JP3750242B2 - 車両用ブレーキ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばポンプ等によってブレーキ液圧を増大して制動性能を向上することができる車両用ブレーキ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、運転者のブレーキ操作を確実に行なうために、例えばブレーキペダルの踏込力を倍力して制動力を高める(いわゆるブレーキアシストを行う)ブレーキ倍力装置が用いられている。
【0003】
また、近年では、このブレーキ倍力装置以外にも、各種のブレーキアシストを行う装置の研究が行われている。例えばポンプを駆動することにより、ブレーキ液をマスタシリンダ側からホイールシリンダ側に移動させ、ホイールシリンダ圧をマスタシリンダ圧より高めて制動力を高める車両用ブレーキ装置が検討されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上述した技術では、ホイールシリンダ圧をマスタシリンダ圧より高めるために、例えばマスタシリンダからホイールシリンダに至る管路を電磁弁により遮断して、ポンプによりマスタシリンダ側からホイールシリンダ側にブレーキ液を供給する制御を行うので、制御終了の際に不具合が生じることが考えられる。
【0005】
つまり、制御終了時には、例えばポンプを停止するとともに、電磁弁をオフして管路を開くので、瞬間的に高いブレーキ液圧がホイールシリンダ側からマスタシリンダ側に伝わり、その圧力ショックによって、ブレーキペダルにキックバックが発生することがある。また、瞬間的に高いブレーキ液圧がマスタシリンダ側に伝わるので、マスタシリンダや管路の保護の点からも好ましくない。
【0006】
本発明は前記課題に鑑みなされたものであり、ポンプ等によりブレーキ液圧を高めて制動力を増大する制御を行なう場合に、不具合が生じない車両用ブレーキ装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明では、車両制動時に、第1のブレーキ液圧発生手段にて、第1のブレーキ液圧を発生すると、車輪制動力発生手段では、この第1のブレーキ液圧を管路を介して受けて車輪制動力を発生する。更に、増大手段により、第1のブレーキ液圧より高い第2のブレーキ液圧を車輪制動力発生手段に加える際には、保持手段によって、第1のブレーキ液圧と第2のブレーキ液圧との差を保持する。そして、増大手段の実行後で、且つ保持手段を解除する解除手段が実行される前に、制御手段によって収容手段を駆動して、車輪制動力発生手段にかかるブレーキ液を例えばリザーバに収容する。
【0008】
つまり、保持手段(例えば電磁弁)にて第1のブレーキ液圧と第2のブレーキ液圧との差を保持した後に、例えば電磁弁を単にオフして圧力差の保持状態を解除する場合には、圧力の高い第2のブレーキ液圧がそのまま第1のブレーキ液圧発生手段側(例えばマスタシリンダ側)に加わり、ブレーキペダルのキックバック等の不具合が発生することが考えられる。
【0009】
そこで、本発明では、解除手段によって保持手段の実行を解除して前記圧力差を解消する場合には、その解除に先だって収容手段(例えばリザーバに至る管路の電磁弁を開く手段)を実行する。それにより、第2のブレーキ液圧が急速に低減するので、その後に解除手段によって保持手段を解除しても、高いブレーキ液圧が第1のブレーキ液圧発生手段側に伝わることがない。
【0010】
その結果、ブレーキペダルのキックバックの発生を防止でき、また、例えばマスタシリンダや管路に大きな圧力が加わることがないので、マスタシリンダや管路を保護することができる。
尚、増大手段の実行後の意味するタイミング、即ち解除手段の実行タイミングとしては、増大手段の実行終了時と同時、又は実行終了後所定時間経過した時点を採用できる。
【0011】
更に、本発明では、第1のブレーキ液圧の変動を検知する検知手段を設け、制御手段の実行開始後に、解除手段が実行された際の検知手段の検出値に基づいて、解除手段の実行状態をフィードバック制御する。
つまり、制御手段を実行し、ブレーキ液を例えばリザーバに収容して第2のブレーキ液圧を低減しようとしても、実際に収容手段の実行が十分で無い場合には、解除手段をそのまま実行すると高いブレーキ液圧が第1のブレーキ液圧発生手段側に加わることがある。
