JP3742325B2 - 光学ヘッド装置 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本願発明は、光ディスク上に記録された情報を読み取る機能を有する光ディスク装置、あるいは光ディスク上に情報を書き込む機能がさらに付加された光磁気ディスク装置に適用される光学ヘッド装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
光ディスク装置あるいは光磁気ディスク装置などのディスク装置は、レーザ光を光ディスクに向けて照射し、その反射光を受光部に入射させるように構成された光学ヘッド装置を備えており、受光部に入射した光から光ディスク上に記録された情報を読み取るように構成されている。図11に、この種の光学ヘッド装置の一例を模式的に示す。この従来の光学ヘッド装置100は、光源部1と、整形プリズム9と、偏光ビームスプリッタ102と、レンズ部103とを備えている。なお、受光部Jは、偏光ビームスプリッタ102の左側に備えられている。
【0003】
上記光源部1は、内部に備えられた半導体レーザ素子から発せられるレーザ光を平行光束光とし、これを偏光ビームスプリッタ102に向けて出射するように構成されている。半導体レーザ素子から出射するレーザ光は、一般に、その断面形状が楕円形状を呈しており、上記整形プリズム9は、このようなレーザ光を透過させることによって、偏光ビームスプリッタ102に入射する光の断面形状を略真円形状にすることができるように構成されている。また、光源部1から出射したレーザ光は、主として直線偏光光(この従来例ではP偏光光とする)からなり、偏光ビームスプリッタ102は、P偏光光の一部を透過させる一方、その残りを反射するように(すなわちP偏光光の一部のみを透過させるように)構成された半透膜121を有している。また、レンズ部103は、所定の焦点距離を有する対物レンズ131と、真円形状を呈した孔状のアパーチャ132とを備えている。
【0004】
図12(a)に表われているように、上記光学ヘッド装置100では、光源部1から出射したレーザ光R1′は、図11に示すように、整形プリズム9により断面形状が略真円形状とされて、偏光ビームスプリッタ102に向かって進行し、その一部が偏光ビームスプリッタ102を透過する。偏光ビームスプリッタ102を透過した光ビームR2′は、図11に示すように、断面形状が略真円形状のままレンズ部103に入射する。レンズ部103において、光ビームR2′は、まず、アパーチャ132を通ることによって、断面形状が真円形状となるように絞られ、次いで、対物レンズ131に入射し、光ディスクD上に集光される。このとき、光ビームR2′は、略真円形状とされているため、アパーチャ132によるけられが極力抑制される。また、光ディスクDに形成されたビームスポットP′は、図11に示すように、アパーチャ132を通ることにより真円形状となるので、光ディスクDに記録された情報を良好に読み取ることが可能となる。
【0005】
一方、図12(b)に表われているように、光ディスクD上に集光された光は、光ディスクDで反射される。この反射光は、再びレンズ部103に入射することにより、平行光束光R6′とされ、偏光ビームスプリッタ102に向かって進行する。この平行光束光R6′は、その一部が偏光ビームスプリッタ102で反射して、受光部Jに入射することができる。これにより、光ディスクD上に記録された情報が読み取られる。
【0006】
ここで、上記半透膜121のP偏光透過率Tpを仮に0.6とすると、上記レーザ光R1′は、上記アパーチャ132によるけられが極力抑制されるとはいえども、その約60%程度しか光ディスクDに到達しない。そこで、光ディスクD上に記録された情報を確実に読み取るために、光ディスクDに照射される光量を確保しようとする場合、半透膜121のP偏光透過率Tpをより大とする必要がある。しかしながら、半透膜121のP偏光反射率(Rp)は、Rp=1−Tpとなるため、P偏光透過率Tpをより大とすればP偏光反射率Rpは、より小となる。したがって、レンズ部3から偏光ビームスプリッタ102へ進行する平行光束光R6′のうち、偏光ビームスプリッタ102で反射して受光部Jに入射する光は、その光量がより小となってしまい、S/N比が悪化する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、このような問題を解決すべく、図13にその一例を示す光学ヘッド装置が提案されている。この光学ヘッド装置200は、先の従来例(光学ヘッド装置100)に対して、ビーム変換手段4をさらに設けたものであり、この点が先の従来例とは異なっている。
