JP3742238B2 - ラックピニオン式ステアリング装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、型鍛造により成形されるラックを有するラックピニオン式ステアリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
操舵により回転するピニオンと、そのピニオンに噛み合う歯を有するラックと、そのラックを覆うハウジングに保持されるラック支持部材と、そのラック支持部材を、円柱面に沿うラック背面側に押し付ける弾力を作用させる弾性部材とを備えるラックピニオン式ステアリング装置において、そのラックを型鍛造することが提案されている。
【0003】
そのラックの歯を型鍛造する際に生じるバリは、ラックに嵌め合わされるシールやハウジング等の他部材と干渉しないように除去する必要がある。そのバリを機械加工により除去する場合、加工時間、加工コストが増大する。そのバリをトリミング加工により根元から完全に除去する場合、バリの厚さは根元において厚いため、トリミング加工に際してラックに大きな外力が作用し、ラックの歪み等を生じる。
【0004】
そこで、ラックの外周にバリ発生領域を含む平坦面を成形し、そのバリを根元部分が残存するようにトリミング加工により除去し、そのバリの残存部分に外接する円の直径を、ラックに外接する円の直径以下とすることが考えられる(特開平10‐58081号公報参照)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、ラックの外周に平坦面を成形すると、ラック支持部材によるラックの支持領域が小さくなり、ラックを安定して支持することができなくなる。
【0006】
また、ステアリング装置においては、車両の直進走行安定性のため、直進操舵時は左右操舵時よりも剛性感を大きくすることが要望されている。
【0007】
本発明は、上記問題を解決することのできるラックピニオン式ステアリング装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、操舵により回転するピニオンと、そのピニオンに噛み合う歯を有するラックと、そのラックを覆うハウジングと、そのハウジングに保持されるラック支持部材と、そのラック支持部材を、円柱面に沿うラック背面側に押し付ける弾力を作用させる弾性部材とを備え、そのラックは型鍛造により成形されているラックピニオン式ステアリング装置において、そのラックは、軸方向において並列する大径部と小径部とを有すると共に、その小径部において前記ラック支持部材により支持され、その小径部に前記歯が成形され、その小径部に外接する円の直径は、その大径部に外接する円の直径よりも小さくされていることを特徴とする。
本発明の構成によれば、ラックの小径部に歯を型鍛造により成形する際に生じるバリは、その小径部に外接する円の直径が大径部に外接する円の直径よりも小さいので、完全に除去することなく根元部分を残存させることができる。この際、ラックの外周に平坦面を形成する必要はないので、ラック支持部材によるラックの支持領域を十分に確保でき、ラックを安定して支持できる。また、バリを根元部分よりは肉厚の薄い部分で除去すれば足りるので、その除去をトリミング加工により行う場合はラックに作用する外力を小さくできる。
【0009】
前記歯を型鍛造により成形する際に生じるバリが、トリミング加工により根元部分が残存するように前記ラックから除去され、そのバリの残存部分に外接する円の直径は、前記小径部に外接する円の直径を超え、前記大径部に外接する円の直径以下とされているのが好ましい。
これにより、そのバリを根元部分よりは肉厚の薄い部分でトリミング加工により除去できるので、そのトリミング加工の際にラックに作用する外力を小さくできる。
【0010】
本発明のラックピニオン式ステアリング装置において、直進操舵時に、前記ラックとラック支持部材との間に介在する膨出部が、前記小径部に一体成形され、左右操舵時は、その膨出部を挟む小径部領域において前記ラックは前記ラック支持部材により支持され、その膨出部に外接する円の直径は、その小径部に外接する円の直径を超え、前記大径部に外接する円の直径以下とされているのが好ましい。
これにより、直進操舵時はラックとラック支持部材との間に膨出部が介在するので、左右操舵時よりも大きな弾力によりラック支持部材はラック背面側に押し付けられる。よって、直進操舵時は左右操舵時よりも剛性感を大きくし、車両の直進走行安定性を向上できる。しかも、その膨出部に外接する円の直径は大径部に外接する円の直径以下とされているので、膨出部が他部材と干渉することはない。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1、図2に示すラックピニオン式油圧パワーステアリング装置1は、ステアリングホイール(図示省略)に連結される入力軸2と、操舵による入力軸2の回転により回転するヘリカルピニオン3と、このピニオン3に噛み合う歯4aを有するヘリカルラック4と、このラック4を覆うハウジング5とを備えている。そのラック4の各端はハウジング5の両端における開口5a、5bから突出する。そのラック4の各端に、ボールジョイント6、7、タイロッド8、9を介して車輪(図示省略)が連結される。これにより、操舵によるピニオン3の回転によりラック4が車両幅方向に移動し、車両の操舵がなされる。
【0012】
