JP3748363B2 - ヘミング加工装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、板金パネル等のワークの周縁のフランジ部をヘム刃で所定角度まで曲げ加工するヘミング加工装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車ドアのアウタパネルとインナパネルの周縁部をヘミング加工で結合する製造工程は、アウタパネルの周縁部に略直角に折曲されたフランジ部をプリヘム刃で45°前後にプリヘム加工(予備曲げ)する工程と、本ヘム刃で本ヘム加工(本曲げ)してインナパネルの周縁部に加圧接合させる工程で行われる。この製造工程に使用されるヘミング加工装置は下型と上型とを備え、固定された下型にインナパネルとアウタパネルを重ねて載置し、下型の真上から上型を下降させてこれらパネルのプリヘム加工と本ヘム加工を連続して行うようにしている。ワークのプリヘム加工後の本ヘム加工は、例えば図3に示されるような揺動アーム21を使って行われる。
【0003】
図3の従来のヘミング加工装置は、固定された下型10と上下動する上型20を備え、下型10に隣接して高さ調整可能なアームストッパー11が設置され、上型20に揺動アーム21が連結される。下型10の上面にヘミング加工されるワーク1が位置決め載置される。ワーク1は、自動車ドアなどのアウタパネル2とインナパネル3である。アウタパネル2の周縁部上にインナパネル3の周縁部が重合させてあり、アウタパネル2の周縁のプリヘム加工されたフランジ部2aが後述のように本ヘム加工されてインナパネル3の周縁部上に加圧結合される。アームストッパー11は支柱12の上端部に高さ調整用シム13を介して固定される。シム13の種類や枚数で厚さ(シム量)を調整することで、アームストッパー11の上面の高さが調整され、この高さ調整で上型20の揺動アーム21の左右の最大揺動角が調整され、ワーク1の本ヘム加工時の加圧力ないしフランジ絞め込み量が調整される。
【0004】
上型20の下面から下方に延在させたブラケット22の下端部に支軸23が固定され、この支軸23に揺動アーム21の略中央部が回転可能に連結される。揺動アーム21は支軸23から左右に延びる弓形の本曲げ振込ブラケットで構成され、支軸23から図3の右方下向きに延びる端部21aと、支軸23から図3の左方下向きに延びる端部21bとを有する。図3右側の端部21aの先端に押上ローラ24が回転可能に連結され、図3左側の端部21bの先端にヘム刃25が斜め下向きに固定される。
【0005】
下型20のブラケット22と揺動アーム21のヘム刃25を有する端部21bとの間に、互いに接近離反する一対のストッパー26,27と、このストッパー26,27が互いに接近する方向にブラケット22とヘム刃側の端部21bの間に引っ張りばね力を付勢するばね材28が設置される。ブラケット22の側面にストッパー26が固定され、ヘム刃側端部21bの上面に別のストッパー17が固定され、揺動アーム21が支軸23を支点に左右回転揺動すると、上下一対のストッパー26,27が接近離反動作をする。
【0006】
図3はワーク1をプリヘム加工した直後の状態が示され、このとき、ワーク1のフランジ部2aは図4に示すようにインナパネル3の周縁部に対して約45°の角度でプリヘム加工されている。また、上型20がプリヘム加工後で本ヘム加工前の所定の待機位置に在り、このとき、ばね材28のばね力で上下のストッパー26,27が当接して揺動アーム21がプリヘム加工前の安定した待機姿勢に保持され、押上ローラ24がアームストッパー11の真上のアームストッパー11から離れた定位置に保持される。
【0007】
