JP4541856B2 - 圧電インクジェットヘッドの駆動方法 - Google Patents

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本発明は、圧電インクジェットヘッドの駆動方法に関し、特に、プリンター、コピア、ファクシミリ、および、それらの複合機などに好適に用いることができる、圧電インクジェットヘッドの駆動方法に関するものである。
オンデマンド型のインクジェットプリンタなどにおいては、例えば、図2、3に示すように、インクが充填される加圧室2と、この加圧室2に連通し、当該加圧室2にインクが充てんされることによって内部にインクメニスカスが形成されるノズル3と、駆動電圧の印加によって変形する圧電素子9と、圧電素子9と積層されて駆動部Dを構成する振動板7とを備えた圧電インクジェットヘッドが用いられる。
上記圧電インクジェットヘッドにおいては、駆動部Dが、圧電素子9が発生する力を加圧室2内のインクに圧力として伝えることで、この加圧室2に連通するノズル3からインク滴を吐出させるための駆動源としての役割を果たしている。すなわち、駆動部Dは、圧電素子9の、駆動電圧の印加による変形によって、振動板7を、図2中に一点鎖線で示すように、加圧室2の方向に突出するように撓ませて、加圧室2の容積を減少させることによって、加圧室2内のインクを加圧して、ノズル3の先端から、インク滴として吐出させる。それと同時に、駆動部Dは、加圧室2内のインクの圧力を受けることによって振動板7が図と反対方向に撓むため、インクの振動に対して弾性体としての役割も持っている。
圧電素子9に電圧を印加して力を発生させると、インクは、振動板7を介して駆動部Dから受けた圧力によって振動を起こす。この振動は、駆動部Dと加圧室2とを弾性、加圧室2にインクを供給する供給口5、加圧室2とノズル3とを繋ぐノズル流路4、およびノズル3を慣性として発生する。この振動における、上記各部内のインクの、体積速度の固有振動周期は、上記各部の寸法とインクの物性値、駆動部Dの寸法と物性値とによって決まる。圧電インクジェットヘッドにおいては、かかるインクの振動による、ノズル3内でのインクメニスカスの振動を利用して、インク滴を発生させている。
特許文献1において説明されているように、圧電インクジェットヘッドにおいては、待機時の圧電素子9に、一定の駆動電圧を継続的に印加して、圧電素子9を変形させ続けることで、振動板7を撓ませ続けて、加圧室2の容積を減少させた状態を維持しておき、ドット形成時には、
(I) ドットを形成する直前に、駆動電圧を放電して圧電素子9の変形と、振動板7の撓みとを解除させることで、加圧室2の容積を増加させて、ノズル3内のインクメニスカスを一旦、加圧室2の側へ引き込ませた後、
(II) 再び、駆動電圧を印加して圧電素子9を変形させて、振動板7を撓ませることで、加圧室2の容積を減少させて、ノズル3の先端からインク滴を吐出させる駆動方法が一般的に用いられる。以下では、この駆動方法を、「引き打ち式の駆動方法」と略称する場合がある。
図7は、上記引き打ち式の駆動方法において、圧電素子9に印加する駆動電圧Vの駆動電圧波形(太線の一点鎖線で示す)と、かかる駆動電圧波形が与えられた際の、ノズル3における、インクの体積速度の変化〔太線の実線で示す、(+)がノズル3の先端側、(−)が加圧室2の側〕との関係を簡略化して示すグラフである。以下に、前記図2、3に示す、厚みの小さい平板状または層状に形成され、駆動電圧を印加することによって面方向に収縮する横振動モードの圧電素子9を使用する場合を例にとって、図7を参照して、この駆動方法を説明する。
図7中のtより左側の待機時においては、駆動電圧VをVに維持(V=V)して圧電素子9を面方向に収縮させ続けることによって、振動板7を、加圧室2の容積を減少させた状態を維持するべく、一定の形状に撓ませ続けており、この間、インクは静止状態、すなわち、ノズル3におけるインクの体積速度は0を維持し、ノズル3内のインクメニスカスは停止している。
ノズル3からインク滴を吐出させて、紙面にドットを形成するには、まず、その直前のtの時点で、圧電素子9に印加していた駆動電圧Vを放電(V=0)して、圧電素子9の面方向の収縮を解除させることによって、振動板7の撓みを解除させる。そうすると、加圧室2の容積が一定量だけ増加するため、ノズル3内のインクは、その容積の増加分だけ、インクメニスカスが加圧室2の側に引き込まれる。その際の、ノズル3内でのインクの体積速度は、図7のtとtの間の部分に示すように一旦、(−)の側に大きくなった後、徐々に小さくなって、やがて0に近づく。これは、太線の実線で示すインクの体積速度の固有振動周期Tの、ほぼ半周期分に相当する。
そして、ノズル3でのインクの体積速度が限りなく0に近づいたtの時点で、駆動電圧Vを、再びVまで充電(V=V)して、圧電素子9を面方向に収縮させることによって、振動板7を撓ませる。この動作は、太線の一点鎖線で示すように、パルス幅Tが固有振動周期Tの約1/2倍である駆動電圧波形を有する駆動電圧Vを、圧電素子9に印加していることに相当する。