そのハウジング5の一部は操舵補助力発生用油圧シリンダ10を構成する。その油圧シリンダ10は、そのハウジング5により構成されるシリンダチューブと、そのラック4に一体化されるピストン12により区画される一対の油室13、14とを有する。そのハウジング5の一方の開口5a側に、ラック4の一端側(図1における左方側)を支持する筒状部材20がシール部材を介して挿入される。その筒状部材20により一方の油室13の端部が閉鎖される。また、その他方の油室14の端部を閉鎖する環状シール11が、そのハウジング5の内周とラック4の外周との間に嵌め合わされる。その環状シール11は、ラック4に他端側(図1における右方側)から嵌め合わされ、ピストン12を固定するためにラック4の外周に形成される溝により破損するのが防止される。
【0013】
そのハウジング5内に油圧コントロールバルブ15が設けられている。そのコントロールバルブ15は、圧油供給用ポンプ(図示省略)とタンクに接続されると共に各油室13、14に配管16、17を介して接続され、操舵方向に応じて油室13、14の一方に圧油を供給し、他方から油をタンクに還流するもので、公知のものにより構成できる。その圧油の供給によってピストン12に作用する油圧に基づき操舵補助力が付与される。
【0014】
そのピニオン3はベアリング23、24を介してハウジング5により支持される。そのハウジング5に、内周面が円筒面に沿う保持孔25が設けられる。その保持孔25の一端側(図2における左方側)に上記ラック4が配置される。その保持孔25に、焼結金属製のラック支持部材26が図2において左右方向に移動可能に挿入されている。これによってハウジング5により保持されるラック支持部材26の一端側(図2における左方側)は、円柱面に沿うラック支持面26aとされる。そのラック支持面26aとラック4の背面との間に配置される合成樹脂製のシート27を介して、ラック4の他端側は歯4aの背面側においてラック支持部材26により支持される。
【0015】
その保持孔25の他端側(図2における右方側)の開口は、その保持孔25の内周にねじ合わされる閉鎖部材28により閉鎖されている。そのラック支持部材26に、一端側(図2における右方側)において開口するバネ挿入孔26bが形成される。そのバネ挿入孔26bに弾性部材30として圧縮コイルバネが挿入されている。その弾性部材30が閉鎖部材28とラック支持部材26との間で圧縮されることで発生する弾力の作用により、ラック支持部材26の一端側はラック4の円柱面に沿う背面側に押し付けられる。そのラック支持部材26の図2における左右移動により、ピニオン3及びラック4の歯の加工誤差やラック4の曲がりが吸収され、ラック4とピニオン3との噛み合いの円滑化が図られる。
【0016】
上記ラック4は、図3に示すような成形型41を用いた型鍛造により成形されている。その成形型41は上型41aと下型41bとを有し、その上型41aはラック4における歯4aが位置する半部の成形用凹部41a′を有し、その下型41bはラック4における背面側半部の成形用凹部41b′を有し、さらに、両型41a、41bは互いとの接合部にバリ生成用凹部41a″、41b″を有する。
【0017】
図1、図4〜図6に示すように、そのラック4は、円柱面に沿う外周面を有し、ラック軸方向において並列する大径部51と小径部52とを有すると共に、その小径部52において上記ラック支持部材26により支持される。その小径部52に外接する円の直径Daは、その大径部51に外接する円の直径Dbよりも小さくされている。本実施形態では、そのラック4の一端側が大径部51とされている。そのラック4は、その大径部51において上記筒状部材20により支持され、上記油室13、14を構成し、環状シール11が嵌め合わされ、その小径部52に上記歯4aが成形されている。なお、図6に示すように、ピニオン3とラック4との噛み合いをスムーズにすると共に機械効率を向上するため、その型鍛造により各歯4aには歯すじ方向にクラウニングCが付けられている。
【0018】
上記歯4aを型鍛造により成形する際に生じるバリ60(図4において破線で示す)は、トリミング加工により根元部分60aが残存するようにラック4から除去されている。すなわち、図4において2点鎖線で示すように、トリミング加工用ダイス61によりバリ60を介してラック4を支持し、そのラック4にポンチ62により外力を作用させることでバリ60を剪断力によって除去する。そのバリの残存部分60aに外接する円(図4において一点鎖線で示す)の直径Dcは、前記小径部52に外接する円の直径Daを超え、前記大径部51に外接する円の直径Db以下とされている。
【0019】
上記構成によれば、ラック4の小径部52に歯4aを型鍛造により成形する際に生じるバリ60は、その小径部52に外接する円の直径Daが大径部51に外接する円の直径Dbよりも小さいので、完全に除去することなく根元部分60aを残存させることができる。この際、ラック4の外周に平坦面を形成する必要はないので、ラック支持部材26によるラック4の支持領域を十分に確保でき、ラック4を安定して支持できる。また、そのバリ60を根元部分60aよりは肉厚の薄い部分でトリミング加工により除去できるので、そのトリミング加工の際にラック4に作用する外力を小さくできる。
【0020】
図7、図8は上記実施形態の変形例を示す。上記実施形態との相違は、直進操舵時に、前記ラック4とラック支持部材26との間に介在する膨出部70が、小径部52に一体成形されている。左右操舵時は、その膨出部70を挟む小径部領域においてラック4はラック支持部材26により支持される。その膨出部70に外接する円の直径は小径部52に外接する円の直径Daを超え、大径部51に外接する円の直径Db以下とされる。本実施形態では、その膨出部70に外接する円の直径はバリの残存部分60aに外接する円の直径Dcと等しくされている。他は上記実施形態と同様で、同一部分は同一符号で示す。
