JP3731383B2 - 鉛蓄電池 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は鉛蓄電池に係り、特に鉛を主成分とする正極格子体に正極活物質を充填した鉛蓄電池及び鉛を主成分とする負極格子体に負極活物質を充填した鉛蓄電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
鉛蓄電池では、鉛の一部が酸化された鉛粉と水と希硫酸とを主成分とし、これらに必要に応じて添加物を添加して、練合によって得られたペーストを鋳造格子や連続多孔体に塗着し、乾燥させたペースト式極板が広く用いられている。このペースト式極板に更にセパレータ(隔離板)を組み合わせて極板群を構成し、極板群を電槽に組み込んだ後、希硫酸を加えて化成充電するか、化成充電後、電槽内に組み込むことによって、鉛蓄電池は電池本来の機能が付与される。
【0003】
このような鉛蓄電池は、例えば、自動車等の車両に搭載され、エンジン始動用やランプ点灯等の電源として使用される。従来、車載用鉛蓄電池では、電池の重量を軽減するために、正極側の鋳造格子体に正極既化活物質量に対し60重量%以下のものが用いられており、負極側の鋳造格子体に負極既化活物質量に対し40重量%以下のものが用いられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、車載用鉛蓄電池の主な用途の一つとして、上述した自動車エンジンの始動がある。これは、鉛蓄電池からの大電流放電によりエンジン内にスパークを発生させるというものであるが、この放電時間が短いと、エンジンが始動しない、という問題が生じる。
【0005】
本発明は上記事案に鑑み、エンジン始動性の高い鉛蓄電池を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本明では、鉛(Pb)を主成分とする負極格子体に負極活物質を充填した鉛蓄電池において、前記負極格子体の重量を負極既化活物質量の45重量%〜75重量%とした。本発明、大電流放電時の抵抗を小さくするために負極格子体のPb量を増加させたので、高い始動性を有する鉛蓄電池を実現することができる。このとき、鉛(Pb)を主成分とする正極格子体に正極活物質を充填した正極を有しており、正極格子体の重量を正極既化活物質量の65重量%〜75重量%としてもよい。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明を自動車等の車両に搭載される車載用鉛蓄電池に適用した実施の形態について説明する。
(第1実施形態)
図1に示すように、本実施形態の鉛蓄電池10は鉛蓄電池10の容器となる角形の電槽1を備えている。電槽1は成形性、電気的絶縁性、耐腐食性及び耐久性等の点で優れる、例えば、アクリルブタジェンスチレン(ABS)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等の高分子樹脂が材質とされている。
【0008】
図2に示すように、電槽1は一体成形により形成されており、外周壁(図2の符号1の箇所)の内部を仕切る隔壁6によって合計18個のセル室が1列に画定された、いわゆる18セルモノブロック電槽である。電槽1の上部は、ABS、PP、PE等の高分子樹脂を材質とした蓋2と溶着又は接着され封口されている。
【0009】
蓋2には、鉛蓄電池10の外部から電解液を各セル室に注入可能とするためにセル室相当個数(18個)の注液口が形成されており、これらの注液口は液口栓5により封口されている。また、両端セル室の上部に対応する蓋2の液口栓5より長側面寄りの隅部には、ロッド状の正極外部出力端子3及び負極外部出力端子4を蓋2から突出させるために2個の外部端子穴が長側面と平行に形成されている。正極外部出力端子3及び負極外部出力端子4は、電槽1の内部側から立設され、蓋2を貫通して突出すると共に蓋2に固定されている。
【0010】
電槽1内に画定された18個の各セル室には、図示しない極板群がそれぞれ1組ずつ収納されており、電槽1には合計18組の極板群が収納されている。各極板群は、未化成負極板6枚及び未化成正極板5枚がガラス繊維からなるセパレータを介して積層されており、化成(初充電)後の各極板群の群電圧は2Vとされる。