そうすると、ノズル3内のインクは、インクメニスカスが加圧室2の側に最も大きく引き込まれた静止状態(tの時点の、体積速度が0の状態)から、逆にノズル3の先端側へ戻ろうとしているところに、振動板7を撓ませて、加圧室2の容積を減少させることによって、当該加圧室2から押し出されたインクの圧力が加わることになるため、ノズル3の先端側の方向へ加速されて、ノズル3の先端から外方に大きく突出する。その際の、ノズル3内でのインクの体積速度は、図7のtとtの間の部分に示すように一旦、(+)の側に大きくなった後、徐々に小さくなって、やがて0に近づく。ノズル3の先端から外方に突出したインクが略円柱状に見えることから、この突出状態のインクを、一般にインク柱と称する。そして、ノズル3でのインクの体積速度が0になった時点(図7のtの時点)以降、インクの振動の速度が加圧室2の側に向かうことによって、ノズル3の先端から外方へ伸びきったインク柱が、ノズル3内のインクから切り離され、飛翔して、紙面にドットが形成される。
実際の圧電インクジェットヘッドにおいては、例えば、図1に示すように、上記加圧室2、ノズル3、圧電素子9、および振動板7等を有するドット形成部を複数個、1つの基板1上に形成するのが一般的である。そして、例えば、あらかじめ設定した駆動周波数ごとに、形成画像のデータに応じて、各ドット形成部のうち任意のドット形成部を選んで動作させて、そのドット形成部のノズル3から選択的にインク滴を吐出させて紙面にドットを形成させる動作を繰り返し行わせることによって、紙面に画像が形成される。そのため、各ドット形成部の動作間隔は一定ではなく、駆動周波数ごとに毎回、動作するドット形成部もあれば、一度、動作してから次に動作するまでの間にかなりの間隔があくドット形成部も生じる。
引き打ち式の場合、動作させるドット形成部以外の他のドット形成部においては、インクが、ノズル3の先端からインク滴として吐出されるのを防ぐため、前記の待機状態、つまり、圧電素子9に一定の駆動電圧を印加して変形させることで加圧室2の容積を減少させた状態が維持される。そして、この待機状態の間、インクは静止し、インクメニスカスは停止した状態が続くことから、待機状態が長くなればなるほど、インクと外気との界面であるインクメニスカスの近傍において、インク中に含まれる溶剤等の成分が蒸発し、インクの粘度が上昇してインク滴の吐出が乱れたり、場合によっては、ノズル3が目詰まりしてインク滴を吐出できなくなったりするという問題を生じる。特に、紙面に形成されたドットの速乾性を高めるために、揮発性の高い溶媒を使用したインクを用いた場合に、この問題が顕著に発生する。
そこで、インクの粘度上昇を未然に防止し、あるいは粘度上昇が発生した際にはこれを解消するため、待機状態の圧電素子9に微振動信号を印加して、振動板7を、インクが吐出されない程度に微小振動させることで、加圧室2内のインクをかく拌することが提案されている(特許文献2参照)。
特開平2−192947号公報(第3頁左上欄第19行〜同頁右上欄第6行、第3頁右上欄第14行〜同頁左下欄第2行、第16図(b)) 特開2003−341048号公報(請求項1、第0004欄〜第0006欄、第0008欄〜第0009欄)
しかし、特許文献2においては、前記のように、振動板を、インク滴が吐出されない程度の微小振動しかさせていないため、ノズル内にはインクの流れは発生しない。つまり、微小振動は、待機時に最も大きく粘度上昇するインクメニスカスの近傍には到達せず、インクメニスカスは、振動板を微小振動させても静止したままであることから、インクメニスカスの近傍での、インクの粘度上昇を防止したり解消したりすることはできない。そのため、特に、待機状態が続いた後の動作時に、インクの粘度上昇によってインク滴の吐出が乱れたり、ノズルが目詰まりしてインク滴を吐出できなくなったりするのを防止できないという問題がある。
また、振動板を微小振動させるためには、圧電素子に、インク滴を吐出させる際とは全く異なった波形の微振動信号を印加する必要があり、そのための回路や、あるいは、通常の駆動回路と微振動信号印加のための回路とを各ドット形成部ごとに切り替えるための多数のスイッチング素子等が必要となるため、圧電インクジェットヘッドを駆動するための回路機構が複雑化するという問題もある。
本発明の目的は、圧電インクジェットヘッドを駆動するための回路機構を複雑化させることなく、通常の回路機構を用いて、しかも、ドット形成部の待機時に、ノズル先端からインク滴を吐出させることなしに、インクメニスカスの近傍でのインクの粘度上昇を防止または解消することができ、特に、待機状態が続いた後のインク滴の吐出時に、インク滴の吐出が乱れたり、ノズルが目詰まりしてインク滴を吐出できなくなったりするのを防止することができるインクジェットヘッドの駆動方法を提供することにある。
インクメニスカスの近傍でのインクの粘度上昇を防止または解消するためには、ノズル内のインクに流れを発生させて、インクメニスカスを変位させなければならない。しかし、インクメニスカスの変位によって、ノズル先端からインク滴が吐出されてはいけない。この相反する2つの要求を共に満足するため、発明者は検討を行った。
その結果、インク滴を吐出させないドット形成部において、待機時に、駆動電圧を放電することで、圧電素子の変形を解除して加圧室の容積を増加させて、ノズル内のインクメニスカスを加圧室の側へ引き込んだ後、インクの、体積速度の固有振動周期とほぼ一致するタイミングで再び駆動電圧を印加して、圧電素子を変形させて加圧室の容積を減少させてやればよいことを見出した。
