JP3739372B2 - 木造建築物における筋交い構造 - Google Patents

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Description

本発明は、木造建築物における筋交い構造に関するものである。
木造建築物は、木材によって、柱、梁、桁などが構成され、また、耐久性を備えさせるために筋交いや方づえなどの斜材を補強材として構成する。この補強材として用いられる筋交いは、下記特許文献1にあるように土台や梁となる上下の横架材とこれら横架材で挟まれた鉛直材である柱と柱とで構成される矩形状の枠体における、各接合部分に両端が位置するように対角線状に斜めに固定される。筋交いの両端と枠体とは、接合金具などが用いられ、容易に互いが離脱しないよう構成され、そして、矩形状の枠体の剛性を高めるようになっている。
特開平10−299084号公報
上記のような筋交いの構成は、地震などの外力による圧縮力に抵抗するために用いられるが、この圧縮力が大きい場合に、両端のみが固定されていることから、座屈が起こり、筋交いの略中間部分が折れ、壁面の外方向に膨らみ、壁面を突き抜け、突出するおそれがある。このような座屈による折れの発生を抑制するために、柱と柱との間に、これら柱と平行に間柱を設け、この間柱と筋交いとを固定して支持する構造などもあったが、間柱自体は負荷に対して耐力を備えないことから筋交いの座屈が起きる以前に、間柱が折れや割れなどを起こして十分な剛性効果を発揮できない欠点もあった。
そこで本発明は、上記問題点を解消するために、木造建築物における構造の補強材として用いられる筋交いの圧縮力に対する耐久力を向上させ、座屈などの不具合を抑えることの可能な木造建築物における筋交い構造を提供することを目的としている。
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
この発明の木造建築物における筋交い構造は、柱と横架材とで構成される矩形状の枠体の接合部に筋交いが固定される木造建築物における筋交い構造であって、前記柱4、4の厚さの略1/2の厚さ寸法とされた前記筋交い7と、前記筋交い7の両端部における一方の側面7aと、該一方の側面7aと略面一とされる前記柱4、4及び前記横架材2、3の側面との間に掛け渡されて固定される接合金具としての上下の筋交いプレート10、10と、上下の前記横架材2、3と略平行となって前記筋交い7の他方の側面7bに当接させて交差させるとともに、前記柱4、4の高さ方向中途部分に位置して前記柱に掛け渡され、該柱に両端が固定される筋交い支持体11と、前記筋交い支持体11の中間部を前記筋交い(7)の中間部に固定させる固定ブラケット15と、を備え、前記筋交い支持体11は、両端にオネジ部を備えた軸状部材であり、該両端が前記柱の略中心を貫通し、メネジ部材が螺着されて固定されることを特徴としている。
また、左右の前記柱4、4の中間位置に、これら柱と平行に設けられ、中間位置には前記筋交い7の中途部分が嵌合し交差する切欠部9が形成された間柱8を有し、前記筋交い支持体11の中間部が前記間柱8の切欠部9の略中央に設けた逃げ溝9aをとおって設けられていることを特徴とする。
このような構成の木造建築物における筋交い構造は、柱4,4と、土台や梁となる横架材2,3とで構成される矩形状の枠体6の接合部に対角線状に配置固定される筋交い7が設けられ、この筋交い7の一方の側面7aは、上下の筋交いプレート10、10により、横架材2,3と柱4に結合され、また、筋交い7の他方の側面7bは、その中間部が軸状部材としての筋交い支持体11に当接されていることから、地震などの外力が加わり、圧縮力などを受けた際に、筋交い7に受ける圧縮力にて起こる一側又は他側方向への変形を、上下の筋交いプレート10、10と筋交い支持体11にて抑制し、損壊などを防ぐこととなる。また、上記筋交い支持体11は、両端にオネジ部を備えた軸状部材であり、該両端が前記柱の略中心を貫通し、メネジ部材が螺着されて固定される構造であるところから、壁の内部に位置し、また、筋交いプレート10、10は、上下に設けられているところから、その設置状態において、目立つことがない。
さらに、上記筋交い支持体11は、中間部が固定ブラケット15により筋交い7の中間部に固定され、又は、中間部が筋交い7と間柱8との間に挟持されているところから、地震などの際、筋交い支持体11の中間部が折れ曲がるということがない。
