以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態(以下、本実施形態と記載する)について、図面を参照しつつ説明する。
(構成)
図1は、本実施形態の制動力制御装置を適用した車両Vの概略構成を示す図である。
図1中に示すように、車両Vは、車輪Wと、ホイールシリンダ1と、ブレーキペダル2と、マスタシリンダ4と、油圧ユニット6と、ブレーキコントローラ8を備えている。
車輪Wは、自動変速機10等を介してエンジン12の駆動軸と連結している左右一対の前輪WFと、前輪WFよりも車両前後方向後方にオフセットして配置した、左右一対の後輪WRから構成している。なお、以降の説明では、左右一対の前輪WFを、左前輪WFL及び右前輪WFRと記載し、左右一対の後輪WRを、左後輪WRL及び右後輪WRRと記載する場合がある。
左前輪WFL、右前輪WFR、左後輪WRL及び右後輪WRRには、それぞれ、車輪速センサ14を設けている。各車輪速センサ14は、対応する車輪Wの回転状態(回転数、回転速度)を検出し、この検出した回転状態を含む情報信号をブレーキコントローラ8へ出力する。なお、以降の説明では、左前輪WFLに設けた車輪速センサ14を、車輪速センサ14FLと記載し、右前輪WFRに設けた車輪速センサ14を、車輪速センサ14FRと記載する場合がある。同様に、以降の説明では、左後輪WRLに設けた車輪速センサ14を、車輪速センサ14RLと記載し、右後輪WRRに設けた車輪速センサ14を、車輪速センサ14RRと記載する場合がある。
自動変速機10は、エンジン12の発生した駆動力を、変速機コントローラ16が制御した変速比で、前輪WFに伝達する。
変速機コントローラ16は、運転者によるアクセルペダル18の操作量や変速操作(例えば、シフトレバーの操作)等に応じて、自動変速機10の変速比を制御する。また、変速機コントローラ16は、ギア位置信号(自動変速機10のレンジポジション:「P」、「N」、「D」、「R」等)を含む情報信号を、ブレーキコントローラ8へ出力する。
エンジン12は、駆動力を発生可能な内燃機関であり、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンを用いて形成し、エンジンコントローラ20により制御して、駆動軸を回転させる。
エンジンコントローラ20は、運転者によるアクセルペダル18の操作量等に応じて、エンジン12のトルクや回転数、スロットル開度等を制御し、エンジン12のコントロールを行う。これにより、エンジンコントローラ20は、運転者の意思を反映した車両Vの加減速コントロールを行う。また、エンジンコントローラ20は、エンジン12が発生するトルクを含む情報信号と、アクセルペダル18の操作量を含む情報信号を、ブレーキコントローラ8へ出力する。
ホイールシリンダ1は、左前輪WFL、右前輪WFR、左後輪WRL及び右後輪WRRに、それぞれ設けてあり、液圧により、対応する車輪Wに制動力を付与する。なお、以降の説明では、左前輪WFLに設けたホイールシリンダ1を、ホイールシリンダ1FLと記載し、右前輪WFRに設けたホイールシリンダ1を、ホイールシリンダ1FRと記載する場合がある。同様に、以降の説明では、左後輪WRLに設けたホイールシリンダ1を、ホイールシリンダ1RLと記載し、右後輪WRRに設けたホイールシリンダ1を、ホイールシリンダ1RRと記載する場合がある。
各ホイールシリンダ1は、油圧ユニット6を介してマスタシリンダ4と連通しており、油圧ユニット6から供給された液圧(ブレーキ液の及ぼす圧力)を用いて、対応する車輪Wに制動力を付与する。
ブレーキペダル2は、運転者による車両Vの制動時に操作されるペダルであり、制動倍力装置22を介して、マスタシリンダ4に接続している。
制動倍力装置22は、例えば、電動ブースタを用いて形成してあり、車両Vの制動時において、運転者のブレーキペダル2の操作量を、予め設定された比率で倍力する。
また、ブレーキペダル2には、ブレーキセンサ24を設けている。
ブレーキセンサ24は、例えば、ブレーキペダル2のストロークを検出可能なブレーキストロークセンサ等を用いて形成してあり、運転者によるブレーキペダル2のストロークを検出する。そして、この検出したブレーキペダル2のストロークを含む情報信号を、ブレーキコントローラ8へ出力する。
マスタシリンダ4は、制動倍力装置22が倍力した、運転者によるブレーキペダル2の操作量に応じた液圧(マスタシリンダ圧)を発生させ、この発生させた液圧を、油圧ユニット6へ供給する。
また、マスタシリンダ4は、ブレーキペダル2の非操作時に、第一連通路26を介して、ブレーキ液を貯留したリザーブタンク28と連通する。すなわち、第一連通路26の一端は、常にリザーブタンク28と連通し、第一連通路26の他端は、ブレーキペダル2の非操作時に、マスタシリンダ4内のピストン(図示せず)によって閉鎖されない位置で、マスタシリンダ4と連通している。
ここで、ブレーキペダル2の非操作時は、運転者によるブレーキペダル2の操作量が「0」の状態である。また、本実施形態では、運転者によるブレーキペダル2の操作量が略「0」の状態を含む。なお、運転者によるブレーキペダル2の操作量が略「0」の状態とは、例えば、運転者によるブレーキペダル2の操作量が、ブレーキペダル2に設定された遊びの範囲内である状態とする。なお、マスタシリンダ4の具体的な構成は、後述する。
油圧ユニット6は、ブレーキコントローラ8が出力した指令信号に基づいて、マスタシリンダ4から供給された液圧を、マスタシリンダ圧以上の液圧に増圧し、この増圧した液圧を、各ホイールシリンダ1に供給する。ここで、油圧ユニット6は、増圧した液圧に対し、その増圧量を制御(増圧、減圧または保持)した液圧を、各ホイールシリンダ1に供給する。なお、油圧ユニット6の具体的な構成は、後述する。
ブレーキコントローラ8は、上述した自動変速機コントローラ16、エンジンコントローラ20、車輪速センサ14及びブレーキセンサ24が出力した情報信号の入力を受ける。これに加え、ブレーキコントローラ8は、後述するヨーレート・横加速度センサ30及び操舵角センサ32が出力した情報信号の入力を受ける。なお、本実施形態では、一例として、各コントローラ(16、20)及び各センサ(14、24、30、32)とブレーキコントローラ8との間における情報信号の出入力を、CAN(Controller Area Network)を経由して行う場合を説明する。
また、ブレーキコントローラ8は、各コントローラ(16、20)及び各センサ(14、24、30、32)から入力された各種の情報信号に基づき、ブレーキアシスト制御を行う処理を実行する。ここで、ブレーキアシスト制御とは、運転者の制動操作に応じた制動力に対して、より大きな制動力を発生させる制御である。また、運転者の制動操作に応じた制動力とは、運転者によるブレーキペダル2の操作量に応じて車輪Wに付与される制動力である。
さらに、ブレーキコントローラ8は、各コントローラ(16、20)及び各センサ(14、24、30、32)から入力された各種の情報信号に基づき、油圧ユニット6へ、液圧の制御に関する指令信号を出力する。
なお、ブレーキコントローラ8の詳細な構成については、後述する。
ヨーレート・横加速度センサ30は、車両Vのヨーレート及び横加速度を検出し、この検出したヨーレート及び横加速度を含む情報信号を、ブレーキコントローラ8へ出力する。
操舵角センサ32は、例えば、ステアリングコラムに取り付けてあり、運転者によるステアリングホイール34の操舵角を検出し、この検出した操舵角を含む情報信号を、ブレーキコントローラ8へ出力する。
(マスタシリンダ4の具体的な構成)
以下、図1を参照しつつ、図2を用いて、マスタシリンダ4の具体的な構成について説明する。
図2は、マスタシリンダ4の構成を示す断面図である。
図2中に示すように、マスタシリンダ4は、シリンダボディ4aと、プライマリピストン4bPと、セカンダリピストン4bSと、プライマリリターンスプリング4cPと、セカンダリリターンスプリング4cSを備えている。
シリンダボディ4aは、その内部に、プライマリピストン4bPと、セカンダリピストン4bSと、プライマリリターンスプリング4cP及びセカンダリリターンスプリング4cSを配置した空間を有している。
プライマリピストン4bPは、シリンダボディ4aの内部において、シリンダボディ4aの内面に対して摺動自在に配置してあり、ブレーキペダル2の踏み込み方向への操作に応じ、プライマリリターンスプリング4cPを収縮させて、前進(右側へ移動)する。また、プライマリピストン4bPは、ブレーキペダル2の踏み戻し方向への操作に応じ、伸長するプライマリリターンスプリング4cPにより押圧付勢されて、後退(左側へ移動)する。
プライマリリターンスプリング4cPは、例えば、軸方向に収縮可能なコイルスプリングを用いて形成してあり、プライマリピストン4bPとセカンダリピストン4bSとの間に形成された空間であるプライマリ側液室4dP内に配置する。ここで、プライマリ側液室4dPは、後述するP(プライマリ)系統に連通する空間である。
また、プライマリピストン4bPには、プライマリピストン4bPを径方向(図2中では上下方向)に貫通し、第一連通路26よりも小径の貫通孔である、プライマリポート4ePを設けている。
ここで、プライマリポート4ePは、運転者によるブレーキペダル2の操作状態に応じて、プライマリ側液室4dPと第一連通路26とを連通または遮断する位置に形成する。
具体的には、ブレーキペダル2が非操作時の状態である場合に、プライマリポート4eP全体が第一連通路26と重なって、プライマリ側液室4dPと第一連通路26とを連通する位置に形成する。また、ブレーキペダル2が操作時の状態である場合に、プライマリポート4ePがプライマリピストンカップ4fPにより閉塞されて、プライマリ側液室4dPと第一連通路26とを遮断する位置に形成する。
セカンダリピストン4bSは、シリンダボディ4aの内部において、シリンダボディ4aの内面に対して摺動自在に配置してあり、プライマリピストン4bPから押圧力を受けると、セカンダリリターンスプリング4cSを収縮させて、前進(右側へ移動)する。また、セカンダリピストン4bSは、プライマリピストン4bPから受けた押圧力が低下すると、伸長するセカンダリリターンスプリング4cSにより押圧付勢されて、後退(左側へ移動)する。
セカンダリリターンスプリング4cSは、例えば、軸方向に収縮可能なコイルスプリングを用いて形成してあり、シリンダボディ4aの内部において、セカンダリピストン4bSの前進方向側に形成された空間であるセカンダリ側液室4dS内に配置する。ここで、セカンダリ側液室4dSは、後述するS(セカンダリ)系統に連通する空間である。
また、セカンダリピストン4bSには、セカンダリピストン4bSを径方向(図2中では上下方向)に貫通し、第一連通路26よりも小径の貫通孔である、セカンダリポート4eSを設けている。
ここで、セカンダリポート4eSは、運転者によるブレーキペダル2の操作状態に応じて、セカンダリ側液室4dSと第一連通路26とを連通または遮断する位置に形成する。