【0012】
そこで、本発明では、解除手段が実行された場合における実際の第1のブレーキ液圧の変動を検知手段(例えば圧力センサ)により検知し、その検出値(例えば圧力変動幅)に応じて、解除手段の実行状態を制御している。
例えば収容手段による第2のブレーキ液圧の低減効果が少なく、そのため、解除手段を実行した際の第1のブレーキ液圧の変動が大きな場合には、解除手段の実行の程度を少なくする(例えば電磁弁の開デューティ比を小さくする)ことにより、その圧力変動を低減して、第1のブレーキ液圧発生手段側に加わる圧力ショックを低減することができる。
【0013】
一方、例えば収容手段による第2のブレーキ液圧の低減効果がある程度あり、そのため、解除手段を実行した際の第1のブレーキ液圧の変動が小さな場合には、解除手段の実行の程度を多くする(例えば電磁弁の開デューティ比を大きくする)ことにより、同様に第1のブレーキ液圧発生手段側に加わる圧力ショックを低減することができる。この場合には、収容手段の実行により前記圧力差が迅速に解消されるので、解除手段の実行を速やかに終了させることができるという利点がある。
【0014】
請求項の発明では、増大手段(例えばポンプ)は、第1のブレーキ液発生手段と保持手段との間のブレーキ液を吸引して、保持手段と車輪制動力発生手段との間にブレーキ液を吐出することにより、第1のブレーキ液圧よりも高い第2のブレーキ液圧を形成する。
【0015】
つまり、例えばポンプによりマスタシリンダ側からホイールシリンダ側にブレーキ液を送って、ホイールシリンダ側のブレーキ液圧を増大する圧力増幅を行なう場合には、その配管の構造が簡易化できる。また、この様な圧力増幅を行なう場合には、ブレーキ液の移動により、マスタシリンダ側の圧力が通常より低くなっているので、解除手段により圧力差を解消する場合でも、マスタシリンダ側の圧力が過度に高くなることがなく、マスタシリンダや管路の保護の上で好適である。
【0016】
請求項の発明では、増大手段は、大気圧を受けるリザーバ(例えばマスタリザーバ)内のブレーキ液を吸引して、保持手段と車輪制動力発生手段との間にブレーキ液を吐出することにより、第1のブレーキ液圧よりも高い第2のブレーキ液圧を形成する。
【0017】
つまり、例えばポンプによりマスタリザーバ側からホイールシリンダ側にブレーキ液を送って、ホイールシリンダ側のブレーキ液圧を増大する液量増幅を行なう場合には、マスタシリンダからホイールシリンダに至る配管以外からブレーキ液を補給するので、容易にブレーキ液圧を高くすることができるという利点がある。
請求項4の発明では、検知手段は、第1のブレーキ液圧の圧力を検出するとともに、検知手段で検出した圧力変動が大きいほど、解除手段である電磁弁の開デューティ比を小さく制御する。
請求項5の発明では、検知手段は、第1のブレーキ液圧と第2のブレーキ液圧との圧力差の変動を検出するとともに、検知手段で検出した圧力変動が大きいほど、解除手段である電磁弁の開デューティ比を小さく制御する。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の車両用ブレーキ装置の好適な実施の形態を、例(実施例)を挙げて図面に基づいて詳細に説明する。
(実施例1)
a)まず、本実施例の車両用ブレーキ装置の概略構成を、図1に基づいて説明する。尚、本実施例の車両用ブレーキ装置は、ブレーキアシストを行うために、ブレーキ倍力装置とポンプ等からなる圧力増幅機構とを備えている。
【0019】
図1に示す様に、本実施例の車両用ブレーキ装置は、ブレーキ倍力装置として、バキュームブースタ1を備えており、このバキュームブースタ1には、入力側にブレーキペダル2が連結され、出力側にタンデム型のマスタシリンダ3が連結されている。また、マスタシリンダ3には、マスタリザーバ4と、前後配管の第1及び第2の配管系統A,Bの油圧2系統で構成される油圧制御回路6が接続されている。
【0020】
前記バキュームブースタ1は、ブレーキペダル2の踏み込みに伴って倍力作用を発揮するものであり、図示しないエンジンにて発生するインテークマニホルドの負圧(インテーク負圧)と大気圧との圧力差を利用し、マスタシリンダ3のピストン7に加わる力を増大させる。
