JP3835974B2 - 舵取装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、舵取り操作に応じて車体の左右方向へ移動する舵取軸を備えた舵取装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車用の舵取装置の一形式として、舵取り操作に応じて回転するピニオン軸に連動して車体の左右方向へ移動するラック軸と、該ラック軸を収容し、車体への取付部を有するラックハウジングと、前記ラック軸の一端に連結されたピストンロッド及び該ピストンロッドのピストンを案内し、前記ラックハウジングの一端に圧入して連結されたシリンダチューブを有する油圧シリンダとを備え、舵取り操作に応じた舵取機構の動作を前記油圧シリンダが発生する油圧力により補助し、舵取りのための運転者の労力負担を軽減するように構成されたラックピニオン式の動力舵取装置が知られている。
【0003】
この従来の動力舵取装置はラックハウジングの取付部が車体に取付けられ、この車体への取付部位に対して油圧シリンダが大きく離間した位置に配設されているため、不整備の道路等で走行するとき、油圧シリンダ部分のがたつきが多くなり、この油圧シリンダ部分のがたつきがラック軸及びピニオン軸を介して操舵輪に伝わり、運転者に不快なフィーリングを与えることになる。
【0004】
この不快なフィーリングをなくするには、ラックハウジングの車体への固定とは別個に油圧シリンダを車体に取付け、動力舵取装置の車体への取付剛性を高くすればよい。
【0005】
油圧シリンダを車体に取付ける取付手段として、前記シリンダチューブを抱持し、溶接によって固定された略C字形の抱持部と、該抱持部の両端から外方へ折り曲げられて互いに向き合う一対の取付片と、該取付片を互いに連結する連結筒とを有する取付具が用いられており、前記連結筒にボルトを挿通し、該ボルトを締め込むことによりシリンダチューブを車体に取付けるようにしたものが知られている。
【0006】
また、他の取付手段として、前記シリンダチューブの一端部を取付具成形用の成形型内に挿入し、該成形型内に溶融材料を充填することによりシリンダチューブと一体の取付具を鋳込み成形し、該取付具をボルトによって車体に固定するようにしたものが知られている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、取付具を溶接によってシリンダチューブに固定したり、シリンダチューブと一体の取付具を鋳込み成形したりするものにあっては、シリンダチューブが熱歪を起こして、シリンダチューブの内径寸法に狂いが発生し、この寸法の狂いを修正するための追加加工が必要となり、内径寸法の管理が行い難いという問題がある。
【0008】
しかも、シリンダチューブはラックハウジングの一端に圧入して連結固定されるため、取付具が溶接、又は、鋳込み成形されたシリンダチューブをラックハウジングに圧入して連結固定する場合、取付具の車体への取付位置及び取付角度を正確に保持した状態で圧入作業を行う必要があり、この圧入作業が非常に行い難いという問題がある。また、その反対にラックハウジングに圧入されたシリンダチューブに取付具を溶接したり、取付具を鋳込み成形したりする場合にあっても、取付具の車体への取付位置及び取付角度を正確に保持した状態で溶接、鋳込み成形を行う必要があり、その作業が非常に行い難いという問題がある。
【0009】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、ハウジングに外嵌される嵌合筒部の内側に弧状溝が設けてある取付具と、ハウジングの外側に設けてあり、前記弧状溝に対応する環状溝と、該環状溝及び前記弧状溝に嵌合してあり、前記嵌合筒部のハウジングに対する軸長方向への移動を阻止する移動阻止具とを取付手段が備えた構成とすることにより、取付具を適正な位置に簡易に取付けることができるとともに、取付具をハウジングに取付けた後で該取付具の車体への取付角度を調節することができる舵取装置を提供することを目的とする。
【0010】
