JP3729935B2 - 田植機におけるロータリー式苗植機構 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、田植機において、一つの回転ケースに少なくとも二つの苗植体を備えたロータリー式の苗植機構に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
最近の田植機において使用されているロータリー式苗植機構は、例えば、特開昭62−134019号公報等に記載され、且つ、図7に示すように、田植機において苗載台31を支持する機体側の伝動ケース30から略水平横向きに突出する駆動軸32に回転ケース33を固着し、この回転ケース33における前記駆動軸32を中心とする円周上の等分箇所に、苗植軸34を軸支して、この各苗植軸34に、分割爪36を備えた苗植体35を取付ける一方、前記回転ケース33の中心に回転自在に支持した太陽歯車37を、前記伝動ケース30に回転不能に係止し、この太陽歯車37と前記各苗植軸34に固着した遊星歯車38との間に、前記回転ケース33の一回転中に各苗植軸34を逆方向に一回転するようにした中間歯車39を設け、これら各歯車37,38,39を、前記各苗植体35が圃場面40に向かって下降動する区間において回転ケース33の回転を減速して苗植軸34に伝達し、各苗植体35が圃場面40から離れるように上昇動する区間において回転ケース33の回転を加速して苗植軸34に伝達するようにした偏芯歯車又は非円形歯車等の不等速歯車にして、前記分割爪36の先端における運動軌跡41が上下方向に長い略楕円状になるように構成している。
【0003】
一方、この種のロータリー式苗植機構を備えた田植機においては、前記回転ケース33の回転数を変速することにより、3.3平方メートル当たりに植付ける苗の数を、40〜90株植えに変更するように構成される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、この先行技術のものでは、前記各苗植体35が圃場面40に向かって下降動する区間の全てにおいて、回転ケース33の回転を減速して苗植軸34に伝達するように構成していることにより、各分割爪36の先端における運動軌跡41のうち下死点の付近の部分が尖った形状になるから、以下に述べるような問題があった。
【0005】
すなわち、前記先行技術に構成では、回転ケース33を回転しながら田植機を前進走行することによって苗の植付けを行う場合において、各分割爪36の先端が実際に描く走行運動軌跡は、図7に示すように、回転ケース33の回転数を早くすることによって90株植えにしたときには曲線41aに、回転ケース33の回転数を前記よりも遅くすることによって70株植えにしたときには曲線41bに、回転ケース33の回転数を更に遅くすることによって50株植えにしたときには曲線41cに、そして、回転ケース33の回転数を最も遅くすることによって40株植えにしたときには曲線41dになる。
【0006】
この場合において、90株植えのときにおける走行運動軌跡41a、及び70株植えのときにおける走行運動軌跡41bのうち圃場面40に対して出入りする部分の形状は、前進方向に対して後方に向かってUターン状であるから、圃場面40に対して大きな植付け孔をあけることがない。また、90株植えのときにおける走行運動軌跡41aのうち圃場面40に対して出入りする部分の形状は、前進方向にV字状になっても、そのV字の角度が小さく、従って、圃場面40を横切る寸法がL1と比較的小さいので、この場合においても、苗の植付けに際して、圃場面40に対して大きな植付け孔をあけることがない。
【0007】
しかし、40株植えに変更したときにおける走行運動軌跡41dは、前進方向に前方に向かって大きい角度のV字状になり、圃場面40を横切る寸法がL2と大きくなることにより、40株植えに変更したときに、圃場面40に大きな植付け孔をあけることになって、浮き苗が発生したり、植付けた苗が倒れるたりすると言う不具合が発生するのであった。
【0008】
しかも、この先行技術のものでは、各歯車37,38,39のうち前記各苗植体35が圃場面40に向かって下降動する減速区間中における最大減速位置を、圃場面40に近い位相位置に設定していることにより、分割爪36が苗載台31を通過するときにおける減速率が小さいから、分割爪36の運動軌跡41のうち前記部分が、苗載台に向かって膨らんだ形状になる。
