JP3678776B2 - キナクリドン固溶体の顔料合成方法 - Google Patents

キナクリドン固溶体の顔料合成方法 Download PDF

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Description

【0001】
キナクリドン系列の化合物およびそれらの顔料特性は公知である。顔料キナクリドンは、その親化合物、キナクリドンおよび各種のジ置換キナクリドンを包含する。
さらに、いくつかのキナクリドンの組合わせの固溶体顔料が、その向上された光化学的安定性と熱安定性との故に公知である。ここに参考文献として組み入れている米国特許第3160510号は、いくつかの固溶体の現象、それらのX線回折図および製造方法を記載している。
顔料の技術分野においては、置換されていない、および置換されたキナクリドン顔料が、対応するジヒドロキナクリドンの酸化によって製造できることが公知である。粗製キナクリドンとして知られるかかる酸化の生成物は、一般にその粒子サイズが大きいので顔料として使用するのに不適当である。したがって、粗製顔料は、必要な顔料特性、たとえば粒径、粒子形状、多形結晶相および着色力、を発現させるためにさらに処理することが必要である。
【0002】
通常、粗製キナクリドンは次のような方法で顔料型に転化される。すなわち、粗製キナクリドンを大量の無機塩と共に摩砕し、得られた摩砕粉末を抽出するか、またはその顔料を大量の濃硫酸に溶解し、そしてその溶液を水浸しにする(酸ペースティング)のである。一般に、これらの多工程法は酸性環境中において高められた温度で種々異なる操作を実施する必要があるので、より簡単で経済的な顔料キナクリドンの製造方法が強く望まれていた。
顔料キナクリドン固溶体も、通常手間のかかる多工程法によって製造される。1つの方法は粗製成分を濃硫酸中に溶解し、次に高度の乱流下において水に浸して固溶体を沈殿させ、そのあと高められた温度において熟成させる方法である。また、キナクリドンの顔料固溶体は種々の摩砕法によっても製造されている。
【0003】
本発明は、混合ジヒドロキナクリドン、すなわち1つの固溶体を形成しうる対応する複数のキナクリドン、を顔料組成物を生じさせるのに十分な量の粒子成長抑制剤の存在下において同時的に共酸化(co-oxidization) させた場合には、後からさらに粒径の縮小を行う必要なく、顔料キナクリドン固溶体が直接的に製造されるという発見に関する。この発見は、誠に驚くべきことである。なぜならば、酸化を粒子成長抑制剤の不存在において実施した場合、あるいはまた複数のジヒドロキナクリドンが同時的に共酸化されない場合には固溶体が形成されないからである。
本発明の方法は、種々の顔料キナクリドン固溶体の直接製造のための簡単で経済的に魅力があり、かつエコロジーの面からも有利で優れた手段を提供する。さらに、本発明の方法によって使用される工程は、顔料キナクリドン固溶体の製造のために現在使用されている手間のかかる多工程操作を不要にする。
【0004】
本発明のいま1つの特徴は、酸化が十分なる塩基性の媒質中で実施された場合、たとえば置換されていないジヒドロキナクリドンをγ−キナクリドン以外の多形結晶型へ酸化するために必要な条件下において、あるいはジ置換ジヒドロキナクリドン、特に2、9−ジクロロ−6、13−ジヒドロキナクリドンを酸化するために必要な条件下において酸化が実施された場合に、1%以上のフタルイミドメチルキナクリドン粒子成長抑制剤を使用してもジヒドロキナクリドンの酸化が阻止されないという発見である。米国特許第4197404号明細書から、2−フタルイミドメチルキナクリドンの加水分解生成物であるo−カルボキシベンズアミドメチルキナクリドンを粒子成長抑制剤として1%以上使用した場合には、β−ジヒドロキナクリドンのγ−キナクリドンへの酸化が阻止されることが知られていたから、本発明の反応条件下において、対応するキナクリドンへのジヒドロキナクリドンの酸化が、顔料生成物の直接的製造を実行するのに十分な量のフタルイミドメチルキナクリドン粒子成長抑制剤によって阻止されないということは誠に驚くべきことである。この発見によって、顔料α−キナクリドンの直接製造のためならびに顔料キナクリドン固溶体の直接製造のための粒子成長抑制剤としてフタルイミドメチルキナクリドンを使用することが可能となった。
【0005】
本発明の第一の目的は、顔料キナクリドン固溶体を製造するための改良された方法を提供することである。一般的に、本発明の方法は、付加的な粒子サイズ縮小の後処理の必要なしに、顔料型の固溶体を直接的に製造するために、粒子成長抑制剤の存在下における混合ジヒドロキナクリドンの同時的共酸化に関する。本発明のいま1つの目的はα−キナクリドンを直接顔料合成する方法を提供することである。
【0006】
本発明の方法の顔料生成物は、一般的に固溶体である。しかしながら、固溶体でないキナクリドン顔料混合物を製造することも可能である。顔料組成物の形態は、製造条件、原料物質の比率および性質に依存する。
【0007】
本発明の固溶体は、特定の比率の2種またはそれ以上のジヒドロキナクリドンから誘導されたほぼ純粋なキナクリドン固溶体を含む。さらに、飽和固溶体が生成される場合には、過剰な1つのキナクリドンが遊離形態で固溶体と組み合わさって存在する可能性がある。本願において、本発明の方法によって製造される固溶体は、1つの固溶体とその固溶体の少なくとも1つの成分の過剰分とを含有している顔料組成物をも包含する。このような顔料組成物は、該過剰キナクリドンに対応するジヒドロキナクリドンが、混合ジヒドロキナクリドンの酸化の間、固溶体に組み込み可能な量よりも過剰な量で存在した場合に製造される。一般的に、顔料固溶体に製造にかかわる記載は、それが適用可能である限り、かかる1つの固溶体とその固溶体の少なくとも1つの成分の過剰分とを含有している顔料組成物の製造にも適用されうる。
