JP3728804B2 - Dl−アスパラギン酸の製造方法 - Google Patents

Dl−アスパラギン酸の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、DL−アスパラギン酸の製造方法に関するものであり、詳しくは、無水マレイン酸、マレイン酸及びフマル酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の有機酸を原料とするDL−アスパラギン酸の製造を工業的に有利に実施可能とするプロセスに関するものである。
DL−アスパラギン酸は、医薬中間体、生分解性ポリマーの原料等として有用である。
【0002】
【従来の技術】
DL−アスパラギン酸は、マレイン酸および/またはフマル酸とアンモニアを水溶液中において加熱することにより合成されることがよく知られている。
反応混合物は、水性媒体中に溶解したDL−アスパラギン酸を含んでおり、反応混合物中に酸を添加することによりDL−アスパラギン酸を晶析させ反応液中から回収することができる。DL−アスパラギン酸を回収した後の母液は、上記加熱反応の際の副反応により生成するイミノジコハク酸を含んでいるが、イミノジコハク酸は、アンモニアと加熱することによりDL−アスパラギン酸に変換することができる。このため、母液を廃棄するのでなく、原料としてリサイクルすることが検討されている。
【0003】
一方、この反応液中に、鉱酸を添加して晶析を行うと大量のアンニモウム塩が生成するため、脱塩工程が必要になり、母液をリサイクルすることは実質的に困難であった。
そこで、母液中に原料となる無水マレイン酸、マレイン酸又はフマル酸を添加し、リサイクルを可能にするDL−アスパラギン酸の製造法が提案されている(特開平7−247251号公報)。この方法によれば、使用するアンモニアの量を原料である無水マレイン酸、マレイン酸及びフマル酸からなる有機酸に対し、2当量添加することにより晶析工程で晶析率を低下させる原因となるアスパラギン等のアミド化合物の蓄積を防ぎ、母液がリサイクル可能とされている。
【0004】
また、この方法では、晶析工程において上記有機酸を、生成したDL−アスパラギン酸に対して1モル当量添加しているが、得られるDL−アスパラギン酸の晶析率が約90%であるため、原料とのバランスを取るためにDL−アスパラギン酸回収後の母液の一部をブリードしている。この晶析母液をブリードすると原料である無水マレイン酸、マレイン酸又はフマル酸をロスすることになり、この方法は、工業的に有利なDL−アスパラギン酸の製造方法とは言いがたく、更に改良した方法が求められていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、アンモニアの回収が不要で、且つ工業生産において原料有機酸のロスがなく、安定的に連続操作を継続的に行うことができ、更に高純度のDL−アスパラギン酸が得られ、しかも母液のリサイクルを可能にし、よって製造コストを低減できるDL−アスパラギン酸の製造方法を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記実状に鑑み鋭意検討した結果、反応終了後に得られる溶液であるDL−アスパラギン酸を最も多くを含む溶液の一部をブリードすることにより、長期間に亘り安定したDL−アスパラギン酸の製造が可能になること、更に、好ましくは、該ブリード液に鉱酸を添加することによりDL−アスパラギン酸の回収率を極大とすることができることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の要旨は、
▲1▼ 無水マレイン酸、マレイン酸及びフマル酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の有機酸とアンモニアを含む水溶液を加熱し、DL−アスパラギン酸を得る工程、
▲2▼ 工程▲1▼で得た溶液に、無水マレイン酸、マレイン酸及びフマル酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の有機酸を添加してDL−アスパラギン酸を晶析する工程、
▲3▼ 工程▲2▼で得た結晶含有スラリーから前記結晶を固液分離して回収し、母液を上記工程▲1▼に供給する工程、
を含むDL−アスパラギン酸の製造方法において、前記工程の▲1▼と▲2▼のあいだで水溶液の一部をブリードすることを特徴とするDL−アスパラギン酸の製造方法に存する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態につき詳細に説明する。
(工程▲1▼)
本発明の工程▲1▼の反応に用いられる有機酸は、無水マレイン酸、マレイン酸及びフマル酸から選ばれる少なくとも1種である。その使用態様は、無水マレイン酸単独使用、マレイン酸単独使用、フマル酸単独使用、無水マレイン酸とマレイン酸の2者併用、マレイン酸とフマル酸の2者併用、無水マレイン酸とフマル酸の2者併用、無水マレイン酸とマレイン酸とフマル酸の3者併用があり得る。無水マレイン酸、マレイン酸及びフマル酸は、アンモニアとの反応性、副反応のおこし易さ、アンモニウム塩の水への溶解性等の面では同等あるいはほぼ同等であるので、上記使用態様のいずれかを選択しても、DL−アスパラギン酸の収率、アミド化合物の生成抑制効果、廃液又は廃棄物の種類と量には大きな差は生じない。
