のCMCは、広い分子量範囲と種々のカルボキシメチル置換度を有するものであってよい。
【0112】
メチルセルロース(MC)、及びヒドロキシエチルセルロース(HEC)はアクアロン社から市販されている。エチルヒドロキシエチルセルロースはベロール・ノーベル(Berol Nobel)から、そしてヒドロキシプロピルメチルセルロースはアクアロン社とダウケミカル社から市販されている。使用量は全固形分の10%以下が好ましい。
【0113】
2)本発明の下引に使用されるポリエステルを膨潤又は溶解させる溶剤としては、ヒドロキシル基含有芳香族化合物として、レゾルシン、メチルレゾルシン、フェノール、クロロフェノール、クレゾール等が挙げられ、カルボキシル基又はその酸無水物含有芳香族化合物としては、サリチル酸、安息香酸等のカルボン酸やその酸無水物が挙げられる。これら溶剤の含有量は、フィルムの平面性と接着性を両方満足させるために、下引き加工液の1〜20重量部であることが好ましい。
【0114】
ポリエステルを膨潤もしくは溶解させる溶剤と共に用いられる下引層用の親水性樹脂としては、側鎖に親水基、つまり、ヒドロキシル基やカルボキシル基もしくは酸無水物、あるいはアミノ基、環状アミド基を単独又は複数含む天然もしくは合成高分子である。
【0115】
3)本発明の下引層に使用される塩化ビニリデン系共重合体について説明する。
【0116】
ここで塩化ビニリデン系共重合体とは、99.9〜50モル%の塩化ビニリデン(塩化ビニリデンを主成分する)を8〜0.1モル%のカルボキシル基を持つビニル系あるいはアクリル系単量体、更に第3成分以上の単量体を含有させてもよい。第2成分であるカルボキシル基を有するビニル系あるいはアクリル系単量体とは、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸(無水マレイン酸の形で共重合させ、重合中又は重合終了時に開環させる)、イタコン酸などの酸及びその塩を挙げることができる。
【0117】
塩化ビニリデン系共重合体は、下引加工液の状態ではラテックスの形状であることが好ましい。この場合、均一またはコアシェル状の所謂ラテックス粒子の中心と外側の組成が異なった形状であっても構わない。
【0118】
重合方法、重合開始剤、界面活性剤、架橋剤、水溶性重合体など、1)と同様なものを用いることが出来る。
【0119】
4)本発明の下引層に用いられる活性メチレン基を有するポリマーの構造は、特に下記一般式(6)で表されるものが好ましい。
【0120】
一般式(6)
−(A′)x−(B′)y−(C′)z−
式中、A′は下記の一般式(7)で表される官能基を有するエチレン性不飽和モノマーより誘導される繰り返し単位を示し、B′は、単独重合体のガラス転移温度が35℃以下であるメタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、マレイン酸エステルから選ばれるエチレン性不飽和モノマーより誘導される繰り返し単位を表し、C′はA′、B′以外のエチレン性不飽和モノマーより誘導される繰り返し単位を表す。ここでx、y、zはポリマーラテックス中の各成分の重量百分率比を表し、それぞれ10≦x≦60、5≦y≦90、x+y+z=100を表す。
【0121】
一般式(7)
CH2=CRb(Lb−Xb)
式中、Rbは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はハロゲン原子を表し、Xbは活性メチレンを有する基、Lbは単結合又は2価の連結基を表し、具体的には下式で表される。
【0122】
−(L1)m−(L2)n−
L1は−CON(Rc)−(Rcは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜6の置換アルキル基を表す。)、−COO−、−NHCO−、−OCO−、
【0123】
【化13】
【0124】
(式中、Rcは前記と同じものを表し、Rd、Reはそれぞれ独立に、水素、ヒドロキシル、ハロゲン原子又は置換もしくは無置換のアルキル、アルコキシ、アシルオキシもしくはアリールオキシを表す。)を表し、L2はL1とXbを結ぶ置換基を表し、mは0又は1を表し、nは0又は1を表す。L2で表される連結基は具体的には、下記の一般式で表される。
【0125】
−〔Xc−(Ja−Xd)p−(Jb−Xe)q−(Jc)r〕s−
式中、Ja、Jb、Jcは同じでも異なっていてもよく、−CO−、−SO2−、−CON(Rf)−(Rfは水素原子、アルキル基(炭素数1〜6)、置換アルキル基(炭素数1〜6)、−SO2N(Rf)−(Rfは上記と同じ)、−N(Rf)−Rg−(Rfは上記と同義、Rgは炭素数1〜4のアルキレン基)、−N(Rf)−Rg−N(Rh)−(Rf、Rgは上記と同義、Rhは水素原子、アルキル基(炭素数1〜6)、置換アルキル基(炭素数1〜6)を表す。)、−O−、−S−、−N(Rf)−SO2N(Rh)−(Rf、Rhは上記と同義)、−N(Rf)−SO2N(Rh)−(Rf、Rhは上記と同義)、−COO−、−OCO−、−N(Rf)COO−(Rfは上記と同義)、−N(Rf)CO−(Rfは上記と同義)等を挙げることができる。
【0126】
p、q、r、sは0又は1を表す。Xc、Xd、Xeは互いに同じでも異なっていてもよく、炭素数1〜10個の無置換もしくは置換のアルキレン基、アラルキレン基又はフェニレン基を表し、アルキレン基は直鎖でも分岐でもよい。アルキレン基としては例えばメチレン、メチルメチレン、ジメチルメチレン、ジメチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、デシルメチレン、アラルキレン基としては例えばベンジリデン、フェニレン基としては例えばp−フェニレン、m−フェニレン、メチルフェニレンなどがある。
【0127】
Xbは、活性メチレン基を含む1価の基を表し、好ましい具体例としては、Ri−CO−CH2−COO−、CN−CH2−COO−、Ri−CO−CH2−CO−、Ri−CO−CH2−CON(Rf)−等を挙げることができる。ここでRfは前記に同じであり、Riは炭素数1〜12個の置換又は無置換のアルキル基(例えばメチル、エチル、n−プロピル、t−ブチル、n−ブチル、n−ノニル、2−メトキシエチル、4−フェノキシブチル、ベンジル、2−メタンスルホンアミドエチル等)、置換又は無置換のアリール基(例えばフェニル、p−メチルフェニル、p−メトキシフェニル、o−クロロフェニル等)、アルコキシ基(例えばメトキシ、エトキシ、メトキシエトキ、n−ブトキシ等)、シクロアルキルオキシ基(例えばシクロヘキシルオキシ)、アリーロキシ基(例えばフェノキシ、p−メチルフェノキシ、o−クロロフェノキシ、p−シアノフェノキシ等)、アミノ基、置換アミノ基(例えばメチルアミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ブチルアミノ等)を表す。
【0128】
これら一般式(7)で表される活性メチレン基を有するエチレン性不飽和モノマーの例としては、前記官能基を有する微粒子ポリマーにおける官能基を有するエチレン性不飽和モノマーのところで挙げられた官能基のうち活性メチレンを有するものがそのまま適用できる。前記の前記官能基を有する微粒子ポリマーにおける官能基を有するエチレン性不飽和モノマーの例のうちMN−1〜MN−24のモノマーを好ましい具体例として挙げることができる。
【0129】
一般式(6)のB′、C′で表される繰返し単位を与えるエチレン性不飽和モノマーとしては、前記官能基を有する微粒子ポリマーにおいて、B、Cで表されるものとそれぞれ同様のものを表す。
【0130】
また、これら一般式(6)で表されるポリマーにおいても、前記同様に、特公昭60−15935号、同45−3822号、同53−28086号、米国特許第3,700,456号等に記載されている様なアニオン性官能基(例えば、カルボキシル基、スルホン酸基)を有するモノマーをラテックスの安定性を向上させる等の目的で共重合してもよい。
【0131】
また、上記のアニオン性官能基を有する単量体は、その単独重合体のガラス転移温度の大小に依らず、ラテックスの安定付与等の必要に応じて用いることが可能であり、用いた場合の好ましい量は、ポリマーの全重量に対し、0.5ないし20重量%、特に好ましくは1ないし10重量%である。
【0132】
また、これらポリマーラテックスのガラス転移温度は−60℃以上であることが好ましく、さらに好ましくは−40℃以上である。
【0133】
これら活性メチレン基を有するポリマーラテックスは、前記一般式(3)で表される官能基を有する微粒子ポリマーと同様に、好ましくは乳化重合法によって調製される。その分散粒子径は特に限定されないが、好ましい範囲は0.05〜0.5μmである。又これらの乳化重合法において用いられる乳化剤、重合触媒、等も前記官能基を有する微粒子ポリマーにおいて挙げられたものと同様のものが用いられる。
【0134】
本発明に用いることのできる活性メチレンを有するポリマー微粒子について以下に例示するが、これらに限定されるものではない。共重合体における各成分の組成比を以下に示す。
【0135】
【化14】
【0136】
ここで、BAはブチルアクリレート、Stはスチレン、AAはアクリル酸、EAはエチルアクリレート、EMAはエチルメタクリレート、VAcは酢酸ビニル、AINはiso−ノニルアクリレート、CHMAはシクロヘキシルメタクリレート、GMAはグリシジルメタクリレート、MMAはメチルメタクリレートを表す。
【0137】
官能基を有するポリマー微粒子の導電性組成物、画像形成材料上に塗設した層中の含有量は、固形分として10重量%以上90重量%以下であるが、好ましくは、30重量%以上70重量%以下である。
【0138】
前記一般式(3)又は(6)で表されるポリマーにおける、A、A′で表される官能基を有する成分の構成単位であるモノマーやポリマーラテックスの種類やその合成法については上記の米国特許3,459,790号、同3,619,195号、同3,929,482号、同3,700,456号、西独特許2,442,165号、欧州特許13,147号、特開昭50−73625号、同50−146331号等の記載を参考に行うことができる。
【0139】
本発明の下引層には、本発明の活性メチレン基含有する重合体の他にゼラチンを含むことが出来る。また、接着性が損なわれない限りゼラチン以外に親水性コロイド、例えば、水溶性重合体等の使用を妨げない。その使用範囲は10重量%以下である。
【0140】
下引層に用いられる本発明の重合体を主成分とする下引液は、必要に応じて界面活性剤、親水性有機コロイド、マット剤、滑り剤、帯電防止剤、架橋剤等の添加剤を含有してもよい。架橋剤としては、前記1)の架橋剤が使用出来る。
【0141】
5)次に少なくとも2種のアクリル系重合体ラテックスを有する下引き層について説明する。本発明は少なくとも2種のアクリル系重合体ラテックスを有し、そのうちの1種が最も低いガラス転移点(Tg(L))の重合体で、他の1種が最も高いガラス転移点(Tg(H))の重合体で、2種の重合体のガラス転移点の差が10〜80℃である下引層を有するものである。ここで、ガラス転移点を以降Tgと略すことがある。
【0142】
前述したように、ガラス転移温度(Tg)は、ブランドラップらによる“重合体ハンドブック”III−139頁からIII−179頁(1966年,ワイリー アンド サン社版)に記載の方法で前述の式により求める事が出来る。
【0143】
前述の式に従って計算されたTgの精度は、±5℃である。
【0144】
本発明において、下記のようなアクリル系の単量体を使用して、別々に重合して2種以上混合し、それらの重合体ラテックスのそれぞれのTg(H)とTg(L)のTgの差が10〜80℃あれば、本発明を実施出来る。これらの重合体を単一重合体のTgまたは前記式による計算により得られたTgの重合体ラテックスを選んで使用すればよい。アクリル系重合体ラテックスとしてはアクリル系モノマー、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、これらのエステル又は塩、アクリルアミド、メタクリルアミド、メタクリルアミドをポリマー構成成分として有するラテックスである。
【0145】
これらのアクリル系重合体ラテックスは、乳化重合法で製造することができる。例えば、水を分散媒とし、水に対して10〜50重量%の単量体と単量体に対して0.05〜5重量%の重合開始剤、0.1〜20重量%の分散剤を用い、約30〜100℃、好ましくは60〜90℃で3〜8時間撹拌下重合させることによって製造することができる。単量体の量、重合開始剤量、反応温度、反応時間等の条件は幅広く変更することができる。
【0146】
重合開始剤としては、水溶性過酸化物(例えば前記の過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等)、水溶性アゾ化合物(例えば、2,2−アゾビス(2−アミノジプロパン)ハイドロクロライド等)又はこれらのFe2+塩や亜硫酸水素ナトリウム等の還元剤を組み合わせたレドックス系の重合開始剤を用いることが出来る。
【0147】
分散剤としては、水溶性高分子が用いられるが、アニオン性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤のいずれも用いる事が出来る。
【0148】
アクリル系重合体ラテックスが疎水性ラテックスである場合、平均粒径は、0.01〜0.8μmが特に好ましいが、0.005〜2.0μmのものであればいずれも好ましく使用することができる。また、親水性ラテックスである場合、平均粒径は、0.01〜0.8μmが特に好ましいが、0.005〜2.0μmのものであればいずれも好ましく使用することができる。
【0149】
アクリル系ポリマーラテックスを形成するアクリル系モノマーとしては、メタクリル酸、アクリル酸、これらのエステル又は塩、アクリルアミド、メタクリルアミド等があげられる。
【0150】
本発明のアクリル系ポリマーラテックスは、アクリル系モノマー単独で或いは、アクリル系モノマーとアクリル系モノマーと共重合しうる他のモノマー(以下コモノマーという。)を用いて製造することが出来る。
【0151】
アクリル系モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、例えば、アルキルアクリレート(例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェネチルアクリレート等)、ヒドロキシル基含有アルキルアクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等)、メタクリル酸エステル、例えば、アルキルメタクリレート(例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェネチルメタクリレート等)、ヒドロキシル基含有アルキルメタクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等)、アクリルアミド、置換アクリルアミド(例えば、N−メチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチロールアクリルアミド、N−メトキシアクリルアミド等)、メタクリルアミド、置換メタクリルアミド(例えば、N−メチルメタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチロールメタクリルアミド、N−メトキシメタクリルアミド等)、アミノ基置換アルキルアクリレート(例えば、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート)、アミノ基置換アルキルメタクリレート(例えば、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート)、エポキシ基含有アクリレート(例えばグリシジルアクリレート)、エポキシ基含有メタクリレート(例えばグリシジルメタクリレート)、アクリル酸の塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩)、メタクリル酸の塩例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩)が挙げられる。上述のモノマーは1種又は2種以上を併用することが出来る。