本明細書において顔料生成物の製造方法に関して使用されている『直接』または『直接的』という言葉は、付加的な粒径縮小後処理なしで、その顔料生成物の比表面積が顔料として使用するために適当な範囲内にあることを意味するものである。したがって、本明細書に開示されている直接製造法はさらに粒径を縮小するための後処理を不必要にする。
【0008】
本発明の方法は、任意の比率の固溶体形成可能な複数のキナクリドンの固溶体を直接製造するために使用される。本発明の方法は、置換されていないキナクリドンと少なくとも1種のジ置換キナクリドンとよりなる固溶体の製造のために特に有用である。
種々の比率で6、13−ジヒドロキナクリドンと2、9−ジクロロ−6、13−ジヒドロキナクリドンとを含有する各種組成物が、6、13−ジヒドロキナクリドンの酸化が阻害されることなく、1重量%以上のフタルイミドメチルキナクリドン粒子成長抑制剤の存在下において酸化されうる。したがって、付加的な粒径縮小の後処理の必要なしに、種々の割合でキナクリドンと2,9−ジヒドロキナクリドンとを含有する顔料固溶体が、1つの顔料型で製造されうる。
【0009】
本顔料固溶体の結晶度は、粒子成長抑制剤の添加量を変えることによって制御される。また、本顔料固溶体の色は、反応混合物中の複数のジヒドロキナクリドンの割合を変えることによって制御される。したがって、本発明の方法によって種々の固溶体顔料を製造することができる。
同じ方法は、置換されていないキナクリドンと各種のジ置換キナクリドンとの種々の組み合わせを含む各種の顔料固溶体、あるいは2種またはそれ以上のジ置換キナクリドンを含有する各種の固溶体を製造するのに使用される。キナクリドンと少なくとも1種のジ置換キナクリドンとの組み合わせを含有する固溶体は、顔料として使用するのにきわめて好適である。適当なジ置換キナクリドンには以下のものがある:
4,11−ジクロロ−キナクリドン、
4,11−ジフルオロ−キナクリドン、
4,11−ジメチル−キナクリドン、
2、9−ジメチル−キナクリドン、
2、9−ジクロロ−キナクリドン、
2、9−ジフルオロ−キナクリドン。
それ故、本発明の方法は、少なくとも2種のキナクリドン、好ましくは置換されていないキナクリドンと少なくとも1種のジ置換キナクリドンとを含有する顔料固溶体を製造する一般的方法を提供する。
【0010】
したがって、本発明は顔料キナクリドン固溶体を直接的に製造する一般的方法に関し、本発明の方法は複数のジヒドロキナクリドンの混合物を顔料キナクリドン固溶体へ酸化する工程を包含し、その酸化は該ジヒドロキナクリドン混合物、アルカリ金属水酸化物、水溶性有機溶剤、水、有効量の酸化剤および粒子成長抑制剤を含有する反応混合物を加熱することによって実施される。好ましくは、該ジヒドロキナクリドン混合物は、6、13−ジヒドロキナクリドンと少なくとも1種のジ置換ジヒドロキナクリドンとを適当な比率で含有する。
【0011】
完全な固溶体を形成するために、粒子成長抑制剤は反応混合物中に存在しなければならない。たとえば、6、13−ジヒドロキナクリドンを60%と2、9−ジクロロ−6、13−ジヒドロキナクリドンを40%含有する反応混合物を粒子成長抑制剤の存在下において酸化すると、他の公知方法で製造されたキナクリドンと2、9−ジクロロキナクリドンとの60/40固溶体の独特な固体化合物X線回折図を有する生成物が製造される。しかしながら、同じ酸化を粒子成長抑制剤の不存在下において実施した場合には、得られる顔料は、そのX線回折図が示すように、固溶体ではなく化学的混合物である。したがって、粒子成長抑制剤は固溶体の形成ならびにその顔料特性の両方にとって不可欠なものである。
【0012】
混合ジキドロキナクリドンの同時的共酸化も、固溶体または固体化合物の生成のための必要条件である。たとえば、反応混合物が、混合ジキドロキナクリドンではなく、小粒径のキナクリドンと2、9−ジクロロ−6、13−ジヒドロキナクリドンとを含有している場合には、酸化によって固溶体が生成することはない。
すなわち、本発明は、複数のキナクリドンの顔料固溶体が有効量の粒子成長抑制剤の存在下における混合ジヒドロキナクリドンの同時的に共酸化によって直接的に生成されるという発見に関している。粒子成長抑制剤の有効量は、顔料として使用するために適当な表面積を有する粒子を直接的に製造するために十分な量を意味する。
【0013】
粒子成長抑制剤は、本酸化反応によって製造される粒子の成長を遅らせ、そして最終的に成長を抑止する化合物である。このような化合物は、顔料の技術分野においては公知である。粒子成長抑制剤によって実行される顔料粒子の緩行成長が、固溶体の形成を促進すると考えられる。なぜならば、最初に小粒子が生じそして加熱期間中ゆっくりと熟成可能であった場合に、混合キナクリドンが互いの中に溶解する機会が与えられるからである。
【0014】
好ましい粒子成長抑制剤は下記式Iのフタルイミドメチルキナクリドン化合物である。
【化3】
Figure 0003678776
(式中、
RとR’とは互いに独立的に水素、ハロゲン、C1-C5-アルキルまたはC1-C5-アルコキシであり、
mは0、1または2であり、そしてnは1または2である)。
置換分のハロゲンの例はフッ素、塩素、臭素であり、特に塩素が好ましい。アルキルおよびアルコキシ置換基の例はメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチルである。RとR’とが水素であり、nが1である式Iの化合物が好ましい。2−フタルイミドメチルキナクリドンが特に好ましい粒子成長抑制剤である。
【0015】
