JP3818830B2 - 舵取装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、舵取り操作に応じて車体の左右方向へ移動する舵取軸を備えた舵取装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車用の舵取装置の一形式として、舵取り操作に応じて回転するピニオン軸に連動して車体の左右方向へ移動するラック軸と、該ラック軸を収容し、車体への取付部を有するラックハウジングと、前記ラック軸の一端に連結されたピストンロッド及び該ピストンロッドのピストンを案内し、前記ラックハウジングの一端に連結されたシリンダチューブを有する油圧シリンダとを備え、舵取り操作に応じた舵取機構の動作を前記油圧シリンダが発生する油圧力により補助し、舵取りのための運転者の労力負担を軽減するように構成されたラックピニオン式の動力舵取装置が知られている。
【0003】
この従来の動力舵取装置はラックハウジングの取付部が車体に取付けられ、この車体への取付部位に対して油圧シリンダが大きく離間した位置に配設されているため、不整備の道路等で走行するとき、油圧シリンダ部分のがたつきが多くなり、この油圧シリンダ部分のがたつきがラック軸及びピニオン軸を介して操舵輪に伝わり、運転者に不快なフィーリングを与えることになる。
【0004】
この不快なフィーリングをなくするには、ラックハウジングの車体への固定とは別個に油圧シリンダを車体に取付け、動力舵取装置の車体への取付剛性を高くすればよい。
【0005】
図5は実用新案登録第2523805号公報に記載された動力舵取装置の構成を示す一部破断正面図、図6は図5のVI−VI線の拡大断面図である。
この従来の動力舵取装置は、舵取り操作に応じて回転するピニオン軸100に連動して車体の左右方向へ移動するラック軸101と、該ラック軸101を収容し、車体への取付部を有するラックハウジング102と、前記ラック軸101の一端に連結されたピストンロッド103及び該ピストンロッド103のピストン104を案内し、前記ラックハウジング102の一端に連結されたシリンダチューブ105を有する油圧シリンダ106と、前記シリンダチューブ105を車体に取付ける板金製の取付具107とを備えている。
【0006】
この取付具107は、前記シリンダチューブ105を抱持する略C字形の抱持部108と、該抱持部108の両端から外方へ折り曲げられて互いに向き合う一対の取付片109,109と、該取付片109,109の端部を互いに連結する連結片110と、前記抱持部108の内側に加硫接着された弾性筒111とを有し、前記取付片109,109に穿設された貫通孔にボルト112を挿通し、該ボルト112を締め込むことにより前記弾性筒111を撓ませつつ抱持部108がシリンダチューブ105を抱持し、該シリンダチューブ105を車体に取付けるようにしてある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、シリンダチューブ105を車体に取付ける板金製の取付具107は、プレス機によって一体に成形することができる抱持部108及び一対の取付片109,109とは別に弾性筒111を加硫接着等の手段で固定するための加工が必要であるため加工工程数が増し、さらに弾性筒111の経年劣化が発生するという問題がある。
【0008】
この問題を解消するには略C字形に湾曲する湾曲部と、該湾曲部の湾曲方向両端から外方へ折り曲げられて互いに向き合う一対の取付片と、該取付片の間に介在して固定されたスペーサとを有し、前記湾曲部が筒状となるように構成された取付具を用い、該取付具の湾曲部を前記シリンダチューブの外側に挿嵌した状態で湾曲部をシリンダチューブに溶接によって固定することが考えられる。
【0009】
しかしながら、取付具の湾曲部及び取付片はプレス機によって成形され、寸法精度が比較的悪くて湾曲部とシリンダチューブとの間の開先すきまが安定せず、比較的大きな開先すきまとなるため、レーザビーム溶接が行えず、アーク溶接を行うことになる。
【0010】
ところが、前記シリンダチューブは前記ラックハウジングに比べて比較的薄肉に形成されているため、アーク溶接を行えば、その溶接時に発生する熱がシリンダチューブに波及し、該シリンダチューブが熱歪を起こして、シリンダチューブの内径寸法に狂いが発生し、この寸法の狂いを修正するための追加加工が必要となり、内径寸法の管理が行い難いという問題がある。
【0011】
しかも、上述の如く開先すきまが安定していない部分を溶接することになるため、開先すきまが大きな箇所での溶接強度が、開先すきまが小さな箇所での溶接強度に比べて小さくなり、溶接による強度管理が行い難いという問題がある。
