JP3731252B2 - 高収縮性ポリエステル短繊維およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は高収縮ポリエステル短繊維に関するものであり、高い耐光堅牢性を有し、かつ高温領域でスパン織物の拘束に逆らって大きい収縮を発現し、ふくらみ感とソフト感を兼ね備えたスパン織物を得ることができる高収縮性ポリエステル短繊維に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
高収縮性繊維は低収縮性繊維と混繊あるいは混紡した後、糸又は布帛の段階で熱処理して嵩高性を有する糸や嵩高い織編物を製造するために使用されている。
従来の高収縮ポリエステル短繊維は、低い分子量のポリエステルを比較的低い温度で、かつ低い倍率で延伸して得ることが一般的であり、沸水処理または染色時にその大部分の収縮が発現するために、収縮率が不十分か、あるいは収縮率が十分高くとも染色以後の高次加工段階での工程張力の影響を受け、先に収縮した繊維が伸長するために十分な嵩高性が得られないと言う欠点があった。
【0003】
このような欠点を改善するために特公昭58−28373号公報、特公昭58−28374号公報、特公昭58−30412号公報には特定の成分を共重合することによって収縮特性を改善することが提案されている。しかしながら該公報は、いずれも沸水処理後の乾熱収縮率が小さいために布帛での収縮が不十分であった。また、特開昭55−57013号公報には、2・2ビス{4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパンを5〜15モル%共重合したポリエステルを用い収縮特性を改善することが提案されているが、該公報によれば沸水収縮率差を大きくすることが可能となるものの、耐光堅牢性が不良であること、沸水処理後の乾熱収縮率が小さいことが本願発明者により明らかになった。また、収縮応力が不十分なために布帛で十分な収縮を発現することができないという欠点がある。また、特公昭61−13009号公報には、低収縮成分と高収縮成分からなるポリエステル混繊糸により、沸水収縮率に差をもたせ嵩高性を付与することが提案されている。しかし、沸水処理(精練)後の乾熱処理(中間セットなど)時に十分な収縮が得られない欠点があった。更に特開平2−19528号公報では、特定の成分を特定比率含有したポリエステルを用い、耐光堅牢性、収縮特性を改善することが提案されており、沸水処理後の乾熱収縮特性はかなり向上したものの、経時によって収縮率が変化する欠点があった。また、特開平3−249239号公報には、沸水収縮率差が20%以上である低収縮成分と高収縮成分からなるポリエステル混繊糸によって収縮特性を改善しソフト感を付与することが提案されている。しかし、沸水収縮率が高すぎて紡績糸にした場合に撚止めセット、経糸の糊付乾燥時に大きく収縮しすぎる欠点があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ニーズが多様化している現在において嵩高な織編物に対する要望は相変わらず強い。嵩高性を向上するために多くの提案があり改善が図られているが、前記したように、織物拘束力下では十分な収縮が発現せず、要求を満足するレベルに至っていない。また、収縮を高めるために特殊な成分を共重合すると耐光堅牢性が劣るなどの欠点がある。
【0005】
本発明の目的は、耐光堅牢性が良く、スパン織物のように拘束力が大きい布帛であっても十分なふくらみ感とソフト感を備えた嵩高な織物を得ることができる高収縮性ポリエステル短繊維を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、イソフタル酸および2・2ビス{4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパンを共重合成分とし、次式I、II、IIIを同時に満足する量を含有する共重合ポリエステルからなり、沸水収縮率が20%以下、沸水処理後の160℃乾熱収縮率が12〜40%、沸水処理後の180℃乾熱収縮率が15〜45%、経時変化率が15%以下であることを特徴とする高収縮性ポリエステル短繊維によって達成できる。
P(a)+1.5×P(b)≧8.5−−−−I
P(a)+P(b)≦18.0−−−−II
1.0≦P(b)≦5.5−−−−III