さらに、ジ置換ジヒドロキナクリドンの酸化のために採用されるアルカリ性反応条件下においては、いずれのフタルイミドメチルキナクリドン粒子成長抑制剤も開環アミドカルボキシレートアニオンへ少なくとも部分的に加水分解されうる。置換されていない場合について、下記反応図式はこの加水分解を示す。
【化4】
Figure 0003678776
【0016】
したがって、本発明は、式Iのフタルイミドメチルキナクリドン粒子成長抑制剤の加水分解生成物の存在下における混合ジヒドロキナクリドンの酸化にも関する。この加水分解生成物は、通常式Iのフタルイミドメチルキナクリドンの加水分解物に相当するo−カルボキシベンズアミドメチルキナクリドンの塩の形である。
本発明の方法において使用されるのフタルイミドメチルキナクリドン粒子成長抑制剤は公知方法によって、たとえば濃硫酸中においてキナクリドンをフタルイミドおよびパラホルムアルデヒドと反応させることによって製造することができる。参考文献としてここに組み入れる米国特許第3275637号明細書は、フタリイミドメチルキナクリドン粒子成長抑制剤の製造法を開示している。
【0017】
所望の粒径に応じて、粒子成長抑制剤をジヒドロキナクリドン混合物の重量に対して0.1%程度の少量から10%程度の多量まで使用することができる。粒子成長抑制剤を10重量%以上の量で存在させることもできるが、そのように10重量%以上の粒子成長抑制剤を使用しても有益な目的のために役立つことはない。特に重要なことは、顔料固溶体を直接的に生成するために有効な量の粒子成長抑制剤を使用することである。
【0018】
各種の粒径および透明度を有する種々な顔料を得るために必要な式Iのフタルイミドメチルキナクリドンの量は、1重量%以上、たとえば1.1重量%から約10重量%までの範囲である。顔料固溶体を製造するためにジヒドロキナクリドン混合物の酸化中に加えられるべきフタルイミドメチルキナクリドンの好ましい添加量範囲は、顔料特性を有する固溶体を製造するために有効な最低必要量から約6重量%までの範囲、たとえば粒子成長抑制剤を2乃至約6重量%、3乃至約6重量%または約4乃至約6重量%の範囲で使用する。好ましくは約3重量%又は約4重量%乃至約6重量%である。最も適当なフタルイミドメチルキナクリドン粒子成長抑制剤の添加量の範囲は約5重量%までであり、たとえば、2乃至約5重量%または約3乃至約5重量%または約4乃至約5重量%の範囲である。
顔料生成物の表面積は、酸化の時に存在する粒子成長抑制剤の量に正比例し、生成物の表面積は、粒子成長抑制剤の使用量の増加と共に増加する。
顔料として使用するために固溶体が適当であるためには、反応生成物の表面積は少なくとも15m2/g 、そして90m2/g 程度はあるべきである。好ましくは表面積は約20乃至90m2/g 、最も好ましくは約30乃至70m2/g の範囲である。表面積は窒素吸収法または他の適当な方法で測定することができる。
【0019】
顔料固溶体へのジヒドロキナクリドン混合物の酸化は、次のようにして都合よく実施される。2種またはそれ以上のジヒドロキナクリドン、水、水溶性有機溶剤およびアルカリ金属水酸化物を含有するスラリーを撹拌して反応混合物を形成する。この反応混合物は、その混合物中のすべてのジヒドロキナクリドンが二アルカリ金属塩を形成するように十分に塩基性でなければならない。ジヒドロキナクリドンのアルカリ金属塩が形成された後、酸化剤をこの混合物に添加する。次に、この混合物を加熱する。本発明の方法によれば、反応混合物は粒子成長抑制剤、好ましくは式Iのフタルイミドメチルキナクリドンを含有している。すなわち、本発明は、ジヒドロキナクリドン混合物、水と混和性の有機溶剤、アルカリ金属水酸化物、水、および有効量の酸化剤と粒子成長抑制剤、好ましくはフタルイミドメチルキナクリドン粒子成長抑制剤を含有する反応混合物を加熱することによってジヒドロキナクリドン混合物を対応するキナクリドンへ酸化する工程を包含する顔料キナクリドン固溶体の直接的製造方法に関する。
粒子成長抑制剤は、酸化剤の添加前の任意の時点で添加すれば有効である。一般的には、ジヒドロキナクリドンと一緒に粒子成長抑制剤を添加するのが好都合である。
【0020】
有機溶剤は水と混和性であり、そして混合ジヒドロキナクリドンの塩の形成ならびにそれに続く混合ジヒドロキナクリドン塩の酸化を促進するのに有効である任意の溶剤である。好ましくは、この有機溶剤は水混和性アルコール、たとえばC1 −C3-アルコール、またはジヒドロキシ溶剤、たとえばエチレングリコールおよびそのモノエーテルである。メタノール、エタノールおよびすべてのプロパノールが適当なアルカノールである。最も好ましい有機溶剤はメタノールである。
上記有機溶剤は、ジヒドロキナクリドン塩の形成および可溶化を促進するために必要な量で存在させる。通常、有機溶剤は混合物中のジヒドロキナクリドン(複数)の重量の少なくとも3倍の量で存在するように使用する。たとえば、反応混合物中のジヒドロキナクリドン(複数)1部当たり約3.6乃至約4.8重量部の量で存在するようにする。もちろん、溶剤の必要量は多くのファクターに依存して変わる。たとえば、特定溶剤中でのジヒドロキナクリドンの溶解度、および使用されるアルカリ金属水酸化物の種類によって変わる。
【0021】
アルカリ金属水酸化物は、たとえば水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムであり、水酸化カリウムが好ましい。アルカリ金属水酸化物は一般に濃厚水溶液の形で添加される。しかしながら、固体アルカリ金属水酸化物も本反応混合物に添加するのに適当である。アルカリ金属水酸化物は、少なくとも反応混合物中に存在する複数のジヒドロキキナクリドンのすべての二アルカリ金属塩を形成するために必要な量だけ存在しなければならない。一般に、アルカリ金属水酸化物対混合物中のジヒドロキナクリドンのモル比は、少なくとも約7:1またはそれ以上,たとえば7:1乃至25:1、好ましくは8:1乃至16:1,最も好ましくは9:1乃至14:1である。たとえば、反応混合物は、ジヒドロキナクリドンの1部当り45%水酸化カリウムを約27乃至4.8重量部含有する。