具体的には、ブレーキペダル2が非操作時の状態である場合に、セカンダリポート4eS全体が第一連通路26と重なって、セカンダリ側液室4dSと第一連通路26とを連通する位置に形成する。また、ブレーキペダル2が操作時の状態である場合に、セカンダリポート4eSがセカンダリピストンカップ4fSにより閉塞されて、セカンダリ側液室4dSと第一連通路26とを遮断する位置に形成する。
以上により、ブレーキペダル2が非操作時の状態から操作時の状態へと移行する際には、各ポート4eP,4eS全体が第一連通路26と重なる状態から、各ポート4eP,4eSの一部が第一連通路26と重なる状態へと移行する。さらに、各ポート4eP,4eSの一部が第一連通路26と重なる状態から、各ポート4eP,4eSが各カップ4fP,4fSにより閉塞される状態へと移行する。
同様に、ブレーキペダル2が操作時の状態から非操作時の状態へと移行する(戻る)際には、各ポート4eP,4eSが各カップ4fP,4fSにより閉塞された状態から、各ポート4eP,4eSの一部が第一連通路26と重なる(連通する)状態へと移行する。さらに、各ポート4eP,4eSの一部が第一連通路26と重なる状態から、各ポート4eP,4eS全体が第一連通路26と重なる状態へと移行する。
なお、図2中には、各ポート4eP,4eSの一部が第一連通路26と重なる状態を示しており、この状態(各ポート4eP,4eSの一部もしくは全部が第一連通路26と重なる状態)を以下では各ポート4eP,4eSが開いている状態と言う。
したがって、ブレーキペダル2が非操作の状態から操作状態となった時には、開いていた各ポート4eP,4eSが閉じて、第一連通路26とマスタシリンダ4とを遮断する。また、操作状態のブレーキペダル2が非操作時の状態へ戻る際には、閉じていた各ポート4eP,4eSが開いて、第一連通路26とマスタシリンダ4とを連通させる。
(油圧ユニット6の具体的な構成)
以下、図1及び図2を参照しつつ、図3を用いて、油圧ユニット6の具体的な構成について説明する。
図3は、油圧ユニット6の油圧回路を示す図である。
図3中に示すように、油圧ユニット6は、ブレーキ液が移動する油圧系統として、P(プライマリ)系統とS(セカンダリ)系統との二系統を有しており、いわゆる、X配管と呼ばれる配管構造となっている。
(P系統及びS系統の概略構成)
以下、P系統及びS系統の概略構成について説明する。
P系統の一端には、マスタシリンダ4を接続しており、P系統の他端には、ホイールシリンダ1FL及びホイールシリンダ1RRを接続している。また、P系統には、P系統側ポンプ36Pを設けている。P系統の詳細な構成は、後述する。
S系統の一端には、マスタシリンダ4を接続しており、S系統の他端には、ホイールシリンダ1FR及びホイールシリンダ1RLを接続している。また、S系統には、S系統側ポンプ36Sを設けている。S系統の詳細な構成は、後述する。
ここで、P系統側ポンプ36PとS系統側ポンプ36Sは、一つのブレーキアシストモータ38によって駆動する。ブレーキアシストモータ38は、ブレーキコントローラ8が出力した指令信号により駆動する。
(P系統の詳細な構成)
以下、P系統の詳細な構成について説明する。
マスタシリンダ4とP系統側ポンプ36Pの吸入側は、P系統側第一管路40Pによって接続しており、P系統側第一管路40P上には、P系統側ゲートインバルブ42Pを設けている。P系統側ゲートインバルブ42Pは、常閉型の電磁弁であり、ブレーキコントローラ8が出力した指令信号により動作(開閉)する。
また、P系統側第一管路40P上において、P系統側ゲートインバルブ42PとP系統側ポンプ36Pとの間には、P系統側第一チェックバルブ44Pを設けている。P系統側第一チェックバルブ44Pは、P系統側ゲートインバルブ42PからP系統側ポンプ36Pへ向かう方向へのブレーキ液の流れを許容するバルブである。また、P系統側ポンプ36PからP系統側ゲートインバルブ42Pへ向かう方向へのブレーキ液の流れを禁止するバルブである。
P系統側ポンプ36Pの吐出側とホイールシリンダ1FL及びホイールシリンダ1RRは、P系統側第二管路46Pによって接続している。
P系統側第二管路46Pは、ホイールシリンダ1FLに接続するP系統側第一分岐路48FLと、ホイールシリンダ1RRに接続するP系統側第一分岐路48RRに分岐している。
P系統側第一分岐路48FLには、P系統側ソレノイドインバルブ50FLを設けている。P系統側ソレノイドインバルブ50FLは、ホイールシリンダ1FLに対応する常開型の電磁弁であり、ブレーキコントローラ8が出力した指令信号により動作(開閉)する。
また、P系統側第一分岐路48FLには、P系統側ソレノイドインバルブ50FLを迂回するP系統側第一迂回管路52FLを設けており、P系統側第一迂回管路52FLには、P系統側第一迂回チェックバルブ54FLを設けている。P系統側第一迂回チェックバルブ54FLは、ホイールシリンダ1FLからP系統側ポンプ36Pへ向かう方向へのブレーキ液の流れを許容し、P系統側ポンプ36Pからホイールシリンダ1FLへ向かう方向へのブレーキ液の流れを禁止するバルブである。
P系統側第一分岐路48RRには、P系統側ソレノイドインバルブ50RRを設けている。P系統側ソレノイドインバルブ50RRは、ホイールシリンダ1RRに対応する常開型の電磁弁であり、ブレーキコントローラ8が出力した指令信号により動作(開閉)する。
また、P系統側第一分岐路48RRには、P系統側ソレノイドインバルブ50RRを迂回するP系統側第一迂回管路52RRを設けており、P系統側第一迂回管路52RRには、P系統側第一迂回チェックバルブ54RRを設けている。P系統側第一迂回チェックバルブ54RRは、ホイールシリンダ1RRからP系統側ポンプ36Pへ向かう方向へのブレーキ液の流れを許容し、P系統側ポンプ36Pからホイールシリンダ1RRへ向かう方向へのブレーキ液の流れを禁止するバルブである。
また、P系統側第二管路46P上において、P系統側ポンプ36Pの吐出側とP系統側第一分岐路48FL及びP系統側第一分岐路48RRに分岐した部分との間には、P系統側第二チェックバルブ56Pを設けている。P系統側第二チェックバルブ56Pは、P系統側ポンプ36PからP系統側ソレノイドインバルブ50FL及びP系統側ソレノイドインバルブ50RRへ向かう方向へのブレーキ液の流れを許容するバルブである。また、P系統側第二チェックバルブ56Pは、P系統側ソレノイドインバルブ50FL及びP系統側ソレノイドインバルブ50RRからP系統側ポンプ36Pへ向かう方向へのブレーキ液の流れを禁止するバルブである。
また、マスタシリンダ4とP系統側第二管路46Pは、P系統側第三管路58Pによって接続している。P系統側第二管路46PとP系統側第三管路58Pは、P系統側ポンプ36PとP系統側ソレノイドインバルブ50FL及びP系統側ソレノイドインバルブ50RRとの間において合流している。
P系統側第三管路58P上には、P系統側ゲートアウトバルブ60Pを設けている。P系統側ゲートアウトバルブ60Pは、常開型の電磁弁であり、ブレーキコントローラ8が出力した指令信号により動作(開閉)する。
また、P系統側第三管路58Pには、P系統側ゲートアウトバルブ60Pを迂回するP系統側第二迂回管路62Pを設けており、P系統側第二迂回管路62Pには、P系統側第二迂回チェックバルブ64Pを設けている。
P系統側第二迂回チェックバルブ64Pは、マスタシリンダ4からP系統側ソレノイドインバルブ50FL及びP系統側ソレノイドインバルブ50RRへ向かう方向へのブレーキ液の流れを許容するバルブである。また、P系統側第二迂回チェックバルブ64Pは、P系統側ソレノイドインバルブ50FL及びP系統側ソレノイドインバルブ50RRからマスタシリンダ4へ向かう方向へのブレーキ液の流れを禁止するバルブである。
また、P系統側第一管路40P上において、P系統側ゲートインバルブ42PとP系統側第一チェックバルブ44Pとの間には、P系統側第四管路66Pが分岐している。
P系統側第四管路66Pの一端は、P系統側第一管路40Pに接続しており、P系統側第四管路66Pの他端には、P系統側リザーバ68Pを設けている。P系統側リザーバ68Pは、P系統の管路内を移動するブレーキ液を貯蔵・吐出するタンクである。
P系統側リザーバ68PとP系統側ポンプ36Pとの間には、P系統側第三チェックバルブ70Pを設けている。P系統側第三チェックバルブ70Pは、P系統側リザーバ68PからP系統側ポンプ36Pへ向かう方向のブレーキ液の流れを許容し、P系統側ポンプ36PからP系統側リザーバ68Pへ向かう方向のブレーキ液の流れを禁止するバルブである。
ホイールシリンダ1FL及びホイールシリンダ1RRとP系統側第四管路66Pは、P系統側第五管路72Pによって接続している。P系統側第四管路66PとP系統側第五管路72Pは、P系統側第三チェックバルブ70PとP系統側リザーバ68Pとの間において合流している。
P系統側第五管路72Pは、ホイールシリンダ1FLに連通するP系統側第二分岐路74FLと、ホイールシリンダ1RRに連通するP系統側第二分岐路74RRに分岐している。
P系統側第二分岐路74FLには、P系統側ソレノイドアウトバルブ76FLを設けている。P系統側ソレノイドアウトバルブ76FLは、ホイールシリンダ1FLに対応する常閉型の電磁弁であり、ブレーキコントローラ8が出力した指令信号により動作(開閉)する。
P系統側第二分岐路74RRには、P系統側ソレノイドアウトバルブ76RRを設けている。P系統側ソレノイドアウトバルブ76RRは、ホイールシリンダ1RRに対応する常閉型の電磁弁であり、ブレーキコントローラ8が出力した指令信号により動作(開閉)する。
マスタシリンダ4とP系統側ゲートインバルブ42P及びP系統側ゲートアウトバルブ60Pとの間の油路(管路)には、P系統側マスタシリンダ圧センサ78Pを設けている。
P系統側マスタシリンダ圧センサ78Pは、マスタシリンダ4からP系統へ供給されるブレーキ液の液圧を検出し、この検出した液圧を含む情報信号を、ブレーキコントローラ8へ出力する。
(S系統の詳細な構成)
以下、S系統の詳細な構成について説明する。
マスタシリンダ4とS系統側ポンプ36Sの吸入側は、S系統側第一管路40Sによって接続しており、S系統側第一管路40S上には、S系統側ゲートインバルブ42Sを設けている。S系統側ゲートインバルブ42Sは、常閉型の電磁弁であり、ブレーキコントローラ8が出力した指令信号により動作(開閉)する。
また、S系統側第一管路40S上において、S系統側ゲートインバルブ42SとS系統側ポンプ36Sとの間には、S系統側第一チェックバルブ44Sを設けている。S系統側第一チェックバルブ44Sは、S系統側ゲートインバルブ42SからS系統側ポンプ36Sへ向かう方向へのブレーキ液の流れを許容するバルブである。また、S系統側ポンプ36SからS系統側ゲートインバルブ42Sへ向かう方向へのブレーキ液の流れを禁止するバルブである。
S系統側ポンプ36Sの吐出側とホイールシリンダ1FR及びホイールシリンダ1RLは、S系統側第二管路46Sによって接続している。
S系統側第二管路46Sは、ホイールシリンダ1FRに接続するS系統側第一分岐路48FRと、ホイールシリンダ1RLに接続するS系統側第一分岐路48RLに分岐している。