(但し、上式中、P(a)は共重合ポリエステル中の全酸成分に対するイソフタル酸のモル分率(%)、P(b)は共重合ポリエステル中の全グリコール成分に対する2・2ビス{4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパンのモル分率(%)である。)。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の高収縮性ポリエステル短繊維は、原綿の収縮特性が特定の範囲内にあることが必要であり、沸水収縮率は20%以下であることが必要である。沸水収縮率が20%を越えてしまうとスパン糸の撚止めセットや経糸の糊付乾燥時に収縮が発現してしまい、工程安定性が不良となる。また、沸水収縮率が20%を越えると沸水処理後の乾熱収縮率を大きくできない欠点も生ずる。沸水収縮率は、17%以下が好ましく、15%以下であることがより好ましい。沸水収縮率の下限値は特に規定しないが、前記工程通過性を良くするためには5%以上あることが好ましい。
【0008】
また、実工程においては沸水処理後の乾熱収縮率が極めて重要なファクターとなる。つまり、染色した後の乾熱によるバルクアップ時に大きく収縮することが織物にふくらみを付与し、ソフトな織物にすることができるからである。その意味から沸水処理後の160℃における乾熱収縮率は12〜40%、沸水処理後の180℃における乾熱収縮率は15〜45%が必要である。前記した沸水処理後の乾熱収縮率が範囲より低い場合には、低収縮短繊維と混紡した時に十分な嵩高性を得ることができず本発明の目的を達成することはできない。
【0009】
逆に前記した乾熱収縮率の範囲よりも高い場合には、収縮が大きすぎるために、収縮した繊維が太くなり、織物全体が粗硬となって本発明の目的を達成することはできない。沸水処理後の160℃における乾熱収縮率は好ましくは16〜30%であり、同様に沸水処理後の180℃における乾熱収縮率は好ましくは18〜35%である。
【0010】
また、本発明においては、後述する経時変化率が15%以下であることが必要である。一般的に、収縮率が大きいほど、または拘束力が小さいほど、放置温度が高いほど収縮率の経時変化が大きく、収縮率が経時とともに変化する。このように経時変化が大きいと一定の収縮率を得ることが難しく、ひいては嵩高性も不均一となる。従って、経時変化は小さい程良いが、本発明者が鋭意検討した結果、経時変化率を15%以下とすることによって、得られた織物のふくらみ感を長期に渡って保持できることが判明した。
なお、経時変化率(%)は、次式によって求めた値である。
{(初期沸水収縮率−経時後の沸水収縮率)/初期沸水収縮率}×100
ここで、経時後の沸水収縮率とは、無拘束力状態で40℃の雰囲気下に10日放置した時の沸水収縮率をいう。
【0011】
経時変化率を小さくするためには、高収縮性を保持しながら繊維の内部構造が緻密であることが好ましく、内部構造の緻密性を表す密度法による結晶化度が15%以上であることが好ましい。15%未満の場合には経時変化率が大きく、織物に均一な嵩高を付与することが困難となる場合がある。更に好ましい結晶化度は18%以上である。一方、結晶化度が高すぎる場合には収縮率が低下するので、結晶化度は30%以下であることが好ましい。
【0012】
さらに、内部構造を決定する因子として分子の配向度を示すコンペンセータ法による複屈折率は110×10-3〜145×10-3の範囲にあることが収縮特性と経時変化率の点から好ましい。複屈折率が110×10-3よりも低い場合には、非晶部の配向度は保持できるものの結晶化度が低くなるために経時変化が大きくなってしまう傾向にある。一方、145×10-3よりも高い場合には、結晶化度が高くなるために収縮率が低くなりすぎる傾向にある。
【0013】
また、本発明の高収縮性ポリエステル短繊維用ポリエステルは、イソフタル酸および2・2ビス{4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパンを共重合成分とし、次式I、II、III を同時に満足する量を含有する共重合ポリエステルである。
P(a)+1.5×P(b) ≧8.5−−−−I
P(a)+P(b)≦18.0 −−−−II
1.0≦P(b)≦5.5 −−−−III
(但し、上式中、P(a) は共重合ポリエステル中の全酸成分に対するイソフタル酸のモル分率(%)、P(b) は共重合ポリエステル中の全グリコール成分に対する2・2ビス{4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパンのモル分率(%)である。)
【0014】