一般的には、反応混合物は、混合ジヒドロキナクリドンのアルカリ金属塩の形成を促進し、かつ水溶性酸化剤を反応混合物中に溶液の状態で保持するために十分な量の水を含有する。通常は、アルカリ金属水酸化物溶液中に存在する水に加えて少量の水を添加する。ただし、アルカリ金属水酸化物が固体の形で添加された場合には、大量の水を添加する。
【0022】
酸化剤としては本反応条件下においてジヒドロキナクリドンを酸化することができる任意の酸化剤を使用することができる。好ましくは、酸化剤は水溶性化合物である。たとえば、多くの水溶性ニトロ置換芳香族スルホン酸またはカルボン酸が適当な酸化剤である。酸化剤は、ジヒドロキナクリドン混合物中のジヒドロキナクリドンの全部を完全に酸化させるために有効な量で存在しなければならない。
最も普通で最も好ましい酸化剤は、m−ニトロベンゼンスルホン酸の水溶性塩、最も好ましくはナトリウム塩である。酸化剤としてm−ニトロベンゼンスルホン酸ナトリウムが使用される場合には、通常それはジヒドロキナクリドン混合物1重量部当り0.5乃至1重量部の量で存在する。好ましい使用量範囲は、ジヒドロキナクリドン混合物1重量部当り約0.5乃至約0.75重量部,最も好ましくは約0.6重量部である。
【0023】
酸化剤を添加した後、この混合物を50℃から還流温度までの範囲の温度に特定時間、通常約2乃至約8時間加熱する。好ましくは、反応混合物を約3時間還流下に加熱する。還流時間が長過ぎると望ましくない顔料結晶の成長が起こるので、還流時間は重要である。
酸化反応後の一般的仕上げ操作は、反応混合物を水またはメタノールで稀釈し、そして次に濾過して顔料固溶体を単離し、続いて濾液のpHが約8以下になるまで水洗する操作を包含する
本発明の方法によって製造された顔料は、公知の多工程法、たとえば粉砕/摩砕とそれに続く有機溶剤処理または酸ペースティングによって製造された対応する顔料に匹敵する。
【0024】
反応混合物中の複数のジヒドロキナクリドンの組成が、得られる顔料固溶体の色を制御する。好ましい組成は、置換されていないジヒドロキナクリドンと少なくとも1種のジ置換ジヒドロキナクリドンとを含有する反応混合物から得られる。
一般的には、置換されていないジヒドロキナクリドン対ジ置換ジヒドロキナクリドンの任意の比率を使用することができる。実際上は、置換されていないジヒドロキナクリドンは一般的にジヒドロキナクリドン混合物の約5乃至約70重量%の範囲で存在し、そしてジ置換ジヒドロキナクリドンは一般的にジヒドロキナクリドン混合物の約30乃至約95重量%の範囲で存在する。得られる顔料生成物が固溶体であるか、固体化合物であるか、あるいはキナクリドン成分のうちの1つの過剰分を含む顔料組成物になるかはジヒドロキナクリドン混合物の組成により決まる。
【0025】
酸化中に存在する粒子成長抑制剤の濃度が、得られる顔料生成物の粒径および/または表面積を左右する。たとえば、6、13−ジヒドロキナクリドンを10部と2、9−ジクロロ−6、13−ジヒドロキナクリドンを90部含有する反応混合物を、粒子成長抑制剤の量を変えて酸化すると、粒径が粒子成長抑制剤の量に逆比例する明らかな傾向が見られる。すなわち、粒子成長抑制剤の存在量を3%、4%、5%と変えて製造された顔料生成物は、それぞれ相互にマッストーン(masstone)の暗さと透明度が明らかに区別され、粒子成長抑制剤5%の存在下において製造された顔料生成物が最も暗く、そして最も透明である。
【0026】
固溶体の色は、反応混合物中のジヒドロキナクリドンの組成によってコントロールされる。たとえば、6、13−ジヒドロキナクリドンを10部から20部まで、そして2、9−ジクロロ−6、13−ジヒドロキナクリドンを90部から80部まで変えた場合、色は変化し、より黄色の方向にシフトされる。20/80の組成の場合、10/90の場合と同じ粒子成長抑制剤の濃度と粒径との関係を示し、そして類似したマッストーン暗度および透明度の傾向を示す。
【0027】
固溶体は、20%までの6、13−ジヒドロキナクリドンを使用し、残分は、たとえば2、9−ジクロロ−6、13−ジヒドロキナクリドンを使用し、そして粒子成長抑制剤3乃至5%の濃度で製造される。この方法により、X線回折図がγ−相2、9−ジクロロキナクリドンのものと一致する顔料固溶体が得られる。この組成物においては、各成分はゲスト分子−ホスト分子のように見える。そのホスト分子は明らかにそのγ−結晶相の2、9−ジクロロキナクリドンである。しかしながら、反応混合物中の6、13−ジヒドロキナクリドン対2、9−ジクロロ−6、13−ジヒドロキナクリドンの割合が45/55乃至70/30に設定された場合には、得られる顔料は固溶体のみでなく固体化合物をも含む。なぜならば、この時の生成物のX線回折図はキナクリドンのX線回折図とも、また2、9−ジクロロキナクリドンのX線回折図とも相違するからである。その他の組成範囲においては、固溶体とその固溶体中のキナクリドンの1つの過剰分とを含有する顔料組成物として特徴づけることのできるX線回折図が得られる。6、13−ジヒドロキナクリドンと2、9−ジクロロ−6、13−ジヒドロキナクリドンとの組み合わせを含有する反応混合物から得られた顔料は、その生成物が固溶体であれ、固体化合物であれ、あるいは固溶体または固体化合物とキナクリドンの1つの過剰分とを含有する顔料組成物であれ、顔料の諸性質を有している。同じ傾向が、2、9−ジクロロ−6、13−ジヒドロキナクリドンの代わりに他のジ置換ジヒドロキナクリドンを使用した場合にも見られる。
【0028】
