JP3734571B2 - 壁パネルの取付構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、建築用壁パネルの取付構造に係り、特に乾式構法でベランダ部分を納める際に好適な壁パネルの取付構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のベランダ壁の取付構造の例を説明する。図6に示す第1の従来例では、水平梁51の上面に定規アングル52が固定され、更に定規アングル52に壁パネル55の高さ寸法に対応して縦下地アングル54が固定され、この縦下地アングル54の下端に自重受け下地アングル56が、上端に頭繋ぎ下地アングル57が水平方向に併設される。自重受け下地アングル56及び頭繋ぎ下地アングル57には所定のピッチでフックボルト58が設けられ、このフックボルト58を壁パネル55の上端部と下端部に設けられた貫通穴55aに嵌入して図示しないナットをフックボルト58に螺合して定着して固定する取付構造になっている。なお、ナットをフックボルト58に螺合して定着して固定した後、壁パネル55表面のフックボルト58部の座掘孔を補修する。
【0003】
また、図7の斜視図とその取付部の要部を示す図8に示す第2の従来例では、水平梁51に対して鉛直方向下方に下地アングル61が短いアングル53を介して固定され、更に縦下地アングル61に壁パネル62の下端部を受けて支持する受けアングル63が水平方向に配設される。また、水平梁51には定規アングル52が固定されており、受けアングル63及び定規アングル52には所定ピッチで取付金具64及びボルト64aが設けられている。そして、この取付金具64及びボルト64aを壁パネル62の下端部と中間部に設けられた埋込ナット62aに嵌入螺合して定着して固定する。このように、第2の従来例では、水平梁の上フランジに設置された定規鋼材の位置と、パネルの最下部に設置された受け鋼材の位置の2カ所でパネルがそれぞれ固着されて取り付けられる壁パネルの取付構造ではあるが、パネルの上端側には金具等は使用されていない構造であった。
【0004】
また、第3の従来例として、特開平6−307049号公報に示されたベランダ手摺壁パネルの取付構造がある。この取付構造の例を、図9に示す。この取付構造は梁51に定規アングル52及び下側アングル71を固着し、これらのアングルに専用の垂直部材72を溶接し、パネル75を下側アングル74と垂直部材72の間に吊り込み、上端部に水平部材73を配設して垂直部材72に固着するというパネルの取付構造である。なお垂直部材72には、あらかじめ、頂部に張り出し部72aが、中間部に懸架可能な突起72bが設けられ、突起72bにより定規アングル52を介して梁51に固定する構造となっていると共に前記の張り出し部72aにより水平部材73を固定できる構造になっている。この取付構造では、パネルの頂部小口面に丸棒76を挿通すると共に該丸棒76を上端部に配設された長手方向に連続した水平部材73に溶接することで、パネル75を固定する構造になっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、第1の従来例では、壁パネル55は、壁最上部でフックボルト58により取り付けているため、壁パネル55の上部を取り付ける頭繋ぎ下地アングル57を壁面全体の上部に通して設ける必要があり、この頭繋ぎ下地アングル57を支える縦下地アングル54の取付けも含めて、下地アングルの取付に手間を要する上、下地アングル全体をアングル材を用いるなどして、しっかりと構成する必要があった。また、パネル間の縦目地に縦下地アングル54を通していたため、該パネルの内側に縦下地アングル54のフランジ面が露出するため、防水仕上げの端部の納めが難しく、適正な納めのためには、ラスモルタルなどの仕上げ材によって仕上げを施した上、防水仕上げの端部を納める必要があるため、仕上げ厚が厚くなる上、ベランダ上部の笠木もそれに応じた幅の広い寸法のものを使用する必要がある取付構造あった。
【0006】
さらに、第1の従来例の取付構造はパネルの取付にフックボルト58を用いるため、座掘孔を補修モルタルで埋め、さらに座掘補修部をパネル表面と同様な状態に仕上げることが必要なため、作業は繁雑であり施工能率が悪かった。また、第2の従来例では、水平梁51の上フランジ51aに固定した定規アングル52に固定した取付金物64の部位で壁パネル62の高さ方向中間部を支持し、パネルの上端部は何ら金物類が存在しない構造であり、壁パネル62の上部に水平力が作用した場合、てこの作用で、この取付金物64の部分に大きな荷重がかかるため、取付金物64の部分は強力な取付構造が要求され、この第2の従来例では壁パネル62の内部に埋設された補強鉄筋に溶接接合された埋込ナットに取付けボルト64aを係合させるように構成している。
【0007】
このように、取付部には、あらかじめ補強鉄筋に溶接固定された埋込ナットなどの金物を用いて、取付部を高強度の仕様にしておく必要があり、埋込ナットの位置はパネル内で固定され、施工現場で受けアングル63の高さ位置が少しでも狂うと簡単には対応できないという問題点があった。また、壁パネル62の上部小口面にそって、水平部材が設置されないため、壁パネル62に反りがあった場合などには、壁パネル上部が面外にあばれ、不揃いになる可能性があった。そのため、壁パネルの縦目地間にモルタルを入れ固定してあるが、モルタルが硬化して隣接する壁パネル62を拘束出来るようになるまで、何らかの仮止め手段により、隣接する壁パネル62の面外の位置を仮固定しておく必要があった。
【0008】
その上、上記した反り補正の意味だけではなく、第2の従来例では、壁パネルが相互に一体化されないために、壁に集中荷重が作用した場合に、その荷重を左右の隣接する壁パネルに分散負担させる目的で、壁パネル間の目地にモルタルを詰め、湿式構法とする必要があった。そのため、モルタル施工の手間が発生する上に、モルタルで現場や壁パネルを汚す可能性も高く、強度発現のためには、モルタルの硬化養生期間を置く必要があった。このように他の一般部分の軽量気泡コンクリート壁の施工が乾式構法によっている場合でも、ベランダ部分の施工のためにのみ、モルタルの混練および施工の必要が出るという問題もあった。
【0009】
