JP3735026B2 - シタロプラムの製造方法、およびその中間体とその製造方法 - Google Patents

シタロプラムの製造方法、およびその中間体とその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、抗うつ剤として有用であるシタロプラムの製造方法、およびその合成中間体とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
式[A]
【0003】
【化18】
Figure 0003735026
【0004】
で示されるシタロプラムは、抗うつ剤として有用な化合物である。シタロプラムの製造方法としては、式[VI]
【0005】
【化19】
Figure 0003735026
【0006】
で示される5−フタランカルボニトリル化合物(以下、化合物[VI]ともいう)を用いた製造方法が知られている。例えば、縮合剤の存在下、化合物[VI]を3−(ジメチルアミノ)プロピルハライドと反応させる方法が挙げられる(特公昭61−35986号公報)。該文献においては、縮合剤として水素化ナトリウムを用いた実施例が挙げられているが、収率が低く、好ましい方法とはいえない。さらに、該文献には収率を向上させるための方法についての記載は一切なく、ましてや縮合剤の他にさらに添加剤を用いることにより、収率が向上するといった示唆すらされていない。
【0007】
また、シタロプラムのその他の製造方法として、塩基性条件下、化合物[VI]を3−(ジメチルアミノ)プロピルハライドと反応させる方法も挙げられる(WO98/19511号公報)。該文献においては、塩基としてn−ブチルリチウムとジイソプロピルアミンとから得られるリチウムジイソプロピルアミドを用いた実施例が記載されており収率は向上しているが、その反面、高価なn−ブチルリチウムを使用しており、その上非常に低い温度(実施例中、−50〜−40℃)で反応させる工程を必要とするため、工業的に好ましい方法とはいえない。また、該文献において、通常の温度範囲で反応を行うことができる、安価な塩基についての記載はなく、さらに特定の塩基を組み合わせた塩基性条件下で、安価に、収率よく、工業的にシタロプラムを製造できることについての記載はない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、安価で、収率のよい、工業的に有用なシタロプラムの製造方法を提供することである。
本発明のその他の目的は、後記式[III]で表される化合物の新規な製造方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、安価で、収率のよい、工業的に有用なシタロプラムの製造方法を提供するため、特公昭61−35986号公報に記載の方法(縮合剤を利用する方法)についてさらに鋭意検討した結果、縮合剤のほかに、さらにN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンおよび1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンから選ばれる少なくとも1つを添加することにより、シタロプラムの収率が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
また、本発明者らは既に、環境負荷が小さく、安全な5−フタランカルボニトリル化合物の製造方法として、後記式[III]で示される化合物(化合物[III]ともいう)を経由したまったく新しいストラテジーによる方法(特願平11−311703号)を報告しており、今回、当該製造方法における鍵化合物である化合物[III]を後記式[II]で示される化合物(化合物[II]ともいう)を原料として簡便に製造できることを見出し、また1,3−ジメチル−4−(4’−フルオロベンゾイル)ベンゼン、無水トリメリット酸および後記式[I]で示される新規化合物(以下、化合物[I]という)をそれぞれ原料として使用することによって、環境負荷が小さく、安全に該化合物[II]を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、
(1)式[I]
【0011】
【化20】
Figure 0003735026
【0012】
で示される化合物[I]、
(2)4−ブロモフルオロベンゼンを4−フルオロフェニルマグネシウムブロミドとし、次いで該4−フルオロフェニルマグネシウムブロミドを2,4−ジメチルベンズアルデヒドと反応させることを特徴とする化合物[I]の製造方法、
(3)化合物[I]を酸化することを特徴とする、式[II]
【0013】
【化21】
Figure 0003735026
【0014】
で示される化合物[II]の製造方法、
(4)m−キシレンを原料兼溶媒として用い、4−フルオロベンゾイルハライドとフリーデルクラフツ反応させることを特徴とする、1,3−ジメチル−4−(4’−フルオロベンゾイル)ベンゼン(以下、化合物[I']ともいう)の製造方法、
(5)m−キシレンを原料兼溶媒として用い、4−フルオロベンゾイルハライドとフリーデルクラフツ反応させて化合物[I']を得、次いで該化合物[I']を酸化することを特徴とする化合物[II]の製造方法、
(6)2,4−ジメチルベンゾイルハライドをフルオロベンゼンとフリーデルクラフツ反応させて化合物[I']を得、次いで該化合物[I']を酸化することを特徴とする化合物[II]の製造方法、
(7)2塩素置換または3塩素置換ベンゼン溶媒中、無水トリメリット酸をフルオロベンゼンとフリーデルクラフツ反応させることを特徴とする化合物[II]の製造方法、
(8)化合物[II]を還元および環化することを特徴とする、式[III]
【0015】
【化22】
Figure 0003735026
【0016】
で示される化合物[III]の製造方法、
(9)無水トリメリット酸をフルオロベンゼンとフリーデルクラフツ反応させて、化合物[II]とその異性体である式[IV]
【0017】
【化23】
Figure 0003735026
【0018】
で示される化合物(以下、化合物[IV]ともいう)との混合物を得、次に当該混合物を還元および環化して、単離することを特徴とする化合物[III]の製造方法、
(10)反応が2塩素置換または3塩素置換ベンゼン溶媒中で行われることを特徴とする上記(9)の製造方法
(11)水素化ホウ素ナトリウムを用いて還元することを特徴とする上記(9)または(10)の製造方法、
(12)さらに、ルイス酸または硫酸ジアルキル類を触媒として用いて還元することを特徴とする上記(9)または(10)の製造方法、
(13)触媒が硫酸、硫酸ジメチル、硫酸ジエチルまたは三弗化ホウ素であることを特徴とする上記(12)の製造方法、
(14)酸触媒を用いて環化することを特徴とする上記(9)または(10)の製造方法、
(15)酸触媒が無機酸であることを特徴とする上記(14)の製造方法、
(16)無機酸が塩酸、硫酸または燐酸であることを特徴とする上記(15)の製造方法、
(17)二酸化マンガンを用いて、化合物[III]を酸化することを特徴とする、式[V]
【0019】
【化24】
Figure 0003735026
【0020】
で示される化合物(以下、化合物[V]ともいう)の製造方法、
(18)N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンおよび1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンから選ばれる少なくとも1つと縮合剤の存在下、化合物[VI]を3−(ジメチルアミノ)プロピルクロリドと反応させることを特徴とするシタロプラムの製造方法、
(19)化合物[VI]が化合物[V]をオキシム化反応および脱水反応を順次行うことにより得られたものであることを特徴とする上記(18)の製造方法、および(20)縮合剤が水素化ナトリウムであることを特徴とする上記(18)または(19)の製造方法に関する。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明についてその詳細を説明する。本発明における反応時間とは、反応に必要な試薬を全て添加した時点から反応が終了するまでの時間をいう。
化合物 [ ] の製造方法
化合物[I]は新規な化合物であり、例えば4−ブロモフルオロベンゼンのグリニャール試薬と2,4−ジメチルベンズアルデヒドとのグリニャール反応により得ることができる。具体的には、例えば、反応溶媒中、4−ブロモフルオロベンゼンのグリニャール試薬を調製後、これに2,4−ジメチルベンズアルデヒドを添加、好ましくは滴下することにより化合物[I]を得ることができる。尚、反応試薬の添加順序は特に限定されない。
【0022】
4−ブロモフルオロベンゼンのグリニャール試薬の調製は、従来公知のグリニャール試薬の調製と同様の方法で行えばよく、例えば、金属マグネシウムを有機溶媒に分散させた分散液に、4−ブロモフルオロベンゼンを通常−30℃〜100℃で、好ましくは15℃〜70℃で滴下することにより容易に行うことができる。金属マグネシウムの使用量は、4−ブロモフルオロベンゼンをグリニャール試薬に変換するのに必要な量であればよく、例えば4−ブロモフルオロベンゼン1モルに対して、通常0.9モル〜2モル、好ましくは0.95モル〜1.3モルである。
【0023】
2,4−ジメチルベンズアルデヒドは4−ブロモフルオロベンゼン1モルに対して、通常0.5モル〜2モル、好ましくは0.8モル〜1.2モルである。
【0024】
本反応における反応溶媒としては、グリニャール反応を阻害しない溶媒であれば特に限定はされず、グリニャール試薬の調製に使用できる溶媒であれば、グリニャール試薬を調製後単離することなく、グリニャール反応に使用することができ、これにより反応工程が煩雑にならずに好ましい。好ましい溶媒としては、例えばエーテル系溶媒(例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソランなど)などが挙げられ、好ましくは、THF、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルである。本反応において用いる反応溶媒の使用量は、4−ブロモフルオロベンゼン1kgに対して、通常1L〜30L、好ましくは2L〜20Lである。
【0025】
本反応における反応温度は、通常−30℃〜100℃、好ましくは−10℃〜50℃であり、反応時間は、通常5分〜6時間、好ましくは10分〜3時間である。
【0026】
化合物[I]は、反応液に水等を添加してグリニャール試薬を失活させた後、常法(例えば抽出など)により単離することができる。単離後、更に、常法により精製することができるが、精製することなく次の反応に付してもよい。
【0027】
本発明の化合物[I]は、ヒドロキシル基が結合している不斉炭素により、光学活性体およびラセミ体として存在することができ、当該ラセミ体は、公知の手法により各光学活性体に分離することができる。
【0028】
m−キシレンを出発原料とする化合物 [I'] の製造方法
方法1(m−キシレンを原料兼溶媒として用いる方法)
化合物[I']が、m−キシレンを4−フルオロベンゾイルクロリドとフリーデルクラフツ反応させることにより得られることは、既に米国特許3835167号において知られている。該文献においては、溶媒としてジクロロメタンが使用されており、環境上好ましくないといえる。このため、本発明者らは該文献の方法に用いることができ、かつ環境上好ましい溶媒について鋭意検討した結果、m−キシレンを原料兼溶媒として用いることにより、化合物[I']を収率よく得ることができることを見出した。即ち、m−キシレンを原料兼溶媒として用い、4−フルオロベンゾイルハライドとフリーデルクラフツ反応させることにより、化合物[I']を収率よく得ることができる。
【0029】
具体的には、ルイス酸またはブレンステッド酸をm−キシレンに分散させた分散液に、4−フルオロベンゾイルハライドを添加、好ましくは滴下することにより、又は4−フルオロベンゾイルハライドのm−キシレン溶液にルイス酸またはブレンステッド酸を添加、好ましくは滴下することにより、化合物[I']を収率よく得ることができる。
【0030】
方法1における4−フルオロベンゾイルハライドにおけるハライド部は、特に限定はなく、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子が挙げられ、好ましくは塩素原子が挙げられる。
【0031】
方法1において、原料兼溶媒として用いるm−キシレンの使用量は、4−フルオロベンゾイルハライド1kgに対して、通常3L〜30L、好ましくは5L〜15Lである。
【0032】