S系統側第一分岐路48FRには、S系統側ソレノイドインバルブ50FRを設けている。S系統側ソレノイドインバルブ50FRは、ホイールシリンダ1FRに対応する常開型の電磁弁であり、ブレーキコントローラ8が出力した指令信号により動作(開閉)する。
また、S系統側第一分岐路48FRには、S系統側ソレノイドインバルブ50FRを迂回するS系統側第一迂回管路52FRを設けている。S系統側第一迂回管路52FRには、S系統側第一迂回チェックバルブ54FRを設けている。
S系統側第一迂回チェックバルブ54FRは、ホイールシリンダ1FRからS系統側ポンプ36Sへ向かう方向へのブレーキ液の流れを許容するバルブである。また、S系統側第一迂回チェックバルブ54FRは、S系統側ポンプ36Sからホイールシリンダ1FRへ向かう方向へのブレーキ液の流れを禁止するバルブである。
S系統側第一分岐路48RLには、S系統側ソレノイドインバルブ50RLを設けている。S系統側ソレノイドインバルブ50RLは、ホイールシリンダ1RLに対応する常開型の電磁弁であり、ブレーキコントローラ8が出力した指令信号により動作(開閉)する。
また、S系統側第一分岐路48RLには、S系統側ソレノイドインバルブ50RLを迂回するS系統側第一迂回管路52RLを設けている。S系統側第一迂回管路52RLには、S系統側第一迂回チェックバルブ54RLを設けている。
S系統側第一迂回チェックバルブ54RLは、ホイールシリンダ1RLからS系統側ポンプ36Sへ向かう方向へのブレーキ液の流れを許容するバルブである。また、S系統側第一迂回チェックバルブ54RLは、S系統側ポンプ36Sからホイールシリンダ1RLへ向かう方向へのブレーキ液の流れを禁止するバルブである。
また、S系統側第二管路46S上において、S系統側ポンプ36Sの吐出側とS系統側第一分岐路48FR及びS系統側第一分岐路48RLに分岐した部分との間には、S系統側第二チェックバルブ56Sを設けている。S系統側第二チェックバルブ56Sは、S系統側ポンプ36SからS系統側ソレノイドインバルブ50FR及びS系統側ソレノイドインバルブ50RLへ向かう方向へのブレーキ液の流れを許容するバルブである。また、S系統側第二チェックバルブ56Sは、S系統側ソレノイドインバルブ50FR及びS系統側ソレノイドインバルブ50RLからS系統側ポンプ36Sへ向かう方向へのブレーキ液の流れを禁止するバルブである。
また、マスタシリンダ4とS系統側第二管路46Sは、S系統側第三管路58Sによって接続している。S系統側第二管路46SとS系統側第三管路58Sは、S系統側ポンプ36SとS系統側ソレノイドインバルブ50FR及びS系統側ソレノイドインバルブ50RLとの間において合流している。
S系統側第三管路58S上には、S系統側ゲートアウトバルブ60Sを設けている。S系統側ゲートアウトバルブ60Sは、常開型の電磁弁であり、ブレーキコントローラ8が出力した指令信号により動作(開閉)する。
また、S系統側第三管路58Sには、S系統側ゲートアウトバルブ60Sを迂回するS系統側第二迂回管路62Sを設けており、S系統側第二迂回管路62Sには、S系統側第二迂回チェックバルブ64Sを設けている。
S系統側第二迂回チェックバルブ64Sは、マスタシリンダ4からS系統側ソレノイドインバルブ50FR及びS系統側ソレノイドインバルブ50RLへ向かう方向へのブレーキ液の流れを許容するバルブである。また、S系統側第二迂回チェックバルブ64Sは、S系統側ソレノイドインバルブ50FR及びS系統側ソレノイドインバルブ50RLからマスタシリンダ4へ向かう方向へのブレーキ液の流れを禁止するバルブである。
また、S系統側第一管路40S上において、S系統側ゲートインバルブ42SとS系統側第一チェックバルブ44Sとの間には、S系統側第四管路66Sが分岐している。
S系統側第四管路66Sの一端は、S系統側第一管路40Sに接続しており、S系統側第四管路66Sの他端には、S系統側リザーバ68Sを設けている。S系統側リザーバ68Sは、P系統の管路内を移動するブレーキ液を貯蔵・吐出するタンクである。
S系統側リザーバ68SとS系統側ポンプ36Sとの間には、S系統側第三チェックバルブ70Sを設けている。S系統側第三チェックバルブ70Sは、S系統側リザーバ68SからS系統側ポンプ36Sへ向かう方向のブレーキ液の流れを許容するバルブである。また、S系統側第三チェックバルブ70Sは、S系統側ポンプ36SからS系統側リザーバ68Sへ向かう方向のブレーキ液の流れを禁止するバルブである。
ホイールシリンダ1FR及びホイールシリンダ1RLとS系統側第四管路66Sは、S系統側第五管路72Sによって接続している。S系統側第四管路66SとS系統側第五管路72Sは、S系統側第三チェックバルブ70SとS系統側リザーバ68Sとの間において合流している。
S系統側第五管路72Sは、ホイールシリンダ1FRに連通するS系統側第二分岐路74FRと、ホイールシリンダ1RLに連通するS系統側第二分岐路74RLに分岐している。
S系統側第二分岐路74FRには、S系統側ソレノイドアウトバルブ76FRを設けている。S系統側ソレノイドアウトバルブ76FRは、ホイールシリンダ1FRに対応する常閉型の電磁弁であり、ブレーキコントローラ8が出力した指令信号により動作(開閉)する。
S系統側第二分岐路74RLには、S系統側ソレノイドアウトバルブ76RLを設けている。S系統側ソレノイドアウトバルブ76RLは、ホイールシリンダ1RLに対応する常閉型の電磁弁であり、ブレーキコントローラ8が出力した指令信号により動作(開閉)する。
マスタシリンダ4とS系統側ゲートインバルブ42S及びS系統側ゲートアウトバルブ60Sとの間の油路(管路)には、S系統側マスタシリンダ圧センサ78Sを設けている。
S系統側マスタシリンダ圧センサ78Sは、マスタシリンダ4からS系統へ供給されるブレーキ液の液圧を検出し、この検出した液圧を含む情報信号を、ブレーキコントローラ8へ出力する。
(ブレーキコントローラの詳細な構成)
以下、図1及び図3を参照しつつ、図4を用いて、ブレーキコントローラ8の詳細な構成について説明する。
図4は、ブレーキコントローラ8の詳細な構成を示す図である。
図4中に示すように、ブレーキコントローラ8は、ブレーキ操作量検出部80と、ブレーキ操作速度検出部82と、ブレーキアシスト作動判定部84と、制御開始判定部86を備えている。これに加え、ブレーキコントローラ8は、制御終了判定部88と、減圧量設定部90と、ポート開判断部92と、制動力制御量算出部94と、ブレーキアシスト制御部96を備えている。
ブレーキ操作量検出部80は、P系統側マスタシリンダ圧センサ78P及びS系統側マスタシリンダ圧センサ78Sが出力した情報信号の入力に基づき、マスタシリンダ4からP系統及びS系統へ供給される液圧を検出する。
ここで、マスタシリンダ4からP系統及びS系統へ供給される液圧(マスタシリンダ圧)は、運転者によるブレーキペダル2の操作量と相関関係にある。すなわち、運転者によるブレーキペダル2の操作量が増加すると、マスタシリンダ圧も増加する関係が成立している。
したがって、マスタシリンダ圧は、運転者によるブレーキペダル2の操作量に応じた圧力となる。このため、ブレーキ操作量検出部80は、マスタシリンダ圧を検出することにより、運転者によるブレーキペダル2の操作量を検出する。
ブレーキ操作速度検出部82は、ブレーキ操作量検出部80と同様にマスタシリンダ圧を検出し、さらに、検出したマスタシリンダ圧の単位時間当たりの変化量を算出する。これにより、ブレーキ操作速度検出部82は、運転者によるブレーキペダル2の操作速度を検出する。
ここで、本実施形態では、ブレーキ操作速度検出部82が検出する、運転者によるブレーキペダル2の操作速度を、戻し方向(踏み込んだブレーキペダル2を、非操作時の位置へ戻す方向)への操作速度とする。
ブレーキアシスト作動判定部84は、ブレーキアシスト作動フラグが成立しているか否かを判定することにより、上述したブレーキアシスト制御が行われているか否かを判定する。ここで、ブレーキアシスト作動フラグとは、ブレーキアシスト制御が行われている条件で成立するフラグである。
制御開始判定部86は、ブレーキアシスト作動判定部84が、ブレーキアシスト制御が行われていないと判定した場合に、ブレーキ操作量検出部80が検出した運転者によるブレーキペダル2の操作量が、予め設定した制御開始閾値以上であるか否かを判定する。
ここで、制御開始閾値は、運転者が走行中の車両Vを減速させる意思があると判定可能な程度の、運転者によるブレーキペダル2の操作量(踏み込み量)であり、予め、実験等によって求めた値である。
制御終了判定部88は、ブレーキ操作量検出部80が検出した運転者によるブレーキペダル2の操作量が、予め設定した操作量閾値未満であるか否かを判定する。
ここで、操作量閾値は、運転者がブレーキペダル2の操作を止める意思があると考えられる、運転者によるブレーキペダル2の操作量であり、実施中のブレーキアシスト制御を終了する際に用いる値である。
具体的には、操作量閾値は、ブレーキペダル2の操作量に対応する液圧である。これは、運転者が、踏み込んだブレーキペダル2に対する踏力を弱めて、ブレーキペダル2の位置を非操作時の位置へ戻す意思があると判断可能な程度の操作量であり、例えば、車両Vの構成やブレーキ装置の性能等に応じて、予め、実験等によって求めた値である。
減圧量設定部90は、ブレーキアシスト作動判定部84が、ブレーキアシスト制御が行われていると判定した場合に、ブレーキペダル2の戻し方向への操作速度に応じて、実施中のブレーキアシスト制御を終了する際に用いる減圧量を設定する。
ここで、実施中のブレーキアシスト制御を終了する際に用いる減圧量とは、実施中のブレーキアシスト制御における液圧の制御量を「0」へ向けて減少させるために、実施中のブレーキアシスト制御における液圧の制御量から減算する値である。
具体的には、前回のブレーキアシスト制御で各ホイールシリンダ1へ供給した液圧に対し、予め設定した減少速度で、「0」へ向けて単位時間あたりに減少させる際の、増圧した液圧に対する、増圧量の減少度合いである。ここで、増圧した液圧に対する、増圧量の減少度合いとは、例えば、前回のブレーキアシスト制御で各ホイールシリンダ1へ供給した液圧に対し、その増圧量を減少(減圧)させる減少量(減圧量)である。
なお、実施中のブレーキアシスト制御における液圧の制御量とは、制動力制御量算出部94が算出する値であり、その説明は後述する。
実施中のブレーキアシスト制御を終了する際に用いる減圧量を設定する際、減圧量設定部90は、具体的に、まず、ブレーキ操作速度検出部82が検出した運転者によるブレーキペダル2の戻し方向への操作速度を参照する。そして、ブレーキ操作速度検出部82が検出した運転者によるブレーキペダル2の戻し方向への操作速度が、予め設定した操作速度閾値以上であるか否かを判定する。
ここで、操作速度閾値は、運転者がブレーキペダル2を完全に戻した状態において、各ホイールシリンダ1に液圧が残る程度の、運転者によるブレーキペダル2の戻し方向への操作速度である。これは、運転者によるブレーキペダル2の操作が、急速な戻し操作(踏み込んだブレーキペダル2に対する踏力を弱めて、ブレーキペダル2の位置を戻す操作)であるか否かを判定可能な程度の速度であり、予め、実験等によって求めた値である。
なお、運転者がブレーキペダル2を完全に戻した状態とは、運転者がブレーキペダル2を戻し方向へ操作して、ブレーキペダル2の位置を非操作時の位置まで戻した状態である。