【0152】
これらのアクリル系重合体ラテックスには他の成分を共重合してもよい。コモノマーとしては、スチレン及びその誘導体;不飽和ジカルボン酸(例えば、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸);不飽和ジカルボン酸のエステル(例えば、イタコン酸メチル、イタコン酸ジメチル、マレイン酸メチル、マレイン酸ジメチル、フマール酸メチル、フマール酸ジメチル);不飽和ジカルボン酸の塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩);スルホン酸基又はその塩を含有する単量体(例えば、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸及びそれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩);無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物;ビニルイソシアネート;アリルイソシアネート;ビニルメチルエーテル;ビニルエチルエーテル;酢酸ビニルが挙げられる。上述の単量体は1種もしくは2種以上を併用することができる。
【0153】
本発明において、疎水性のラテックスとは、溶解性パラメーターSP値が15未満のものをいい、水溶性基をほとんど含まない重合体であり、これに対して親水性のラテックスとはSP値が15以上のもので、スルホン酸基等の水溶性基を有する重合体である。
【0154】
溶解性パラメーターSPのディメンションは(cal/ml)1/2である。溶解性パラメーターの詳細については、「塗料樹脂の化学」(垣内 弘著、昭和47年2月15日発行)の239〜246頁に記述されている。
【0155】
疎水性のラテックスは、水溶性基を有していないモノマーを用いて得ることが出来る。又、親水性ラテックスは、スルホン酸基等の水溶性基を有するモノマーを用いて得ることが出来る。
【0156】
〈疎水性重合体ラテックスA−1の調製〉
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、窒素導入管を備えた反応容器に、脱気蒸留水300重量部を入れ、窒素導入管を通して窒素ガスを導入し、反応容器を窒素ガス雰囲気下にするとともに、水中の溶存酸素を排除した。80℃に温度を上げた後、滴下ロートからドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム5重量部を含む水溶液50重量部を、また、別のロートから下記組成の単量体混合物を171重量部を、更に、別のロートから過硫酸アンモニウム3重量部を含む水溶液50重量部を滴下し、窒素ガス還流下、80℃で8時間重合反応を行い、水分散性重合体を得た。
【0157】
《単量体混合物の組成》
スチレン/グリシジルメタクリレート/n−ブチルアクリレート(20/40/40(重量比))
ガラス転移点は前記のブランドラップらによる方法により求めたが20℃であった。
【0158】
〈重合体ラテックスB−1の調製〉
単量体混合物として下記組成の単量体混合物を用いた以外は重合体ラテックスA−1と同様にして重合反応を行い、水分散性重合体を得た。
【0159】
《単量体混合物の組成》
スチレン/グリシジルメタクリレート/n−ブチルアクリレート(60/40/0.5(重量比))
ガラス転移点は前記のブランドラップらによる方法により求めたが75℃であった。
【0160】
本発明において、用いられるハロゲン化銀乳剤のハロゲン化銀粒子としては、臭化銀、沃臭化銀、沃塩化銀、塩臭化銀、塩沃臭化銀及び塩化銀等のハロゲン化銀粒子が任意に使用できるが、特に沃臭化銀、塩沃臭化銀、塩化銀であることが好ましい。
【0161】
ハロゲン化銀粒子の形状は如何なるものでもよい。例えば、立方体、八面体、十四面体、球、平板状、じゃがいも状等の形状であってよい。しかし、特に好ましいのは平板状粒子である。
【0162】
以下、好ましく用いられるハロゲン化銀粒子の典型的例として、平板状粒子について説明する。
【0163】
平板状ハロゲン化銀粒子は、主平面が{111}面からなり、かつ複数枚の平行な双晶面を有するもの、又は、主平面が{100}面からなるものが好ましい。
【0164】
用いられる平板状ハロゲン化銀粒子は、粒子直径/厚さ(アスペクト比)の比の平均値(平均アスペクト比)が2以上である。平均アスペクト比としては2以上12以下が好ましく、更に好ましくは3〜8である。
【0165】
平板状ハロゲン化銀粒子の結晶の外壁は、実質的に殆どが{111}面から成るもの、或いは{100}面から成るものであってもよい。また、{111}面と{100}面とを併せ持つものであってもよい。この場合、粒子表面の50%以上が{111}面であり、より好ましくは60%〜90%が{111}面であり、特に好ましくは70〜95%が{111}面である。{111}面以外の面は主として{100}面であることが好ましい。この面比率は増感色素の吸着における{111}面と{100}面との吸着依存性の違いを利用したT.Tani,J.Imaging Sci.,29,165(1985)により求めることができる。
【0166】
平板状ハロゲン化銀粒子は、多分散であっても単分散であってもよいが、単分散性であることが好ましい。具体的には
(粒径の標準偏差/平均粒径)×100=粒径分布の広さ(%)
によって表せる相対標準偏差(変動係数)で分布の広さを定義したとき25%以下のものが好ましく、更に好ましくは20%以下のものであり、特に好ましくは15%以下である。
【0167】
平板状ハロゲン化銀粒子は厚さの分布が小さいことが好ましい。具体的には、
(厚さの標準偏差/平均厚さ)×100=厚さ分布の広さ(%)
によって分布の広さを定義したとき25%以下のものが好ましく、更に好ましくは20%以下のものであり、特に好ましくは15%以下である。
【0168】
更に、本発明の平板状ハロゲン化銀粒子乳剤中の個々の粒子のハロゲン含量率の分布も小さいことが好ましい。具体的には、
によって分布の広さを定義したとき25%以下のものが好ましく、更に好ましくは20%以下のものであり、特に好ましくは15%以下である。
【0169】
本発明において、双晶面を有する平板状ハロゲン化銀粒子を使用する場合には、その主平面の形状が六角形であることが好ましい。六角形の平板状粒子(以下六角平板粒子ともいう)とは、その主平面({111}面)の形状が六角形であり、その最大隣接比率が1.0〜2.0であることを言う。ここで最大隣接辺比率とは、六角形を形成する最小の長さを有する辺の長さに対する最大の長さを有する辺の長さの比である。本発明において、六角平板粒子は最大隣接辺比率が1.0〜2.0であれば、その角が丸みを帯びていることも好ましい。角が丸味をおびている場合の辺の長さは、その辺の直線部分を延長し、隣接する辺の直線部分を延長した線との交点との間の距離で表される。また、更に角がとれ、ほぼ、円形の平板粒子となっていることも好ましい。
【0170】
本発明において、六角平板粒子の六角形を形成する各辺は、その1/2以上が実質的に直線からなることが好ましい。本発明においては、隣接辺比率が1.0〜1.5であることがより好ましい。
【0171】
ハロゲン化銀粒子は転位を有していてもよい。該転位は、例えば、J.F.Hamilton,Phot.Sci.Eng.,57(1967)や、T.Shiozawa,J.Soc.Phot.Sci.,Japan,35,213(1972)に記載の低温での透過型電子顕微鏡を用いた直接的な方法により観察することができる。即ち、乳剤から粒子に転位が発生する程の圧力をかけないよう、注意して取りだしたハロゲン化銀粒子を電子顕微鏡観察用のメッシュに載せ、電子線による損傷(プリントアウト等)を防ぐように、試料を冷却した状態で透過法により観察を行う。このとき、粒子の厚みが厚いほど電子線が透過しにくくなるので、高圧型(0.25μmの厚さの粒子に対して200kV以上)の電子顕微鏡を用いた方がより鮮明に観察することができる。
【0172】
ハロゲン化銀粒子の転位の数については、1本以上の転位を含む粒子が50%(個数)以上存在することが望ましく、転位線を有する平板粒子数の比率(数)が高いほど好ましい。尚、本発明において、粒径とは粒子の投影像を同面積の円像に換算したときの直径である。粒子の投影面積は、この粒子面積の和から求めることができる。いずれも粒子の重なりが生じない程度に試料台上に分布されたハロゲン化銀結晶サンプルを、電子顕微鏡観察することによって得ることができる。
【0173】
平板状ハロゲン化銀粒子の平均投影面積径は、該粒子の投影面積の円相当直径で表し、好ましくは0.30μm以上であるが、より好ましくは0.30〜5μm、更に好ましくは0.40〜2μmである。
【0174】
粒径は該粒子を電子顕微鏡で1万〜7万倍に拡大投影して、そのプリント上の投影時の面積を実測することによって得ることができる。
【0175】
また平均粒径(φi)は測定粒径個数をnとし、粒径φiを有する粒子頻度をniとしたときに、次式により求めることができる。
【0176】
平均粒径(φi)=Σnidi/n
(測定粒子個数は無差別に1,000個以上であるとする。)
粒子の厚さは、電子顕微鏡によって試料を斜めから観察することによって得ることができる。本発明の平板状粒子の好ましい厚みは、0.03〜1.0μmであり、より好ましくは0.05〜0.5μmである。
【0177】
ハロゲン化銀粒子が平行な2以上の双晶面を有する場合は、平行な2以上の双晶面間の最も長い距離(a)と粒子の厚み(b)の比(b/a)が5以上であることが好ましく、その比率が50%(数)以上であることが好ましい。
【0178】
本発明においては(a)の平均値が0.008μm以上であるが好ましく、更に好ましくは0.010μm以上、0.05μm以下である。
【0179】
また、本発明においては、(a)が上記値範囲にあると同時にその変動係数が35%以下であることが必要であるが、好ましくは30%以下である。
【0180】
更に本発明においては、アスペクト比と粒子の厚みの因子を加味して次式で表現される平板性、A=ECD/b2が20以上であることが好ましい。
【0181】
ここでECDは平板粒子の平均投影直径(μm)を指し、(b)は粒子の厚みである。ここで平均投影直径とは、平板粒子の投影面積と等しい面積を有する円の直径の数平均を表す。
【0182】
平板状ハロゲン化銀粒子は、均一組成であってもよいが、ハロゲン化銀粒子内に実質的にハロゲン組成の異なる少なくとも2つの層構造をもつコア/シェル型構造を有した粒子が、感光性ハロゲン化銀乳剤層中に個数で50%以上含有していることが好ましい。
【0183】
コア/シェル型構造粒子は、粒子中心部にはコアとは異なるハロゲン組成領域をもつこともありうる。このような場合の種粒子のハロゲン組成は、臭化銀、沃臭化銀、塩沃臭化銀、塩臭化銀、塩化銀等の任意の組み合わせであってもよい。
【0184】
本発明において、ハロゲン化銀乳剤の平均沃化銀含有率は、2モル%以下が好ましく、より好ましくは0.01〜1.0モル%である。該ハロゲン組成の異なる層構造を有する粒子においては、粒子内部に高沃化銀層、最表面層に低沃化銀層又は臭化銀層を有する粒子が好ましい。この時最高の沃化銀含有率を有する内部層(コア)の沃化銀率は、2.5モル%以上のものが好ましく、より好ましくは5モル%以上であり、最表面層(シェル)の沃化銀含有率は0〜5モル%で、好ましくは0〜3モル%であり、かつコアの沃化銀含有率がシェルの沃化銀含有率より少なくとも3モル%以上であることが好ましい。
【0185】
コアの沃化銀分布は、通常は均一であるが分布をもっていてもよい。例えば、中心部から外部に向かうにつれ高濃度となっていても、中間領域に極大又は極小濃度を有していてもよい。
【0186】
ハロゲン化銀粒子は、いわゆるハロゲン変換型(コンバージョン型)の粒子であっても構わない。ハロゲン変換量は、銀量に対して0.2モル%〜2.0モル%が好ましく、変換の時期は物理熟成中でも物理熟成終了後でも良い。ハロゲン変換の方法としては、通常ハロゲン変換前の粒子表面のハロゲン組成よりも銀との溶解度積の小さいハロゲン水溶液またはハロゲン化銀微粒子を添加する。この時の微粒子サイズとしては、0.2μm以下が好ましく、より好ましくは0.02〜0.1μmである。本発明のハロゲン化銀粒子は、例えば、特開昭60−138538号の実施例記載の方法のように、種結晶上にハロゲン化銀を析出させる方法にて成長させることが好ましい。
【0187】
また、乳剤の調製に当たって、種粒子形成工程及び種粒子の成長時に、アンモニア、チオエーテル、チオ尿素等の公知のハロゲン化銀溶剤を存在させることができる。
【0188】
平板状ハロゲン化銀粒子を得るために、製造された種粒子を肥大させる条件としては、例えば、特開昭51−39027号、同55−142329号、同58−113928号、同54−48521号及び同58−49938号に記載のように、水溶性銀塩溶液と水溶性ハライド溶液をダブルジェット法によって添加し、添加速度を粒子の肥大に応じて、新核形成が起こらずオストワルド熟成が起こらない範囲で、徐々に変化させる方法を用いてもよい。種粒子を肥大させる別の条件として、日本写真学会昭和58年年次大会要旨集88項に見られるように、ハロゲン化銀微粒子を加え溶解、再結晶することにより肥大させる方法も用い得る。
【0189】
成長に当たっては、硝酸銀水溶液とハロゲン化物水溶液を、ダブルジェット法で添加すことができるが、ハロゲン化銀微粒子として系内に供給することもできる。添加速度は新しい核が発生しないような速度で、かつオストワルド熟成によるサイズ分布の広がりがない速度、即ち新しい核が発生する速度の30〜100%の範囲で添加することが好ましい。
【0190】
ハロゲン化銀乳剤の製造に当たっては、製造時の攪拌条件が極めて重要である。攪拌装置としては、特開昭62−160128号に示される添加液ノズルを攪拌機の母液吸入口に近く液中に設置した装置が特に好ましく用いられる。又、この際、攪拌回転数は400〜1200rpmにすることが好ましい。
【0191】
ハロゲン化銀粒子の沃化銀含有率及び平均沃化銀含有率は、EPMA法(Electron Probe Micro Analyzer)を用いることにより求めることが可能である。この方法は乳剤粒子を互いに接触しないように、良く分散したサンプルを作製し、電子ビームを照射する電子線励起によるX線分析より、極小な部分の元素分析が行える。これによって、各粒子から放射される銀及び沃度の特性X線強度を求めることにより、個々の粒子のハロゲン組成が決定できる。少なくとも100個の粒子について、EPMA法により沃化銀含有率を求めれば、それらの平均から平均沃化銀含有率が求められる。
【0192】
更にハロゲン化銀粒子は、粒子を形成する過程及び/又は成長する過程で、カドミウム塩、亜鉛塩、鉛塩、タリウム塩、イリジウム塩(錯塩を含む)、ロジウム塩(錯塩を含む)及び鉄塩(錯塩を含む)から選ばれる少なくとも1種の金属イオンを添加し、粒子内部に及び/又は粒子表面層にこれらの金属元素を含有させることができ、また適当な還元的雰囲気におくことにより、粒子内部及び/又は粒子表面に還元増感核を付与できる。