本発明による木造建築物における筋交い構造では、地震などの外力が加わり、筋交いに圧縮方向の力が加わると、この筋交いは、中途部分が前後に撓み、屈曲を起こそうとするが、筋交いプレート及び筋交い支持体がその前後又は両側の撓みを抑制し、筋交いを支持することとなる。これにより、補強材である筋交いが湾曲変形を起こすものの座屈損壊などを起こさず、耐久力の向上した木造建築物を得ることが可能となる。また、筋交い支持体11は、中間部が固定ブラケット15により筋交い7の中間部に固定され、又は、中間部が筋交い7と間柱8との間に挟持されているところから、地震などの際、筋交い支持体11の中間部が折れ曲がるということがなく、その補強効果が一層増大する。
また、筋交い支持体を、両端にネジ部を備え、これらネジ部を各柱の略中心を貫通させてメネジ部材で螺着固定し、両柱に掛け渡す構成としたところから、各柱にネジ部を貫通する孔を穿設し、螺着固定を行うという簡易な施工で、上記した耐力向上の効果を得ることができ、新たに建築される建物だけでなく、既存の建築物に対しても容易に構成でき、耐震構造の建築物を得ることが可能となる。また、筋交い支持体及び筋交いプレートが、壁の外面に大きく表出して目立つということがなく、補強構造として適している。
以下、本発明の木造建築物における筋交い構造を各実施の形態ごとに説明する。
第1の実施の形態
図1は本発明による木造建築物における筋交い構造の第1の実施の形態を示す概略斜視図、図2は同筋交い構造の正面図、図3は図2におけるA−A線断面図、図4は同筋交い構造の一部拡大側断面図である。
図1に示すように、梁や土台となる上下に位置し対となる横架材2,3間には、鉛直材としての柱4,4が連結され、矩形状の枠体6が構成される。この枠体6には、各横架材2,3と各柱4,4との接合部である継目にあたる隅角部に合致するように端部における角が切り落とされた長尺材が、枠体に対して対角線状に斜めに固定され、筋交い7とされる。この筋交い7は、本実施の形態では、柱4の厚さの略1/2の寸法とされた所謂柱二つ割り筋交いとされ、平使いとされる。
対となる柱4,4には、長手方向に直交し、それぞれを真直に貫通する挿通孔5が穿設される。各挿通孔5の位置は、柱4,4における高さ方向の略1/2の位置とされ、かつ柱4,4の略中心を貫通しており、すなわち、両挿通孔5,5を結ぶ仮想線が横架材2,3と平行とされる。そして、この挿通孔5,5は、後述する筋交い支持体11が取り付けられる。
また、本実施の形態では、各柱4,4の中間位置に、これら柱4,4と平行に鉛直とされる間柱8が設けられる。間柱8には、中途位置に矩形状の切欠部9が形成され、筋交い7の中途部分が嵌合し、交差するようになっている。
筋交い7の両端部における一方の側面7aと、柱4,4及び横架材2,3の側面とは、略面一とされ、これら両側面に掛け渡されて、図2に示すように、接合金具としての筋交いプレート10が固定される。
筋交い支持体11は、本実施の形態では、両ネジボルト12と、角座金13と、メネジ部材としてのナット14より構成される。両ネジボルト12は、両端にオネジ部12aを備えた長尺な軸状部材で、上記した両柱4,4の間隔幅長よりも長尺に形成される。そして、この両ネジボルト12は、各柱4,4のそれぞれの挿通孔5,5に両端が貫通された状態、すなわち掛け渡されるように、略水平に取り付けられる。柱4を貫通する端部であるオネジ部12aには、柱4の外側面から角座金13が挿着された後、ナット14が螺着され、これにより柱4に対して固定される。固定された両ネジボルト12は、その中途部分が筋交い7の他方の側面7bに当接する。本実施の形態では、図3に示すように、筋交い7と間柱8に挟持されるように位置する。なお、図4に示すように、間柱8には、上記した切欠部9の略中央に、両ネジボルト12が配置可能な逃げ溝9aが形成されている。
また、この筋交い支持体11を構成する両ネジボルト12は、固定手段としての固定ブラケット15によって、筋交いに固定される。固定ブラケットは、図5に示すように、両端に取付耳16,16を備え中途に湾曲部17を備えた略Ω字形状の部材で、湾曲部17に両ネジボルト12の中途部分を嵌め、両取付耳16,16をネジや釘等を用いて筋交い7に固定する。
なお、筋交い7と間柱8とは、釘打ちされることとしても良い。
このように構成された筋交い構造によれば、地震などの外力が加わり、筋交い7に圧縮方向の力が加わると、この筋交い7は、両端が固定されていることから、中途部分が撓むこととなる。本実施の形態では、筋交いプレート10にて固定される一方の側面7aと反対の他方の側面7bの方向に中途部分が撓む。そして、この中途部分が屈曲を起こそうとするが、筋交い支持体11である両ネジボルト12がその撓みを抑制し、筋交い7を支持することとなる。
これにより、補強材である筋交い7が湾曲変形を起こすものの座屈損壊などを起こさず、すなわち耐久力の向上した木造建築物を得ることが可能となる。