【0011】
未化成負極板は、鉛粉と、鉛粉に対して13重量%の希硫酸(比重1.26:20°C)と、鉛粉に対して12重量%の水と、を混練して負極活物質ペーストを作り、ペースト40.0gを鉛を主成分とする鋳造格子体からなる負極格子体に充填してから、温度50°C、湿度95%の雰囲気中に18時間放置して熟成させた後に、温度25°C、湿度40%の雰囲気中に2時間放置し、乾燥させて作製される。
【0012】
一方、未化成正極板の活物質ペーストは、鉛粉に対して0.01重量%の硫酸ナトリウム(NaSO)及びカットファイバーを添加し、鉛粉に対して13重量%の希硫酸(比重:1.26:20°C)と、鉛粉に対して12重量%の水と、を混練して作製される。この混練中、冷却可能な混練釜により温度は一定に保たれる。正極活物質ペースト40.0gを鉛を主成分とする鋳造格子体からなる正極格子体に充填してから、温度50°C、湿度95%の雰囲気中に18時間放置して熟成させた後に、温度25°C、湿度40%の雰囲気中に2時間放置し、乾燥させて未化成正極板が作製される。
【0013】
各極板群の未化成正極板5枚及び未化成負極板6枚は、それぞれ同一極性の極板同士を接続する正極ストラップ及び負極ストラップに各セル室内で固定されている。図2紙面左端に収容される極板群の正極ストラップ及び図2紙面右端に収容される極板群の負極ストラップを除く各ストラップは、導電性を有しセル室間のストラップを接続するセル間接続体により、隣接する極性の異なるストラップに、電槽1内の隔壁6と交差して(隔壁6を貫通して)それぞれ接続されており、18組の極板群は直列に接続されている。図2紙面左端に収容される極板群の正極ストラップ及び図2紙面右端に収容される極板群の負極ストラップは、上述した正極外部出力端子3及び負極外部出力端子4にそれぞれ接続されている。
【0014】
本実施形態の鉛蓄電池10を作製するには、極板群18組を電槽1内の各セル室に収容し、セル間接続体により直列に接続した後、電槽1上部に蓋2を溶着又は接着して取り付ける。続いて、電槽1に比重1.225(20°C)の希硫酸を電解液として各注液口から注液し、未化成電池を作製する。この未化成電池を5.0Aで23時間化成した後、各注液口を液口栓5で封口することにより、鉛蓄電池10を得ることができる。
【0015】
<実施例>
次に、表1を参照して、本実施形態に従って正極鋳造格子体の重量及び正極既化活物質量に対する重量%を異ならせて作製した実施例の鉛蓄電池について詳述する。なお、実施例の効果が明確となるように同時に作製した比較例の鉛蓄電池についても併記する。
【0016】
【表1】
Figure 0003731383
【0017】
実施例1の電池では、22.0g(正極既化活物質量に対し65重量%)の正極鋳造格子体を、実施例2の電池では、23.7g(正極既化活物質量に対し70重量%)の正極鋳造格子体を、実施例3の電池では、25.1g(正極既化活物質量に対し75重量%)の正極鋳造格子体を、それぞれ用いた。
【0018】
一方、比較例1の電池では、20.0g(正極既化活物質量に対し60重量%)の正極鋳造格子体を、比較例2の電池では、28.4g(正極既化活物質量に対し80重量%)の正極鋳造格子体を、それぞれ用いた。
【0019】
<試験・評価>
[試験] 次に、以上のようにして作成した実施例1〜3及び比較例1〜2の各電池について、JISのCCA(Cold Cranking Ampere)試験に基づく試験を行った。なお、CCA試験は寒冷地における自動車エンジン始動性を評価する試験として一般に用いられている。
【0020】
[試験結果] CCA試験の試験結果を表2に示す。
【0021】
【表2】
Figure 0003731383
【0022】
