JP3730285B2 - エポキシ基含有ジ(メタ)アクリレート化合物及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は高機能性樹脂のモノマーとして、あるいは合成樹脂・繊維・インキ・塗料の分野の各種ポリマー、オリゴマー若しくはこれらを含有する樹脂組成物の製造用原料、原料成分又は添加剤として利用される新規なエポキシ基含有ジ(メタ)アクリレート化合物及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より各種の(メタ)アクリル酸エステルが知られており、様々な分野で利用されている。例えば、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、2−エチルヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ブタンジオールジアクリレート等が単官能、多官能化合物として一般的に知られている。
【0003】
しかしながら、これらの化合物を印刷インキや塗料等に用いた場合には、硬化後の密着性が悪く、塗膜が剥離する等の問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は反応性に富む二官能の(メタ)アクリレート化合物にさらにエポキシ基を導入することにより、反応性を高めた新規なエポキシ基含有ジ(メタ)アクリレート化合物及びその製造方法を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は下記一般式(I)で表されるエポキシ基含有ジ(メタ)アクリレート化合物を提供するものである。
【0006】
【化3】
(式中、R1及びR2は単結合又は炭素数1〜10のアルキレン基であって、お互いに同じであっても異なっていてもよく、R3及びR4は水素原子又はメチル基である。)
このような構造を有する本発明のエポキシ基含有ジ(メタ)アクリレート化合物は新規な化合物であり、分子内に重合性が高いアクリロイル基を2個有するため、熱、紫外線、イオン及びラジカル開始剤の存在下で容易に重合し、かつ不飽和基含有化合物とも容易に共重合する。また、反応性の高いエポキシ基が分子内に存在するため、それらが更に架橋等の反応ポイントとして働き、硬度、密着性等の樹脂性能を向上させている。
【0007】
このような構造を有する本発明のエポキシ基含有ジ(メタ)アクリレート化合物を製造する方法としては、例えば、本発明の製造方法、すなわち、下記式(II)で表されるジオールと、
HO−R1−HC=CH−R2−OH (II)
(式中、R1及びR2は単結合又は炭素数1〜10のアルキレン基であって、お互いに同じであっても異なっていてもよい。)
(メタ)アクリル酸を酸触媒の存在下で反応させて記式(III)で表される(メタ)アクリル酸エステルとし、
【0008】
【化4】
次いで有機過酸化物をこの(メタ)アクリル酸エステルに反応させて上記ジオールに由来する炭素−炭素二重結合を選択的にエポキシ化する方法が好適に用いられる。
【0009】
上記ジオール(II)は、例えば不飽和ジカルボン酸の選択還元、不飽和ラクトンの開裂、不飽和ラクトンの選択還元等により得ることができる。ジオール(II)の具体例としては、2−ブテン−1,4−ジオール、2−ペンテン−1,5−ジオール、3−ヘキセン−1,6−ジオール等が挙げられる。
【0010】
また、ジオールに(メタ)アクリル酸を反応させるときに用いる酸触媒としては、例えば、硫酸、p−トルエンスルホン酸などを例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0011】
更にこの反応においては重合禁止剤を添加することが好ましく、例えば、フェノチアジン、p−メトキシフェノール、ヒドロキノンなどを添加することができるが、これらに限定されるものではない。
【0012】
前記エステル化反応は、通常、適当な溶媒中で実施するのがよく、特に好適に使用される溶媒として、例えば、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等のエステル化反応の進行に支障がない溶媒であって、かつ、生成する水を共沸によって除去しうるような溶媒を挙げることができる。
【0013】
エステル化の反応条件として、(メタ)アクリル酸とジオールのモル比((メタ)アクリル酸/ジオール)は通常1.0〜8.0、好ましくは2.0〜3.0の範囲である。
【0014】