顔料キナクリドン固溶体を直接的に製造する上記の方法のほかに、さらに本発明は顔料α−キナクリドンの直接製造方法にも関する。本方法は、6、13−キナクリドン、アルカリ金属水酸化物、水溶性有機溶剤、水および有効量の酸化剤と粒子成長抑制剤とを含有する反応混合物を加熱することによって6、13−ジヒドロキナクリドンを顔料α−キナクリドンへ酸化する工程を包含し、該粒子成長抑制剤は6、13−ジヒドロキナクリドンの重量を基準にして1重量%以上、たとえば約2乃至約10重量%の範囲の量で存在し、アルカリ金属水酸化物対ジヒドロキナクリドンのモル比が少なくとも4:1,好ましくは少なくとも8:1であり、そして該粒子成長抑制剤が下記式(I)の化合物またはその加水分解生成物であることを特徴とする:
【化5】
Figure 0003678776
(式中、
RとR’とは互いに独立的に水素、ハロゲン、C1-C5-アルキルまたはC1-C5-アルコキシであり、
mは0、1または2であり、
nは1または2である)。
この顔料α−キナクリドンの直接製造のために使用される反応条件は、すべて上記した顔料混合物の直接製造のための反応条件と同じである。
【0029】
本方法によって製造された顔料は、高分子有機材料を着色するための顔料としての使用に適している。本発明による生成物によって着色されうる高分子有機材料の例は、エチルセルロース、ニトロセルロース、酢酸セルロース、酪酸セルロースなどのセルロースエーテルおよびセルロースエステル類、天然または合成樹脂類、たとえば重合樹脂または縮合樹脂、たとえばアミノ樹脂、特に尿素/ホルムアルデヒド樹脂およびメラミン/ホルムアルデヒド樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエステル、ABS、ポニフェニレンオキシド、ゴム、カゼイン、シリコーンおよびシリコーン樹脂などであり、これらは単体または混合物の形で使用されうる。
上記に例示した高分子有機材料は単独または混合して、可塑性材料、溶融物、紡糸原液、ラッカー、ペイント、印刷インクなどの形態でありうる。本発明による顔料は、被着色高分子有機材料を基準にして、0.01乃至30重量%、好ましくは0.1乃至10重量%の量で使用される。
【0030】
高分子有機材料は、本発明の方法によって製造された顔料を使用して公知の方法で着色されうる。たとえば、本顔料を、場合によってはマスターバッチの形で、ロールミル、ミキサーまたは摩砕装置を使用して基質材料に配合することによって着色される。次に、着色された材料を公知方法、たとえば、カレンダー加工、プレス、押出し、ブラッシング、キャスティングまたは射出成形によって所望の最終形状に成形加工する。所望の場合には、非脆性成形品を製造するため、あるいは成形品の脆弱性を低減するために、成形前にその高分子有機材料に可塑剤を配合することができる。適当な可塑剤は、たとえばリン酸エステル、フタル酸エステル、セバシン酸エステルである。このような可塑剤は、本発明の固溶体を重合体に配合する前または後にその重合体に添加することができる。さらに、各種の色を得るために、本発明による顔料のほかに、さらにフイラーまたは他の色材成分、たとえば白色顔料、彩色顔料または黒色顔料を任意所望の量で高分子有機材料に添加することもできる。
【0031】
本発明の方法によって製造された顔料は、ポリ塩化ビニルおよびポリオレフィン類、たとえばポリエチレンおよびポリプロピレンの着色のために特に好適である。さらにまた、ラッカーおよびペイントの着色のため、特に自動車用トップコート塗料に配合するために好適である。これらの用途に使用された場合、本発明の方法によって製造された顔料は良好な全般的顔料特性を示す。たとえば、高い分散性、高い着色力および色純度、さらにまた優れたマイグレーション堅牢性、耐熱性、耐光堅牢性、耐候堅牢性を示す。
【0032】
以下、本発明の実施例を記載する。これらの実施例は本発明を説明するものであって本発明を限定するものではない。実施例中の部は、特に別途記載のない限り、すべて重量部である。本明細書において、2−フタルイミドメチルキナクリドン粒子成長抑制剤のパーセントは、すべてジヒドロキナクリドンの重量を基準にした重量%である。本明細書中の他のすべてのパーセントも、特に別途記載のない限り、すべて同じく重量%である。X線回折図のピークの高さの2分の1における幅(半値幅)、β1/2 は任意単位のものであり、相対的粒径を指示するために使用される。β1/2 が大きいほど粒径が小さいことを示す。
【0033】
実施例1
温度計と還流冷却器と撹拌器とを具備した2リットル容の四ツ口丸底フラスコに、6、13−ジヒドロキナクリドン(48.0g;0.153モル)、2、9−ジクロロ−6、13−ジヒドロキナクリドン(32.0g:0.084モル),2−フタルイミドメチルキナクリドン(4.0g,5重量%)およびメタノール(404ml)を装填する。撹拌しながら、このスラリーに、温度を60℃以下に保持しつつ、15分間かけて水酸化カリウム水溶液(318.8g,45%)を薄流として加える。そして、この混合物に、粉末m−ニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム(46g)を添加し、続いて水(52ml)を加える。この反応混合物を3時間還流加熱し、その後に水で稀釈してポット温度を60乃至65℃にする。得られた濃厚スラリーを濾過し、熱湯で洗う。この洗滌は濾液のpHが8以下、そしてその伝導率が洗滌水の110%以下となるまで行う。得られた顔料を80℃において乾燥し、そしてX線回折図、その6.0 2θピークの最大高さの半分における全幅β1/2 およびラブアウト(rubout) 評価によって特性化する。