【0008】
上記ビーム変換手段4は、レンズ部103に入射する光ビームR3″に対して、その光路における光軸を含む平面Fにより2分割された第1の領域S1″および第2の領域S2″をそれぞれ通る直線偏光光が互いに直交する偏光面を有するように変換する構成とされている。
【0009】
具体的には、このビーム変換手段4は、偏光ビームスプリッタ102とレンズ部103との間に、偏光ビームスプリッタ102を透過した光ビームR2″の光路の半分を遮るようにして、λ/2波長板4aを配置することにより構成されている。なお、λ/2波長板4aは、これを透過する直線偏光光の偏光面を90度回転させるように構成されたものである。
【0010】
図14(a)に表われているように、上記光学ヘッド装置200では、偏光ビームスプリッタ102を透過した光ビームR2″(P偏光光)のうち、上記第1の領域S1″に対応する領域を通る光ビームR2a″は、λ/2波長板4aを透過してレンズ部103に入射する。一方、上記第2の領域S2″に対応する領域を通る光ビームR2b″は、直接レンズ部103に入射する。これにより、レンズ部103に入射する光ビームR3″は、第1の領域S1″を通る光ビームR3a″がS偏光光、第2の領域S2″を通る光ビームR3b″がP偏光光とされる。その後、光ビームR3a″および光ビームR3b″は、図14(a)におけるレンズ部103の左側および右側をそれぞれ通って光ディスクD上に集光される。
【0011】
そして、図14(b)に表われているように、上記光ビームR3a″(および光ビームR3b″)は、光ディスクDで反射して、図14(b)におけるレンズ部103の右側(および左側)を通って平行光束光R6b″(および平行光束光R6a″)とされ、偏光ビームスプリッタ102に向かって進行する。その後、平行光束光R6a″は、λ/2波長板4aを透過する一方、平行光束光R6b″は、そのまま進行する。これにより、平行光束光R6a″は、P偏光光からS偏光光に変換された平行光束光R7a″となり、平行光束光R6b″は、変換されずにS偏光光のままとされた平行光束光R7b″となり、偏光ビームスプリッタ102に入射する。したがって、上記半透膜121は、上述したように、P偏光光の一部のみを透過させるので、平行光束光R7a″および平行光束光R7b″は、偏光ビームスプリッタ102で全反射して受光部Jに入射する。
【0012】
このように、上記光学ヘッド装置200では、半透膜121のP偏光透過率Tpに左右されることなく、光ディスクDからの反射光を高効率的に受光部Jまで到達させることができる。これにより、半透膜121のP偏光透過率Tpをより大とすることによって、光源部1からのレーザ光を効率的に光ディスクD上に到達させることができる。したがって、光ディスクDに照射されるレーザ光の光量を容易に確保することができる。
【0013】
ところで、光ディスクD上に形成されるビームスポットは、一般に、集光されたレーザ光が照射する範囲のうち、ビーム強度が最大強度の1/e2(「e」は自然対数)以上となる領域とされ、その半径Rは、レーザ光の波長をλ、開口数をNA、対物レンズ131の焦点距離をf、アパーチャの半径をr、定数をkとしたとき、以下の数式1で求められる。
【0014】
【数1】
【0015】
しかしながら、上記光学ヘッド装置200において、レンズ部103に入射する光ビームR3″として、S偏光光である光ビームR3a″およびP偏光光である光ビームR3b″を独立させて考えた場合、光ビームR3a″および光ビームR3b″はそれぞれ、アパーチャ132の半分の領域、すなわち半円のアパーチャを通って光ディスクD上に集光されることとなるので、図13におけるx軸方向の開口数NAxがy軸方向の開口数NAyの半分になってしまう。したがって、上記数式1により、光ビームR3a″および光ビームR3b″からそれぞれ形成されるビームスポットP″は、x軸方向の径がy軸方向の径の2倍となり、すなわち、図13に示すように、楕円形状となってしまう。したがって、対物レンズ131で光ビームR3″を集光してビームスポットP″を形成しているとはいえども、あまり小さく絞り込むことができなくなる。その結果、光ディスクDに記録された情報を確実に読み取ることができなくなることがあった。
