JP3737164B2 - キナクリドンキノンを含むピロロ[3,4−c]ピロールの固溶体 - Google Patents

キナクリドンキノンを含むピロロ[3,4−c]ピロールの固溶体 Download PDF

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Description

【0001】
本発明は、黄金色乃至えび茶色の色領域のピロロ[3,4−c]ピロールとキナクリドンキノンとの固溶体顔料の新規な系列に関する。この顔料としての固溶体は、高い彩度ならびにきわめて良好な耐光堅牢性および耐候堅牢性を有する。本新規固溶体はプラスチック、高品質インク、自動車用塗料、特にメタリック効果を有する自動車用塗料における色材として有用である。
【0002】
キナクリドンキノンが、キナクリドンと固溶体を形成することは公知である。この固溶体は、良好な耐候堅牢性を有するえび茶色の顔料である。しかしながら、キナクリドン成分の青赤色のために、キナクリドンキノン成分の鮮明黄色を保持することが不可能である。
【0003】
キナクリドンキノンとアニリノアクリドンとを含有する固溶体を顔料として使用することは、米国特許第4286998号明細書に記載されている。
アニリノアクリドンまたはフェノキシアクリドン成分を含まない、キナクリドンおよび/またはキナクリドンキノン成分とピロロ[3,4−c]ピロール成分とを含有する二成分系固溶体が、米国特許第4810304号明細書に記載されている。この刊行物は、固溶体の形成の前、間または後に、アニリノアクリドンを含む光安定剤を添加することによって、そこに開示されている固溶体の耐光堅牢性を向上させるうる旨の一般的示唆を提供している。しかし、この刊行物は、三成分系固溶体を形するために、アニリノアクリドンを該固溶体の結晶格子内に挿入できることまたは挿入すべきことは示唆していない。
【0004】
本発明は、キナクリドンキノン成分、ピロロ[3,4−c]ピロール成分、および2−アニリノアクリドン、5、6、7、8−テトラヒドロ−2−アニリノアクリドン、2−フェノキシアクリドン、5、6、7、8−テトラヒドロ−2−フェノキシアクリドンまたはそれらの混合物である第3成分を含有する三成分系固溶体に関する。本発明による三成分系固溶体は、キナクリドンキノン成分とピロロ[3,4−c]ピロール成分とだけを含む二成分系固溶体よりも優れた耐光堅牢性の大幅な向上を示し、しかも二成分系固溶体が表現する全領域の魅力ある色を示す。
さらに、本発明は、キナクリドンキノン成分、ピロロ[3,4−c]ピロール成分、上記第3アクリドン成分およびキナクリドン成分を含有する四成分系固溶体にも関する。この四成分系固溶体は、優れた彩度、色濃度および耐久性を有する魅力的なえび茶(栗色)(marron)の顔料である。
本発明の三成分系および四成分系固溶体において、優れた光安定性を達成するために、光安定アクリドン成分を固溶体に組み込むことが必要である。すなわち、本発明の固溶体は、キナクリドンキノン成分とピロロ[3,4−c]ピロールとだけから予め形成された固溶体とアクリドン成分との単なる物理的混合物と比較して、驚くべきほど優れた光安定性を示す。
【0005】
本発明は、キナクリドンキノン成分50乃至97重量%、ピロロ[3,4−c]ピロール成分2乃至30重量%、および2−アニリノアクリドン、5、6、7、8−テトラヒドロ−2−アニリノアクリドン、2−フェノキシアクリドン、5、6、7、8−テトラヒドロ−2−フェノキシアクリドンまたはそれらの混合物である第3成分1乃至20重量からなる三成分系固溶体に関する。
一般的に、この固溶体は、第3成分としてただ1つの化合物が使用されている三成分系(ternary or three component)固溶体である。しかしながら、”三成分(ternary) 系固溶体”という用語は、固溶体結晶格子に組み込まれた第3成分が1種を超えるアクリドンおよび/またはテトラヒドロアクリドン成分の混合物である固溶体をも包含するものであることを意味する。
【0006】
キナクリドンキノン成分は下記式の化合物である。
【化16】
Figure 0003737164
式中
Rは水素、ハロゲンまたはC1-C4 アルキルであり、
xとyとは互いに独立的に1または2である。
かかるキナクリドンキノン化合物は、顔料の成分として当技術分野において公知であり、そして、たとえば、米国特許第3124582号明細書および同第3185694号明細書、同第3251845号明細書に記載された方法によって製造することができる。