【0021】
上記変形例によれば、上記実施形態と同様の作用効果を奏することができる。さらに、直進操舵時はラック4とラック支持部材26との間に膨出部70が介在するので、左右操舵時よりも大きな弾力によりラック支持部材26はラック4の背面側に押し付けられる。よって、直進操舵時は左右操舵時よりも剛性感を大きくし、車両の直進走行安定性を向上できる。しかも、その膨出部70に外接する円の直径Dcは大径部51に外接する円の直径Db以下とされるので、膨出部70が他部材と干渉することはない。
【0022】
本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、電動パワーステアリング装置やマニュアルステアリング装置に本発明を適用してもよい。
【0023】
【発明の効果】
本発明によれば、型鍛造されるラックを安定して支持でき、そのラックにおける歪みの発生防止、製造コストの低減、車両の直進走行安定性を向上できるラックピニオン式ステアリング装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態のラックピニオン式ステアリング装置の正面図
【図2】本発明の実施形態のラックピニオン式ステアリング装置の縦断面図
【図3】本発明の実施形態のラックピニオン式ステアリング装置におけるラックの型鍛造用成形型
【図4】本発明の実施形態のラックピニオン式ステアリング装置におけるラックの断面図
【図5】本発明の実施形態のラックピニオン式ステアリング装置におけるラックの部分側面図
【図6】本発明の実施形態のラックピニオン式ステアリング装置におけるラックの部分正面図
【図7】本発明の変形例のラックピニオン式ステアリング装置におけるラックの断面図
【図8】本発明の変形例のラックピニオン式ステアリング装置におけるラックの部分側面図
【符号の説明】
1 ラックピニオン式油圧パワーステアリング装置
3 ピニオン
4 ラック
4a 歯
5 ハウジング
26 ラック支持部材
30 弾性部材
51 大径部
52 小径部
60 バリ
60a 根元部分
70 膨出部
Claims (2)
- 操舵により回転するピニオンと、
そのピニオンに噛み合う歯を有するラックと、
そのラックを覆うハウジングと、
そのハウジングに保持されるラック支持部材と、
そのラック支持部材を、円柱面に沿うラック背面側に押し付ける弾力を圧縮されることで作用させる弾性部材とを備え、
そのラックは型鍛造により成形されているラックピニオン式ステアリング装置において、そのラックは、軸方向において並列する大径部と小径部とを有すると共に、その小径部において前記ラック支持部材により支持され、
その小径部に前記歯が成形され、
その小径部に外接する円の直径は、その大径部に外接する円の直径よりも小さくされ、
直進操舵時に、前記ラック背面側と前記ラック支持部材との間に介在する膨出部が、前記小径部に一体成形され、
左右操舵時は、その膨出部を挟む小径部領域において前記ラックは前記ラック支持部材により支持され、
直進操舵時においては、ラック背面側とラック支持部材との間に膨出部が介在することで左右操舵時よりも大きな弾力によりラック支持部材がラック背面側に押し付けられ、
その膨出部に外接する円の直径は、その小径部に外接する円の直径を超え、前記大径部に外接する円の直径以下とされていることを特徴とするラックピニオン式ステアリング装置。 - 前記歯を型鍛造により成形する際に生じるバリが、トリミング加工により根元部分が残存するように前記ラックから除去され、
そのバリの残存部分に外接する円の直径は、前記小径部に外接する円の直径を超え、前記大径部に外接する円の直径以下とされている請求項1に記載のラックピニオン式ステアリング装置。
Priority Applications (1)
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JP01448899A JP3742238B2 (ja) | 1999-01-22 | 1999-01-22 | ラックピニオン式ステアリング装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP01448899A JP3742238B2 (ja) | 1999-01-22 | 1999-01-22 | ラックピニオン式ステアリング装置 |
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Family Applications (1)
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JP01448899A Expired - Fee Related JP3742238B2 (ja) | 1999-01-22 | 1999-01-22 | ラックピニオン式ステアリング装置 |
Country Status (1)
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1999
- 1999-01-22 JP JP01448899A patent/JP3742238B2/ja not_active Expired - Fee Related
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