JP3750272B2 - フォトマスク欠陥解析装置および欠陥解析方法ならびに該欠陥解析プログラムを記録した記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体製造工程中のフォトリソグラフィ工程において、ウェハー上の露光パターンに対するフォトマスク上の欠陥の露光転写への影響を解析するための、フォトマスク欠陥解析装置および欠陥解析方法ならびに該欠陥解析プログラムを記録した記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、フォトマスク上の欠陥解析は、実際に欠陥をウェハー上に露光転写し、形成されたウェハー上のレジストパターンを計測評価することによって行われていた。このような欠陥解析の目的は、フォトマスクパターンを用いてウェハーに転写する際に、フォトマスク上の欠陥がウェハーパターンにどのような悪影響を及ぼすかについて評価することである。そのためフォトマスク欠陥自身の形状や大きさだけでなく、実際に露光転写を行うことによって初めて、パターンの良否判定を行ったり、欠陥の大きさ・形状等の適切な許容範囲を設定したりすることが可能となる。
【0003】
フォトマスク欠陥解析の一般的手順として、第一の従来方法を次に説明する。図3は、第一の従来方法の手順を示したフローチャートである。まず、ステップSA1においてフォトマスク(欠陥あり)を準備し、ステップSA2においてフォトマスク欠陥検査機あるいは光学顕微鏡等の光学的観察装置を用いて欠陥を検出・観察する。そして、ステップSA3においてこの欠陥の位置、形状、大きさ等の情報を記録しておく。次にステップSA4において、このフォトマスクを露光転写装置に取り付け、実際にウェハー上に露光転写する。そしてステップSA5において所定のリングラフィ工程を行い、ウェハー上のレジストパターンを得る。このレジストパターンには、上記フォトマスク上の欠陥も転写されていることが期待される。
【0004】
次に、ステップSA6では、ステップSA5で得られたウェハーパターンにおいて、上述したフォトマスク欠陥のあった位置に対応するパターン部分を観察し、ステップSA7においてこれと前記フォトマスク欠陥の情報とを比較評価することにより、ウェハーパターンに対してフォトマスク欠陥がどのような影響を与えたかを評価する。ここで説明した手順は、特に装置を限定するものでなく、一般的な欠陥検査装置や光学顕微鏡などを使用すればよい。
【0005】
しかしながら、上述した従来のマスク欠陥解析方法に関する第一の方法を実施するためには次の条件が必要であった。まず第一に、フォトマスク上に欠陥が存在していなければならないこと、つまり欠陥のあるフォトマスクを見い出して、しかもその欠陥が転写評価の目的に沿うような形状・大きさである必要がある。第二に、露光転写装置を含むウェハー用リソグラフィプロセスの設備一式が必要であり、実際に露光転写とリソグラフィプロセスを行う必要があること、第三にマスク欠陥装置およびウェハー欠陥検査装置あるいは同等の光学的欠陥観察装置が必要である。すなわち、マスク上の欠陥を実際にウェハー上に露光転写して評価しなければならなかった。
【0006】
そして、この手段によって欠陥の影響の解析評価を行ったとしても、次に述べる欠陥解析上の困難があった。それは、マスク欠陥はその製造プロセス上で「偶然に」生成されるものであり、本来意図的にその欠陥の生成を再現できるものではないということである。すなわち、マスク欠陥を任意の形状や大きさに制御することか困難であるため、解析を行うために必要な欠陥形状や大きさを自由に得られなかった。
【0007】
また、最初から欠陥を模擬したパターンデータを用意して欠陥評価専用フォトマスクを作製し、これを用いて転写評価することで、ある程度バリエーションに富んだ形状や大きさの欠陥を坪価することが可能である。しかし、一般的な実際のフォトマスク欠陥はマスク製造プロセス中での様々な原因、たとえば異物やコンタミネーション、汚染、クラック、露光むら、洗浄むら等の不特定原因から生成されるものである。そのため、欠陥の形状は実際には、不定形や円形などの曲線部を含むことがほとんどであり、大きさも肉眼で観察可能なものからサブミクロン以下のものまで多様で、欠陥の存在する密度も同様に多様である。
【0008】
一方、パターンとして作り込まれた欠陥は、CAD(Computer Aided Design)によるパターンデータ設計の制限があり、基本的な形状としては矩形、あるいは矩形の組み合わせでしかできず、上述したように、実際の欠陥が曲線部を多く含むのに比べて、形状が本質的に異なっている。また、欠陥の大きさは、ある程度制御が可能であるが、サブミクロン以下の微小サイズの欠陥はマスクプロセス上、製造が困難であり、意図した形状や大きさに制御して製造することが非常に困難である。