すなわち、ブレーキ操作速度検出部82が検出した操作速度が操作速度閾値以上である場合とは、運転者によるブレーキペダル2の操作が急速な戻し操作であり、運転者によるブレーキペダル2の操作量が、非操作時の操作量へ急速に減少する場合である。
そして、減圧量設定部90は、ブレーキペダル2の操作速度が、予め設定した操作速度閾値未満である場合に、実施中のブレーキアシスト制御を終了する際に用いる減圧量(単位時間あたりの減圧量)を、第二減圧量に設定する。ここで、第二減圧量は、ブレーキペダル2の戻し方向への操作速度に対して、ブレーキペダル2を操作している車両Vの運転者が、減速度の抜けや引き摺り感を感じない程度の値であり、予め、実験等によって求めた値である。
一方、減圧量設定部90は、ブレーキペダル2の操作速度が、予め設定した操作速度閾値以上である場合に、実施中のブレーキアシスト制御を終了する際に用いる減圧量(単位時間あたりの減圧量)を、第二減圧量未満の値である第一減圧量に設定する。
したがって、減圧量設定部90は、ブレーキペダル2の操作速度が操作速度閾値以上である場合に、ブレーキペダル2の操作速度が操作速度閾値未満の場合よりも、実施中のブレーキアシスト制御を終了する際に用いる減圧量を小さくする。
ポート開判断部92は、減圧量設定部90が、実施中のブレーキアシスト制御を終了する際に用いる減圧量を、第二減圧量未満の値である第一減圧量に設定した場合に、プライマリポート4eP及びセカンダリポート4eSが開いているか否かを判断する。
そして、ポート開判断部92は、プライマリポート4eP及びセカンダリポート4eSが開いていると判断した場合、減圧量設定部90が減圧量を第一減圧量に設定した状態を維持する。一方、ポート開判断部92は、プライマリポート4eP及びセカンダリポート4eSが開いていないと判断した場合、減圧量設定部90が第一減圧量に設定した減圧量を、第二減圧量に設定し直す(変更する)。
さらに、ポート開判断部92は、プライマリポート4eP及びセカンダリポート4eSが開いている時間が、予め設定した所定の経過時間である経過時間閾値を越えている場合、減圧量設定部90が第一減圧量に設定した減圧量を、第二減圧量に設定し直す(変更する)。一方、ポート開判断部92は、プライマリポート4eP及びセカンダリポート4eSが開いている時間が、予め設定した所定の経過時間である経過時間閾値(以下、単に経過時間閾値と記載する)を越えていない場合、減圧量設定部90が減圧量を第一減圧量に設定した状態を維持する。これらの処理は、プライマリポート4eP及びセカンダリポート4eSが開いていると判断した場合に行う。
ここで、経過時間閾値は、例えば、各ポート4eP,4eSが開いた時点(各ポート4eP,4eSが開いた瞬間)から、各ポート4eP,4eSが全開(各ポート4eP,4eSが開く量が最大)となる時点までに経過した時間とし、予め、実験等により設定する。
なお、ポート開判断部92による、各ポート4eP,4eSが開いているか否かの判断を行う処理と、各ポート4eP,4eSが開いている時間が経過時間閾値を越えているか否かの判定についての説明は、後述する。
制動力制御量算出部94は、ブレーキアシスト作動判定部84による判定結果を参照するとともに、油圧ユニット6から各ホイールシリンダ1へ供給する液圧の制御量を算出する。ここで、油圧ユニット6から各ホイールシリンダ1へ供給する液圧の制御量とは、ブレーキアシスト制御において、マスタシリンダ圧を増圧した際の、液圧の増圧量である。
さらに、制動力制御量算出部94は、算出した制御量に応じて、ブレーキアシストモータ38の駆動量と各バルブ(42、50、60、76)の動作(開閉)状態を演算する。そして、この演算した駆動量及び動作状態を含む指令信号を、制御周期毎に、ブレーキアシストモータ38及び各バルブ(42、50、60、76)へ出力する。
すなわち、制動力制御量算出部94は、指令信号を演算して、油圧ユニット6が有する複数の管路(40、46、48、58、66、72、74)を流れるブレーキ液の流量を変化させる。
具体的には、運転者によるブレーキペダル2の操作量に補正係数を乗算して、各ホイールシリンダ1へ供給する液圧の制御量(以下、単に制御量とも記載する)を算出する。この算出は、ブレーキアシスト作動判定部84が、ブレーキアシスト作動フラグが成立していないと判定している場合に、ブレーキ操作量検出部80が検出した運転者によるブレーキペダル2の操作量が制御開始閾値以上となった場合に行う。ここで、ブレーキペダル2の操作量に乗算する補正係数は、単位時間毎にゲインαを付けて単位時間毎に(本実施形態では制御周期毎に)時間積分した値であり、各ホイールシリンダ1へ供給する液圧を目標の液圧とするための値である。具体的には、マスタシリンダ圧、ホイールシリンダ圧及び液圧の制御量の関係は、以下の様になる。
ホイールシリンダ圧=マスタシリンダ圧+液圧の制御量
=マスタシリンダ圧+(ブレーキペダル操作量×補正係数)
=マスタシリンダ圧+(ブレーキペダル操作量×α・t1) … (1)
但し、t1は、制御量算出開始からの経過時間であり、予め設定した所定時間(例えば5秒)を最大値とする。また、上記式(1)におけるマスタシリンダ圧は、液圧の制御量算出開始時のマスタシリンダ圧である。
一方、実施中のブレーキアシスト制御における液圧の制御量が「0」へ向けて減少するように、各ホイールシリンダ1へ供給する液圧の制御量を算出する。この算出は、ブレーキアシスト作動判定部84が、ブレーキアシスト作動フラグが成立していると判定している場合に、ブレーキ操作量検出部80が検出した運転者によるブレーキペダル2の操作量が操作量閾値未満となった場合に行う。
この場合、前回のブレーキアシスト制御における液圧の制御量[前回値]から、減圧量設定部90が設定した減圧量β(第一減圧量または第二減圧量)を減算した値と、「0」とを比較し、両者のうち高い方の値を、制御量として選択する。
ここで、前回のブレーキアシスト制御における液圧の制御量[前回値]から、減圧量設定部90が設定した減圧量を減算した値が「0」未満、すなわち、マイナスの値である場合、「0」を制御量として選択することとなる。これは、前回のブレーキアシスト制御における液圧の制御量[前回値]に対する、減圧量設定部90が設定した減圧量の減算を繰り返すことにより、「0」が制御量として選択されることとなる。
すなわち、前回のブレーキアシスト制御で各ホイールシリンダ1へ供給した液圧に対し、その増圧の度合いを減少させて、前回のブレーキアシスト制御における液圧の制御量を、「0」へ向けて減少させる。具体的には、液圧の制御量は、以下の様に制御される。
液圧の制御量=減少開始時の液圧の制御量−β・t2 … (2)
但し、t2は、液圧の制御量減少開始時からの経過時間である。なお、上述の通り、液圧の制御量は最小値が0となる。
ここで、前回のブレーキアシスト制御で各ホイールシリンダ1へ供給した液圧に対し、その増圧量を減少させる際には、減圧量設定部90が設定した減圧量に応じて、増圧量を減少させる減少度合い(単位時間あたりの減少量)を変化させる。
具体的には、単位時間あたりの減圧量βを、減圧量が第二減圧量よりも小さな第一減圧量とする。これにより、各ホイールシリンダ1から油圧ユニット6を経由してマスタシリンダ4へ流れるブレーキ液の流量を減少する。
ブレーキアシスト制御部96は、ブレーキアシスト作動判定部84による判定結果と、制動力制御量算出部94が算出した液圧の制御量に応じて、上述したブレーキアシスト制御を行うか否かを決定する。ここで、ブレーキアシスト制御を行う状態は、実施中のブレーキアシスト制御を継続する状態も含む。
具体的には、ブレーキアシスト作動判定部84が、ブレーキアシスト作動フラグが成立していないと判定した場合、ブレーキアシスト制御を行うように、ブレーキアシスト作動フラグを成立(「1」)させる。また、ブレーキアシスト作動判定部84が、ブレーキアシスト作動フラグが成立していると判定した場合であっても、上述した制御終了判定部88が、ブレーキペダル2の操作量が操作量閾値以上であると判定した場合、ブレーキアシスト作動フラグを成立させる。
一方、ブレーキアシスト作動判定部84が、ブレーキアシスト作動フラグが成立していると判定した場合、制動力制御量算出部94が算出した液圧の制御量が「0」であるか否かを判定する。
そして、制動力制御量算出部94が算出した液圧の制御量が「0」である場合、実施中のブレーキアシスト制御が終了するように、ブレーキアシスト作動フラグを消去(「0」)する。一方、制動力制御量算出部94が算出した液圧の制御量が「0」ではない場合、ブレーキアシスト作動フラグが成立している状態を継続させて、制動力制御量算出部94が算出した液圧の制御量を用いたブレーキアシスト制御を継続させる。
(ブレーキコントローラ8が行う処理)
以下、図1から図4を参照しつつ、図5を用いて、ブレーキコントローラ8が行う処理を詳細に説明する。
図5は、ブレーキコントローラ8が行う処理を示すフローチャートである。
図5中に示すフローチャートは、走行(前進走行)中の車両Vにおいて、車両Vの運転者が、車両Vを制動・減速させるためにブレーキペダル2を操作(踏み込み)した状態からスタートする。図5中に示すフローチャートを開始すると、ブレーキコントローラ8が行う処理は、ステップS100の処理へ移行する。
ステップS100では、ブレーキ操作量検出部80が、マスタシリンダ圧を検出して、運転者によるブレーキペダル2の操作量を検出する。ここで、ブレーキ操作量検出部80によるマスタシリンダ圧の検出は、例えば、10[msec]毎等、所定のサンプリング時間毎に行う。ステップS100において、ブレーキペダル2の操作量を検出すると、ブレーキコントローラ8が行う処理は、ステップS102へ移行する。
ステップS102では、ブレーキ操作速度検出部82が、マスタシリンダ圧の単位時間当たりの変化量を算出して、運転者によるブレーキペダル2の戻し方向への操作速度を検出する。ここで、ブレーキ操作速度検出部82によるマスタシリンダ圧の単位時間当たりの変化量の算出は、例えば、ブレーキ操作量検出部80によるマスタシリンダ圧の検出に伴って行う。ステップS102において、ブレーキペダル2の戻し方向への操作速度を検出すると、ブレーキコントローラ8が行う処理は、ステップS104へ移行する。
ステップS104では、ブレーキアシスト作動判定部84が、ブレーキアシスト作動フラグが成立しているか否かを判定する。これにより、ステップS104では、ブレーキアシスト制御が実施中であるか否かを判定する。
ステップS104において、ブレーキアシスト作動フラグが成立していない(図中に示す「Yes」)と判定すると、ブレーキコントローラ8が行う処理は、ステップS106へ移行する。
一方、ステップS104において、ブレーキアシスト作動フラグが成立している(図中に示す「No」)と判定すると、ブレーキコントローラ8が行う処理は、ステップS108へ移行する。
ステップS106では、制御開始判定部86が、ブレーキ操作量検出部80が検出した操作量が、制御開始閾値以上であるか否かを判定する。
ステップS106において、ブレーキ操作量検出部80が検出した操作量が制御開始閾値以上である(図中に示す「Yes」)と判定すると、ブレーキコントローラ8が行う処理は、ステップS110へ移行する。