【0012】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、ラックハウジング、シリンダチューブ等のハウジングを抱持する弧状の抱持部及び該抱持部の両端から外方へ折り曲げられて互いに向き合う一対の取付片を有し、該取付片が互いに近づく方向への移動が可能となるように離隔して向き合っている取付具を用いることにより、前記取付片をその外側から挟み込むように押圧することによって抱持部を変形させつつ該抱持部の内側をハウジングに均等状に接触させることができ、抱持部とハウジングとの間の開先すきまを僅少にして溶接することができる舵取装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
第1発明に係る舵取装置は、舵取り操作に応じて車体の左右方向へ移動する舵取軸と、該舵取軸を収容する筒形のハウジングと、該ハウジングを抱持する弧状の抱持部及び該抱持部の両端から外方へ折り曲げられて互いに向き合う一対の取付片を有し、前記ハウジングを車体に取付ける取付具とを備えた舵取装置において、前記取付片は互いに近づく方向への移動が可能となるように離隔して向き合っており、前記一対の取付片がその外側から挟み込むように押圧されて、前記抱持部と前記ハウジングとの間の開先すきまを僅少にした状態で該開先すきま部分がレーザビーム溶接されることにより、前記抱持部は前記ハウジングにレーザビーム溶接されていることを特徴とする。
【0014】
第2発明に係る舵取装置は、舵取り操作に応じて車体の左右方向へ移動するラック軸と、該ラック軸を収容する筒形のラックハウジングと、前記ラック軸の一端に連結されたピストンロッド及び該ピストンロッドのピストンを案内し、前記ラックハウジングの一端に連結されたシリンダチューブを有する油圧シリンダと、前記シリンダチューブを抱持する弧状の抱持部及び該抱持部の両端から外方へ折り曲げられて互いに向き合う一対の取付片を有し、前記ハウジングを車体に取付ける取付具とを備えた舵取装置において、前記取付片は互いに近づく方向への移動が可能となるように離隔して向き合っており、前記一対の取付片がその外側から挟み込むように押圧されて、前記抱持部と前記シリンダチューブとの間の開先すきまを僅少にした状態で該開先すきま部分がレーザビーム溶接されることにより、前記抱持部は前記シリンダチューブにレーザビーム溶接されていることを特徴とする。
【0015】
第1発明及び第2発明にあっては、抱持部がラックハウジング、シリンダチューブ等のハウジングを抱持するとき、一対の取付片をその外側から挟み込むように押圧することにより該押圧力が抱持部に波及し、該抱持部を変形させつつ抱持部の内側をハウジングに均等状に接触させることができ、抱持部とハウジングとの間の隙間量を僅少にして安定させることができる。従って、この僅少の隙間部分を溶接することができ、溶接による強度を安定させることができ、この溶接による強度管理が行い易い。
しかも、第1発明にあっては、抱持部を全周にかけて均等状に溶接することができ、十分な溶接強度を得ることができる。また、抱持部をハウジングにレーザビーム溶接するため、溶接するときに発生する熱のハウジングへの波及が少なく、該ハウジングの熱歪をなくすることができ、この熱歪によるハウジングの内径寸法の狂いがなく、この寸法の狂いを修正するための追加加工が不必要であり、内径寸法の管理が容易である。
【0016】
しかも、第2発明にあっては、抱持部をシリンダチューブにレーザビーム溶接するため、溶接するときに発生する熱のシリンダチューブへの波及が少なく、該シリンダチューブの熱歪をなくすることができ、この熱歪によるシリンダチューブの内径寸法の狂いがなく、この寸法の狂いを修正するための追加加工が不必要であり、内径寸法の管理が容易である。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。図1は本発明に係るラックピニオン式の舵取装置の一部破断正面図、図2は図1のII−II線の拡大断面図である。
【0020】
図1に示したラックピニオン式の舵取装置は、上端部が操舵輪1に繋がれ、下端部にピニオン(図示せず)が設けられたピニオン軸2と、該ピニオン軸2を回転が可能に収容するピニオンハウジング3と、前記ピニオンに噛合するラック歯(図示せず)が設けられ、車体の左右方向に延設されたラック軸4と、該ラック軸4を移動が可能に収容し、前記ピニオンハウジング3に結合された円筒状のラックハウジング5と、前記ラック軸4の一端に同軸をなして連結されたピストンロッド61及び該ピストンロッド61のピストン62を案内し、前記ラックハウジング5の一端に連結されたシリンダチューブ63を有する油圧シリンダ6と、前記シリンダチューブ63を抱持する弧状の抱持部71及び該抱持部71の両端から外方へ折り曲げられて互いに向き合う一対の取付片72,72を有し、前記シリンダチューブ63を車体に取付ける取付具7とを備えている。