【0009】
さらに、コンタミネーションに起因する欠陥の中には光学濃度が通常のマスクパターンと異なることがあり、半透明のものや濃度分布が中央と周辺で異なるなど不均一のものがありうる。このような欠陥はもはや、マスクパターンとして意図的に制御して作り込むことは不可能である。従って、上記欠陥評価用フォトマスクでは、欠陥解析はごく限られた形状の範囲でしかできなかった。またコストの点でも、露光転写実験を行う必要に加え、さらに欠陥評価用フォトマスクを製造する必要があり、より不利であった。よって、前述した第一の方法では欠陥解析に関して充分な系統的評価を行うことは困難であった。また、実際に露光転写実験を行うので高価な設備を用い、時間をかけて行わねばならず、コスト及び時間の点で非常に不利であった。
【0010】
そこで、第二の従来方法として行われているのが、コンピュータシミュレーションによる欠陥解析である。ここでコンピュータシミュレーションとは、フォトリソグラフィ工程の露光工程をシミュレーションする、光強度シミュレーションのことを指す。光強度シミュレーションは、フォトマスクパターンデータをもとに、露光転写条件をパラメータとしてウェハー上の露光分布をシミュレーションするものである。
【0011】
第二の従来方法は、以下の手順に従う。図4にこの手順を示す。
まず、図4のステップSB1においてマスク欠陥を模擬した疑似欠陥パターンデータを作る。但し、これは光強度シミュレーション用データとして作る。そのために矩形あるいは矩形の組み合わせからなるパターンとして設計しなければならないが、矩形自体の大きさ(インクリメントという)には制限がないので、コンピュータの計算能力の許す限り微細な矩形で構成することができ、実際の欠陥形状にある程度近似させることができる。また、上記疑似欠陥パターンは、コンピュータ上のデータであって、実際のフォトマスクを作る必要がないため、前述した第一の方法のような製造上の困難もない。
【0012】
次にステップSB2において、通常のマスクパターンを模擬したマスクパターンデータを用意し、これを光強度シミュレーション用にデータ変換する。さらにステップSB3において、データ変換したマスクパターンデータを、ステップSB1で作成した欠陥データと合成する。ここで、マスクパターンデータと欠陥データは、最初から同じレイヤーで作成してもよく、その場合、合成は不要となる。また別のレイヤーで作成した場合には、欠陥とパターンとを別々に何種類か作成しておき、合成する時に様々な組み合わせをすることができる。どちらかの方法を適宜選択すればよい。
【0013】
そしてステップSB4において、この合成したデータに対して所定の露光転写条件をパラメータとして光強度シミュレーションを行う。次にステップSB5において、上記光強度シミュレーションにより得られたシミュレーション結果を解析し、評価することにより、欠陥がフォトマスクパターンの露光転写時に与える影響が評価できる。以上、第二の従来方法によれば、実際にマスク及び欠陥を製造することなく、コンピュータ上のみで欠陥解析が可能になるので、非常に迅速かつ安価なコストで実施できるという利点を有している。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、コンピュータシミュレーションを用いた第二の従来方法も、実際の欠陥を解析する点では精度に問題があった。すなわち、前述のように実際のマスク欠陥の形状は不定形が多く、かつ光学濃度分布が一定でないこともあるため、それらの欠陥を正確に欠陥データとして設計することが困難であった。欠陥データ及びパターンデータは、CAD等の設計ツールを用いて作られるが、通常の設計ツールでは複雑な曲線形状を持つ欠陥を正確には設計できない。通常のCADは、回路パターン設計用であるため、直線のみのパターンがほとんどであって、曲線があったとしても円形などの単純な形でしかない。
【0015】
そのため、欠陥形状を模擬するといっても矩形に近い形状になり、実際の欠陥とはかなり異なってしまう。また、データのインクリメントを細かくすることで原理的には不定形でも模擬することは可能であるが、手動でそのようなことを行うには大変な負荷がかかり、さらにそのためにデータ容量が飛躍的に増大してしまい、シミュレーション計算において膨大な時間を費やすことになるという問観があった。従って、実際のフォトマスク欠陥の解析を精度良く行う目的には不適当であった。
【0016】