方法1におけるルイス酸としては通常フリーデルクラフツ反応に用いるものであれば特に限定はなく、例えば、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、弗化亜鉛、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、三弗化ホウ素、三塩化ホウ素、四塩化珪素、四塩化チタンなどが挙げられ、反応速度が速い点で塩化アルミニウムが特に好ましい。当該ルイス酸の使用量は、4−フルオロベンゾイルハライド1モルに対して、通常2モル〜6モル、好ましくは3モル〜4モルである。
【0033】
方法1におけるブレンステッド酸としては通常フリーデルクラフツ反応に用いるものであれば特に限定はなく、例えば弗化水素、硫酸、ポリ燐酸、トリフルオロメタンスルホン酸などが挙げられ、好ましくはトリフルオロメタンスルホン酸が挙げられる。当該ブレンステッド酸の使用量は、4−フルオロベンゾイルハライド1モルに対して、通常0.0001モル〜1モル、好ましくは0.01モル〜0.2モルである。
【0034】
方法1における反応温度は、通常−20℃から120℃、好ましくは10℃〜50℃であり、反応時間は、通常0.5時間〜15時間、好ましくは2時間〜8時間である。
【0035】
化合物[I']は常法により単離・精製することができる。例えば、反応液を塩酸に注ぎ込み、これを分液して得られた有機層を、水やアルカリ水溶液で洗浄後、溶媒を留去することにより、化合物[I']を単離することができる。単離物は、さらに常法により精製することもできるが、精製することなくそのまま次の反応に付しても良い。また、本方法により、化合物[I']の異性体である1,3−ジメチル−2−(4’−フルオロベンゾイル)ベンゼンも同時に得られるが、再結晶などの常法により容易に分離することができる。化合物[I']は当該異性体と分離することなく、次の反応に付してもよい。
【0036】
方法2(2,4−ジメチルベンゾイルハライドとフルオロベンゼンとのフリーデルクラフツ反応)
また、化合物[I']は反応溶媒中、2,4−ジメチルベンゾイルハライドをフルオロベンゼンとフリーデルクラフツ反応させることによっても得ることができる。反応溶媒としては、フルオロベンゼンを使用する(方法2−1)か、またはフリーデルクラフツ反応で通常使用する溶媒を用いる(方法2−2)ことができる。具体的には、方法2−1:ルイス酸またはブレンステッド酸を、フルオロベンゼンに分散させ、この分散液に2,4−ジメチルベンゾイルハライドを添加、好ましくは滴下するか、あるいはフルオロベンゼンと2,4−ジメチルベンゾイルハライドとの混合液に、ルイス酸またはブレンステッド酸を添加することにより、方法2−2:フリーデルクラフツ反応で通常使用する溶媒にフルオロベンゼンを希釈した溶液に、ルイス酸またはブレンステッド酸を分散させ、この分散液に2,4−ジメチルベンゾイルハライドを添加、好ましくは滴下するか、あるいはフリーデルクラフツ反応で通常使用する溶媒に、フルオロベンゼンおよび2,4−ジメチルベンゾイルハライドを添加して溶解し、これにルイス酸またはブレンステッド酸を添加することにより、化合物[I']を収率良く得ることができる。
【0037】
方法2−1におけるフルオロベンゼンの使用量は、2,4−ジメチルベンゾイルハライド1kgに対して、通常2L〜20L、好ましくは4L〜10Lである。
【0038】
方法2−2におけるフルオロベンゼンの使用量は、2,4−ジメチルベンゾイルハライド1モルに対して、通常1モル〜5モル、好ましくは1モル〜3モルである。
【0039】
方法2−2における、フリーデルクラフツ反応で通常使用する溶媒としては、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、ニトロベンゼン、二硫化炭素などが挙げられ、環境面から2塩素置換ベンゼン、3塩素置換ベンゼンが好ましく、とりわけ1,2−ジクロロベンゼンが好ましい。該反応溶媒の使用量は、2,4−ジメチルベンゾイルハライド1kgに対して、通常1L〜20L、好ましくは5L〜15Lである。
【0040】
方法2−1および方法2−2におけるルイス酸としては、フリーデルクラフツ反応で通常使用するものであれば特に限定はなく、例えば、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、弗化亜鉛、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、三弗化ホウ素、三塩化ホウ素、四塩化珪素、四塩化チタンなどが挙げられ、反応速度が速い点で塩化アルミニウムが特に好ましい。当該ルイス酸の使用量は、2,4−ジメチルベンゾイルハライド1モルに対して、通常0.8モル〜3モル、好ましくは1モル〜1.5モルである。
【0041】
方法2−1および2−2におけるブレンステッド酸としては、フリーデルクラフツ反応で通常使用するものであれば特に限定はなく、例えば弗化水素、硫酸、ポリ燐酸、トリフルオロメタンスルホン酸などが挙げられ、好ましくはトリフルオロメタンスルホン酸が挙げられる。該ブレンステッド酸の使用量としては、2,4−ジメチルベンゾイルハライド1モルに対して、通常0.0001モル〜1モル、好ましくは0.01モル〜0.5モルである。
【0042】
方法2−1および方法2−2における反応温度は、通常−20℃〜100℃、好ましくは0℃〜90℃であり、反応時間は、通常0.5時間〜10時間、好ましくは1時間〜4時間である。
【0043】
化合物[I']は、常法により単離・精製することができる。例えば、反応液を塩酸に注ぎ込み、これを分液して得られた有機層を水やアルカリ水溶液で洗浄後、溶媒を留去することにより、化合物[I']を単離することができる。
【0044】
化合物 [II] の製造方法
方法a(化合物 [I] を原料とする化合物 [II] の製造方法)
化合物[II]は、新規化合物[I]を酸化することにより得ることができる。化合物[I]の酸化は、例えば酸化剤を用いることにより行うことができる。具体的には、化合物[I]の溶液と、酸化剤の溶液または分散液とを混合攪拌することにより、化合物[II]を得ることができる。これらの溶液および分散液の溶媒としては、以下の反応溶媒を使用するのがよい。
【0045】
方法aにおける酸化剤としては、メチル基およびヒドロキシル基をそれぞれカルボキシル基およびカルボニル基へと酸化することができるものであれば特に限定はなく使用することができる。当該酸化剤としては、例えば、過マンガン酸塩や重クロム酸塩などが挙げられ、環境への影響や毒性から、過マンガン酸塩(例えば、過マンガン酸カリウムなど)が好ましい。さらに、過マンガン酸塩は酸化反応に用いると二酸化マンガンを副生するが、二酸化マンガンは後記する化合物[III]から化合物[V]を合成する際に酸化剤として再利用することができ、廃棄することもなく、コストダウンにも繋がるため好ましい。方法aにおける酸化剤の使用量は、化合物[I]1モルに対して、通常3モル〜15モル、好ましくは4.6モル〜10モル、さらに好ましくは6モル〜7.5モルである。
【0046】
方法aにおける反応溶媒としては、酸化反応に用いる酸化剤により酸化を受けにくいものであれば特に限定なく、例えば、水、t−ブチルアルコール、t−アミルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ベンゼン、モノクロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、酢酸、プロピオン酸、酪酸などが挙げられ、さらにはこれらの混合溶媒でもよく、好ましくは、水、t−ブチルアルコール、水とt−ブチルアルコールとの混合溶媒、t−アミルアルコール、水とt−アミルアルコールとの混合溶媒、アセトン、アセトンと水との混合溶媒が挙げられる。当該溶媒の使用量は、化合物[I]1kgに対して、通常5L〜50L、好
ましくは8L〜24Lである。
【0047】
方法aにおける反応温度は、通常0℃〜120℃、好ましくは50℃〜100℃であり、反応時間は、通常0.5時間〜12時間、好ましくは2時間〜8時間である。
【0048】
化合物[II]の単離は常法で行えばよく、例えば反応液を濾過等に付して不溶物(二酸化マンガンを含む)を除いた後、濾液に、例えば通常用いる無機酸(例えば塩酸や硫酸等)等を添加し、これにより析出した化合物[II]を濾別することによって行うことができる。単離後、さらに常法により精製することもできるが、精製することなく次の反応に付してもよい。
【0049】
方法b(化合物 [I'] を原料とする化合物 [II] の製造方法)
化合物[II]は、化合物[I']を酸化することによっても得ることができる。この時の酸化は酸化剤を用いて行うことができる。方法bにおいては、酸化剤の使用量が、化合物[I']1モルに対して、通常2.5モル〜14モル、好ましくは4モル〜9モル、さらに好ましくは5.5モル〜7モルであり、溶媒の使用量が化合物[I']1kgに対して、通常5L〜50L、好ましくは8L〜24Lである以外(例えば反応条件、単離条件など)は、上記した方法aにおける酸化反応と全く同様に行うことができる。なお、単離物は常法により精製することもできるが、精製することなく次の反応に付してもよい。
【0050】
方法c(無水トリメリット酸を原料とする化合物 [II] の製造方法)
無水トリメリット酸とベンゼンとのフリーデルクラフツ反応については、既に米国特許3835167号において知られている。該文献の方法ではニトロベンゼンを溶媒として使用しており、環境上好ましいとはいえない。また、本発明者らは、ベンゼンの代わりにフルオロベンゼンを用いて、該文献の反応を、同条件あるいはさらに温度を上げた反応条件で行った結果、フリーデルクラフツ反応がほとんど進行しないことが分かった(比較例1参照)。このため、本発明者らは、無水トリメリット酸とフルオロベンゼンとのフリーデルクラフツ反応がスムーズに進行でき、かつ環境上好ましい溶媒について鋭意検討した結果、2塩素置換または3塩素置換ベンゼンが最も適していることを見出した。即ち、2塩素置換または3塩素置換ベンゼン溶媒中、無水トリメリット酸とフルオロベンゼンをフリーデルクラフツ反応させることにより、化合物[II]を環境上好ましく、スムーズに得ることができる。
【0051】
具体的には、例えば、反応溶媒に、無水トリメリット酸およびフルオロベンゼンを分散させ、この分散液にルイス酸またはブレンステッド酸を添加して攪拌することにより、化合物[II]を得ることができる。
【0052】
方法cにおけるフルオロベンゼンの使用量は、無水トリメリット酸1モルに対して、通常1モル〜10モル、好ましくは1.2モル〜3モルである。
【0053】
方法cにおける反応溶媒である2塩素置換または3塩素置換ベンゼンとしては、例えば、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,2,3−トリクロロベンゼンなどが挙げられ、比較的高選択的に化合物[II]が得られる点で1,2−ジクロロベンゼンが特に好ましい。これらの溶媒は、単独または混合して用いてもよい。当該反応溶媒の使用量は、無水トリメリット酸1kgに対して、通常5L〜40L、好ましくは10L〜25Lである。上記溶媒以外にも、方法cの反応を進行することができる溶媒があり、例えば塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、ニトロベンゼン、二硫化炭素などが挙げられ、好ましくは塩化メチレン、1,2−ジクロロエタンである。当該溶媒の使用量は、無水トリメリット酸1kgに対して、4L〜40L、好ましくは8L〜25Lである。
【0054】
方法cにおけるルイス酸としては、フリーデルクラフツ反応で通常使用するものであれば特に限定はなく、例えば、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、弗化亜鉛、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、三弗化ホウ素、三塩化ホウ素、四塩化珪素、四塩化チタンなどが挙げられ、反応速度が速い点で塩化アルミニウムが特に好ましい。当該ルイス酸の使用量は、無水トリメリット酸1モルに対して、通常2.5モル〜5モル、好ましくは3モル〜3.5モルである。
【0055】
方法cにおけるブレンステッド酸としては、フリーデルクラフツ反応で通常使用するものであれば特に限定はなく、例えば弗化水素、硫酸、ポリ燐酸、トリフルオロメタンスルホン酸などが挙げられ、好ましくはトリフルオロメタンスルホン酸が挙げられる。該ブレンステッド酸の使用量としては、無水トリメリット酸1モルに対して0.0001モル〜1モル、好ましくは0.01モル〜0.2モルである。
【0056】
方法cにおける反応温度は、通常40℃〜150℃、好ましくは70℃〜120℃であり、反応時間は、通常0.5時間〜16時間、好ましくは2時間〜9時間である。
【0057】