【0021】
図3は取付具の拡大断面図、図4は取付具の底面図である。
この取付具7は、プレス機が板金を成形することにより形成される。抱持部71はシリンダチューブ63の外径寸法に対応する内側寸法となるように略C字形に形成されており、取付片72,72は互いに近づく方向への移動が可能となるように離隔して向き合っている。
【0022】
この取付片72,72にはその板厚方向へ貫通する貫通孔を有し、夫々の取付片72,72の内側へと延出された筒部73,73がバーリング加工によって形成されている。筒部73,73の間は取付片72,72が互いに近づく方向への移動を可能にする寸法で離隔している。
【0023】
油圧シリンダ6は、ピストン62の両側にて液密に封止された一対の油室をシリンダチューブ63の内側に形成してなり、これらの油室への外部からの油圧送給に応じてピストン62の両側に発生する圧力差により前記ピストンロッド61を軸長方向に押し引きし、該ピストンロッド61に連結された前記ラック軸4に軸長方向の移動力を加える構成となっている。尚、ラック軸4の他端及びピストンロッド61の他端は連結部材を介して操向車輪に連繋される。
【0024】
ピストン62両側の油室は、シリンダチューブ63の外側の該当位置に夫々接続された各別の送油管により、前記ピニオンハウジング3の外側に設けられた一対の送油ポート31,32に接続されている。該ピニオンハウジング3には、舵取りのための舵輪操作に伴って前記ピニオン軸2に加わる操舵トルクに応じて油圧の給排動作を行い、前記送油ポート31,32のいずれかに送出する公知の油圧制御弁が内蔵されており、送油ポート31,32への送出油圧が送油管10,11を経て油圧シリンダ6に送給され、この送給に応じて発生する油圧力がラック軸4に加えられ、前述の如く生じる舵取りが補助される構成となっている。
【0025】
以上の如く構成されたラックピニオン式の舵取装置は、ピニオンハウジング3がボルト等の取付手段によって車体に取付けられるとともに、シリンダチューブ63の他端部が取付具7によって車体に取付けられる。
【0026】
この取付具7による取付けは、一対の取付片72,72をその内側から互いに離間する方向へ押圧し、抱持部71を拡径させた状態で該抱持部71をシリンダチューブ63に嵌め込んだ後、一対の取付片72,72をその外側から挟み込むように押圧する。この押圧によりその押圧力が抱持部71に波及し、該抱持部71を変形させつつ該抱持部71の内側をシリンダチューブ63に均等状に接触させることができ、抱持部71とシリンダチューブ63との間の開先すきまを僅少にして安定させることができる。
【0027】
このように取付片72,72をその外側から挟み込むように押圧し、抱持部71とシリンダチューブ63との間の開先すきまを僅少にした状態で該開先すきま部分をレーザビーム溶接する。
【0028】
因に開先すきまが不安定であれば、換言すれば、比較的大きな開先すきまと比較的小さな開先すきまとがあれば、レーザビーム溶接を行うことができないため、一般的にはアーク溶接を行うことになるが、本発明にあっては一対の取付片72,72をその外側から挟み込むように押圧するだけの簡単な作業によって抱持部71とシリンダチューブ63との間の開先すきまを僅少にして安定させることができるためレーザビーム溶接によって取付具7の抱持部71をシリンダチューブ63に固定することができる。
【0029】
レーザビーム溶接は、溶接するときに発生する熱のシリンダチューブ63への波及が少なく、該シリンダチューブ63の熱歪をなくすることができるため、この熱歪によるシリンダチューブ63の内径寸法の狂いがなく、この寸法の狂いを修正するための追加加工が不必要であり、内径寸法の管理が容易である。
【0030】
以上の如くシリンダチューブ63に固定された取付具7は、一対の取付片72,72の筒部73,73内に筒状のスペーサ8が挿入され、該スペーサ8にボルト9を挿通し、該ボルト9を車体に穿設されたねじ孔に締め込むことにより取付具7が車体に固定される。
【0031】
尚、以上説明した実施の形態では、油圧シリンダ6のシリンダチューブ63に取付具7が取付けられた舵取装置について説明したが、その他、前記取付具7はラック軸4を収容するラックハウジング5に取付けられた舵取装置であってもよい。