そこで本発明は上記のような問題点を鑑み、実際のマスク欠陥の形状・大きさ・光学濃度等の情報を精度良く取り込むことができ、かつ系統的な欠陥解析が迅速・容易に行うことができるフォトマスク欠陥解析装置および欠陥解析方法ならびに該欠陥解析プログラムを記録した記録媒体を提供することを目的とする。
【0017】
また、他の目的としては、フォトマスク上において、パターンと欠陥部分とが近接している場合のみならず、欠陥部分がパターン上に存在している場合においても、正確に欠陥部分のみの情報を取り込むことができるフォトマスク欠陥解析装置および欠陥解析方法ならびに該欠陥解析プログラムを記録した記録媒体を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、フォトリソグラフィ工程におけるフォトマスク上の欠陥の露光転写への影響を解析するためのフォトマスク欠陥解析装置において、前記フォトマスクパターン上の欠陥を含むパターン部分の画像情報を出力する画像出力手段と、前記画像出力手段から出力された欠陥を含むパターン画像情報から、欠陥部分の画像情報とパターン部分の画像情報とに分離抽出する画像分離抽出手段と、前記抽出分離された欠陥部分の画像情報に対し、拡大・縮小または変形等の画像処理を行い、かつ、該画像情報を光強度シミュレーションを行うためのシミュレーション用データに変換する欠陥データ変換手段と、前記欠陥データ変換手段により変換された欠陥部分のシミュレーション用データと、予め記憶しているマスクパターンのシミュレーション用データとを合成するデータ合成手段と、前記データ合成手段により合成されたデータに基づいて光強度シミュレーションを実施し、シミュレーション結果を解析するシミュレーション手段とを備え、前記画像分離抽出手段が、前記画像出力手段から出力された画像情報により表される画像の領域全体を2次元のメッシュ状に分割し、分割した各メッシュ毎の領域を、前記画像情報に基づいて「透過」または「不透過」を示す2値により表される画像に変換する領域分割手段と、前記2値化された画像のエッジを検出し、欠陥部分およびパターン部分の輪郭情報を抽出するエッジ検出手段と、前記輪郭情報に基づいて欠陥部分とパターン部分との判別を行う形状解析手段と、前記判別結果に基づいて欠陥部分の画像情報とパターン部分の画像情報とを分離抽出する分離抽出手段とを備えたことを特徴とする。
【0020】
さらに、本発明は、上記に記載のフォトマスク欠陥解析装置において、前記抽出分離されたパターン部分の画像情報に対し、拡大・縮小または変形等の画像処理を行い、かつ、該画像情報を光強度シミュレーションを行うためのシミュレーション用データに変換するパターンデータ変換手段を有してなり、前記データ合成手段が、前記欠陥データ変換手段および前記パターンデータ変換手段によってそれぞれ変換された、欠陥部分のシミュレーション用データと、パターン部分のシミュレーション用データとを合成することを特徴とする。
【0021】
上記装置構成により、フォトマスク欠陥をマスクパターンの画像情報から欠陥画像情報のみを分離抽出して、予め記憶されていたパターンデータまたは上記画像情報から分離抽出されたパターン部分のみ画像情報と合成し、該合成したデータに基づいて光強度シミュレーションを行うので、実際のマスク欠陥の形状・大きさ・光学濃度等の情報を精度良く取り込むことができ、かつ系統的な欠陥解析が迅速・容易に行うことができる。また、フォトマスク上において、パターンと欠陥部分とが近接している場合のみならず、欠陥部分がパターン上に存在している場合においても、正確に欠陥部分のみの情報を取り込むことができる。
【0022】
さらに、本発明は、フォトリソグラフィ工程におけるフォトマスク上の欠陥の露光転写への影響を解析するためのフォトマスク欠陥解析方法において、フォトマスクパターン上の欠陥を含むパターン部分の画像情報を出力する第1の工程と、前記欠陥を含むパターン部分の画像情報から欠陥部分の画像情報のみを分離抽出する第2の工程と、抽出した欠陥画像及びパターン画像に関して光強度シミュレーション用データへのデータ変換処理を行い、さらにパターン情報データベースから適宜光強度シミュレーション用のパターンデータを呼び出して前記欠陥画像と合成し、合成したデータに対して光強度シミュレーションを行う第3の工程と、前記光強度シミュレーションの結果をデータ解析し、出力する第4の工程とからなり、前記第2の工程が、前記第1の工程により出力された画像情報により表される画像の領域全体を2次元のメッシュ状に分割し、分割した各メッシュ毎の領域を、前記画像情報に基づいて「透過」または「不透過」を示す2値により表される画像に変換する第5の工程と、前記2値化された画像のエッジを検出し、欠陥部分およびパターン部分の輪郭情報を抽出する第6の工程と、前記輪郭情報に基づいて欠陥部分とパターン部分との判別を行う第7の工程と、前記判別結果に基づいて欠陥部分の画像情報とパターン部分の画像情報とを分離抽出する第8の工程とからなることを特徴とする。