さらに、壁パネル62は工場で製作される際に、あらかじめ前記埋込ナットの位置を設定する必要があり、建設現場での壁パネル62の取付位置にズレが生じた場合、位置調整が困難である。また、工場で、埋込ナットを補強鉄筋の所定の位置に溶接固定などするため、パネル製作上、埋込ナットのない一般のパネルとは別の製造ラインでの製作を要するなどの手間が発生するという問題がある。
【0010】
また、図8に示すように、壁パネル62の裏面62aが定規アングル52の起立片に当接するように配置されるため、受けアングル63の起立片が定規アングル52の起立片に面一になるようにする必要があり、該受けアングル63を支持する縦下地アングル61を定規アングル52に対して、接続部Aにおいて線接触で固定しなければならず、縦下地アングル61の位置決めが困難であると共に、溶接ビード長が十分に確保出来ないという問題点がある。
【0011】
更には、縦下地アングル61を定規アングル52の下部に溶接する際の溶接作業の姿勢が上向き溶接となり、水平梁51の下フランジ51bが溶接作業者の視界を遮る位置にあるために、溶接作業中に溶接状態の確認が困難であり、熟練工による高い溶接技術が要求されるという問題点もある。次に、第3の従来例では、壁パネル75の縦目地間に通す垂直部材72が、あらかじめ工場などで張り出し部材72aや突起72bを取付加工された専用の部品を用いる必要がある。そのため、現場ごと、場合によっては同一現場内でも場合によっては、ベランダ壁の高さや水平梁51の高さ位置などが変わるのが一般的であるため、現場ごとに垂直部材72の寸法などの仕様を変更し、場合によっては、同一現場内でも数種類の垂直部材72を用意する必要がでてくる。このような理由により、専用部材としての垂直部材72の規格化は困難であり、コストアップにもつながり現実的な取付構造ではない。
【0012】
また、第3の従来例では、パネル75の上端部に長手方向に連続した水平部材73が配置され、該パネルの頂部小口面に設置された丸棒76などの金物に該水平部材73を固定することによってパネル75を固定している。そのため、丸棒76などの金物の取付け設置に手間を要する上、該水平部材73を長さ方向に連続して設置する必要があるため、水平部材73の設置および丸棒76などの金物との取り付けが繁雑であり、施工能率にも問題があった。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る第1の発明は、水平梁の上フランジに設置された定規鋼材の位置と、パネルの最下部に設置された受け鋼材の位置の2カ所でパネルがそれぞれ固着されて取り付けられる軽量気泡コンクリートパネルの壁パネルの取付構造であって、該パネル相互の縦目地間には、少なくとも水平梁の上フランジ近傍から、当該壁パネルの最上部近傍までフラットバーが設置され、該フラットバーは間接的に水平梁に固定され、更に当該壁パネルの最上部には、長手方向に所定の長さを有すると共に、該パネルの厚さに対応する幅を有して該パネルの上端に当接あるいは近接する略平面部と、該略平面部に直交して接続され、該パネルの表裏面に当接するツバ部を有する断面略コの字状のキャップが、隣接するパネル相互の上端部に跨って嵌合されて、該隣接する複数の壁パネルを一体的に係止するように構成され、該キャップは壁パネルの縦目地位置近傍で該パネルの厚さ方向の中央近傍位置に、略平面部にスリット状の穴あるいは切欠きが設けてあり、前記フラットバーの上端部が該スリット状の穴あるいは切欠きに通されて、該キャップと前記フラットバーが上方向から溶接固定されてなることを特徴とする壁パネルの取付構造である。
【0014】
なお、この発明で、水平梁の上フランジに設置された定規鋼材の位置とパネルの最下部に設置された受け鋼材の位置の2カ所でパネルがそれぞれ固着されて取り付けられる取付構造とは、パネルを固定する為のボルト挿通孔等を有する取付金物が定規鋼材や受け鋼材に固着されている場合も含み、それ故、パネルの固着位置が定規鋼材や受け鋼材の少し上や下にずれている場合も含む構造である。
【0015】
また、本発明で、フラットバーは、パネル相互の縦目地間に配され、少なくとも水平梁の上フランジ近傍から、当該壁パネルの最上部近傍までフラットバーが設置される。そして該フラットバーは、例えば図1に示すように梁1の上に固定された定規アングル2に固定された縦下地アングル4に固定される構造のように、間接的に水平梁に固定される。
【0016】
更に、本発明では、壁パネルの最上部には、長手方向に所定の長さを有すると共に、該パネルの厚さに対応する幅を有して該パネルの上端に当接あるいは近接する略平面部と、該略平面部に直交して接続され、該パネルの表裏面に当接するツバ部を有する断面略コの字状のキャップが、隣接するパネル相互の上端部に跨って嵌合されて、該隣接する複数の壁パネルを一体的に係止するように構成され、また、前記フラットバーの上端部が前記キャップのスリット状の穴あるいは切欠きに通されて、前記キャップと前記フラットバーが上方向から溶接固定されている。このようにフラットバーを介して梁に間接的に固定されたキャップによりパネルは上端部でも固定されている。例えば、図1〜図3に示したように、壁パネル6の上部の縦目地位置で、壁パネル6の厚さ方向の中央に、断面略コの字型のキャップ13にスリット13aが設けてあり、フラットバー12の上端部が該スリット13aに通され、断面略コの字型のキャップ13とフラットバー12が上方向から溶接固定されている。
【0017】
このように、本発明の第1の発明は、壁パネルの縦目地間に通す垂直部材を、汎用部材であるフラットバーを用いるため、部材のロスを少なく、かつ簡単に構成でき、コストダウンも可能である。また、壁パネルの厚みの中にフラットバーが収まっているため、内側の仕上げ工事を省力化することが可能である。
【0018】
更に、フラットバーの上端部に断面略コの字型のキャップが隣接する相互のパネルに跨って固定されているため、集中荷重を左右の壁パネルに分散させる効果を持つと同時に、フラットバーにも有効に荷重伝達でき、定規鋼材の位置のパネル取付部に作用する荷重を低減出来る効果を持っており、かつ、壁パネル自体に反りなどがあった場合にも、面精度を左右のパネル間で確保するという効果も発揮する。
【0019】