【0193】
また、粒子形成の所望の時点で、過酸化水素、チオスルフォン酸類のような酸化剤を添加することができる。
【0194】
ハロゲン化銀写真感光材料のハロゲン化銀乳剤は、ハロゲン化銀粒子の成長の終了時に不要な可溶性塩類を除去してもよいし、あるいは含有させたままでもよい。該塩類を除去する場合には、リサーチ・ディスクロージャー(以下RDと略す)No.17643号II項に記載の方法に基づいて行うことができる。
【0195】
尚、本発明内において、ハロゲン化銀乳剤層は、本発明の効果を損なわない範囲で種々の形状の粒子を含有してもよい。
【0196】
ハロゲン化銀写真感光材料のハロゲン化銀は、各種の方法で増感されていてもよい。分光増感色素としては、シアニン色素、メロシアニン色素、複合シアニン色素、複合メロシアニン色素、ホロボーラーシアニン色素、ヘミシアニン色素、スチリル色素及びヘミオキソノール色素が用いられる。特に有用な色素は、シアニン色素、メロシアニン色素及び複合メロシアニン色素に属する色素である。これらの色素類は通常利用されている核のいずれをも適用できる。即ち、ピロリン核、オキサゾリン核、チアゾリン核、ピロール核、オキサゾール核、チアゾール核、セレナゾール核、イミダゾール核、テトラゾール核、ピリジン核などで、これらの核に脂肪式炭化水素環が融合した核、即ちインドレニン核、ベンズインドレニン核、インドール核、ベンズオキサゾール核、ナフトオキサゾール核、ベンゾチアゾール核、ナフトチアゾール核、ベンゾセレナゾール核、ベンズイミダゾール核、キノリン核などが適用できる。これらの核は、炭素原子上に置換されてもよい。
【0197】
メロシアニン色素又は複合メロシアニン色素には、ケトメチン構造を有する核として、ピラゾリン−5−オン核、チオヒダントイン核、2−チオオキサゾリジン−2,4−ジオン核、チアゾリン−2,4−ジオン核、ローダニン核、チオバルビツール酸核などの5〜6員異節環核を適用することができる。
【0198】
これらの特許は、例えば、ドイツ特許第929,080号、米国特許第2,231,658号、同2,493,748号、同2,503,776号、同2,519,001号、同2,912,329号、同3,655,394号、同3,656,959号、同3,672,897号、同3,649,217号、英国特許第1,242,588号、特公昭44−14030号に記載されたものである。
【0199】
またこれらの分光増感色素とともにそれ自身、分光増感性を持たない色素或いは可視光を実質的に吸収しない物質であって、強色増感作用を示す物質を乳剤層中に添加してもよい。
【0200】
分光増感色素の添加量は、色素の種類及びハロゲン化銀の構造、組成、熟成条件、目的、用途などによって異なるが、ハロゲン化銀乳剤中の各感光性粒子の表面の単分子層被覆率40%以上90%以下になるようにすることが好ましく、更に50〜80%が特に好ましい。
【0201】
尚、ここで単分子層被覆率とは、50℃にて吸着等温線を作製したときの飽和吸着量を被覆率100%に相当する量として、その量に対する実際にハロゲン化銀乳剤に添加された分光増感色素の量を相対的に百分率で表現した値とすることにする。
【0202】
ハロゲン化銀1モル当たりでの適量は、乳剤中のハロゲン化銀粒子の総表面積により変化するが600mg未満が好ましく、更に450mg以下がより好ましい。
【0203】
増感色素の溶剤としては、従来用いられている水混和性の有機溶剤が使用できる。例えば、アルコール類、ケトン類、ニトリル類、アルコキシアルコール類等が用いられてきた。具体例として、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、アセトン、アセトニトリル、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノールなどがある。
【0204】
また分光増感色素の分散剤として、従来、界面活性剤が用いられてきた。界面活性剤には、アニオン型、カチオン型、ノニオン型、両イオン性型の界面活性剤があるが、本発明においては、これらいずれの界面活性剤も使用できる。
【0205】
しかし本発明においては、有機溶媒の溶液として添加する場合よりも、分光増感色素を固体微粒子状の分散物として添加することにより効果が増大する。特に、分光増感色素の少なくとも1種が実質的に有機溶媒及び/又は界面活性剤が存在しない水系中に分散させた、実質的に水に難溶性の固体微粒子分散物の状態で添加されることが好ましい。
【0206】
本発明において、分光増感色素を固体微粒子状の分散物として添加する場合の分光増感色素の水に対する溶解度は、2×10-4〜4×10-2モル/リットルであることが好ましく、より好ましくは1×10-3〜4×10-2モル/リットルである。
【0207】
分光増感色素の添加時期は、化学熟成工程時、特に好ましくは、化学熟成開始時に行うこともでき、また、ハロゲン化銀乳剤の核形成工程時から脱塩工程終了までに添加することによって、分光増感効率の優れた高感度ハロゲン化銀乳剤が得られるが、更に脱塩工程終了後から化学熟成工程を経て塗布工程直前までのいずれかの時期に、前記の工程(核形成工程時から脱塩工程終了まで)に添加した色素と同一もしくは別種の分光増感色素を、追加して添加しても良い。
【0208】
化学増感に用いられるセレン増感剤は、広範な種類のセレン化合物を含む。例えば、これに関しては、米国特許第1,574,944号、同1,602,592号、同1,623,499号、特開昭60−150046号、特開平4−25832号、同4−109240号、同4−147250号等に記載されている。有用なセレン増感剤としては、コロイドセレン金属、イソセレノシアネート類(例えば、アリルイソセレノシアネート等)、セレノ尿素類(例えば、N,N−ジメチルセレノ尿素、N,N,N′−トリエチルセレノ尿素、N,N,N′−トリメチル−N′−ヘプタフルオロセレノ尿素、N,N,N′−トリメチル−N′−ヘプタフルオロプロピルカルボニルセレノ尿素、N,N,N′−トリメチル−N′−4−ニトロフェニルカルボニルセレノ尿素等)、セレノケトン類(例えば、セレノアセトン、セレノアセトフェノン等)、セレノアミド類(例えば、セレノアセトアミド、N,N−ジメチルセレノベンズアミド等)、セレノカルボン酸類及びセレノエステル類(例えば、2−セレノプロピオン酸、メチル−3−セレノブチレート等)、セレノフォスフェート類(例えば、トリ−p−トリセレノフォスフェート等)、セレニド類(例えば、トリフェニルフォスフィンセレニド、ジエチルセレニド、ジエチルジセレニド等)が挙げられる。特に、好ましいセレン増感剤は、セレニド類、セレノ尿素類、セレノアミド類、及びセレンケトン類である。
【0209】
これらのセレン増感剤の使用技術の具体例は,下記の特許明細書に開示されている。米国特許第1,574,944号、同1,602,592号、同1,623,499号、同3,297,446号、同3,297,447号、同3,320,069号、同3,408,196号、同3,408,197号、同3,442,653号、同3,420,670号、同3,591,385号、フランス特許第2,693,038号、同2,093,209号、特公昭52−34491号、同52−34492号、同53−295号、同57−22090号、特開昭59−180536号、同59−185330号、同59−181337号、同59−187338号、同59−192241号、同60−150046号、同60−151637号、同61−246738号、特開平3−4221号、同3−24537号、同3−111838号、同3−116132号、同3−148648号、同3−237450号、同4−16838号、同4−25832号、同4−32831号、同4−96059号、同4−109240号、同4−140738号、同4−140739号、同4−147250号、同4−149437号、同4−184331号、同4−190225号、同4−191729号、同4−195035号、英国特許第255,846号、同861,984号。尚、H.E.Spencer等著Journal of Photographic Science,31,158〜169(1983)等の科学文献にも開示されている。
【0210】
セレン増感剤の使用量は、使用するセレン化合物、ハロゲン化銀粒子、化学熟成条件等により変わるが、一般にハロゲン化銀1モル当たり10-8〜10-4モル程度を用いる。また、添加方法は、使用するセレン化合物の性質に応じて、水またはメタノール、エタノールなどの有機溶媒の単独または混合溶媒に溶解して添加する方法でも、或いは、ゼラチン溶液と予め混合して添加する方法でも、特開平4−140739号に開示されている方法、即ち、有機溶媒可溶性の重合体との混合溶液の乳化分散物の形態で添加する方法でも良い。
【0211】
セレン増感剤を用いる化学熟成の温度は、40〜90℃の範囲が好ましい。より好ましくは、45℃以上80℃以下である。また、pHは4〜9、pAgは6〜9.5の範囲が好ましい。
【0212】
化学増感において用いられるテルル増感剤及び増感法に関しては、米国特許第1,623,499号、同3,320,069号、同3,772,031号、同3,531,289号、同3,655,394号、英国特許第235,211号、同1,121,496号、同1,295,462号、同1,396,696号、カナダ特許第800,958号、特開平4−204640号、同4−333043号等に開示されている。
【0213】
有用なテルル増感剤の例としては、テルロ尿素類(例えば、N,N−ジメチルテルロ尿素、テトラメチルテルロ尿素、N−カルボキシエチル−N,N′−ジメチルテルロ尿素、N,N′−ジメチル−N′−フェニルテルロ尿素)、ホスフィンテルリド類(例えば、トリブチルホスフィンテルリド、トリシクロヘキシルホスフィンテルリド、トリイソプロピルホスフィンテルリド、ブチル−ジイソプロピルホスフィンテルリド、ジブチルフェニルホスフィンテルリド)、テルロアミド類(例えば、テルロアセトアミド、N,N−ジメチルテルロベンズアミド)、テルロケトン類、テルロエステル類、イソテルロシアナート類などが挙げられる。テルル増感剤の使用技術は、セレン増感剤の使用技術に準じる。
【0214】
これら増感に加え、還元増感を併用することも好ましい。該還元増感は、ハロゲン化銀粒子の成長途中に施すのが好ましい。成長途中に施す方法としては、ハロゲン化銀粒子が成長しつつある状態で還元増感を施す方法だけでなく、ハロゲン化銀粒子の成長を中断した状態で還元増感を施し、その後に還元増感されたハロゲン化銀粒子を成長せしめる方法をも含む。
【0215】
セレン化合物やテルル化合物で増感することができるが、更に硫黄化合物や金塩のごとき貴金属塩による増感もできる。また還元増感することもできるし、またこれらの方法を組み合せて増感するこができる。
【0216】
適用できる硫黄増感剤としては、米国特許1,574,944号、同2,410,689号、同2,278,947号、同2,728,668号、同3,501,313号、同3,656,955号、西独出願公開(OLS)1,422,869号、特開昭56−24937号、同55−45016号等に記載されている硫黄増感剤を用いることが出来る。具体例としては、1,3−ジフェニルチオ尿素、トリエチルチオ尿素、1−エチル−3−(2−チアゾリル)チオ尿素などのチオ尿素誘導体、ローダニン誘導体、ジチアカルバミン酸類、ポリスルフィド有機化合物、硫黄単体などが好ましい例として挙げられる。尚、硫黄単体としては、斜方晶系に属するα−硫黄が好ましい。
【0217】
金増感剤としては、塩化金酸、チオ硫酸金、チオシアン酸金等の他に、チオ尿素類、ローダニン類、その他各種化合物の金錯体を挙げることができる。
【0218】
硫黄増感剤及び金増感剤の使用量は、ハロゲン化銀乳剤の種類、使用する化合物の種類、熟成条件などによって一様ではないが、通常は、ハロゲン化銀1モル当たり、1×10-9〜1×10-4モルであることが好ましく、更に好ましくは1×10-8〜1×10-5モルである。
【0219】
硫黄増感剤及び金増感剤の添加方法は、水或いはアルコール類、その他無機或いは有機溶媒に溶解し、溶液の形態で添加しても良く、水に不溶性の溶媒或いは、ゼラチンのような媒体を利用して、乳化分散させて得られる分散物の形態で添加しても良い。
【0220】
本発明において、硫黄増感及び金増感の両者を同時に施しても良く、また、別々にかつ段階的に施しても良い。後者の場合、硫黄増感を適度に施した後に、或いはその途中に於いて、金増感を施すと好ましい結果が得られることがある。
【0221】
還元増感は、ハロゲン化銀乳剤のハロゲン化銀粒子の成長中に行われるように、ハロゲン化銀乳剤に還元剤および/または水溶性銀塩を添加することによって行われる。
【0222】
還元剤の好ましい例としては、二酸化チオ尿素およびアスコルビン酸およびそれらの誘導体が挙げられる。また別の好ましい還元剤としては、ヒドラジン、ジエチレントリアミンのごときポリアミン類、ジメチルアミンボラン類、亜硫酸塩類等が挙げられる。
【0223】
還元剤の添加量は還元増感剤の種類、ハロゲン化銀粒子の粒径、組成及び晶癖、反応系の温度、pH、pAgなどの環境条件によって変化させることが好ましいが、例えば、二酸化チオ尿素の場合は、大凡の目安として、ハロゲン化銀1モル当たり約0.01〜2mgを用いると好ましい結果が得られる。アスコルビン酸の場合は、ハロゲン化銀1モル当たり約50mg〜2gの範囲が好ましい。
【0224】
還元増感の条件としては、温度は約40〜70℃、時間は約10〜200分、pHは約5〜11、pAgは約1〜10の範囲が好ましい(尚ここで、pAg値はAg+イオン濃度の逆数である)。
【0225】
水溶性銀塩としては、硝酸銀が好ましい。水溶性銀塩の添加により、還元増感技術の一種であるいわゆる銀熟成が行われる。銀熟成時のpAgは1〜6が適当であり、好ましくは2〜4である。温度、pH、時間などの条件は、上記の還元増感条件範囲が好ましい。本発明の還元増感を施されたハロゲン化銀粒子を含むハロゲン化銀写真乳剤の安定剤としては、後記する一般的な安定剤を用いることが出来るが、特開昭57−82831号に開示されている酸化防止剤、および/あるいは、V.S.Gahler著の論文「Zeitshrift fur wissenschaftliche Photographie Bd.63,133(1969)」および特開昭54−1019号に記載されているチオスルフォン酸類を併用するとしばしば良好な結果が得られる。尚、これらの化合物の添加は、結晶成長から塗布直前の調製工程までの乳剤製造工程のどの過程でもよい。
【0226】
本発明においては、化学熟成から塗布までの過程の中で、微粒子ハロゲン化銀を添加することができる。ここで化学熟成から塗布までの過程の間とは、化学熟成中を含み、かつその後、感光材料を構成するために塗布に供せられる場合、それ迄の間に微粒子ハロゲン化銀が添加されることを意味する。
【0227】
例えば、分光増感色素の吸着を強化することを目的として、微粒子沃化銀を添加する場合の添加時期は、化学熟成工程から塗布の直前までのいずれかの工程であればよいが、好ましくは化学熟成工程での添加である。ここで言う化学熟成工程とは、本発明の乳剤の物理熟成及び脱塩操作が終了した時点から、化学増感剤を添加し、その後化学熟成を停止するための操作を施した時点までの間を指す。又、微粒子沃化銀の添加は、時間間隔をとって数回に分けて行ってもよいし、微粒子沃化銀の添加後に、更に別の化学熟成済み乳剤を加えてもよい。微粒子沃化銀を添加する際の本発明の乳剤液の温度は、30〜80℃の範囲が好ましく、更には40〜65℃の範囲が特に好ましい。又、本発明は添加する微粒子沃化銀が添加後、塗布直前までの間に一部もしくは全部が消失する条件で実施されることが好ましく、更に好ましい条件は添加した微粒子ハロゲン化銀の20%以上が塗布直前において消失していることである。