図3の状態で上型20が真下に下降し、この下降途中で揺動アーム21の片端部21aの押上ローラ24が下型10のアームストッパー11の上面に当接して下降停止する。さらに上型20が下降すると、押上ローラ24で揺動アーム21の片端部21aが押し上げられるようにして揺動アーム21が支軸23を支点に図3の反時計方向に回転を始める。揺動アーム21の反時計方向の回転で本ヘム刃側の端部21bがばね材28のばね力に抗して下方に回転揺動し、上下一対のストッパー26,27が離れると共に、図5に示すように下方に揺動する端部21bの先端のヘム刃25がワーク1のフランジ部2aに当接し、そのままフランジ部2aを押圧して本ヘム加工する。上型20が定ストローク下降して本ヘム加工が終了すると、上型20が図3の元の待機位置まで上昇し、この間にばね材28のばね力で揺動アーム21が時計方向に回転して上下のストッパー26,27が当接することで、図3の元の待機姿勢に戻る。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
図5の本ヘム加工時におけるヘム刃25によるワーク1のフランジ部2aへの加圧力が不足すると、図6に示すようにフランジ部2aとインナパネル3の周縁部との間に多少の隙間gが生じることがある。そこで、この隙間gが無くなるようにアームストッパー11のシム13の厚さ(シム量)を増やし、アームストッパー11の高さを増大させて、ヘム刃25がフランジ部2aを押圧する際の加圧力を増大させるようにしている。しかし、シム量を増やしても本ヘム加工時にヘム刃25がフランジ部2aを下型10に向けて押圧する加圧力の反力で揺動アーム21や、揺動アーム21を直接に支持するブラケット22が若干弾性変形をして、ヘム刃25によるフランジ部2aへの加圧力が期待したほどには増大せず、そのため前記隙間gを減少させることが難しくて、僅かではあるが隙間gが残った状態で本ヘム加工終了としているのが現状である。
【0009】
本発明の目的は、上型の揺動アームでワークのフランジ部を大きな加圧力で押圧して本ヘム加工する際の揺動アーム側の弾性変形を抑制して、常に良好な本ヘム加工を実行させる高性能なヘミング加工装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の前記目的を達成する技術的手段は、相対的に接近離反する下型と上型とを備え、上型にこの上型に固定された支軸を支点として左右両端部が上下に揺動する揺動アームを連結し、下型にヘミング加工されるフランジ部を有するワークを設置して、下型に上型が所定距離まで相対接近移動すると下型に隣接配置されたアームストッパーで上型の揺動アームの片端部を相対的に押し上げて揺動アームを揺動させ、このときの揺動アームの他端部に固定したヘム刃で下型のワークのフランジ部を押圧してヘミング加工するようにしたヘミング加工装置において、前記揺動アームの他端部と上型との間を、ヘム刃が下型のワークのフランジ部を押圧してヘミング加工するときに、前記揺動アームの他端部と上型との間の間隔の拡大に対応してく字状の連結状態から直線状に伸展する2本の屈曲自在なリンクで連結し、ヘム刃がワークのフランジ部を押圧する押圧力の反力を前記リンクを介して直接に上型に伝達するようにしたことを特徴とする。
【0011】
ここで、2本のリンクは、く字状に屈曲可能に直列に連結され、2本各々の先端部が上型と揺動アームに回転可能の連結されて、揺動アームが上下揺動することで直列2本のリンクが直線状態となり、く字状に屈曲した状態となる。直列2本のリンクが直線状態となると、軸方向に加えられる外力に対して高強度の1本の補強棒となって、揺動アームをその弾性変形を抑制するように補強し、この補強で揺動アームのヘム刃によるワークのヘミング加工時(本ヘム加工時)の加圧力を増大させる。
【0012】
前記2本のリンクの相互連結部には、2本のリンクが直線状態からく字状の連結状態に自動復帰するためのばね材を連結することができる。このように2本のリンクをヘミング加工の前後でく字状に自動復帰させることで、揺動アームの揺動がより円滑に行われるようになる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を図3のヘミング加工装置に適用した一実施形態について、図1及び図2に基づき説明する。なお、図1、図2の図3と同一、又は、相当部分には同一符号を付して説明の重複を避ける。