その上に、キャップをフラットバー以外の壁パネルの上部小口面に取り付ける作業の必要がない等の簡単に施工できる取付構造である。更に説明すると、本発明の第1の発明は、壁パネルの縦目地間に通す垂直部材として、予め工場などで加工された専用の垂直部材を用いることなく、汎用部材であるフラットバーを、例えば、定尺6メートル長さのフラットバーを現場に搬入し、適宜切断加工して用いることが出来るため、部材のロスを少なく、かつ簡単に縦目地間の垂直部材を構成することができ、コストダウンも可能である。また、キャップにあって、前記壁パネルの縦目地位置近傍で該パネルの厚さ方向の中央近傍位置に、略平面部にスリット状の穴あるいは切欠きが設け、前記フラットバーの上端部 を該スリット状の穴あるいは切欠きに通し、キャップとフラットバーを上方向から溶接固定するので、壁パネル建て込み後、上から該キャップを被せ、次に、上方向から溶接するという単純な施工工程で作業ができるという更に好ましい効果を発揮する。即ち、フラットパーに上からキャップを被せる工程で、フラットバーの上面が露出し、上面からフラットバーとキャップとを溶接することができ、被せる工程と溶接工程だけの単純な作業によってキャップが固定できる。
【0020】
また、本発明の第1の発明は、水平梁の上フランジ近傍から、当該壁最上部近傍まで、言い換えるならば、ベランダ壁パネルが床スラブから上部に立ち上がった部分に、縦目地に補強鋼材としてフラットバーを設置して補強してあるため、壁パネルの厚みの中にフラットバーを収めることが可能であり、そのため、内側に防水工事などの仕上げをする場合に、補強鋼材が該壁パネルの裏面に露出することがなくため、防水仕上げの端部を直接、該壁パネルの裏面に溝掘りをするなどして納めることが可能である。ひいては、内側の仕上げの厚みを無くするか、あるいは薄くすることができ、かつ、内側の仕上げ工事も省力化することが可能である。
【0021】
この際に、防水納めの溝掘り寸法10〜20mmの深さ位置にフラットバーがこないよう、該壁パネル相互の縦目地にあって、該壁パネルの裏面より10〜20mm以上離れた位置にフラットバーを設けるのがよい。例えば、該壁パネルの厚みが100mmであり、フラットバーの幅50mmのものを用い、該フラットバーをちょうど該壁パネルの厚さ方向の中央位置に設けた場合、該壁パネルの裏面より25mm離れた位置にフラットバーが位置することになり好ましい。この場合には、フラットバーの位置は、該壁パネルの表面から25mm離れており、表面側あるいは裏面側の縦目地にシーリングを打つ場合にも、シーリングの打設深さに不足はなく、好ましい。
【0022】
また、当該壁の最上部には、壁パネルの厚さに対応する幅を有して壁パネルの上端に当接あるいは近接する略平面部と、該略平面部に直交して接続され、壁パネルの表裏面に当接するツバ部を有する断面略コの字状のキャップを、隣接するパネル相互の上端部に跨って嵌合させて、該隣接する複数の壁パネルを一体的に係止するように構成し、該キャップを前記したフラットバーに固着してあるため、縦目地にモルタルを入れる湿式構法によることなく、隣接する壁パネルを一体的に固定することができ、ベランダ壁の1カ所に集中的に荷重が作用した場合でも、その荷重を左右の隣り合う壁パネルに負担させることができる。
【0023】
また、同時に、壁パネルに反りがあり、ベランダ上部で壁パネルが面外方向にあばれた場合にも、該キャップが隣接する壁パネルに跨って嵌合しているため、壁面の精度が出にくいということがない。その上、パネルの上端小口面にそって、連続して水平部材を配置する必要がなく、該パネルの頂部小口面に設置された丸棒などの固定金物を用いる必要もないため、固定金物の取付け設置に手間を要することもなく、水平部材を長さ方向に連続して設置する必要もないため、水平部材の設置および丸棒などの金物との取り付けなどの繁雑な作業がなく、能率的な施工が可能になる。
【0024】
【0025】
次に、軽量気泡コンクリートパネルの壁パネルを水平梁の上フランジに設置された定規鋼材の位置と、パネルの最下部に設置された受け鋼材の位置の2カ所でパネルをそれぞれ固着して取り付けるにあたって、パネルの長辺側面あるいは短辺小口面から、その面と垂直方向にあけられた穴の中に、棒状あるいは管状のパネル取付け用アンカー部材を差し込むことによりパネル内にパネル取付け用アンカー部材を内設するという方法で、定規鋼材の位置に取付けることもできる。即ち、室内側から該アンカー部材が存在する穴までボルトが通る穴を設け、該ボルトとアンカー部材を係合させ、このアンカー部材に係合されたボルトを利用してパネルを乾式で取付けることができる。
【0026】
このようにすると、パネルの長辺側面あるいは短辺小口面から、取付用のアンカー部材を内設したものであるので、施工現場でパネルの長辺側面あるいは短辺小口面から取付用のアンカー部材取付用の穴をあけ、取付用のアンカー部材を内蔵することができる。このように施工現場での取付位置の変更にも対応できる上、壁パネルの製造に特別な手間をかけることもなく、かつ、現場で座掘孔などの補修も必要としないで水平梁の上フランジに設置された定規鋼材の位置と、パネルの最下部に設置された受け鋼材の位置の2カ所でパネルがそれぞれ固着されて取り付けられる。
【0027】
また、パネルの最下部でパネルを固着して取り付ける為に、軽量気泡コンクリートパネルの壁パネル相互の縦目地間には、躯体の水平梁の上フランジ近傍から該壁パネルの最下部近傍まで、アングルが片側のフランジ面がパネルの縦目地間に位置するよう設置され、該アングルの該壁パネルの裏面に平行なフランジが近接する該壁パネルの少なくとも片側のパネルの裏面部分を、該アングルのフランジ厚と同寸法あるいはやや深い寸法で、切削加工してもよい
【0028】
このように、パネルの最下部でパネルを固着して取り付ける為に軽量気泡コンクリートパネル相互の縦目地間に、水平梁の上フランジ近傍から、該壁パネルの最下部近傍まで、アングルを片側のフランジが縦目地間に位置するよう設置しこのアングルの下端部には、図1に示すようにパネル下端を支える受けアングルを固定し、該受けアングルにパネル下端部用の取付金物を固着できるようにすることが最も好ましい。
【0029】
尚、上記のように前記のアングルの壁パネルの裏面に平行なフランジが近接する該壁パネルの少なくとも片側のパネルの裏面部分を、該アングルのフランジ厚と同寸法あるいはやや深い寸法で切削加工する場合、。即ち、該アングルのパネルの裏面に平行なフランジが接することになるパネルの少なくとも裏面部分を、該アングルのフランジ厚と同厚あるいはやや深い寸法で、切削加工した構造とする場合に、図2に示すようにパネルの裏面に接するフランジが存在しないパネルの右側裏面は切削する必要が無く、図2に示すような場合は、パネルの左側の裏面が切削加工されておればよい。このように少なくとも片側のパネル裏面が切削加工されておればよい。