X線回折図は、得られた顔料がキナクリドン対2、9−ジクロロキナクリドンの比が60:40である固体化合物であることを示した。6.0 2θにおけるピークのβ1/2 は0.516であった。ラブアウトによって本顔料は非常に魅力的な黄色がかったマゼンタ色を示した。
【0034】
比較例1a
2−フタルイミドメチルキナクリドンを除外した点を除き実施例1と同様に操作した。。
得られた顔料は固溶体ではなく、X線回折図は顔料混合物の特徴を示した。ラブアウトによって、この顔料は非常に鈍く、そして非常に淡かった。
【0035】
実施例2
粗製β−キナクリドン(468g)と無水硫酸ナトリウム(82.5g)とをミルに入れた。このミルをL字形アームで固定し、そして直径0.6cmのセラミック摩砕材3.78リットルを装填した。このミルを500rpm.で回転させた。摩砕終了後、回転を15分間続けながら、ミルの底の弁を開いて摩砕粉末を回収した。
【0036】
比較例2a
温度計と還流冷却器と撹拌器とを具備した1リットル容の四ツ口丸底フラスコに、実施例2で製造された予備摩砕したβ−キナクリドン(28.24g;実顔料24.0g),2、9−ジクロロ−6、13−ジヒドロキナクリドン(16.0g),2−フタルイミドメチルキナクリドン(2.0g:5.0重量%)およびメタノール(202ml)を装填する。撹拌しながら、このスラリーに温度を60℃以下に保持しつつ、水酸化カリウム水溶液(159.4g,45%)を薄流として添加する。この混合物を50乃至60℃において15分間撹拌する。次に、粉末m−ニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム(23g)を添加し、続いて水(26ml)を添加する。この反応混合物を3時間還流加熱し、そのあと水で稀釈してポット温度を60乃至65℃にする。得られた濃厚スラリーを濾過し、濾液のpHが8以下、そしてその伝導率が洗滌水の110%以下となるまで熱湯で洗滌する。得られた顔料を80℃において乾燥し、そしてX線回折図およびラブアウト評価によって特性化する。
本実施例によって製造された顔料は、60/40キナクリドン/2、9−ジクロロキナクリドン固溶体の特徴的X線回折図を示さなかった。それは複数の顔料の混合物のようであり、さらに固溶体ではない相当量のβ−キナクリドンの存在を示した。ラブアウトにより、この顔料は暗いマストーン(masstone) と黄色味を帯びた鈍いチント(tint)とを示した。
【0037】
実施例3
温度計と撹拌器と還流冷却器とを具備した1リットル容の四ツ口丸底フラスコに、6、13−ジヒドロキナクリドン(4.0g;0.0127モル)、2、9−ジクロロ−6、13−ジヒドロキナクリドン(36.0g;0.094モル),2−フタルイミドメチルキナクリドン(2.0g:5.0重量%)およびメタノール(202ml)を装填する。撹拌しながら、このスラリーに温度を60℃以下に保持しつつ、水酸化カリウム水溶液(159.4g,45%)を薄流として添加する。この混合物を50乃至60℃において15分間撹拌する。次に、粉末m−ニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム(23g)を添加し、続いて水(26ml)を添加する。この反応混合物を3時間還流加熱し、そのあと水で稀釈してポット温度を60乃至65℃にする。得られた濃厚スラリーを濾過し、濾液のpHが8以下、そしてその伝導率が洗滌水の110%以下となるまで熱湯で洗滌する。得られた顔料を80℃において乾燥し、そしてX線回折図、その27.82θにおけるピークのβ1/2 およびラブアウト評価によって特性化する。
本実施例によって製造された顔料は、γ−相2、9−ジクロロキナクリドンのX線回折図を示し、その27.82θにおけるピークのβ1/2 は0.704であった。そのラブアウト評価は魅力的な深いマストーンと強力なチントとを示し、それは特別仕上げ技術によって製造された同様市販顔料に匹敵するものであった。
【0038】
実施例4
温度計と撹拌器と還流冷却器とを具備した2リットル四ツ口丸底フラスコに、6、13−ジヒドロキナクリドン(16.0g;0.051モル)、2、9−ジクロロ−6、13−ジヒドロキナクリドン(64.0g:0.167モル),2−フタルイミドメチルキナクリドン(4.0g,5.0重量%)およびメタノール(404ml)を装填する。撹拌しながら、このスラリーに温度を60℃以下に保持しつつ、水酸化カリウム水溶液(318.8g,45%)を薄流として加える。この混合物を50乃至60℃において15分間撹拌し、そしてこれに粉末m−ニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム(46g)を添加し、続いて水(52ml)を加える。この反応混合物を3時間還流加熱する。このあと、仕上げと生成した顔料の特性化とを実施例3に記載したように実施する。
得られたキナクリドンと2、9−ジクロロキナクリドンとの20/80組成の固溶体はγ−2、9−ジクロロキナクリドンのX線回折図を示し、その27.82θにおけるピークのβ1/2 は0.772であった。ラブアウトの評価から、この顔料は実施例3によって製造された顔料ときわめて近い色の合致を示した。
【0039】
実施例5
実施例4に記載の操作に従って、6、13−ジヒドロキナクリドン(20.0g),2、9−ジクロロ−6、13−ジヒドロキナクリドン(60.0g)および2−フタルイミドメチルキナクリドン(4.0g)を使用して25/75組成の顔料を製造した。
得られた顔料はγ−相2、9−ジクロロキナクリドンのX線回折図を示し、その27.82θにおけるバンドのβ1/2 は0.711であった。ラブアウトによるこの顔料の評価は、実施例4によって製造された顔料よりかなり黄色が強く、鮮明な黄色がかったマゼンタ色を示した。
【0040】
実施例6