【0032】
また、本発明の舵取装置はラック軸4の移動を補助する油圧シリンダ6を備えた動力舵取装置である他、前記油圧シリンダ6等の補助手段を有しない舵取装置であってもよい。この場合、ラック軸4等の舵取軸を収容した筒形のハウジングに前記取付具7が取付けられる。このハウジング及び前記ラックハウジング5は前記油圧シリンダ6のシリンダチューブ63よりも厚肉に形成されているため、レーザビーム溶接の代わりにアーク溶接を行うことが可能である。このアーク溶接を行う場合においても、上述した如く抱持部71とハウジングとの間の開先すきまを僅少にして安定させた状態で溶接が行えるため、繰り返し溶接することなく一度で効率よく溶接することができ、溶接による強度を安定させることができ、この溶接による強度管理が行い易い。
【0033】
【発明の効果】
以上詳述した如く第1発明及び第2発明によれば、一対の取付片をその外側から挟み込むように押圧することにより抱持部を変形させつつ該抱持部の内側をハウジングに均等状に接触させることができ、抱持部とハウジングとの間の開先すきまを僅少にして安定させることができるため、この僅少の開先すきま部分を溶接することができ、溶接による強度を安定させることができ、この溶接による強度管理が行い易い。
しかも、第1発明によれば、抱持部を全周にかけて均等状に溶接することができ、十分な溶接強度を得ることができる。また、抱持部をハウジングにレーザビーム溶接するため、溶接するときに発生する熱のハウジングへの波及が少なく、該ハウジングの熱歪をなくすることができ、この熱歪によるハウジングの内径寸法の狂いがなく、この寸法の狂いを修正するための追加加工が不必要であり、内径寸法の管理が容易である。
【0034】
しかも、第2発明によれば、抱持部をシリンダチューブにレーザビーム溶接するため、溶接するときに発生する熱のシリンダチューブへの波及が少なく、該シリンダチューブの熱歪をなくすることができ、この熱歪によるシリンダチューブの内径寸法の狂いがなく、この寸法の狂いを修正するための追加加工が不必要であり、内径寸法の管理が容易である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る舵取装置の一部破断正面図である。
【図2】図1のII−II線の拡大断面図である。
【図3】本発明に係る舵取装置の取付具の拡大断面図である。
【図4】本発明に係る舵取装置の取付具の底面図である。
【図5】従来の動力舵取装置の構成を示す一部破断正面図である。
【図6】図5のVI−VI線の拡大断面図である。
【符号の説明】
4 ラック軸(舵取軸)
5 ラックハウジング(ハウジング)
6 油圧シリンダ
61 ピストンロッド
62 ピストン
63 シリンダチューブ(ハウジング)
7 取付具
71 抱持部
72 取付片
Claims (2)
- 舵取り操作に応じて車体の左右方向へ移動する舵取軸と、該舵取軸を収容する筒形のハウジングと、該ハウジングを抱持する弧状の抱持部及び該抱持部の両端から外方へ折り曲げられて互いに向き合う一対の取付片を有し、前記ハウジングを車体に取付ける取付具とを備えた舵取装置において、前記取付片は互いに近づく方向への移動が可能となるように離隔して向き合っており、前記一対の取付片がその外側から挟み込むように押圧されて、前記抱持部と前記ハウジングとの間の開先すきまを僅少にした状態で該開先すきま部分がレーザビーム溶接されることにより、前記抱持部は前記ハウジングにレーザビーム溶接されていることを特徴とする舵取装置。
- 舵取り操作に応じて車体の左右方向へ移動するラック軸と、該ラック軸を収容する筒形のラックハウジングと、前記ラック軸の一端に連結されたピストンロッド及び該ピストンロッドのピストンを案内し、前記ラックハウジングの一端に連結されたシリンダチューブを有する油圧シリンダと、前記シリンダチューブを抱持する弧状の抱持部及び該抱持部の両端から外方へ折り曲げられて互いに向き合う一対の取付片を有し、前記ハウジングを車体に取付ける取付具とを備えた舵取装置において、前記取付片は互いに近づく方向への移動が可能となるように離隔して向き合っており、前記一対の取付片がその外側から挟み込むように押圧されて、前記抱持部と前記シリンダチューブとの間の開先すきまを僅少にした状態で該開先すきま部分がレーザビーム溶接されることにより、前記抱持部は前記シリンダチューブにレーザビーム溶接されていることを特徴とする舵取装置。
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