【0030】
なお、図2に示すように、縦方向のアングルとフラットバーとを固定するために、両者を重ね合わせた構造とすると、図2に示したように、パネルの左側の側面が縦方向のアングルのフランジに接して、フラットバーに接しなくなる場合には、該フランジに接する裏面寄りのパネル側面を前記したようにアングルのフランジ厚と同寸法あるいはやや深い寸法で、切削加工することが特に好ましい更に、図2に示したように、パネルの右側の側面がフラットバーに接して縦方向のアングルに接しなくなる場合には、該フラットバーに接する裏面寄りのパネル側面を該フラットバーの厚みと同寸法あるいはやや深い寸法で、切削加工していることが特に好ましい。
【0031】
いずれの場合も、切削加工部分の縦方向の長さを少し長めにすると,現場で施工する際にパネルを所定の位置に取り込み易くなるので好ましい。また、この場合、水平梁の上フランジ近傍から、該壁最下部近傍までにかけての部分も、汎用部材であるアングルを、現場において適宜切断加工して用いることが出来るため、部材のロスを少なく、かつ簡単に縦目地間の垂直部材を構成することができるので、部材のコストダウンをすることが可能である。
【0032】
更に、この場合、パネル裏面を直接定規アングルと受けアングルに当てることにより、パネルの位置決めをすることが可能になり、更には、パネル裏面が縦方向のアングルに接することができることと相俟って、スペーサー等の余分な金物を使用する必要が無く、施工性もよくなり、取付強度の確実性も良くなるという効果を兼ね備えている。
【0033】
【0034】
【0035】
次に、本発明の第2の発明は、水平梁の上フランジに設置された定規鋼材の位置と、パネルの最下部に設置された受け鋼材の位置の2カ所でパネルがそれぞれ固着されて取り付けられる軽量気泡コンクリートパネルの壁パネルの取付構造であって、該パネル相互の縦目地間には、少なくとも水平梁の上フランジ近傍から、当該壁パネルの最上部近傍までフラットバーが設置され、該フラットバーは間接的に水平梁に固定され、更に当該壁パネルの最上部には、長手方向に所定の長さを有すると共に、該パネルの厚さに対応する幅を有して該パネルの上端に当接あるいは近接する略平面部と、該略平面部に直交して接続され、該パネルの表裏面に当接するツバ部を有する断面略コの字状のキャップが、隣接するパネル間にまたがらせずにそれぞれのパネルの上面の端部に跨って嵌合され、隣接するパネル相互の縦目地に配置された前記フラットバーを挟んで隣接するパネルのそれぞれのキャップが前記フラットバーに溶接固定されてなることを特徴とする壁パネルの取付構造である。
【0036】
例えば図4に示すように、断面略コの字状のキャップ13が、コーナーで隣接する壁パネル6の間に跨らせずにそれぞれの壁パネル6の上面の端部に跨って嵌合され、隣接する壁パネル6相互の縦のコーナー目地に配置されたフラットバー12を挟んで隣接する壁パネル6のそれぞれの断面略コの字状のキャップ13がフラットバー12に固着されることにより、コーナーで隣接する壁パネル6どうしを一体的に係止している。そのため、コーナー部分用に、断面略コの字状のキャップ13を平面的に折れ曲がった形状に加工して用意する必要がなく、一般部に用いる平面的に折れ曲がっていない2つの断面略コの字状のキャップ13を用いて止めることができるため、断面略コの字状のキャップ13の品種を一般用とコーナー用の2種類設ける必要がなくなる。そのため、現場における断面略コの字状のキャップ13の管理上も品種が少なくなり望ましい。なお、このように一般用の断面略コの字状のキャップ13をコーナー部にも流用する使いかたをする場合に、断面略コの字状のキャップ13にスリット13aが空いていても実質的には、全く問題ない。また、図9には示していないが、一般部にも、この方法を用いれば、スリット13aを断面略コの字状のキャップ13に設ける必要がなくなるため、断面略コの字状のキャップ13の加工製造コストを低く抑えることが可能となる。
この本発明の第2の発明は、略コの字状キャップにあって、スリット状の穴などの加工を不要とした金物1個あたりの加工手間を落とすことが可能な取付構法であり、一方のパネルの上側の端部寄りに1個のキャップ使用し、このパネルと隣り合うパネルの前記パネルの隣り合う箇所にも1個のキャップを使用することにより、1カ所の縦目地に2個のキャップを用いることによって隣り合うパネルを一体化させることが可能となる。
【0037】
なお、この第2の発明は、一般部での効果以上に、コーナー部分など、縦目地を挟んで壁パネルが平面的に角度をもっている場合、特殊形状の略コの字状キャップを用意する必要がないという優れた効果を持つ。
【0038】
【0039】
なお、本発明は、断面略コの字状のキャップにあって、壁パネルの表裏面に当接するツバ部の高さ寸法は、ベランダ壁上部に取り付けられる笠木の見つけ寸法の中に収まるのが、防水上望ましい。そのため、市販されている笠木の寸法などを勘案すると、該ツバ部の高さ寸法は30mm以下、20〜25mmことが好ましい。しかし、笠木の納まり上問題がない場合やツバ部の高さ寸法が小さくとも強度上問題がない場合には、これ以外の寸法とすることができ、極端な場合には、ツバ部は面ではなく、棒状の部材で押さえることも可能である。
【0040】
また、断面略コの字状のキャップが跨って嵌合されるパネル相互の上端小口面が上下に段差がある場合には、その高い方の壁パネルの部分を施工現場で削り平滑にしてから納めるのがよい。壁パネルは、軽量気泡コンクリートであり、現場でその部分を削るのにさほど困難はない。しかし、該キャップの長さが長くなると、削る作業も大変になるため、該キャップの長さは、400mm以下、好ましくは200mm(100〜300mm)がよい。
【0041】
ただし、このベランダ壁の上部に金属製の手摺りの付いた笠木を取り付ける場合などには、笠木から大きな荷重を受ける可能性があり、壁パネル3枚以上にわたる長い断面略コの字状のキャップを用いたほうが、任意の位置で取り付けられた笠木からの荷重をフラットバーに伝達するのに好都合であり、笠木が連続しているほうが望ましい場合もある。しかし、この場合でも、断面略コの字状のキャップの長さは200mm程度にしておき、さらにその上部に、規格定尺金物であるフラットバーを流して固定するのも有効である。
【0042】