実施例4の操作に従って、6、13−ジヒドロキナクリドン(32.0g),2、9−ジクロロ−6、13−ジヒドロキナクリドン(48.0g)および2−フタルイミドメチルキナクリドン(4.0g)の酸化によって40/60組成の顔料を製造した。この生成物は、固溶体と過剰の2、9−ジクロロキナクリドンとの混合物であった。そのX線回折図の27.82θにおけるピークのβ1/2 は0.772であった。ラブアウトによりこの顔料は非常に魅力的な黄色がかったマゼンタ色を示した。
【0041】
実施例7
実施例4と同様に操作を実施した。ただし、今回は酸化中に2−フタルイミドメチルキナクリドンを4.0gでなく、2.4g使用した。得られた固溶体顔料は実施例4の場合と同様なγ−相2、9−ジクロロキナクリドンのX線回折図を示した。ただし、その27.82θにおけるピークのβ1/2 は0.621であり、実施例4のものよりも粒径の大きい顔料であることを示した。また、ラブアウトによるより明るいマストーンは、この顔料が実施例4の顔料に比較して粒径が大きいことを裏づけた。
【0042】
比較例8
温度計と撹拌器と還流冷却器とを具備した1リットル容の四ツ口丸底フラスコに、6、13−ジヒドロキナクリドン(40.0g;0.127モル)とメタノ−ル(210ml)とを入れる。撹拌しながら、このスラリーに温度を55℃以下に保持しつつ、水酸化ナトリウム水溶液(52.8g,50%)を加える。この混合物を50乃至55℃において1時間撹拌し、そしてこれに粉末m−ニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム(24g)を添加し、続いて水(27ml)を加える。この反応混合物を2時間還流加熱し、そのあと水で稀釈してポット温度を60乃至65℃にする。得られた濃厚スラリーを濾過し、濾液のpHが8.5以下、そしてその伝導率が洗滌水の110%以下となるまで熱湯で洗滌する。これにより得られた顔料を80℃において乾燥し、そしてX線回折図、その6.0 2θにおけるピークの最大長さの2分の1における全幅β1/2 およびラブアウト評価によって特性化する。
分析により、本キナクリドン生成物は純度が98.5%であることがわかった。 本例による粗生成物は、典型的β−キナクリドンのX線回折図を示し、その6.0 2θにおけるピークのβ1/2 は0.292であった。ラブアウトの評価から、この生成物は淡く鈍いマストーンおよび非常に弱いチントを示した。
【0043】
実施例9
比較例8と同様に操作を実施した。ただし、今回は2−フタルイミドメチルキナクリドンの0.8gを反応混合物に配合した。
得られた顔料は、α−キナクリドンに似たまったく異なるX線回折図を示した。その6.3 2θにおけるピークのβ1/2 は0.464であった。ラブアウトの評価では、この顔料はブリリアントな黄赤色マストーンおよび小粒子γ−キナクリドンと同等強度のより黄色い濃厚なチントを示した。分析結果はこのα−キナクリドン生成物が95.1%純度であることを示した。
【0044】
実施例10 塗料のための顔料調合
(A)実施例4により製造された顔料の湿潤パルプをキナクリドンモノスルホン酸のアルミニウム塩の湿潤剤パルプ(乾燥ベースで4重量%)と混合し、そして得られた顔料を単離し、乾燥し、粉末化して塗料組成物に使用する。
(B)顔料分散:
1パイント容のジャーに、上記(A)において製造された顔料26.4g,アクリロウレタン樹脂66.0g,分散剤樹脂14.4gおよび溶剤(シンナー)58.2gを装填する。この混合物を、摩砕材980gを使用して64時間摩砕して顔料対バインダー比が0.5であって、顔料16%、固形分48%を含有する顔料ベースをつくる。
(C)アルミニウムベース:
アルミニウムペースト(SPARKLE SILVER 5242-AR、 SIMBERLINE社製品)405gを1クォート容の缶に入れ、アクリル分散樹脂315gとアクリル樹脂180gとを加えてエヤーミキサーを使用して低速乃至中速でダマがなくなるまで(1乃至2時間)混合してアルミニウムベースをつくる。
(D)金属クリヤーコート液
非水性分散樹脂1353g,メラミン樹脂786.2g,キシレン144.6g,紫外線遮断剤溶液65.6g、アクリロウレタン樹脂471.6gを、記載した順序で添加し、そしてエヤーミキサーを用いて15分間よく混合する。溶液がよく配合されるのを保証するため、混合を続けながら酸触媒の予備混合液89.0gとメタノール90.0gとをゆっくりと添加する。
(E)金属塗料調合物:
上記の顔料ベース35.5g、アルミニウムベース5.1g,非水性分散樹脂5.3gおよび顔料対バインダー比0.15で、顔料7.1%と固形分54.4%とよりなる金属クリヤーコート54.1gを混合してベースコート塗料を調製する。
(F)灰色アクリルプライマーで処理されたアルミ板に、上記ベースコート塗料を2回スプレー塗布して、乾燥ベースで15乃至20ミクロンの厚さの塗膜を形成した。2回のスプレーは、室温において90秒のフラッシュの間隔をおいて行なった。3分間のフラッシュ後、アクリルクリヤートップコートを2回のスプレー塗布によって(塗布と塗布の間に90秒のフラッシュ)塗布した。塗膜の厚さは、乾燥ベースで37乃至50ミクロンであった。このアルミ板を室温において10分間乾燥し、そして120℃において30分間焼付けた。
得られた塗層は、すばらしいツー・トーン・カラーと優れた耐光堅牢性を有する審美的に好ましい魅力ある鮮明な色を呈示した。
【0045】
実施例11
