JP3731346B2 - アクチュエータの駆動回路 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アクチュエータの駆動回路に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェットプリンタは、用紙に文字や図形を印字するように、インク液滴を噴射する多数のノズルを有する印字ヘッドを備えている。印字ヘッドは、圧電素子(例えばピエゾ素子)からなり、駆動電圧が印加されることで、インクが充填されたインク室の側壁(アクチュエータ)を屈曲変形させて、インク室の容積を変化させ、ノズルを通じてインク液滴の噴射を行うように構成されている。
【0003】
例えば図4に示すように、インクジェットプリンタの印字ヘッド101は、複数のアクチュエータを有し、等価回路で表すと、各アクチュエータがコンデンサCでもって表され、その各コンデンサCに、抵抗Rを介して、駆動IC102の各ドライバ回路103が別々に接続されている。そして、そのような印字ヘッド101のアクチュエータは、ドライバ回路103によって、定電圧駆動されるようになっており、駆動電圧が印加されることで、印字ヘッドのアクチュエータ(コンデンサC)が徐々に充電され、アクチュエータが変形して、インクが噴射され、それから、徐々に放電されて初期状態に戻されるようになっている。
【0004】
また、印字が行われる環境温度の変化によって、印字に用いられるインクの物性(例えば、粘度)が変化するので、そのインクの物性の変化に応じてアクチュエータに印加する駆動電圧を変化させて、噴射チャンネルの側壁の屈曲変形の程度を変更し、細かく制御したいという要求がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述した印字ヘッドの各アクチュエータは、圧電素子からなり印加される駆動電圧の増加と共に静電容量が増加する特性を有するものであるので、印字ヘッド駆動のために印加する駆動電圧を、インクの物性の変化に応じて変化させようとすると、前記静電容量が変化することを原因として、噴射特性に影響を与える。
【0006】
すなわち、駆動電圧を変化させて使用しようとすると、印加される駆動電圧が大きくなるに連れて、静電容量が増加するので、インクの噴射特性上、重要なパラメータである、印字ヘッドのアクチュエータが初期状態から駆動状態となるまでのアクチュエータ駆動の立ち上がり時間Tr及び駆動状態から初期状態に戻るまでのアクチュエータ駆動の立ち下がり時間Tf(図5参照)が徐々に長くなって行く傾向にあり、所期の噴射特性を補償しきれなくなる。よって、印字ヘッドに適した噴射特性を得るためには、印加する駆動電圧を、広範囲にわたって変化させることができない。尚、前記アクチュエータ駆動の立ち上がり時間Trは、コンデンサCが10%充電された状態から90%充電された状態に変遷するまでの時間をいい、前記アクチュエータ駆動の立ち下がり時間Tfは、コンデンサCが10%放電された状態から90%放電された状態に変遷するまでの時間をいう(図5参照)。
【0007】
また、印字ヘッド自体の特性を、印加される駆動電圧によって静電容量が変化しないようにすることも試みたが、そのようにすると、駆動電圧を印加しても、インクを噴射するのに必要な変位量をアクチュエータが発現せず、印字ヘッドとして用いることができなかった。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたもので、印加される駆動電圧にかかわりなく、アクチュエータ駆動の立ち上がり時間、立ち下がり時間を略一定に保つことができるアクチュエータの駆動回路を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、印加される駆動電圧の増加と共に静電容量が増加する特性を有し、この特性により印加される駆動電圧の増加と共に初期状態から駆動状態となるまでの立ち上がり時間及び駆動状態から初期状態となるまでの立ち下がり時間が増加するアクチュエータを駆動するアクチュエータの駆動回路であって、前記アクチュエータに印加する駆動波形を出力する出力素子と、該出力素子を駆動する素子駆動回路とを備え、前記アクチュエータの前記立ち上がり時間及び立ち下がり時間の増加をキャンセルするように、駆動電圧が高くなると前記駆動波形の立ち上がり時間及び立ち下がり時間を短くする特性を有するものである。