さらに、その取付部位置が、水平梁の上フランジに設置された定規鋼材に固着する位置と、該壁の最下部に設置された受け鋼材に固着する位置の2カ所であり、かつ、当該壁の最上部で、断面略コの字状のキャップに固定されたフラットバーが縦目地間に設置されているため、ベランダ壁が受ける荷重を、該2カ所の取付部のみで負担することなく、フラットバーにも力を配分して、負担することができる。そのため、壁パネル上部に水平部材を通す必要のない構法でありながら、ベランダ壁パネルの上部に水平力が作用した場合、てこの作用で、前記2カ所の取付部分に大きな荷重がかかるのを低減することが可能であり、該壁パネルの内部に埋設された補強鉄筋と接合された高強度の埋込金物を用いる必然性もなくなる。発明者は、この効果を確かめるために、いくつかの試験をおこなったが、その中から、この効果を単純に説明しうる載荷試験の結果2つを比較してここに示す。載荷方法は図5に示すように、ベランダ上部に水平力が裏面側から作用した場合で、フラットバーと断面略コの字状のキャップがない場合とある場合の効果が確認できる。幅600mmのパネル1枚当たりの破壊荷重は、ない場合が2452Nで、ある場合が3113Nとなっており、1.27倍になっている。これは、壁パネルの断面2次モーメントが11650cm4 、フラットバー(幅50mm、厚さ6mm)の断面2次モーメントが6.25cm4 であり、断面2次モーメントの合計値が、1.0005倍にしかなっていないことを併せて考えると、フラットバーはその断面性能以上に有効に作用していると考えられる。そのため、フラットバーの厚みや幅を増加させることは、強度上、有効であると考えられ、また他の実験結果でもそのことが確認できる。
【0043】
なお、ここでの試験では、壁パネルの仕様は、長さ1630mm、幅600mm、厚さ100mmであり、断面略コの字状のキャップは、長さ120mm、幅の外寸法が105mm、幅の内法寸法が100.4mm、ツバ部の高さが30mm、肉厚が2.3mmであった。このように、長さが120mmという壁パネルの幅600mmに対して、その20%程度の小さなキャップにおいても、有効に隣接する複数の壁パネルとフラットバーを一体化できる。実際への適用にあっては、設計強度の要求度に応じて、該キャップの長さや肉厚を適宜変更することが可能である。また、該キャップの長さや肉厚を増すことによって、ツバ部の高さを調整することもでき、壁パネル上部に納まる笠木の寸法内に収まるようにツバ部の高さを小さくすることも可能である。
【0044】
また、本発明では、例えば図1〜図3に示すように、パネルの長辺側面あるいは短辺小口面から、その面と垂直方向に、棒状あるいは管状のパネル取付け用アンカー部材であるアンカー鋼棒7が、内設されている取付部によっており、あらかじめ工場でパネル内部の補強鉄筋と接合された高強度の埋込金物を用いる必要がない。これは、ベランダ壁が受ける荷重を、水平梁1の上フランジ1aに設置された定規鋼材2に固着する位置と、該壁の最下部に設置された受け鋼材5に固着する位置の2カ所の取付部のみで負担することなく、キャップ13を介してフラットバー12にも力を配分して、負担することの効果として、達成されるものである。前述した試験結果では、該取付部仕様によっており、フラットバー12を用いない場合のベランダ部の破壊荷重は、幅600mmのパネル1枚当たり2452Nになっている。一方では、人間工学的な判断によるベランダ部に作用する水平荷重設計値は、幅600mmのパネル1枚当たり1765Nであり、安全率を1.5としても(安全率をいくつに設定するかという点は設計者の判断すべき事項であるが)、要求される破壊荷重は2648N以上となり、該取付部仕様でフラットバー12を用いない取付構法では、破壊荷重が要求される破壊荷重以下であるため、一般的には、安全性からみて問題がある。本発明では、以上に説明したように、本発明の第1の発明は、フラットバー12を用いた荷重分担機構によることにより、ベランダ部の破壊荷重を高めることができる。
【0045】
本発明では、水平梁1の上フランジ1aに設置された定規鋼材2に固着する位置と、該壁の最下部に設置された受け鋼材5に固着する位置の2カ所に、パネルの長辺側面あるいは短辺小口面から、その面と垂直方向に、棒状あるいは管状のパネル取付け用アンカー部材であるアンカー鋼棒7が、内設されている簡易な取付部仕様によっても、ベランダ部の破壊に対する安全性の確保を成し遂げることができた。この方法によれば、建築現場で壁パネル6内部の所定の位置に取付け用アンカー部材であるアンカー鋼棒7を設置することが可能であり、あらかじめ工場で、パネル内部の補強鉄筋に対して高強度の埋込金物を取り付ける場合に比較して、壁パネル6の生産効率を上げることが可能であり、パネル製造コストも抑えることが可能である。また、建築現場で取付部位置に取付け用アンカー部材であるアンカー鋼棒7を設置するため、建築現場で水平梁1の取付高さにズレが生じた場合に高さ位置の調整が比較的容易に可能である。さらには、座掘孔の補修を必要とするフックボルト止めと違い、取付後の補修作業も不要な、施工性良好な乾式構法とすることが出来る。
【0046】
尚、アンカー鋼棒7に、一端にアンカー鋼棒7の挿通孔を有するボルトであるOボルト8に係合させ、パネルの室内側面(裏側)に突出した該Oボルト8に、水平梁1に図1等に示すように間接的に固定される取付金物10を介し、ナットで固定されること等によりパネルが建物躯体に取り付けられる。また、前述のOボルトの代わりに、一端にアンカー鋼棒7の挿通孔を有するナットを用いてボルトを該ナットに係合させることによってもパネルを取り付けることができる。
【0047】
次に、本発明では、例えば図2に示したように、壁パネル6相互の縦目地間において、水平梁1の上フランジ1a近傍から該壁最下部である受けアングル5近傍まで、縦アングル4を片側のフランジである片4bが縦目地間に位置するよう設置し、該壁パネル6の裏面に平行な該縦アングル4の他のフランジである取付片4aが近接する該壁パネル6の裏面部分6aを、該縦アングル4のフランジである取付片4aの厚さと同寸法あるいはやや深い寸法で、切削加工している。ここでの加工寸法は、一般に、幅が50mm〜90mm、板厚が6mmの縦アングル4が使われることを考えると、裏面部分6aの切削幅は44〜100mm程度であり、かつ、縦アングル4の板厚が一般に6mmであることを考えると、裏面部分4aの切削深さは6〜15mm程度になる。また、このように、軽量気泡コンクリートの裏面部分6aを、幅100mm程度以下、深さ10mm程度の切削加工を行うことは、加工工具を用いれば、容易に加工することが出来る。以上のような切削加工をしているため、該縦アングル4の該壁パネル6の裏面に平行なフランジである取付片4aの面を、水平梁1の上フランジ1aに設置された定規アングル2の起立面2bに面接触で固定しても、該取付片4aを該壁パネル6の裏面部分6aの中に収めた上、上フランジ1aに設置された定規アングル2bと同一高さで、該壁パネル6の裏面で切削加工していない部分を、該定規アングル2の起立面2bに面接触させ該壁パネル6の面外方向の位置決めを確実にすることが可能であるという効果がある。