すなわち、駆動電圧を放電し、圧電素子の変形を解除して加圧室の容積を増加させた後、インクの、体積速度の固有振動周期とほぼ一致するタイミングで再び駆動電圧を印加して、圧電素子を変形させて加圧室の容積を減少させてやると、インクメニスカスが、一旦、加圧室の側へ引き込まれた後、元の位置に押し戻されるように運動して、その近傍のインクが、加圧室内のインクと良好に混合される。そのため、特に、インクメニスカスの近傍でのインクの粘度上昇を未然に防止し、あるいは粘度上昇が発生した際にはこれを解消することができる。
また、上記の動作では、
(i) 一旦、加圧室の側へ引き込まれたインクが、その振動によって、逆にノズルの先端側へ戻ろうとしている時点(これは、インク滴を吐出させるドット形成部では、前記のように、圧電素子に駆動電圧を印加して、インクを加速するタイミングに相当する)において、駆動電圧を印加せずに、加圧室の容積を増加させた状態を維持しているため、インクが加速されないだけでなく、インク自体の粘性によって減速される結果、ノズル先端から外方へ突出するインク柱の、外方へ向かう速度と、突出量とを大きく低減することができると共に、
(ii) インクがさらに振動して、インク柱がノズルの先端から外方に最も突出した後、振動によって、インクの、加圧室の側への引き込みが始まる時点(これは、インクの、体積速度の固有振動周期とほぼ一致するタイミングである)で、駆動電圧を印加して圧電素子を変形させ、加圧室の容積を減少させて、上記振動による、インクの、加圧室の側への引き込みを阻止しているため、ノズル内のインクからインク柱が切り離されるのを阻害することができる。そのため、上記(i)(ii)の2つの効果の相乗効果によって、ノズル先端からインク滴が吐出されるのを防止することができる。
したがって、上記の動作を行うことにより、ドット形成部の待機時に、ノズル先端からインク滴を吐出させることなしに、インクメニスカスの近傍でのインクの粘度上昇を防止または解消して、特に、待機状態が続いた後のインク滴の吐出時に、インク滴の吐出が乱れたり、ノズルが目詰まりしてインク滴を吐出できなくなったりするのを防止することができる。
しかも、上記の動作は、ノズルの先端からインク滴を吐出させるのと同じ駆動回路を用いて、圧電素子に印加する駆動電圧のパルス幅を変更するだけで実施できると共に、各駆動回路が駆動するタイミングをソフトウエア上で変更するだけで、パルス幅を変更することができるため、圧電インクジェットヘッドを駆動するための回路機構が複雑化するおそれもない。
なお、上記の動作は、インク滴を吐出させないドット形成部において、あらかじめ設定した駆動周波数ごとに、毎回、行わせてもよいし、通常の待機動作、つまり、圧電素子に一定の駆動電圧を印加して変形させることで、加圧室の容積を減少させた待機状態を維持して、インクを、ノズル先端からインク滴として吐出させない動作と、任意の回数ずつ繰り返し、例えば交互に、行わせるようにしてもよい。
したがって、請求項1記載の発明は、
(A) インクが充てんされる加圧室と、
(B) この加圧室に連通し、加圧室にインクが充てんされることによってインクメニスカスが形成されるノズルと、
(C) 駆動電圧波形の印加によって変形する圧電素子と、この圧電素子の、駆動電圧波形の印加による変形によって撓んで加圧室の容積を減少させることで、インクを、ノズル先端からインク滴として吐出させる振動板とを含む駆動部と、
を有するドット形成部を複数個、備える圧電インクジェットヘッドを駆動する方法であって、待機時には、圧電素子に一定の駆動電圧を印加して変形させることで、加圧室の容積を減少させた状態を維持しておき、
・ インク滴を吐出させるドット形成部においては、ドット形成直前に駆動電圧を放電することで、圧電素子の変形を解除して加圧室の容積を増加させて、ノズル内のインクメニスカスを加圧室の側へ引き込んだ後、このインクメニスカスがインクの振動によってノズルの先端側へ向かうタイミングに合わせて、再び駆動電圧を印加して、圧電素子を変形させて加圧室の容積を減少させることで、インクを、ノズル先端からインク滴として吐出させると共に、
・ インク滴を吐出させないドット形成部においては、
(1) 駆動電圧を放電することで、圧電素子の変形を解除して加圧室の容積を増加させて、ノズル内のインクメニスカスを加圧室の側へ引き込んだ後、インクの、体積速度の固有振動周期とほぼ一致するタイミングで再び駆動電圧を印加して、圧電素子を変形させて加圧室の容積を減少させることで、加圧室内およびノズル内のインクを、ノズル先端からインク滴として吐出させることなくかく拌する動作を行わせるか、または、
(2) 圧電素子に一定の駆動電圧を印加して変形させることで、加圧室の容積を減少させた待機状態を維持して、インクを、ノズル先端からインク滴として吐出させない動作と、上記(1)の動作とを、任意の回数ずつ繰り返し行わせる、
ことを特徴とする圧電インクジェットヘッドの駆動方法である。