【0024】
上記のフォトマスク欠陥解析方法により、実際のフォトマスク欠陥の形状・大きさ・光学濃度等の情報を精度良く取り込むことができ、適宜欠陥画像の画像変換を行った後、マスクパターンと合成して光強度シミュレーションを行うことによって、欠陥形状や大きさ等に関して様々に変化させた上での系統的な欠陥解析を、迅速かつ容易にできる。また、フォトマスク上において、パターンと欠陥部分とが近接している場合のみならず、欠陥部分がパターン上に存在している場合においても、正確に欠陥部分のみの情報を取り込むことができる。
【0025】
また、本発明は、フォトリソグラフィ工程におけるフォトマスク上の欠陥の露光転写への影響をコンピュータによって解析するプログラムを記録した記録媒体であって、前記プログラムは、コンピュータに、入力されたフォトマスクパターン上の欠陥を含むパターン部分の画像情報から欠陥部分の画像情報のみを分離抽出させる際に、前記入力された画像情報により表される画像の領域全体を2次元のメッシュ状に分割させ、該分割した各メッシュ毎の領域を、前記画像情報に基づいて「透過」または「不透過」を示す2値により表される画像に変換させ、該2値化された画像のエッジを検出させて欠陥部分およびパターン部分の輪郭情報を抽出させ、該輪郭情報に基づいて欠陥部分とパターン部分との判別を実施させ、該判別結果に基づいて欠陥部分の画像情報とパターン部分の画像情報とを分離抽出させ、該抽出した欠陥画像及びパターン画像に関して光強度シミュレーション用データへのデータ変換処理を実施させ、パターン情報データベースから適宜光強度シミュレーション用のパターンデータを呼び出して前記欠陥画像と合成させ、該合成したデータに基づいて光強度シミュレーションを実行させ、該光強度シミュレーションの結果を解析、出力させることを特徴とする。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して本発明の内容を詳述する。
図1は本発明に係るフォトマスク欠陥解析装置の一実施形態の構成を示すブロック図である。以下、その各部位の役割および動作内容を説明する。
【0028】
まず、欠陥観察ユニット1において、可視波長域の光源2の上に観察目的のフォトマスク3を設置する。なお、このフォトマスク3上には、フォトマスクパターン4が形成されており、さらにこのフォトマスクパターン4内には、フォトマスク欠陥4’が存在するものとする。そして、上記光源2からフォトマスク3に光が照射されると、フォトマスクパターン4を通して光が透過するので、この透過光はフォトマスクパターン4およびフォトマスク欠陥4’の情報を含んでいる。
【0029】
次に、該フォトマスクパターン4からの透過光は、光センサー5に入射し、該光センサー5を通じてフォトマスク欠陥4’を含むフォトマスクパターン4の透過光情報が、欠陥観察部6に情報として伝達される。ここで、光センサー5は、光学レンズ系及びCCD(Charge Coupled Device) 等の光量感知機構からなり、ごく微小な欠陥部分も高倍率で感知可能なものである。
【0030】
欠陥観察部6により観察されたフォトマスクパターン4の画像情報は、第一表示部9を通して表示され、これによりフォトマスク欠陥4’を確認することができる。ここで、第一表示部9は、CRTディスプレーまたは液晶ディスプレー等の一般的に使用される画像表示手段である。また、そして欠陥観察部6に伝達された透過光情報は、光量分布のアナログ情報として観察画像記録部7および第一表示部9へ情報を送る。
【0031】
次に、観察画像記録部7において、フォトマスクパターン4の透過光情報は、観察画像情報として記録保存される。また、この透過光情報は、観察画像出力部8へ送られ、ここでデジタル画像情報(例えば、多数の画素からなるいわゆるビットマップデータ)に変換された後、欠陥解析ユニット10へ出力される。したがって、欠陥観察ユニット1は、フォトマスクパターンの光学的観察機構を用いて、欠陥を含むフォトマスクパターンの観察画像情報を生成し、記録・出力する役割を持つ処理系である。
【0032】
次に、欠陥解析ユニット10において、欠陥観察ユニット1から出力されたフォトマスク観察画像情報は画像取込部11に取り込まれる。ここで、欠陥解析ユニット10は、情報処理装置として構成されており、ハードウェアとしては、コンピュータ本体とデータ記録・保管装置、表示装置、印刷出力装置等を持つ、一般的なコンピュータシステムからなっている。また、用いられるソフトウェアとしては、フォトマスク欠陥情報及びフォトマスクパターン情報の処理や光強度シミュレーション、およびデータ解析などを行うためのソフトウェアからなる。