【0021】
前記油圧制御回路6では、第1の配管系統Aを経て右前(FR)輪のホイールシリンダ11と左前(FL)輪のホイールシリンダ12とが連通されている。また、第2の配管系統Bを経て右後(RR)輪のホイールシリンダ13と左後(RL)輪のホイールシリンダ14とが連通されている。
【0022】
そして、第1の配管系統Aには、FR輪のホイールシリンダ11の油圧を制御するための周知の増圧制御弁15及び減圧制御弁21と、FL輪のホイールシリンダ12の油圧を制御するための増圧制御弁16及び減圧制御弁22とが設けられ、第2の配管系統Bには、RR輪のホイールシリンダ13の油圧を制御するための増圧制御弁17及び減圧制御弁23と、RL輪のホイールシリンダ14の油圧を制御するための増圧制御弁18及び減圧制御弁24とが設けられている。
【0023】
ここで、第1の配管系統Aについて説明する。
第1の配管系統には、各増圧制御弁15,16よりマスタシリンダ3側に、その管路38を連通・遮断するマスタシリンダカットバルブ(SMC弁)26が設けられている。また、各減圧制御弁21,22から排出されたブレーキ油を一時的に蓄えるリザーバ31と、ブレーキ油を管路38に圧送するためのポンプ33が設けられている。
【0024】
更に、ホイールシリンダ圧を加圧する際に、マスタシリンダ3からポンプ33に直接ブレーキ油を供給するための管路41が設けられ、この管路41には、その管路41を連通・遮断するリザーバカットバルブ(SRC弁)28が設けられている。
【0025】
前記ポンプ33は、ポンプモータ43により駆動されるものであり、SMC弁26及びSRC弁28とともに圧力増幅機構を構成している。この圧力増幅機構では、SRC弁28を開いてSMC弁26を遮断した状態でポンプ33を駆動することにより、ホイールシリンダ圧をマスタシリンダ圧よりも増大することができる。
【0026】
尚、ポンプ33からのブレーキ油の吐出経路には、内部の油圧の脈動を抑えるアキュムレータ36が設けられている。
一方、第2の配管系統Bには、前記第1の配管系統Aと同様に、増圧制御弁17,18、減圧制御弁23,24、SMC弁27、リザーバ32、ポンプ34、アキュムレータ37、SRC弁29、管路39,42等が、同様な箇所に設けられている。
【0027】
尚、本実施例では、マスタシリンダ3と各SMC弁26,27との間の管路には、マスタシリンダ3側のブレーキ油圧(第1のブレーキ液圧)を検出するために、各々圧力センサ46,47が設けられているが、これは省略可能である。
b)また、図2に示す様に、上述した車両用ブレーキ装置を制御するECU51は、周知のCPU51a,ROM51b,RAM51c,入出力部51d及びバスライン51e等を備えたマイクロコンピュータを中心に構成されている。
【0028】
前記ECU51には、各車輪に配置された車輪速度センサ52、ブレーキスイッチ53、圧力センサ46,47、ホイールシリンダ圧を検出するW/C圧センサ54等からの信号が入力される。
また、ECU51からは、電磁弁である増圧制御弁15〜18、減圧制御弁21〜24、SMC弁26,27、SRC弁28,29、ポンプモータ43等の制御アクチュエータを駆動する制御信号が出力される。
【0029】
c)次に、本実施例における制御処理について、図3及び図4のフローチャートに基づいて説明する。
まず、図3のステップ100にて、初期設定を行う。例えば、上述した圧力増幅機構による圧力増幅(ブレーキアシスト)の実行を示すアシスト開始フラグBASFを0にセットするとともに、ブレーキアシストの終了を示すアシスト終了フラグBAEFを0にセットする。
【0030】
続くステップ110では、ブレーキペダル2が踏まれた制動時であるかどうかを、ブレーキスイッチ53がオンか否かによって判定する。ここで肯定判断されるとステップ120に進み、一方否定判断されると再度同じ判断を繰り返す。
ステップ120では、圧力増幅機構によるブレーキアシストを開始する条件が満たされたか否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ130に進み、一方否定判断されるとステップ150に進む。
【0031】
このブレーキアシストの開始条件としては、例えば下記▲1▼〜▲3▼等の様な車両の制動時を検出する方法を採用することができる。