なお、(1)の動作において、圧電素子に印加していた駆動電圧を放電してから、再び印加するまでのパルス幅は、先に説明した、振動による、インクの、加圧室の側への引き込みを阻止して、インク柱がノズル内のインクから切り離されるのを阻害する効果をさらに確実なものとすることをすることを考慮すると、インクの、体積速度の固有振動周期の0.8〜1.2倍であるのが好ましい。したがって、請求項2記載の発明は、インク滴を吐出させない加圧室における、駆動電圧を放電してから再び印加するまでのパルス幅を、インクの、体積速度の固有振動周期の0.8〜1.2倍に設定する請求項1記載の圧電インクジェットヘッドの駆動方法である。
図1は、本発明の駆動方法を実施するための、圧電インクジェットヘッドの一例において、圧電素子と振動板とを含む駆動部を取り付ける前の状態を示す平面図である。図の例の圧電インクジェットヘッドは、1枚の基板1上に、加圧室2とそれに連通するノズル3とを含むドット形成部を複数個、配列したものである。各ドット形成部のノズル3は、図1に白矢印で示す主走査方向に複数列並んでいる。図の例では4列に並んでおり、同一列内のドット形成部間のピッチは90dpiであって、圧電インクジェットヘッドの全体として360dpiを実現している。
また、図2は、上記例の圧電インクジェットヘッドにおいて、駆動部を取り付けた状態での、1つのドット形成部を拡大して示す断面図、図3は、1つのドット形成部を構成する各部の重なり状態を示す透視図である。
各ドット形成部は、基板1の、図2において上面側に形成した、矩形状の中央部の両端に半円形の端部を接続した平面形状(図3参照)を有する加圧室2と、上記基板1の下面側の、加圧室2の一端側の端部の、半円の中心と重なる位置に形成したノズル3とを、上記端部の半円と同径の、断面円形のノズル流路4で繋ぐとともに、上記加圧室2の他端側の端部の、半円の中心と重なる位置に形成した供給口5を介して、加圧室2を、基板1内に、各ドット形成部を繋ぐように形成した共通供給路6(図1に破線で示す)に繋ぐことで構成してある。
また、上記各部は、図の例では、加圧室2を形成した第1基板1aと、ノズル流路4の上部4aと供給口5とを形成した第2基板1bと、ノズル流路4の下部4bと共通供給路6とを形成した第3基板1cと、ノズル3を形成した第4基板1dとを、この順に積層、一体化することで形成してある。また、第1基板1aと第2基板1bには、図1に示すように、第3基板1cに形成した共通供給路6を、基板1の上面側で、図示していないインクカートリッジからの配管と接続するためのジョイント部11を構成するための通孔11aを形成してある。さらに、各基板1a〜1dは、樹脂や金属などからなり、フォトリソグラフ法を利用したエッチングなどによって、上記各部となる通孔を形成した、所定の厚みを有する板体にて形成してある。
基板1の上面側には、当該基板1と同じ大きさを有する1枚の振動板7と、少なくとも各ドット形成部を覆う大きさを有する1枚の薄膜状の共通電極8と、図1中に一点鎖線で示すように各ドット形成部の加圧室2の中央部と重なる位置に個別に設けた、略矩形状の平面形状を有する横振動モードの薄板状の圧電素子9と、各圧電素子9上に形成した、同じ平面形状を有する個別電極10とを、この順に積層することで駆動部Dを構成してある。
なお、圧電素子9を、いくつかのドット形成部の加圧室2にまたがる大きさに一体形成して、個別電極10のみ、図1中に一点鎖線で示すように、各ドット形成部の加圧室2の中央部と重なる位置に個別に設けてもよい。
振動板7は、モリブデン、タングステン、タンタル、チタン、白金、鉄、ニッケルなどの単体金属や、これら金属の合金、あるいはステンレス鋼などの金属材料にて、所定の厚みを有する板状に形成してある。また、振動板7には、先の基板1の通孔11aとともにジョイント部11を構成する通孔11bを形成してある。共通電極8、個別電極10は、ともに、金、銀、白金、銅、アルミニウムなどの導電性に優れた金属の箔や、これらの金属からなるめっき被膜、真空蒸着被膜などで形成してある。なお振動板7を、白金などの導電性の高い金属で形成して共通電極8を省略してもよい。
圧電素子9を形成する圧電材料としては、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)や、当該PZTにランタン、バリウム、ニオブ、亜鉛、ニッケル、マンガンなどの酸化物の1種または2種以上を添加したもの、例えばPLZTなどの、PZT系の圧電材料を挙げることができる。また、マグネシウムニオブ酸鉛(PMN)、ニッケルニオブ酸鉛(PNN)、亜鉛ニオブ酸鉛、マンガンニオブ酸鉛、アンチモンスズ酸鉛、チタン酸鉛、チタン酸バリウムなどを主要成分とするものを挙げることもできる。
薄板状の圧電素子9は、従来と同様にして形成することができる。例えば、圧電材料の焼結体を薄板状に研磨して所定の平面形状を有するチップを作製し、それを、共通電極8上の所定の位置に接着、固定したり、共通電極8上に、反応性スパッタリング法、反応性真空蒸着法、反応性イオンプレーティング法などの気相成長法によって、圧電材料の薄膜を所定の平面形状に形成したりすることによって、圧電素子9を形成することができる。
圧電素子9を横振動モードとするためには、圧電材料の分極方向を、当該圧電素子9の厚み方向、より詳しくは個別電極10から共通電極8に向かう方向に配向させる。そのためには、高温分極法、室温分極法、交流電界重畳法、電界冷却法などの従来公知の分極法を採用することができる。また、分極後の圧電素子9をエージング処理してもよい。