【0033】
画像取込部11に取り込まれたフォトマスク観察画像情報は、欠陥画像抽出処理部12においてフォトマスク欠陥画像情報と、フォトマスクパターン画像情報とに分離抽出される。ここで分離抽出とは、フォトマスク欠陥4’を含むフォトマスク4の観察画像情報を、欠陥画像情報と、パターン画像情報とに分離させることを意味している。
【0034】
以下に、欠陥画像抽出処理部12の処理方法を述べる。図2にその処理方法の処理手順を示す。図2のステップA1において、まず欠陥を含むパターンの観察画像を取り込む。この際、欠陥はパターン内に含まれている。そしてステップA2の領域分割処理において、観察画像の領域全体を2次元のメッシュ状に細かく分割する。分割したそれぞれのメッシュは、各々元の画像の透過光情報を持っているが、ここで透過光情報に基づいて各メッシュを光の“透過”・“不透過”の2種に区別し、いわゆる2値化されたデジタル情報に変換する。ここでは、便宜的に光の透過を「1」、不透過を「0」として「0」と「1」の2値で表す。したがって、パターンを遮光部分(=「0」)からなるものとした場合、パターンの外部は光の透過部(=「1」)になる。
【0035】
このようにして分割したメッシュのそれぞれについて「0」か「1」かを当てはめると、結局、遮光パターンはその輪郭部を含むパターン内部すべてが「0」で埋められ、パターン外部の透過部はすべて「1」で埋められる。一方、欠陥部分は、パターンの外で遮光部分が残った、いわゆる残し欠陥であれば「0」で埋められ、パターン内部に透過部分としてある、いわゆる欠け欠陥であれば「1」で埋められる。もし、上述した透過光情報により示される濃度の値が、“透過”を示す値と“不透過”を示す値の中間値であった場合(半透明な場合)には、所定の基準値を定めて、基準値未満であれば「0」、基準値以上であれば「1」とすればよい(この処理を閾値処理と称する)。
【0036】
次にステップA3においてエッジ検出処理を行う。これは、ステップA2で領域分割処理されたパターン情報から、パターン及び欠陥のエッジ部分、すなわち輪郭部分を抽出する。その方法は、濃度が「0」から「1」へ変化する境界部分をつないでゆき、その境界線を抽出する。このようなエッジ検出処理の手法は、画像処理アルゴリズムとして古くから研究されており、特に限定するものでなく、パターン及び欠陥のエッジ形状が途切れず鮮明に抽出できる方法を採用すればよい。
【0037】
次にステップA4における形状解析は、ステップA3のエッジ検出処理で抽出されたエッジ形状情報から、パターン部分と欠陥部分とを分離するが、これを行うために次の方法を用いる。フォトマスクパターンは、本来半導体回路パターンを表すものであって、その形状は直線部のみから形成されている。一方、欠陥は、リソグラフィ工程において生成されるもので、円形や不定形などの曲線部から形成されており、両者の形状は明確に区別できる。これを利用し、検出されたエッジのうち、直線部のみをそれぞれ結ぶようにすればパターンのみが抽出でき、それ以外の曲線部を欠陥とみなせば欠陥部分が抽出できる。
【0038】
そして、次のステップA5において、欠陥形状情報の抽出処理を行う。これは抽出した情報が閉じた図形となるように、直線部分どうしあるいは曲線部分どうしをつなぐことによって、パターンと欠陥とが分離できるものである。そして得られた図形情報をそれぞれパターンと欠陥として区別し、出力する。
以上の手順により、パターンと欠陥部分とが近接している場合のみならず、欠陥部分がパターン上に存在している場合においても、欠陥を含むフォトマスクパターン観察画像から、欠陥画像とパターン画像とをデータとして正確に分離抽出することができる。
【0039】
図1に戻り、上述した方法により、欠陥画像抽出処理部12においてフォトマスク4の観察画像情報を、欠陥画像情報とパターン画像情報とに分離された後、各情報は、欠陥データ変換部13aと、パターンデータ変換部13bとにそれぞれ入力される。そして、欠陥データ変換部13aにおいては、欠陥形状を表す図形情報を光強度シミュレーション用のデータに変換する。一方、パターンデータ変換部13bにおいては、パターン形状を表す図形情報を光強度シミュレーション用のデータに変換する。ここで、光強度シミュレーション用データは、図2のステップA2で分割した各メッシュ毎のパターン透過率の値を2次元行列形式に配列した数値データである。ここで、上述したメッシュの大きさは所定の条件により自由に選択できる。