【0009】
従って、この運動軌跡41に沿って移動する分割爪36は、苗載台31における苗マットに対して、当該苗マットからの取り出し寸法が、S1′からS2′に増大するように進入することになるから、苗マットからの苗の取り出しに際して苗のこぼれが発生し、一部の苗が分割爪に一緒に連れ回りしたり、圃場面に落下したりすると言う問題もあった。
【0010】
本発明は、これらの問題を解消したロータリー式の苗植機構を提供することを技術的課題とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
この技術的課題を達成するため本発明は、
「田植機における機体側の伝動ケースから略水平横向きに突出する駆動軸に回転ケースを固着し、この回転ケースにおける前記駆動軸を中心とする円周上の等分箇所に、苗植軸を前記駆動軸と平行に軸支して、この各苗植軸に、分割爪を備えた苗植体を取付ける一方、前記回転ケースの中心に前記伝動ケースに回転不能に係止するように設けた太陽歯車と前記各苗植軸に固着した遊星歯車との間に、前記回転ケースの一回転中に各苗植軸を逆方向に一回転するようにした中間歯車を設け、これら太陽歯車、遊星歯車及び中間歯車を、前記各苗植体が圃場面に向かって下降動する区間において回転ケースの回転速度を減速して苗植軸に伝達し、各苗植体が圃場面から離れるように上昇動する区間において回転ケースの回転速度を加速して苗植軸に伝達するようにした不等速歯車にして、前記分割爪の先端における運動軌跡が上下方向に長い略楕円状になるように構成して成るロータリー式苗植機構。」
において、
「前記各苗植体が圃場面に向かって下降動する区間における苗植軸への回転伝達の減速率を、前記各苗植体における分割爪が苗載台を通過する前後の位相位置において一旦大きくし、分割爪が圃場面に近付いたときの位相位置において一旦小さくするように構成した。」
ことを特徴とするものである。
【0012】
【発明の作用・効果】
このように、各苗植体が圃場面に向かって下降動する区間における苗植軸への回転伝達の減速率を、分割爪が圃場面に近付いたときの位相位置において一旦小さくするように構成したことにより、回転ケースの回転に伴う苗植体の下降動に際して、この苗植体の回転ケースと逆方向に回転速度が減速されながら当該苗植体における分割爪が圃場面に近付いた位相位置に移行すると、前記各苗植体の回転ケースと逆方向への回転速度が、苗植軸への回転伝達の減速率が一旦小さくなることによって、一旦早くなることになるから、前記分割爪の先端における運動軌跡のうち前記の部分は、従来における運動軌跡よりも前方向に膨らんだ形状になる。
【0013】
その結果、回転ケースを回転しながら前進走行にした場合に各分割爪の先端が実際に描く走行運動軌跡のうち圃場面に対して出入りする部分は、40株植えと言うように50株植え以下にした場合であっても、前記従来の場合よりも小さい角度のV字状なるから、圃場面を横切る寸法を大幅に短くでき、ひいては、苗の植付けに際して圃場面にあく植付け孔を小さくすることができるのである。
【0014】
一方、各苗植体が圃場面に向かって下降動する区間における苗植軸への回転伝達の減速率を、分割爪が苗載台を通過する前後における減速率を一旦大きくするように構成したことにより、回転ケースの回転に伴う苗植体の下降動に際して分割爪が苗載台を通過する位相位置に移行すると、前記各苗植体の回転ケースと逆方向への回転速度が、苗植軸への回転伝達の減速率が一旦大きくなることによって、一旦遅くなることになるから、分割爪の先端における運動軌跡のうち苗載台を通過する部分が、前記先行技術の場合よりも内側に移行すると言う形状になり、その結果、分割爪は、苗載台における苗マットに対して、当該苗マットからの取り出し寸法が次第に小さくなるように進入することになって、苗の取り出しに際して苗のこぼれが発生することを確実に低減できるのである。
【0015】
従って、本発明によると、40株植えと言うように株数を少なくした場合に、圃場面に対して、浮き苗が発生したり、苗が倒れたりすることなく、確実に安定して苗の植付けを行うことができると共に、苗マットからの苗の取り出した一部の苗が分割爪に一緒に連れ回りしたり、圃場面に落下したりすることを大幅に低減できる効果を有する。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面について説明する。