【0014】
図1(A)に示されるヘミング加工装置の図3従来装置と相違するところは、上型20と揺動アーム21との間に2本の剛性のリンク31,32を上下に直列に連結した状態で設置したことである。2本のリンク31,32は、上型20のブラケット22と、揺動アーム21のヘム刃25を有する端部21bとの間に、上下方向に配設される。上位のリンク31の上端部がブラケット22に枢軸33で回転可能に連結され、同リンク31の下端部が他の下位のリンク32の上端部に連結軸35で回転可能に連結され、下位のリンク32の下端部が揺動アーム21の端部21bに枢軸34で回転可能に連結される。各軸33,34,35によるリンク回転方向は、揺動アーム21の揺動回転方向と必ずしも同一である必要はないが、装置のコンパクト性のために図示例では同一にしてある。
【0015】
上下2本のリンク31,32は、揺動アーム21のヘム刃25が下型10のワーク1のフランジ部2aを本ヘム加工するときにだけ、図2に示すように直線状となるように2本それぞれの長さが設定される。また、ヘム刃25が本ヘム加工しない本ヘム加工前後の期間に各リンク31,32が、図1に示すようにく字状に屈曲する。このような各リンク31,32の直線状からく字状の変位動作、及び、く字状から直線状の変位動作は、ブラケット22に形成した一対のリンクストッパー41,42と、ブラケット22に付設した1本のばね材43で変位量規制されて行われる。
【0016】
図1(B)と図2(B)に示すように、ブラケット22の上部の定箇所に左右で対向させた一対のリンクストッパー41,42が形成され、この各リンクストッパー41,42の間で上位のリンク31が枢軸33を支点に左右に振り子回転する。一方のリンクストッパー41は、図2(B)に示すように上下2本のリンク31,32が直線状になったときに上位のリンク31の後側面に当接して、2本のリンク31,32を直線状に保持する。他方のリンクストッパー42は、図1(B)に示すように上下2本のリンク31,32がばね材43でく字状に屈曲させられたときに上位のリンク31の前側面に当接して、それ以上屈曲しないようにする。ばね材43はコイルスプリングであって、ブラケット22から図1(A)の左側に延在させたばね止め44にばね材43の片端が係止され、他端が下位リンク32の上端部に係止される。ばね材43は上下2本のリンク31,32の中間の連結軸35に各リンク31,32をく字状に屈曲させる方向(ほぼ水平方向)に引っ張り弾力を常時付勢する。
【0017】
図1(A)は下型10に位置決めされたワーク1のフランジ部2aがプリヘム加工されて本ヘム加工される前の状態が示され、このとき、ばね材43の引っ張り弾力で上下2本のリンク31,32がく字状に屈曲されて上位のリンク31がリンクストッパー42に当接し、下位のリンク32が揺動アーム21のヘム刃側の端部21bを定位置まで引き上げて、揺動アーム21を図3と同様な待機状態に保持する。図3(A)の待機状態の上型20を真下に下降させると、この下降途中で揺動アーム21の片端部21aの押上ローラ24が下型10のアームストッパー11の上面に当接して下降停止し、さらに上型20を下降させると押上ローラ24で揺動アーム21の片端部21aが押し上げられるようにして揺動アーム21が支軸23を支点に図1の反時計方向に回転を始める。
【0018】
揺動アーム21の反時計方向の回転力で本ヘム刃側の端部21bがばね材43のばね力に抗して下方に回転揺動し、下位のリンク32の下端部を下方に引っ張って上下2本のリンク31,32を直線状にしていく。ヘム刃25がワーク1のフランジ部2aを押し下げて本ヘム加工する時点で図2(B)に示すように上下2本のリンク31,32が直線状となり、上位のリンク31がリンクストッパー41に当接する。ヘム刃25がフランジ部2aを加圧して本ヘム加工するときの加圧力で揺動アーム21の端部21bに反力Fが生じる。この反力Fは直線状のリンク31,32を介して上型20に直接的に伝達される。直線状の2本のリンク31,32は、下端から加えられる反力Fで屈曲することが無く直線状態のまま維持され、反力Fをそのままブラケット22から上型20に伝達して、揺動アーム21の端部21bを反力Fに対して強固に補強するのである。この直線状リンク31,32の補強機能で、揺動アーム21が反力Fで弾性変形するのが抑制される。