【0228】
ハロゲン化銀乳剤を含有する層ないし該乳剤層以外の構成層のいずれか任意の少なくとも1層に、現像処理中に脱色又は/及び流出可能な染料を含有させてもよい。この場合、高感度、高鮮鋭度で、かつ色素ステインの少ない感光材料が得られる。感光材料に用いられる染料としては、感光材料に応じて、所望の波長を吸収して該波長の影響を除くことにより、鮮鋭性を向上させ得るような染料から適宜に選択して使用することが出来る。該染料は感光材料の現像処理中に脱色若しくは流出し、画像完成時には着色が視認出来ない状態となっていることが好ましい。
【0229】
本発明の画像形成材料に用いられる染料の具体例は、西独特許第616,007号、英国特許第584,609号、同1,177,429号、特公昭26−7777号、同39−22069号、同54−38129号、特開昭48−85130号、同49−99620号、同49−114420号、同49−129537号、同50−28827号、同52−108115号、同57−185038号、米国特許第1,878,961号、同1,884,035号、同1,912,797号、同2,098,891号、同2,150,695号、同2,274,782号、同2,298,731号、同2,409,612号、同2,461,484号、同2,527,583号、同2,533,472号、同2,865,752号、同2,956,879号、同3,094,418号、同3,125,448号、同3,148,187号、同3,177,078号、同3,247,127号、同3,260,601号、同3,282,699号、同3,409,433号、同3,540,887号、同3,575,704号、同3,653,905号、同3,718,472号、同3,865,817号、同4,070,352号、同4,071,312号、PBレポート74175号、PHOTO.ABS.1,28(′21)等に記載されている。
【0230】
染料を添加含有せしめる構成層は、感光材料のいずれの写真構成層でもよい。即ち、感光材料を構成する感光性乳剤層、該乳剤層塗設面側の他の親水性コロイド層(例えば、中間層、保護層、下引層の如き非感光性層)などの少なくとも1層中に含有させれば良い。染料はハロゲン化銀乳剤層若しくはそれより支持体に近い層又はその両方にあることが好ましく、更に好ましくは、透明支持体に隣接した塗設層中に添加するのが効果的である。染料は支持体に近い側でその濃度が高いことが好ましい。
【0231】
上記染料の添加量は、鮮鋭性の目標に応じて、変えることが出来る。好ましくは、0.2〜20mg/m2、より好ましくは、0.8〜15mg/m2である。
【0232】
上記染料は、通常の方法によって親水性コロイド層中に導入出来る。即ち、染料を適当な濃度の水溶液として、又は、固体状微粒子分散物として、導入出来る。尚、具体的には、特開平1−158430号、同2−115830号、同4−251838号等が参考になる。
【0233】
ハロゲン化銀乳剤層を着色する場合には、塗布前のハロゲン化銀乳剤液中に、また親水性コロイドの水溶液に加えて、これらの液を支持体上に直接或いは他の親水性コロイド層を介して種々の方法で塗布すれば良い。
【0234】
前記した如く染料は、支持体に近い側でその濃度が高いことが好ましいのであるが、このように染料を支持体に近い側に固定しておくためにモルダント剤を用いることが出来る。例えば、前記した染料の少なくとも1種と結合させるものとして、非拡散性モルダント剤を用いることが出来、このようなものとしては、例えば、西独特許第2,263,031号、英国特許第1,221,131号、同1,221,195号、特開昭50−47624号、同50−71332号、特公昭51−1418号、米国特許第2,548,564号、同2,675,316号、同2,795,519号、同2,839,401号、同2,882,156号、同3,048,487号、同3,184,309号、同3,444,138号、同3,445,231号、同3,706,563号、同3,709,690号、同3,788,855号等に記載されている化合物を好ましく用いることが出来る。
【0235】
非拡散性モルダントと染料を結合させる方法は、当業界で知られている種々の方法にて行われるが、特に、ゼラチンバインダー中にて結合させる方法が通常適用される。その他、適当なバインダー中にて結合せしめ、ゼラチン水溶液中に超音波等にて分散させる方法も適用出来る。
【0236】
また、結合比は化合物により一様ではないが、通常水溶性染料1部に対して、非拡散性モルダントを0.1部から10部にて結合させる。そして、水溶性染料として添加する量は、非拡散性モルダントと結合させているため、該染料を単独で用いるよりも多量に用いることが出来る。
【0237】
感光材料中に含有せしめる場合、構成層として染料と非拡散性モルダントとの結合物を含有する構成層を新設してもよく、その位置は、任意に選択出来るが、好ましくは、透明支持体に隣接した塗設層として用いるのが効果的である。
【0238】
これらのハロゲン化銀乳剤を印刷用の感光材料に適用しようとする場合には、硬調化剤としてヒドラジン化合物やテトラゾリウム化合物を用いることができる。さらに造核促進剤を使用することもできる。これらの構成は目的とする用途に応じて調整できる。
【0239】
本発明に係るハロゲン化銀感光材料には、その他各種の写真用添加剤を用いることができる。公知の添加剤としては、例えば、RD17643(1978年12月)、同18716(1979年11月)及び同308119(1989年12月)に記載された化合物が挙げられる。これら三つのRDに示されている化合物種類と記載箇所を以下に掲載した。
【0240】
【表1】
【0241】
支持体としては、前述のポリエチレンテレフタレート(PET)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)等の他に上記のRDに記載されているものも使用できるが、これら支持体の表面は、塗布層の接着をよくするために、本発明の下引層を設ける。支持体を設ける際に支持体上にコロナ放電、グロー放電、紫外線照射などを施してもよい。また、塗設した下引層上に、コロナ放電、グロー放電、紫外線照射などを施し、感光性層を設けてもよい。
【0242】
ハロゲン化銀写真感光材料には、他に必要に応じて、アンチハレーション層、中間層、フィルター層などを設けることができる。
【0243】
ハロゲン化銀写真感光材料において、写真乳剤層その他の親水性コロイド層は種々の塗布法により支持体上または他の層上に塗布できる。塗布には、ディップ塗布法、ローラー塗布法、カーテン塗布法、押しだし塗布法、スライド・ホッパー法などを用いることができる。詳しくは、RD第176巻、P.27〜28の「Coating procedures」の項に記載されている方法を用いる事ができる。
【0244】
尚、ハロゲン化銀乳剤は、乳剤層またはその他の層のある層に現像薬、例えば、アミノフェノール、アスコルビン酸、ピロカテコール、ハイドロキノン、フェニレンジアミンまたは3−ピラゾリドンを含んでもよい。
【0245】
次にハロゲン化銀写真感光材料の好ましい現像処理について述べる。
【0246】
ハロゲン化銀写真感光材料の現像処理は、白黒現像あるいはカラー現像等、現像方式は特に限定されない。現像液の現像主薬の例として、特開平4−15641号、同4−16841号などに記載のジヒドロキシベンゼン類、例えば、ハイドロキノン、パラアミノフェノール類、例えば、p−アミノフェノール、N−メチル−p−アミノフェノール、2,4−ジアミノフェノールなど、3−ピラゾリドン類、例えば、1−フェニル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−メチル−4−ヒドロキシメチル−3−ピラゾリドン、5,5−ジメチル−1−フェニル−3−ピラゾリドン、レダクトン類、例えば、アスコルビン酸、エリソルビン酸等で、またこれらを併用して用いることが好ましい。
【0247】
また、上記パラアミノフェノール類、3−アミノピラゾリドン類の好ましい使用量は0.004モル/リットルであり、より好ましくは0.04〜0.12モル/リットルである。
【0248】
また、これら全現像処理液構成成分中に含まれるジヒドロキシベンゼン類、パラアミノフェノール類、3−ピラゾリドン類の総モル数が0.1モル/リットル以下が好ましい。
【0249】
保恒剤としては、亜硫酸塩類、例えば亜硫酸カリウム、亜硫酸ナトリウム、レダクトン類、例えば、ピペリジノヘキソースレダクトンなどを含んでもよく、これらは、好ましくは0.2〜1モル/リットル、より好ましくは0.3〜0.6モル/リットル用いるのがよい。また、アスコルビン酸類を多量に添加することも処理安定性につながる。
【0250】
アルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、第三燐酸ナトリウム、第三燐酸カリウムの如きpH調節剤を含む。さらに特開昭61−28708号に記載の硼酸塩、同60−93439号に記載のサッカローズ、アセトオキシム、5−スルホサリチル酸、燐酸塩、炭酸塩などの緩衝剤を用いてもよい。これらの薬剤の含有量は、現像液のpHを9.0〜13、好ましくはpH10〜12.5とするように選ぶ。
【0251】
溶解助剤としては、ポリエチレングリコール類、およびこれらのエステルなど、増感剤としては、例えば、四級アンモニウム塩など、現像促進剤、界面活性剤などを含有させることができる。
【0252】
銀スラッジ防止剤としては、特開昭56−106244号に記載の銀汚れ防止剤、特開平3−51844号に記載のスルフィド、ジスルフィド化合物、特願平4−92947号に記載のシステイン誘導体あるいはトリアジン化合物が好ましく用いられる。
【0253】
有機抑制剤としてアゾール系有機カブリ防止剤、例えば、インダゾール系、イミダゾール系、ベンツイミダゾール系、トリアゾール系、ベンツトリアゾール系、テトラゾール系、チアジアゾール系化合物が用いられる。
【0254】
無機抑制剤としては、臭化ナトリウム、臭化カリウム、沃化カリウムなどを含有する。この他、L.F.A.メイソン著「フォトグラフィック・プロセッシング・ケミストリー」フォーカルプレス社刊(1966年)の226〜229頁、米国特許第2,193,015号、同2,592,364号、特開昭48−64933号などに記載のものを用いてもよい。処理液に用いられる水道水中に混在するカルシウムイオンを隠蔽するためのキレート剤には、有機キレート剤として特開平1−193853号に記載の鉄とのキレート安定化定数が8以上のキレート剤が好ましく用いられる。無機キレート剤としては、ヘキサメタ燐酸ナトリウム、ヘキサメタ燐酸カルシウム、ポリ燐酸塩等がある。
【0255】
現像硬膜剤としては、ジアルデヒド系化合物を用いてもよい。この場合、グルタルアルデヒドが好ましく用いられる。
【0256】
現像剤の処理温度は、好ましくは25〜50℃で、より好ましくは30〜40℃である。現像時間は5〜90秒であり、より好ましくは8〜60秒である。処理時間はDry to Dryで好ましくは20〜210秒、より好ましくは30〜90秒である。
【0257】
補充は処理剤疲労と酸化疲労相当分を行う。補充法としては、特開昭55−126243号に記載の幅、送り速度による補充、特開昭60−104946号に記載の面積補充、特開平1−149156号に記載の連続処理枚数によりコントロールされた面積補充でもよく、好ましい補充量は100〜500ml/m2である。
【0258】
本発明においては前記のハロゲン化銀感光材料は、実質的にホウ素を含有しない定着液で処理される。
【0259】
これにより1999年2月に環境基準が制定された環境に好ましくない化学物質としてのホウ素化合物が廃水と共に環境中に放出されてしまうことがなく、環境負荷の少ない処理を行うことが出来る。
【0260】
本発明においてホウ素化合物を実質的に含まないとは、定着使用液中濃度で0.04モル/リットル以下のことをいう。
【0261】
これらの、ホウ素化合物を含有しない定着液はレダクトン類を含有させることが好ましく、レダクトン類としてはエンジオール型、エナミノール型、エンジアミン型、チオールエノール型及びエナミンチオール型等が挙げられ、下記一般式(1)で表される化合物である。
【0262】
【化15】
【0263】
式中、R1、R2は各々、ヒドロキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、メルカプト基又はアルキルチオ基を表す。Xは5〜6員環を形成するに必要な非金属原子群を表す。
【0264】
一般式(1)において、R1及びR2は各々、ヒドロキシ基、アミノ基(置換基としてエチル、ブチル、ヒドロキシエチル等のアルキル基を有してもよい)、アシルアミノ基(アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ等)、アルキルスルホニルアミノ基(メタンスルホニルアミノ、ブタンスルホニルアミノ等)、アリールスルホニルアミノ基(ベンゼンスルホニルアミノ、p−トルエンスルホニルアミノ等)、アルコキシカルボニルアミノ基(メトキシカルボニルアミノ等)、メルカプト基又はアルキルチオ基(メチルチオ、エチルチオ等)を表すが、R1及びR2として好ましくは、ヒドロキシ基、アミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基を挙げることができる。
【0265】
Xは、5〜6員環を形成するに必要な非金属原子群であり、好ましくは炭素原子、酸素原子或いは窒素原子から構成され、R1、R2が置換している2つのビニル炭素原子とカルボニル炭素原子と共同で5〜6員環を構成する。飽和又は不飽和の縮合環を形成してもよい。
【0266】
Xの構成具体例としては−O−、−C(R3)(R4)−、−C(R5)=、−CO−、−N(R5)−、−N=を組み合わせて構成される。但し、R3、R4、R5及びR6は水素原子、炭素数1〜10の置換してもよい、アルキル基(置換基としてヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホ基を挙げることができる)、ヒドロキシル基、カルボキシル基を表す。更に、この5〜6員環は飽和或いは不飽和の縮合環を形成してもよい。
【0267】
この5〜6員環の例として、ジヒドロフラノン環、ジヒドロピロン環、ピラノン環、シクロペンテノン環、ピロリノン環、ピラゾリノン環、ピリドン環、アザシクロヘキセノン環、ウラシル環、シクロヘプテノン環、シクロヘキサノン環、アゼピン環、シクロオクテノン環などが挙げられるが、5〜6員環が好ましい。中でも好ましい5〜6員環の例として、ジヒドロフラノン環、シクロペンテノン環、シクロヘキサノン環、ピラゾリノン環、アザシクロヘキセノン環、ウラシル環を挙げることができる。
【0268】
なお、一般式(1)で表される化合物は、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウムなどと塩を形成してもよい。
【0269】
以下、一般式(1)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0270】
【化16】
【0271】
【化17】
【0272】
【化18】
【0273】
これらの中で好ましいのは、アスコルビン酸或いはエリソルビン酸(立体異性)の例示(1−1)である。
【0274】
これらの定着液は1液濃縮定着液を所定の濃度に希釈してえるかたち及び固体処理剤のかたちのものを含むが、これらレダクトン類の定着液中への添加量は特に制限はないが、実用的には使用液として処理液1リットル当たり0.1〜30.0g、好ましくは0.5〜20.0g、更に好ましくは1〜15gの範囲である。
【0275】