【0048】
さらに、該縦アングル4を該定規アングル2の起立面2bに面接触で固定できるため、該縦アングル4の位置決めも確実にできる上、溶接固定する場合には、確実有効な溶接ビード長さを確保出来る上、建物の外部側から確実に溶接状態を確認しながらの溶接も可能になる。また、図3のように、フラットバー12を該壁パネル6の最上部から最下部まで通して設置した場合には、水平梁1の上フランジ1aに設置された定規アングル2の起立面2bなどと該フラットバー12を繋ぐための特殊な取付金物14が必要になり、好ましくない。特殊な取付金物14を用いる代わりに、図示していない短い長さのアングル部材を用いることもできるが、この場合にも、一本のフラットバーに対して、水平梁1の上フランジ1a近傍、水平梁1の下フランジ1b近傍、該壁最下部である受けアングル5近傍の3カ所に、短い長さのアングルを用いる必要があり、図2に示す縦アングル4を通して用いる方が位置決めがし易く、作業性も良いことを考えると、水平梁1の上フランジ1a近傍から該壁最下部である受けアングル5近傍まで縦アングル4を通す方が合理的である。
【0049】
なお、施工手順上は、壁パネル6を建て込む前に、該フラットバーを該縦アングル4に溶接などで固定するほうが、溶接長さや位置を十分に確保することができ、強度を充分確保する上で望ましい。しかし、壁パネル6を建て込む前に、両サイドにフラットバー12がついていると、隣接する壁パネル6の目地間に隙間が設けられていない場合には、該壁パネル6の施工性がやや阻害されるが、図2に示したように、縦アングル4とフラットバー12とを固定するために、両者を重ね合わせた構造にしてあり、壁パネル6の左側の長辺側面が縦アングル4の片4bに接して、フラットバー12には接しなく、縦アングル4の片4bに接する裏面寄りの壁パネル6の長辺側面部分6cを、縦アングル4の片4bの厚みと同寸法あるいはやや深い寸法で、切削加工していることが特に好ましい。
【0050】
更に、壁パネル6の右側の側面がフラットバー12aに接して縦アングル4に接しないため、該フラットバー12に接する裏面寄りの壁パネル6の長辺側面部分6bを該フラットバー12aの厚みと同寸法あるいはやや深い寸法で、切削加工していることが特に好ましい。このような切削加工を行うことにより、隣接する壁パネル6の目地間に隙間が設けられていない場合でも、施工のし易さを向上させることができる。また、いずれの場合も、切削加工部分6a,6b,6cの縦方向の長さを少し長めにすると,現場で施工する際に壁パネル6を所定の位置に取り込み易くなるのでさらに好ましい。
【0051】
一方、施工手順として、壁全体の強度仕様に余裕がある場合には、1枚の壁パネル6につき、該壁パネル6建て込み後に、右側のフラットバー12aを取り付ける施工手順を採ることにより、施工のスピードを上げることもできる。水平梁1の上フランジ1a近傍から該壁最下部である受けアングル5近傍まで、あらかじめ縦アングル4を通し、壁パネル6最下部に受けアングル5を通してあるため、1枚の壁パネル6につき、右側のフラットバー12aをあらかじめ取り付けていなくとも、該壁パネル6建て込みことが出来、その後に右側のフラットバー12aを取り付けることが可能である。一方、図3に示すように、壁パネル6の最上部から最下部までフラットバー12を通して設置した場合には、壁パネル6の建て込み前にあらかじめ両サイドのフラットバー12を設置し、壁パネル6最下部に受けアングル5を通してから、該パネルを建て込む必要がある施工スピードの上で不利である。このように、壁パネル6相互の縦目地間において、水平梁1の上フランジ1a近傍から該壁最下部である受けアングル5近傍まで、縦アングル4を設ける請求項3の発明は、壁パネル6を建て込み後、右側のフラットバー12aを設置する施工手順を採用することができ、施工スピードの上でも、有利である。
【0052】
更に、いずれの施工手順を踏んでも、図2に示す、水平梁1の上フランジ1a近傍から、該壁最下部である受けアングル5近傍まで縦アングル4を通す発明は、図3に示す、フラットバー12を該壁パネル6の最上部から最下部まで通して設置した場合と比較して、該壁パネル6の最下部に設置される受けアングル5を、面外方向にも面内方向にも、より確実に固定でき強度的にも有利である。
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【発明の実施の形態】
図により本発明に係る壁パネルの取付構造の一例としてベランダに取り付けられる壁パネルの取付構造の実施形態を3例示して具体的に説明する。
【0059】
【実施例1】
図1は、本発明に係る1つ目の実施例に係わるものであり、壁パネルの取付構造を示す斜視説明図および専用金物の斜視図である。水平梁1の上フランジ1aの上面に断面L字型で長尺状の定規アングル2の水平片2aが固定され、前記水平梁1の下フランジ1bの下面に所定の幅を有する断面L字型のアングルピース3の水平片3aが固定される。
【0060】
この時、定規アングル2の起立片2b及びアングルピース3の起立片3bは面一に配置され、両起立片2b、3bに断面L字型で所定の長さを有する縦下地アングル4の取付片4aが面接触して当接して溶接等により固定され、該縦下地アングル4が上下方向に配置される。また、縦下地アングル4の下端部には、断面L字型で長尺状の受けアングル5が定規アングル2に平行して配置して溶接等により固定され、受けアングル5の水平片5aが壁パネル6の下端面を支持するようになっている。
【0061】
前記受けアングル5の起立片5bおよび前記定規アングル2の起立片2bの壁パネル6側の面は、縦下地アングル4の取付片4aの水平梁1側の面とは面一になるように配置され、水平梁1に対する定規アングル2の取付け位置を予定される壁パネル6の裏面(室内側面)の位置よりも縦下地アングル4の取付片4aの板厚分(例えば、6mm)だけ、室内側に控えて配置される。