【0040】
また、データ変換部13a,13bでは、単にシミュレーション用データにそのまま変換することだけでなく、解析目的に応じて次のようなパターン変形処理、すなわち、欠陥やパターンの形状・大きさ、あるいは透過率といった情報を適宜変更するようなデータ処理も行う。例えば、残し欠陥の画像に対し、欠陥の輪郭を太らせる処理を行う場合は、欠陥のエッジに沿って「0」のデータをエッジの外側に追加していき、欠陥サイズを大きくしたデータを形成する。このように、任意の方向軸に沿って所定の変形率でこの処理を行うことができるので、自由に欠陥の変形が可能である。
【0041】
また、各メッシュ毎に割り当てる透過率の値は、欠陥観察ユニット1から出力された画像情報により示される濃度に基づいて決定されるが、この透過率を変更する場合は、例えば、データ変換部13a,13bにおいて、欠陥部分またはパターン部分の画像において、マウス等の入力デバイスによって透過率を変更する領域を指定し、指定された領域をキーボード等から入力された値に変更する。
【0042】
上述した欠陥部分およびパターン部分の画像情報はデジタル情報であるため、目的に即した画像処理アルゴリズムを用いることにより、非常に変化に富む画像変形・変換が可能である。従って、解析の目的が例えば欠陥の大きさをパラメータとして特性を調べたい場合には、上述したような欠陥画像処理を行い、その欠陥データを用いて後述の解析を行えばよく、解析目的に応じて最適なデータ変換処理を選択して行うことが可能である。
【0043】
次に、パターンデータ合成部15において、データ変換部13a,13bを経た、欠陥画像の変換データ及びパターン画像変換データが渡される。ここではデータ変換後の光強度シミュレーション用欠陥データと、パターンデータとが合成される。したがって、一旦分離抽出した欠陥画像を再度パターン画像と合成することになるが、これは欠陥とフォトマスクパターンとを独立に変形・変換した後、解析することを目的としている。そして、解析目的に応じて種々の画像変形・変換がなされた欠陥データおよびパターンデータを、データ変換部13a,13bでそれぞれ用意しておき、パターンデータ合成部15においてそれらのデータをいろいろ組み合わせることで種々の解析を行う。
【0044】
また、欠陥解析ユニット10は、種々のフォトマスクパターンデータが格納されたパターン情報データベース部14を有しており、その中から解析目的に応じたフォトマスクパターンデータを適宜選択して取り出して、欠陥画像データ変換部13aから出力された欠陥データと合成することが可能な構成となっている。これにより、実際のフォトマスクによらず、自由に適切なパターンを選択し、取り出して欠陥データと合成することができるので、欠陥のデータ変換・変形と同様に大きさや形状、あるいはパターンデザインを自由に組み合わせることができ、フォトマスクパターンに関しても自由な解析が容易に可能になっている。
【0045】
このようにパターンデータまで変換・変形を行う理由は、前述のようにフォトマスク欠陥の解析の目的として、欠陥がパターンの露光転写に与える影響が、欠陥のみならずパターンによっても変化することによる。これは特に、欠陥とパターンが近接している場合に顕著な影響が見られる。その原因は光近接効果によるものである。また、フォトマスクパターンと欠陥との組み合わせによって解析結果が異なる、すなわち、欠陥の影響がパターンによっても異なるため、最終的にはこれらを合成したパターンで解析する必要がある。
【0046】
例えばパターン密度が密な場合には、欠陥がパターンに密着するかあるいは近接する可能性が高くなる。この場合、露光転写によってパターンは欠陥による光近接効果を受け、パターン自身の変形が生じることがあり、このような場合は欠陥とパターンの相対的な位置を、解析のパラメータとして考慮しなければならない。したがって、その様な場合は画像データ変換部13a,13bにおいてデータ変換処理によりいろいろなパターンデータを用意し、欠陥部分とパターンとの相対的な位置を少しずつ変えて、繰り返し後述する光強度シミュレーションを行い、解析することが有用である。
【0047】
次に光強度シミュレーション部16において、パターンデータ合成部15で生成した合成データを取り込み、光強度シミュレーションを実行する。この際のシミュレーション条件としては、欠陥解析目的に応じて適宜露光波長や開口数、可干渉度、焦点誤差などの露光条件パラメータを入力することができる。そして、これらのパラメータの値を変更しながら繰り返しシミュレーション計算を行い、その結果をデータ解析部17に送って、露光条件に対する欠陥の影響の変化を詳細に解析することができる。