又、これら一般式(1)で表される化合物を含有する処理液はこれらを1種類のみ含有してもよいし、2種類以上含有してもよい。
【0276】
又、本発明に用いるホウ素化合物を含有しない定着液中には下記一般式(2)で表される化合物を含有することが好ましい。
【0277】
一般式(2)
R0−(A0)n−COOM0
式中、A0は側鎖に少なくとも1つ以上の水酸基を有するアルキレン基又はカルボニル基を表す。nは0以上の整数を表すが、R0が水素原子の場合はnは1以上の整数を表す。R0は水素原子又は水酸基を有するアルキル基を表す。又、一般式(2)はカルボキシル基を遊離の酸又は塩のかたちで1つ含有するが、R0やA0の部分にはカルボキシル基は置換せず、1分子内にトータルとして2つ以上含有しない。又、一般式(2)の炭素数は2〜10が好ましい。M0は水素原子、アルカリ金属原子(例えばカリウム、ナトリウム)又は4級アンモニウム基を表すが、素材の溶解性や作業の安全性の観点から金属原子が好ましく用いられる。
【0278】
以下に本発明の一般式(2)で表される化合物の例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0279】
【化19】
【0280】
【化20】
【0281】
【化21】
【0282】
これらの定着液は1液濃縮定着液を所定の濃度に希釈して得るかたちのもの及び固形処理剤から得られるものを含む。これら一般式(2)の化合物の定着液中への添加量は特に制限はないが、実用的には使用液濃度で、処理液1リットル当たり0.1〜20.0g、好ましくは0.5〜15.0g、更に好ましくは1〜10gの範囲である。
【0283】
又、これら一般式(2)で表される化合物を含有する処理液はこれらを1種類のみ含有してもよいし、2種類以上含有してもよい。
【0284】
又、これら一般式(1)及び(2)で表される化合物を同時に含む定着液も好ましく使用することが出来る。
【0285】
前述したように、本発明においてホウ素化合物を実質的に含まないとは、定着使用液中濃度で0.04モル/リットル以下のことをいう。
【0286】
次に、本発明に用いられる濃縮定着液、固形定着剤、定着液(以下総称して定着剤とする)について説明する。
【0287】
定着剤としては、チオ硫酸塩を含有する。チオ硫酸塩は通常、リチウム、カリウム、ナトリウム、アンモニウム塩として用いられるが、好ましくはチオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウムが用いられる。アンモニウム塩として用いることにより定着速度の速い定着液が得られるが、保存性などの点からはナトリウム塩が好ましい。
【0288】
チオ硫酸塩の濃度は、溶解又は希釈した定着液の濃度として好ましくは0.1〜5モル/リットルであり、より好ましくは0.5〜2モル/リットル、更に好ましくは0.7〜1.8モル/リットルである。その他、定着主薬として沃化物塩やチオシアン酸塩なども用いることができる。
【0289】
本発明の定着液は所望により、亜硫酸塩、重亜硫酸塩或いはメタ重亜硫酸塩を含有してもよい。亜硫酸塩、重亜硫酸塩或いはメタ重亜硫酸塩としては、リチウム、カリウム、ナトリウム、アンモニウム塩等が好ましく用いられる。
【0290】
本発明の定着液は水溶性アルミニウム塩を含有する。水溶性アルミニウム塩としては、例えば、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、カリ明礬などの形態で添加するのが好ましい。また、水溶性クロム塩を含有しても良い。水溶性クロム塩としてはクロム明礬などを挙げることができる。これら、クロム塩又はアルミニウム塩の添加量は溶解又は希釈した定着液の濃度として0.2〜30g/リットルで、好ましくは1.2〜20g/リットルである。
【0291】
その他定着液には、酢酸、リン酸等のpH緩衝剤、鉱酸(硫酸、硝酸)や有機酸(クエン酸、蓚酸、リンゴ酸、酒石酸など)、塩酸などの各種酸や金属水酸化物(水酸化カリウム、ナトリウム)等のpH調整剤や硬水軟化能を有するキレート剤を含むことができる。
【0292】
界面活性剤としては、例えば硫酸エステル化物、スルホン化物などのアニオン界面活性剤、ポリエチレングリコール系、エステル系などのノニオン界面活性剤、特開昭57−6840号記載の両性界面活性剤などが挙げられる。
【0293】
定着促進剤としては、例えば、特公昭45−35754号、同58−122535号、同58−122536号に記載のチオ尿素誘導体、米国特許第4,126,459号に記載のチオエーテルなどが挙げられる。
【0294】
定着液の使用時のpHは通常3.8以上、好ましくは4.2〜5.5を有する。
【0295】
本発明でいう固形定着剤とは、粉状、顆粒状、粒状、塊状、錠剤の形態のことをいう。
【0296】
本発明のチオ硫酸塩を含有するパートと水溶性アルミニウム塩を含有するパートからなる固形定着剤において、一般式(1)、(2)で表される化合物は上記どちらのパートに含有しても良い。また、一般式(1)及び(2)で表される化合物を両者とも使用する場合、これらを同じパートに添加しても別のパートに添加しても良い。
【0297】
また本発明の固形定着剤は下記一般式(L)で表される化合物を含有することが好ましい。
【0298】
一般式(L)
R′−(O)uSvOwM
含有量としては固体処理剤の総重量の0.01%以上3.0%以下、好ましくは0.1%以上、2.5%以下、更に好ましくは0.5%以上2.0%以下である。
【0299】
一般式(L)において、R′で表される脂肪族基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基などがあり、アルキル基としては、例えばメチル、エチル、i−プロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、ドデシル等の各基が挙げられる。これらのアルキル基は、更にハロゲン原子(例えば塩素、臭素、フッ素等の原子)、アルコキシ基(例えばメトキシ、エトキシ、1,1−ジメチルエトキシ、ヘキシルオキシ、ドデシルオキシ等の各基)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ、ナフチルオキシ等の各基)、アリール基(例えばフェニル、ナフチル等の各基)、アルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ブトキシカルボニル、2−エチルヘキシルカルボニル等の各基)、アリールオキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル、ナフチルオキシカルボニル等の各基)、アルケニル基(例えばビニル、アリル等の各基)、複素環基(例えば2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、モルホリル、ピペリジン、ピペラジル、ピリミジン、ピラゾリン、フリル等の各基)、アルキニル基(例えばプロパルギル基)、アミノ基(例えばアミノ、N,N−ジメチルアミノ、アニリノ等の各基)、シアノ基、スルホアミド基(例えばメチルスルホニルアミノ、エチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、オクチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ等の各基)によって置換されてもよい。
【0300】
アルケニル基としては、例えばビニル基、アリル基等が挙げられ、アルキニル基としては例えばプロパルギル基が挙げられる。
【0301】
R′で表される芳香族基としては、例えばフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0302】
R′で表される複素環基としては、例えばピリジル基(2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル等の各基)、チアゾリル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基、フリル基、チェニル基、ピロリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、セレナゾリル基、スルホラニル基、ピペジリニル基、ピラゾリル基、テトラゾリル基等が挙げられる。
【0303】
上記、アルケニル基、アルキニル基、芳香族基、複素環基は、いずれもR′で表されるアルキル基及びアルキル基の置換基として示した基と同様な基によって置換することができる。
【0304】
又、uは0又は1、vは1又は2、wは2〜8の整数を表す。
【0305】
Mで表される基は、好ましくは金属イオン又は有機カチオンである。金属イオンとしては、例えばリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等が挙げられ、有機カチオンとしては、例えばアンモニウムイオン(アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等の各イオン)、ホスホニウムイオン(テトラフェニルホスホニウムイオン)、グアニジルイオン等が挙げられる。
【0306】
以下に一般式(L)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらの限定されるものではない。
【0307】
L−1 C2H5SO3Na
L−2 CH3(CH2)6SO3Na
L−3 CH3(CH2)7SO3Na
L−4 CH3(CH2)5OSO3Na
L−5 CH3(CH2)6OSO3Na
L−6 CH3(CH2)7OSO3Na
L−7 CH3O(CH2)2SO3Na
本発明の定着剤には、界面活性剤を含有させても良い、例えば硫酸エステル化物、スルホン化物などのアニオン活性剤、ポリエチレングリコール系、エステル系などのノニオン界面活性剤、両性活性剤などが挙げられる。更に湿潤剤を含有させても良い。例えばアルカノールアミン、アルキレングリコールなどが挙げられる。又、更に定着促進剤を含有させても良い。例えばチオ尿素誘導体、分子内に三重結合を有するアルコール、チオエーテルなどが挙げられる。
【0308】
感光材料の現像全処理時間(Dry to Dry)は特に限定されないが、白黒現像の場合、25秒以下の超迅速処理することができる。現像工程時間又は現像時間とは、処理する感光材料の先端が自動現像機(以下、自現機と呼ぶ)の現像タンク液に浸漬してから次の定着液に浸漬するまでの時間、定着時間とは定着タンク液に浸漬してから次の水洗タンク液(安定液)に浸漬するまでの時間、水洗時間とは、水洗タンク液に浸漬している時間をいう。また乾燥時間とは、通常自現機には、35〜100℃、好ましくは40〜80℃の熱風が吹きつけられる乾燥ゾーンが設置されており、その乾燥ゾーンに入っている時間をいう。感光材料の現像処理では、現像時間が3〜15秒、好ましくは3〜10秒、現像温度は25〜50℃が好ましく、30〜40℃がより好ましい。定着温度及び時間は20〜50℃で2〜12秒が好ましく、30〜40℃で2〜10秒がより好ましい。水洗または安定浴温度及び時間は0〜50℃で2〜15秒が好ましく、15〜40℃で2〜8秒がより好ましい。現像、定着及び水洗(又は安定化)された感光材料は、水洗水をしぼり切るスクイズローラーを経て乾燥される。乾燥は4〜100℃で行われ、乾燥時間は環境温度によって適宜変えられるが、通常は3〜12秒でよく、好ましくは40〜80℃で3〜8秒である。より好ましくは遠赤外線ヒーターを使用することが好ましい。
【0309】
本発明においては、現像液や定着液の補充量がハロゲン化銀写真感光材料1m2当たり200ml以下で処理することができる。
【0310】
その他、本発明の実施に際しては、写真技術において用いられる各種の技術を適用することができる。
【0311】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されない。
【0312】
合成例1
(導電性組成物の作製)
官能基を有するポリマー微粒子及び水溶性ポリマーを混合攪拌後、加熱し導電性組成物を作製した。使用したポリマー粒子種、水溶性ポリマー種および混合比(固形分換算)は、表2に示した。
【0313】
【表2】
【0314】
(試験方法)
以下の実施例で用いた試験方法を以下に示す。
【0315】
〈膜付き試験〉
ハロゲン化銀写真感光材料を23℃、55%RHの部屋で24時間調湿し、試料をアルミニウム箔を黒色のポリエチレンフィルムでラミネートしたバリア袋に入れ、40℃のオーブンにて3週間加温した後、冷却し、開封して試料を取り出し、それぞれの膜付き評価を行った。尚、バリア袋にて加温する方法は製品の有効期間中の性能を加速的に予測するものである。
【0316】
20cm×20cmの大きさの未現像及び現像済みのハロゲン化銀写真感光材料の評価面に、切断面と水平面のなす角度が45度の角度になるように、剃刀でわずかに支持体面まで到達するように、長さ30cmの傷をつけた。23℃、80%RHの雰囲気中に24時間調湿した後に傷をつけた部分を跨いで直角に、24mm幅のセロハンテープ(ニチバン(株)製セロテープ、登録商標)を長さ約50mm張り付け密着させる。45度の傷の鋭角側から試料面に概ね平行にセロハンテープの端をもち急激に引っ張り引き剥がした。試料の膜面が剥がれた面積を調べ下記の如く評価した。
【0317】
5:全く剥離されていない。
【0318】
4:傷のところが若干剥離され、全面積の10%未満が剥離された。
【0319】
3:同10%以上50%未満が剥離された。
【0320】
2:同50%以上80%未満が剥離された。
【0321】
1:同80%以上が剥離された。
【0322】
〈乾燥ムラの試験〉
現像処理後の透過濃度が2.5となるように均一露光されたフィルムを乾燥性の評価同様に処理し、得られた現像処理済みフィルムに光を反射させて観察し、その際観察されるムラについて下記5段階評価を行った。
【0323】
5:乾燥ムラは全く観察されない。
【0324】
4:フィルム端に僅かにムラが観察される。
【0325】
3:フィルム周囲(額縁状)に乾燥ムラが観察される。
【0326】
2:フィルム半分から中央部にかけてもやもやした乾燥ムラが観察される。
【0327】
1:フィルム全面に大きな乾燥ムラが観察される。
【0328】
実施例1
〔下引済み支持体1−1の作製〕
2軸延伸熱固定済みの厚さ100μmのPETフィルムの両面に、8W/m2・分のコロナ放電処理を施し、一方の面に下記下引下層塗布液e1−1を乾燥膜厚0.8μmになるように塗設し、乾燥させて感光層側下引層E1−1とし、また反対側の面に下引塗布液b1−1を乾燥膜厚0.8μmになるように塗設し、乾燥させてBC下引下層B1−1とした。
【0329】
《下引下層塗布液e1−1》
ブチルアクリレート30重量%、
t−ブチルアクリレート20重量%、
スチレン25重量%及び2−ヒドロキシエチルアクリレート25重量%の共重合体ラテックス液(固形分30%) 270g
(C−1) 0.6g
ヘキサメチレン−1,6−ビス(エチレンウレア) 0.8g
水で1lに仕上げる。
【0330】
《下引下層塗布液b1−1の調製》
ブチルアクリレート40重量%、
スチレン20重量%及びグリシジルアクリーレート40重量%の共重合体ラテックス液(固形分30%) 270g
(C−1) 0.6g
ヘキサメチレン−1,6−ビス(エチレンウレア) 0.8g
水で1lに仕上げる。
【0331】
〈下引上層E1−2の作製〉
上記下引層E1−1の上に、8W/m2・分のコロナ放電を施し、下記下引上層液e1−2を10ml/m2塗布し、100℃、1分乾燥し下引上層E1−2とした。
【0332】
《下引上層液e1−2の調製》
ゼラチン 10g
(C−1) 0.2g
(C−2) 0.2g
(C−3) 0.1g