キナクリドンキノン成分として特に有用な化合物には、例えば、置換されていないキナクリドンキノン、2、9−ジクロロキナクリドンキノン、2、9−ジメチルキナクリドンキノンがある。
【0007】
ピロロ[3,4−c]ピロール成分は下記式の化合物である。
【化17】
Figure 0003737164
式中、
各Ar は互いに独立的に式
【化18】
Figure 0003737164
{式中、R1とR2とは互いに独立的に水素、ハロゲン、C1-C5 アルキル、C1-C5 アルコキシ、−SR3(ここにおいて、R3はC1-C5 アルキルである)、−N(C1-C5 アルキル)2 、−CF3 または−CNである}のアリール置換基、あるいは式
【化19】
Figure 0003737164
(式中、R4とR5とは互いに独立的に水素、ハロゲン、C1-C5 アルキル、C1-C5 アルコキシ、−SR3(ここにおいて、R3はC1-C5 アルキルである)または−CNである)の置換基である。かかるピロロ[3,4−c]ピロールは顔料として当技術分野において公知であり、そして米国特許第4415685号明細書に記載されている。これらピロロ[3,4−c]ピロールを製造するために有用な方法は、米国特許第4579949号明細書に記載されている。
ピロロ[3,4−c]ピロール成分として特に有用な化合物を例示すれば、各種の二置換誘導体、たとえば3、6−ビス(4−クロロフェニル)誘導体、3、6−ビス(4−メチルフェニル)誘導体、3、6−ビス(3−クロロフェニル)誘導体、3、6−ビス(3−メチルフェニル)誘導体、3、6−ビス(ビフェニルイル)誘導体など、ならびに置換されていない化合物、1、4−ジケト−3、6−ジフェニルピロロ−[3,4−c]−ピロール(以下、DPPと略記する)などである。
【0008】
第3成分は、式
【化20】
Figure 0003737164
の2−アニリノアクリドンまたは2−フェノキシアクリドン、または式
【化21】
Figure 0003737164
の5、6、7、8−テトラヒドロ−2−アニリノアクリドンまたは5、6、7、8−テトラヒドロ−2−フェノキシアクリドンである。
式中、
AはOまたはNHであり、
R'は水素、ハロゲンまたはC1-C4 アルキルである。
5、6、7、8−テトラヒドロ−2−アニリノアクリドンは、2−シクロヘキサノンカルボン酸エステルをN−フェニル−p−フェニレンジアミンと縮合し、そして得られた2−{4’−(フェニルアミノ)フェニル}−アミノシクロヘキセンカルボン酸エステルを不活性高沸点液体中において加熱して環化することによって製造される。2−アニリノアクリドンは、担持されたパラジウムまたはプラチナ触媒を使用して5、6、7、8−テトラヒドロ−2−アニリノアクリドンを脱水素することによって製造される。この5、6、7、8−テトラヒドロ−2−アニリノアクリドンおよび2−アニリノアクリドンの製造法は、米国特許第4286998号明細書に記載されている。
5、6、7、8−テトラヒドロ−2−フェノキシアクリドンおよび2−フェノキシアクリドンは公知であり、そして上記と同様な方法により、ただしN−フェニル−p−フェニレンジアミンの代わりに4−アミノジフェニルエーテルを使用して、製造することができる。
【0009】
第3成分として特に有用な化合物は、置換されていない化合物、特に2−アニリノアクリドンおよび5、6、7、8−テトラヒドロ−2−アニリノアクリドンを含む。
本発明の1つの特徴においては、本発明は、その第3成分が式
【化22】
Figure 0003737164
(式中、AはNHである)の2−アニリノアクリドン、特に2−アニリノアクリドンである三成分系固溶体に関する。
第3成分として2−アニリノアクリドンを含有する注目すべき組成物は、キナクリドンキノン成分の置換分Rが水素、塩素またはメチルであり、かつxとyとが1であるもの、特に、ピロロ[3,4−c]ピロールの置換分Ar が2つのアリール基を含有し、そしてR1とR2とが水素または塩素、たとえば、R1はパラ−塩素置換分であり、R2が水素である組成物である。とりわけ注目すべき組成物は、その三成分系固溶体が、置換されていないキナクリドンキノンとDPPと、第3成分として、2−アニリノアクリドンとを含有しているものである。
【0010】
さらに本発明は、その第3成分が式
【化23】
Figure 0003737164
(式中、AはNHである)の5、6、7、8−テトラヒドロ−2−アニリノアクリドン、特に置換されていない化合物、5、6、7、8−テトラヒドロ−2−アニリノアクリドンである三成分系固溶体に関する。