方法cにおいては、化合物[II]がその異性体である化合物[IV]との混合物として得られる。この混合物は常法により容易に反応液から取り出すことができる。例えば、反応液を塩酸水溶液、硫酸水溶液等の酸性水溶液にあけ、分液して有機層を取り出し、これをアルカリ水溶液で抽出後、酸性水溶液で中和することによって、当該混合物を取り出すことができる。化合物[II]と化合物[IV]とは、再結晶等で分離することができる。化合物[II]と化合物[IV]とを分離することなく、混合物を次の反応に付してもよく、また混合物や化合物[II]は精製することなく次の反応に付してもよい。
【0058】
化合物 [III] の新規な製造方法
化合物[III]は、本発明者である池本と伊木によって既に、シタロプラム前駆体である化合物[VI]を効率的に合成する重要中間体として特願平11−311703号に開示されている。本発明者らは新しいルートで化合物[III]を製造する方法について更に鋭意研究した結果、化合物[II]が化合物[III]の前駆体になることを見出し、さらに化合物[II]から化合物[III]への簡便な製造方法を見出すに至ったものである。即ち、化合物[III]は、化合物[II]を還元および環化することにより、簡便に得ることができる。還元と環化の順序は特に限定されず、化合物[II]を還元後環化しても、化合物[II]を部分還元(ケトンの還元)後、環化してさらに還元してもよい。工程が短いから、還元後環化するのが好ましい。原料である化合物[II]は、異性体である化合物[IV]との混合物として化合物[III]の製造に使用してもよい。化合物[II]と化合物[IV]との混合物を還元および環化する場合、化合物[III]が化合物[III]の異性体とともに得られることになるが、化合物[II]を単離して還元および環化する場合と比べて、最終的に得られる化合物[III]の収率は高くなる。このため、化合物[II]の時点では単離せず、化合物[III]とした後に単離するのが効率的で好ましい。
【0059】
化合物[II]の還元反応によって生じる化合物は、式[VII]
【0060】
【化25】
Figure 0003735026
【0061】
で示される化合物(以下、化合物[VII]ともいう)であり、また、化合物[II]の部分還元後に環化し、さらに還元する場合には種々の中間体が存在し、例えば
【0062】
【化26】
Figure 0003735026
【0063】
で示される化合物などが挙げられる。本発明における化合物[II]からの化合物[III]の製造は、▲1▼還元工程、及び▲2▼環化工程の2工程からなる。
なお、還元後に環化する場合、▲1▼の反応条件によっては化合物[VII]のみならず、同時に化合物[III]も生成する場合があり、化合物[III]の生成割合によっては▲2▼を省略することができる場合もある。
【0064】
以下に、化合物[II]を還元後、環化することによって化合物[III]を製造する方法について説明する。
まず、▲1▼の条件について説明する。
化合物[II]の還元は、通常知られているカルボン酸からアルコールへの還元と同様に行うことができ、還元剤を使用することにより行うことができる。具体的には、還元剤を反応溶媒に分散させ、分散液に化合物[II]を添加、好ましくは滴下することにより、化合物[VII]を得ることができる。なお、当該還元は、還元剤のほかに適当な触媒を入れることが好ましい。当該触媒は、還元剤と化合物[II]を添加した後に添加するのが好ましい。
【0065】
( )における還元剤としては、カルボン酸をアルコールに変換するのに通常使用されるものであれば特に限定はなく、例えば、触媒存在下の水素化ホウ素ナトリウム、水素化アルミニウムリチウム、ナトリウム水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウム、ボランTHF錯体、ボランジメチルスルフィド錯体などが挙げられ、このうち、触媒存在下の水素化ホウ素ナトリウムが特に好ましい。還元剤の使用量は、化合物[II]1モルに対して、通常1.25モル〜7.5モル、好ましくは2.5モル〜5モルである。
【0066】
▲1▼における触媒としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、硫酸、燐酸、ホウ酸、硝酸等)、有機酸(例えば、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等)、ルイス酸(例えば、三弗化ホウ素、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、弗化亜鉛、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、弗化アルミニウム、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、弗化マグネシウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、四塩化珪素、四塩化チタン等)、硫酸ジアルキル類(例えば、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル等)などが挙げられ、収率および選択率の向上の点から、ルイス酸、硫酸ジアルキル類がより好ましく、さらに収率が良い点で硫酸、三弗化ホウ素、硫酸ジメチル、硫酸ジエチルが特に好ましい。触媒の使用量は、化合物[II]1モルに対して、通常1.25モル〜7モル、好ましくは2モル〜6モルである。
【0067】
▲1▼における反応溶媒としては、還元反応条件で反応しにくい溶媒であれば特に限定はなく、エーテル系溶媒が好ましく、当該エーテル系溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソランなどが挙げられ、より好ましくはTHF、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、ジブチルエーテルなどが挙げられ、特に好ましくはTHF、t−ブチルメチルエーテル、ジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルである。該反応溶媒の使用量は、化合物[II]1kgに対して、通常1L〜40L、好ましくは5L〜20Lである。
【0068】
▲1▼においては、さらにホウ酸トリアルキル(例えば、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリプロピル、ホウ酸トリブチルなど)を用いるのが、反応液のゲル化を防ぐ意味で好ましい。ホウ酸トリアルキルの使用量は、化合物[II]1モルに対して、好ましくは0.1モル〜3モル、より好ましくは0.1モル〜0.5モルである。
【0069】
▲1▼における反応温度は、通常−20℃〜120℃、好ましくは25℃〜75℃であり、反応時間は、通常0.5時間〜10時間、好ましくは2時間〜7時間である。
【0070】
化合物[VII]は、常法により、例えば得られた反応液に水を添加後、冷却し、結晶として析出させることにより、単離・精製することができる。化合物[VII]は単離することなく、化合物[VII]を含んだ反応液をそのまま次の反応に付してもよく、また、水で還元剤を失活させた反応液を次の反応に付すこともできる。
【0071】
次に、▲2▼について説明する。
化合物[VII]の環化は熱をかけることによって脱水反応を経由して行うことができる。この場合、脱水反応を促進させるため、さらに酸触媒を加えて行うことが好ましい。具体的には、例えば▲1▼で得られた反応液か、または反応溶媒に化合物[VII]を添加した混合液に、酸触媒を加えることにより、化合物[III]を得ることができる。
【0072】
▲2▼における酸触媒としては、例えば無機酸(例えば、塩酸、硫酸、燐酸、ポリ燐酸、ホウ酸、硝酸等)、有機酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸等)、ルイス酸(例えば、三弗化ホウ素、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、弗化亜鉛、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、弗化アルミニウム、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、弗化マグネシウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、四塩化珪素、四塩化チタン等)が挙げられ、より好ましくは無機酸が挙げられ、特に好ましくは塩酸、硫酸、燐酸が挙げられる。当該酸触媒の量としては、▲1▼の原料である化合物[II]1kgに対して、通常0.01kg〜50kg、好ましくは0.1kg〜5kgである。
【0073】
環化反応は、上記のような酸触媒により進行し易くなる。このため、▲1▼における触媒として上記の酸触媒を用いると、還元反応だけでなく、環化反応まで進行する割合が多い。したがって、▲1▼において触媒として上記した酸触媒を過剰に使用することによって、ワンポットで化合物[III]を合成することもできる。その場合の▲1▼における触媒の使用量は、▲1▼の原料である化合物[II]1モルに対して、通常2モル〜30モル、好ましくは3モル〜15モルである。
【0074】
▲2▼における溶媒としては、反応を阻害しない溶媒であれば特に限定はなく、好ましくは▲1▼で使用した溶媒、および▲1▼で使用した溶媒と水との混合溶媒が挙げられる。これらの溶媒を使用することは、▲1▼の反応終了後、化合物[VII]を反応液から単離することなく得られた反応液をそのまま▲2▼の工程に付すことができ、また、▲1▼の反応終了後、還元剤を失活させるために水を添加した反応液をそのまま▲2▼の工程に付すことができ、つまり化合物[VII]の単離・精製操作を省略できるため好ましいといえる。また、還元剤を失活させるために水を添加した場合には、▲1▼の反応液に使用した溶媒のみを留去して水のみにしたものを環化反応に付すこともでき、さらには水のみにしたものに▲1▼で使用した溶媒以外の適当な溶媒を新たに加えて使用することもできる。上記した「▲1▼で使用した溶媒以外の適当な溶媒」としては特に限定はなく、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の炭化水素系溶媒などが挙げられ、▲1▼の原料である化合物[II]1kgに対して、通常0.5L〜20L、好ましくは3L〜10L使用することができる。
【0075】
▲2▼における反応時間は、通常0.5時間〜15時間、好ましくは1時間〜7時間であり、反応温度は、通常10℃〜100℃、好ましくは20℃〜70℃である。
【0076】
化合物[III]は、常法により、例えば反応液に水を添加後、冷却することによって生じる結晶を濾取することにより、単離することができる。また、単離後、さらに常法により精製することもできるが、精製することなく次の反応に付してもよい。
【0077】
化合物[II]を部分還元後環化して、さらに還元する方法では、所望の部分還元や環化を行うために、通常用いられる反応試薬(例えば、還元剤)を選択し、上記の方法と同じように行えばよい。
【0078】
化合物 [V] の製造方法
化合物[V]はシタロプラム前駆体である化合物[VI]を効率的に合成する中間体として有用であり、化合物[V]を効率的に合成する手法が結果的にシタロプラムの効率的合成に大きく貢献するため重要である。化合物[V]は、化合物[III]を酸化剤として用いて酸化することにより得られることが既に知られている(特願平11−311703号)。化合物[III]の易酸化部位は、1,3−ジヒドロイソベンゾフラン環の5位に存在するヒドロキシメチル基のほかに、1位および3位の炭素である。このため、化合物[III]を酸化することにより、5位のヒドロキシメチル基の他に、1位と3位の炭素も酸化を受けることが懸念される。このため、本発明者らは、上記懸念を解消するため鋭意研究した結果、二酸化マンガンを酸化剤として用いることにより、副反応(1位と3位の炭素の酸化反応)をほとんど生じることなく、収率よく化合物[V]を得ることができることを見出した。即ち、酸化剤として二酸化マンガンを用いて、化合物[III]を酸化することにより、収率よく化合物[V]を得ることができる。具体的には、化合物[III]を適当な溶媒に溶解あるいは分散させ、これに二酸化マンガンを添加することにより化合物[V]を得ることができる。但し、添加の順序などは特に限定はされない。
【0079】
本反応に使用する二酸化マンガンの使用量は、化合物[III]1kgに対して、通常1kg〜20kg、好ましくは3kg〜10kgである。
【0080】