[評価] 表2に示したように、CCA試験の結果、実施例1〜3の電池はいずれも130(A)以上であるのに対し、比較例1及び比較例2の電池では120(A)未満と、CCA値が劣っている。比較例1の電池でCCA値が低いのは、正極鋳造格子体の占有率が低いので、導電性が悪いためと考えられる。また、比較例2の電池でCCA値が低い理由として、正極鋳造格子体の占有率が高すぎたため、正極活物質量が少なく容量が小さくなってしまったことが挙げられる。CCA試験からも分かるように、実施例1〜実施例3の電池は大電流放電が可能なことから、高いエンジン始動性を有し、車載用鉛蓄電池として適合するものである。
【0023】
(第2実施形態)
次に、本発明を適用した車載用鉛蓄電池の第2の実施の形態について説明する。本実施形態は、負極鋳造格子体に関するものである。なお、本実施形態において第1実施形態と同一箇所はその説明を省略し、異なる箇所について説明する。
【0024】
<実施例>
表3に示すように、負極鋳造格子体の重量及び負極既化活物質量に対する重量%を異ならせて実施例の鉛蓄電池を作製した。第1実施形態同様、実施例の効果が明確となるように同時に作製した比較例の鉛蓄電池についても併記する。
【0025】
【表3】
Figure 0003731383
【0026】
実施例4の電池では、15.0g(負極既化活物質量に対し45重量%)の負極鋳造格子体を、実施例5の電池では、25.1g(負極既化活物質量に対し75重量%)の負極鋳造格子体を、それぞれ用いた。一方、比較例3の電池では、13.4g(負極既化活物質量に対し40重量%)の負極鋳造格子体を、比較例4の電池では、26.8g(負極既化活物質量に対し80重量%)の負極鋳造格子体を、それぞれ用いた。
【0027】
<試験・評価>
[試験] 次に、以上のようにして作成した実施例及び比較例の各電池について、第1実施形態の電池と同様に、JISのCCA試験に基づく試験を行った。CCA試験の試験結果を表4に示す。
【0028】
【表4】
Figure 0003731383
【0029】
[評価] 表4に示したように、CCA試験の結果、実施例4、5の電池はいずれも130(A)以上であるのに対し、比較例3、4の電池では120(A)未満と、CCA値が劣っている。比較例3の電池でCCA値が低いのは、負極鋳造格子体の占有率が低いので、導電性が悪いためと考えられる。また、比較例4の電池でCCA値が低い理由として、負極鋳造格子体の占有率が高すぎたため、正極活物質量が少なく容量が小さくなってしまったことが挙げられる。CCA試験からも分かるように、実施例4、5の電池は大電流放電が可能なことから、高いエンジン始動性を有し、車載用鉛蓄電池として適合するものである。
【0030】
なお、以上の実施形態では18セルを1列とした18セルモノブロック電槽1について例示したが、本発明は、例えば、6セルのモノブロック電槽や仕切り板等により電槽内のセル室を画定する他の構造の鉛蓄電池にも適用することができる。
【0031】
また、以上の実施形態では開放型の車載用鉛蓄電池10について例示したが、密閉型の鉛蓄電池や据置用鉛蓄電池にも適用することができることはいうまでもない。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、大電流放電時の抵抗を小さくするために負極格子体のPb量を増加させたので、高い始動性を有する鉛蓄電池を実現することができる、という効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用される実施形態の鉛蓄電池の外観斜視図である。
【図2】実施形態の鉛蓄電池の電槽の平面図である。
【符号の説明】
1 電槽
2 蓋
3 正極外部出力端子
4 負極外部出力端子
5 液口栓
6 隔壁
10 鉛蓄電池

Claims (2)

  1. 鉛(Pb)を主成分とする負極格子体に負極活物質を充填した鉛蓄電池において、前記負極格子体の重量を負極既化活物質量の45重量%〜75重量%としたことを特徴とする鉛蓄電池。
  2. 鉛(Pb)を主成分とする正極格子体に正極活物質を充填した正極を有しており、前記正極格子体の重量を正極既化活物質量の65重量%〜75重量%としたことを特徴とする請求項1に記載の鉛蓄電池。
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