一方、ステップS106において、ブレーキ操作量検出部80が検出した操作量が制御開始閾値未満である(図中に示す「No」)と判定すると、ブレーキコントローラ8が行う処理は終了する。
ステップS108では、制御終了判定部88が、ブレーキ操作量検出部80が検出した操作量が、予め設定した操作量閾値未満であるか否かを判定する。
ステップS108において、ブレーキ操作量検出部80が検出した操作量が操作量閾値以上である(図中に示す「No」)と判定すると、ブレーキコントローラ8が行う処理は、ステップS110へ移行する。
一方、ステップS108において、ブレーキ操作量検出部80が検出した操作量が操作量閾値未満である(図中に示す「Yes」)と判定すると、ブレーキコントローラ8が行う処理は、ステップS114へ移行する。
ステップS110では、制動力制御量算出部94が、各ホイールシリンダ1へ供給する液圧の制御量を算出する。これにより、ステップS110では、マスタシリンダ圧を増圧した液圧を各ホイールシリンダ1へ伝達して、運転者によるブレーキペダル2の操作量に応じた制動力よりも大きい制動力を、各車輪Wに付与する。ステップS110において、ブレーキアシストモータ38及び各バルブ(42、50、60、76)へ指令信号を出力すると、ブレーキコントローラ8が行う処理は、ステップS112へ移行する。
ステップS112では、ブレーキアシスト制御部96が、ブレーキアシスト制御を行うように、ブレーキアシスト作動フラグを成立させる。ステップS112において、ブレーキアシスト作動フラグを成立させると、ブレーキコントローラ8が行う処理は終了する。
ステップS114では、減圧量設定部90において、ブレーキ操作速度検出部82が検出した操作速度が、予め設定した操作速度閾値以上であるか否かを判定する。
ステップS114において、運転者によるブレーキペダル2の操作速度が予め設定した操作速度閾値以上である(図中に示す「Yes」)と判定すると、ブレーキコントローラ8が行う処理は、ステップS116へ移行する。
一方、ステップS114において、運転者によるブレーキペダル2の操作速度が予め設定した操作速度閾値未満である(図中に示す「No」)と判定すると、ブレーキコントローラ8が行う処理は、ステップS124へ移行する。
ステップS116では、ポート開判断部92において、プライマリポート4eP及びセカンダリポート4eSが開いているか否かを判断する。なお、プライマリポート4eP及びセカンダリポート4eSが開いているか否かを判断する処理については、後述する。
ステップS116において、プライマリポート4eP及びセカンダリポート4eSが開いているか否かを判断すると、ブレーキコントローラ8が行う処理は、ステップS118へ移行する。
ステップS118では、ポート開判断部92において、プライマリポート4eP及びセカンダリポート4eSが開いているか否かの判断結果を参照する。
ステップS118において、判断結果を参照した結果、プライマリポート4eP及びセカンダリポート4eSが開いている(図中に示す「Yes」)場合、ブレーキコントローラ8が行う処理は、ステップS120へ移行する。
一方、ステップS118において、判断結果を参照した結果、プライマリポート4eP及びセカンダリポート4eSが開いていない(図中に示す「No」)場合、ブレーキコントローラ8が行う処理は、ステップS124へ移行する。
ステップS120では、ポート開判断部92において、プライマリポート4eP及びセカンダリポート4eSが開いている時間が、予め設定した経過時間閾値を越えているか否かを判定する。ここで、プライマリポート4eP及びセカンダリポート4eSが開いている時間とは、プライマリポート4eP及びセカンダリポート4eSが開いた時点から経過している時間(ポート開経過時間)である。
ステップS120において、ポート開経過時間が経過時間閾値を越えている(図中に示す「Yes」)場合、ブレーキコントローラ8が行う処理は、ステップS124へ移行する。
一方、ステップS120において、ポート開経過時間が経過時間閾値を越えていない(図中に示す「No」)場合、ブレーキコントローラ8が行う処理は、ステップS122へ移行する。
ステップS122では、減圧量設定部90において、減圧量を第一減圧量に設定する。ステップS122において、減圧量を第一減圧量に設定すると、ブレーキコントローラ8が行う処理は、ステップS126へ移行する。すなわち、減圧量を第一減圧量に設定する際には、上述したステップS114〜S120の処理を行う。
ステップS124では、減圧量設定部90において、減圧量を第二減圧量に設定する。ステップS124において、減圧量を第二減圧量に設定すると、ブレーキコントローラ8が行う処理は、ステップS126へ移行する。すなわち、減圧量を第二減圧量に設定する際には、上述したステップS114〜S120の処理のうち、少なくともステップS114の処理を行う。ここで、上記第二減圧量は、ブレーキペダル2の戻し方向への操作速度に対して、ブレーキペダル2を操作している車両Vの運転者が、減速度の抜けや引き摺り感を感じない程度の予め定められた値であり、上記第一減圧量は、上述の通り第二減圧量未満の値である。
ステップS126では、制動力制御量算出部94が、各ホイールシリンダ1へ供給する液圧の制御量を算出する。ここで、各ホイールシリンダ1へ供給する液圧の制御量を算出する際には、前回のブレーキアシスト制御における液圧の制御量から減算する減圧量として、ステップS122で設定した第一減圧量、または、ステップS124で設定した第二減圧量を用いる。
そして、制動力制御量算出部94は、演算した駆動量及び開閉状態を含む指令信号を、制御周期毎に、ブレーキアシストモータ38及び各バルブ(42、50、60、76)へ出力する。ステップS126において、ブレーキアシストモータ38及び各バルブ(42、50、60、76)へ指令信号を出力すると、ブレーキコントローラ8が行う処理は、ステップS128へ移行する。
ステップS128では、ブレーキアシスト制御部96が、制動力制御量算出部94が算出した、各ホイールシリンダ1へ供給する液圧の制御量が「0」であるか否かを判定する。
ステップS128において、各ホイールシリンダ1へ供給する液圧の制御量が「0」である(図中に示す「Yes」)と判定すると、ブレーキコントローラ8が行う処理は、ステップS130へ移行する。ここで、各ホイールシリンダ1へ供給する液圧の制御量が「0」である状態とは、ステップS126において算出した、「0」へ向けて減少する制御量が、「0」に達した状態である。
一方、ステップS128において、各ホイールシリンダ1へ供給する液圧の制御量が「0」ではない(図中に示す「No」)と判定すると、ブレーキコントローラ8が行う処理は終了する。ここで、各ホイールシリンダ1へ供給する液圧の制御量が「0」ではない状態とは、ステップS126において算出した、「0」へ向けて減少する制御量が、「0」に達しておらず、減少中の状態である。これにより、ステップS128では、制動力制御量算出部94が算出した液圧の制御量を用いたブレーキアシスト制御を継続させる。
ステップS130では、ブレーキアシスト制御部96が、実施中のブレーキアシスト制御が終了するように、ブレーキアシスト作動フラグを消去させる。ステップS130において、ブレーキアシスト作動フラグを消去すると、ブレーキコントローラ8が行う処理は終了する。
(ポート開判断部92が行う処理)
以下、図1から図5を参照しつつ、図6を用いて、上述したステップS116においてポート開判断部92が行う処理を詳細に説明する。
図6は、ポート開判断部92が行う処理を示すフローチャートである。
図6中に示すフローチャートは、図5中に示すステップS116で行う処理であり、図5中に示すステップS114で行う処理を終了するとスタートする。図6中に示すフローチャートを開始すると、ポート開判断部92が行う処理は、ステップS200の処理へ移行する。
ステップS200では、ブレーキ操作量検出部80が検出した運転者によるブレーキペダル2の操作量が、予め設定したポート開推定閾値未満であるか否かを判定する。
ここで、ポート開推定閾値は、P系統側マスタシリンダ圧センサ78P及びS系統側マスタシリンダ圧センサ78Sの検出精度が確保可能であり、且つ、閉じていた各ポート4eP,4eSが開くタイミングを推定可能な値のうち、最小の値に設定する。
これは、以下に記載する理由による。
閉じていた各ポート4eP,4eSが開いた状態では、運転者によるブレーキペダル2の操作量が、ほぼ「0」相当の操作量である。すなわち、ほぼ「0」相当の操作量とは、各ポート4eP,4eSが開いた状態における操作量であり、各ポート4eP,4eSと第一連通路26との位置関係に依存する操作量である。ここで、第一連通路26の位置は変化せず、運転者によるブレーキペダル2の操作に伴って各ポート4eP,4eSが第一連通路26に対して相対的に移動することによって、各ポート4eP,4eSの開閉が行なわれる。このため、運転者によるブレーキペダル2の操作量に基づいて、各ポート4eP,4eSが閉状態から開状態となった(開状態の位置となった)ことを検出することが考えられる。
しかしながら、各マスタシリンダ圧センサ78P,78Sとして一般的に用いるセンサでは、閉じていた各ポート4eP,4eSが開く位置を検出するための精度を確保することが困難である。すなわち、各マスタシリンダ圧センサ78P,78Sとして一般的に用いるセンサを用いて検出される操作量に基づいて、直接、閉じていた各ポート4eP,4eSが開いたか否かを判定することが困難である。これは、実際の運転者によるブレーキペダル2の操作量の変化速度が早い場合には、実際の操作量に対して、各マスタシリンダ圧センサ78P,78Sで検出されるマスタシリンダ圧(すなわち検出される操作量)に遅れが生じることに起因する。
このため、閉じていた各ポート4eP,4eSが開いたか否かを判断するためには、各マスタシリンダ圧センサ78P,78Sが検出するブレーキペダル2の操作量から直接検出せずに、閉じていた各ポート4eP,4eSが開くタイミングを推定することが必要となる。
ステップS200において、運転者によるブレーキペダル2の操作量が、予め設定したポート開推定閾値以上である(図中に示す「No」)と判定すると、ポート開判断部92が行う処理は、ステップS202へ移行する。
一方、ステップS200において、運転者によるブレーキペダル2の操作量が、予め設定したポート開推定閾値未満である(図中に示す「Yes」)と判定すると、ポート開判断部92が行う処理は、ステップS204へ移行する。
ステップS202では、閉じていた各ポート4eP,4eSが開いたか否かを判定する際に用いるタイマをリセットする。ステップS202において、タイマをリセットすると、ポート開判断部92が行う処理は、ステップS206へ移行する。
ステップS206では、閉じていた各ポート4eP,4eSが開いたか否かの推定を開始しないように、ポート開推定開始フラグを消去させる。ここで、ポート開推定開始フラグとは、閉じていた各ポート4eP,4eSが開いたか否かの推定を開始する条件で成立するフラグである。ステップS206において、ポート開推定開始フラグを消去すると、ポート開判断部92が行う処理は、ステップS208へ移行する。