(C−F) 0.1g
平均粒径3μmのシリカ粒子 0.1g
水で1lに仕上げる。
【0333】
〈帯電防止層B1−2の作製〉
上記下引層B1−1の上に、8W/m2・分のコロナ放電を施し、帯電防止液b1−2を、ドライ膜厚が1.0ミクロンになるよう、ロールコーターとワイヤーバーの組み合わせで塗布し、100℃、1分乾燥し、帯電防止層B1−2とした。
【0334】
《帯電防止液b1−2の調製》
合成例1の導電性組成物1(固形分で) 90g
平均粒径3μmにのシリカ粒子 0.1g
(C−1) 0.1g
(C−4) 12g
水で1.5lに仕上げる。
【0335】
【化22】
【0336】
〔下引済み支持体1−2〜1−14の作製〕
合成例1の導電性組成物1〜4、比1〜2とゼラチンを表3に示す様に使用した以外は、支持体1と同様に下引済み支持体1−2〜1−14を作製した。
【0337】
(支持体の熱処理)
上記の下引済み支持体の下引乾燥工程において、支持体を140℃で加熱し、その後徐々に冷却した。
【0338】
かくして作製した支持体に、以下の画像形成材料を構成する層を設けた。
【0339】
〔ハロゲン化銀写真感光材料の作製〕
ハロゲン化銀乳剤の調製
硝酸銀63gを溶解した硝酸銀水溶液250mlと、乳剤全体の銀1モルあたり1×10-7モルに相当するK2Rh(H2O)Cl5、及びK3IrCl6を含む臭化カリウム20gと塩化ナトリウム14gを溶解したハロゲン塩水溶液250mlを、塩化ナトリウム(0.5%)と1,3−ジメチル−2−イミダゾリチオン(0.002%)とクエン酸(0.05%)を含有する2%ゼラチン水溶液に撹拌しながら38℃で12分間ダブルジェット法で添加し、平均粒径0.20μm、塩臭化銀粒子を得た。続いて硝酸銀107gを溶解した硝酸銀水溶液450mlと臭化カリウム28gと塩化ナトリウム28gを溶解したハロゲン塩水溶液450mlをダブルジェット法で20分間かけて添加した。その後、撹拌しながら銀1モルあたり1×10-3モルのヨウ化カリウム溶液を加えてコンバージョンを行い通常のフロキュレーション法により脱塩水洗した。
【0340】
次に銀1モルあたりゼラチン40gを加え、pH6.0、pAg7.5に調整した後、ベンゼンチオスルホン酸ナトリウム7mg、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム2mg、チオ硫酸ナトリウム5mg及び塩化金酸8mgを加え60℃で70分間加熱し化学増感を施した。安定剤として4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a−テトラザインデン150mg及び防腐剤としてプロキセル100mgを加えた。得られた粒子は平均粒径0.27μm、塩化銀含有率60モル%のヨウ塩臭化銀立方体粒子であった。
【0341】
このハロゲン化銀乳剤を用い、写真用支持体の下引上層E1−2の上に、下記の処方1のハロゲン化銀乳剤塗布液を銀量2.9g/m2、ゼラチン量が1.2g/m2になるように、更にその上に保護層として下記処方2の塗布液を、ゼラチン量が0.6g/m2になるよう乳剤層と保護層の同時重層塗布を行った。また反対側の帯電防止層B1−2上には、下記処方3のバック層をゼラチン量が0.6g/m2になるように、更にその上に下記処方4のバック層保護層を、ゼラチン量が0.4g/m2になるようにそれぞれを同時重層塗布することで、ハロゲン化銀印刷用写真感光材料試料を得た。
【0342】
【0343】
【化23】
【0344】
【化24】
【0345】
この様にして、下引済み支持体1−1〜14上に、上記感光材料を構成する層を設けた試料1−1〜1−14を作製した。(表3)
こうして得られた試料を下記の如き処方及び条件で下記に示す現像液及び定着液により処理した。
【0346】
《現像濃厚液組成》
ジエチルトリアミン5酢酸・5ナトリウム塩 3.6g
亜硫酸ナトリウム 42.6g
亜硫酸カリウム(50%水溶液) 31.8g
炭酸カリウム 40g
ハイドロキノン 21g
4−メチル−4−ヒドロキシメチル−1−フェニル−3−ヒドラゾリドン
(ジメゾンS) 0.9g
臭化カリウム 5g
ベンゾトリアゾール 0.2g
5−メチルベンゾトリアゾール 0.13g
ジエチレングリコール 40g
2−メルカプト−6−ヒドロキシプリン 0.06g
水と水酸化カリウムを加えて400mlとし、pH=10.78に調節する。
【0347】
《定着濃厚液▲1▼組成》
チオ硫酸アンモニウム(70%水溶液) 195ml
亜硫酸ナトリウム 22g
ホウ酸 9.8g
酢酸(80%水溶液) 36.6g
酒石酸 3.0g
硫酸アルミニウム(27%水溶液) 25ml
水酸化ナトリウム(48%水溶液) 19.3g
水で400mlにしあげる。pHは4.72であった。
【0348】
《定着濃厚液▲2▼組成》
チオ硫酸アンモニウム(70%水溶液) 195ml
亜硫酸ナトリウム 22g
酢酸(80%水溶液) 36.6g
酒石酸 2.3g
グリコール酸(70%水溶液)(一般式(2)の化合物) 5.3g
硫酸アルミニウム(27%水溶液) 25ml
水酸化ナトリウム(48%水溶液) 19.3g
水で400mlにしあげる。pHは4.72に調整した。
【0349】
《定着濃厚液▲3▼組成》
チオ硫酸アンモニウム(70%水溶液) 195ml
亜硫酸ナトリウム 22.0g
エリソルビン酸ナトリウム1水塩(一般式(1)の化合物) 12.0g
酢酸(80%水溶液) 36.6g
酒石酸 2.3g
硫酸アルミニウム(27%水溶液) 25ml
水酸化ナトリウム(48%水溶液) 19.3g
水で400mlに仕上げる。pHは4.72に調整した。
【0350】
《定着濃厚液▲4▼組成》
チオ硫酸アンモニウム(70%水溶液) 195ml
亜硫酸ナトリウム 22g
エリソルビン酸ナトリウム1水塩(一般式(1)の化合物) 2.4g
酢酸(80%水溶液) 36.6g
酒石酸 2.3g
グリコール酸(70%水溶液)(一般式(2)の化合物) 5.3g
硫酸アルミニウム(27%水溶液) 25ml
水酸化ナトリウム(48%水溶液) 19.3g
水で400mlにしあげる。pHは4.72に調整した。
【0351】
《現像処理条件》
上記濃厚液をそれぞれ水で希釈し1lに仕上げて使用液とし、自動現像機(コニカ(株)製)の処理タンクに必要量充填した。
【0352】
補充液としても同様の使用液を必要量準備した。
【0353】
(工程) (温度) (時間)
現像 38℃ 12秒
定着 35℃ 10秒
水洗 40℃ 10秒
乾燥 50℃ 12秒
合計 44秒
結果を表3に示す。
【0354】
【表3】
【0355】
(結果)
結果は、現像処理前後の膜付及びホウ素化合物を含有しない処理において、乾燥ムラが良好であることを示している。
【0356】
実施例2
〔下引済み支持体2−1の作製〕
2軸延伸熱固定済みの厚さ100μmのPETフィルムの両面に、8W/m2・分のコロナ放電処理を施し、一方の面に下記下引下層塗布液e2−1を乾燥膜厚0.8μmになるように塗設し、乾燥させて感光層下引下層E2−1とし、また反対側の面に下引塗布液b2−1を乾燥膜厚0.8μmになるように塗設し、160℃で乾燥させてBC下引下層B2−1とした。
【0357】
【0358】
【0359】
〈下引上層E2−2の作製〉
上記下引層E2−1の上に、8W/m2・分のコロナ放電を施し、前記下引上層液e1−2を10ml/m2塗布し、140℃、1分乾燥し下引上層E2−2とした。
【0360】
〈帯電防止層B2−2の作製〉
上記下引層B2−1の上に、8W/m2・分のコロナ放電を施し、帯電防止液b1−2を、ドライ膜厚が1.0ミクロンになるよう、ロールコーターとワイヤーバーの組み合わせで塗布し、140℃、1分乾燥し、帯電防止層B2−2とした。この様にして本発明下引済み支持体2−1を作製した。
【0361】
〔本発明下引済み支持体2−2〜2−4の作製〕
本発明下引済み支持体試料2−1において使用した導電性組成物1を表4に示したように2〜4に替え、使用した以外は、支持体2−1と同様にして下引済み支持体2−2〜2−4を作製した。
【0362】
(支持体の熱処理)
上記の下引済み支持体の下引乾燥工程において、支持体を140℃で加熱し、その後徐々に冷却した。
【0363】
かくして作製した支持体に、実施例1で示した感光材料を構成する層を同様にして設け、表4に示したような試料2−1〜2−4を作製した。
【0364】
これを実施例1と同じ処理をしたところ表4に示す結果が得られた。
【0365】
【表4】
【0366】
(結果)
結果は、現像処理前後の膜付が良好で、ホウ素化合物を含有しない処理においても乾燥ムラが良好で、比較例に比べて優れていることを示している。
【0367】
実施例3
〔下引済み支持体3−1の作製〕
2軸延伸熱固定済みの厚さ100μmのPETフィルムの両面に、8W/m2・分のコロナ放電処理を施し、一方の面に前記下引下層塗布液e1−1を乾燥膜厚0.8μmになるように塗設し、乾燥させて感光層側下引下層E3−1とし、また反対側の面に下引塗布液b3−1を乾燥膜厚0.8μmになるように塗設し、160℃で20秒乾燥させてBC側下引下層B3−1とした。
【0368】
《下引下層塗布液b3−1の調製》
ゼラチン 1g
水 1g
酢酸 1g
メタノール 47g
メチレンジクロライド 46g
p−クロロフェノール 4g
〈下引上層E3−2の作製〉
上記下引層E3−1の上に、8W/m2・分のコロナ放電を施し、前記下引上層液e1−2を10ml/m2塗布し、100℃、1分乾燥し下引上層E3−2とした。
【0369】
〈帯電防止層B3−2の作製〉
上記下引層B3−1の上に、8W/m2・分のコロナ放電を施し、帯電防止液b1−2を、ドライ膜厚が1.0ミクロンになるよう、ロールコーターとワイヤーバーの組み合わせで塗布し、140℃、1分乾燥し、帯電防止層B3−2とした。この様にして本発明下引済み支持体試料3−1を作製した。
【0370】
〔本発明下引済み支持体3−2〜3−4の作製〕
本発明下引済み支持体試料3−1において使用した導電性組成物1を表5に示したように2〜4に替え、使用した以外は、支持体3−1と同様にして下引済み支持体3−2〜3−4を作製した。
【0371】
(支持体の熱処理)
上記の下引済み支持体の下引乾燥工程において、支持体を140℃で加熱し、その後徐々に冷却した。
【0372】
かくして作製した支持体に、実施例1で示した感光材料を構成する層を同様にして設け、表5に示したような試料3−1〜3−4を作製した。
【0373】
これを実施例1と同じ処理をしたところ表5に示す結果が得られた。
【0374】
【表5】
【0375】
(結果)
結果は、現像処理前後の膜付が良好であることを示している。又、ホウ素化合物を使用しない処理においても乾燥ムラが良好であった。
【0376】
実施例4
〔下引済み支持体4−1の作製〕
2軸延伸熱固定済みの厚さ100μmのPETフィルムの両面に、8W/m2・分のコロナ放電処理を施し、一方の面に前記下引下層塗布液e1−1を乾燥膜厚0.8μmになるように塗設し、乾燥させて感光層側下引下層E4−1とし、また反対側の面に下引塗布液b4−1を乾燥膜厚0.8μmになるように塗設し、160℃で20秒乾燥させてBC下引下層B4−1とした。
【0377】
《下引下層塗布液b4−1の調製》
塩化ビニリデンラテックス(L−1) 7g
シリカマット剤(3μm) 0.1g
硬膜剤(H−1) 2g
水 90g
ここで、
L−1:塩化ビニリデン/メタクリル酸メチル/アクリロニトリル/アクリル酸グリシジル(90/3/2/5モル比;固形分50%)
H−1:2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−1,3,5−トリアジン・ナトリウムである。
【0378】
〈下引上層E4−2の作製〉
上記下引層E4−1の上に、8W/m2・分のコロナ放電を施し、前記下引上層液e1−2を10ml/m2塗布し、140℃、1分乾燥し下引上層E4−2とした。
【0379】
〈帯電防止層B4−2の作製〉
上記下引層B4−1の上に、8W/m2・分のコロナ放電を施し、帯電防止液b1−2を、ドライ膜厚が1.0ミクロンになるよう、ロールコーターとワイヤーバーの組み合わせで塗布し、140℃、1分乾燥し、帯電防止層B4−2とした。この様にして本発明下引済み支持体4−1を作製した。
【0380】
〔本発明下引済み支持体4−2〜4−4の作製〕
本発明下引済み支持体試料4−1において使用した導電性組成物1を表6に示したように2〜4に替え、使用した以外は、支持体4−1と同様にして下引済み支持体4−2〜4−4を作製した。
【0381】
(支持体の熱処理)
上記の下引済み支持体の下引乾燥工程において、支持体を140℃で加熱し、その後徐々に冷却した。
【0382】
かくして作製した支持体に、実施例1で示した感光材料を構成する層を同様にして設け、表6に示したような試料4−1〜4−4を作製した。
【0383】
これを実施例1と同じ処理をしたところ表6に示す結果が得られた。
【0384】
【表6】
【0385】
結果は、現像処理前後の膜付が良好であり、ホウ素化合物を含有しない処理においても乾燥ムラが良好であることを示している。
【0386】
実施例5
〔下引済み支持体5−1の作製〕
2軸延伸熱固定済みの厚さ100μmのPETフィルムの両面に、8W/m2・分のコロナ放電処理を施し、一方の面に下記下引下層塗布液b5−1を乾燥膜厚0.8μmになるように塗設し、乾燥させて感光層側下引層E5−1とし、また反対側の面に下引塗布液b5−1を乾燥膜厚0.8μmになるように塗設し、140℃で20秒乾燥させてBC側下引層B5−1とした。
【0387】
《下引下層塗布液b5−1の調製》
LA−1(固形分30%) 270g
(C−1) 0.6g
水で1リットルに仕上げる。
【0388】
〈下引上層E5−2の作製〉
上記下引層E5−1の上に、8W/m2・分のコロナ放電を施し、前記下引上層液e1−2を10ml/m2塗布し、140℃、1分乾燥し下引上層E5−2とした。
【0389】
〈帯電防止層B5−2の作製〉
上記下引層B5−1の上に、8W/m2・分のコロナ放電を施し、帯電防止液b1−2の導電性組成物No.1をNo.3にかえたものを、ドライ膜厚が1.0ミクロンになるよう、ロールコーターとワイヤーバーの組み合わせで塗布し、140℃、1分乾燥し、帯電防止層B5−2とし、下引済み支持体5−1を作製した。
【0390】
〔下引済み支持体5−2〜5−4の作製〕
下引き塗布液b5−1のLA−1を表7の様に活性メチレン基を有する他のラテックスLA−9、12、19等に代えた以外は、支持体5−1と同様に下引済み支持体5−2〜5−4を作製した。
【0391】
(支持体の熱処理)
上記の下引済み支持体の下引乾燥工程において、支持体を140℃で加熱し、その後徐々に冷却した。
【0392】
かくして作製した支持体に、実施例1で示した感光材料を構成する層を設け、試料5−1〜5−4を作製した。
【0393】
表2に示したような組合わせで試料5−1〜4を作製した。
【0394】
これを実施例1と同じ処理をしたところ表7に示す結果が得られた。
【0395】
【表7】
【0396】
結果は、現像処理前後の膜付が良好であり、ホウ素化合物を含有しない処理においても乾燥ムラが良好であることを示している。
【0397】
実施例6
〔下引済み支持体6−1の作製〕
2軸延伸熱固定済みの厚さ100μmのPETフィルムの両面に、8W/m2・分のコロナ放電処理を施し、一方の面に下記下引塗布液b6−1を乾燥膜厚0.8μmになるように塗設し、乾燥させて感光層側下引下層E6−1とし、また反対側の面に下引塗布液b6−1を乾燥膜厚0.8μmになるように塗設し、140℃で20秒乾燥させてBC下引下層B6−1とした。
【0398】
《下引下層塗布液b6−1の調製》
混合重合体ラテックス(表8に記載の種類と重量比で) 261g