【0016】
実際に、波長λが405nmのレーザ光を出射する光源部1と、真円形状のアパーチャ132を有しかつ開口数NAが0.85であるレンズ部103とを備えた光学ヘッド装置200について調べてみると、光ディスクD上でのビーム強度の分布は、横軸を光ビームの軸からの距離dとし、縦軸をビーム強度としたとき、図15に示すグラフのようになり、y軸方向においてビーム強度が中心部に集中している一方、x軸方向においてはビーム強度が中心部に集中せず拡散しているのがよくわかる。なお、図15において、ビーム強度=1/e2=0.135となるときの距離dの値がビームスポット径であり、ビームスポットのx軸方向の径(≒0.4μm)がy軸方向の径(≒0.2μm)の約2倍になっているのがわかる。
【0017】
本願発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、光ディスク上に形成されるビームスポットの形状が楕円形状となるのを防止することができる光学ヘッド装置を提供することをその課題とする。
【0018】
【発明の開示】
上記課題を解決するため、本願発明では、次の技術的手段を講じている。
【0019】
すなわち、本願発明により提供される光学ヘッド装置は、平行光束光とされたレーザ光を光源部から偏光ビームスプリッタに向けて出射し、この偏光ビームスプリッタを透過した光ビームを、上記偏光ビームスプリッタ側に孔状のアパーチャが設けられているレンズ部により光ディスク上に集光させる一方、この光ディスクで反射した反射光を上記レンズ部により平行光束光とし、この平行光束光を上記偏光ビームスプリッタで反射させることによって受光部に入射させるように構成された光学ヘッド装置であって、上記光源部と上記レンズ部との間には、上記レンズ部に入射する光ビームに対して、その光路における光軸を含む平面により2分割された第1の領域および第2の領域をそれぞれ通る直線偏光光が互いに直交する偏光面を有するように変換するビーム変換手段が設けられており、上記アパーチャは、楕円形状を呈しており、その短軸で2分割した2つの半楕円形領域がそれぞれ上記第1の領域および上記第2の領域と対応するように配置されていることを特徴としている。
【0020】
好ましい実施の形態においては、上記ビーム変換手段は、上記偏光ビームスプリッタと上記レンズ部との間に、上記偏光ビームスプリッタを透過した光ビームの光路の半分を遮るようにして、λ/2波長板を配置することにより構成されている。
【0021】
好ましい実施の形態においてはまた、上記アパーチャの長軸寸法が、その短軸寸法のほぼ2倍である構成とすることができる。
【0022】
一般に、レーザ光の照射により光ディスク上に形成されるビームスポットの径は、上記数式1で求められ、アパーチャの開口数に反比例する。ここで、アパーチャが真円形状に形成されている場合、このアパーチャを2分割したときの一方の領域は、その分割線に沿った方向における寸法がこれと直交する方向における寸法の2倍となる。したがって、このアパーチャを2分割したときの一方の領域のみを通る光線は、上記分割線に対応する方向に短軸を有する楕円形状とされたビームスポットとなって光ディスク上に集光される。
【0023】
本願発明においては、上記ビーム変換手段の作用により、上記第1の領域を通る直線偏光光と、上記第2の領域を通る直線偏光光とは、偏光面が互いに直交するため、これらが互いに異なる光線であると見なすことができる。これらの直線偏光光はそれぞれ、アパーチャを2分割した領域を通るが、本願発明ではアパーチャは、楕円形状とされており、その短軸で2分割した2つの半楕円形領域がそれぞれ上記第1の領域および上記第2の領域と対応するように配置されているため、アパーチャの長軸寸法を短軸寸法の2倍とすることによって、各半楕円形領域において、その分割線に沿った方向における寸法と、この分割線に直交する方向における寸法とを同等とすることができる。したがって、上記第1の領域を通る直線偏光光は、アパーチャの半楕円形領域を通ることによって、真円形状とされたビームスポットとなって光ディスク上に集光される。一方、上記第2の領域を通る直線偏光光もまた、真円形状とされたビームスポットとなって光ディスク上に集光される。その結果、光ディスク上に形成されるビームスポットを、全体として真円形状とすることができる。