本反応に使用する溶媒としては、酸化反応を受けにくい溶媒であれば特に限定はなく、例えば、エーテル類(例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン等)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等)、エステル類(例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸ベンジル、酢酸フェニル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソブチル、プロピオン酸アミル、プロピオン酸イソアミル、プロピオン酸ベンジル、プロピオン酸フェニル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸ブチル、酪酸イソブチル、酪酸アミル、酪酸イソアミル、酪酸ベンジル、酪酸フェニル等)、ラクトン類(例えば、γ−ブチロラクトン等)、炭酸エステル類(例えば、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、エチレンカーボネート等)、芳香族炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、t−ブチルベンゼン等)、脂肪族炭化水素類(例えば、ペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、イソヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、石油エーテル等)、ハロゲン置換芳香族炭化水素類(例えば、モノクロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,2,3−トリクロロベンゼン等)、ハロゲン置換脂肪族炭化水素類(例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1−クロロプロパン、2−クロロプロパン等)、アミド系溶媒(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等)、含硫黄溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド、スルホラン等)などが挙げられる。その中で特に好ましい溶媒として、t−ブチルメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トルエン、キシレン、メシチレン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼンが挙げられる。当該溶媒の使用量は、化合物[III]1kgに対して、通常3L〜50L、好ましくは5L〜20Lである。
【0081】
本反応における反応温度は、通常−10℃〜100℃、好ましくは10℃〜60℃であり、反応時間は、通常0.1時間〜24時間、好ましくは0.5時間〜5時間である。
【0082】
化合物[V]は、常法により、例えば反応液を濾過後、得られた濾液から溶媒を留去することにより、単離することができる。また、反応液を濾過後、得られた濾液から溶媒を留去することなく、そのまま次の反応に付すこともできる。濾別した廃マンガン化合物は、常法により、過マンガン酸塩や二酸化マンガンに再生し、再利用することができるため、環境上好ましいといえる。
【0083】
化合物 [VI] の製造方法
化合物[VI]はシタロプラム前駆体として有用な中間体である。化合物[VI]は、化合物[III]を出発原料として酸化、オキシム化および脱水反応を順次行うことにより得られる。下記溶媒を用いれば、単一溶媒で一連の反応(酸化、オキシム化および脱水反応)を行うことができるので、溶媒を留去する工程を省くことができ、化合物[VI]を簡便に、効率的に製造できる。具体的には、下記溶媒中、化合物[III]および酸化剤を添加して酸化反応を行い、酸化反応の終了後、酸化剤を濾去し、得られた濾液にヒドロキシルアミンまたはその鉱酸塩を添加してオキシム化反応を行い、最後に、得られた反応液に脱水剤を添加して脱水反応を行うことにより、化合物[VI]を得ることができる。
【0084】
酸化、オキシム化および脱水反応に使用可能な溶媒としては、各反応を阻害しない溶媒であれば特に限定はなく、例えば、エーテル類(例えば、ジブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等)、ケトン類(例えば、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等)、エステル類(例えば、酢酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸ベンジル、酢酸フェニル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソブチル、プロピオン酸アミル、プロピオン酸イソアミル、プロピオン酸ベンジル、プロピオン酸フェニル、酪酸ブチル、酪酸イソブチル、酪酸アミル、酪酸イソアミル、酪酸ベンジル、酪酸フェニル等)、ラクトン類(例えば、γ−ブチロラクトン等)、炭酸エステル類(例えば、炭酸ジエチル、エチレンカーボネート等)、芳香族炭化水素類(例えば、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、t−ブチルベンゼン、トルエン等)、ハロゲン置換芳香族炭化水素類(例えば、モノクロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,2,3−トリクロロベンゼン等)、アミド系溶媒(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等)、含硫黄溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド、スルホラン等)などが挙げられる。その中で、特に好ましい溶媒として、ジエチレングリコールジメチルエーテル、キシレン、メシチレン、トルエン、t−ブチルベンゼン、モノクロロベンゼンが挙げられる。酸化、オキシム化および脱水工程における溶媒の使用量は、出発原料である化合物[III]1kgに対して、通常3L〜50L、好ましくは5L〜20Lである。
【0085】
化合物[III]の酸化反応について説明する。
化合物[III]の酸化は、溶媒を上記のものにする以外は、上記「化合物[V]の製造方法」と全く同様の方法で行うことができる。化合物[III]を酸化することにより得た化合物[V]は、反応液から単離することなく、次のオキシム化反応に付すことができる。但し、酸化剤は反応液から常法により取り出しておく。
【0086】
次に、オキシム化反応について説明する。
化合物[V]は、例えばヒドロキシルアミンまたはその鉱酸塩とオキシム化反応することにより、オキシムを得ることができる。具体的には、例えば酸化反応後の反応液から酸化剤を濾去したものに、ヒドロキシルアミンまたはその鉱酸塩を添加することにより、オキシムを得ることができる。
【0087】
ヒドロキシルアミン鉱酸塩としては、例えば、ヒドロキシルアミンと塩酸、硫酸、燐酸、硝酸などとの塩が挙げられ、好ましくはヒドロキシルアミン塩酸塩、ヒドロキシルアミン硫酸塩が挙げられる。
【0088】
オキシム化工程で使用するヒドロキシルアミンまたはその鉱酸塩の使用量は、酸化工程で用いた化合物[III]1モルに対して、通常1モル〜5モル、好ましくは1モル〜2モルである。
【0089】
ヒドロキシルアミンの鉱酸塩を使用する場合には、適当な塩基をヒドロキシルアミン鉱酸塩1モルに対して1モル〜5モル添加するのが好ましい。該塩基は、ヒドロキシルアミンの鉱酸塩と同時、またはその後に添加、好ましくは滴下すればよい。該塩基としては、シアノ基への影響が少ないものであれば特に限定はなく、例えば、有機塩基類(例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルアニリン、ピリジン、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムt−ブトキシド、カリウムt−ブトキシド等)、無機塩基類(例えば、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、水酸化カリウム等)などが挙げられ、好ましくはトリエチルアミンが挙げられる。
【0090】
オキシム化反応における反応温度は、通常20℃〜120℃、好ましくは40℃〜100℃であり、反応時間は、通常10分〜4時間、好ましくは30分〜2時間である。
【0091】
化合物[III]から得られたオキシムは、反応液から単離することなく脱水反応に付すことができる。
【0092】
最後に、脱水反応について説明する。
オキシム化反応で得られたオキシムは、例えば脱水剤を用いることにより脱水することができる。具体的には、例えばオキシム化反応後の反応液に、脱水剤を添加することにより、化合物[VI]を得ることができる。
【0093】
当該脱水工程で使用する脱水剤としては、例えば酸無水物(例えば無水酢酸、無水フタル酸等)、オキシ塩化リン、メタンスルホニルクロリド、パラトルエンスルホニルクロリド等が挙げられ、環境面及び収率の観点から無水酢酸が特に好ましい。当該脱水剤の使用量は、オキシム1モルに対して、通常1モル〜10モル、好ましくは2モル〜5モルである。
【0094】
脱水反応における反応温度は、通常60℃〜160℃、好ましくは120℃〜150℃、さらに好ましくは125℃〜150℃であり、反応時間は、通常0.5時間〜8時間、好ましくは1.5時間〜6時間である。
【0095】
化合物[VI]の単離は反応液を常法(例えば、中和、抽出、結晶化など)に付すことにより行うことができる。
【0096】
シタロプラムの製造方法
シタロプラムは、縮合剤と共に、さらにN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンおよび1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンから選ばれる少なくとも1つを存在させた条件で、化合物[VI]を3−(ジメチルアミノ)プロピルクロリドと反応させることにより、収率よく得ることができる。具体的には、化合物[VI]、3−(ジメチルアミノ)プロピルクロリド、縮合剤、並びにN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンおよび1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンから選ばれる少なくとも1つを、適当な溶媒中で混合し、必要であれば加熱することで反応が進行し、シタロプラムを得ることができる。添加順序は特に限定はなく、例えば、反応溶媒に化合物[VI]を加えた後、縮合剤および3−(ジメチルアミノ)プロピルクロリドを順次加える方法、反応溶媒に化合物[VI]および3−(ジメチルアミノ)プロピルクロリドを加えた後、縮合剤を加える方法、反応溶媒に縮合剤を加えた後、化合物[VI]および3−(ジメチルアミノ)プロピルクロリドを順次あるいは混合液として加える方法、反応溶媒に3−(ジメチルアミノ)プロピルクロリドを加えた後、化合物[VI]と縮合剤を同時に加えていく方法などが挙げられる。この際、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンおよび1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンはどの段階で加えてもよく、縮合剤の添加前と後に分割して添加するのが反応が進行し易くなるため好ましい。具体的には、反応溶媒に化合物[VI]を加えた後、3−(ジメチルアミノ)プロピルクロリド、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(または1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン)、縮合剤および、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(または1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン)を順次加えればよい。本発明で使用する試剤は、そのまま添加しても、反応溶媒もしくは反応を阻害しない別の溶媒(例えば、トリエチルアミン、ピリジン、N,N−ジメチルアニリンなど)で希釈して添加してもよい。
【0097】
本発明においては、反応系に、さらに4級アンモニウム塩(例えば、テトラn−ブチルアンモニウムハライド、ベンジルトリアルキルアンモニウムハライドなど)を添加することにより、反応温度をさほど上げることなく反応を進行させることができる。4級アンモニウム塩の添加量は、化合物[VI]1モルに対して、好ましくは0.001モル〜0.1モル、より好ましくは0.01モル〜0.05モルである。
【0098】
3−(ジメチルアミノ)プロピルクロリドの添加量は、化合物[VI]1モルに対して、好ましくは1モル〜3モル、より好ましくは1モル〜1.5モルである。3−(ジメチルアミノ)プロピルクロリドが塩酸塩の形態である場合には、予め中和によりフリーな形態に調製後、本発明の反応に用いるのが望ましい。
【0099】