酸触媒の添加量は(メタ)アクリル酸及びジオールの合計量に対して、通常0.1〜10.0重量%、好ましくは1.5〜3.0重量%である。
【0015】
また、溶媒の添加量は、(メタ)アクリル酸及びジオールの合計量に対して、通常30〜200重量%、好ましくは50〜100重量%である。
【0016】
更に重合禁止剤の添加量は、(メタ)アクリル酸、ジオール、酸触媒及び溶媒の合計量に対して、通常0.01〜0.5重量%、好ましくは0.05〜0.3重量%である。
【0017】
このエステル化反応は通常60〜200℃程度の温度で好適に行うことができるが、適時、用いる溶媒の沸点付近、あるいはそれ以上の温度に設定したり、反応の進行と共に昇温するなどして、生成する水を共沸除去しつつ行う温度が、好適に採用される。
【0018】
反応圧力は、通常、減圧から常圧付近に選定すればよく、生成する水の
共沸除去を減圧によって促進する方法もしばしば好適に採用される。
【0019】
また、この反応は、回分式、流通式又はこれらを組み合わせた方式で行うこともできる。
【0020】
なお、エステル化反応後は、アルカリ水溶液による触媒の中和、水洗した後に低沸分を留去する。また、減圧蒸留を行うことで、更に高純度の(メタ)アクリル酸エステル(III)が得られる。
【0021】
次に生成した上記一般式(III)で表される(メタ)アクリル酸エステル中のジオールに由来する炭素−炭素二重結合を有機過酸化物を用いて選択的にエポキシ化し、エポキシ基含有ジ(メタ)アクリレート化合物を製造する。
【0022】
このときに用いる有機過酸化物としては、例えば、過安息香酸、メタクロロ過安息香酸、過酢酸、過ギ酸などが例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
また、このときに用いる溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、ベンゼン、ヘキサンなどを例示することができるが、これに限定されるものではない。
【0024】
更にこの反応においても重合禁止剤を添加することが好ましく、例えば、フェノチアジン、p−メトキシフェノール、ヒドロキノンなどを使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
反応条件として、有機過酸化物量/(メタ)アクリル酸エステル量のモル比は通常0.5〜5.0、好ましくは1.5〜3.0である。
【0026】
溶媒の添加量は、有機過酸化物及び(メタ)アクリル酸エステルの合計量に対して、5.0〜300重量%の範囲内で、有機過酸化物及び(メタ)アクリル酸エステルが均一に溶媒中にあればよい。
【0027】
更に重合禁止剤の添加量は、(メタ)アクリル酸エステル、有機過酸化物及び溶媒の合計量に対して、通常0.01〜0.5重量%、好ましくは0.05〜 0.3重量%である。
【0028】
反応温度は通常−10.0〜50.0℃程度であり、室温以下の温度が好適に採用される。
【0029】
なお、反応後は、残っている有機過酸過物を、硫酸鉄(II)、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムなどの水溶液で還元し、次に弱アルカリで中和し、飽和食塩水で洗浄し、低沸分を留去する。
【0030】
以上のようにして、所望のエポキシ基含有ジ(メタ)アクリレート化合物を容易に合成することができる。
【0031】
【実施例】
以下、本発明の実施例及びその比較例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0032】
実施例1
2−ブテン−1,4−ジアクリレートの合成
撹拌機、温度調節器、温度計、凝縮器、分離器を備えつけた反応器に、2−ブテン−1,4−ジオール141重量部、アクリル酸252重量部、フェノチアジン0.7重量部、シクロヘキサン310重量部、及び触媒として硫酸7.8重量部を仕込み、80℃に加熱し3時間反応させた。生成する水は溶媒と共に蒸留して分離器で除去し、溶媒は連続して反応器に返した。反応終了後室温まで冷却し、10重量%の水酸化ナトリウム水溶液で中和し、更に油層を水洗・乾燥後、ロータリーエバポレーターでシクロヘキサンを留去し、反応生成物を得た。更にこれを減圧蒸留し、93〜95℃/2.0mmHgの留分を170重量部得た。
【0033】
実施例2
2,3−エポキシブタン−1,4−ジアクリレートの合成