【0024】
好ましい実施の形態においてはさらに、上記レンズ部に入射する光ビームの断面形状は、楕円形状を呈しており、その短軸方向が上記アパーチャの短軸方向と対応している。
【0025】
好ましい実施の形態においてはさらにまた、上記レンズ部に入射する光ビームの断面形状は、その長軸寸法が短軸寸法のほぼ2倍とされた楕円形状を呈している。
【0026】
このような構成によれば、上記レンズ部に入射する光ビーム断面形状と上記アパーチャの形状とを略同等とすることが可能となるので、上記アパーチャによる光ビームのけられを抑制することができる。したがって、上記光源部から出射されるレーザ光を効率的に用いることができる。
【0027】
本願発明のその他の特徴および利点については、以下に行う発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本願発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0029】
図1は、本願発明に係る光学ヘッド装置の一例を示す概略斜視図、図2は、図1の光学ヘッド装置の要部を模式的に示す斜視図である。図3は、図2におけるビーム変換手段を拡大して示す図であり、図3(a)は、このビーム変換手段の作用を説明するための概略斜視図、図3(b)は、図3(a)の側面図である。図4は、図2の光学ヘッド装置内を進行する光の光路を説明するための図であり、図4(a)は、往路を示し、図4(b)は、復路を示す。また、図5は、図1の光学ヘッド装置について光ディスク上でのビーム強度の分布を調べたときの結果を示す図である。なお、これらの図において、従来例を示す図11ないし図15に表された部材、部分等と同等のものにはそれぞれ同一の符号を付してある。
【0030】
図1および図2に表れているように、光学ヘッド装置Aは、光ディスク装置あるいは光磁気ディスク装置などのディスク装置に備えられており、レーザ光を光ディスクDに向けて照射し、その反射光を、上記ディスク装置内に設けられかつ光ディスクD上に記録された情報を読み取るための受光部Jに入射させるように構成されている。この光学ヘッド装置A1は、光源部1と、偏光ビームスプリッタ2と、ビーム変換手段4と、レンズ部3とを備えている。なお、図1においては、偏光ビームスプリッタ2からの光ビームを立ち上げミラーMにより屈曲させてレンズ部3に入射させているが、図2においては、簡略化のため立ち上げミラーMを省略している。また、受光部Jは、図1および図2において、偏光ビームスプリッタ2の左側に備えられている。
【0031】
上記光源部1は、その内部に備えられた半導体レーザ素子から発せられるレーザ光をコリーメータレンズ(図示略)などにより平行光束光とし、これを偏光ビームスプリッタ2に向けて出射するように構成されている。半導体レーザ素子は、一般に、主として直線偏光光からなるレーザ光を発し、この光源部1は、本実施形態では、この直線偏光光が図1のxz平面と平行な偏光面を有するP偏光光となるように構成されている。また、光源部1から発せられるレーザ光R1は、図2に示すように、その断面形状が楕円形状となるのが一般的であり、この光学ヘッド装置Aでは、従来の光学ヘッド装置100,200と同様に、光源部1からのレーザ光の断面形状を略真円形状にするための整形プリズム9が備えられているものとしている。
【0032】
上記偏光ビームスプリッタ2は、入射する直線偏光光の一部を透過させる一方、その残りを反射する半透膜21を内部に備えている。より詳細には、偏光ビームスプリッタ2は、たとえば2つの直角プリズム2aを斜面どうしで接合するなどして形成され、半透膜21は、2つの直角プリズム2aの斜面(接合面)間に設けられている。この半透膜21は、P偏光光のみを透過させるように構成されており、具体的には、P偏光透過率Tpが0.9、P偏光反射率Rpが0.1、S偏光透過率Tsが0、S偏光反射率Rsが1とされている。
【0033】