第3成分として5、6、7、8−テトラヒドロ−2−アニリノアクリドンを含有する注目すべき組成物は、キナクリドンキノン成分の置換分Rが水素、塩素またはメチルであり、かつxとyとが1であるもの、特に、ピロロ[3,4−c]ピロールの置換分Ar が2つのフェニル基を含有し、そしてR1とR2とが水素または塩素である、あるいは、R1がパラ−クロロ置換分でありR2が水素である組成物である。とりわけ注目すべき組成物は、その三成分系固溶体が置換されていないキナクリドンキノンとDPPと、第3成分として、5、6、7、8−テトラヒドロ−2−アニリノアクリドンとを含有しているものである。
【0011】
さらに本発明は、Aが酸素であり、そしてR'が水素である第3成分、たとえば、2−フェノキシアクリドンまたは5、6、7、8−テトラヒドロ−2−フェノキシアクリドンを含有すする三成分系固溶体にも関する。第3成分として2−フェノキシアクリドンまたは5、6、7、8−テトラヒドロ−2−フェノキシアクリドンを含有する注目すべき組成物は、キナクリドンキノン成分の置換分Rが水素、塩素またはメチルであり、かつxとyとが1であるもの、特に、ピロロ[3,4−c]ピロールの置換分Ar が2つのフェニル基を含有し、そしてR1とR2とが水素または塩素である、あるいは、R1がパラ−クロロ置換分でありR2が水素である組成物である。とりわけ重要な組成物は、その三成分系固溶体が置換されていないキナクリドンキノンと1、4−ジケト−3、6−ジフェニルピロロ−[3,4−c]−ピロールと、第3成分として、2−フェノキシアクリドンまたは5、6、7、8−テトラヒドロ−2−フェノキシアクリドンとを含有しているものである。
【0012】
本発明の1つの実施態様においては、その三成分系固溶体はキナクリドンキノン成分を65乃至80重量%、ピロロ[3,4−c]ピロール成分を10乃至25重量%含有し、残分が第3成分である。特に好ましくは、三成分系固溶体はキナクリドンキノン成分を70乃至80重量%そしてピロロ[3,4−c]ピロール成分を15乃至20重量%含有する。より特定的な実施態様においては、三成分系固溶体はキナクリドンキノン成分を74乃至78重量%、ピロロ[3,4−c]ピロール成分を18.5乃至19.5重量%含有し、残分が第3成分である。
一般的に、本発明の三成分系固溶体は、ホスト分子であるキナクリドンキノンのX線回折図を有するゲスト−ホスト固溶体である。通常、第3成分の存在下においてキナクリドンキノン結晶格子内にピロロ[3,4−c]ピロール成分を約30重量%まで組み入れることが可能である。また、一般的に、キナクリドンキノン結晶格子の中に、三成分系固溶体の一部として第3成分を20重量%まで、好ましくは14重量%まで組み入れることができる。
【0013】
さらに本発明は、前記三成分系固溶体を含有する顔料組成物にも関する。この顔料組成物は通常上記三成分系固溶体と、該固溶体の成分のうちの1つまたはそれ以上の成分の過剰、特にピロロ[3,4−c]ピロール成分の過剰とを含有する混合物である。さらに、本発明の顔料組成物は、本三成分系固溶体と付加的成分たとえば組織改良剤、フロキュレーション防止剤または粘度調節剤とを含有する組成物を包含する。
任意の組織改良剤が、本発明の顔料組成物の付加的成分として使用できる。特に適当なものはアビエチン酸のカルシウム塩である。
付加成分のフロキュレーション防止剤として適当なものは、キナクリドンスルホン酸またはその塩、DPPスルホン酸およびその塩、ピラゾリルメチルキナクリドン、2−フタルイミドオメチルキナクリドンおよび類似の他の誘導体である。
付加成分の粘度調節剤は、適当なものとして次の化合物が例示される:
キナクリドンスルホン酸、
ジケトピロロピロールスルホン酸、
ピラゾリルメチルキナクリドン、
ピラゾリルメチルジケトピロロピロール、
ジメチルアミノプロピルキナクリドンモノスルホンアミド、
ジメチルアミノプロピルキナクリドンジスルホンアミド、
フタルイミドメチルキナクリドン、
および上記化合物の塩および混合物。
【0014】
上記した三成分系固溶体のほかに、さらに本発明は、上記三成分系固溶体の3つの成分のほかにさらにキナクリドン成分を含有する四成分系固溶体にも関する。すなわち、本発明は、キナクリドンキノン成分40乃至96重量%、キナクリドン成分1乃至45重量%、ピロロ[3,4−c]ピロール成分2乃至30重量%、および2−アニリノアクリドン、5、6、7、8−テトラヒドロ−2−アニリノアクリドン、2−フェノキシアクリドン、5、6、7、8−テトラヒドロ−2−フェノキシアクリドンまたはそれらの混合物であるアクリドン成分1乃至20重量からなる四成分系固溶体にも関し、そのキナクリドンキノン成分は下記式の化合物であり