高収縮性ポリエステル短繊維用共重合ポリエステルは、イソフタル酸もしくは、2・2ビス{4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパンのいずれか一方のみを共重合成分として含有する共重合ポリエステルでは、本発明の収縮特性を発現しにくい傾向にあり、耐光堅牢性、ふくらみ感とソフト感の風合いだけでなく、染色性の点からも高品質の織編物として好適な高収縮性ポリエステル短繊維とはなりにくい傾向にある。また、イソフタル酸もしくは2・2ビス{4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパンの一方と他の共重合成分との組合せでは、本発明で規定する収縮特性と耐光堅牢性などを同時に満足しにくい傾向にある。
【0015】
本発明の高収縮性ポリエステル短繊維用共重合ポリエステルは、イソフタル酸と2・2ビス{4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパンを共重合成分として式I、を満足する共重合ポリエステルであることが好ましい。
P(a) +1.5×P(b) ≧8.5 −−−−I
ここで、P(a) はイソフタル酸、P(b) は2・2ビス{4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパンである。
【0016】
P(a) +1.5×P(b) が8.5未満では沸水収縮率および沸水処理後の乾熱収縮率ともに低くなる傾向にある。収縮率を十分に大きくするためにはP(a) +1.5×P(b) が12.0以上が好ましい。
【0017】
また、式II、
P(a) +P(b) ≦18.0 −−−−−−II
を満足することが好ましい。P(a) +P(b) が18.0を越えると共重合ポリエステルの融点は210℃付近まで低下し、更に耐熱性も低下するために紡糸時の糸切れ、延伸時の膠着など製糸性が悪化する場合がある。なお、P(a) +P(b) を16.0以下にするとより安定な紡糸、延伸が可能となり好ましい。
【0018】
そして、式III 、
1.0≦P(b) ≦5.5 −−−−−−−III
を満足することが好ましい。P(b) が1.0未満では紡糸延伸条件を変更しても前述した収縮特性、特に沸水処理後の乾熱収縮率を満足しない場合がある。一方、2・2ビス{4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパンを含有する共重合ポリエステル短繊維はこの共重合成分の共重合分率が高くなるにつれて、耐光堅牢性が著しく低下する傾向にあり、P(b) ≦5.5であることが好ましい。耐光堅牢性についてはP(b) を4.6以下にするとより好ましい結果を生じる。
【0019】
また、本発明においてはイソフタル酸と2・2ビス{4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパンとをともに共重合すること、更に好ましくはイソフタル酸を2・2ビス{4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパンよりも高率に共重合することにより、耐光堅牢性の低下を抑制する傾向にある。
【0020】
ここで、共重合ポリエステルとは、ポリエステルの主鎖にイソフタル酸および2・2ビス{4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパンがランダムに共重合した構造を有するものを示す。ベースとなるポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。共重合ポリエステルには、その製造工程で副生する範囲内でジエチレングリコールなどを主鎖に含有しても良いし、本発明の高収縮性ポリエステル短繊維を製造可能な範囲で、イソフタル酸と2・2ビス{4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパン以外の共重合成分を含有しても良い。
【0021】
本発明の高収縮性ポリエステル短繊維には、本発明の目的を阻害しない範囲において酸化チタンなどの添加物が添加されていても良い。
【0022】
高収縮性ポリエステル短繊維は、異収縮の混紡もしくは、異収縮の交編織物において、優れたふくらみ感、ソフト感を発揮するには、単に高収縮性ポリエステル短繊維の収縮率が高いだけでは十分でなく、編織物の拘束力に打ち勝って収縮する力、すなわち収縮応力が高いことが肝要である。
したがって、本発明の高収縮性ポリエステル短繊維の収縮応力は、150mg/d以上であることが好ましく、さらには250mg/d以上であることがより好ましい。収縮応力が150mg/d未満では拘束力下にある編織物で十分な収縮を発現しにくい傾向にある。
【0023】