(C−1) 30g
蒸留水を加えて1000mlとする。
【0399】
以下に使用した重合体ラテックスの種類とTgを示す。
【0400】
A−1:ポリ(スチレン−コ−グリシジルメタクリレート−コ−
ブチルアクリレート)(重量比で20:40:40) Tg=20℃
B−1:ポリ(スチレン−コ−グリシジルメタクリレート−コ−
ブチルアクリレート)(60:40:0.5) Tg=750℃
B−2:ポリ(スチレン−コ−t−ブチルアクリレート−コ−n−
ブチルアクリレート−コ−2−ヒドロキシエチルメタクリレート)
(25:22:28:25) Tg=29℃
B−3:ポリ(スチレン−コ−t−ブチルアクリレート−コ−n−
ブチルアクリレート−コ−2−ヒドロキシエチルメタクリレート)
(27:35:10:28) Tg=64℃
B−4:ポリ(スチレン−コ−ブリルアクリレート−コ−アクリルアミド)
(45:45:10) Tg=55℃
B−5:ポリメチルメタクリレート Tg=125℃
B−6:ポリ(スチレン−コ−グリシジルメタクリレート−コ−
グリシジルメタクリレート−コ−ナトリウムスルホスチレン−コ−
マレイン酸)(18:2:60:20) Tg=5℃
〈下引上層E6−2の作製〉
上記下引層E6−1の上に、8W/m2・分のコロナ放電を施し、前記下引上層液e1−2を10ml/m2塗布し、140℃、1分乾燥し下引上層E6−2とした。
【0401】
〈帯電防止層B6−2の作製〉
上記下引層B6−1の上に、8W/m2・分のコロナ放電を施し、帯電防止液b1−2の導電性組成物No.1をNo.3にかえたものを、ドライ膜厚が1.0ミクロンになるよう、ロールコーターとワイヤーバーの組み合わせで塗布し、140℃、1分乾燥し、帯電防止層B6−2とし、下引き済み支持体6−1を得た。
【0402】
〔下引済み支持体6−2〜18の作製〕
下引き層重合体ラテックスの混合種、比率を表8に準じて使用した以外は、支持体6−1と同様に作製した。
【0403】
(支持体の熱処理)
上記の下引済み支持体の下引乾燥工程において、支持体を140℃で加熱し、その後徐々に冷却した。
【0404】
かくして作製した支持体に、実施例1で示したの感光材料を構成する層を設けた。
【0405】
表8に示したような組合わせで試料6−1〜6−18を作製した。
【0406】
これを実施例1と同じ処理をしたところ表8に示す結果が得られた。
【0407】
【表8】
【0408】
結果は、現像処理前後の膜付が良好であり、ホウ素化合物を含有しない処理においても乾燥ムラが良好であることを示している。
【0409】
実施例7
〔下引済み支持体7−1の作製〕
濃度0.15に青色着色した2軸延伸熱固定済みの厚さ175μmのPETフィルムの両面に、8W/m2・分のコロナ放電処理を施し、両面に前記下引塗布液b5−1を乾燥膜厚0.8μmになるように塗設し、乾燥させて下引層E7−1とした。
【0410】
〈下引上層E7−2の作製〉
上記下引層E7−1の上に、8W/m2・分のコロナ放電を施し、下引上層液として帯電防止液b1−2の導電性組成物No.1をNo.3にかえたものを、ドライ膜厚が1.0ミクロンになるよう、ロールコーターとワイヤーバーの組み合わせで両面塗布し、140℃、1分乾燥し、帯電防止層とし、下引き済み支持体7−1を作製した。
【0411】
〔下引済み支持体7−2〜4の作製〕
表9の様に、下引済み支持体7−1に使用した下引き塗布液b5−1に使用したLA−1の代わりにLA−9、12及び19を使用した以外は、支持体7−1と同様に作製した。
【0412】
(支持体の熱処理)
上記の下引済み支持体の下引乾燥工程において、支持体を140℃で加熱し、その後徐々に冷却した。
【0413】
上記の下引き済み支持体に、以下の様なハロゲン化銀写真感光材料を構成する層を設け、感光材料試料7−1〜7−4を作製した。
【0414】
(Em−1の調製)
下記のようにして平板状沃臭化銀粒子乳剤を調製した。
【0415】
35℃で特公昭58−58288号、同58−58289号に示される混合攪拌機を用いて、溶液A1に溶液B1及び溶液C1の各々475.0mlを、同時混合法により2.0分を要して添加し、核形成を行った。
【0416】
溶液B1及び溶液C1の添加を停止した後、60分の時間を要して溶液A1の温度を60℃に上昇させ、D1の全量を添加し、3%KOHでpHを5.5に合わせた後、再び溶液B1と溶液C1を同時混合法により、各々55.4ml/minの流量で42分間添加した。この35℃から60℃への昇温及び溶液B1、C1による再同時混合の間の銀電位(飽和銀−塩化銀電極を比較電極として銀イオン選択電極で測定)を、溶液E1を用いてそれぞれ+8mV及び+30mVになるよう制御した。
【0417】
添加終了後3%KOHによって、pHを6.0に合わせ直ちに脱塩、水洗を行った。この種乳剤はハロゲン化銀粒子の全投影面積の90%以上が最大隣接辺比が1.0〜2.0の六角平板粒子よりなり、六角平板粒子の平均厚さは0.090μm、平均粒径(円直径換算)は0.510μmであることを電子顕微鏡にて確認した。
【0418】
引き続き、この乳剤を53℃にした後に、分光増感色素(A)、(B)の所定量を、固体微粒子状の分散物として添加後に、4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン(TAI)、アデニン、チオシアン酸アンモニウム、塩化金酸及びチオ硫酸ナトリウムの混合水溶液、沃化銀微粒子乳剤及びトリフェニルホスフィンセレニドの分散液を加え、総計2時間30分の熟成を施した。熟成終了時に安定剤として、更に4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデンの適量を添加した。
【0419】
分光増感色素及びその他の添加剤と、それらの添加量(AgX1モル当たり)を下記に示す。
【0420】
尚、ここでいう沃化銀銀微粒子乳剤とは、3重量%のゼラチンと、沃化銀粒子(平均粒径0.05μ)から成る微粒子乳剤のことである。
【0421】
又、分光増感色素の固体微粒子状分散物は、特願平4−99437号に記載の方法に準じた方法によって調製した。
【0422】
即ち分光増感色素の所定量を、予め27℃に調温した水に加え高速攪拌機(ディゾルバー)で3,500rpmにて、30〜120分間に亘って攪拌することによって得た。
【0423】
上記のセレン増感剤、トリフェニルホスフィンセレンドは分散液にして使用し、この分散液は、次のように調製した。即ち、トリフェニルフォスフィンセレニド120gを50℃の酢酸エチル30kg中に添加、攪拌し、完全に溶解した。他方で写真用ゼラチン3.8kgを純水38kgに溶解し、これにドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム25wt%水溶液93gを添加した。次いで、これらの2液を混合して直径10cmのディゾルバーを有する高速攪拌型分散機により、50℃下において分散翼周速40m/秒で、30分間分散を行った。その後、速やかに減圧下で、酢酸エチルの残留濃度が0.3wt%以下になるまで攪拌を行いつつ、酢酸エチルを除去した。その後、この分散液を純水で希釈して80kgに仕上げた。このようにして得られた分散液の一部を、分取して使用した。
【0424】
(Em−2の調製)
種乳剤としてのEm−1と以下に示す4種の溶液を用い、平板状沃臭化銀粒子乳剤Em−2を調製した。
【0425】
(*)0.06モルの沃化カリウムを含む5.0重量%のゼラチン水溶液6.64リットルに、7.06モルの硝酸銀と、7.06モルの沃化カリウムを含む水溶液それぞれ2リットルを、10分間かけて添加した。微粒子形成中のpHは硝酸を用いて2.0に、温度は40℃に制御した。粒子形成後に、炭酸ナトリウム水溶液を用いてpHを6.0に調整した。
【0426】
反応容器内で溶液A2を55℃に保ちながら激しく攪拌し、そこに溶液B2と溶液C2の半分の量を、35分かけて同時混合法にて添加し、この間pHは5.8に保った。1%KOH溶液にてpHを8.8に合わせた後、溶液B2及び溶液C2の一部と、溶液D2の全量を同時混合法にて添加した。0.5%クエン酸にてpHを6.0に合わせた後、溶液B2及び溶液C2の残量を、25分かけて同時混合法にて添加した。この間pAgは8.9に終始保った。ここで、溶液B2と溶液C2の添加速度は、臨界成長速度に見合ったように時間に対して関数様に変化させた。即ち、成長している種粒子以外に小粒子の発生がないように、またオストワルド熟成により多分散化しないように、適切な添加速度で添加した。
【0427】
添加終了後、Em−1と同様に脱塩、水洗、再分散を行い、再分散後40℃にてpHを5.80、pAgを8.2に調整した。得られたハロゲン化銀乳剤を電子顕微鏡観察したところ、平均粒径0.91μm、平均厚さ0.23μ、平均アスペクト比約4.0、粒径分布の広さ20.5%の平板状ハロゲン化銀粒子であった。
【0428】
引き続き、この乳剤を47℃にした後に、沃化銀微粒子乳剤、下記分光増感色素A、Bの所定量を、固体微粒子状の分散物として添加後に、アデニン、チオシアン酸アンモニウム、塩化金酸及びチオ硫酸ナトリウムの混合水溶液及びトリフェニルホスフィンセレニドの分散液を加え、総計2時間30分の熟成を施した。熟成終了時に、安定剤として4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン(TAI)の適量を添加した。
【0429】
分光増感色素及びその他の添加剤と、それらの添加量(AgX1モル当たり)を下記に示す。
【0430】
分光増感色素(A)
5,5′−ジクロロ−9−エチル−3,3′−ジ−(3−スルホプロピル)オ
キサカルボシアニン・ナトリウム塩の無水物 390mg
分光増感色素(B)
5,5′−ジ−(ブトキシカルボニル)−1,1′−ジ−エチル−3,3′
−ジ−(4−スルホブチル)ベンゾイミダゾロカルボシアニン・
ナトリウム塩の無水物 4mg
アデニン 10mg
チオ硫酸ナトリウム 3.3mg
チオシアン酸アンモニウム 50mg
塩化金酸 2.0mg
沃化銀化銀微粒子乳剤 5mmol分
トリフェニルホスフィンセレニド 4.0mg
安定剤(TAI) 750mg
沃化銀銀微粒子乳剤とは、前記と同様の3重量%のゼラチンと、沃化銀粒子(平均粒径0.05μ)から成る微粒子乳剤のことであり、又、分光増感色素の固体微粒子状分散物は、特願平4−99437号に記載の方法に準じた方法によって調製した。
【0431】
即ち分光増感色素の所定量を予め27℃に調温した水に加え高速攪拌機(ディゾルバー)で3,500rpmにて30〜120分間にわたって攪拌することによって得た。
【0432】
上記のセレン増感剤、トリフェニルホスフィンセレンドは分散液にして使用し、この分散液は、次のように調製した。即ち、トリフェニルフォスフィンセレニド120gを50℃の酢酸エチル30kg中に添加、攪拌し、完全に溶解した。他方で写真用ゼラチン3.8kgを純水38kgに溶解し、これにドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム25wt%水溶液93gを添加した。次いで、これらの2液を混合して直径10cmのディゾルバーを有する高速攪拌型分散機により50℃下において、分散翼周速40m/秒で30分間分散を行った。その後、速やかに減圧下で、酢酸エチルの残留濃度が0.3wt%以下になるまで攪拌を行いつつ、酢酸エチルを除去した。その後、この分散液を純水で希釈して80kgに仕上げた。このようにして得られた分散液の一部を、分取して使用した。
【0433】
次に、上記のように増感を施した乳剤Em−1とEm−2を、それぞれ60%、40%の割合で含有する混合乳剤を調製し、更に後記する添加剤を加え乳剤塗布液とした。また、同時に保護層塗布液、クロスオーバーカット層も調製した。
【0434】
(試料の作製)
次に、前記支持体の両面に、下記のごとくクロスオーバーカット層、乳剤層、中間層、保護層の順に、両面に均一に塗布、乾燥して感光材料試料を作製した。このとき、各試料の片面当たりの銀付量は1.3g/m2、ゼラチン量は、保護層0.4g/m2、中間層0.4g/m2、乳剤層1.5g/m2クロスオーバーカット層は0.2g/m2になるように調整した。
【0435】
第2層(乳剤層)
上記で得た乳剤に下記の各種添加剤を加えた。
【0436】
【0437】
【化25】
【0438】
【化26】
【0439】
【化27】
【0440】
【化28】
【0441】
なお、素材の付量は片面分である。
【0442】
この様にして得られた感光材料試料7−1〜7−4をそれぞれ蛍光増感紙で挟み、ペネトロメータB型(コニカメディカル(株)製)を介して、X線をウェッジ照射後SRX−503自動現像機を用い、以下の顆粒状固体処理剤から調製した処理液にて現像温度35℃で全処理時間45秒処理を行った(いずれもコニカ(株)製)。このとき、処理液の補充量は現像液、定着液ともに210ml/m2とした。
【0443】
以下に使用した顆粒状固体処理剤キットの作製方法について記す。
【0444】
顆粒固形現像剤キットの作製(使用液10l分)
1)主薬顆粒のDAの作製
原材料素材の前処理
ハイドロキノンをホソカワミクロン(株)社製MIKRO−PULVERIZER AP−B粉砕機でメッシュ8mm、設定回転数25Hzで粉砕した。8−メルカプトアデニンを上記と同じ粉砕器によりメッシュ8mm、設定回転数50Hzで粉砕した。KBrを市販の整粒機にて、メッシュ0.25mmを通して整粒した。
【0445】
原材料素材の混合
市販のV型混合器(容量200l)を使用して、下記処方を15分間混合した。
【0446】
ハイドロキノン(上記粉砕物) 42.57kg
エリソルビン酸ナトリウム・H2O 10.64kg
ジメゾンS 2.31kg
8−メルカプトアデニン 0.20kg
DTPA・5H 7.09kg
KBr(上記整粒物) 3.55kg
ベンズトリアゾール 0.51kg
ソルビトール 3.14kg
得られた粉体混合物の任意の点(5カ所)から50gずつをサンプリングして分析したところ、各成分の濃度は上記処方値の±5%以内の濃度を有しており、充分に混合されていた。
【0447】
ブリケット成型
上記した粉体混合物を、圧縮成型機(新東工業(株)社製)ブリケッタBSS−I V型を使用して、ポケット形状5,0mmφ×1.2mm(depth)、ローラー回転数15rpm、フィーダー回転数24rpmにてブリケット成型した。得られた板状成型物を分級機にて解砕し、2.4〜7.0mmの顆粒と2.4mm以下の微粉に分けた(7.0mm以上のものは解砕)。又、2.4mm以下の微粉については、上記粉体混合物と混ぜて再度、圧縮成型機に戻して成型した。以上により、主薬顆粒DAが約68kg得られた。
【0448】
2)アルカリ顆粒DBの作製
原材料の準備
以下の原材料を準備し、前処理を行った。
【0449】
エチルアルコール400mlに1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール56.6gを溶解した。得られた溶液を、ミキサーにて回転している無水炭酸ナトリウム20kgに少量ずつ滴下し、充分乾燥するまで回転を続けた。得られた混合体の任意の点(5カ所)から10gずつサンプリングして分析したところ、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾールは充分混合されていた。得られた混合物をM−1とした。
【0450】
炭酸カリウム、M−1の混合
市販のV型混合機(容量200l)を使用して下記処方を10分間混合した。
【0451】
炭酸カリウム 14.85kg
M−1 11.44kg
無水亜硫酸ナトリウム 35.85kg
D−マンニトール 4.63kg
D−ソルビトール 1.86kg