【化24】
Figure 0003737164
(式中
Rは水素、ハロゲンまたはC1-C4 アルキルであり、
xとyは互いに独立的に1または2である)、
そのキナクリドン成分は下記式の化合物であり
【化25】
Figure 0003737164
(各R"は互いに独立的に水素、ハロゲン、C1-C4 アルキルまたはトリフルオロメチルである)、
そのピロロ[3,4−c]ピロール成分は下記式の化合物であり
【化26】
Figure 0003737164
[式中、
各Ar は互いに独立的に式
【化27】
Figure 0003737164
{式中、R1とR2とは互いに独立的に水素、ハロゲン、C1-C5 アルキル、C1-C5 アルコキシ、−SR3(ここにおいて、R3はC1-C5 アルキルである)、−N(C1-C5 アルキル)2 、−CF3 または−CNである}のアリール置換基、あるいは式
【化28】
Figure 0003737164
{式中、R4とR5とは互いに独立的に水素、ハロゲン、C1-C5 アルキル、C1-C5 アルコキシ、−SR3(ここにおいて、R3はC1-C5 アルキルである)または−CNである}の置換基である]、
そのアクリドン成分は下記式の化合物
【化29】
Figure 0003737164
または下記式の化合物
【化30】
Figure 0003737164
(式中、
AはOまたはNHであり、
R'は水素、ハロゲンまたはC1-C4 アルキルである)である。
【0015】
特に好ましい四成分系固溶体は、Rが水素、塩素またはメチルであり、各R"が水素または塩素であり、R1とR2とがそれぞれ水素であり、各R'が水素であるものであり、とりわけRが水素であり、かつ各R"が水素であるものである。
一般的に、上記の四成分系固溶体は、ホスト分子であるキナクリドンキノンのX線回折図を有するゲスト−ホスト固溶体である。
【0016】
本発明の1つの実施態様においては、本四成分系固溶体はキナクリドンキノン成分を40乃至60重量%、キナクリドン成分を20乃至40重量%、ピロロ[3,4−c]ピロール成分を10乃至25重量%含有し、残分がアクリドン成分である。特に好ましいのは、キナクリドンキノン成分を40乃至50重量%、キナクリドン成分を30乃至40重量%、ピロロ[3,4−c]ピロール成分を10乃至20重量%を含有する四成分系固溶体である。
【0017】
さらに本発明は、上記の四成分系固溶体を含有する顔料組成物をも包含する。一般的に、本顔料組成物は、固溶体の4つの成分のうちの1つの過剰を含有する混合物である。好ましくは、その過剰成分はピロロ[3,4−c]ピロール成分である。さらに、この顔料組成物は、三成分系固溶体の顔料組成物に関して前記した付加的成分を含有する。
【0018】
三成分系固溶体の場合も四成分系固溶体の場合も、第3成分またはアクリドン成分を約3乃至約15重量%使用するのが好ましい。一般的に、第3成分またはアクリドン成分の濃度が高いほど、その固溶体の光安定性は高い。しかしながら、その光安定効果は約7乃至10重量%の範囲で横ばいになる。
第3成分またはアクリドン成分として5、6、7、8−テトラヒドロ−2−アニリノアクリドンを含有する固溶体は、特に良好な色彩度とレオロジー特性とを示す。
【0019】
本発明の固溶体および顔料組成物は、上記成分から出発して固溶体製造のために当該技術分野において常用されている方法によって、たとえば、酸沈殿によって、あるいは各成分の混合物を摩砕することによって製造することができる。
酸沈殿法によって固溶体を製造するためには、固溶体の複数成分を1つの酸、一般的には濃度の高い酸、たとえば濃硫酸またはポリリン酸に溶解する。このあと、水または他の適当な沈殿溶剤を用いて希釈して固溶体を沈殿させる。この方法によって得られた固溶体は、通常高度に凝集しており、そして粒度は非常に小さい。したがって、酸沈殿法によって製造された固溶体は、たとえば、有機溶剤の存在下または不存在下において、その顔料の水性懸濁物を加熱することによってしばしば再結晶される。酸沈殿によって製造されたこの顔料は、場合によってはさらに結晶成長工程にかけられる。この結晶の成長は、顔料技術の分野において公知の技術により各種界面活性剤および/または有機溶剤によって促進される。
【0020】