【0019】
したがって、図2のヘム刃25でワーク1のフランジ部2aを本ヘム加工するときの加圧力を大きく設定しても、揺動アーム21の変形が直線状リンク31,32で抑制されて、設定された加圧力で良好に本ヘム加工することができるようになる。また、本ヘム加工時の加圧力不足に基づいてアームストッパー11のシム13の厚さ(シム量)を増やし、ヘム刃25による本ヘム加工時の加圧力を増大させるようにした場合も、揺動アーム21が直線状リンク31,32で補強されて弾性変形が抑制されるので、本ヘム加工時の加圧力不足がシム量の調整で確実に解消される。
【0020】
上型20が定ストローク下降して本ヘム加工が終了すると、上型20の上昇が開始される。上型20の上昇で揺動アーム21が上昇すると、揺動アーム21が前記の本ヘム加工動作と逆の揺動動作をして上昇を開始し、押上ローラ24がアームストッパー11から離脱するタイミングでばね材43が直線状のリンク31,32をく字状に屈曲させて、各リンク31,32と揺動アーム21を図1の元の待機状態に安定させる。
【0021】
なお、本発明は前記実施形態に限らず、ワークの種類によっては下型を上下動させるヘミング加工装置にも適用可能である。
【0022】
【発明の効果】
本発明によれば、上型と揺動アームとの間に設置された2本のリンクがワークのヘミング加工時に直線状となって揺動アームを補強して、揺動アームのヘム刃からの反力で揺動アームが弾性変形するのを抑制するため、揺動アームを使用したヘミング加工時の加圧力を増大させることや、この加圧力を増大させるためのシム量等の調整が正確に行えて、ワークのフランジ部を高精度にヘミング加工することができる高性能なヘミング加工装置が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は本発明の一実施形態を示すヘミング加工装置のヘミング加工(本ヘム加工)前の正面図、(B)は要部の拡大正面図。
【図2】(A)は図1装置のヘミング加工(本ヘム加工)時の正面図、(B)は要部の拡大正面図。
【図3】従来のヘミング加工装置のヘミング加工前の正面図。
【図4】図3におけるワークの拡大断面図。
【図5】図3装置のヘミング加工時の正面図。
【図6】図5におけるワークの拡大断面図。
【符号の説明】
1 ワーク
2 アウタパネル
2a フランジ部
3 インナパネル
10 下型
11 アームストッパー
20 上型
21 揺動アーム
21a 片端部(押上ローラ側の端部)
21b 他端部(ヘム刃側の端部)
23 支軸
24 押上ローラ
25 ヘム刃
31,32 リンク
41 リンクストッパー
43 ばね材

Claims (1)

  1. 相対的に接近離反する下型と上型とを備え、上型にこの上型に固定された支軸を支点として左右両端部が上下に揺動する揺動アームを連結し、下型にヘミング加工されるフランジ部を有するワークを設置して、下型に上型が所定距離まで相対接近移動すると下型に隣接配置されたアームストッパーで上型の揺動アームの片端部を相対的に押し上げて揺動アームを揺動させ、このときの揺動アームの他端部に固定したヘム刃で下型のワークのフランジ部を押圧してヘミング加工するようにしたヘミング加工装置において、
    前記揺動アームの他端部と上型との間を、ヘム刃が下型のワークのフランジ部を押圧してヘミング加工するときに、前記揺動アームの他端部と上型との間の間隔の拡大に対応してく字状の連結状態から直線状に伸展する2本の屈曲自在なリンクで連結し、ヘム刃がワークのフランジ部を押圧する押圧力の反力を前記リンクを介して直接に上型に伝達するようにしたことを特徴とするヘミング加工装置。
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