混合後、更にホソカワミクロン(株)社製MIKRO−PULVERIZERAP−B粉砕機でメッシュ4mm、設定回転数60Hzで粉砕した1−オクタンスルホン酸ナトリウムを1.37kg添加して、更に5分間混合した。
【0452】
ブリケット成型
上記粉体混合物を、圧縮成型機(新東工業(株)製)ブリケッタBSS−I V型を使用して、ポケット形状5.0mmφ×1.2mm(depth)、ローラー回転数15rpm、フィーダー回転数44rpmにてブリケット成型した。得られた板状成型物を分級機にて解砕し、2.4mm〜7.0mmの顆粒と2.4mm以下の微粉に分けた。(7.0mm以上のものは解砕)。又、2.4mm以下の微粉については、上記粉体混合物と混ぜて再度圧縮成型機に戻して成型した。以上によりアルカリ顆粒DBが約68kg得られた。
【0453】
包装(使用液10lキット)
水分透過度0.5g/m2・24hrs、酸素透過度65ml/m2・24hrsのポリプロピレン(PP)樹脂製角形トレー(上部内寸法15×15cm、下部内寸法14×14cm、高さ10.5cm)に下記順番で成型顆粒及びLiOH・H2Oを充填し、更に内部に窒素を2.0l吹き込んだ後、上部開口部を、ポリエチレン(PE)で表面を被覆したアルミ箔でヒートシーラーを用いて密封し、密封された現像固形処理剤包装体D−1を得た。
【0454】
LiOH・2H2O 103.8g
アルカリ顆粒DB 1174.9g
主薬顆粒DA 355.2g
総重量 1633.9g
上記、現像固形処理剤包装体D−1を、アルミ箔を切り裂くことで内部を取り出し、市販の撹拌機で撹拌した水道水9lに、投入し、およそ40分間撹拌し、処理液DRを10l得た。得られた処理液DRはpH10.70であった。
【0455】
顆粒固形定着剤キットの作製
《主薬顆粒FAの作製》
原材料素材の前処理
1−オクタンスルホン酸ナトリウムをホソカワミクロン(株)社製MIKRO−PULVERIZER AP−B粉砕機で、メッシュ4mm、設定回転数60Hzで粉砕した。
【0456】
チオ硫酸アンモニウム(10%ナトリウム塩)を市販の整粒機でメッシュ1.0mmを通して整粒した。又同様に無水チオ硫酸ナトリウムをメッシュ0.5mmで整粒した。
【0457】
原材料素材の混合
市販のV型混合機(容量200l)を使用して、下記処方を10分間混合した。
【0458】
チオ硫酸アンモニウム 49.68kg
亜硫酸ナトリウム 3.37kg
メタ重亜硫酸ナトリウム 5.31kg
無水酢酸ナトリウム 10.60kg
得られた粉体混合物に1−オクタンスルホン酸ナトリウム(上記粉砕品)を1kg添加して更に5分間混合した。
【0459】
ブリケット成型
上記粉体混合物を、圧縮成型機(新東工業(株)製)ブリケッタBSS−I V型を使用して、ポケット形状5.0mmφ×1.2mm(depth)、ローラー回転数25rpm、フィーダー回転数36rpmにてブリケット成型した。得られた板状成型物を分級機にて解砕し、2.4mmから7.0mmの顆粒と,2.4mm以下の微粉に分けた(7.0mm以上のものは解砕)。又、2.4mm以下の微粉については、上記混合物と混ぜて再度、圧縮成型機に戻してブリケット成型した。以上により主薬顆粒FAが約69kg得られた。
【0460】
《硬膜剤顆粒FB−1の作製》
原材料素材の混合
市販のV型混合機(容量200l)を使用して下記処方を10分間混合した。
【0461】
硫酸アルミニウム・8水塩 41.42kg
ホウ酸 21.61kg
D−マンニトール 3.17kg
D−ソルビトール 3.17kg
得られた混合体に1−オクタンスルホン酸ナトリウム(上記粉砕品)を630g添加して更に5分間混合した。
【0462】
《硬膜剤顆粒FB−2の作製》
原材料素材の混合
市販のV型混合機(容量200l)を使用して下記処方を10分間混合した。
【0463】
硫酸アルミニウム・8水塩 41.42kg
グルコン酸ナトリウム(一般式(2)の化合物) 7.20kg
D−マンニトール 3.17kg
D−ソルビトール 3.17kg
得られた混合体に1−オクタンスルホン酸ナトリウム(上記粉砕品)を630g添加して更に5分間混合した。
【0464】
《硬膜剤顆粒FB−3の作製》
原材料素材の混合
市販のV型混合機(容量200l)を使用して下記処方を10分間混合した。
【0465】
得られた混合体に1−オクタンスルホン酸ナトリウム(上記粉砕品)を630g添加して更に5分間混合した。
【0466】
《硬膜剤顆粒FB−4の作製》
原材料素材の混合
市販のV型混合機(容量200l)を使用して下記処方を10分間混合した。
【0467】
得られた粉体混合物に1−オクタンスルホン酸ナトリウム(上記粉砕品)を630g添加して更に5分間混合した。
【0468】
ブリケット成型
上記粉体混合物を、圧縮成型機(新東工業(株)製)ブリケッタBSS−I V型を使用して、ポケット形状5.0mmφ×1.2mm(depth)、ローラー回転数20rpm、フィーダー回転数を、ロール負荷電流が16〜19アンペアになるように調整して成型した。得られた板状成型物を分級機にて解砕し、2.4mmから7.0mmの顆粒と,2.4mm以下の微粉に分けた(7.0mm以上のものは解砕)。又、2.4mm以下の微粉については、上記混合物と混ぜて再度、圧縮成型機に戻してブリケット成型した。以上により4種類の顆粒FB−1〜4が得られた。
【0469】
固体酸顆粒FCの作製
原材料素材の混合
市販のV型混合機(容量200l)を使用して下記処方を10分間混合した。
【0470】
酒石酸 12.96kg
コハク酸 57.04kg
ブリケット成型
上記粉体混合物を、圧縮成型機(新東工業(株)製)ブリケッタBSS−I V型を使用して、ポケット形状5.0mmφ×1.2mm(depth)、ローラー回転数20rpm、フィーダー回転数を28rpmで成型した。得られた板状成型物を分級機にて解砕し、2.4mm〜7.0mmの顆粒と2.4mm以下の微粉に分けた。(7.0mm以上のものは解砕)。又、2.4mm以下の微粉については、上記粉体混合物と混ぜて再度圧縮成型機に戻して成型した。以上によりアルカリ顆粒FCが約69kg得られた。
【0471】
包装(使用液10lキット)
水分透過度0.5g/m2・24hrs、酸素透過度65ml/m2・24hrsのポリプロピレン(PP)樹脂製角形トレー(上部内寸法17.5×12cm、下部内寸法16×10.5cm、高さ17cm)に下記順番で成型顆粒及びLiOH・H2Oを充填し、更に内部に窒素を3.0l吹き込んだ後、上部開口部を、ポリエチレン(PE)で表面を被覆したアルミ箔でヒートシーラーを用いて密封し、4種類の顆粒FB−1〜FB−4に対応した密封された定着固形処理剤包装体F−1〜F−4を得た。
【0472】
主薬顆粒FA 1848.9g
固体酸顆粒FC 162.2g
硬膜剤顆粒FB−1〜4 194.4g
総重量 2205.3g
上記、定着固形処理剤包装体F−1〜F−4を、アルミ箔を切り裂くことで内部を取り出し、市販の撹拌機で撹拌した水道水8.5lに、投入し、およそ40分間撹拌し、処理液FR1〜4をそれぞれ10l得た。得られた処理液FR1〜4はそれぞれpH4.50であった。
【0473】
この現像液DRと定着液FR1〜4を用いて実施例1と同様の方法で感光材料試料7−1〜7−4を処理した結果を表9に示す。
【0474】
【表9】
【0475】
結果は、現像処理前後の膜付が良好であり、ホウ素化合物を含有しない処理においても乾燥ムラが良好であることを示している。
【0476】
実施例8
〔下引済み支持体8−1の作製〕
2軸延伸熱固定済みの厚さ180μmのPETフィルムの両面に、8W/m2・分のコロナ放電処理を施し、両面に前記下引塗布液b6−1を乾燥膜厚0.8μmになるように塗設し、乾燥させて下引層E8−1とした。
【0477】
〈下引上層E8−2の作製〉
上記下引層E8−1の上に、8W/m2・分のコロナ放電を施し、下引上層液として帯電防止液b1−2の導電性組成物をNo.3にかえたものを、ドライ膜厚が1.0ミクロンになるよう、ロールコーターとワイヤーバーの組み合わせで両面塗布し、140℃、1分乾燥し、帯電防止層E8−2とし、下引き済み支持体8−1を作製した
〔下引済み支持体8−2〜14の作製〕
実施例6と同様に、下引塗布液b6−1に使用した下引き層重合体ラテックスの混合種、比率を表10のようにかえた以外は、支持体8−1と同様に下引済み支持体8−2〜14を作製した。
【0478】
(支持体の熱処理)
上記の下引済み支持体の下引乾燥工程において、支持体を140℃で加熱し、その後徐々に冷却した。
【0479】
作製した支持体に、実施例7で示したものと同じ感光材料を構成する層を設け、表10に示したような試料8−1〜8−18を作製した。これを実施例7の固体処理剤から製した処理液にて同様に処理を行った結果を表10に示した。
【0480】
【表10】
【0481】
結果は、現像処理前後の膜付が良好であり、ホウ素化合物を含有しない処理においても乾燥ムラが良好であることを示している。
【0482】
【発明の効果】
処理後の導電性劣化の少ない帯電防止層及び下引き層を有するハロゲン化銀写真感光材料を用いて、環境負荷の大きいホウ素化合物を実質的に含まない定着液で処理しても接着性が良好でかつ、乾燥ムラや不必要な斑点等が改良された処理方法を得ることが出来た。
Claims (12)
- 支持体上に、官能基を有するポリマー微粒子と水溶性ポリマーとを混合後、50℃以上90℃以下の温度で加熱処理することにより製造された導電性組成物と親水性コロイドを含有する帯電防止層を少なくとも1層有し、該帯電防止層の上に親水性コロイド層を有するハロゲン化銀写真感光材料を、自動現像機を用いて、実質的にホウ素化合物を含有しない定着液で処理することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料の処理方法。
- 支持体上に、官能基を有するポリマー微粒子と水溶性ポリマーとを混合後、50℃以上90℃以下の温度で加熱処理することにより製造された導電性組成物と親水性コロイドを含有する帯電防止層を少なくとも1層有し、該帯電防止層と支持体の間に少なくとも一層の下引き層を塗設してなり、該下引き層がスチレン−ジオレフィン系共重合体を含有する疎水性重合体を含有する下引層であり、該帯電防止層の上に親水性コロイド層を有するハロゲン化銀写真感光材料を、自動現像機を用いて、実質的にホウ素化合物を含有しない定着液で処理することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料の処理方法。
- 支持体上に、官能基を有するポリマー微粒子と水溶性ポリマーとを混合後、50℃以上90℃以下の温度で加熱処理することにより製造された導電性組成物と親水性コロイドを含有する帯電防止層を少なくとも1層有し、該帯電防止層と支持体の間に少なくとも一層の下引き層を塗設してなり、該下引き層がポリエステルを溶解もしくは膨潤させる溶媒と親水性樹脂を含む組成物を塗設してなる下引層であり、該帯電防止層の上に親水性コロイド層を有するハロゲン化銀写真感光材料を、自動現像機を用いて、実質的にホウ素化合物を含有しない定着液で処理することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料の処理方法。
- 支持体上に、官能基を有するポリマー微粒子と水溶性ポリマーとを混合後、50℃以上90℃以下の温度で加熱処理することにより製造され導電性組成物と親水性コロイドを含有する帯電防止層を少なくとも1層有し、該帯電防止層と支持体の間に少なくとも一層の下引き層を塗設してなり、該下引き層が塩化ビニリデン系共重合体を含有する下引層であり、該帯電防止層の上に親水性コロイド層を有するハロゲン化銀写真感光材料を、自動現像機を用いて、実質的にホウ素化合物を含有しない定着液で処理することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料の処理方法。
- 支持体上に、官能基を有するポリマー微粒子と水溶性ポリマーとを混合後、50℃以上90℃以下の温度で加熱処理することにより製造された導電性組成物と親水性コロイドを含有する帯電防止層を少なくとも1層有し、該帯電防止層と支持体の間に少なくとも一層の下引き層を塗設してなり、該下引き層が活性メチレン基を有する重合体を含有する下引層であり、該帯電防止層の上に親水性コロイド層を有するハロゲン化銀写真感光材料を、自動現像機を用いて、実質的にホウ素化合物を含有しない定着液で処理することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料の処理方法。
- 支持体上に、官能基を有するポリマー微粒子と水溶性ポリマーとを混合後、50℃以上90℃以下の温度で加熱処理することにより製造された導電性組成物と親水性コロイドを含有する帯電防止層を少なくとも1層有し、該帯電防止層と支持体の間に少なくとも一層の下引き層を塗設してなり、該下引き層が少なくとも2種のアクリル系重合体ラテックスを有し、そのうちの最も低いガラス転移点(Tg(L))を有する重合体ラテックスと最も高いガラス転移点(Tg(H))を有する重合体ラテックスのガラス転移点の差(Tg(H)−Tg(L))が10〜80℃である下引層であって、該帯電防止層の上に親水性コロイド層を有するハロゲン化銀写真感光材料を、自動現像機を用いて、実質的にホウ素化合物を含有しない定着液で処理することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料の処理方法。
- 定着液が、上記一般式(1)で表される化合物、チオ硫酸塩、水溶性アルミニウム塩を含有し、実質的にホウ素化合物を含有しない固形定着剤を水に溶解して得た定着液であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のハロゲン化銀写真感光材料の処理方法。
- 定着液が、下記一般式(2)で表される化合物、チオ硫酸塩、水溶性アルミニウム塩を含有し、実質的にホウ素化合物を含有しない1液濃縮定着液を(所定の濃度に)希釈して得た定着液であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のハロゲン化銀写真感光材料の処理方法。
一般式(2)
R0−(A0)n−COOM0
(式中、A0は側鎖に少なくとも1つ以上の水酸基を有するアルキレン基又はカルボニル基を表す。nは0以上の整数を表すが、R0が水素原子の場合はnは1以上の整数を表す。R0は水素原子又は水酸基を有するアルキル基を表す。又、R0やA0の部分にはカルボキシル基は置換せず、1分子内にトータルとして2つ以上含有しない。M0は水素原子、アルカリ金属原子又は4級アンモニウム基を表す。) - 定着液が、上記一般式(2)で表される化合物、チオ硫酸塩、水溶性アルミニウム塩を含有し、実質的にホウ素化合物を含有しない固形定着剤を水に溶解して得た定着液であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のハロゲン化銀写真感光材料の処理方法。
- 定着液が、前記一般式(1)及び(2)で表される化合物、チオ硫酸塩、水溶性アルミニウム塩を含有し、実質的にホウ素化合物を含有しない1液濃縮定着液を希釈して得た定着液であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のハロゲン化銀写真感光材料の処理方法。
- 定着液が、前記一般式(1)及び(2)で表される化合物、チオ硫酸塩、水溶性アルミニウム塩を含有し、実質的にホウ素化合物を含有しない固形定着剤を水に溶解して得た定着液であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のハロゲン化銀写真感光材料の処理方法。
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