【0010】
請求項1の発明によれば、アクチュエータが、印加される駆動電圧の増加と共に静電容量が増加する特性を有するため、駆動電圧の増加とともに充電及び放電に要する時間が長くなることになる。一方、素子駆動回路にて出力素子が駆動され、該出力素子にてアクチュエータに印加される駆動波形は、駆動電圧が高くなると前記駆動波形の立ち上がり時間及び立ち下がり時間が短くされるので、前記アクチュエータの前記特性(立ち上がり時間及び立ち下がり時間の増加)をキャンセルするように働き、結果として、印加される駆動電圧にかかわりなく、アクチュエータ駆動の立ち上がり時間、立ち下がり時間が略一定に保たれることになる。
【0011】
また、請求項2の発明は、請求項1のアクチュエータの駆動回路において、前記出力素子が、充電用トランジスタと、放電用トランジスタとを有し、該両トランジスタが、駆動電圧が高くなるとオン抵抗が低下するという特性を有するものである。
【0012】
請求項2の発明によれば、出力素子である充電用トランジスタ及び放電用トランジスタが、駆動電圧が高くなるとオン抵抗が低下するという特性を有するので、駆動電圧が高くなると、両トランジスタを流れる電流量が増加し、充電及び放電に要する時間が短くなるように機能する。その結果、前記アクチュエータの前記特性をキャンセルするように働き、結果として、アクチュエータ駆動の立ち上がり時間、立ち下がり時間が略一定に保たれることになる。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1のアクチュエータの駆動回路において、前記素子駆動回路が、駆動電圧が高くなると、前記駆動波形の立ち上がり時間及び立ち下がり時間が短くなるように前記出力素子を駆動する特性を有するものである。
【0014】
請求項3の発明によれば、素子駆動回路が、駆動電圧が高くなると、前記駆動波形の立ち上がり時間及び立ち下がり時間が短くなるように前記出力素子を駆動する特性を有するので、前記アクチュエータの前記特性をキャンセルするように働き、結果として、アクチュエータ駆動の立ち上がり時間、立ち下がり時間が略一定に保たれることになる。
【0015】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかのアクチュエータの駆動回路において、前記アクチュエータが、インクジェットプリンタの印字ヘッドを構成するもので、電圧の印加により、インクが充填されたインク室から、ノズルを通じてインク液滴を噴射させるものである。
【0016】
請求項4の発明によれば、上記駆動回路が駆動電圧が高くなると前記駆動波形の立ち上がり時間及び立ち下がり時間を短くする特性を有するので、駆動電圧の増加と共に静電容量が増加する特性を有するアクチュエータとしての印字ヘッドに対し、前記印字ヘッドの前記特性をキャンセルするように働き、結果として、駆動電圧にかかわりなく、アクチュエータ駆動の立ち上がり時間、立ち下がり時間が略一定に保たれ、安定して一定のタイミングで、インクが充填されたインク室から、ノズルを通じてインク液滴が噴射される。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に沿って説明する。
【0018】
図1は本発明に係る印字ヘッドの駆動回路を示す電気回路図である。図1において、印字ヘッドの駆動回路1は、印字ヘッドに印加する駆動波形を出力する出力素子である充電用の電界効果型トランジスタ2及び放電用の電界効果型トランジスタ3と、該両トランジスタ2,3を駆動する素子駆動回路4とを備え、印字ヘッドは、両トランジスタ2,3から出力される駆動波形にて駆動され、インクが充填されたインク室から、ノズルを通じてインク液滴を噴射させるものである。
【0019】