N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンの添加量は、化合物[VI]1モルに対して、好ましくは0.1モル〜10モル、より好ましくは0.2モル〜4モルである。
【0100】
1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンの添加量は、化合物[VI]1モルに対して、好ましくは1モル〜50モル、より好ましくは3モル〜30モルである。
【0101】
シタロプラムの製造において使用する縮合剤としては、通常縮合剤として用いられるものであれば特に限定はなく、例えば水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化カルシウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、tert−ブトキシカリウム、tert−ブトキシナトリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムヘキサメチルジシラジドなどが挙げられ、好ましくは水素化ナトリウム、tert−ブトキシカリウムであり、さらに好ましくは水素化ナトリウムである。縮合剤の使用量は、化合物[VI]1モルに対して、通常0.9モル〜3モル、好ましくは1モル〜1.5モルである。
【0102】
シタロプラムの製造において使用する反応溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、スルホラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキサン、ヘプタン、ヘキサン、流動パラフィンなどが挙げられ、好ましくはジメチルスルホキシド、スルホラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、THF、1,3−ジオキソラン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トルエン、キシレン、tert−ブチルメチルエーテル、流動パラフィンが挙げられ、これらを1種または2種以上を併用してもよい。またN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンおよび1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを反応溶媒として用いてもよい。本発明における反応溶媒としては、収率の点から、トルエンと、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンまたは1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとの混合溶媒が特に好ましい。
【0103】
シタロプラムの製造における反応溶媒の使用量は、反応溶媒の種類や反応条件などに依存するが、通常、化合物[VI]1kgに対して、好ましくは1L〜100L、より好ましくは3L〜30Lである。
【0104】
シタロプラムの製造における反応温度としては、通常−70℃〜150℃、好ましくは20℃〜90℃、さらに好ましくは40℃〜70℃である。反応時間は特に限定はなく、通常30分〜15時間、好ましくは2時間〜8時間である。
【0105】
シタロプラムは、通常の後処理および分離操作により、単離・精製することができる。例えば、反応液を氷水に注ぎ、これを有機溶媒で抽出し、得られた有機層を酸性水溶液で抽出後、中和し、再度有機溶媒で抽出後、溶媒を留去することによりシタロプラムを単離することができる。また、必要により、常法によって精製することもできる。
【0106】
以下、実施例を示して、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0107】
【実施例】
実施例1
(2,4−ジメチルフェニル)−(4’−フルオロフェニル)メタノール(化合物 [I] )の合成
窒素気流下、削状マグネシウム16.8gをTHF116mlに分散させ、ヨウ素0.1gを加えた後、4−ブロモフルオロベンゼン116gのTHF(201ml)溶液を15−40℃で滴下後、20−40℃で2時間攪拌した。得られたグリニャール試薬の混合液を冷却し、これに2,4−ジメチルベンズアルデヒド81gのTHF(81ml)溶液を0−20℃で滴下した。滴下後、反応液を0−20℃で2時間攪拌した後、飽和塩化アンモニウム水溶液で反応を停止した。反応液を分液して得られた有機層を保留後、水層をトルエンでさらに抽出し、先の有機層とあわせた後、飽和食塩水で洗浄した。有機層から溶媒を減圧留去することにより、(2,4−ジメチルフェニル)−(4’−フルオロフェニル)メタノール139.2g(100%)を無色油状物として得た。
【0108】
1H−NMR(CDCl3,400MHz)δ=2.05(1H,d,J=4Hz),2.21(3H,s),2.31(3H,s),5.96(1H,d,J=4Hz),6.98(1H,s),7.00(2H,t,J=9Hz),7.05(1H,d,J=8Hz),7.29(2H,dd,J=9Hz,J=5Hz),7.33(1H,d,J=8Hz)ppm
【0109】
実施例2
(2,4−ジメチルフェニル)−(4’−フルオロフェニル)メタノール(化合物 [I] )の合成
窒素気流下、削状マグネシウム16.8gをTHF54mlに分散させ、ヨウ素0.1gを加えた後、4−ブロモフルオロベンゼン116gのTHF(201ml)溶液を15−40℃で滴下後、20−40℃で2時間攪拌した。得られたグリニャール試薬の混合液を冷却し、これに2,4−ジメチルベンズアルデヒド81gのTHF(81ml)溶液を0−20℃で滴下した。滴下後、反応液を0−20℃で2時間攪拌した後、飽和塩化アンモニウム水溶液で反応を停止した。反応液を分液して得られた有機層を保留後、飽和食塩水で洗浄した。有機層から溶媒を減圧留去することにより、(2,4−ジメチルフェニル)−(4’−フルオロフェニル)メタノール139.2g(100%)を無色油状物として得た。得られた無色油状物の1H−NMRを測定した結果、実施例1と同じであった。
【0110】
実施例3
(2,4−ジメチルフェニル)−(4’−フルオロフェニル)メタノール(化合物 [I] )の合成
窒素気流下、削状マグネシウム16.8gをTHF46mlに分散させ、ヨウ素0.1gを加えた後、4−ブロモフルオロベンゼン2.1gを滴下した。反応の開始を確認後、THF242mlを流入した。さらに4−ブロモフルオロベンゼン113.9gを31.8−48.9℃で滴下後、38−40℃で2時間攪拌した。得られたグリニャール試薬の混合液を冷却し、これに2,4−ジメチルベンズアルデヒド81gを5−29.9℃で滴下した。滴下後、反応液を21.3−28.3℃で1.5時間攪拌し、飽和塩化アンモニウム水溶液で反応を停止し、反応液を分液して得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した。有機層から溶媒を減圧留去することにより、(2,4−ジメチルフェニル)−(4’−フルオロフェニル)メタノール139.2g(100%)を無色油状物として得た。得られた無色油状物の1H−NMRを測定した結果、実施例1と同じであった。
【0111】
実施例4
4−(4’−フルオロベンゾイル)イソフタル酸(化合物 [II] )の合成
(2,4−ジメチルフェニル)−(4’−フルオロフェニル)メタノール121gにt−ブチルアルコール723ml及び水1090mlを加え、50℃まで加熱した後、過マンガン酸カリウム582gを50−75℃で6時間かけて加えた。反応液を70−85℃で3時間攪拌した後、大部分のt−ブチルアルコールを減圧留去した。副生した二酸化マンガンを濾去し、得られた濾液を6N塩酸で中和した。生成した結晶を濾過、乾燥することにより、ほぼ純粋な4−(4’−フルオロベンゾイル)イソフタル酸114.2g(75%)を白色結晶として得た。
【0112】
1H−NMR(DMSO−d6,400MHz)δ=7.31(2H,t,J=9Hz),7.55(1H,d,J=8Hz),7.70(2H,dd,J=9Hz,J=5Hz),8.23(1H,dd,J=8Hz,J=2Hz),8.51(1H,d,J=2Hz),13.52(2H,br)ppm
【0113】
実施例5
4−(4’−フルオロベンゾイル)イソフタル酸(化合物 [II] )の合成
(2,4−ジメチルフェニル)−(4’−フルオロフェニル)メタノール121gにt−ブチルアルコール703ml及び水578mlを加え、70℃まで加熱した後、過マンガン酸カリウム548gを70−80℃で32時間かけて加えた。反応液を70−85℃で3時間攪拌した後、大部分のt−ブチルアルコールを減圧留去した。副生した二酸化マンガンを濾去し、得られた濾液を6N塩酸で中和した。生成した結晶を濾過、乾燥することにより、ほぼ純粋な4−(4’−フルオロベンゾイル)イソフタル酸108.1g(71.4%)を白色結晶として得た。得られた白色結晶の1H−NMRを測定した結果、実施例4と同じであった。
【0114】
実施例6
4−(4’−フルオロベンゾイル)イソフタル酸(化合物 [II] )の合成
(2,4−ジメチルフェニル)−(4’−フルオロフェニル)メタノール121gに87%t−ブチルアルコール水溶液847ml及び水580.8mlを加え、69.9℃まで加熱した後、過マンガン酸カリウム582gを70.0−80.2℃で31時間20分かけて加えた。反応液を70−85℃で3時間攪拌した後、大部分のt−ブチルアルコールを減圧留去した。副生した二酸化マンガンを濾去し、得られた濾液を6N塩酸で中和した。生成した結晶を濾過、乾燥することにより、ほぼ純粋な4−(4’−フルオロベンゾイル)イソフタル酸108.4g(71.5%)を白色結晶として得た。得られた白色結晶の1H−NMRを測定した結果、実施例4と同じであった。
【0115】
実施例7
1,3−ジメチル−4−(4’−フルオロベンゾイル)ベンゼン(化合物 [I'] )の合成
無水塩化アルミニウム19.5gをm−キシレン150mlに分散させた懸濁液に、氷冷下、4−フルオロベンゾイルクロリド21.1gを滴下した。0−10℃で3時間攪拌した後、6N塩酸にあけ、反応液を分液した。得られた有機層を水、10%水酸化ナトリウム水溶液、水で順次洗浄し、溶媒を留去することにより、1,3−ジメチル−4−(4’−フルオロベンゾイル)ベンゼンと1,3−ジメチル−2−(4’−フルオロベンゾイル)ベンゼンの96:4の混合物30.2g(99%)を微黄色油状液体として得た。
【0116】
1,3−ジメチル−4−(4’−フルオロベンゾイル)ベンゼン
1H−NMR(CDCl3,400MHz)δ=2.32(3H,s),2.38(3H,s),7.05(1H,d,J=8Hz),7.11(2H,dd,J=9Hz,J=7Hz),7.11(1H,s),7.21(1H,d,J=8Hz),7.82(2H,dd,J=9Hz,J=5Hz)ppm
【0117】
実施例8
1,3−ジメチル−4−(4’−フルオロベンゾイル)ベンゼン(化合物 [I'] )の合成
無水塩化アルミニウム16.2gを1,2−ジクロロベンゼン150mlに分散させた懸濁液に、フルオロベンゼン13gを加え、0−20℃で2,4−ジメチルベンゾイルクロリド17.0gを滴下した。これを、10−30℃で1時間攪拌した後、80℃まで昇温して1時間攪拌し、再び冷却して6N塩酸にあけ、反応液を大過剰のトルエンで希釈し、分液した。得られた有機層を5%水酸化ナトリウム水溶液、水で順次洗浄し、溶媒を減圧留去し、残渣をシクロヘキサン−酢酸エチルを溶離液とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することにより、ほぼ純粋な1,3−ジメチル−4−(4’−フルオロベンゾイル)ベンゼン19.4g(85%)を微黄色油状液体として得た。このもののスペクトルデータは、実施例7で確かめられたスペクトルデータと一致した。
【0118】
実施例9
4−(4’−フルオロベンゾイル)イソフタル酸(化合物 [II] )の合成
過マンガン酸カリウム45gを25w%t−ブチルアルコール水溶液110gに分散させ、65℃まで加熱した。これに、実施例7で合成した1,3−ジメチル−4−(4’−フルオロベンゾイル)ベンゼンと1,3−ジメチル−2−(4’−フルオロベンゾイル)ベンゼンの96:4の混合物10gのt−ブチルアルコール(28ml)溶液を滴下した。滴下後、これを80−85℃で3時間反応させ、大部分のt−ブチルアルコールを減圧留去し、副生した二酸化マンガンを濾去した。得られた濾液を6N塩酸で中和した後、生成した結晶を濾過、乾燥することにより、ほぼ純粋な4−(4’−フルオロベンゾイル)イソフタル酸9.9g(78%)を白色結晶として得た。このもののスペクトルデータは、実施例4のものと一致した。
【0119】
実施例10
4−(4’−フルオロベンゾイル)イソフタル酸(化合物 [II] )の合成