また、本発明の高収縮性ポリエステル短繊維の固有粘度は、0.52以上であることが好ましい。従来の高収縮性短繊維は、抗ピル性を付与するために固有粘度を低く設定しており、沸水処理後の乾熱収縮率を高くすることができなかった。しかし、現在では織物にした後で有効な抗ピル加工が可能となったために固有粘度を高くし、製糸条件も沸水処理後の乾熱収縮率が高くできる条件が採用可能となった。固有粘度が0.52未満では収縮率、特に沸水処理後の乾熱収縮率と収縮応力が高くなりにくい傾向にある。つまり、本発明で規定するような高い沸水処理後の乾熱収縮率と高い収縮応力を得るためには未延伸糸を高温及び高倍率で延伸し、その後に定長熱処理をすることが極めて有効であるが、固有粘度が低い場合には高温延伸、高倍率延伸、延伸後の熱処理のいずれも困難となる場合がある。特に好ましい固有粘度は0.60以上である。収縮特性を高くするためには固有粘度は高い方が有効であるが、高すぎると織物になった後に抗ピル加工を行ってもピルの発生を防止することが困難となるので固有粘度は0.68以下が好ましい。
【0024】
また、本発明の高収縮性ポリエステル短繊維維の断面形状は、特に限定されることはないが、シルキー分野にはT断面あるいはY断面等の3葉以上の断面が好ましい。さらに、その断面の変形度は、1.2以上であることが高い光沢を付与できることから好ましい。
【0025】
本発明の高収縮性ポリエステル短繊維の繊度及び繊維長の制約はないが、繊度は0.5〜5.0dが好ましく使用できる。織物を熱処理した後では、高収縮短繊維は、紡績糸の中心に位置するので腰・張を付与する目的から1.2d以上が特に好ましい。繊維長は、32〜110mmであることが好ましい。
【0026】
次に、本発明の高収縮性ポリエステル短繊維の製造方法について説明する。
本発明の高収縮性ポリエステル短繊維を製造するためには、イソフタル酸および2・2ビス{4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパンを共重合成分とし次式I、II、III を同時に満足する量を含有し、固有粘度が0.52以上の共重合ポリエステル延伸繊維を−2〜5%の弛緩率で120〜180℃で2秒間以上熱処理することを特徴とする高収縮性ポリエステル短繊維の製造方法によって達成される。
【0027】
P(a) +1.5×P(b) ≧8.5−−−−I
P(a) +P(b) ≦18.0 −−−−II
1.0≦P(b) ≦5.5 −−−−III
(但し、上式中、P(a) は共重合ポリエステル中の全酸成分に対するイソフタル酸のモル分率(%)、P(b) は共重合ポリエステル中の全グリコール成分に対する2・2ビス{4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパンのモル分率(%)である。)
本発明の高収縮性ポリエステル短繊維を製造するためには、前記共重合ポリエステルを用い、溶融紡糸を行い所定の速度で引取りつつ合糸した後、一旦缶に収納する。得られたサブトウを複数本引き揃えながら通常用いられる液浴で延伸し、次いで熱処理を施す。この製造工程において延伸繊維を弛緩率−2〜5%の範囲で、温度120〜180℃で2秒間以上熱処理した後にトウをクリンパに挿入し、捲縮を付与した後、所定の処理剤を付与しカッターでカットすることによって本発明の高収縮性ポリエステル短繊維を得ることが可能となる。延伸繊維の熱処理において弛緩率が−2%未満では、熱処理時ロールへの単糸巻き付きや糸切れが頻発し製糸性が大巾に低下する。また、弛緩率が5%を越えると糸道が安定せず、さらに糸に均一な熱処理を施すことが困難となり収縮むらが大きくなる。
【0028】
また、熱処理温度が120℃未満では、低温領域における収縮を十分に抑制できないため好ましくない。逆に、熱処理温度が180℃を越えると、収縮が低くなりすぎ中間セットなどのバルクアップ工程で十分な収縮を発現しえない。
【0029】
一方、熱処理時間が2秒未満では、十分な熱処理を施すことができないために単糸間のばらつきが発生し収縮むらの発生原因となる。好ましい熱処理時間は、3秒間以上である。
【0030】
本発明の高収縮性ポリエステル短繊維は,例えば次のようにして製造することが可能である。繰り返し単位の酸成分の7.0モル%がイソフタル酸、グリコール成分の4.0モル%が2・2ビス{4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパン含有の共重合ポリエチレンテレフタレートのチップを得る。得られたチップを紡糸温度290℃、紡糸速度1300m/minで溶融紡糸をして未延伸糸を得る。その未延伸糸を90℃、延伸倍率3.35倍、延伸速度150m/minの条件で延伸を行い、引続き弛緩率0%の定長状態で130℃の条件で熱処理を4.5秒間行う。次いで機械捲縮を付与し、76mmの繊維長とすることによって本発明の高収縮性ポリエステル短繊維を得ることができる。