また、嵌合筒部は弧状溝に臨む引込孔を有するとともにハウジングと相対回転が可能であり、ハウジングは前記環状溝に臨む係止孔を有し、移動阻止具の一端は前記係止孔に係止された係止片を有している構成とすることにより、移動阻止具の係止片を引込孔から係止孔に係止させ、取付片に対してハウジングを回転させることにより移動阻止具を環状溝及び弧状溝に嵌合させることができる舵取装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
第1発明に係る舵取装置は、舵取り操作に応じて車体の左右方向へ移動する舵取軸と、該舵取軸を収容する筒形のハウジングと、該ハウジングに連なり、且つ二つの送油管が接続されるシリンダチューブを有し、前記舵取軸の移動を補助する油圧シリンダとを備えた舵取装置において、前記シリンダチューブのハウジングと反対側の端部で、且つ前記送油管が接続される箇所と離隔した位置に相対回転を可能に外嵌してあり、内側に弧状溝が設けられた嵌合筒部及び該嵌合筒部から外側へ延出され、車体に取付けられる取付部を有する取付具と、前記シリンダチューブの外側に設けてあり、前記弧状溝に対応する環状溝と、該環状溝及び前記弧状溝に嵌合してあり、前記嵌合筒部のシリンダチューブに対する軸長方向への移動を阻止する移動阻止具とを備えていることを特徴とする。
【0012】
第1発明にあっては、シリンダチューブの環状溝及び取付具の弧状溝に嵌合された移動阻止具によって取付具を適正な位置に簡易に取付けることができ、しかも、移動阻止具の環状溝及び弧状溝への嵌合によって取付具をシリンダチューブに対して回転させることが可能であるため、シリンダチューブの組立て及び取付具の取付後に該取付具の車体への取付角度を調節することができ、従来の如く取付具を溶接したり、鋳込み成形したりする場合に比べて組立て作業性を良好にでき、コストを低減できる。
【0013】
また、環状溝及び弧状溝と移動阻止具とによって取付具を取付けるため、熱歪によるシリンダチューブの内径寸法の狂いがなく、この寸法の狂いを修正するための追加加工が不必要であり、内径寸法の管理が容易である。
【0014】
第2発明に係る舵取装置は、前記嵌合筒部は前記弧状溝に臨み、該弧状溝に前記移動阻止具を引き込む引込孔を有しており、前記シリンダチューブは前記環状溝に臨む係止孔を有しており、前記移動阻止具の一端は前記係止孔に係止された係止片を有していることを特徴とする。
【0015】
第2発明にあっては、係止孔を引込孔に臨ませた状態で移動阻止具の係止片を引込孔から係止孔に係止させ、取付片に対してシリンダチューブを回転させることにより移動阻止具を引込孔から環状溝及び弧状溝へと引き込むことができ、該移動阻止具を環状溝及び弧状溝に嵌合させることができるため、取付具の取付作業がより一層簡易にでき、より一層コストを低減できる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。図1は本発明に係るラックピニオン式の舵取装置の一部破断正面図、図2は舵取軸の一端側部分を拡大した一部破断正面図である。
【0017】
図1に示したラックピニオン式の舵取装置は、上端部が操舵輪1に繋がれ、下端部にピニオン(図示せず)が設けられたピニオン軸2と、該ピニオン軸2を回転が可能に収容するピニオンハウジング3と、前記ピニオンに噛合するラック歯(図示せず)が設けられ、車体の左右方向に延設された舵取軸(以下ラック軸という)4と、該ラック軸4を移動が可能に収容し、前記ピニオンハウジング3に結合された円筒状のハウジング(以下ラックハウジングという)5と、前記ラック軸4の一端に同軸をなして連結されたピストンロッド61及び該ピストンロッド61のピストン62を案内し、前記ラックハウジング5の一端に連結されたシリンダチューブ63を有する油圧シリンダ6と、油圧シリンダの前記シリンダチューブ63を車体に取付ける取付手段7とを備えている。
【0018】
図3は取付手段部分の拡大断面図、図4は図2のIV−IV線の拡大断面図である。
この取付手段7は、前記シリンダチューブ63に外嵌してあり、内側に弧状溝72が設けられた円筒形の嵌合筒部71a及び該嵌合筒部71aの周方向位置からラジアル方向へ延出された取付部71bを有する取付具71と、前記シリンダチューブ63の外側に設けてあり、前記弧状溝72に対応する環状溝73と、該環状溝73及び前記弧状溝72に嵌合してあり、前記嵌合筒部71aのシリンダチューブ63に対する軸長方向への移動を阻止する線状の移動阻止具74とを備えている。