無水トリメリット酸20g及びフルオロベンゼン18.5gを1,2−ジクロロベンゼン200mlに分散させた後、無水塩化アルミニウム42gを添加し、70−90℃で4時間攪拌した。反応液は4N塩酸400mlにあけた後、メチルイソブチルケトン400mlで抽出した。有機層は5%水酸化ナトリウム水溶液240gで抽出し、水層を6N塩酸64gで中和した。生じた結晶を濾過、水洗後、乾燥することにより、4−(4’−フルオロベンゾイル)イソフタル酸及び2−(4’−フルオロベンゾイル)テレフタル酸の7:3の混合物22.4g(75%)を白色結晶として得た。
得られた混合物はメタノール−水(8:5)から再結晶し、ほぼ純粋な 4−(4’−フルオロベンゾイル)イソフタル酸6.8gを得た。このもののスペクトルデータは、実施例4のものと一致した。
【0120】
実施例11
4−(4’−フルオロベンゾイル)イソフタル酸(化合物 [II] )の合成
無水トリメリット酸20g及びフルオロベンゼン20gを1,2,4−トリクロロベンゼン150mlに分散させた後、無水塩化アルミニウム42gを添加し、70−90℃で8時間攪拌した。反応液は氷浴下、4N塩酸300mlにあけ、50℃で3時間攪拌した後、冷却した。生じた結晶をよく水洗後、濾過、乾燥することにより、4−(4’−フルオロベンゾイル)イソフタル酸及び2−(4’−フルオロベンゾイル)テレフタル酸の65:35の混合物19.1g(64%)を白色結晶として得た。
【0121】
4−(4’−フルオロベンゾイル)イソフタル酸
1H−NMR(DMSO−d6,400MHz)δ=7.31(2H,t,J=9Hz),7.55(1H,d,J=8Hz),7.70(2H,dd,J=9Hz,J=5Hz),8.23(1H,dd,J=8Hz,J=2Hz),8.51(1H,d,J=2Hz),13.52(2H,br)ppm
【0122】
2−(4’−フルオロベンゾイル)テレフタル酸
1H−NMR(DMSO−d6,400MHz)δ=7.32(2H,t,J=9Hz),7.71(2H,dd,J=9Hz,J=5Hz),7.87(1H,d,J=2Hz),8.09(1H,d,J=8Hz),8.17(1H,dd,J=8Hz,J=2Hz),13.52(2H,br)ppm
【0123】
比較例1
4−(4’−フルオロベンゾイル)イソフタル酸(化合物 [II] )の合成
無水トリメリット酸20g及びフルオロベンゼン20gをニトロベンゼン200mlに分散させた後、無水塩化アルミニウム45gを添加し、70−90℃で6時間攪拌した。反応液をHPLC分析した結果、4−(4’−フルオロベンゾイル)イソフタル酸の生成率は4%であった。その後、さらに110−120℃で6時間攪拌したが、副生物(異性体以外)が増えるのみで、4−(4’−フルオロベンゾイル)イソフタル酸の生成率は減少する傾向にあった。
【0124】
実施例12
1−(4’−フルオロフェニル)−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−イルメタノール(化合物 [III] )の合成
水素化ホウ素ナトリウム2.5gをジエチレングリコールジメチルエーテル40ml中に分散させた懸濁液に、実施例10で得られた4−(4’−フルオロベンゾイル)イソフタル酸及び2−(4’−フルオロベンゾイル)テレフタル酸の7:3の混合物 5.8gのジエチレングリコールジメチルエーテル(29ml)溶液を20−25℃で滴下し、10分攪拌した。これに三弗化ホウ素THF錯体10.9gを20−45℃で滴下し、さらに40−50℃で2時間加熱した。氷浴下、水50mlで水解した後、85%燐酸50mlを加え、60℃で5時間攪拌した。水200mlを加え、冷却することによって生じた結晶を濾過、水洗後、乾燥することにより、粗1−(4’−フルオロフェニル)−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−イルメタノールを3.23g得た。このものをトルエンから2回再結晶することにより、ほぼ純粋な1−(4’−フルオロフェニル)−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−イルメタノール2.10g(43%)を得た。
【0125】
融点 101−104℃
IR(KBr)ν=3214(br),2848(w),1606(s),1511(s),1225(s),1157(m),1135(m),1046(s),1015(s),824(s),810(s),783(m)cm-1
1H−NMR(CDCl3,400MHz)δ=4.72(2H,s),5.19(1H,d,J=12Hz),5.31(1H,d,J=12Hz),6.14(1H,s),6.98(1H,d,J=8Hz),7.03(2H,t,J=9Hz),7.24(1H,d,J=8Hz),7.29(2H,dd,J=9Hz,J=6Hz),7.32(1H,s)ppm
【0126】
実施例13
1−(4’−フルオロフェニル)−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5− イルメタノール(化合物 [III] )の合成
水素化ホウ素ナトリウム 14.6gをTHF120ml中に分散させた懸濁液に、実施例10と同様の方法で得た 4−(4’−フルオロベンゾイル)イソフタル酸及び2−(4’−フルオロベンゾイル)テレフタル酸の7:3の混合物24.0gのTHF(240ml)溶液を20−30℃で滴下した。55℃まで加温し、55−65℃で硫酸ジメチル47.0gを滴下した。滴下後、これを5時間還流した後、氷浴下、水72mlで水解し、THFを減圧留去した。残渣に85%燐酸48gを加え、60℃で5時間攪拌した。水72mlを加え、冷却することによって生じた結晶を濾過、水洗後、乾燥することにより、粗1−(4’−フルオロフェニル)−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−イルメタノールを15.1g得た。このものをトルエンから2回再結晶することにより、ほぼ純粋な1−(4’−フルオロフェニル)−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−イルメタノール8.2g(40%)を得た。このものの各種スペクトルデータは実施例12によって得られたものと一致した。
【0127】
実施例14
1−(4’−フルオロフェニル)−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−イルメタノール(化合物 [III] )の合成
水素化ホウ素ナトリウム15.0gをTHF130ml中に分散させた懸濁液に、実施例4で合成した4−(4’−フルオロベンゾイル)イソフタル酸26.0gのTHF(260ml)溶液を20−30℃で滴下した後、55℃まで加温し、55−65℃で硫酸ジメチル51.0gを滴下した。滴下後、これを5時間還流した後、氷浴下、水130mlで水解し、THFを減圧留去した。残渣に85%燐酸52gを加え、60℃で5時間攪拌した。水390mlを加え、冷却することによって生じた結晶を濾過、水洗後、乾燥することにより、粗1−(4’−フルオロフェニル)−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−イルメタノールを20.4g得た。このものを酢酸エチル−へプタン(2:3)混合溶媒から再結晶することにより、ほぼ純粋な1−(4’−フルオロフェニル)−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−イルメタノール18.9g(86%)を得た。このものの各種スペクトルデータは実施例12によって得られたものと一致した。
【0128】
実施例15
1−(4’−フルオロフェニル)−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−イルメタノール(化合物 [III] )の合成
水素化ホウ素ナトリウム43.5gをTHF327ml中に分散させた懸濁液に、ホウ酸トリメチル9.1gを加え、実施例4で合成した4−(4’−フルオロベンゾイル)イソフタル酸100.5gのTHF(313ml)溶液を20−30℃で滴下した後、35℃まで加温し、35−42℃で三弗化ホウ素−THF錯体181.7g(三弗化ホウ素:45重量%)を滴下した。滴下後、これを40−50℃で7時間加熱後、氷浴下、水101mlで水解し、THFを減圧留去した。残渣に30%硫酸110gを加え、60℃で5時間攪拌した。25%水酸化ナトリウム水溶液200gを加え、熱トルエン450ml(70℃)で抽出し、熱トルエン層を温水(70℃)60mlで洗浄後、ヘプタン450mlを加えて冷却することによって生じた結晶を濾過して乾燥することにより、1−(4’−フルオロフェニル)−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−イルメタノールを69.0g(81%)得た。このものの各種スペクトルデータは実施例12によって得られたものと一致した。
【0129】
実施例16
1−(4’−フルオロフェニル)−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−イルメタノール(化合物 [III] )の合成
リチウムアルミニウムヒドリド1.0gをTHF10mlに分散させた分散液に、4−(4’−フルオロベンゾイル)イソフタル酸3.0gのTHF(30ml)溶液を室温で滴下し、さらに10時間攪拌した。還元反応液に10%塩酸10mlを加え、セライト濾過した後、THFを減圧留去し、85%燐酸10gを加え、60℃で5時間攪拌した。反応液に水50mlを加え、生じた結晶を濾過乾燥した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで目的物を分離することにより、1−(4’−フルオロフェニル)−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−イルメタノール0.21g(8%)を得た。このものの各種スペクトルデータは実施例12によって得られたものと一致した。
【0130】
実施例17
1−(4’−フルオロフェニル)−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−イルメタノール(化合物 [III] )の合成
窒素雰囲気下、THF280.3kgに水素化ホウ素ナトリウム40.3kgを加えた。ホウ酸トリメチル8.4kgを20〜30℃で滴下し、ついで実施例4と同様の方法で製造した4−(4’−フルオロベンゾイル)イソフタル酸93.1kgをTHF280.3kgに溶解した溶液を20〜30℃で滴下した。三弗化ホウ素−THF錯体173.3kg(三弗化ホウ素:45重量%)を35〜42℃で滴下し、38〜42℃で3時間、ついで48〜50℃で4時間反応した。反応液を0〜5℃に冷却し、水93.6kgを0〜25℃で滴下した。50〜55℃に加温し、40〜50℃の温水372kgを流入、常圧下で50〜85℃に加熱して、溶媒(637kg)を留去した。反応液を約57℃に冷却し、30%硫酸102kgを55〜60℃で流入、60〜65℃で3時50分攪拌した。HPLCで確認したところ、トリオール体(化合物[VII])は0.1%であった。25%水酸化ナトリウム水溶液186.6kgを20〜40℃で滴下し、トルエン363kgを加えて75〜80℃で加熱抽出、静置分液した。有機層を70〜80℃の温水280kgで洗浄し、静置分液した。有機層に70〜80℃の温水55.6kgを加え、25〜30℃に冷却した。25〜30℃でヘプタン284kgを流入し、1時間熟成、一旦40〜42℃まで加熱した後、5時間かけて0〜5℃まで冷却して1時間熟成した。結晶を濾過し、トルエン40.7kgとヘプタン31.5kgを混合して0〜5℃に冷却した溶液で結晶を洗浄した。減圧下、約45℃で15時間、60〜70℃で12時間乾燥して1−(4’−フルオロフェニル)−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−イルメタノール64.5kgを得た。収率81.8%であった。このものの各種スペクトルデータは実施例12によって得られたものと一致した。
【0131】
実施例18
1−(4’−フルオロフェニル)−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−カルバルデヒド(化合物 [V] )の合成
1−(4’−フルオロフェニル)−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−イルメタノール299.3g及び二酸化マンガン(東ソー製HMH型)2.25kgをt−ブチルメチルエーテル(3.4L)に分散させ、10−30℃で6時間攪拌した。反応液を濾過、t−ブチルメチルエーテル0.9Lで洗浄後、溶媒を減圧留去することにより、ほぼ純粋な1−(4’−フルオロフェニル)−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−カルバルデヒド258.2g(87%)を微黄白色結晶として得た。