温度計と撹拌器と還流冷却器とを具備した1リットル容の四ツ口丸底フラスコに、6、13−ジヒドロキナクリドン(4.0g;0.0127モル)、2、9−ジクロロ−6、13−ジヒドロキナクリドン(36.0g;0.106モル)、2−フタルイミドメチルキナクリドン(1.6g;4重量%)およびメタノ−ル(319ml)を装填する。撹拌しながら、このスラリーに温度を60℃以下に保持しつつ、水酸化カリウム水溶液(41.9g,45%)を薄流として、続いて固体水酸化カリウムの薄片(8.5g)を少しずつ加える。得られた濃厚スラリーを50乃至60℃において1時間撹拌する。この反応混合物に粉末m−ニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム(23.0g)を添加し、続いて水(26ml)を加える。この反応混合物を2時間還流加熱し、そのあと水で稀釈してポット温度を60乃至65℃にする。得られたスラリーを濾過し、濾液のpHが8.5以下、そしてその伝導率が洗滌水の110%以下となるまで熱湯で洗滌する。得られた顔料を80℃において乾燥し、そしてX線回折図およびその5.6 2θにおけるピークのβ1/2 によって特性化する。
本実施例による固溶体顔料は典型的なβ−相ジメチルキナクリドンのX線回折図を示し、その5.6 2θにおけるピークのβ1/2 は0.352であった。ラブアウトの評価は魅力的な濃い黄色がかったマゼンタ色を示した。
【0046】
実施例12
実施例11に記載した方法に従って、6、13−ジヒドロキナクリドンの10g、2、9−ジメチル−6、13−ジヒドロキナクリドンの30gおよび2−フタルイミドメチルキナクリドンの1.6gを使用して、キナクリドンと2、9−ジメチルキナクリドンの25/75固溶体を製造した。
得られた固溶体は実施例11のものと同様なX線回折図を示し、その5.6 2θにおけるピークのβ1/2 は0.358であった。ラブアウトの評価は実施例11の顔料よりも黄色でかつ濃かった。
【0047】
実施例13
実施例8に記載した方法に従って操作した。ただし今回は、6、13−ジヒドロキナクリドンの24g、4、11−ジクロロ−6、13−ジヒドロキナクリドンの16gおよび2−フタルイミドメチルキナクリドンの0.8gを使用した。
得られた、キナクリドンと4、11−ジクロロキナクリドンとの60/40固溶体は典型的なX線回折図を示し、その6.4 2θにおけるピークのβ1/2 は0.313であった。
【0048】
実施例14
実施例8に記載した方法に従って操作した。ただし今回は、6、13−ジヒドロキナクリドンの24g、4、11−ジフルオロ−6、13−ジヒドロキナクリドンの16gおよび2−フタルイミドメチルキナクリドンの0.8gを使用した。
得られた、キナクリドンと4、11−ジフルオロキナクリドンとの60/40固溶体は、それら2つの個々の成分のX線回折図とは相違するX線回折図を示した。ラブアウトで、この顔料は魅力的なスカーレット乃至オレンジ色を示した。
【0049】
実施例15
実施例8に記載した方法に従って操作した。ただし今回は、6、13−ジヒドロキナクリドンの30g、4、11−ジメチル−6、13−ジヒドロキナクリドンの10gおよび2−フタルイミドメチルキナクリドンの0.8gを使用した。
得られた75/25固溶体のX線回折図において、6.5 2θのピークのβ1/2 は0.354であった。ラブアウトで見て、この顔料はスカーレット乃至オレンジ色を示した。
【0050】
実施例16
実施例1に記載した方法に従って、ただし今回は、6、13−ジヒドロキナクリドンの24g、2、9−ジフルオロ−6、13−ジヒドロキナクリドンの16gおよび2−フタルイミドメチルキナクリドンの0.8gを使用して、キナクリドンと2、9−ジフルオロキナクリドンとの60/40固溶体を製造した。
得られた固溶体顔料は2、9−ジフルオロキナクリドンの典型的X線回折図を示した。ラブアウトで、この顔料は魅力的な黄色がかったマゼンタ色を示した。

Claims (4)

  1. 顔料キナクリドン固溶体の直接製造方法において、ジヒドロキナクリドンの混合物を顔料キナクリドン固溶体へ直接的に酸化する工程を包含し、該ジヒドロキナクリドン混合物、アルカリ金属水酸化物、 1 −C 3 アルコールまたはエチレングリコールまたはそのモノエーテル、水、有効量の酸化剤および粒子成長抑制剤を含有するスラリーである反応混合物を加熱することによって酸化を行なうことを特徴とする方法。
  2. 該粒子成長抑制剤が下記式(I)の化合物またはその加水分解生成物である請求項1記載の方法
    Figure 0003678776
    (式中、
    RとR’とは互いに独立的に水素、ハロゲン、C-C-アルキルまたはC-C-アルコキシであり、
    mは0、1または2であり、
    nは1または2である)。
  3. 該ジヒドロキナクリドン混合物が、6、13−ジヒドロキナクリドンの5乃至70重量%と少なくとも1種のジ置換ジヒドロキナクリドンの30乃至95重量%とよりなり、そしてアルカリ金属水酸化物対ジヒドロキナクリドン混合物のモル比が7:1以上である請求項1記載の方法。
  4. 顔料α−キナクリドンの直接製造方法において、6,13−ジヒドロキナクリドン、アルカリ金属水酸化物、水と混和性の有機溶剤、水、有効量の酸化剤および粒子成長抑制剤を含有する反応混合物を加熱することによって6、13−ジヒドロキナクリドンを顔料α−キナクリドンへ直接的に酸化する工程を包含し、粒子成長抑制剤が、該6、13−ジヒドロキナクリドンの重量を基準にして1重量%以上約10重量%までの範囲の量で存在し、アルカリ金属水酸化物対ジヒドロキナクリドンのモル比が少なくとも:1であり、そして該粒子成長抑制剤が下記式(I)の化合物またはその加水分解生成物であることを特徴とする方法
    Figure 0003678776
    (式中、
    RとR’とは互いに独立的に水素、ハロゲン、C-C-アルキルまたはC-C-アルコキシであり、
    mは0、1または2であり、
    nは1または2である)。
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