▲1▼車体加速度dVBが、所定の判定値kdVBを下回った場合(即ち車体減速度が大きな場合)。
【0032】
▲2▼少なくとも1輪に対してABS制御が実施された場合。
▲3▼マスタシリンダ圧が、所定の判定値kPを上回った場合。
ステップ130では、ブレーキアシストの開始条件が満たされたので、ブレーキアシストの実行を開始する。即ち、圧力増幅機構によるホイールシリンダ圧の圧力増幅を行なう。
【0033】
具体的には、SMC弁26,27をオン(閉)して、マスタシリンダ3とホイールシリンダ11〜14との間の管路38,39を遮断状態とし、且つSRC弁28,29をオン(閉)して、マスタシリンダ3とポンプ33,34の吸引側との管路41,42を連通状態にして、ポンプモータ43をオンしてポンプ33,34を作動させる。これにより、マスタシリンダ圧よりホイールシリンダ圧の方が高くなり、車輪制動力が増大する。
【0034】
続くステップ140では、ブレーキアシストが実行されているので、アシスト開始フラグBASFを1にセットし、ステップ170に進む。
一方、前記ステップ120にて否定判断されて進むステップ150では、既にブレーキアシストが開始されているかどうかを判定するために、アシスト開始フラグBASFが1か否かを判定する。ここで、肯定判断されるとステップ160に進み、一方否定判断されるとステップ170に進む。
【0035】
ステップ160では、既にブレーキアシストが実行されており、しかも今回前記ステップ120の判定により、ブレーキアシストを実行する条件が満たされていないと判断されたので、即ちブレーキアシストの終了時と判断されるので、アシスト終了フラグBAEFを1にセットし、ステップ170に進む。
【0036】
そして、ステップ170では、ブレーキアシストの終了時であるかどうかを、アシスト終了フラグBAEFが1か否かによって判定する。ここで肯定判断されるとステップ180に進み、一方否定判断されると前記ステップ110に戻る。ステップ180では、ブレーキアシストの終了時と判定されたので、ブレーキアシストの終了時の制御を、後に詳述する制御手段により実行し、一旦本処理を終了する。
【0037】
つまり、ブレーキペダル2が踏まれた場合に、ブレーキアシストを実行する条件が満たされていない時には、ステップ110→120→150→170→110のルーチンにて、ブレーキアシストを実行しない。また、ブレーキアシストを実行する条件が満たされた場合には、ステップ110→120→130→140→170→110のルーチンにて、ブレーキアシストを実行する。そして、ブレーキアシストが終了した場合には、ステップ110→120→150→160→170→180のルーチンにて、ブレーキアシストの終了時の制御を行うのである。
【0038】
次に、前記ステップ180におけるブレーキアシストの終了時の制御を、図4のフローチャートにより説明する。
図4のステップ200にて、圧力増幅機構によるホイールシリンダ圧の増圧を停止するために、SRC弁28,29をオフ(閉)してマスタシリンダ3からポンプ33,34の吸引側に至る管路41,42を遮断状態にするとともに、ポンプモータ43をオフしてポンプ33,34を停止する。
【0039】
続くステップ210にて、収容手段を実行する。即ち、上述したブレーキアシストの実行によって増圧されたホイールシリンダ圧を低減するために、減圧制御弁21〜24をオン(開)して、ホイールシリンダ11〜14側のブレーキ油をリザーバ31,32に逃がす制御を行う。
【0040】
続くステップ220では、減圧制御弁21〜24をオンしてから所定時間T1経過したか否かを判定する。つまり、ホイールシリンダ圧が十分に低減するだけの時間が経過したか否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ230に進み、一方否定判断されるとステップ210に戻る。
【0041】
ステップ230では、解除手段を実行する。即ち、SMC弁26,27をオフ(開)して、マスタシリンダ3からホイールシリンダ11〜14に至る管路を連通状態にする。
続くステップ240では、減圧制御弁21〜24をオフ(閉)して、収容手段の実行を終了する。即ち、減圧制御弁21〜24を閉じて、ホイールシリンダ11〜14からリザーバ31,32に至る管路を遮断し、一旦本処理を終了する。