上記ビーム変換手段4は、レンズ部3に入射する光ビームR3が以下のような光となるように変換するための手段である。すなわち、光ビームR3は、その光路を光ビームR3の光軸を含む平面Fにより2分割して、その一方(図2の左側)を第1の領域S1、他方を第2の領域S2としたとき、第1の領域S1および第2の領域S2をそれぞれ通る直線偏光光の偏光面が互いに直交するように変換された光である。
【0034】
具体的には、このビーム変換手段4は、図3(b)に示すように、偏光ビームスプリッタ2とレンズ部3との間に、偏光ビームスプリッタ2を透過した光ビームR2の光路の半分を遮るようにして、λ/2波長板4aを配置することにより構成されている。より詳細には、このλ/2波長板4aは、その結晶光軸がxy平面内においてx軸に対して45度傾いた構成とされており、透過する直線偏光光の偏光面を90度回転させるように構成されている。また、λ/2波長板4aは、その端面が上記平面F上に載るように配置されている。このλ/2波長板4aは、本実施形態では、光ビームR2の光路の左半分、すなわち上記第1の領域S1と対応する領域を遮るように配置されており、P偏光光とされた光ビームR2は、図3(a)に示すように、第1の領域S1を通る直線偏光光がS偏光光とされる一方、第2の領域S2を通る直線偏光光がP偏光光のままとなっている光ビームR3に変換される。
【0035】
上記レンズ部3は、図2に示すように、所定の焦点距離を有する対物レンズ31と、この対物レンズ31に入射する光を絞ってその断面形状を整える孔状のアパーチャ32とを備えている。本実施形態では、対物レンズ31は、図1に示すように、平行光束光とされている光ビームR3を光ディスクD上に集光することができるように、この対物レンズ31をフォーカス方向に移動可能なアクチュエータ30に保持されている。より詳細には、アクチュエータ30には、貫通孔33が形成されており、対物レンズ31は、その一方の開口部を塞ぐように配置されている。また、貫通孔33の他方の開口部は、光ビームR3の入射口として開口したままの状態とされており、この開口部が上記アパーチャ32として形成されている。
【0036】
上記アパーチャ32は、図2に示すように、楕円形状を呈しており、その短軸が上記平面F上に載るように配置されている。すなわち、アパーチャ32は、短軸で2分割した2つの半楕円形領域32a,32bがそれぞれ上記第1の領域S1および第2の領域S2と対応するように配置されている。また、このアパーチャ32は、長軸寸法が短軸寸法のほぼ2倍とされている。
【0037】
次に、この光学ヘッド装置Aの作用について図4(a)および図4(b)を参照して説明する。なお、これらの図中において、この光学ヘッド装置A内を進行する光R1ないしR7のうち、P偏光光とされているものは実線で表示され、S偏光光とされているものは破線で表示されている。
【0038】
まず、往路について図4(a)を参照して説明する。光源部1から平行光束光とされたレーザ光(P偏光光)R1が出射されると、このレーザ光R1は、まず、整形プリズム9を通って偏光ビームスプリッタ2に入射する。このレーザ光R1は、図2に示すように、断面形状が楕円形状を呈しているが、整形プリズム9を通ることにより断面形状が略真円形状とされて、偏光ビームスプリッタ2に入射する。偏光ビームスプリッタ2は、上記半透膜21がP偏光透過率Tp=0.9とされているので、レーザ光R1のうちの90%を透過させる。
【0039】
偏光ビームスプリッタ2を透過した光ビームR2は、レンズ部3に向かって進むが、光ビームR2のうち、上記第1の領域S1に対応する領域、すなわち図4(a)において光軸を含む平面Fの左側を通る光ビームR2aは、λ/2波長板4aを透過してレンズ部3に入射する一方、上記第2の領域S2に対応する領域、すなわち図4(a)において光軸を含む平面Fの右側を通る光ビームR2bは、直接レンズ部3に入射する。これにより、レンズ部3に入射する光ビームR3は、第1の領域S1を通る光ビームR3aがS偏光光、第2の領域S2を通る光ビームR3bがP偏光光とされる。
【0040】
そして、光ビームR3は、アパーチャ32を通って対物レンズ31に入射し、これにより光ディスクD上に集光される。このとき、光ビームR3a,R3bはそれぞれ、アパーチャ32の半楕円形領域32a,32bを通って対物レンズ31に入射し、図2に示すように、光ディスクD上にビームスポットPを形成する。このビームスポットPの半径Rは、上記数式1により求められる。ここで、半楕円形領域32a,32bは、アパーチャ32を短軸で2分割した領域とされており、かつ、アパーチャ32の長軸寸法は、短軸寸法のほぼ2倍とされているので、各光ビームR3a,R3bにおいて、図2におけるx軸方向の開口数NAxとy軸方向の開口数NAyとが同等となる。したがって、ビームスポットPは、従来の光学ヘッド装置200のように楕円形状とはならずに、略真円形状となる。