【0009】
本発明に使用されるアンモニアは、液体アンモニア、アンモニア水溶液等が使用可能である。アンモニア水溶液の濃度は特に限定されるものではないが、20〜35重量%が好ましい。本発明では、上記有機酸のアンモニウム塩を使用しても良いが、上記有機酸の他の塩を使用することはDL−アスパラギン酸の収率と純度を低下させるおそれがあるので避けることが望ましい。
【0010】
使用されるアンモニアの量は、後述する工程▲3▼でDL−アスパラギン酸を回収した後の母液のpHを6.5〜8.5にする量である。具体的には、水溶液中に含まれる有機酸の持つカルボキシル基に対して、0.8〜1.2モル当量、好ましくは0.9〜1.1モル当量である。添加するアンモニア量が少ないとリンゴ酸等の副生物が生成し、DL−アスパラギン酸の収率が低下するので好ましくない。また、添加するアンモニア量が多いと、アミド化合物としてイミノジコハク酸またはアスパラギンだけでなくアスパルチルアスパラギン酸が生成し、好ましくない。
【0011】
上記有機酸とアンモニアを混合する場合、混合はどのように行っても良いが、両者の全量を一度に混合するのではなく、一方の全量に対して他方を徐々に添加するのが好ましく、特に有機酸の水溶液に対してアンモニア又はアンモニア水を徐々に添加するのが好ましい。上記有機酸とアンモニアの反応は、それらを所定量混合した状態で行うのが好ましい。
【0012】
反応の際の原料濃度は、特に限定されないが、原料濃度が10〜80重量%の水溶液で反応させるのが好ましく、更に好ましくは15〜50重量%の範囲である。上記範囲を下回ると生産性が低いばかりでなく、副反応で生成するイミノジコハク酸、及びリンゴ酸の量が増大し、DL−アスパラギン酸の収率が低くなる。又前記範囲を上回ると、晶析の際に析出するDL−アスパラギン酸により反応系が固化し、攪拌が不可能になるため多量の水を添加することが必要になり、リサイクル時の母液量が増加し、操作が煩雑になる。
【0013】
工程▲1▼は、水溶液を加熱して反応させるが、加熱した水溶液の温度は、100〜170℃、好ましくは130〜170℃、更に好ましくは140〜160℃である。反応温度が前記温度より低いと、反応に要する時間が長くなり、生産性が悪く実用的でないばかりか、イミノジコハク酸の生成量が増大し、DL−アスパラギン酸の収率が低下する。反対に反応温度が前記温度より高いと、DL−アスパラギン及びアスパルチルアスパラギン酸が生成し、好ましくない。
反応時間は、反応温度により適宜変わるが、30分〜24時間、好ましくは1〜12時間である。反応圧力は、水の蒸気圧にほぼ依存し1〜10kg/cm2 であり、好ましくは1〜8kg/cm2 、更に好ましくは1〜6kg/cm2 である。
【0014】
(工程▲2▼)
工程▲1▼で得られた反応混合物である溶液に無水マレイン酸、マレイン酸及びフマル酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の有機酸を添加して、DL−アスパラギン酸を晶析させる。添加する方法としては、粉末でも、水溶液でも、スラリーでも、また無水マレイン酸の場合には溶融させたものであってもよい。但し、無水マレイン酸を添加する際には、添加する前にできるだけ水に溶解させて添加することが好ましい。
【0015】
ここで添加された有機酸は、アンモニウム塩となり晶析母液中に溶解されることとなるが、本発明では後述するようにこれを工程▲1▼の有機酸原料として利用するものである。
晶析のために反応混合物に添加される上記有機酸の量は、反応混合物に含まれているDL−アスパラギン酸アンモニウムの量に応じて決定することができる。本発明の方法においては、好ましくは工程▲1▼の反応混合物は未反応アンモニアを全く含まないか、ごく小量しか含まない。この様な場合、添加される上記有機酸のモル比は、生成したDL−アスパラギン酸に対して0.5〜1.2が好ましく、0.6〜1.1が更に好ましい。このモル比より少ないと、晶析時に回収されるDL−アスパラギン酸の収率が低くなり、過剰だと副生物であるアミド化合物が析出する可能性がある。
【0016】
晶析温度は通常、0〜90℃、好ましくは、20〜80℃である。あまり低温の場合、得られる結晶が細かくなりすぎ、固液分離操作が面倒となる上、上記有機酸のアンモニウム塩あるいはイミノジコハク酸等のアミド化合物が析出するため得られるDL−アスパラギン酸の純度が低くなる。すなわち、固液分離で得られる湿ケーキの母液保持量(含水液量)が多く、さらに充分なリンス効果が得られないため、結晶純度が低下するか、リンス量を増やすとDL−アスパラギン酸の回収率が低下するので好ましくない。一方、あまり高温では、DL−アスパラギン酸の回収率が低いばかりか、上記有機酸の熱劣化が生ずる恐れがあり、好ましくない。