摩砕法もまた本固溶体の製造に使用され、場合によっては摩砕後に、当該技術分野において公知の方法によって水および/または溶剤中での結晶工程が付加される。少量の有機溶剤を加えてまたは加えないで、摩砕媒質として乾燥塩類を使用する摩砕方法が好ましい。さらに付加的に、たとえば、金属、ガラスまたはセラミックの玉、プラスチック製の顆粒または砂粒のごとき摩砕助材が通常使用される。摩砕に使用する乾燥塩類の例は、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウムまたは硫酸アルミニウムであり、これは結晶水を含有していても、していなくてもよい。たとえば、上記固溶体成分の混合物の10部当り、40部の水和硫酸アルミニウムが使用される。場合によっては、摩砕の処方にさらに少量の各種溶剤、たとえば高沸点炭化水素または二塩基エステル、特に、コハク酸ジメチルおよび/またはグルタール酸ジメチルを含ませることができる。さらに、場合によっては、摩砕処方に界面活性剤を加えることもできる。適当な界面活性剤は、ドデシルベンゼンスルホン酸のナトリウム塩またはイソプロピルアンモニウム塩、あるいはデシルトリメチルアンモニウムクロライドである。摩砕完了後、混合物の仕上操作を行う。すなわち、固溶体と塩との混合物を摩砕助材から分離し、次いで希薄酸を用いて抽出し、そして固溶体または組成物を濾別する。
【0021】
さらに本発明は、有機高分子材料の着色方法にも関し、その方法は、有機高分子材料に、上記の三成分系または四成分系固溶体の有効着色量と顔料組成物とを配合することを包含する。有効着色量は通常約0.01重量%から約30重量%までの範囲の量である。適当な有機高分子材料の例は、セルロースエーテル、セルロースエステル、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリアミド、ポリシクロアミド、ポリイミド、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、ポリビニルハライド、ポリテトラフルオロエチレン、アクリリポリマー、メタクリルポリマー、ゴム、シリコーンポリマー、フェノール/ホルムアルデヒド樹脂、メラミン/ホルムアルデヒド樹脂、尿素/ホルムアルデヒド樹脂、エポキシ樹脂、ジエンゴムおよびこれらの共重合体である。
以下、本発明の実施例を記載する。これらの実施例は本発明を説明するためのものであって、本発明を限定するものではない。実施例中の部はすべて重量部である。
【0022】
実施例1
濃硫酸(400ml)を入れた1000ml容の丸底フラスコをおだやかに撹拌し、温度を35℃以下に保持しながら、2−アニリノアクリドン(1.7g,0.006モル)とDPP(8.6g,0.03モル)とを添加する。次に、温度を35℃に保持してキナクリドンキノン(42.8g,0.125モル)を添加する。得られた溶液を0.5時間撹拌し、そのあとキナクリドン(34.2g,0.11モル)を添加する。この全反応混合物を、さらに1時間撹拌する。次に、この溶液を激しく撹拌しながら薄層流として氷水中に注入する。得られたスラリーを70℃において1時間撹拌し、界面活性剤(Witconate P-1059,3.5g)を用いて処理し、続いて1時間90℃に加熱する。このスラリーを熱時に濾過し、中性となるまで熱水で洗い、80℃において乾燥する。
これにより得られた栗色(maroon) 固溶体顔料は、ホスト分子であるキナクリドンキノンのX線パターンを有し、耐光堅牢性が良好であった。
【0023】
実施例2
実施例1に記載した方法によって、ただし今回は下記量の成分を使用して、キナクリドンキノン/キナクリドン/DPP/アニリノアクリドンが44/39/15/2の組成の固溶体顔料を製造した。
キナクリドンキノン 44.0g 0.129モル
キナクリドン 39.0g 0.125モル
DPP 15.0g 0.052モル
2−アニリノアクリドン 2.0g 0.007モル。
この固溶体顔料は濃い栗色を示し、キナクリドンキノンのX線パターンと良好な耐光堅牢性とを有していた。
【0024】
実施例3
濃硫酸(400ml)を入れた1000ml容の丸底フラスコをおだやかに撹拌し、温度を40℃以下に保持しながら、2−アニリノアクリドン(7.2g,0.025モル)とDPP(11.1g,0.039モル)とを添加する。次に、同じ温度を保持して、キナクリドンキノン(45.4g,0.133モル)を添加する。得られた溶液を2.0時間撹拌し、そのあと激しく撹拌しながら薄層流として氷水中に注入する。得られた顔料スラリーを70℃において0.5時間撹拌する。このあと、そのスラリーを90℃に加熱し、この温度に1時間保持する。熱時に濾過し、中性となるまで熱水で洗い、80℃において乾燥する。