圧電材料の分極方向を、上記の方向に配向させた圧電素子9は、共通電極8を接地した状態で、個別電極10から(+)の駆動電圧Vを印加することによって、分極方向と直交する面内で収縮する。しかし圧電素子9は、共通電極8を介して振動板7に固定されているため、結果的に、圧電素子9と振動板7とが、図2中に一点鎖線で示すように、加圧室の側に撓むことになる。
このため、撓みが発生する際の力が加圧室2内のインクに圧力変化として伝えられ、この圧力変化によって、供給口5、加圧室2、ノズル流路4、およびノズル3内のインクが振動を起こす。そして振動の速度が、結果的にノズル3の先端に向かうことによって、ノズル3内のインクメニスカスが、先端から外部へと押し出される。そして、ノズル3の先端から外部に、前述したインク柱が突出する。突出したインク柱は、やがて、インクの振動の速度が加圧室2の側に向かうことによって、ノズル3内のインクから切り離され、インク滴となって、紙面の方向に飛翔して、紙面にドットを形成する。
インク滴が飛翔して減少した分のインクは、ノズル3内のインクメニスカスの表面張力によって、インクカートリッジから、当該インクカートリッジの配管、ジョイント部11、共通供給路6、供給口5、加圧室2、およびノズル流路4を介してノズル3に再充てんされる。
個別電極10を介して圧電素子9に印加する駆動電圧波形は、この例では、図4の駆動回路12を使って発生させる。図の駆動回路12は、電源線12aと接地12bとの間に、第1トランジスタTR、抵抗R、R、および第2トランジスタTRを直列に繋いで第1回路12cを形成し、かつ、この第1回路12cの抵抗R、R間から分岐させて、抵抗R、個別電極10、圧電素子9、および共通電極8を介して、接地12dに至る第2回路12eを形成するとともに、両トランジスタTR、TRのベースに、それぞれ、コントロール電圧Vを印加するための端子12fを接続したものである。圧電素子9は、等価的にコンデンサとして機能する。
かかる駆動回路12は、圧電インクジェットヘッド上の、複数のドット形成部の各圧電素子9を個別に動作させるために、圧電素子9と同数を、例えば集積回路上に形成し、各駆動回路12の第2回路12eを、個別に、各圧電素子9の個別電極10と接続してある。また、各駆動回路12の端子12fは、いずれも、図示しない制御回路から、各端子12fを介して各駆動回路12に、個別に、形成画像のデータに応じたコントロール電圧を印加することで、それぞれの駆動回路12を個別に駆動させることができるように、上記制御回路と個別に接続してある。
引き打ち式の駆動方法を実施する場合、圧電インクジェットヘッドの待機時、すなわち、図5のtより以前(tより左側)の時点では、全てのドット形成部に対応する駆動回路12を、いずれも、制御回路から端子12fを介して両トランジスタTR、TRのベースにコントロール電圧VC1を印加した状態とする。この状態では、第1トランジスタTRのエミッタ−コレクタ間がON、第2トランジスタTRのコレクタ−エミッタ間がOFFとなるため、電源線12aから、第1トランジスタTR、抵抗R、R、個別電極10を介して、圧電インクジェットヘッド上の全てのドット形成部の圧電素子9に、図6に示すように、当該電源線12aの電源電圧値Vに相当する駆動電圧Vが継続的に印加される(V=V)。そのため、全てのドット形成部の圧電素子9は、分極方向と直交する面内で収縮し続け、それにともなって、圧電素子9と振動板7とが加圧室2の方向に撓んだ状態を維持する。そして、その結果、各ドット形成部において、インクは静止状態、ノズル3におけるインクの体積速度は0を維持する〔図7、8のtより以前(tより左側)の状態〕。
引き打ち式の駆動方法によってインク滴を吐出させるドット形成部においては、あらかじめ設定した駆動周波数ごとに、以下の動作が行われる。すなわち、ドット形成の直前のtの時点で、図5に示すように、制御回路から、端子12fを介して両トランジスタTR、TRのベースに印加していたコントロール電圧Vを停止する。そうすると、第1トランジスタTRのエミッタ−コレクタ間がOFF、第2トランジスタTRのコレクタ−エミッタ間がONとなるため、圧電素子9に印加されていた駆動電圧Vが、抵抗R、Rおよび第2トランジスタTRを介して、接地12bに放電される。
この際、駆動電圧Vは、Vから、式(iii):
=V×exp〔−t/τDN〕 (iii)
(式中のtは、tからの経過時間、τDNは、前記のように立ち下がりの時定数である。)
に基づいて、図6に示すように立ち下がり、やがて0Vになる(V=0)。立ち下がりの際の時定数τDNは、図4の回路の場合、式(iv):
τDN=C×(r+r) (iv)
(式中のCは、圧電素子9の、コンデンサとしての容量、r、rは、それぞれ、抵抗R、Rの抵抗値である。)
で求められる。
そして、これにより、圧電素子9の面方向の収縮を解除させるとともに、振動板7の撓みを解除させて、加圧室2の容積を一定量だけ増加させ、その容積の増加分だけ、ノズル3内のインクメニスカスを、加圧室2の側に引き込ませる。その際の、ノズル内でのインクの体積速度は、図7のtとtの間の部分に示すように一旦、(−)の側に大きくなった後、徐々に小さくなって、やがて0に近づく。これは、太線の実線で示すインクの体積速度の固有振動周期Tの、ほぼ半周期分に相当する。