【0042】
d)次に、上述した制御による作用効果を、図5の圧力状態を示すグラフを参照して説明する。
図5に示す様に、例えばある時点t0にて、圧力増幅機構によるブレーキアシストが開始されると、ホイールシリンダ圧(W/C圧)はマスタシリンダ圧(M/C圧)よりも大きくなる様に増圧される。尚、ホイールシリンダ圧は、安全のために管路に配置されたチェック弁等により所定値以上には増圧されない。
【0043】
次に、時点t1にて、ブレーキアシストの実行条件が満たされなくなると、SRC弁28,29をオフ(閉)するとともに、ポンプ33,34を停止してその増圧を停止する。更に、減圧制御弁21〜24をオン(開)して、ブレーキ油をホイールシリンダ11〜14側からリザーバ31,32に逃がして、ホイールシリンダ圧を低減する。
【0044】
そして、減圧制御弁21〜24をオンしてから所定時間T1後の時点t2にて、即ち、ホイールシリンダ圧がマスタシリンダ圧とほぼ一致し、その圧力差が無くなった時に、SMC弁26,27をオフ(開)してその管路38,39を開き、マスタシリンダ3とホイールシリンダ11〜14とを連通状態にする。それにより、以後は、マスタシリンダ圧とホイールシリンダ圧とが一致して変化する。
【0045】
この様に、本実施例では、圧力増幅機構によるブレーキアシストが終了したときには、従来の様に、そのままSMC弁26,27を開くのではなく、まず、減圧制御弁21〜24を開いて、高いホイールシリンダ圧を低減してマスタシリンダ圧に近づけてからSMC弁26,27を開くので、高いブレーキ油圧が瞬間的にマスタシリンダ3側に伝わって、ブレーキペダル2にキックバックが生じることを防止できる。
【0046】
また、高いブレーキ油圧がマスタシリンダ3側に加わらないのであるから、マスタシリンダ3や管路の保護の点からも好ましい。
尚、本実施例では、減圧制御弁21〜24を開いてから所定時間T1後にSMC弁26,27を開いているが、例えばマスタシリンダ圧とホイールシリンダ圧を各々圧力センサ46,47及び各輪のW/C圧センサ54によって検出し、その圧力差が十分に小さくなった時に、SMC弁26,27を開いてもよい。
(実施例2)
次に、実施例2について説明する。
【0047】
本実施例は、前記実施例1とは、制御手段による制御が異なるので、異なる点を中心に説明し、同様な部分の説明は省略又は簡略化する。
a)まず、本実施例における制御手段の制御処理、即ち、ブレーキアシストの終了時の制御を、図6のフローチャートにより説明する。
【0048】
図6のステップ300にて、ホイールシリンダ圧の増圧を停止するために、SRC弁28,29をオフ(閉)してマスタシリンダ3からポンプ33,34の吸引側に至る管路41,42を遮断状態にするとともに、ポンプモータ43をオフしてポンプ33,34を停止する。
【0049】
続くステップ310にて、収容手段を実行する。即ち、ブレーキアシストの実行によって増圧されたホイールシリンダ圧を低減するために、減圧制御弁21〜24をオン(開)して、ホイールシリンダ11〜14側のブレーキ油をリザーバ31,32に逃がす制御を行う。
【0050】
続くステップ320では、解除手段のパルス駆動を開始する。即ち、電磁弁であるSMC弁26,27に印加する電圧をパルス状に変化させて通電してSMC弁26,27を駆動し、その開閉状態を調節する制御を開始する。
続くステップ330では、圧力センサ46,47からの信号に基づいて、SMC弁26,27を駆動した場合におけるマスタシリンダ圧の圧力変動ΔPを検出する。
【0051】
続くステップ340では、例えば図7に示す様なマップに基づき、マスタシリンダ圧の圧力変動ΔPに応じて、SMC弁26,27に印加する電圧のパルス幅を変更する。
例えば圧力変動ΔPが大きく、マスタシリンダ3側に加わる圧力によるショックが大きな場合には、SMC弁26,27を開くための電圧のパルス幅を小さくし、即ちSMC弁26,27の開デューティ比を小さくして、ホイールシリンダ11〜14側からマスタシリンダ3側に一挙に多量のブレーキ油が供給されて大きな圧力が加わらない様にする。一方、圧力変動ΔPが小さく、マスタシリンダ3側に加わる圧力によるショックが小さな場合には、SMC弁26,27を開くためのパルス幅を大きくし、即ちSMC弁26,27の開デューティ比を大きくして、ホイールシリンダ11〜14側からマスタシリンダ3側に速やかにブレーキ油を供給して、圧力差を迅速に低減する様にする。