【0048】
例えば、欠陥データ変換部13aにおいて欠陥の形状を少しずつ変化させたデータを作成し、それぞれのデータについて、光強度シミュレーション部16でさらに条件を変化させてシミュレーションを行う、といった複数のパラメータを変化させた解析が可能になる。それらの結果を統合的に処理することで、欠陥形状と露光条件との関係を求めることもでき、パターン形状と欠陥形状の関係、あるいはパターン形状と露光条件の関係、といった種々の解析が可能となる。もちろん、それ以外の別のパラメータに着目した解析も可能であり、パラメータ数をさらに増やした複雑な解析も同様な手順を繰り返すことにより可能になる。
【0049】
次に、データ解析部17における解析結果は、出力部18において出力される。ここでは解析結果のグラフィック表示、部分的なデータを取り出して3次元画像化や、それを基にして3次元等高線グラフ化等を行う加工処理、解析結果の外部記憶装置(図示略)への出力、解析結果の印刷等を行うための処理を行う。なお、欠陥解析ユニット10において、各部の処理操作はCRTディスプレーまたは液晶ディスプレー装置からなる第二表示部19で表示され、マウスやキーボード等の入力デバイス(図示略)を介して操作する。
【0050】
以上の装置構成により、欠陥観察ユニット1において欠陥を含むフォトマスクパターンの観察画像情報が得られ、実際のフォトマスク欠陥情報を取り入れることができる。さらに欠陥解析ユニット10において、欠陥画像とパターン画像とを分離抽出処理することにより、欠陥とパターンをそれぞれ独立にデータ変換処理を行うことができ、さらにこれらを解析目的に応じて任意に変換・変形させ、欠陥データとパターンデータを自由に組み合わせて合成処理することができ、自由度に富むデータで光強度シミュレーションを行い、解析することが可能となる。
【0051】
【発明の効果】
以上の説明のように、この発明によれば、半導体ウェハーのフォトリソグラフィ工程においてフォトマスク欠陥がウェハーパターンに与える影響を解析するために、実際のフォトマスク欠陥の画像情報を取り込んで光強度シミュレーションを行うことで、従来は精度良く解析することが困難であった円形や不定形の欠陥に対して高精度な解析・評価を行うことができる。そして実際にウェハーでの露光転写実験を行う必要がなく、迅速・容易かつ極めて安価に解析・評価ができる。
【0052】
また、フォトマスク欠陥を含んだ実際のフォトマスク画像情報から、画像処理により欠陥部分とパターンとに分離抽出して、独立にデータ変換処理を行うことが可能となり、また、適宜欠陥とパターンとを組み合わせて合成することにより、欠陥またはパターンの形状や大きさ、濃度等を任意に変化させ、系統的かつ定性的な解析を行うことが可能となる。
【0053】
さらに、パターン情報データベースを用意することにより、任意のフォトマスクパターンデータを取り込み、欠陥画像データと合成することにより、実際のフォトマスクパターンに制限されることなく、任意のパターンに対して欠陥が与える影響を迅速かつ容易に解析評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るフォトマスク欠陥解析装置の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】 欠陥を含むパターン画像から欠陥とパターンとを分離抽出する手順を示すフローチャートである。
【図3】 従来のフォトマスク欠陥解析の第一の方法の手順を示すフローチャートである。
【図4】 従来のフォトマスク欠陥解析の第二の方法の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 欠陥観察ユニット 2 光源
3 フォトマスク 4 フォトマスクパターン
4’ フォトマスク欠陥 5 光センサー
6 欠陥観察部 7 観察画像記録部
8 観察画像出力部 9 第一表示部
10 欠陥解析ユニット 11 画像取込部
12 欠陥画像抽出処理部 13a 欠陥データ変換部
13b パターンデータ変換部 14 パターン情報データベース部
15 パターンデータ合成部 16 光強度シミュレーション部
17 データ解析部 18 出力部
19 第二表示部
Claims (4)
- フォトリソグラフィ工程におけるフォトマスク上の欠陥の露光転写への影響を解析するためのフォトマスク欠陥解析装置において、
前記フォトマスクパターン上の欠陥を含むパターン部分の画像情報を出力する画像出力手段と、前記画像出力手段から出力された欠陥を含むパターン画像情報から、欠陥部分の画像情報とパターン部分の画像情報とに分離抽出する画像分離抽出手段と、