次に、ノズルでのインクの体積速度が限りなく0に近づいた図7のtの時点で、図5に示すように、制御回路から、端子12fを介して、両トランジスタTR、TRのベースに、再び、コントロール電圧VC1を印加する。そうすると、第1トランジスタTRのエミッタ−コレクタ間がON、第2トランジスタTRのコレクタ−エミッタ間がOFFとなるため、電源線12aから、第1トランジスタTR、抵抗R、R、個別電極10を介して、圧電素子9に、再び充電が開始される。
この際、駆動電圧Vは、0Vから、式(v):
=V×{1−exp〔−t/τUP〕} (v)
(式中のtは、tからの経過時間、τUPは、前記のように立ち上がりの時定数である。)
に基づいて、図6に示すように立ち上がって再度、Vに達する(V=V)。立ち上がりの際の時定数τUPは、図4の回路の場合、式(vi):
τUP=C×(r+r) (vi)
(式中のCは、前述した圧電素子9の、コンデンサとしての容量、r、rは、それぞれ、抵抗R、Rの抵抗値である。)
で求められる。
そして、これにより、圧電素子9を面方向に収縮させて、振動板7を撓ませることによって、加圧室2の容積を減少させて、インクを、加圧室2からノズル3に押し出させる。この動作は、図7中に太線の一点差線で示すように、パルス幅Tが固有振動周期Tの約1/2である駆動電圧波形を有する駆動電圧Vを、圧電素子9に印加していることに相当する。
この動作によって、先に述べたように、加圧室2の側へ引き込まれたノズル3内のインクメニスカスがノズル3の先端側へ戻ろうとするところに、加圧室2から押し出されたインクの圧力が加わって、インクが、ノズル3の先端から外方へ突出してインク柱が形成され、形成されたインク柱が、図7のtの時点以降、インクの振動の速度が加圧室2の側に向かうことによって、ノズル3内のインクから切り離され、飛翔して、紙面にドットが形成される。
インク滴を吐出させるドット形成部において、上記の動作によりドットを形成している間の待機時に、インク滴を吐出させないドット形成部においては、あらかじめ設定した駆動周波数ごとに、前記(1)または(2)の動作を行わせる。このうち、(1)の動作は以下のようにして行われる。
すなわち、インク滴を吐出させないドット形成部においては、ドット形成の直前のtの時点で、図5に示すように、制御回路から、端子12fを介して両トランジスタTR、TRのベースに印加していたコントロール電圧Vを停止する。そうすると、第1トランジスタTRのエミッタ−コレクタ間がOFF、第2トランジスタTRのコレクタ−エミッタ間がONとなるため、圧電素子9に印加されていた駆動電圧Vが、抵抗R、Rおよび第2トランジスタTRを介して、接地12bに放電される。
この際、駆動電圧Vは、Vから、前記式(iii)に基づき、式(iv)で求められる立ち下がりの際の時定数τDNにしたがって、図6に示すように立ち下がり、やがて0Vになる(V=0)。そして、これにより、圧電素子9の面方向の収縮を解除させるとともに、振動板7の撓みを解除させて、加圧室2の容積を一定量だけ増加させ、その容積の増加分だけ、ノズル3内のインクメニスカスを、加圧室2の側に引き込ませる。その際の、ノズル内でのインクの体積速度は、図8のtとtの間の部分に示すように一旦、(−)の側に大きくなった後、徐々に小さくなって、やがて0に近づく。これは、太線の実線で示すインクの体積速度の固有振動周期Tの、ほぼ半周期分に相当する。
先に説明したように、インク滴を吐出させるドット形成部においては、この時点で、駆動電圧Vを0VからVまで立ち上げて、圧電素子9を面方向に収縮させていた。しかし、インク滴を吐出させないドット形成部においては、この時点で、駆動電圧Vを印加しない0Vの状態で維持することによって、加圧室2の容積を増加させた状態を維持する。そうすると、インクが加速されないだけでなく、インク自体の粘性によって減速される結果、図8のtとtの間の部分に示すように、ノズル3の先端側へ向かうインクの体積速度の最大値は、図8のtとtとの間の部分に示す、最初に、駆動電圧を放電して圧電素子9の変形を解除して加圧室2の容積を増加させた際の、加圧室2の側へ引き込まれるインクの体積速度の最大値よりも小さくなる。すなわち、インクの振動が減衰する。そのため、ノズル3の先端から外方へ突出するインク柱の、外方へ向かう速度と、突出量とを大きく低減することができる。
そして、インクがさらに振動して、インク柱がノズル3の先端から外方に最も突出した後、振動によって、インクの、加圧室2の側への引き込みが始まるtの時点(これは、インクの、体積速度の固有振動周期Tとほぼ一致するタイミングである)で、図5に示すように、制御回路から、端子12fを介して、両トランジスタTR、TRのベースに、再び、コントロール電圧VC1を印加する。そうすると、第1トランジスタTRのエミッタ−コレクタ間がON、第2トランジスタTRのコレクタ−エミッタ間がOFFとなるため、電源線12aから、第1トランジスタTR、抵抗R、R、個別電極10を介して、圧電素子9に、再び充電が開始される。
この際、駆動電圧Vは、0Vから、前記式(v)に基づき、式(vi)で求められる立ち上がりの時定数τUPにしたがって、図6に示すように立ち上がって再度、Vに達する(V=V)。この動作は、図8中に太線の一点差線で示すように、パルス幅Tが固有振動周期Tとほぼ一致する駆動電圧波形を有する駆動電圧Vを、圧電素子9に印加していることに相当する。そして、これにより、圧電素子9を面方向に収縮させ、振動板7を撓ませて、加圧室2の容積を減少させると、図8に示すように、振動の位相が逆転して、インクの、加圧室2の側への引き込みが阻止されるため、インク柱がノズル3内のインクから切り離されるのを阻害することができる。