ステップS208では、上述したステップS116の、ポート開判断部92における判断結果を、各ポート4eP,4eSが開いていないとの判断結果とするために、ポート開判断フラグを消去させる。ここで、ポート開判断フラグとは、閉じていた各ポート4eP,4eSが開いていると判断した条件で成立するフラグである。ステップS208において、ポート開判断フラグを消去すると、ポート開判断部92が行う処理は終了する。この場合、上述したステップS118における処理は、各ポート4eP,4eSが開いていない場合の処理となり、ブレーキコントローラ8が行う処理は、ステップS118からステップS124へ移行することとなる。
ステップS204では、ポート開推定開始フラグが成立しているか否かを判定する。
ステップS204において、ポート開推定開始フラグが成立していない(図中に示す「No」)と判定すると、ポート開判断部92が行う処理は、ステップS210へ移行する。
一方、ステップS204において、ポート開推定開始フラグが成立している(図中に示す「Yes」)と判定すると、ポート開判断部92が行う処理は、ステップS214へ移行する。
ステップS210では、ステップS210に示すマップにブレーキペダル2の操作速度を適用して、閉じていた各ポート4eP,4eSが開くタイミングを推定する際に用いるポート開タイミングを設定する。
ここで、ポート開タイミングとは、ステップS200において、運転者によるブレーキペダル2の操作量がポート開推定閾値未満となった時点から、閉じていた各ポート4eP,4eSが開いたと推定する時点までの経過時間に対応するパラメータである。また、ステップS210に示すマップは、予め、実験等によって算出しておき、ポート開判断部92に格納しておく。
ステップS210のマップに示すように、ブレーキペダル2の操作速度とポート開タイミングとの関係は、ブレーキペダル2の操作速度が高いほど、ポート開タイミングが短くなる関係である。したがって、ステップS210では、ブレーキペダル2の操作速度が高いほど、ポート開タイミングを短い時間に設定する。ステップS210において、ポート開タイミングを設定すると、ポート開判断部92が行う処理は、ステップS212へ移行する。
ステップS212では、閉じていた各ポート4eP,4eSが開いたか否かの推定を開始するように、ポート開推定開始フラグを成立させる。ステップS212において、ポート開推定開始フラグを成立させると、ポート開判断部92が行う処理は、ステップS204へ移行する。
ステップS214では、閉じていた各ポート4eP,4eSが開いたか否かを判定する際に用いるタイマを作動させる。これにより、ステップS214では、ブレーキペダル2の操作量がポート開推定閾値未満となった時点(ステップS200参照)から経過した時間(ポート開推定経過時間)の計測(計時)を開始する。ステップS214において、タイマを作動させると、ポート開判断部92が行う処理は、ステップS216へ移行する。
ステップS216では、ポート開推定経過時間が、ステップS210で設定したポート開タイミング以上であるか否かを判定する。
ステップS216において、ポート開推定経過時間が、ステップS210で設定したポート開タイミング未満である(図中に示す「No」)と判定すると、ポート開判断部92が行う処理は終了(図6中に示す「END」)する。この場合、上述したステップS118における処理は、各ポート4eP,4eSが開いていない場合の処理となり、ブレーキコントローラ8が行う処理は、ステップS118からステップS124へ移行することとなる。
一方、ステップS216において、ポート開推定経過時間が、ステップS210で設定したポート開タイミング以上である(図中に示す「Yes」)と判定すると、ポート開判断部92が行う処理は、ステップS218へ移行する。
ステップS218では、上述したステップS116の、ポート開判断部92における判断結果を、各ポート4eP,4eSが開いているとの判断結果とするために、ポート開判断フラグを成立させる。ステップS218において、ポート開判断フラグを成立させると、ポート開判断部92が行う処理は終了する。この場合、上述したステップS118における処理は、各ポート4eP,4eSが開いている場合の処理となり、ブレーキコントローラ8が行う処理は、ステップS118からステップS120へ移行することとなる。
(動作)
次に、図1から図6を参照しつつ、図7及び図8を用いて、本実施形態の制動力制御装置が行う処理の一例と、制動力制御装置が行う処理に伴う車両Vの動作の一例について説明する。
図7は、制動力制御装置が行う処理を示すフローチャートである。
図7中に示すフローチャートは、車両Vが走行(前進走行)しており、ブレーキアシスト制御が実施されていない状態からスタートする。図7中に示すフローチャートを開始すると、制動力制御装置が行う処理は、ステップS300の処理へ移行する。
ステップS300では、ブレーキセンサ24またはブレーキ操作量検出部80が、運転者によるブレーキペダル2の操作を検出する。ステップS300において、運転者によるブレーキペダル2の操作を検出すると、制動力制御装置が行う処理は、ステップS302へ移行する。
ステップS302では、ブレーキ操作量検出部80が、運転者によるブレーキペダル2の操作量を検出する(ステップS100参照)。ステップS302において、ブレーキペダル2の操作量を検出すると、制動力制御装置が行う処理は、ステップS304へ移行する。
ステップS304では、上述したブレーキアシスト制御を開始する処理を行う(ステップS104、S106、S110、S112参照)。
ここで、制動力制御装置がブレーキアシスト制御を開始する処理を行うと、制動力制御量算出部94が、各ホイールシリンダ1へ供給する液圧の制御量を算出する。そして、制動力制御量算出部94は、算出した制御量に応じて演算した指令信号を、制御周期毎に、ブレーキアシストモータ38及び各バルブ(42、50、60、76)へ出力する(ステップS114参照)。
指令信号の入力を受けたP系統側ゲートインバルブ42P及びS系統側ゲートインバルブ42Sは、開放状態となると共に、P系統側ゲートアウトバルブ60P及びS系統側ゲートアウトバルブ60Sは閉鎖状態となる。
また、指令信号の入力を受けたブレーキアシストモータ38は、P系統側ポンプ36P及びS系統側ポンプ36Sを駆動する。そして、P系統側ポンプ36P及びS系統側ポンプ36Sは、マスタシリンダ4に貯留しているブレーキ液を吸引する。
これにより、ホイールシリンダ1FL、ホイールシリンダ1RR、ホイールシリンダ1FR及びホイールシリンダ1RLには、マスタシリンダ圧よりも高い液圧に増圧された液圧が供給される。
以上により、制動力制御装置がブレーキアシスト制御を開始する処理を行うと、車両Vでは、運転者によるブレーキペダル2の操作量に応じた制動力よりも大きな制動力を、各車輪Wに付与することとなる。なお、ゲートインバルブ42及びゲートアウトバルブ60S以外に指令信号の入力を受けるバルブ(50、76)は、マスタシリンダ圧を増圧した液圧に対する、増圧量(増圧、減圧または保持)に応じて動作する。
ステップS304において、ブレーキアシスト制御を開始する処理を行うと、制動力制御装置が行う処理は、ステップS306へ移行する。
ステップS306では、制御終了判定部88が、運転者が車両Vの制動を終了させる意思があるか否かを判定する(ステップS108参照)。すなわち、ステップS306では、運転者がブレーキペダル2の操作を止める意思があり、運転者によるブレーキペダル2の操作が、ブレーキペダル2の位置を非操作時の位置へ戻す意思があるか否かを判定する。
ステップS306において、運転者が車両Vの制動を終了させる意思がある(図中に示す「Yes」)と判定すると、制動力制御装置が行う処理は、ステップS308へ移行する。
ここで、運転者が車両Vの制動を終了させる意思がある場合、運転者によるブレーキペダル2の操作量が非操作時の操作量へと減少して、各ホイールシリンダ1の液圧が、油圧ユニット6を介して、マスタシリンダ4へ流入する。具体的には、各ホイールシリンダ1から、油圧ユニット6を介して、マスタシリンダ4へブレーキ液が流れる。これにより、運転者がブレーキペダル2を踏み込んでいる状態よりも、マスタシリンダ圧が減少する。
一方、ステップS306において、運転者が車両Vの制動を終了させる意思がない(図中に示す「No」)と判定すると、制動力制御装置が行う処理は、ステップS304へ移行する。
ステップS308では、実施中のブレーキアシスト制御を終了する処理を行う(ステップS114〜S130参照)。
制動力制御装置がブレーキアシスト制御を終了する処理を行うと、減圧量設定部90において、ブレーキ操作速度検出部82が検出した操作速度が操作速度閾値以上であるか否かを判定(ステップS114参照)する。
ここで、ブレーキ操作速度検出部82が検出した操作速度が操作速度閾値以上である場合、運転者によるブレーキペダル2の操作量が非操作時の操作量へと急速に減少する。このため、運転者がブレーキペダル2を踏み込んでいる状態から、マスタシリンダ圧が急速に減少する。そして、運転者によるブレーキペダル2の操作量が非操作時の操作量に達すると、マスタシリンダ4は、第一連通路26を介してリザーブタンク28と連通する。これにより、マスタシリンダ4内のブレーキ液が、第一連通路26を介してリザーブタンク28へ流入する。
また、ブレーキ操作速度検出部82が検出した操作速度が操作速度閾値以上である場合、減圧量設定部90は、減圧量を第一減圧量に設定する(ステップS114参照)。
そして、ポート開判断部92が、各ポート4eP,4eSが開いていると判断し、さらに、各ポート4eP,4eSが開いている時間が経過時間閾値を越えていない場合、減圧量設定部90が減圧量を第一減圧量に設定した状態を維持する(ステップS122参照)。
ポート開判断部92が、減圧量設定部90が設定した減圧量を維持または変更(ステップS122またはS124参照)した後、制動力制御量算出部94が、各ホイールシリンダ1へ供給する液圧の制御量を算出する(ステップS126参照)。
具体的には、ブレーキアシスト制御において、各ホイールシリンダ1へ供給している液圧の制御量が「0」へ向けて減少するように、減圧量設定部90が設定した第一減圧量を用いて、各ホイールシリンダ1へ供給する液圧の制御量を算出する。そして、制動力制御量算出部94は、算出した制御量に応じて演算した指令信号を、制御周期毎に、ブレーキアシストモータ38及び各バルブ(42、50、60、76)へ出力する(ステップS126参照)。
ここで、上述の通り、第一減圧量は、ブレーキペダル2の戻し方向への操作速度に対して、ブレーキペダル2を操作している車両Vの運転者が、減速度の抜けや引き摺り感を感じない程度の値である、第二減圧量未満の値である。
したがって、減圧量を第一減圧量に設定している場合、図8中に示すように、減圧量を第二減圧量に設定している場合よりも低い速度で、各ホイールシリンダ1の液圧の制御量が「0」へ向けて減少する。すなわち、制動力制御量算出部94は、運転者によるブレーキペダル2の操作量が、非操作時の操作量へ急速に減少する場合、非操作時の操作量へ緩やかに減少する場合よりも、ブレーキアシスト制御において増圧した液圧の、増圧量の減少速度を小さくする。