【0041】
次いで、復路について図4(b)を参照して説明する。上記レンズ部3で集光された光は、光ディスクDで反射することにより、レンズ部3に向かって拡散しつつ進行する。この反射光R5のうち、図4(b)において上記平面Fの左側の通る反射光R5aは、光ディスクDに対して右側から入射した光R4bが光ディスクDで反射したものであり、この光R4bは、上記光ビームR3bがレンズ部3を透過したものである。したがって、反射光R5aは、P偏光光であることになる。一方、反射光R5のうち、図4(b)において平面Fの右側の通る反射光R5bは、S偏光光であることになる。このような構成とされた反射光R5は、レンズ部3を通ることにより再び平行光束光R6とされる。
【0042】
この平行光束光R6は、偏光ビームスプリッタ2に向かって進むが、平行光束光R6のうち、図4(b)において平面Fの左側を通る平行光束光R6aは、λ/2波長板4aを透過して偏光ビームスプリッタ2に入射する一方、図4(b)において平面Fの右側を通る平行光束光R6bは、直接偏光ビームスプリッタ2に入射する。ここで、平行光束光R6aは、反射光R5aがレンズ部3を通ったものであるためP偏光光であり、平行光束光R6bは、反射光R5bがレンズ部3を通ったものであるためS偏光光であるため、偏光ビームスプリッタ2に入射する平行光束光R7は、図4(b)において平面Fの左側を通る平行光束光R7aがS偏光光となり、図4(b)において平面Fの右側を通る平行光束光R7bもまたS偏光光となる。
【0043】
したがって、偏光ビームスプリッタ2は、上記半透膜21がS偏光反射率Rs=1とされているので、レーザ光R7の全てが偏光ビームスプリッタ2で反射し、受光部Jに入射する。
【0044】
このように、上記構成を有する光学ヘッド装置Aでは、半透膜21のP偏光透過率Tpを比較的大とすることによって光ディスクDに照射される光ビームの光量を確保することができる一方、これにともなって受光部Jに入射する光ビームの光量が小となるの防止することができる。したがって、光ディスクD上に記録された情報を確実に読み取ることができるとともに、S/N比が悪化するのを防止することができる。
【0045】
さらに、上記光学ヘッド装置Aでは、上述したように、光ディスクD上に形成されるビームスポットを真円形状とすることができる。したがって、ビームスポットをより小さく絞り込むことができ、光ディスクDに記録された情報をより確実に読み取ることが可能となる。
【0046】
実際に、波長λが405nmのレーザ光を出射する光源部1と、楕円形状のアパーチャ32を有しかつ開口数NAが0.85であるレンズ部3とを備えた光学ヘッド装置Aについて調べてみると、光ディスクD上でのビーム強度の分布は、横軸を光ビームの軸からの距離とし、縦軸をビーム強度としたとき、図5に示すグラフのようになり、ビーム強度がx軸方向およびy軸方向の双方において中心部に集中しており、図15に示す従来例の場合のようにx軸方向においてビーム強度が拡散していないのがよくわかる。なお、図5において、ビーム強度=1/e2=0.135となるときの距離dの値がビームスポット径であり、ビームスポットのx軸方向の径とy軸方向の径とがほぼ等しく(≒0.2μm)なっているのがわかる。
【0047】
図6は、本願発明に係る光学ヘッド装置の他の例を示す概略斜視図であり、図7は、図6の光学ヘッド装置の要部を模式的に示す斜視図である。図8は、図7の光学ヘッド装置内を進行する光の光路を説明するための図であり、図8(a)は、往路を示し、図8(b)は、復路を示す。また、図9は、図7の光学ヘッド装置について光ディスク上でのビーム強度の分布を調べたときの結果を示す図である。なお、以下において、先の実施形態(光学ヘッド装置A)と同一または類似の要素には、先の実施形態と同様の符号を付している。
【0048】