【0019】
弧状溝72は嵌合筒部71aの軸長方向に離隔して一対が設けてあり、また、嵌合筒部71aは前記弧状溝72の夫々に臨み、該弧状溝72に前記移動阻止具74を外側から引き込む長孔状の一対の引込孔75が設けてある。また、取付部71bには前記嵌合筒部71aの軸心と直交する方向へ穿設された貫通孔76が設けてあり、該貫通孔76にブッシュ77を嵌合してある。尚、引込孔75は移動阻止具74が環状溝73及び弧状溝72に嵌合された後、合成樹脂、合成ゴム等の撓み性を有する蓋体78によって閉鎖する。また、前記弧状溝72は環状に連続している。
【0020】
シリンダチューブ63は前記環状溝73の一端側で該環状溝73に臨む係止孔80が設けてある。また、環状溝73及び弧状溝72は前記移動阻止具74の線径寸法のほぼ1/2の深さを有する断面半円形に形成してある。
【0021】
図5は移動阻止具の側面図である。
移動阻止具74は図5の如く金属線がリング状に曲げられたサークリップを用いてなり、その一端には内側へ延出され、前記係止孔80に係止された係止片81が設けてある。
【0022】
油圧シリンダ6は、ピストン62の両側にて封止部材64,64により液密に封止された一対の油室をシリンダチューブ63の内側に形成してなり、これらの油室への外部からの油圧送給に応じてピストン62の両側に発生する圧力差により前記ピストンロッド61を軸長方向に押し引きし、該ピストンロッド61に連結された前記ラック軸4に軸長方向の移動力を加える構成となっている。尚、ラック軸4の他端及びピストンロッド61の他端は連結部材65,65を介して操向車輪に連繋される。
【0023】
図6は図2のVI−VI線の拡大断面図である。
ピストンロッド61の先端に配置された封止部材64の油室と反対側には、封止部材64の軸長方向への移動を止める移動止め環66が取付けてある。この移動止め環66の取付手段9は、シリンダチューブ63の内側及び移動止め環の外側に設けられた環状溝91,92と、該環状溝91,92の夫々に嵌合され、移動止め環66の軸長方向への移動を阻止する移動阻止具93と、シリンダチューブ63に設けられて一方の環状溝91に臨み、前記移動阻止具93を引き込む引込孔94と、移動止め環66に設けられて他方の環状溝92に臨む係止孔95とを備えており、また、前記移動阻止具93の一端には前記係止孔95に係止される係止片96が設けてある。
【0024】
ピストン62両側の油室は、シリンダチューブ63の外側の該当位置に夫々接続された各別の送油管により、前記ピニオンハウジング3の外側に設けられた一対の送油ポート31,32に接続されている。該ピニオンハウジング3には、舵取りのための舵輪操作に伴って前記ピニオン軸2に加わる操舵トルクに応じて油圧の給排動作を行い、前記送油ポート31,32のいずれかに送出する公知の油圧制御弁が内蔵されており、送油ポート31,32への送出油圧が送油管10,11を経て油圧シリンダ6に送給され、この送給に応じて発生する油圧力がラック軸4に加えられ、前述の如く生じる舵取りが補助される構成となっている。
【0025】
図7は取付具の取付過程を示す図である。
以上の如く構成された舵取装置の取付手段7は、シリンダチューブ63がラックハウジング5に連結されていない状態で取付具71の嵌合筒部71aをシリンダチューブ63の他端側に外嵌し、該取付具71の引込孔75をシリンダチューブ63の係止孔80に臨ませ、図7の如く移動阻止具74の係止片81を引込孔75から係止孔80に係止した状態で取付具71に対してシリンダチューブ63を回転させることにより、該シリンダチューブ63の回転に連動して移動阻止具74が引込孔75へと引込まれつつ該移動阻止具74が環状溝73及び弧状溝72に嵌合され、取付具71のシリンダチューブ63に対する軸長方向への移動が阻止される。
【0026】
このように取付具71及びシリンダチューブ63を相対回転させることにより、取付具71を適正な位置に簡易に取付けることができ、しかも、取付具71はシリンダチューブ63に対して回転させることができるため、シリンダチューブ63をラックハウジング5の一端に圧入して連結する場合、取付具71のシリンダチューブ63に対する周方向位置を考慮することなくシリンダチューブ63を連結することができる。従って、油圧シリンダ6を車体に取付けるとき、取付具71の車体への取付角度を調節することができ、従来の如く取付具71を溶接したり、鋳込み成形したりする場合に比べて組立て作業性を良好にでき、コストを低減できる。