これにより得られた固溶体顔料は、ホスト分子であるキナクリドンキノンのX線パターンを有していた。アルミフレークまたはマイカ伸展自動車用塗料系内において、この固溶体顔料は良好な耐光堅牢性を有する明るく(saturated) 透明なオレンジ色を示した。
【0025】
実施例4
摩砕材として鋼玉(1500g,直径1.2cm)と釘(150g,長さ3.0cm)とを入れた1000ml容のボールミルに、キナクリドンキノン(8.0g),DPP(2.0g),2−アニリノアクリドン(1.1g),ジメチル・グルタレート(1.0g)、硫酸アルミニウム(Al2(SO4)3 ・15-18H2O;40g)を加える。このミルを密閉し、そしてローラーミルに載せて48時間回転させる。このあと、ミルの内容物を排出し、そして摩砕材を分離する。得られたミル粉末を、硫酸の2%水溶液(500ml)と共に90℃において2時間撹拌する。得られた顔料スラリーを濾過し、中性となるまでかつ塩類がなくなるまで熱水で洗い、80℃において乾燥する。
これにより得られた固溶体顔料は透明オレンジ色を呈し、耐光堅牢性が良好であり、そしてホスト分子であるキナクリドンキノンのX線パターンを有していた。
【0026】
実施例5
摩砕時間を48時間から24時間に、そして2−アニリノアクリドンの量を1.1gから0.7gに変更して、実施例4をくり返した。得られた固溶体顔料は、キナクリドンキノンのX線パターンを有していた。ハイソリッド自動車用塗料系内において、この固溶体顔料は高い彩度、優れたツー・トーン効果ならびに良好な耐光堅牢性を示した。
【0027】
実施例6
(a)実施例5と同様にして、キナクリドンキノンの77.6部、DPPの19. 4部および2−アニリノアクリドンの3部を含有する固溶体を製造した。
(b)実施例5と同様にして、キナクリドンキノンの76部、DPPの19部および2−アニリノアクリドンの5部を含有する固溶体を製造した。
(c)実施例5と同様にして、キナクリドンキノンの74.4部、DPPの18. 6部および2−アニリノアクリドンの7部を含有する固溶体を製造した。
上記実施例6a,6b,6cおよび5の固溶体顔料を擦って観察したところ、2−アニリノアクリドンの量が増加するにつれて、より濃い、そしてより透明なマストーン(masstone)を示した。
【0028】
実施例7
(a)2−アニリノアクリドンの量を0.7から0.6gに変更して実施例5をくり返した。
(b)2−アニリノアクリドンの量を0.7から0.8gに変更して実施例5をくり返した。
(c)2−アニリノアクリドンの量を0.7から1.0gに変更して実施例5をくり返した。
(d)2−アニリノアクリドンの量を0.7から1.2gに変更して実施例5をくり返した。
得られた顔料は,いずれもキナクリドンキノンのX線パターンを有する完全な固溶体であった。
【0029】
実施例8
(a)2−アニリノアクリドンの代わりに5、6、7、8−テトラヒドロ−2−アニリノアクリドンの0.6gを使用して実施例7aをくり返した。
(b)2−アニリノアクリドンの代わりに5、6、7、8−テトラヒドロ−2−アニリノアクリドンの0.8gを使用して実施例7bをくり返した。
(c)2−アニリノアクリドンの代わりに5、6、7、8−テトラヒドロ−2−アニリノアクリドンの1.0gを使用して実施例7cをくり返した。
(d)2−アニリノアクリドンの代わりに5、6、7、8−テトラヒドロ−2−アニリノアクリドンの1.2gを使用して実施例7dをくり返した。
得られた固溶体は、すべてハイソリッド塗料系内において優れたカラー彩度およびミルベース粘度を示した。
【0030】
実施例9
実施例4をくり返した。ただし、摩砕時間を48時間からわずか24時間に短縮し、そして以下の量の成分を使用した。
2−アニリノアクリドン 0.6g
DPP 4.0g
キナクリドンキノン 6.0g
得られた顔料は、キナクリドンキノンのX線パターンを有する固溶体と、固溶体には組み込まれなかった過剰のDPPとの混合物であった。
【0031】
実施例10
(a)2−アニリノアクリドンの代わりに5、6、7、8−テトラヒドロ−2−フェノキシアクリドンの0.6gを使用して実施例7aをくり返した。
(b)2−アニリノアクリドンの代わりに5、6、7、8−テトラヒドロ−2−フェノキシアクリドンの0.8gを使用して実施例7bをくり返した。
(c)2−アニリノアクリドンの代わりに5、6、7、8−テトラヒドロ−2−フェノキシアクリドンの1.0gを使用して実施例7cをくり返した。