図6に示す光学ヘッド装置Bは、断面形状が楕円形状を呈するとともに、その短軸方向が上記アパーチャ32の短軸方向と対応する光ビームR3Bが上記レンズ部3に入射するように構成されており、この点が先の光学ヘッド装置Aとは異なっている。具体的には、先の光学ヘッド装置Aにおける光源部1の代わりに光源部1Bが備えられている。
【0049】
上記光源部1Bは、図7に示すように、断面形状が楕円形状を呈するとともに、その短軸方向が上記アパーチャ32の短軸方向と対応するレーザ光R1Bを出射するように構成されている。また、レーザ光R1Bの断面形状における楕円は、その長軸寸法が短軸寸法のほぼ2倍とされている。
【0050】
このような光学ヘッド装置Bにおいては、図7に示すように、光源部1Bとレンズ部3との間には、上記整形プリズム9など光源部1Bから出射されたレーザ光R1Bを屈折させる部材が設けられおらず、また、図8(a)および図8(b)に示すように、光源部1Bの出射面11と、偏光ビームスプリッタ2の入射面22および出射面23と、λ/2波長板4aと、アパーチャ32と、対物レンズ31の主平面31aとが互いに平行となるように構成されている。これにより、光源部1Bから出射されたレーザ光R1Bは、図7に示すように、その断面形状が維持された状態で、上記偏光ビームスプリッタ2およびλ/2波長板4aを通って上記レンズ部3に入射するので、レンズ部3に入射する光ビームR3Bの断面形状は、楕円形状を呈するとともに、その短軸方向が上記アパーチャ32の短軸方向と対応し、かつその長軸寸法が短軸寸法のほぼ2倍とされるのである。
【0051】
したがって、アパーチャ32の形状と光ビームR3Bの断面形状とを略同等とすることが可能となるので、アパーチャ32による光ビームR3Bのけられを抑制することができる。その結果、光源部1Bから出射されたレーザ光の大部分を光ディスクDに照射することができるとともに、受光部Jに入射させることができる。
【0052】
また、一般に、光をレンズで集光するときには収差が生じ、この収差はアパーチャ(入射瞳)により入射光を絞り込むほど小となるので、先の光学ヘッド装置Aのように、断面形状が真円形状とされた光ビームを楕円形状のアパーチャ32で絞り込んだ場合では、光ディスクD上に形成されたビームスポットにおいて、x軸方向の径とy軸方向の径とが収差により若干乖離してしまう。しかし、この光学ヘッド装置Bでは、アパーチャ32の形状と光ビームR3Bの断面形状とが略同等とすることが可能であるので、アパーチャ32によって光ビームR3Bが絞り込まれる割合がx軸方向およびy軸方向の双方において同等となる。したがって、光ディスクD上に形成されたビームスポットにおいて、x軸方向の径とy軸方向の径とが収差により乖離してしまうのを防止することができる。
【0053】
実際に、断面形状が楕円形状を呈しかつ波長λが405nmであるレーザ光を出射する光源部1Bと、楕円形状のアパーチャ32を有しかつ開口数NAが0.85であるレンズ部3とを備えた光学ヘッド装置Bについて調べてみると、光ディスクD上のビーム強度は、図9に示すように、x軸方向とy軸方向とにおいて同様に分布し、ビームスポットのx軸方向の径とy軸方向の径とが同等となっているのがわかる。したがって、この光学ヘッド装置Bによれば、光ディスクD上に形成されたビームスポットがより真円形状に近い形状となるのがよくわかる。
【0054】
また、この光学ヘッド装置Bは、上述したように、整形プリズム9が備えられていないので、従来の光学ヘッド装置100,200に比して製造コストを減少することができる。
【0055】
もちろん、この発明の範囲は上述した実施の形態に限定されるものではない。たとえば、上記した実施形態では、ビーム変換手段4として、λ/2波長板4aが偏光ビームスプリッタ2とレンズ部3との間に配置された構成とされているが、これに限ることはなく、図10に示すような構成としてもよい。すなわち、図10におけるビーム変換手段4′は、光源部1と偏光ビームスプリッタ2との間に、光源部1から出射されたレーザ光R1の光路の半分を遮るようにして、λ/2波長板4aを配置し、かつ、偏光ビームスプリッタに設けられた半透膜として、λ/2波長板4aと対応する領域が、たとえばP偏光透過率Tp=0、P偏光反射率Rp=1、S偏光透過率Ts=0.9、S偏光反射率Rs=1とされた透過特性を有するとともに、残りの領域が、たとえばP偏光透過率Tp=0.9、P偏光反射率Rp=0.1、S偏光透過率Ts=0、S偏光反射率Rs=1とされた透過特性を有している半透膜21′を用いることにより構成されている。