その結果、先に説明した、ノズル3の先端から外方へ突出するインク柱の、外方へ向かう速度と、突出量とを大きく低減する効果と、上で述べた、インクの、加圧室2の側への引き込みを阻止して、インク柱がノズル3内のインクから切り離されるのを阻害する効果との相乗効果によって、ノズル3の先端からインク滴が吐出されるのを防止することができる。
また、上記の動作においては、ノズル3内のインクメニスカスが、一旦、加圧室2の側へ引き込まれた後、元の位置に押し戻されるように運動して、その近傍のインクが、加圧室2内のインクと良好に混合されるため、特に、インクメニスカスの近傍でのインクの粘度上昇を未然に防止し、あるいは粘度上昇が発生した際にはこれを解消することができる。
したがって、上記の動作を行うことにより、ドット形成部の待機時に、ノズル3の先端からインク滴を吐出させることなしに、インクメニスカスの近傍でのインクの粘度上昇を防止または解消して、特に、待機状態が続いた後のインク滴の吐出時に、インク滴の吐出が乱れたり、ノズル3が目詰まりしてインク滴を吐出できなくなったりするのを防止することができる。
しかも、上記の動作は、以上で説明してきたように、ノズル3の先端からインク滴を吐出させるのと同じ駆動回路12を用いて、圧電素子9に印加する駆動電圧のパルス幅Tを変更するだけで実施できると共に、図示しない制御回路から、各端子12fを介して、各駆動回路12にコントロール電圧を印加するタイミングをソフトウエア上で変更するだけで、パルス幅Tを変更することができるため、圧電インクジェットヘッドを駆動するための回路機構が複雑化するおそれもない。
なお、上記の動作において、圧電素子9に印加していた駆動電圧を放電してから、再び印加するまでのパルス幅Tは、先に説明した、振動による、インクの、加圧室2の側への引き込みを阻止して、インク柱がノズル3内のインクから切り離されるのを阻害する効果をさらに確実なものとすることをすることを考慮すると、インクの、体積速度の固有振動周期Tの0.8〜1.2倍、特に0.9〜1.1倍であるのが好ましい。
パルス幅Tが上記の範囲未満である場合には、インクが、まだノズル3の先端側へ向かう、ある程度の速度を有している間に、加圧室2内のインクを、同じ方向に押し出すことになるため、インクの、加圧室2の側への引き込みを阻止できないだけでなく、却ってインクが加速されてしまって、ノズル3の先端からインク滴が吐出されるおそれがある。また、パルス幅Tが上記の範囲を超える場合には、tの時点をある程度、過ぎてから、加圧室2内のインクを押し出すことになり、インクの、加圧室2の側への引き込みを阻止して、インク柱がノズル3内のインクから切り離されるのを阻害する効果が十分に得られないため、やはり、ノズル先端からインク滴が吐出されるおそれがある。
本発明では、インク滴を吐出させないドット形成部において、あらかじめ設定した駆動周波数ごとに、毎回、上記(1)の動作を行わせてもよいし、通常の待機動作、つまり、圧電素子9に一定の駆動電圧Vを印加して変形させることで、加圧室2の容積を減少させた待機状態を維持して、インクを、ノズル3の先端からインク滴として吐出させない動作とを、任意の回数ずつ、繰り返し、例えば1回ずつ交互に、複数回ずつ交互に、あるいは待機動作を複数回、行うごとに(1)の動作を1回行わせる等してもよい。
上記のように、(1)の動作と待機動作とを複数回ずつ交互に行わせるためには、ノズル3の先端からインク滴を吐出させるのと同じ駆動回路12を用いて、圧電素子9に、パルス幅Tの駆動電圧Vを印加するか、もしくは一定の駆動電圧Vを印加し続けるかを、ソフトウエア上で変更するだけでよい。そのため、やはり、圧電インクジェットヘッドを駆動するための回路機構が複雑化するおそれはない。
実施例1、比較例1:
(圧電インクジェットヘッドの作製)
図1〜図3に示す構造を有し、なおかつ、加圧室2の面積が0.2mm、幅が200μm、深さが100μm、ノズル3の直径が25μm、長さが30μm、ノズル流路4の直径が200μm、長さが800μm、供給口5の直径が25μm、長さが30μm、振動板7の厚みが50μm、圧電素子9の厚みが20μmである圧電インクジェットヘッドを作製した。共通電極8と個別電極10とを、図4に示す駆動回路に接続した。インクの、体積速度の固有振動周期Tは7.2μsecであった。
(印字試験)
紙面上にドットを形成する際に、隣り合うドット同士が重なり合わないように、上記圧電インクジェットヘッド上に形成した256個のドット形成部のうち、図1に白矢印で示す主走査方向と直行する方向の、同一列上に配列された64個のドット形成部を動作させることとし、用紙を給紙して直ちに、各ドット形成部を動作させてインク滴を吐出させて一列のドットを形成させた後、6600ドット分(用紙上の279.4mm分に相当)の待機状態の後、再び各ドット形成部を動作させてインク滴を吐出させて一列のドットを形成させることとした。