これは、減圧量を第一減圧量に設定している場合に、減圧量を第二減圧量に設定している場合よりも、各ホイールシリンダ1から油圧ユニット6を介してマスタシリンダ4へ流れるブレーキ液の流量を、減少させることにより行う。具体的には、図8中に示すように、ポート開判断フラグが成立している間のみ、各ホイールシリンダ1から油圧ユニット6を介してマスタシリンダ4へ流れるブレーキ液の流量を、減少させることにより行う。ここで、ポート開判断フラグが成立している間とは、すなわち、各ポート4eP,4eSが開いていると判断している経過時間閾値の間である。
これにより、各ポート4eP,4eSが開いており、各ホイールシリンダ1から油圧ユニット6を介してマスタシリンダ4へブレーキ液が流れている間のみ、各ホイールシリンダ1からマスタシリンダ4へ流れるブレーキ液の流量を減少させることとなる。
なお、図8は、ブレーキアシスト制御を終了する処理における、マスタシリンダ圧、各ホイールシリンダ1の液圧、運転者によるブレーキペダル2の操作量及び運転者によるブレーキペダル2の戻し方向への操作速度と、経過時間との関係を示す図である。これに加え、図8は、各ホイールシリンダ1から油圧ユニット6を介してマスタシリンダ4へ流れるブレーキ液の流量、ポート開判断フラグの状態と、経過時間との関係を示す図である。
また、図8中では、マスタシリンダ圧を、「M/C圧」と示し、各ホイールシリンダ1の液圧を、「W/C圧」と示している。同様に、図8中では、運転者によるブレーキペダル2の操作量を、「操作量」と示し、運転者によるブレーキペダル2の戻し方向への操作速度を、「操作速度」と示している。
さらに、図8中では、減圧量を第一減圧量に設定している場合に、各ホイールシリンダ1の液圧の変化を示す傾きを、符合「R1」を付した直線(実線)で示している。同様に、図8中では、減圧量を第二減圧量に設定している場合に、各ホイールシリンダ1の液圧の変化を示す傾きを、符合「R2」を付した直線(破線)で示している。
また、図8中では、各ホイールシリンダ1から油圧ユニット6を介してマスタシリンダ4へ流れるブレーキ液の流量を、「流量」と示し、各ポート4eP,4eSが開いている時間を、「ポート開」と示している。
制動力制御量算出部94から指令信号の入力を受けたブレーキアシストモータ38は、駆動中のP系統側ポンプ36P及びS系統側ポンプ36Sを停止させて、ブレーキ液の吸引を停止させる。
また、指令信号の入力を受けたP系統側ゲートインバルブ42P及びS系統側ゲートインバルブ42Sは、閉鎖状態となる。
したがって、P系統側ポンプ36P及びS系統側ポンプ36Sに吸引されていたブレーキ液は、再び、マスタシリンダ4へ移動する(戻る)。
これにより、ステップS304においてマスタシリンダ圧よりも高い液圧に増圧している、ホイールシリンダ1FL、ホイールシリンダ1RR、ホイールシリンダ1FR及びホイールシリンダ1RLの液圧も、マスタシリンダ圧と同様に減少する。
ここで、図8中に示されているように、減圧量を第一減圧量に設定している場合に、各ホイールシリンダ1の液圧の変化を示す傾きR1は、減圧量を第二減圧量に設定している場合の変化を示す傾きR2よりも小さい傾きである。
このため、減圧量を第一減圧量に設定している場合、減圧量を第二減圧量に設定している場合よりも、ホイールシリンダ1からマスタシリンダ4へ流れるブレーキ液の流量が小さくなる。
したがって、運転者によるブレーキペダル2の操作量が急速に減少し、減圧量を第一減圧量に設定した場合、第一連通路26を流れるブレーキ液の流量が減少して、第一連通路26を流れるブレーキ液による音の発生が抑制される。
このため、運転者によるブレーキペダル2の操作量が急速に減少した際に、運転者へ与える違和感を低減することが可能となる。これは、第一連通路26を流れるブレーキ液による音の発生は、ブレーキペダル2の操作量が非操作時の操作量へ急速に減少して、マスタシリンダ4とリザーブタンク28が連通した際に、各ホイールシリンダ1の液圧が、マスタシリンダ4の液圧よりも高くなり、第一連通路26をブレーキ液が急速に流れる(第一連通路26を流れるブレーキ液の流量が大きくなる)ことに起因するためである。
これに加え、各ポート4eP,4eSが開いており、各ホイールシリンダ1から油圧ユニット6を介してマスタシリンダ4へブレーキ液が流れている間は、車両Vの運転者が感じる、減速度の抜けや、ブレーキペダル2の引き摺り感を低減させることが可能となる。
ステップS308において、実施中のブレーキアシスト制御を終了する処理を行うと、制動力制御装置が行う処理は終了する。
なお、上述したように、本実施形態の制動力制御装置の動作で実施する制動力制御方法は、ブレーキペダル2の操作量が操作量閾値以上から当該操作量閾値未満に減少すると、マスタシリンダ圧よりも高い液圧に増圧した液圧の増圧量を減少させる方法である。これに加え、ブレーキペダル2の戻し方向への操作速度が操作速度閾値以上の場合に、操作速度が操作速度閾値未満の場合よりも、ホイールシリンダ1からマスタシリンダ4に流れるブレーキ液の流量を減少させる方法である。
以上により、P系統側マスタシリンダ圧センサ78Pと、S系統側マスタシリンダ圧センサ78Sと、ブレーキ操作量検出部80は、ブレーキ操作量検出手段に対応している。
同様に、P系統側マスタシリンダ圧センサ78Pと、S系統側マスタシリンダ圧センサ78Sと、ブレーキ操作速度検出部82は、ブレーキ操作速度検出手段に対応している。
また、制御開始判定部86と、制御終了判定部88と、減圧量設定部90と、制動力制御量算出部94は、液圧制御手段に対応している。
また、油圧ユニット6が有する複数の管路(40、46、48、58、66、72、74)は、第二連通路に対応している。
同様に、制動力制御量算出部94と、油圧ユニット6が有するブレーキアシストモータ38及び各バルブ(42、50、60、76)は、流量可変手段に対応している。
また、ポート開判断部92は、ポート開放推定手段に対応している。
(第一実施形態の効果)
(1)液圧制御手段が、ブレーキ操作量検出手段が検出した操作量が予め設定した操作量閾値以上から当該操作量閾値未満に減少すると、マスタシリンダ圧よりも高い液圧に増圧した液圧の、増圧量を減少させる。
また、流量可変手段が、ブレーキ操作速度検出手段が検出した操作速度が予め設定した操作速度閾値以上の場合に、ブレーキ操作速度検出手段が検出した操作速度が操作速度閾値未満の場合よりも、第二連通路を流れるブレーキ液の流量を減少させる。
このため、運転者によるブレーキペダルの操作量が急速に減少した際に、ブレーキペダルの戻し方向への操作速度が高いと、第二連通路を流れるブレーキ液の流量を減少させることが可能となる。
その結果、ブレーキペダルの操作量が急速に減少した場合における、第一連通路を流れるブレーキ液の流量を減少させて、第一連通路を流れるブレーキ液による音の発生を抑制し、運転者へ与える違和感を低減することが可能となる。
(2)流量可変手段が、ポート開放推定手段が推定した、ポートが開き始めるタイミングから、第二連通路を流れるブレーキ液の流量を減少させる。
このため、運転者によるブレーキペダルの操作速度に基づいてポートが開き始めるタイミングを推定し、この推定したタイミングから、第二連通路を流れるブレーキ液の流量を減少させることが可能となる。
その結果、運転者によるブレーキペダルの操作量が急速に減少した際に、ポートが開き始めるタイミングまでは第二連通路を流れるブレーキ液の流量を減少させることが無いため、ポートが開き始めるタイミングまではホイールシリンダの液圧を速やかに低下させて、ホイールシリンダの液圧とマスタシリンダの液圧との差を極力発生させることなく、第一連通路を流れるブレーキ液による音の発生を抑制し、運転者へ与える違和感を低減することが可能となる。
(3)流量可変手段が、ポート開放推定手段が推定したタイミングから予め設定した経過時間閾値が経過するまでの間、第二連通路を流れるブレーキ液の流量を減少させる。
このため、第二連通路を流れるブレーキ液の流量を減少させる時間として、推定したポートが開き始めるタイミングから経過時間閾値が経過するまでの間のみ、第二連通路を流れるブレーキ液の流量を減少させることが可能となる。
その結果、ポートが開き始めるタイミングから経過時間閾値が経過するまでの間以外は第二連通路を流れるブレーキ液の流量を減少させない。このため、ポートが開き始めるタイミングから経過時間閾値が経過するまでの間以外はホイールシリンダの液圧を速やかに低下させて、ホイールシリンダの液圧とマスタシリンダの液圧との差を極力発生させることなく、第一連通路を流れるブレーキ液による音の発生を抑制し、運転者へ与える違和感を低減することが可能となる。
(4)本実施形態の制動力制御方法では、ブレーキペダルの操作量が予め設定した操作量閾値以上から当該操作量閾値未満に減少すると、マスタシリンダ圧よりも高い液圧に増圧した液圧の、増圧の度合いを減少させる。
これに加え、ブレーキ操作速度検出手段が検出した操作速度が予め設定した操作速度閾値以上の場合に、ブレーキ操作速度検出手段が検出した操作速度が操作速度閾値未満の場合よりも、第二連通路を流れるブレーキ液の流量を減少させる。
このため、運転者によるブレーキペダルの操作量が急速に減少した際に、ブレーキペダルの戻し方向への操作速度が高いと、第二連通路を流れるブレーキ液の流量を減少させることが可能となる。
その結果、ブレーキペダルの操作量が急速に減少した場合における、第一連通路を流れるブレーキ液の流量を減少させて、第一連通路を流れるブレーキ液による音の発生を抑制し、運転者へ与える違和感を低減することが可能となる。
(変形例)
(1)本実施形態の制動力制御装置では、ポート開放推定手段が推定した、ポートが開き始めるタイミングから、第二連通路を流れるブレーキ液の流量を減少させたが、これに限定するものではない。すなわち、ポートが開き始めるタイミングに因らず、第二連通路を流れるブレーキ液の流量を減少させることによっても、第一連通路を流れるブレーキ液による音の発生を抑制し、運転者へ与える違和感を低減することが可能となる。
(2)本実施形態の制動力制御装置では、ポート開放推定手段が推定したタイミングから予め設定した経過時間閾値が経過するまでの間、第二連通路を流れるブレーキ液の流量を減少させたが、これに限定するものではない。すなわち、ポート開放推定手段が推定したタイミングから経過時間閾値が経過する前に、第二連通路を流れるブレーキ液の流量を減少させてもよい。また、ポート開放推定手段が推定したタイミングから経過時間閾値が経過した後も、第二連通路を流れるブレーキ液の流量を減少させることによっても、第一連通路を流れるブレーキ液による音の発生を抑制し、運転者へ与える違和感を低減することが可能となる。
(3)本実施形態の制動力制御装置では、ブレーキペダル2の操作速度とポート開タイミングとの関係(ステップS210参照)から、各ポート4eP,4eSが開くタイミングを推定したが、これに限定するものではない。すなわち、例えば、ブレーキペダル2の操作量及び操作速度を用いて、各ポート4eP,4eSが開くタイミングを推定してもよい。