(d)2−アニリノアクリドンの代わりに5、6、7、8−テトラヒドロ−2−フェノキシアクリドンの1.2gを使用して実施例7dをくり返した。
いずれの場合も、良好な堅牢性を有する固溶体顔料を得た。
【0032】
実施例11
(a)2−アニリノアクリドンの代わりに2−フェノキシアクリドンの0.6gを使用して実施例7aをくり返した。
(b)2−アニリノアクリドンの代わりに2−フェノキシアクリドンの0.8gを使用して実施例7bをくり返した。
(c)2−アニリノアクリドンの代わりに2−フェノキシアクリドンの1.0gを使用して実施例7cをくり返した。
(d)2−アニリノアクリドンの代わりに2−フェノキシアクリドンの1.2gを使用して実施例7dをくり返した。
いずれの場合も、良好な堅牢性を有する固溶体顔料を得た。
【0033】
実施例12
顔料分散物
1パイントジャーに、実施例5の顔料組成物26.4g,アクリロウレタン樹脂66.0g,分散剤樹脂14.4g,溶剤(シンナー)58.2gを装填する。この混合物を、摩砕材980gを使用して、64時間摩砕して顔料/バインダー比が0.5で顔料16%、固形分48%を含有するミルベースを製造する。
アルミニウムベース
アルミニウムペースト(SPARKLE SILVER 5242-AR, SILVERLINE社製品)405gを、アクリル分散樹脂315gおよびアクリル樹脂180gと共に1クォート缶内において、エヤーミキサーを使用して低乃至中速度で、塊がなくなるまで(1乃至2時間)混合してアルミニウムベースを製造する。
メタリッククリアー溶液
非水性分散樹脂(1353g),メラミン樹脂(786.2g)、キシレン(144.6g),紫外線遮断剤溶液(65.6g),アクリロウレタン樹脂(471.6g)を、この順序で順次加え、エヤーミキサーを用いて15分間よく混合する。酸触媒のプレミックス溶液89.0gとメタノール90.0gとを、混合を続けながら添加する。
メタリック塗料調合物
顔料分散物35.5g,アルミニウムベース5.1g,非水性分散樹脂5.3g,メタリッククリアー溶液54.1gを混合して、顔料/バインダー比が0.15である顔料7.1%と固形分54.4%とからなる下塗り塗料を調製する。
灰色アクリルプライマーで処理したアルミニウムパネルに、乾燥膜厚ベースで15乃至20ミクロンの塗膜厚さになるように、上記の下塗り塗料を2回スプレー塗布した。2回のスプレーの間に室温において90秒のフラッシュの間隔をおいた。3分間のフラッシュ時間経過後、乾燥膜厚ベースで37乃至50ミクロンの塗膜厚さになるようにアクリルクリアー上塗り塗料を2回スプレー塗布した(2回のスプレー塗布の間に90秒のフラッシュ)。パネルを室温において10分間乾燥したあと、120℃において30分間焼き付けた。
すばらしいツー・トーン効果を示し、耐光堅牢性の良好な魅力あるオレンジ色のコーティングを得た。実施例5の顔料の代わりに実施例6(a)−(c),8(a)−(d),9,10(a)−(d),11(a)−(d)の顔料を使用した場合にも同様なコーティングを得た。
【0034】
実施例13
顔料分散物
セラミック摩砕材1300gを含む100ml容のアトライターに、実施例5の顔料組成物45.5g,アクリル樹脂45.5gおよび脱イオン水259.0gを装填する。この調合物を500rpm の速度で20時間撹拌して、顔料/バインダー比が0.5で顔料13%、固形分26%を含有する顔料分散物を製造する。
アルミニウムベース
アルミニウムペースト40.0g,メラミン樹脂10.0gおよびブチルセロソルブの50.0gを、塊がなくなるまで混合する。
下塗り塗料調合物
顔料分散物46.3g,アルミニウムベース4.3g、およびバランス・クリヤー(balancing clear) 56.7gと補償クリヤー(compensation clear)(これはアクリル樹脂とメラミン樹脂との混合物である)45.8gとの組み合わせを混合して下塗り塗料を調製する。この調合物は顔料/バインダー比0.25に相当する。
灰色アクリルプライマーで前処理したアルミニウムパネルに、適当な隠ぺいレベルまで上記下塗り塗料をスプレー塗布した。この下塗りを30分間自然乾燥し、そして次にクリヤーコートを塗布する前に106℃において15分間乾燥した。このあと、クリヤーコートを2回塗布し、60分間自然乾燥した後、122℃において30分間焼き付けた。
すばらしいツー・トーン効果、高度の光沢および鮮明度光沢(鮮映性)を示す魅力的な濃色を有するコーティングを得た。実施例5の顔料の代わりに実施例6(a)−(c),8(a)−(d),9,10(a)−(d),11(a)−(d)の顔料を使用した場合にも同様なコーティングが得られた。