【0052】
続くステップ350では、圧力変動ΔPが0(又は0近傍の所定値)か否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ360に進み、一方否定判断されるとステップ330に戻る。
ステップ360では、減圧制御弁21〜24をオフ(閉)して、収容手段の実行を終了する。即ち、減圧制御弁21〜24を閉じて、ホイールシリンダ11〜14からリザーバ31,32に至る管路を遮断し、一旦本処理を終了する。
【0053】
d)次に、上述した制御による作用効果を、図8の圧力状態を示すグラフを参照して説明する。
図8に示す様に、例えばある時点t0にて、圧力増幅機構によるブレーキアシストが開始されると、ホイールシリンダ圧(W/C圧)はマスタシリンダ圧(M/S圧)よりも大きくなる様に増圧される。
【0054】
次に、時点t1にて、ブレーキアシストの実行条件が満たされなくなると、SRC弁28,29をオフ(閉)するとともに、ポンプ33,34を停止してその増圧を停止する。更に、減圧制御弁21〜24をオン(開)して、ブレーキ油をホイールシリンダ11〜14側からリザーバ31,32に逃がして、ホイールシリンダ圧を低減する。
【0055】
それとともに、SMC弁26,27をオフ(開)して、マスタシリンダ3とホイールシリンダ11〜14とを連通するが、この時には、SMC弁26,27の開デューティ比を、マスタシリンダ圧の圧力変動ΔPに応じて設定して、マスタシリンダ圧に大きな圧力変動ΔPが生じない様に、徐々にSMC弁26,27の開閉状態を制御している。
【0056】
そして、圧力変動ΔPが十分に小さくなった時点t2に、即ち、ホイールシリンダ圧がマスタシリンダ圧とほぼ一致して、その圧力差が無くなった時に、SMC弁26,27の開デューティ比を100%にしてその管路38,39を開き、マスタシリンダ3とホイールシリンダ11〜14とを完全な連通状態にする。それにより、時点t2以後は、マスタシリンダ圧とホイールシリンダ圧とが一致して変化する。
【0057】
この様に、本実施例では、圧力増幅機構によるブレーキアシストが終了したときには、減圧制御弁21〜24を開いて、高いホイールタシリンダ圧を低減するとともに、マスタシリンダ圧の圧力変動ΔPに応じてSMC弁26,27の開閉状態をフィードバック制御するので、前記実施例1と同様に、高いブレーキ油圧が瞬間的にマスタシリンダ3側に伝わって、ブレーキペダル2にキックバックが生じることを防止できる。また、高いブレーキ油圧がマスタシリンダ3側に加わらないので、マスタシリンダ3や管路の保護の点からも好ましい。
【0058】
特に、本実施例では、前記実施例1の様に、所定時間T1待機してからSMC弁26,27を開くのではなく、圧力変動ΔPに応じてSMC弁26,27の開閉状態を制御するので、多少の圧力ショックがあるかもしれないが、前記実施例1よりも速やかにホイールシリンダ圧をマスタシリンダ圧に一致させることができ、次のブレーキペダル2の踏み込みによる制動動作や例えばABS制御等の他の制動制御を、支障なく迅速に行うことができる。
(実施例3)
次に、実施例3について説明する。
【0059】
本実施例は、前記実施例1とは、制御手段による制御が異なるので、異なる点を中心に説明し、同様な部分の説明は省略又は簡略化する。
a)まず、本実施例における制御手段の制御処理、即ち、ブレーキアシストの終了時の制御を、図9のフローチャートにより説明する。
【0060】
図9のステップ400にて、ホイールシリンダ圧の増圧を停止するために、SRC弁28,29をオフ(閉)してマスタシリンダ3からポンプ33,34の吸引側に至る管路41,42を遮断状態にするとともに、ポンプモータ43をオフしてポンプ33,34を停止する。
【0061】
続くステップ410にて、収容手段を実行する。即ち、ブレーキアシストの実行によって増圧されたホイールシリンダ圧を低減するために、減圧制御弁21〜24をオン(開)して、ホイールシリンダ11〜14側のブレーキ油をリザーバ31,32に逃がす制御を行う。