また、上述した実施の形態では、特に述べていないが、新たに建築される新築の木造建築物に対して上記した筋交い構造1を採用することが可能であるとともに、リフォームなどの際にも、容易に構築可能であり、既存の木造建築物に対して、筋交い支持体11を追加付設することで、耐震構造を容易に得ることが可能である。
次に、本発明の木造建築物における筋交い構造の実施例について説明する。
図6に示すように、上述した第1の実施の形態で述べた構成、すなわち筋交い支持体11を両ネジボルト12で構成した枠体6にて、筋交い7の変位を計測する。
この例において、横架材2,3は、上部の横架材2を幅105mm高さ180mmとし、下部の横架材3及び柱4,4を105mm角材とし、各横架材2,3,柱4,4の長さ寸法として、中心間の長さで、各柱4,4間の長さWを910mm、上下横架材2,3間の長さHを2730mmとし、各柱4,4の外方B=200mmの位置で基礎(図示せず)に固定して、各横架材2,3及び柱4,4をホールダウン金物30で連結し、また、間柱8及び筋交い7をそれぞれ連結する。両ネジボルト12は、長さL=1100mm、M12のものを用い、各柱4,4の高さ方向中間部分、上下横架材からh=1293.5mmの位置に穿設した挿通孔5に両端を通し、角座金13及びナット14にて固定する。
そして、図6に示す矢線Fの方向に荷重を掛ける座屈試験を行った。
図7の荷重−変位図の実線Tで示すように、荷重を掛けると筋交い7は壁の外方向に湾曲変形を起こすが、両ネジボルト12により支持され、図中破線及び一点鎖線で示す筋交い支持体11のない従来の構造2例に比べ、急激な低下、すなわち損壊が起きない。
これにより、横架材2,3及び柱4,4で構成される構造体は、筋交い7による圧縮損壊の防止効果が得られるとともに、筋交い7自体の損壊が筋交い支持体11により抑制される。
本発明による木造建築物における筋交い構造の第1の実施の形態を示す概略斜視図である。 同筋交い構造の正面図である。 図2におけるA−A線断面図である。 同筋交い構造の一部拡大側断面図である。 同筋交い構造の一部拡大斜視図である。 上記筋交い構造の試験体の正面図を(a)側面図を(b)に示した説明図である。 同実施例における荷重−変位図である。
符号の説明
1…筋交い構造
2,3…横架材
4…柱
6…枠体
7…筋交い
11…筋交い支持体
12a…オネジ部
14…メネジ部材(ナット)

Claims (2)

  1. と横架材とで構成される矩形状の枠体の接合部に筋交いが固定される木造建築物における筋交い構造であって、
    前記柱(4、4)の厚さの略1/2の厚さ寸法とされた前記筋交い(7)と、
    前記筋交い(7)の両端部における一方の側面(7a)と、該一方の側面(7a)と略面一とされる前記柱(4、4)及び前記横架材(2、3)の側面との間に掛け渡されて固定される接合金具としての上下の筋交いプレート(10、10)と、
    上下の前記横架材(2、3)と略平行となって前記筋交い(7)の他方の側面(7b)に当接させて交差させるとともに、前記柱(4、4)の高さ方向中途部分に位置して前記に掛け渡され、該に両端が固定される筋交い支持体(11)と、
    前記筋交い支持体(11)の中間部を前記筋交い(7)の中間部に固定させる固定ブラケット(15)と、を備え、前記筋交い支持体(11)は、両端にオネジ部を備えた軸状部材であり、該両端が前記柱の略中心を貫通し、メネジ部材が螺着されて固定されることを特徴とする木造建築物における筋交い構造。
  2. 柱と横架材とで構成される矩形状の枠体の接合部に筋交いが固定される木造建築物における筋交い構造であって、
    前記柱(4、4)の厚さの略1/2の厚さ寸法とされた前記筋交い(7)と、
    前記筋交い(7)の両端部における一方の側面(7a)と、該一方の側面(7a)と略面一とされる前記柱(4、4)及び前記横架材(2、3)の側面との間に掛け渡されて固定される接合金具としての上下の筋交いプレート(10、10)と、
    上下の前記横架材(2、3)と略平行となって前記筋交い(7)の他方の側面(7b)に当接させて交差させるとともに、前記柱(4、4)の高さ方向中途部分に位置して前記柱に掛け渡され、該柱に両端が固定される筋交い支持体(11)と、
    左右の前記柱(4、4)の中間位置に、これら柱と平行に設けられ、中間位置には前記筋交い(7)の中途部分が嵌合し交差する切欠部(9)が形成された間柱(8)と、を備え、前記筋交い支持体(11)の中間部が前記間柱(8)の切欠部(9)の略中央に設けた逃げ溝(9a)をとおって設けられ、前記筋交い支持体(11)は、両端にオネジ部を備えた軸状部材であり、該両端が前記柱の略中心を貫通し、メネジ部材が螺着されて固定されることを特徴とする木造建築物における筋交い構造。
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