【0031】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。尚、実施例中の各物性は、次の方法で求めた。
【0032】
A.沸水収縮率
デニール当たり100mgの荷重をかけて原長(L0)を測定し、無荷重で沸騰水中に15分間浸漬する。沸騰水処理後デニール当たり100mgの荷重で処理後の長さ(L1)を測定する。沸水収縮率は下記式で求める。
沸水収縮率={(L0−L1)/L0}×100(%)
【0033】
B.沸水処理後の乾熱収縮率
無荷重で沸騰水中に15分間浸漬する。沸騰水から取り出し、室温で24時間以上風乾する。サンプルをデニール当たり100mgの荷重を掛け、沸水処理後の長さ(L2)を測定する。無荷重で規定の温度の雰囲気中に投入し、15分後取り出し、デニール当たり100mgの荷重下で乾熱処理後の長さ(L3)を測定する。沸水処理後の乾熱収縮率は下記式で求める。
沸水処理後の乾熱収縮率={(L2−L3)/L2}×100(%)
【0034】
C.収縮応力
一方の端を歪みゲージに取り付け、デニール当たり20mgの張力を与えて他端を固定する。180℃のオーブン中で処理した時発生する収縮応力をレコーダーに記録し、その最大値(mg/d)を求める。
【0035】
D.耐光堅牢度
分散染料(RESOLINE BLUE FBL)により染色した織物を用い、耐光堅牢度用のサンプルとした。評価はJIS L0842(カーボンアーク灯法)に基づいた8段階判定とした。8級が最も良く、級が低くなるに従い堅牢性は悪い。本発明の目標とする耐光堅牢度は4級以上を合格とした。
【0036】
E.ふくらみ感、ソフト感
官能評価により行い、結果は9段階で判定した。ふくらみ感、ソフト感が最も悪い場合を1級として評価した。本発明の目標とするふくらみ感、ソフト感はそれぞれ5級以上を合格とした。
【0037】
F.固有粘度
高収縮性ポリエステル短繊維をO−クロルフェノールに溶解し、25℃で測定した値である。
【0038】
実施例1
テレフタル酸/エチレングリコールおよびイソフタル酸/エチレングリコールスラリーを用いてエステル化反応を行った後、着色防止剤/エチレングリコールスラリーを添加した後、重合反応触媒および酸化チタン/エチレングリコールスラリー(得られる共重合ポリエステルに対して酸化チタンを0.1wt%)を添加した後に2・2ビス{4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパン/エチレングリコール溶液を添加し、通常の方法により重合を行い、表1に示す組成の高収縮性共重合ポリエチレンテレフタレートのチップを得た。
【0039】
得られたチップを乾燥後、紡糸温度290℃、紡糸速度1300m/分で、Y型口金を用い変形度1.4のY型断面の未延伸糸を紡糸した。この未延伸糸を50万デニールのトウとし、延伸温度90℃、延伸倍率3.35倍、延伸速度150m/分で延伸し、延伸に引続き弛緩率0%の定長状態で130℃の条件で4.5秒間の熱処理を行い機械的捲縮を付与した後、この繊維を切断し、2.5d、76mmの原綿とした。この原綿の固有粘度は0.62であり、また繊維物性は表1の通りであった。この製糸における製糸性は繊維の切断もなく、良好であった。この原綿と1.5d、76mmの沸水収縮率が0.5%である低収縮原綿をそれぞれ40重量%、60重量%の比率でブレンドし、30/2の紡績糸を得た。得られた紡績糸を経・緯に使用してそれぞれの織密度61/45(本/インチ)とした生機を得た。この生機を98℃熱水でリラックス精練、170℃で仕上げセットを行い織物を作製した。この織物のふくらみ感は8級、ソフト感8級の官能評価結果を得、さらに耐光堅牢度は7級と表1に示したとおり、本発明の目的とするふくらみ感とソフト感のある織物を得た。
【0040】
【表1】
実施例2〜5および比較実施例1〜3
表1に記載した如く、酸成分のイソフタル酸およびグリコール成分の2・2ビス{4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパンの量を変更した以外は、実施例1と同様の方法で各種共重合ポリエチレンテレフタレートを得、実施例1と同様に織物を得た。その結果を表1に示す。
【0041】
実施例2〜5は、本発明の範囲内の共重合ポリエチレンテレフタレートであり、ふくらみ感、ソフト感の官能評価結果および耐光堅牢度ともに良好であった。
【0042】
一方、比較実施例1および3は、イソフタル酸または2・2ビス{4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパンのいずれか一方のみ共重合した共重合ポリエチレンテレフタレートであるために、沸水処理後の160℃乾熱収縮率が12%未満、沸水処理後の180℃乾熱収縮率が15%未満であるために、本発明の目的とするふくらみ感、ソフト感のある織物が得られなかった。