前記印字ヘッドは、圧電素子からなり印加される駆動電圧の増加と共に静電容量が増加する正の特性(例えば2.4%/V)を有するアクチュエータを有し、図1においては、インクジェットプリンタの印字ヘッド(アクチュエータ)の等価回路であるコンデンサ5として表されている。
【0020】
前記素子駆動回路4の出力端子4a,4bは、両トランジスタ2,3のゲート端子に接続され、充電用の電界効果型トランジスタ2のソース端子は電源に接続され、ドレイン端子は、一方の端子が接地されたコンデンサ5の他方の端子に接続されている。
【0021】
放電用の電界効果型トランジスタ3のソース端子は接地され、ドレイン端子が、前記コンデンサ5の他方の端子に接続されている。すなわち、放電用の電界効果型トランジスタ3のドレイン端子は、充電用の電界効果型トランジスタ2のドレイン端子と共に、印字ヘッドの等価容量であり両トランジスタ2,3により駆動するコンデンサ5の他方の端子に接続されている。
【0022】
前記両トランジスタ2,3は、いずれも、印加される駆動電圧が高くなると、オン抵抗が低下するという特性を有する。そのため、前記印字ヘッドの前記特性をキャンセルするように、駆動電圧が高くなると前記駆動波形の立ち上がり時間及び立ち下がり時間を短くする特性を有している。
【0023】
また、前記素子駆動回路4は、駆動電圧が高くなると、前記駆動波形の立ち上がり時間及び立ち下がり時間が短くなるように前記両トランジスタ2,3を駆動する特性をもたせている。
【0024】
つまり、前記両トランジスタ2,3と素子駆動回路4とにより、印字ヘッド(コンデンサ5)を駆動する駆動回路が構成されている。この駆動回路は、静電容量が変化しない例えば3600pFのコンデンサを負荷とした場合には、図2に示すように、印加電圧が高くなると、アクチュエータ駆動の立ち上がり時間Tr及びアクチュエータ駆動の立ち下がり時間Tfが短くなるようにされている。
【0025】
よって、上記の構成すれば、印字ヘッドのアクチュエータであるコンデンサ5は、印加される駆動電圧の増加と共に静電容量が増加する特性を有するが、両トランジスタ2,3及び素子駆動回路4を備える印字ヘッドの駆動回路は、前述したように駆動電圧が高くなると前記駆動波形の立ち上がり時間及び立ち下がり時間を短くする特性を有することから、前記印字ヘッドの前記特性をキャンセルするように働き、結果として、アクチュエータ駆動の立ち上がり時間Tr、立ち下がり時間Tfが広範囲にわたって略一定に保たれることになる。例えば3600pFのピエゾ素子(PZT)の場合、図3に示すように、13V〜30Vの範囲において、アクチュエータ駆動の立ち上がり時間Tr、立ち下がり時間Tfが略一定に保たれることがわかる。
【0026】
前記実施の形態においては、出力素子である充電用の電界効果型トランジスタ2と放電用の電界効果型トランジスタ3とが、印加電圧が高くなるとオン抵抗が低下するという特性を有するとともに、素子駆動回路4が、印加電圧が高くなると、前記駆動波形の立ち上がり時間及び立ち下がり時間が短くなるように前記出力素子を駆動する特性を有するようにすることで、図2に示す特性を発揮するようにしているが、出力素子及び素子駆動回路の両方がそのような特性を備えている必要はなく、いずれか一方のみがそのような特性を有しているだけでも、図2に示す特性を発揮するようにして、印字ヘッドの前記特性をキャンセルして、アクチュエータ駆動の立ち上がり時間Tr、立ち下がり時間Tfが略一定に保たれるようにすることが可能であるのはいうまでもない。
【0027】
前記実施の形態においては、出力素子として、電界効果トランジスタを使用しているが、それに代えて、NPN型又はPNP型のトランジスタを使用しても、同様の効果を発揮するのはいうまでもない。
【0028】
前記実施の形態においては、圧電素子を用いたアクチュエータである印字ヘッドの駆動回路に適用したものについて説明しているが、そのほか、静電容量が駆動電圧によって変化するアクチュエータの駆動回路であれば適用することができ、例えば超音波モータ等の駆動回路に適用することが可能である。
【0029】
【発明の効果】
本発明は、以上に説明したような形態で実施され、以下に述べるような効果を奏する。
【0030】