【0062】
続くステップ420では、解除手段のパルス駆動を開始する。即ち、電磁弁であるSMC弁26,27に印加する電圧をパルス状に変化させて通電してSMC弁26,27を駆動し、その開閉状態を調節する制御を開始する。
続くステップ430では、マスタシリンダ3側の圧力を検出する圧力センサ46,47からの信号と、ホイールシリンダ11〜14側の圧力(即ち圧力増幅が行われているホイールシリンダ圧)を検出する各W/C圧センサ54からの信号とに基づいて、SMC弁26,27を駆動した場合におけるマスタシリンダ圧とホイールシリンダ圧と圧力差ΔPSを検出する。
【0063】
続くステップ440では、例えば前記図7に示したと同様なマップに基づき(但し横軸の△Pを△PSに変更する)、前記圧力差ΔPSに応じて、SMC弁26,27に印加する電圧のパルス幅を変更する。
例えば圧力差ΔPSが大きく、マスタシリンダ3側に加わる圧力によるショックが大きな場合には、SMC弁26,27を開くためのパルス幅を小さくし、即ちSMC弁26,27の開デューティ比を小さくして、ホイールシリンダ11〜14側からマスタシリンダ3側に一挙に多量のブレーキ油が供給されて大きな圧力が加わらない様にする。一方、圧力差ΔPSが小さく、マスタシリンダ3側に加わる圧力によるショックが小さな場合には、SMC弁26,27を開くためのパルス幅を大きくし、即ちSMC弁26,27の開デューティ比を大きくして、ホイールシリンダ11〜14側からマスタシリンダ3側に速やかにブレーキ油を供給して、圧力差△PSを迅速に低減する様にする。
【0064】
続くステップ450では、圧力差ΔPSが0(又は0近傍の所定値)か否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ460に進み、一方否定判断されるとステップ430に戻る。
ステップ460では、減圧制御弁21〜24をオフ(閉)して、収容手段の実行を終了する。即ち、減圧制御弁21〜24を閉じて、ホイールシリンダ11〜14からリザーバ31,32に至る管路を遮断し、一旦本処理を終了する。
【0065】
この様に、本実施例では、圧力増幅機構によるブレーキアシストが終了したときには、減圧制御弁21〜24を開いて、高いホイールタシリンダ圧を低減するとともに、マスタシリンダ圧とホイールシリンダ圧との圧力差ΔPSに応じてSMC弁26,27の開閉状態をフィードバック制御するので、前記実施例1,2と同様に、高いブレーキ油圧が瞬間的にマスタシリンダ3側に伝わって、ブレーキペダル2にキックバックが生じることを防止できる。また、高いブレーキ油圧がマスタシリンダ3側に加わらないので、マスタシリンダ3や管路の保護の点からも好ましい。
【0066】
特に、本実施例では、前記実施例1の様に、所定時間T1待機してからSMC弁26,27を開くのではなく、圧力差ΔPSに応じてSMC弁26,27の開閉状態を制御するので、多少の圧力ショックがあるかもしれないが、前記実施例1よりも速やかにホイールシリンダ圧をマスタシリンダ圧に一致させることができ、次のブレーキペダル2の踏み込みによる制動動作や例えばABS制御等の他の制動制御を、支障なく迅速に行うことができる。
【0067】
尚、本発明は上記実施例に何ら限定されることなく、本発明の技術的範囲を逸脱しない限り、種々の態様で実施できることはいうまでもない。
(1)例えば、前記実施例1〜3では、圧力増幅機構として、マスタシリンダからホイールシリンダ側にブレーキ油を供給する構成を例に挙げたが、それとは別に、例えば、ポンプの吸引側を、マスタシリンダではなくマスタリザーバに接続し、その管路にSRC弁を配置した構成としてもよい。
【0068】
この場合は、前記実施例1〜3の様に、マスタシリンダとホイールシリンダとの間のブレーキ油をホイールシリンダ側に移動させてホイールシリンダ圧を高めるのではなく、他の箇所(マスタリザーバ)からブレーキ油を補充してホイールシリンダ圧を高めるので、速やかにホイールシリンダ圧を高めることができ、その制動性能が高いという利点がある。
【0069】
(2)前記実施例1〜3では、マスタシリンダからホイールシリンダに至る管路に、SMC弁を配置したが、図10に示す様に、このSMC弁26,27と並列に比例制御弁71,72を逆接して配置してもよい。