【0132】
1H−NMR(CDCl3,400MHz)δ=5.25(1H,d,J=13Hz),5.38(1H,d,J=13Hz),6.18(1H,s),7.06(2H,t,J=9Hz),7.16(1H,d,J=8Hz),7.30(2H,dd,J=9Hz,J=5Hz),7.77(1H,d,J=8Hz),7.83(1H,s),10.03(1H,s)ppm
【0133】
実施例19
1−(4’−フルオロフェニル)−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−カルバルデヒド(化合物 [V] )の合成
1−(4’−フルオロフェニル)−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−イルメタノール66.0gをトルエン(660ml)に分散させ、二酸化マンガン(東ソー製HMH型)594gを1時間かけて15−30℃で加え、20−30℃で1時間攪拌した。反応液を濾過、トルエン330mlで洗浄後、溶媒を減圧留去することにより、ほぼ純粋な1−(4’−フルオロフェニル)−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−カルバルデヒド57.6g(88%)を微黄白色結晶として得た。このものの各種スペクトルデータは実施例18によって得られたものと一致した。
【0134】
実施例20
1−(4’−フルオロフェニル)−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−カルバルデヒド(化合物 [V] )の合成
トルエン520.9kgに実施例17で製造した1−(4’−フルオロフェニル)−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−イルメタノール60.5kgを加え、10〜30℃で二酸化マンガン(東ソーHMH型)544.8kgを3分割し、3時間かけて添加した。23〜27℃で1時間攪拌し、HPLCで原料が0.03%となったことを確認し、ハイフロースーパーセル(セライト社製)18.2kgと無水硫酸マグネシウム30.2kgを加えた。約10℃まで2時間かけて冷却し、2〜10℃で40分間攪拌した。濾過し、トルエン284kgで濾過残渣(廃マンガン)を洗浄した。分析した結果、溶液917kg中、1−(4’−フルオロフェニル)−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−カルバルデヒドが60kg(収率:約100%)含まれていた。溶液の一部を濃縮して得た結晶は、実施例18と同様の物性値を示した。
【0135】
実施例21
1−(4’−フルオロフェニル)−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−カルボニトリル(化合物 [VI] )の合成
1−(4’−フルオロフェニル)−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−イルメタノール 50.0g及び二酸化マンガン(東ソー製HMH型)200gをキシレン(400ml)に分散させ、25−45℃で6時間攪拌した。反応液を濾過後、ヒドロキシルアミンの塩酸塩14.1g及びトリエチルアミン20.5gを加え、70−75℃で1時間攪拌し、さらに無水酢酸75.3gを加え、130−140℃で6時間攪拌した。反応液に水180ml加えた後、さらに10%水酸化ナトリウム水溶液100gを加えて分液した。溶媒を減圧留去後、60℃でキシレン44mlおよびへプタン71mlを加え、室温まで冷却することにより生じた結晶を濾過、乾燥することにより1−(4’−フルオロフェニル)−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−カルボニトリル35.8g(73%)を微黄色結晶として得た。
【0136】
融点 96−98℃
IR(KBr)ν=3050(w),2867(m),2228(s),1603(s),1510(s),1224(s),1157(m),1048(s),1031(s),832(s)cm-1
1H−NMR(CDCl3,400MHz)δ=5.21(1H,d,J=13Hz),5.34(1H,d,J=13Hz),6.16(1H,s),7.06(2H,t,J=9Hz),7.10(1H,d,J=8Hz),7.27(2H,dd,J=9Hz,J=5Hz),7.55(1H,d,J=8Hz),7.60(1H,s)ppm
【0137】
実施例22
シタロプラムの合成
窒素気流下、60%水素化ナトリウム0.96gをTHF20mlに分散させた懸濁液に、1−(4’−フルオロフェニル)−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−カルボニトリル5.0gのTHF(10ml)溶液を40〜50℃で滴下した。これに、テトラn−ブチルアンモニウムブロミド0.2gを加えた後、3−(ジメチルアミノ)プロピルクロリド3.4gのt−ブチルメチルエーテル(18ml)溶液を滴下し、10分攪拌した。さらに1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン26.1g(25ml)を加え、61〜64℃で6時間攪拌した。反応液を氷水83mlにあけ、トルエン33mlで3回抽出した。有機層を20%酢酸水41mlで3回抽出し、得られた水層を25%水酸化ナトリウム水溶液120gにより中和後、トルエン40mlで3回抽出した。得られた有機層を水洗後、溶媒を留去することにより、粘調オイル状の1−(3−(ジメチルアミノ)プロピル)−1−(4’−フルオロフェニル)−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−カルボニトリル(シタロプラムベース)5.36g(収率79.1%)を得た。
【0138】
1H−NMR(CDCl3、400MHz)δ:1.26−1.52(2H,m),2.11−2.26(4H,m),2.13(6H,s),5.15(1H,d,J=13Hz),5.19(1H,d,J=13Hz),7.00(2H,t,J=9Hz),7.39(1H,d,J=8Hz),7.43(2H,dd,J=9Hz,J=5Hz),7.50(1H,s),7.59(1H,d,J=8Hz)ppm
【0139】
このものを常法により臭化水素酸塩とした。臭化水素酸塩(結晶)の融点は、184−186℃であった。
HPLC保持時間および測定条件
保持時間;10.5分
カラム;GL Sciences社製 Inertsil(登録商標)
ODS−2 4.6mm×150mm
バッファー液;0.01%トリフルオロ酢酸水溶液
移動相;アセトニトリル:バッファー液=2:8〜7:3、(40分かけてリニヤー グラジエントをかける)
流量;1ml/分
【0140】
実施例23
シタロプラムの合成
1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン26.1g(25ml)の代わりに、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン4.86gおよびN,N−ジメチルホルムアミド25mlを順次加えた以外は、実施例22と同様に反応および後処理を行うことにより、粘調オイル状の1−(3−(ジメチルアミノ)プロピル)−1−(4’−フルオロフェニル)−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−カルボニトリル(シタロプラムベース)5.13g(収率75.7%)を得た。このものの臭化水素酸塩のHPLC保持時間と融点は実施例22で得られたものと一致した。
【0141】
実施例24
シタロプラムの合成
窒素気流下、60%水素化ナトリウム0.58gをTHF12mlに分散させた懸濁液に、1−(4’−フルオロフェニル)−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−カルボニトリル3.0gのTHF(6ml)溶液を40〜50℃で滴下した。これに、テトラn−ブチルアンモニウムブロミド0.12gを加えた後、3−(ジメチルアミノ)プロピルクロリド2.0gのt−ブチルメチルエーテル(12ml)溶液を滴下し、10分攪拌した。さらにN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン0.73gおよびN,N−ジメチルホルムアミド14.2g(15ml)を加え、61〜64℃で7時間攪拌した。反応液は、実施例22と同様の方法で処理することにより、粘調オイル状の1−(3−(ジメチルアミノ)プロピル)−1−(4’−フルオロフェニル)−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−カルボニトリル(シタロプラムベース)3.14g(収率77.2%)を得た。このものの臭化水素酸塩のHPLC保持時間と融点は実施例22で得られたものと一致した。
【0142】
実施例25
シタロプラムの合成
N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン0.73gおよびN,N−ジメチルホルムアミド(15ml)の代わりに、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン6.3g(6ml)およびN,N−ジメチルホルムアミド8.5g(9ml)を加えた以外は、実施例24と同様に反応および後処理を行うことにより、粘調オイル状の1−(3−(ジメチルアミノ)プロピル)−1−(4’−フルオロフェニル)−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−カルボニトリル(シタロプラムベース)2.88g(収率70.7%)を得た。このものの臭化水素酸塩のHPLC保持時間と融点は実施例22で得られたものと一致した。
【0143】
比較例2
シタロプラムの合成
1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン26.1g(25ml)を加えないで、そのまま61〜64℃で、6時間攪拌させた以外は実施例22と同様に反応を行ったところ、反応はほとんど進行しなかった。
【0144】
比較例3
シタロプラムの合成
1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン26.1g(25ml)の代わりに、N,N−ジメチルホルムアミド23.6g(25ml)を加え、61〜64℃で7時間攪拌させた以外は、実施例22と同様に反応および後処理を行うことにより、粘調オイル状の1−(3−(ジメチルアミノ)プロピル)−1−(4’−フルオロフェニル)−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−カルボニトリル(シタロプラムベース)4.12g(収率60.8%)を得た。
【0145】
実施例26
シタロプラムの合成
窒素気流下、60%水素化ナトリウム0.58gをトルエン12mlに分散させた懸濁液に、1−(4’−フルオロフェニル)−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−カルボニトリル(3.0g)のTHF(6ml)溶液を40〜50℃で滴下した。これに、テトラn−ブチルアンモニウムブロミド0.12gを加えた後、3−(ジメチルアミノ)プロピルクロリド(2.0g)のトルエン(12ml)溶液を滴下し、10分攪拌した。さらにN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン2.92gおよびジメチルスルホキシド15mlを加え、61〜64℃で7時間攪拌した。反応液は、実施例22と同様の方法で処理することにより、粘調オイル状の1−(3−(ジメチルアミノ)プロピル)−1−(4’−フルオロフェニル)−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−カルボニトリル(シタロプラムベース)2.79g(収率68.6%)を得た。このものの臭化水素酸塩のHPLC保持時間と融点は実施例22で得られたものと一致した。
【0146】
実施例27
シタロプラムの合成
窒素気流下、1−(4’−フルオロフェニル)−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−カルボニトリル(3.0g)のN,N−ジメチルホルムアミド(15ml)溶液に、テトラn−ブチルアンモニウムブロミド0.12gおよびN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン2.92gを加えた。これに、3−(ジメチルアミノ)プロピルクロリド(2.0g)のトルエン(12ml)溶液を滴下後、60%水素化ナトリウム0.58gと流動パラフィン1.5mlからなる懸濁液を1.5時間かけて滴下し、61〜64℃で7時間攪拌した。反応液は、実施例22と同様の方法で処理することにより、粘調オイル状の1−(3−(ジメチルアミノ)プロピル)−1−(4’−フルオロフェニル)−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−カルボニトリル(シタロプラムベース)2.69g(収率66.1%)を得た。このものの臭化水素酸塩のHPLC保持時間と融点は実施例22で得られたものと一致した。