【0062】
このように、受けアングル5及び定規アングル2と、壁パネル6の間には、縦下地アングル4の取付片4aの板厚分だけの隙間があるため、スペーサーを兼ねた取付金物9をその隙間に設置している。さらに、取付金物9だけでは、壁パネルの位置決めが難しいときには、適宜、隙間に対応した厚さの図示しないスペーサーを受けアングル5の起立片5bおよび定規アングル2の起立片2bの前面に設置する。
【0063】
また、縦下地アングル4の上端部を定規アングル2の起立片2bよりも上部まで通して立ち上げ、該縦下地アングル4の取付片4aを、定規アングル2の起立片2b及びアングルピース3の起立片3bは面接触で当接させて溶接等により固定するように構成したことで、壁パネル6の建て込み前に、縦下地アングル4の取付片4aを定規アングル2及びアングルピース3の起立片2b、3bに面接触させて押し当てて縦下地アングル4の位置決めが容易に出来ると共に、縦下地アングル4の取付片4aが定規アングル2及びアングルピース3の起立片2b、3bに面で接しているため、溶接により固定する場合には、正面から溶接状態を黙視確認しながら十分な溶接ビード長を確保することが出来、溶接作業も縦向き溶接或いは下向き溶接が可能となり、前述の第2の従来例のように上向き溶接したものと比較して溶接の品質及び信頼性を確保することが出来る。
【0064】
一方、壁パネル6の内部には、水平梁1の上フランジ1aに設置された定規アングル2に対応した高さ位置と、受けアングル5に対応した高さ位置に、該壁パネル6の幅方向に配置されたアンカー鋼棒7a,7bが埋設され、更に、前記アンカー鋼棒7a,7bに夫々係合するOボルト8a,8bが壁パネル6の裏面から突出している。
【0065】
また、壁パネル6相互の縦目地には、定規アングル2の高さ位置近傍から、壁パネル6の上端部まで、フラットバー12が壁パネル6の厚みの中央に収まるように通してあり、その上端部を断面略コの字状のキャップ13のほぼ中央に設けたスリット13aに差し込んであり、上方向から溶接固定してある。そのため、壁パネル6に作用する荷重、特に、上端部に作用する荷重は、前記アンカー鋼棒7a,7b、Oボルト8a,8b、取付金物9、10を介して、定規アングル2から水平梁1に伝達するだけではなく、断面略コの字状のキャップ13、フラットバー12、縦下地アングル4を介して、定規アングル2から水平梁1に、荷重を分担して有効に伝達することが出来る。この荷重分担分は、前記した試験結果より分かるように、フラットバー12の断面性能以上に有効に荷重負担することができる。逆に言えば、フラットバー12が、断面性能以上に有効に加重負担するため、取付部に対応する壁パネル6の内部には、高い強度のある埋込金物をあらかじめ壁パネル6の内部の図示しない補強鉄筋に溶接などで固定しておく必要もない。また、アンカー鋼棒7a,7b、Oボルト8a,8bなどは、すべて施工現場で設置できるため、取付部位置の現場誤差による寸法のズレに対して、取付部位置の調整が可能である。
【0066】
さらに、断面略コの字状のキャップ13は、単に、上からフラットバー13に被せ、上から溶接するだけなので、作業が簡単であり、溶接による取付も確実にすることが出来るため、信頼性が高い。また、このような単純な構成でありながら、断面略コの字状のキャップ13には壁パネル6の表裏面に当接するツバ部13bを有しているため、隣接する相互の壁パネル6を面外に拘束し、一体化することが可能である。そのため、壁パネル6の一部分に大きな荷重を受けた場合にも、その荷重をフラットバーに伝えるのみならず、隣接する相互の壁パネル6にも有効に荷重分担することが可能である。
【0067】
さらに、表裏面に当接するツバ部13bは、壁パネル6に反りがあった場合にも、相互の面を合わせ平滑に仕上げる効果も同時に達成できる。また、フラットバー12の取付位置は、壁パネル6の厚みのほぼ中央であり、壁パネル6の裏面にフラットバー12が露出することもない。そのため、ベランダ床の防水仕上げを行う際に、防水端部の納めのために、直接、壁パネル裏面に、深さ10〜20mm程度の溝掘りを行うことが可能である。よって、裏側の仕上げ工事を省力化できると共に、仕上げ厚も薄くすることが出来、ひいては、ベランダ壁の上部に納まる図示しない笠木の幅寸法も小さいものに出来る。
【0068】
縦下地アングル4へのフラットバー12の溶接は、壁パネル6取付の前に行うのが、溶接位置と長さを確実にとることが出来、望ましい。壁パネル6の建て込み前にフラットバー12aを取り付けても、壁パネル6相互の縦目地に相応の隙間を設けてあれば、壁パネル6の長辺側面に切削加工などを行わなくとも、フラットバー12aが、さほど邪魔になることなく壁パネル6を建て込むことが可能である。
【0069】
さらに、この実施例では、壁パネル6の縦目地間に設置される金物は、すべて汎用部材であるフラットバー12と縦下地アングル4であるため、施工現場に、定尺長さ(例えば、6m)の金物を搬入し、現場の寸法に応じて、適宜、切断して用いることが可能であり、トータルで金物のロスを少なくすることが可能であり、かつ、簡単に垂直部材を構成することができコストダウンも可能である。
【0070】
【実施例2】
図2は本発明に係る2つ目の実施例であり、壁パネルの取付構造を示す斜視説明図および専用金物の斜視図である。この実施例では、定規アングル2の起立片2bと受けアングル5の起立片5bの壁パネル6の裏面側の面が、直接壁パネル6の裏面に面接触して、壁パネル6の位置決めができるように取り付けてある。また、縦下地アングル4の壁パネル6の裏面に平行な取付片4aが、壁パネル6に接触する部分の近傍6aを該取付片4aの厚さと同じかやや深く切削してある。そのため、実施例1にあるスペーサーを兼ねた取付金物9や前記した図示しないスペーサーを用いることなく、壁パネルを、定規アングル2および受けアングル5に直接当てて、位置決めをすることが可能である。
【0071】
また、この実施例では、隣接する壁パネル6相互の縦目地間に隙間を設けていない仕様である。そのため、縦目地間に設置された縦下地アングル4の片4bとフラットバー12(12a)が当たる壁パネルの長辺側面位置を、それぞれ、6c,6bのように加工し、壁パネル6の建て込み前にフラットバー12aが取り付いていても、施工が容易なようにしてある。フラットバー12aを壁パネル6の建て込み後に行うことも可能である。