図1及び図2において符号1は、乗用型の田植機を示し、この田植機1は、四つの車輪3にて支持され矢印の方向に前進走行する走行車体2の後部に、苗植装置4を、リンク機構5にて昇降動可能に装着したものに構成され、前記苗植装置4は、前記走行車体2に向かって前向きに傾斜するように配設した苗載台6と、この苗載台6の下部に後方に延びるように配設した複数個の伝動ケース7と、この各伝動ケース7の側面に取付けたロータリー式の苗植機構8と、前記各伝動ケース7の下面に配設したフロート9によって構成されている。
【0017】
前記苗植機構8は、図3〜図6に示すように構成されている。
この苗植機構8は、略小判型の中空体に構成した回転ケース10を備え、この回転ケース10は、前記伝動ケース7の側面から水平横向きに突出する駆動軸11に対して、駆動軸11にて矢印A方向に回転するように取付けられている。
前記回転ケース10内の中心部に太陽歯車12を、前記駆動軸11に回転自在に被嵌して配設し、この太陽歯車12を、当該太陽歯車12における伝動ケース側の側面から伝動ケース7に向かって一体的に突出したクラッチ爪部12aを回転ケース10内に嵌着したボールベアリング13内に嵌挿することにより、回転ケース10に対して回転自在に支持する。
【0018】
また、前記駆動軸11には、前記伝動ケース7に対して回転不能に固着したスリーブ体14を回転自在に被嵌して、このスリーブ体14の先端に設けたクラッチ爪部14aを、前記太陽歯車12におけるクラッチ爪部12aに対して、前記ボールベアリング13内で噛合することにより、前記太陽歯車12を回転しないように構成する。
【0019】
前記回転ケース10の両端部には、前記駆動軸11からの距離が等しい位置に、駆動軸11と平行に延びる中空状の苗植軸15を回転自在に軸支し、この各苗植軸15の一端を、前記回転ケース10における伝動ケース7とは反対側の外側面から突出して、この突出端に、分割爪17を備えた苗植体16を、当該苗植体16における分割爪17が前記苗載台6に向かうような姿勢にて固着する。
【0020】
また、前記回転ケース10内には、前記駆動軸11と各苗植軸15との中間位置に中間軸18を回転自在に軸支して、この各中間軸18には、前記太陽歯車12と同じ歯数の中間歯車19を、この中間歯車19が前記太陽歯車12に対して噛合するように嵌着する一方、前記各苗植軸15には、前記太陽歯車12と同じ歯数の遊星歯車20を、当該遊星歯車20が前記中間歯車19に対して噛合するように嵌着することにより、前記回転ケース10の矢印A方向への一回転中に、前記各苗植軸15が矢印Bで示す逆方向に一回転し、これにより、前記各苗植軸15に取付けた各苗植体16が、その分割爪17が苗載台6の方向を向いた姿勢のままで上下方向に旋回するように構成する。
【0021】
そして、互いに噛合する前記太陽歯車12、中間歯車19及び遊星歯車20を、図5に示すように、前記回転ケース10の回転に伴い前記各苗植体16が圃場面21に向かって下降動する区間において回転ケース10の回転速度を減速して苗植軸15に伝達し、各苗植体16が圃場面21から離れるように上昇動する区間において回転ケース10の回転速度を加速して苗植軸15に伝達するようにした非円形歯車等の不等速歯車にすることにより、換言すると、太陽歯車12、中間歯車19及び遊星歯車20による各苗植軸15への回転伝達を、各苗植体16が圃場面21に向かって下降動する区間において減速し、各苗植体16が圃場面21から離れるように上昇動する区間において加速するように構成することにより、各苗植体16における分割爪17の先端が、図3及び図6に示すように、上下方向に長い楕円状閉ループの運動軌跡22を描くように構成する。
【0022】
この場合において、前記太陽歯車12、中間歯車19及び遊星歯車21の形状を変更することにより、これらの歯車12,19,20による前記減速区間(各苗植体16が圃場面21に向かって下降動する区間)における減速率を、各苗植体16における分割爪17が苗載台6を通過するときの位相位置において一旦大きくし、各苗植体16における分割爪17が圃場面21に近付いたときの位相位置において一旦小さくするように構成するのであり、これにより、前記太陽歯車12、中間歯車19及び遊星歯車20の各々は、いずれの方向についても対称形でない非対称形の非円形歯車になる。
【0023】