【0147】
実施例28
シタロプラムの合成
N,N−ジメチルホルムアミド(15ml)の代わりに、ジメチルスルホキシド(15ml)を用いた以外は、実施例27と同様に反応および後処理を行うことにより、粘調オイル状の1−(3−(ジメチルアミノ)プロピル)−1−(4’−フルオロフェニル)−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−カルボニトリル(シタロプラムベース)2.68g(収率65.9%)を得た。このものの臭化水素酸塩のHPLC保持時間と融点は実施例22で得られたものと一致した。
【0148】
実施例29
シタロプラムの合成
窒素気流下、1−(4’−フルオロフェニル)−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−カルボニトリル9.00gの1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(54ml)溶液に、60%水素化ナトリウム1.73gを室温で加えた。3−(ジメチルアミノ)プロピルクロリド塩酸塩8.02gを10%水酸化ナトリウム水溶液39gで中和した後、トルエン13.5mlで2回抽出し、抽出液を炭酸カリウムおよびモレキュラーシーブス3Aにより脱水することで調整した3−(ジメチルアミノ)プロピルクロリド(約6.1g)のトルエン溶液を、赤褐色を呈した先の1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン溶液に、窒素気流下、室温で滴下した。さらにテトラn−ブチルアンモニウムブロミド0.36gおよびN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン4.37gを加え、60〜62℃で5時間攪拌した。反応液を氷水149mlにあけ、トルエン54mlで3回抽出した。有機層を20%酢酸水71mlで3回抽出した。得られた水層を25%水酸化ナトリウム水溶液210gにより中和後、トルエン54mlで3回抽出した。得られた有機層を水洗後、これに炭酸カリウム3.6gおよびシリカゲル1.8gを加えてよく攪拌した後、濾過、溶媒の減圧留去により、粘調オイル状の1−(3−(ジメチルアミノ)プロピル)−1−(4’−フルオロフェニル)−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−カルボニトリル(シタロプラムベース)10.50g(収率86.0%)を得た。このものの臭化水素酸塩のHPLC保持時間と融点は実施例22で得られたものと一致した。
【0149】
実施例30
シタロプラム(1−(3−(ジメチルアミノ)プロピル ) −1−(4’−フルオロフェニル)−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−カルボニトリル)の合成
水134kgに水酸化ナトリウム19.6kgを加えて溶解し、20〜25℃で65.6%の3−(ジメチルアミノ)プロピルクロライド塩酸塩水溶液60.7kgを滴下した。トルエン58.2kgを加えて攪拌し、静置分液した。水層にトルエン58.2kgを加えて攪拌し、静置分液した。有機層を合一し、粉末の無水炭酸カリウム9kgとモレキュラーシブス4A1.7kgを加えて1時間攪拌した。濾過し、濾過残渣をトルエン27kgで洗浄し、3−(ジメチルアミノ)プロピルクロライドのトルエン溶液を得た。
【0150】
実施例21と同様にして得られた1−(4’−フルオロフェニル)−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−カルボニトリルのトルエン溶液639.9kg(1−(4’−フルオロフェニル)−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−カルボニトリル44.8kg相当)を30〜50℃で減圧濃縮し、トルエン539kgを留去した。この濃縮液にトルエン27kgを加え、先に調製した3−(ジメチルアミノ)プロピルクロライドのトルエン溶液を流入し、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン10kgを加えた。25〜30℃で64.8%の水素化ナトリウム9.1kgを添加後、直ちに1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン183kgを滴下した。滴下温度は25〜60℃で、4時間20分を要した。60〜63℃で6時間反応し、約10℃に冷却した。HPLCで反応液を分析すると、1−(4’−フルオロフェニル)−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−カルボニトリルの残存率は0.1%であった。
【0151】
約5℃の水806kgに反応液を滴下し、トルエン233.5kgを加えて攪拌抽出後、静置分液した。水層にトルエン233.5kgを加え、攪拌抽出して分液した。抽出した有機層を合一して5%塩酸179kgで攪拌抽出し、分液した。有機層を再度5%塩酸179kgで抽出して分液し、塩酸で抽出した水層を合一した。合一した水層にトルエン234kgを加え、25〜35℃で25%水酸化ナトリウム89.6kgを滴下してアルカリ性とした。攪拌抽出し、静置分液した。水層は再度トルエン156.3kgで抽出し、有機層は合一した。有機層を水268.7kgで3回洗浄した。有機層を粉末無水炭酸カリウム17.9kgで脱水し、シリカゲル(メルク9385)6.7kgを加えて1時間攪拌した。濾過し、濾過残渣をトルエン39.1kgで洗浄した。トルエンを減圧下、40〜65℃で留去した。留去トルエン量は425kgであった。濃縮残渣にアセトン35.5kgを加えて溶解し、シタロプラムのアセトン溶液を得た。液量96.1kg中、シタロプラムベースは52.96kg(収率87.2%)含まれていた。一部アセトンを留去して得られた結晶の臭化水素酸塩の、HPLC保持時間は実施例22で得られたものと一致した。
【0152】
参考例1
1−(3−(ジメチルアミノ)プロピル)−1−(4’−フルオロフェニル)−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−カルボニトリル臭化水素酸塩の製造アセトン163.4kgに、実施例30で製造したシタロプラムのアセトン溶液94.1kg(シタロプラム51.8kgを含む)を加え、25〜35℃の温度で臭化水素13.2kgを3時間かけて吹き込んだ。3時間熟成したのち約5℃まで冷却し、0〜5℃でさらに3時間熟成した。濾過した結晶を、0〜5℃に冷却したアセトン40.9kgで洗浄した。減圧下、30〜50℃で乾燥することにより、シタロプラム臭化水素酸塩54.9kg(収率84.8%)を得た。融点:180〜183℃、
嵩密度:静で0.29kg/L、動で0.32kg/L。
【0153】
参考例2
1−(3−(ジメチルアミノ)プロピル)−1−(4’−フルオロフェニル)−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−カルボニトリル(シタロプラムベース)の合成
60%水素化ナトリウム4.2gをTHF135mlに分散させた懸濁液に1−(4’−フルオロフェニル)−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−カルボニトリル21.6gのTHF(40ml)溶液を40−50℃で滴下した。同温度で30分攪拌した後、3−(ジメチルアミノ)プロピルクロリド14.4gのt−ブチルメチルエーテル(60ml)溶液を滴下し、10分攪拌した後、さらにジメチルスルホキシド135mlを滴下し、60−70℃で5時間攪拌した。反応液は氷水800mlにあけ、トルエン250mlで3回抽出した。有機層は20%酢酸水250mlで2回抽出し、水層を中和後、トルエン250mlで2回抽出し、水洗後、溶媒を留去することにより、粘調オイル状の1−(3−(ジメチルアミノ)プロピル)−1−(4’−フルオロフェニル)−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−カルボニトリル(シタロプラムベース)17.9g(61.1%)を得た。
1H−NMR(CDCl3,400MHz)δ=1.26−1.52(2H,m),2.11−2.26(4H,m),2.13(6H,s),5.15(1H,d,J=13Hz),5.19(1H,d,J=13Hz),7.00(2H,t,J=9Hz),7.39(1H,d,J=8Hz),7.43(2H,dd,J=9Hz,J=5Hz),7.50(1H,s),7.59(1H,d,J=8Hz)ppm
このものを常法により臭化水素酸塩とした結晶の融点は184−186℃であった。
【0154】
【発明の効果】
以上のことから、本発明の製造方法により、安価に、収率よく、工業的に、抗うつ剤として有用なシタロプラムを製造することができる。また、シタロプラムの合成における鍵化合物である化合物[III]の新規な製造方法を提供することにより、化合物[III]の合成の選択肢を広げることができる。

Claims (12)

  1. 式[II]
    Figure 0003735026
    で示される化合物を還元および環化して、式[III]
    Figure 0003735026
    で示される化合物を得る第一工程;
    式[III]で示される化合物を酸化して、式[V]
    Figure 0003735026
    で示される化合物を得る第二工程
    式[V]で示される化合物をオキシム化反応および脱水反応を順次行うことにより、式[VI]
    Figure 0003735026
    で示される化合物を得る第三工程;および
    式[VI]で示される化合物を3−(ジメチルアミノ)プロピルハライドと反応させる第四工程を包含することを特徴とする、式[A]
    Figure 0003735026
    で示されるシタロプラムの製造方法。
  2. 式[I]
    Figure 0003735026
    で示される化合物を酸化して、式[II]で示される化合物を得る工程をさらに包含する、請求項1記載の製造方法。
  3. 前記第四工程において、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンおよび1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンから選ばれる少なくとも1つと縮合剤の存在下、式[VI]で示される化合物を3−(ジメチルアミノ)プロピルクロリドと反応させることを特徴とする、請求項1または2記載の製造方法。
  4. 式[II]
    Figure 0003735026
    で示される化合物を還元および環化することを特徴とする、式[III]
    Figure 0003735026
    で示される化合物の製造方法。
  5. 無水トリメリット酸をフルオロベンゼンとフリーデルクラフツ反応させて、式[II]
    Figure 0003735026
    で示される化合物とその異性体である式[IV]
    Figure 0003735026
    で示される化合物との混合物を得、次に当該混合物を還元および環化して、単離することを特徴とする、式[III]
    Figure 0003735026
    で示される化合物の製造方法。
  6. 反応が2塩素置換または3塩素置換ベンゼン溶媒中で行われることを特徴とする請求項5記載の製造方法。
  7. 水素化ホウ素ナトリウムを用い、さらに、ルイス酸または硫酸ジアルキル類を触媒として用いて還元することを特徴とする請求項5または6記載の製造方法。
  8. 触媒が硫酸、硫酸ジメチル、硫酸ジエチルまたは三弗化ホウ素であることを特徴とする請求項記載の製造方法。
  9. 酸触媒を用いて環化することを特徴とする請求項5または6記載の製造方法。
  10. 酸触媒が無機酸であることを特徴とする請求項記載の製造方法。
  11. 無機酸が塩酸、硫酸または燐酸であることを特徴とする請求項10記載の製造方法。
  12. 二酸化マンガンを用いて、式[III]
    Figure 0003735026
    で示される化合物を酸化することを特徴とする、式[V]
    Figure 0003735026
    で示される化合物の製造方法。
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