【0056】
また、たとえば、上記光学ヘッド装置Aでは、整形プリズム9が備えられた構成とされているが、整形プリズム9を除去した構成とされていてもよい。
【0057】
【発明の効果】
以上、説明してきたように、本願発明によれば、光ディスク上に形成されるビームスポットの形状が楕円形状となるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明に係る光学ヘッド装置の一例を示す概略斜視図である。
【図2】図1の光学ヘッド装置の要部を模式的に示す斜視図である。
【図3】図2におけるビーム変換手段を拡大して示す図であり、(a)は、このビーム変換手段の作用を説明するための概略斜視図、(b)は、(a)の側面図である。
【図4】図2の光学ヘッド装置内を進行する光の光路を説明するための図であり、(a)は、往路を示し、(b)は、復路を示す。
【図5】図1の光学ヘッド装置について光ディスク上でのビーム強度の分布を調べたときの結果を示す図である。
【図6】本願発明に係る光学ヘッド装置の他の例を示す概略斜視図である。
【図7】図6の光学ヘッド装置の要部を模式的に示す斜視図である。
【図8】図7の光学ヘッド装置内を進行する光の光路を説明するための図であり、(a)は、往路を示し、(b)は、復路を示す。
【図9】図7の光学ヘッド装置について光ディスク上でのビーム強度の分布を調べたときの結果を示す図である。
【図10】本願発明に係る光学ヘッド装置の他の例を模式的に示す概略斜視図である。
【図11】従来の光学ヘッド装置の一例を模式的に示す概略斜視図である。
【図12】図11の光学ヘッド装置内を進行する光の光路を説明するための図であり、(a)は、往路を示し、(b)は、復路を示す。
【図13】従来の光学ヘッド装置の他の例を模式的に示す概略斜視図である。
【図14】図13の光学ヘッド装置内を進行する光の光路を説明するための図であり、(a)は、往路を示し、(b)は、復路を示す。
【図15】図13の光学ヘッド装置について光ディスク上でのビーム強度の分布を調べたときの結果を示す図である。
【符号の説明】
1,1B 光源部
2 偏光ビームスプリッタ
3 レンズ部
4 ビーム変換手段
4a λ/2波長板
32 アパーチャ
A,B 光学ヘッド装置
D 光ディスク
J 受光部
S1 第1の領域
S2 第2の領域
Claims (5)
- 平行光束光とされたレーザ光を光源部から偏光ビームスプリッタに向けて出射し、この偏光ビームスプリッタを透過した光ビームを、上記偏光ビームスプリッタ側に孔状のアパーチャが設けられているレンズ部により光ディスク上に集光させる一方、この光ディスクで反射した反射光を上記レンズ部により平行光束光とし、この平行光束光を上記偏光ビームスプリッタで反射させることによって受光部に入射させるように構成された光学ヘッド装置であって、
上記光源部と上記レンズ部との間には、上記レンズ部に入射する光ビームに対して、その光路における光軸を含む平面により2分割された第1の領域および第2の領域をそれぞれ通る直線偏光光が互いに直交する偏光面を有するように変換するビーム変換手段が設けられており、
上記アパーチャは、楕円形状を呈しており、その短軸で2分割した2つの半楕円形領域がそれぞれ上記第1の領域および上記第2の領域と対応するように配置されていることを特徴とする、光学ヘッド装置。 - 上記アパーチャの長軸寸法は、その短軸寸法のほぼ2倍である、請求項1に記載の光学ヘッド装置。
- 上記レンズ部に入射する光ビームの断面形状は、楕円形状を呈しており、その短軸方向が上記アパーチャの短軸方向と対応している、請求項1または2に記載の光学ヘッド装置。
- 上記レンズ部に入射する光ビームの断面形状は、その長軸寸法が短軸寸法のほぼ2倍とされた楕円形状を呈している、請求項3に記載の光学ヘッド。
- 上記ビーム変換手段は、上記偏光ビームスプリッタと上記レンズ部との間に、上記偏光ビームスプリッタを透過した光ビームの光路の半分を遮るようにして、λ/2波長板を配置することにより構成されている、請求項1ないし4のいずれかに記載の光学ヘッド装置。
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