【0072】
【実施例3】
図3は、本発明に係る3つ目の実施例であり、壁パネルの取付構造を示す斜視説明図および専用金物の斜視図である。この実施例では、フラットバー12を壁パネル6の最下部から最上部まで通した仕様である。そのため、縦下地アングル4は用いず、そのかわりに、取付金具14a、14bが用いられている。
【0073】
この方法は、縦目地間の下地金物がフラットバー12のみになり、単純化できるが、受けアングル5の設置のために、壁パネル6取付前に必ずフラットバー12を取付なくてはならない。また、取付金具14a、14bを一本の縦目地につき、3カ所取り付けるのは、縦下地アングル4を取り付けるより手間である。この実施例3の実施例2にない長所は、上記の手間があるかわりに、6aの加工を行わなくとも、壁パネル6の裏面を直接定規アングル2の起立面2bと受けアングル5の起立面5bに当て、位置決めが出来ることである。ただし、作業性などトータルで見ると、6aの加工を行う実施例2の方法のほうが、効率的であり、かつ、強度的にも確実に受けアングル5を支持できる。
【0074】
【発明の効果】
本発明の第1の発明は、壁パネルの縦目地間に通す垂直部材を、汎用部材であるフラットバーを用いるため、部材のロスを少なく、かつ簡単に構成でき、コストダウンも可能である。また、壁パネルの厚みの中にフラットバーが収まっているため、内側の仕上げ工事を省力化することが可能である。更に、フラットバーの上端部に断面略コの字型のキャップが隣接する相互のパネルに跨って固定されているため、集中荷重を左右の壁パネルに分散させる効果をもつと同時に、フラットバーにも有効に荷重伝達でき、取付部に作用する荷重を低減出来る効果を持っており、かつ、壁パネルに反りなどがあった場合にも、面精度を左右のパネル間で確保するという効果も発揮する。更には、そのキャップをフラットバー以外の壁パネルの上部小口面に取り付ける作業等の必要のない簡単な施工である。
【0075】
【0076】
しかも、略コの字状キャップのスリット状の穴などを設け、該キャップを被せるときに、フラットバーの上部先端に差し込めるように工夫しているため、上部からの被せる工程と上部からの溶接という単純な作業によって、該キャップと該フラットバーの一体化を成し遂げた構法である。
【0077】
本発明の第2の発明では、前記略コの字状キャップにあって、スリット状の穴などの加工を不要とした金物1個あたりの加工手間を落とすことが可能な取付構法であり、1カ所の縦目地に2個の金物を用いることによって可能となった。一般部での効果以上に、コーナー部分など、縦目地を挟んで壁パネルが平面的に角度をもっている場合に特に有効であり、特殊形状の略コの字状キャップを用意する必要がない効果をもつ。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の壁パネルの取付構造および専用金物を示す斜視図である。
【図2】実施例2の壁パネルの取付構造および専用金物を示す斜視図である。
【図3】実施例3の壁パネルの取付構造および専用金物を示す斜視図である。
【図4】本発明の第2の発明の壁パネルの取付構造を示す斜視図である。
【図5】フラットバーと断面略コの字状のキャップがない場合とある場合の効果を確認するベランダ上部に水平力を裏面側から作用させた載荷試験の状況説明図
【図6】第1の従来例を示す図である。
【図7】第2の従来例を示す図である。
【図8】第2の従来例を示す図である。
【図9】第3の従来例を示す図である。
【符号の説明】
1 水平梁
1a 上フランジ
1b 下フランジ
2 定規アングル
2a 水平片
2b 起立片
3 アングルピース
3a 水平片
3b 起立片
4 縦下地アングル
4a 取付片
4b 片
5 受けアングル
5a 水平片
5b 起立片
6 壁パネル
6a,6b,6c 壁パネルの切削加工部分
7a,7b アンカー鋼棒
8a,8b Oボルト
9 スペーサーを兼ねた取付金物
10 取付金物
11 ナット
12 フラットバー
12a 壁パネル取付前に固定されたフラットバー
13 断面略コの字型のキャップ
13a スリット
13b ツバ部
14a 取付金物
14b 取付金物

Claims (2)

  1. 水平梁の上フランジに設置された定規鋼材の位置と、パネルの最下部に設置された受け鋼材の位置の2カ所でパネルがそれぞれ固着されて取り付けられる軽量気泡コンクリートパネルの壁パネルの取付構造であって、該パネル相互の縦目地間には、少なくとも水平梁の上フランジ近傍から、当該壁パネルの最上部近傍までフラットバーが設置され、該フラットバーは間接的に水平梁に固定され、更に当該壁パネルの最上部には、長手方向に所定の長さを有すると共に、該パネルの厚さに対応する幅を有して該パネルの上端に当接あるいは近接する略平面部と、該略平面部に直交して接続され、該パネルの表裏面に当接するツバ部を有する断面略コの字状のキャップが、隣接するパネル相互の上端部に跨って嵌合されて、該隣接する複数の壁パネルを一体的に係止するように構成され、該キャップは壁パネルの縦目地位置近傍で該パネルの厚さ方向の中央近傍位置に、略平面部にスリット状の穴あるいは切欠きが設けてあり、前記フラットバーの上端部が該スリット状の穴あるいは切欠きに通されて、該キャップと前記フラットバーが上方向から溶接固定されてなることを特徴とする壁パネルの取付構造
  2. 水平梁の上フランジに設置された定規鋼材の位置と、パネルの最下部に設置された受け鋼材の位置の2カ所でパネルがそれぞれ固着されて取り付けられる軽量気泡コンクリートパネルの壁パネルの取付構造であって、該パネル相互の縦目地間には、少なくとも水平梁の上フランジ近傍から、当該壁パネルの最上部近傍までフラットバーが設置され、該フラットバーは間接的に水平梁に固定され、更に当該壁パネルの最上部には、長手方向に所定の長さを有すると共に、該パネルの厚さに対応する幅を有して該パネルの上端に当接あるいは近接する略平面部と、該略平面部に直交して接続され、該パネルの表裏面に当接するツバ部を有する断面略コの字状のキャップが、隣接するパネル間にまたがらせずにそれぞれのパネルの上面の端部に跨って嵌合され、隣接するパネル相互の縦目地に配置された前記フラットバーを挟んで隣接するパネルのそれぞれのキャップが前記フラットバーに溶接固定されてなることを特徴とする壁パネルの取付構造
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