撹拌機、温度計、冷却管を備えつけた反応器に、実施例1で得られた反応生成物6重量部、ジクロロメタン300重量部、メタクロロ過安息香酸18重量部を仕込み、室温で3日間撹拌した。その後反応液に飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液60重量部、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液120重量部加え、その水層をジクロロメタン20部で3回抽出し、次に反応有機層と共に飽和食塩水で洗浄し、乾燥した。更にロータリーエバポレーターでジクロロメタンを留去し、n−ヘキサンで再結晶して反応生成物3重量部を得た。
【0034】
得られた反応生成物は融点52.8〜53.1℃の白色針状結晶で、質量分析をした結果、分子量は212であった。
【0035】
更に得られた反応生成物の赤外吸収スペクトル(IRスペクトル)の結果を次に示す。
【0036】
スペクトルの帰属は以下の通りとなった。
νC-H 3014cm-1 (C−H伸縮)
νC=O 1634cm-1 (C=O伸縮)
νC=O 1743,1725cm-1 (C=O伸縮)
νC-O 1208,987,809cm-1 (C−O伸縮)
また、1H−NMRスペクトルの結果及び13C−NMRスペクトルの結果からそれぞれのスペクトルの帰属は下式(IV)の構造式に従い、以下の通りになった。
【0037】
1H−NMRスペクトル(270MHz:アセトン−d6);δ(ppm)
3.27ppm 2H(H5f,H6f)
4.20 2H(H4d,H7d)
4.47 2H(H4e,H7e)
5.91 2H(H1b,H10b)
6.15 2H(H2c,H9c)
6.38 2H(H1a,H10a)
13C−NMRスペクトル(270MHz:アセトン−d6);δ(ppm)
54.5ppm 2C(CH:C5,C6)
63.7 2C(CH2:C4,C7)
129.5 2C(CH:C2,C9)
132.2 2C(CH2:C1,C10)
166.6 2C(C−O:C3,C8)
これらの分析結果から、得られた反応生成物は下式(IV)で表される本発明の目的とする化合物の1成分であることがわかった。
【0038】
【化5】
実施例3
密着性試験
実施例2で得られた2,3−エポキシブタン−1,4−ジアクリレート(IV)20重量部を、スチレン20重量部に溶解し、これを市販されているエポキシ系オリゴマー(昭和高分子(株)製SP−1509)60重量部、光重合開始剤(チバガイギ製イルガキュア184)5重量部に混合して配合物とした。
【0039】
この配合物をポリカーボネート樹脂板に、塗膜機を用いて塗膜の厚さが100μmとなるように塗布し、次にこれを高圧水銀燈(1000mJ/cm2)で紫外線硬化させて、試験片を作製した。
【0040】
次にその試験片を用いて、碁盤目試験を行った。
【0041】
すなわち試験片面上に、かみそりの切刃で素地に達する1mmの碁盤目100個(10×10)を作り、更にセロハン粘着テープを完全に密着させ、直ちにテープの一端を塗面に直角に保ち、瞬間的に引き離し、完全に剥がれないで残った碁盤目の数を調べ、密着性について調査する。
【0042】
結果は、碁盤目が全て剥離せずに残り、高い密着性を示すことがわかった。
【0043】
結果を表1に示す。
【0044】
比較例
イソボルニルアクリレートの密着性試験
一般に低収縮であるため、多く使用されているイソボルニルアクリレートについて、前例同様に密着性試験を行った。
【0045】
結果は、試験片面上に残った碁盤目はわずか4個であり、ほとんど密着性が無い。
【0046】
結果を表1に示す。
【0047】
【表1】
・エポキシ系オリゴマー:昭和高分子(株)製SP−1509
・密着性:碁盤目試験(JIS K−5400)による。表中の数値は100個の桁目のうち残存した桁目の個数を表す。
【0048】
【発明の効果】
本発明により反応性に富む二官能の(メタ)アクリレート化合物にさらにエポキシ基が導入されてが反応性を高めた新規な化合物であるエポキシ基含有ジ(メタ)アクリレート化合物が得られた。
【0049】
本発明の化合物は高機能性樹脂のモノマーとして、あるいは合成樹脂・繊維・インキ・塗料の分野の各種ポリマー、オリゴマー若しくはこれらを含有する樹脂組成物の製造用原料、原料成分又は添加剤として広範囲に利用することができる。特に、共重合体原料、重合促進剤として好適に利用され、硬度、密着性の向上に寄与する。
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