上記実施例のほかに、本発明にしたがって、これら実施例の各種の変更が可能である。

Claims (5)

  1. キナクリドンキノン成分50乃至97重量%、ピロロ[3,4−c]ピロール成分2乃至30重量%、および2−アニリノアクリドン、5、6、7、8−テトラヒドロ−2−アニリノアクリドン、2−フェノキシアクリドン、5、6、7、8−テトラヒドロ−2−フェノキシアクリドンまたはそれらの混合物である第3成分1乃至20重量からなる三成分系固溶体であって、
    上記キナクリドンキノン成分は下記式の化合物であり
    Figure 0003737164
    (式中、
    Rは水素、ハロゲンまたはC-C アルキルであり、
    xとyとは互いに独立的に1または2である)、
    上記ピロロ[3,4−c]ピロール成分は下記式の化合物であり
    Figure 0003737164
    [式中、
    各Ar は互いに独立的に式
    Figure 0003737164
    {式中、RとRとは互いに独立的に水素、ハロゲン、C-C アルキル、C-C アルコキシ、−SR(ここにおいて、RはC-C アルキルである)、−N(C-C アルキル) 、−CF または−CNである}のアリール置換基、あるいは式
    Figure 0003737164
    {式中、RとRとは互いに独立的に水素、ハロゲン、C-C アルキル、C-C アルコキシ、−SR(ここにおいて、RはC-C アルキルである)または−CNである}の置換基である]、
    上記第3成分は下記式の化合物、
    Figure 0003737164
    または下記式の化合物
    Figure 0003737164
    (式中、
    AはOまたはNHであり、
    R'は水素、ハロゲンまたはC-C アルキルであり、xとyとは互いに独立的に1または2である)である三成分系固溶体。
  2. 請求項1に記載の固溶体を含有する顔料組成物。
  3. キナクリドンキノン成分40乃至96重量%、キナクリドン成分1乃至45重量%、ピロロ[3,4−c]ピロール成分2乃至30重量%、および2−アニリノアクリドン、5、6、7、8−テトラヒドロ−2−アニリノアクリドン、2−フェノキシアクリドン、5、6、7、8−テトラヒドロ−2−フェノキシアクリドンまたはそれらの混合物であるアクリドン成分1乃至20重量からなる四成分系固溶体であって、
    上記キナクリドンキノン成分は下記式の化合物であり
    Figure 0003737164
    (式中、
    Rは水素、ハロゲンまたはC-C アルキルであり、
    xとyとは互いに独立的に1または2である)、
    上記キナクリドン成分は下記式の化合物であり
    Figure 0003737164
    (各R"は互いに独立的に水素、ハロゲン、C-C アルキルまたはトリフルオロメチルであり、xとyとは互いに独立的に1または2である)、
    上記ピロロ[3,4−c]ピロール成分は下記式の化合物であり
    Figure 0003737164
    [式中、
    各Ar は互いに独立的に式
    Figure 0003737164
    {式中、RとRとは互いに独立的に水素、ハロゲン、C-C アルキル、C-C アルコキシ、−SR(ここにおいて、RはC-C アルキルである)、−N(C-C アルキル) 、−CF または−CNである}のアリール置換基、あるいは式
    Figure 0003737164
    {式中、RとRとは互いに独立的に水素、ハロゲン、C-C アルキル、C-C アルコキシ、−SR(ここにおいて、RはC-C アルキルである)または−CNである}の置換基である]、
    上記アクリドン成分は下記式の化合物
    Figure 0003737164
    または下記式の化合物
    Figure 0003737164
    (式中、
    AはOまたはNHであり、
    R'は水素、ハロゲンまたはC-C アルキルであり、xとyとは互いに独立的に1または2である)である四成分系固溶体。
  4. 請求項3に記載の四成分系固溶体を含有する顔料組成物。
  5. 有機高分子材料に、請求項1に記載の三成分系固溶体の有効着色量を配合することを特徴とする有機高分子材料の着色方法。
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