このように構成したことにより、回転ケース10の回転に伴う苗植体16の下降動に際して、この苗植体16の回転ケース10と逆方向に回転速度が減速されながら当該苗植体16における分割爪17が圃場面21に近付いた位相位置に移行すると、前記各苗植体16の回転ケース10と逆方向の回転速度が、苗植軸15への回転伝達の減速率が一旦小さくなることによって、一旦早くなることになるから、前記分割爪17の先端における運動軌跡22のうち前記の部分は、図6に示すように、従来における運動軌跡41(点線で示す)よりも前方向に膨らんだ形状になる。
【0024】
その結果、回転ケース10を回転しながら前進走行にした場合に各分割爪の先端が実際に描く走行運動軌跡は、40株植えにした場合、図3に符号23dで示すようになり、この40株植え走行運動軌跡23dのうち圃場面21に対して出入りする部分は、前記従来の場合よりも小さい角度のV字状なるから、圃場面21を横切る寸法Lを大幅に短くでき、ひいては、苗の植付けに際して圃場面21にあく植付け孔を小さくすることができるのである。
【0025】
一方、各苗植体16が圃場面21に向かって下降動する区間における苗植軸15への回転伝達の減速率を、分割爪17が苗載台6を通過する前後における減速率を一旦大きくするように構成したことにより、回転ケース10の回転に伴う苗植体16の下降動に際して分割爪17が苗載台6を通過する位相位置に移行すると、前記各苗植体16の回転ケース10と逆方向への回転速度が、苗植軸15への回転伝達の減速率が一旦大きくなることによって、一旦遅くなることになるから、分割爪17の先端における運動軌跡22のうち苗載台6を通過する部分が、前記先行技術の場合よりも内側に移行すると言う形状になり、図6に示すように、前記先行技術の場合の運動軌跡41(点線で示す)よりも内側に移行する形状になる。
【0026】
その結果、分割爪17は、苗載台6における苗マットに対して、当該苗マットからの取り出し寸法がS1からS2に次第に小さくなるように進入することになるから、苗の取り出しに際して、苗のこぼれが発生することを確実に低減できるのである。
なお、図3において符号23aは、90株植えにした場合の走行運動軌跡を、23bは、70株植えにした場合の走行運動軌跡を、符号23cは、50株植えにした場合の走行運動軌跡を各々示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】乗用型田植機の側面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】図1の要部拡大図である。
【図4】図3のIV−IV視拡大断面図である。
【図5】図4のV−V視断面図である。
【図6】苗植体における分割爪先端の運動軌跡の一部の状態を示す図である。
【図7】従来のロータリー式苗植機構を示す図である。
【符号の説明】
1 乗用型田植機
7 伝動ケース
8 ロータリー式苗植機構
10 回転ケース
11 駆動軸
12 太陽歯車
15 苗植軸
16 苗植体
17 分割爪
18 中間軸
19 中間歯車
20 遊星歯車
21 圃場面
22 運動軌跡
Claims (1)
- 田植機における機体側の伝動ケースから略水平横向きに突出する駆動軸に回転ケースを固着し、この回転ケースにおける前記駆動軸を中心とする円周上の等分箇所に、苗植軸を前記駆動軸と平行に軸支して、この各苗植軸に、分割爪を備えた苗植体を取付ける一方、前記回転ケースの中心に前記伝動ケースに回転不能に係止するように設けた太陽歯車と前記各苗植軸に固着した遊星歯車との間に、前記回転ケースの一回転中に各苗植軸を逆方向に一回転するようにした中間歯車を設け、これら太陽歯車、遊星歯車及び中間歯車を、前記各苗植体が圃場面に向かって下降動する区間において回転ケースの回転速度を減速して苗植軸に伝達し、各苗植体が圃場面から離れるように上昇動する区間において回転ケースの回転速度を加速して苗植軸に伝達するようにした不等速歯車にして、前記分割爪の先端における運動軌跡が上下方向に長い略楕円状になるように構成して成るロータリー式苗植機構において、
前記各苗植体が圃場面に向かって下降動する区間における苗植軸への回転伝達の減速率を、前記各苗植体における分割爪が苗載台を通過する前後の位相位置において一旦大きくし、分割爪が圃場面に近付いたときの位相位置において一旦小さくするように構成したことを特徴とする田植機におけるロータリー式苗植機構。
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