請求項1の発明は、印加される駆動電圧の増加と共に静電容量が増加する特性を有し、この特性により印加される駆動電圧の増加と共に初期状態から駆動状態となるまでの立ち 上がり時間及び駆動状態から初期状態となるまでの立ち下がり時間が増加するアクチュエータに対し、駆動電圧が高くなると、立ち上がり時間及び立ち下がり時間を短くする特性を有する駆動波形を印加するようにしているので、前記駆動波形が、前記アクチュエータの前記特性(立ち上がり時間及び立ち下がり時間の増加)をキャンセルするように働き、結果として、印加される駆動電圧にかかわりなく、アクチュエータ駆動の立ち上がり時間、立ち下がり時間が略一定に保持することが可能となる。
【0031】
請求項2の発明は、出力素子として、駆動電圧が高くなるとオン抵抗が低下するという特性を有する充電用トランジスタ及び放電用トランジスタを用いているので、前記アクチュエータの前記特性をキャンセルする特性を有する駆動波形を出力することができる。
【0032】
請求項3の発明は、素子駆動回路として、駆動電圧が高くなると、駆動波形の立ち上がり時間及び立ち下がり時間が短くなるように前記出力素子を駆動する特性を有するものを用いているので、前記アクチュエータの前記特性をキャンセルするように働く駆動波形を出力することができる。
【0033】
請求項4の発明は、駆動電圧が高くなると前記駆動波形の立ち上がり時間及び立ち下がり時間を短くする特性を有するので、駆動電圧の増加と共に静電容量が増加する特性を有するアクチュエータとしての印字ヘッドに対し、前記印字ヘッドの前記特性をキャンセルするように働き、結果として、印加される駆動電圧にかかわりなく、安定して、インクが充填されたインク室からノズルを通じてインク液滴を噴射することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るアクチュエータ(印字ヘッド)の駆動回路の回路図である。
【図2】 静電容量が変化しないコンデンサ(例えば3600pF)を負荷とした場合における駆動電圧と、アクチュエータ駆動の立ち上がり時間、立ち下がり時間との関係を示す図である。
【図3】 ピエゾ素子(例えば3600pF)を負荷とした場合における駆動電圧と、アクチュエータ駆動の立ち上がり時間、立ち下がり時間との関係を示す図である。
【図4】 従来例の駆動回路の回路図である。
【図5】 印加される駆動電圧の変遷状態を示すタイムチャート図である。
【符号の説明】
1 印字ヘッドの駆動回路
2 充電用の電界効果型トランジスタ
3 放電用の電界効果型トランジスタ
4 素子駆動回路
5 コンデンサ
Claims (4)
- 印加される駆動電圧の増加と共に静電容量が増加する特性を有し、この特性により印加される駆動電圧の増加と共に初期状態から駆動状態となるまでの立ち上がり時間及び駆動状態から初期状態となるまでの立ち下がり時間が増加するアクチュエータを駆動するアクチュエータの駆動回路であって、
前記アクチュエータに印加する駆動波形を出力する出力素子と、該出力素子を駆動する素子駆動回路とを備え、
前記アクチュエータの前記立ち上がり時間及び立ち下がり時間の増加をキャンセルするように、駆動電圧が高くなると前記駆動波形の立ち上がり時間及び立ち下がり時間を短くする特性を有することを特徴とするアクチュエータの駆動回路。 - 前記出力素子は、充電用トランジスタと、放電用トランジスタとを有し、該両トランジスタは、駆動電圧が高くなるとオン抵抗が低下するという特性を有するものであるところの請求項1記載のアクチュエータの駆動回路。
- 前記素子駆動回路は、駆動電圧が高くなると、前記駆動波形の立ち上がり時間及び立ち下がり時間が短くなるように前記出力素子を駆動する特性を有するものであるところの請求項1記載のアクチュエータの駆動回路。
- 前記アクチュエータは、インクジェットプリンタの印字ヘッドを構成するもので、電圧の印加により、インクが充填されたインク室から、ノズルを通じてインク液滴を噴射させるものであるところの請求項1〜3のいずれかに記載のアクチュエータの駆動回路。
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