【0043】
また、比較実施例2は、イソフタル酸および2・2ビス{4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパンの量が本発明の式IIの範囲外の共重合ポリエチレンテレフタレートであり、該ポリエステルは融点が212℃まで低下し、紡糸時糸切れが頻発した他、収縮率が高すぎるとともに、経時変化も大きい原綿となり、ソフト感に劣る織物であった。
【0044】
実施例6〜9および比較実施例4〜6
実施例1と同じ高収縮性共重合ポリエチレンテレフタレートを用い、表2に記載した如く、熱処理の温度、時間、弛緩率を変更し、実施例1同様にして織物を得た。その結果を表2に示す。
【0045】
実施例6〜7は、本発明の範囲内の熱処理条件であり、ふくらみ感、ソフト感の官能評価結果および耐光堅牢度ともに良好であった。
【0046】
また実施例8は、本発明の範囲内の熱処理条件において弛緩率を本発明の下限値に変更したところ、ふくらみ感、ソフト感の官能評価結果および耐光堅牢度ともに良好であったものの、単糸巻き付きがわずかに起こり製糸性が若干劣る傾向にあった。
【0047】
逆に実施例9は、本発明の範囲内の熱処理条件において弛緩率を本発明の上限値に変更したところ、ふくらみ感、ソフト感の官能評価結果および耐光堅牢度ともに良好であったものの、糸道の安定性に若干劣る傾向にあった。
【0048】
一方、比較実施例4は本発明の範囲外の熱処理条件であったために収縮特性等の繊維物性が本発明の範囲外であり、さらに本発明の目的とする、ふくらみ感、ソフト感の官能評価結果を得ることができなかった。
【0049】
また、比較実施例5は、熱処理の弛緩率が低すぎるために延伸時、糸切れが頻発に起こり延伸性不良となった。
【0050】
また、比較実施例6においては弛緩率が大きすぎるため、糸道が全く安定せず糸に均一な熱処理を施すことが困難となり収縮むらが大きかった。
【0051】
さらに、比較実施例7は固有粘度が本発明範囲外の0.49と低粘度であったがために延伸時スーパードローが発生し延伸性不良となった。
【0052】
【表2】
【0053】
【発明の効果】
本発明の高収縮性ポリエステル短繊維は、低収縮性短繊維と混紡もしくは交織することによって、豊かなふくらみ、ソフト感、および染色後の耐光堅牢性を有し、かつ、収縮率の経時変化が少ないために、長期に渡ってふくらみ感を保持できる他、ライブリネスに優れた紡績糸織物とすることができる。
Claims (6)
- イソフタル酸および2・2ビス{4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパンを共重合成分とし、次式I、II、IIIを同時に満足する量を含有する共重合ポリエステルからなり、沸水収縮率が20%以下、沸水処理後の160℃乾熱収縮率が12〜40%、沸水処理後の180℃乾熱収縮率が15〜45%、経時変化率が15%以下であることを特徴とする高収縮性ポリエステル短繊維。
P(a)+1.5×P(b)≧8.5−−−−I
P(a)+P(b)≦18.0−−−−II
1.0≦P(b)≦5.5−−−−III
(但し、上式中、P(a)は共重合ポリエステル中の全酸成分に対するイソフタル酸のモル分率(%)、P(b)は共重合ポリエステル中の全グリコール成分に対する2・2ビス{4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパンのモル分率(%)である。) - 密度法で測定した結晶化度が15〜30%であることを特徴とする請求項1記載の高収縮性ポリエステル短繊維。
- コンペンセータ法で測定した複屈折率が110×10−3〜145×10−3であることを特徴とする請求項1または2に記載の高収縮性ポリエステル短繊維。
- 収縮応力が150mg/d以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の高収縮性ポリエステル短繊維。
- 固有粘度が0.52以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の高収縮性ポリエステル短繊維。
- 断面形状が3葉以上であり、その変形度が1.2以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の高収縮性ポリエステル短繊維。
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