つまり、SMC弁26,27と並列に、比例制御弁71,72を逆接した構成、即ち比例制御弁71,72の高圧側(入力側)をホイールシリンダ11〜14側とし、低圧側(出力側)をマスタシリンダ3側とする構成を採用できる。
【0070】
(3)前記図1及び図10に示す実施例では、前後配管を例に挙げたが、それに代えてX配管(ダイアゴナル配管)を採用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1の車両用ブレーキ装置を示す概略構成図である。
【図2】 実施例1の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】 実施例1のメインの制御処理を示すフローチャートである。
【図4】 実施例1の制御手段による制御処理を示すフローチャートである。
【図5】 実施例1の装置における圧力変化を示すグラフである。
【図6】 実施例2の制御手段による制御処理を示すフローチャートである。
【図7】 実施例2の装置における圧力変化を示すグラフである。
【図8】 実施例2におけるSMC弁のデューティ比設定のマップを示すグラフである。
【図9】 実施例2の制御手段による制御処理を示すフローチャートである。
【図10】 他の油圧制御回路を示す概略構成図である。
【符号の説明】
1…バキュームブースタ
2…ブレーキペダル
3…マスタシリンダ
6…油圧制御回路
11,12,13,14…ホイールシリンダ
21,22,23,24…減圧制御弁
26,27…マスターカットバルブ(SMC弁)
28,29…リザーバカットバルブ(SRC弁)
31,32…リザーバ
33,34…ポンプ
43…ポンプモータ
46,47…圧力センサ

Claims (5)

  1. 車両制動時に、第1のブレーキ液圧を発生する第1のブレーキ液圧発生手段と、
    前記第1のブレーキ液圧を受けて車輪制動力を発生する車輪制動力発生手段と、
    該車輪制動力発生手段と前記第1のブレーキ液圧発生手段とを連通する管路と、
    前記第1のブレーキ液圧より高い第2のブレーキ液圧を前記車輪制動力発生手段に加える増大手段と、
    該増大手段が実行されている際に、前記第1のブレーキ液圧発生手段における第1のブレーキ液圧と前記車輪制動力発生手段における第2のブレーキ液圧との差を保持する保持手段と、
    前記増大手段の実行後、前記保持手段を解除する解除手段と、
    前記車輪制動力発生手段にかかるブレーキ液を収容する収容手段と、
    前記解除手段が実行される前に前記収容手段を実行する制御手段と、
    を備えるとともに、
    前記第1のブレーキ液圧の変動を検知する検知手段を備え、
    前記制御手段の実行開始後に、前記解除手段が実行された際の前記検知手段の検出値に基づいて、該解除手段の実行状態をフィードバック制御することを特徴とする車両用ブレーキ装置
  2. 前記増大手段は、前記第1のブレーキ液発生手段と前記保持手段との間のブレーキ液を吸引して、前記保持手段と前記車輪制動力発生手段との間にブレーキ液を吐出することにより、前記第1のブレーキ液圧よりも高い前記第2のブレーキ液圧を形成することを特徴とする前記請求項1に記載の車両用ブレーキ装置。
  3. 前記増大手段は、大気圧を受けるリザーバ内のブレーキ液を吸引して、前記保持手段と前記車輪制動力発生手段との間にブレーキ液を吐出することにより、前記第1のブレーキ液圧よりも前記高い第2のブレーキ液圧を形成することを特徴とする前記請求項1に記載の車両用ブレーキ装置。
  4. 前記検知手段は、前記第1のブレーキ液圧の圧力を検出するとともに、前記検知手段で検出した圧力変動が大きいほど、前記解除手段である電磁弁の開デューティ比を小さく制御することを特徴とする前記請求項1〜3のいずれかに記載の車両用ブレーキ装置。
  5. 前記検知手段は、前記第1のブレーキ液圧と前記第2のブレーキ液圧との圧力差の変動を検出するとともに、前記検知手段で検出した圧力変動が大きいほど、前記解除手段である電磁弁の開デューティ比を小さく制御することを特徴とする前記請求項1〜3のいずれかに記載の車両用ブレーキ装置。
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