(4)本実施形態の制動力制御装置では、P系統側マスタシリンダ圧センサ78P及びS系統側マスタシリンダ圧センサ78Sにより、マスタシリンダ圧を検出して、運転者によるブレーキペダル2の操作量を検出したが、これに限定するものではない。すなわち、例えば、ブレーキペダル2のストローク(操作量)を直接検出するストロークセンサを設けて、運転者によるブレーキペダル2の操作量を検出してもよい。同様に、ブレーキペダル2のストロークを用いて、運転者によるブレーキペダル2の操作速度を検出してもよい。
(第二実施形態)
次に、本発明の第二実施形態(以下、本実施形態と記載する)について、図面を参照しつつ説明する。
(構成)
まず、図1から図6を参照して、本実施形態の構成を説明する。
本実施形態の構成は、ポート開判断部92の構成を除き、上述した第一実施形態と同様の構成とする。なお、ポート開判断部92以外の構成は、上述した第一実施形態と同様の構成とするため、詳細な説明を省略する。
本実施形態のポート開判断部92は、予め、ブレーキペダル2の戻し方向への操作速度と経過時間閾値との関係を示すマップを格納している。なお、減圧量設定部92が格納しているマップの説明は、後述する。
ポート開判断部92は、減圧量設定部90が、実施中のブレーキアシスト制御を終了する際に用いる減圧量を、第二減圧量未満の値である第一減圧量に設定した場合に、プライマリポート4eP及びセカンダリポート4eSが開いているか否かを判断する。
そして、ポート開判断部92は、プライマリポート4eP及びセカンダリポート4eSが開いていると判断した場合、減圧量設定部90が減圧量を第一減圧量に設定した状態を維持する。一方、ポート開判断部92は、プライマリポート4eP及びセカンダリポート4eSが開いていないと判断した場合、減圧量設定部90が第一減圧量に設定した減圧量を、第二減圧量に設定し直す(変更する)。
さらに、本実施形態のポート開判断部92は、ブレーキペダル2の戻し方向への操作速度に応じて、ブレーキペダル2の操作速度が高いほど、経過時間閾値を短い時間に設定する。これにより、ブレーキペダル2の操作速度が高いほど、減圧量を第一減圧量に設定する時間を短くする。
また、プライマリポート4eP及びセカンダリポート4eSが開いている時間が、ブレーキペダル2の操作速度に応じて設定した経過時間閾値を越えている場合、減圧量設定部90が第一減圧量に設定した減圧量を、第二減圧量に設定し直す(変更する)。一方、ポート開判断部92は、プライマリポート4eP及びセカンダリポート4eSが開いている時間が、ブレーキペダル2の操作速度に応じて設定した経過時間閾値を越えていない場合、減圧量設定部90が減圧量を第一減圧量に設定した状態を維持する。
(ブレーキコントローラ8が行う処理)
以下、図1から図8を参照しつつ、図9を用いて、ブレーキコントローラ8が行う処理を詳細に説明する。
図9は、ブレーキコントローラ8が行う処理を示すフローチャートである。
図9中に示すフローチャートは、走行(前進走行)中の車両Vにおいて、車両Vの運転者が、車両Vを制動・減速させるためにブレーキペダル2を操作(踏み込み)した状態からスタートする。図9中に示すフローチャートを開始すると、ブレーキコントローラ8が行う処理は、ステップS400の処理へ移行する。
ステップS400の処理は、上述したステップS100の処理と同様であるため、その説明を省略する。ステップS400の処理を行うと、ブレーキコントローラ8が行う処理は、ステップS402へ移行する。
ステップS402の処理は、上述したステップS102の処理と同様であるため、その説明を省略する。ステップS402の処理を行うと、ブレーキコントローラ8が行う処理は、ステップS404へ移行する。
ステップS404の処理は、上述したステップS104の処理と同様であるため、その説明を省略する。ステップS404の処理を行うと、ブレーキコントローラ8が行う処理は、ステップS406またはステップS408へ移行する。
ステップS406の処理は、上述したステップS106の処理と同様であるため、その説明を省略する。ステップS406の処理を行うと、ブレーキコントローラ8が行う処理は、図中に示す「Yes」の場合はステップS410へ移行し、図中に示す「No」の場合は終了する。
ステップS408の処理は、上述したステップS108の処理と同様であるため、その説明を省略する。ステップS408の処理を行うと、ブレーキコントローラ8が行う処理は、ステップS410またはステップS414へ移行する。
ステップS410の処理は、上述したステップS110の処理と同様であるため、その説明を省略する。ステップS410の処理を行うと、ブレーキコントローラ8が行う処理は、ステップS412へ移行する。
ステップS412の処理は、上述したステップS112の処理と同様であるため、その説明を省略する。ステップS412の処理を行うと、ブレーキコントローラ8が行う処理は終了する。
ステップS414の処理は、上述したステップS114の処理と同様であるため、その説明を省略する。ステップS414の処理を行うと、ブレーキコントローラ8が行う処理は、ステップS416またはステップS426へ移行する。
ステップS416の処理は、上述したステップS116の処理と同様であるため、その説明を省略する。ステップS416の処理を行うと、ブレーキコントローラ8が行う処理は、ステップS418へ移行する。
ステップS418の処理は、上述したステップS118の処理と同様であるため、その説明を省略する。ステップS418の処理を行うと、ブレーキコントローラ8が行う処理は、ステップS420またはステップS426へ移行する。
ステップS420では、ポート開判断部92において、ステップS420に示すマップにおける、ブレーキペダル2の操作速度と経過時間閾値との関係に基づき、経過時間閾値を設定する。すなわち、ステップS420では、ブレーキペダル2の操作速度が高いほど、経過時間閾値を短い時間に設定する。これにより、ステップS420では、ブレーキペダル2の操作速度が高いほど、マスタシリンダ圧よりも高い液圧に増圧した液圧の、増圧量を減少させる減少速度を低下させる時間が短くなる。
ステップS420において、経過時間閾値を設定すると、ブレーキコントローラ8が行う処理は、ステップS422へ移行する。
ステップS422の処理は、上述したステップS120の処理と同様であるため、その説明を省略する。ステップS422の処理を行うと、ブレーキコントローラ8が行う処理は、ステップS424またはステップS426へ移行する。
ステップS424の処理は、上述したステップS122の処理と同様であるため、その説明を省略する。ステップS424の処理を行うと、ブレーキコントローラ8が行う処理は、ステップS428へ移行する。
ステップS426の処理は、上述したステップS124の処理と同様であるため、その説明を省略する。ステップS426の処理を行うと、ブレーキコントローラ8が行う処理は、ステップS428へ移行する。
ステップS428の処理は、上述したステップS126の処理と同様であるため、その説明を省略する。ステップS428の処理を行うと、ブレーキコントローラ8が行う処理は、ステップS430へ移行する。
ステップS430の処理は、上述したステップS128の処理と同様であるため、その説明を省略する。ステップS430の処理を行うと、ブレーキコントローラ8が行う処理は、図中に示す「Yes」の場合はステップS432へ移行し、図中に示す「No」の場合は終了する。
ステップS432の処理は、上述したステップS130の処理と同様であるため、その説明を省略する。ステップS432の処理を行うと、ブレーキコントローラ8が行う処理は終了する。
その他の構成は、上述した第一実施形態と同様である。
(動作)
次に、図1から図9を参照して、本実施形態の制動力制御装置が行う処理の一例と、制動力制御装置が行う処理に伴う車両Vの動作の一例について説明する。なお、以下の説明では、実施中のブレーキアシスト制御を終了する処理以外は、上述した第一実施形態と同様の処理を行うため、異なる部分の処理と、この処理に伴う車両Vの動作を説明する。
制動力制御装置がブレーキアシスト制御を終了する処理(ステップS308参照)を行うと、制御終了判定部88が、ブレーキ操作量検出部80が検出した操作量が、予め設定した操作量閾値未満であるか否かを判定する(ステップS408参照)。
そして、ブレーキ操作量検出部80が検出した操作量が、減圧量設定部90が設定した操作量閾値未満となると、ブレーキ操作速度検出部82が検出した操作速度が、予め設定した操作速度閾値以上であるか否かを判定する(ステップS414参照)。
ブレーキ操作速度検出部82が検出した操作速度が、予め設定した操作速度閾値以上であると、ポート開判断部92が、各ポート4eP,4eSが開いているか否かを判断する
(ステップS416参照)。
ポート開判断部92が、各ポート4eP,4eSが開いていると判断する(ステップS418参照)と、ポート開判断部92において、ブレーキペダル2の操作速度が高いほど、経過時間閾値を短い時間に設定する(ステップS420参照)。
そして、減圧量設定部90が減圧量を設定すると、この設定した減圧量を用いて、制動力制御量算出部94が、各ホイールシリンダ1へ供給する液圧の制御量を算出する。このとき、上述した第一実施形態と同様、ブレーキアシスト制御において、各ホイールシリンダ1へ供給している液圧の制御量が「0」へ向けて減少するように、各ホイールシリンダ1へ供給する液圧の制御量を算出する。そして、制動力制御量算出部94は、算出した制御量に応じて演算した指令信号を、制御周期毎に、ブレーキアシストモータ38及び各バルブ(42、50、60、76)へ出力する(ステップS428参照)。
ここで、ポート開判断部92において設定した経過時間閾値は、ブレーキペダル2の操作速度が高いほど短い時間となっている。
このため、運転者によるブレーキペダル2の戻し方向への操作速度が高いほど、減圧量を第一減圧量に設定する時間、すなわち、マスタシリンダ圧よりも高い液圧に増圧した液圧の、増圧量を減少させる減少速度を小さくする時間が短くなる。すなわち、運転者によるブレーキペダル2の戻し方向への操作速度に応じて、各ホイールシリンダ1からマスタシリンダ4へ流れるブレーキ液の流量を減少させる時間を変化させることが可能となる。
これにより、車両Vの制動時において車輪Wに付与される制動力を、ブレーキペダル2の操作量に応じて変化させることが可能となり、制動時における車両Vの挙動を、ブレーキペダル2の操作量に応じた挙動とすることが可能となる。
(第二実施形態の効果)
(1)ブレーキ操作速度検出手段が検出した操作速度が高いほど、経過時間閾値を短く設定する。
このため、運転者によるブレーキペダルの戻し方向への操作速度に応じて、経過時間閾値を適切な長さに設定して、第二連通路を流れるブレーキ液の流量を減少させる時間を変化させることが可能となる。
その結果、車両の制動時において車輪に付与される制動力を、ブレーキペダルの操作速度に応じて変化させることが可能となり、制動時における車両の挙動を、ブレーキペダルの操作速度に応じた挙動とすることが可能となる。これにより、ブレーキペダルの操作量が急速に減少した場合において、運転者へ与える違和感を低減することが可能となる。