前記抽出分離された欠陥部分の画像情報に対し、拡大・縮小または変形等の画像処理を行い、かつ、該画像情報を光強度シミュレーションを行うためのシミュレーション用データに変換する欠陥データ変換手段と、
前記欠陥データ変換手段により変換された欠陥部分のシミュレーション用データと、予め記憶しているマスクパターンのシミュレーション用データとを合成するデータ合成手段と、
前記データ合成手段により合成されたデータに基づいて光強度シミュレーションを実施し、シミュレーション結果を解析するシミュレーション手段とを備え、
前記画像分離抽出手段は、
前記画像出力手段から出力された画像情報により表される画像の領域全体を2次元のメッシュ状に分割し、分割した各メッシュ毎の領域を、前記画像情報に基づいて「透過」または「不透過」を示す2値により表される画像に変換する領域分割手段と、
前記2値化された画像のエッジを検出し、欠陥部分およびパターン部分の輪郭情報を抽出するエッジ検出手段と、前記輪郭情報に基づいて欠陥部分とパターン部分との判別を行う形状解析手段と、前記判別結果に基づいて欠陥部分の画像情報とパターン部分の画像情報とを分離抽出する分離抽出手段と
備えたことを特徴とするフォトマスク欠陥解析装置。 - 請求項1に記載のフォトマスク欠陥解析装置において、前記抽出分離されたパターン部分の画像情報に対し、拡大・縮小または変形等の画像処理を行い、かつ、該画像情報を光強度シミュレーションを行うためのシミュレーション用データに変換するパターンデータ変換手段を有してなり、前記データ合成手段が、前記欠陥データ変換手段および前記パターンデータ変換手段によってそれぞれ変換された、欠陥部分のシミュレーション用データと、パターン部分のシミュレーション用データとを合成することを特徴とするフォトマスク欠陥解析装置。
- フォトリソグラフィ工程におけるフォトマスク上の欠陥の露光転写への影響を解析するためのフォトマスク欠陥解析方法において、
フォトマスクパターン上の欠陥を含むパターン部分の画像情報を出力する第1の工程と、
前記欠陥を含むパターン部分の画像情報から欠陥部分の画像情報のみを分離抽出する第2の工程と、
抽出した欠陥画像及びパターン画像に関して光強度シミュレーション用データへのデータ変換処理を行い、さらにパターン情報データベースから適宜光強度シミュレーション用のパターンデータを呼び出して前記欠陥画像と合成し、合成したデータに対して光強度シミュレーションを行う第3の工程と、
前記光強度シミュレーションの結果をデータ解析し、出力する第4の工程とからなり、
前記第2の工程は、
前記第1の工程により出力された画像情報により表される画像の領域全体を2次元のメッシュ状に分割し、分割した各メッシュ毎の領域を、前記画像情報に基づいて「透過」または「不透過」を示す2値により表される画像に変換する第5の工程と、
前記2値化された画像のエッジを検出し、欠陥部分およびパターン部分の輪郭情報を抽出する第6の工程と、
前記輪郭情報に基づいて欠陥部分とパターン部分との判別を行う第7の工程と、
前記判別結果に基づいて欠陥部分の画像情報とパターン部分の画像情報とを分離抽出する第8の工程と
からなることを特徴とするフォトマスク欠陥解析方法。 - フォトリソグラフィ工程におけるフォトマスク上の欠陥の露光転写への影響をコンピュータによって解析するプログラムを記録した記録媒体であって、
前記プログラムは、コンピュータに、
入力されたフォトマスクパターン上の欠陥を含むパターン部分の画像情報から欠陥部分の画像情報のみを分離抽出させる際に、
前記入力された画像情報により表される画像の領域全体を2次元のメッシュ状に分割させ、該分割した各メッシュ毎の領域を、前記画像情報に基づいて「透過」または「不透過」を示す2値により表される画像に変換させ、
該2値化された画像のエッジを検出させて欠陥部分およびパターン部分の輪郭情報を抽出させ、該輪郭情報に基づいて欠陥部分とパターン部分との判別を実施させ、
該判別結果に基づいて欠陥部分の画像情報とパターン部分の画像情報とを分離抽出させ
該抽出した欠陥画像及びパターン画像に関して光強度シミュレーション用データへのデータ変換処理を実施させ、
パターン情報データベースから適宜光強度シミュレーション用のパターンデータを呼び出して前記欠陥画像と合成させ、
該合成したデータに基づいて光強度シミュレーションを実行させ、
該光強度シミュレーションの結果を解析、出力させる
ことを特徴とするフォトマスク欠陥解析プログラムを記録した記録媒体。
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