【0027】
また、舵取装置の車体への取付けは、ラックハウジング5に設けられた取付部及びシリンダチューブ63に取付けられた取付具71のブッシュ77にボルトを挿通し、該ボルトを締め込むことにより車体に取付ける。
【0028】
尚、以上説明した実施の形態では、取付具71の嵌合筒部71aを円筒形としたが、その他、嵌合筒部71aを略C字形、換言すれば弧状の嵌合筒部とし、その内側の周方向両端に亘って弧状溝72を設けた構造としてもよい。
【0029】
また、環状溝73及び弧状溝72は複数である他、一つであってもよい。また、移動阻止具74はサークリップを用いる他、例えば半円形の一つ又は複数の線を用いてもよい。また、移動阻止具74は、組立前の状態を一端に折り曲げられた係止片81を設けた直線上の金属線としてもよい。
【0032】
【発明の効果】
以上詳述した如く第1発明によれば、シリンダチューブの環状溝及び取付具の弧状溝に嵌合された移動阻止具によって取付具を適正な位置に簡易に取付けることができ、しかも、取付具をシリンダチューブに対して回転させることが可能であるため、シリンダチューブの組立て及び取付具の取付後に該取付具の車体への取付角度を調節することができ、従来の如く取付具を溶接したり、鋳込み成形したりする場合に比べて組立て作業性を良好にでき、コストを低減できる。
【0033】
また、環状溝及び弧状溝と移動阻止具とによって取付具を取付けるため、熱歪によるシリンダチューブの内径寸法の狂いがなく、この寸法の狂いを修正するための追加加工が不必要であり、内径寸法の管理が容易である。
【0034】
第2発明によれば、係止孔を引込孔に臨ませた状態で移動阻止具の係止片を引込孔から係止孔に係止させ、取付片に対してシリンダチューブを回転させることにより移動阻止具を環状溝及び弧状溝に嵌合させることができるため、取付具の取付作業がより一層簡易にでき、より一層コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る舵取装置の一部破断正面図である。
【図2】本発明に係る舵取装置の舵取軸の一端側部分を拡大した一部破断正面図である。
【図3】本発明に係る舵取装置の取付手段部分の拡大断面図である。
【図4】図2のIV−IV線の拡大断面図である。
【図5】本発明に係る舵取装置の移動阻止具の側面図である。
【図6】図2のVI−VI線の拡大断面図である。
【図7】本発明に係る舵取装置の取付具の取付過程を示す図である。
【符号の説明】
4 ラック軸(舵取軸)
5 ラックハウジング(ハウジング)
61 ピストンロッド(舵取軸)
63 シリンダチューブ(ハウジング)
7 取付手段
71 取付具
71a 嵌合筒部
71b 取付部
72 弧状溝
73 環状溝
74 移動阻止具
75 引込孔
80 係止孔
81 係止片
Claims (2)
- 舵取り操作に応じて車体の左右方向へ移動する舵取軸と、該舵取軸を収容する筒形のハウジングと、該ハウジングに連なり、且つ二つの送油管が接続されるシリンダチューブを有し、前記舵取軸の移動を補助する油圧シリンダとを備えた舵取装置において、前記シリンダチューブのハウジングと反対側の端部で、且つ前記送油管が接続される箇所と離隔した位置に相対回転を可能に外嵌してあり、内側に弧状溝が設けられた嵌合筒部及び該嵌合筒部から外側へ延出され、車体に取付けられる取付部を有する取付具と、前記シリンダチューブの外側に設けてあり、前記弧状溝に対応する環状溝と、該環状溝及び前記弧状溝に嵌合してあり、前記嵌合筒部のシリンダチューブに対する軸長方向への移動を阻止する移動阻止具とを備えていることを特徴とする舵取装置。
- 前記嵌合筒部は前記弧状溝に臨み、該弧状溝に前記移動阻止具を引き込む引込孔を有しており、前記シリンダチューブは前記環状溝に臨む係止孔を有しており、前記移動阻止具の一端は前記係止孔に係止された係止片を有している請求項1記載の舵取装置。
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