そして、待機状態の間、各ドット形成部に、駆動周波数ごとに、つまり6600回にわたって、前記(1)の動作を繰り返し行わせた場合を実施例1、待機状態の間、一定の駆動電圧Vを印加し続けた場合を比較例1として、両実施例、比較例について、それぞれ水性顔料インクAと、この水性顔料インクAよりも揮発性を高めた水性顔料インクBとを用いた場合の、待機後に形成されたドットを観察して、インクの粘度上昇によってインク滴の吐出が乱れるか、または詰まってインク滴が吐出されない不良が見られたドットの数を計数した。結果を表1に示す。
Figure 0004541856
表より、従来の駆動方法として、待機状態の間、一定の駆動電圧Vを印加し続けた比較例1においては、通常の水性顔料インクAを使用した場合でも、64個中、2個のドットに不良が見られ、揮発性を高めた水性顔料インクBを使用した場合には、64個中、20個ものドットに不良が見られることが判った。
これに対し、本発明の駆動方法として、駆動周波数ごとに前記(1)の動作を繰り返し行わせた実施例1においては、通常の水性顔料インクAだけでなく、揮発性を高めた水性顔料インクBを使用した場合にも、全くドットの不良は見られなかった。また、最初のドットと後のドットとの間の空間を観察したが、インク滴の吐出によるドットの形成は見られなかった。
そして、これらの結果から、本発明の駆動方法を採用すれば、待機時に、ノズル先端からインク滴を吐出させることなしに、インクメニスカスの近傍でのインクの粘度上昇を防止または解消することができ、特に、待機状態が続いた後のインク滴の吐出時に、インク滴の吐出が乱れたり、ノズルが目詰まりしてインク滴を吐出できなくなったりするのを防止できることが確認された。
本発明の駆動方法を実施するための、圧電インクジェットヘッドの一例において、圧電素子と振動板とを含む駆動部を取り付ける前の状態を示す、平面図である。 図1の例の圧電インクジェットヘッドにおいて、駆動部を取り付けた状態での、1つのドット形成部を拡大して示す、断面図である。 1つのドット形成部を構成する各部の重なり状態を示す、透視図である。 上記圧電インクジェットヘッドを駆動して、本発明の駆動方法を実施するための、駆動回路の一例を示す、回路図である。 図4の駆動回路の端子に入力する、コントロール電圧の電圧波形を示す、グラフである。 上記コントロール電圧の入力によって、駆動回路に発生させて、圧電素子に与える駆動電圧波形を示す、グラフである。 圧電素子に、パルス幅を所定値に設定した駆動電圧波形を印加して、インク滴を吐出させた際の、ノズル内のインクの、体積速度の振動をシミュレートした結果を示す、グラフである。 圧電素子に、パルス幅を所定値に設定した駆動電圧波形を印加して、インク滴を吐出させずに、インクメニスカスの変位のみを行わせた際の、ノズル内のインクの、体積速度の振動をシミュレートした結果を示す、グラフである。
符号の説明
2 加圧室
3 ノズル
7 振動板
9 圧電素子
体積速度の固有振動周期
駆動電圧のパルス幅

Claims (2)

  1. (A) インクが充てんされる加圧室と、
    (B) この加圧室に連通し、加圧室にインクが充てんされることによってインクメニスカスが形成されるノズルと、
    (C) 駆動電圧波形の印加によって変形する圧電素子と、この圧電素子の、駆動電圧波形の印加による変形によって撓んで加圧室の容積を減少させることで、インクを、ノズル先端からインク滴として吐出させる振動板とを含む駆動部と、
    を有するドット形成部を複数個、備える圧電インクジェットヘッドを駆動する方法であって、待機時には、圧電素子に一定の駆動電圧を印加して変形させることで、加圧室の容積を減少させた状態を維持しておき、
    ・ インク滴を吐出させるドット形成部においては、ドット形成直前に駆動電圧を放電することで、圧電素子の変形を解除して加圧室の容積を増加させて、ノズル内のインクメニスカスを加圧室の側へ引き込んだ後、このインクメニスカスがインクの振動によってノズルの先端側へ向かうタイミングに合わせて、再び駆動電圧を印加して、圧電素子を変形させて加圧室の容積を減少させることで、インクを、ノズル先端からインク滴として吐出させると共に、
    ・ インク滴を吐出させないドット形成部においては、
    (1) 駆動電圧を放電することで、圧電素子の変形を解除して加圧室の容積を増加させて、ノズル内のインクメニスカスを加圧室の側へ引き込んだ後、インクの、体積速度の固有振動周期とほぼ一致するタイミングで再び駆動電圧を印加して、圧電素子を変形させて加圧室の容積を減少させることで、加圧室内およびノズル内のインクを、ノズル先端からインク滴として吐出させることなくかく拌する動作を行わせるか、または、
    (2) 圧電素子に一定の駆動電圧を印加して変形させることで、加圧室の容積を減少させた待機状態を維持して、インクを、ノズル先端からインク滴として吐出させない動作と、上記(1)の動作とを、任意の回数ずつ繰り返し行わせる、
    ことを特徴とする圧電インクジェットヘッドの駆動方法。
  2. インク滴を吐出させない加圧室における、駆動電圧を放電してから再び印加するまでのパルス幅を、インクの、体積速度の固有振動周期の0.8〜1.2倍に設定する請求項1記載の圧電インクジェットヘッドの駆動方法。
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