【0017】
また、晶析工程の処理時間は通常0.5〜5時間程度である。
晶析は通常、撹拌槽タイプの晶析槽を用いて実施される。上記有機酸の添加位置は、晶析槽又はこれに通じる移送配管中のいずれでもよい。また、晶析は、前記の反応液と、上記有機酸を連続的に供給する一方で、生成スラリーを連続的に抜き出す連続式が望ましいが、一部、間歇的操作又はバッチ式で行なうこともできる。
【0018】
(工程▲3▼)
工程▲3▼では、前記工程▲2▼で得られたスラリーを固液分離し、得られたDL−アスパラギン酸結晶を必要に応じて水でリンスすることにより、上記副生物をDL−アスパラギン酸の結晶からほぼ完全に除去することができ、純度95%以上のDL−アスパラギン酸の結晶を得ることができる。この結晶は常法により乾燥してDL−アスパラギン酸の製品とすることができる。
【0019】
固液分離で得られる母液には、上記有機酸のアンモニウム塩、反応時に生成したイミノジコハク酸アンモニウム塩、DL−リンゴ酸アンモニウム塩、アスパラギンアンモニウム塩及びアスパルチルアスパラギン酸が含まれ、さらに溶解度分のDL−アスパラギン酸アンモニウムも含まれている。この母液を上記工程▲1▼にリサイクルする。
【0020】
スラリーの固液分離は、特に限定するものではないが、0〜80℃の温度範囲、好ましくは、10〜50℃で行なうことができる。低温下ではスラリーの粘性が高く取扱いが困難になり、高温下ではDL−アスパラギン酸の溶解度が高くなり、回収率が低下してしまう。必要に応じて行なうリンス操作に用いる水の量は、特に限定するものではないが、湿ケーキに対して通常10重量倍以下、好ましくは5重量倍以下で行なう。リンス量が少なすぎるとリンス効果が充分でなく、多すぎるとDL−アスパラギン酸の回収率が低下する。リンス水の温度については特に限定されない。
分離操作は、限定するものではないが、ヌッチェ、遠心分離等の常法により行なうことができる。
【0021】
(リサイクル)
固液分離で得られる母液は、前記有機酸のアンモニウム塩、主としてフマル酸アンモニウムが含まれ、pHが3〜6程度の酸性水溶液である。必要に応じて濃縮工程により水を除去してリサイクルされる。リサイクルされる母液にアンモニア又はアンモニア水を加えて、pH6.5〜8.5の間になる様にして使用されることは、前記工程▲1▼で記載した通りである。
リサイクルする際にアンモニアを供給する方法は、特に限定するものではないが、工程▲3▼の固液分離後ないし工程▲1▼の反応系のいずれかに適当に分割して供給しても、また一括して供給してもよい。
【0022】
(ブリード)
本発明のDL−アスパラギン酸の製造方法は、リサイクルの工程を含むため不純物や反応副生成物の蓄積を考慮して、アスパラギン酸アンモニウムを最も多く含む水溶液を工程▲1▼と工程▲2▼の間でブリードするものである。
ブリード量は、通常、重量基準でブリードする直前の水溶液の全量に対して0.1〜40%、好ましくは1〜30%、更に好ましくは5〜20%である。ブリード率が低いと安定した連続運転が困難となり、その効果が小さいため意味がなく、高いとブリード液を処理する工程が主工程と同じ程度の機器容積をもつことになり、経済性が劣るものとなる。ブリードする方法は、このブリード率を満足する範囲において連続的であっても、また、間歇的であっても良い。
【0023】
(ブリード液からのDL−アスパラギン酸の回収)
DL−アスパラギン酸の回収率を向上させるために、ブリード液からDL−アスパラギン酸を回収することができる。回収方法としては、ブリード液に鉱酸を添加して行うのが好ましい。
回収するために使用される鉱酸としては、硫酸、塩酸およびリン酸より選ばれる少なくとも1種である。特に、硫酸が好ましい。添加量としては、DL−アスパラギン酸が回収できる量であれば特に限定されないが、ブリード液に含まれるDL−アスパラギン酸に対して0.7〜1.3モル当量が好ましく、更に好ましくは0.9〜1.1モル当量である。このモル比より少ないと、晶析時に回収されるDL−アスパラギン酸の収率が低くなり、過剰だと副生物であるアミド化合物が析出する可能性があり好ましくない。
【0024】
添加することによる晶析温度は、通常、0〜90℃、好ましくは、20〜80℃である。あまり低温の場合、得られる結晶が細かくなりすぎ、固液分離操作が面倒となる上、イミノジコハク酸等のアミド化合物等の不純物が析出するため得られるDL−アスパラギン酸の純度が低くなる。すなわち、固液分離で得られる湿ケーキの母液保持量(含水液量)が多くなり、また充分なリンス効果が得られにくいため、結晶純度が低下するか、リンス量を増やすとDL−アスパラギン酸の回収率が低下し好ましくない。一方、あまり高温では、DL−アスパラギン酸の回収率が低くなるため、好ましくない。
【0025】
また、上記鉱酸を添加してDL−アスパラギン酸を回収する工程の処理時間は、通常0.5〜5時間程度である。
上記ブリード液からのDL−アスパラギン酸の回収は、通常、撹拌槽タイプの晶析槽を用いて実施するのが好ましい。上記鉱酸の添加位置は晶析槽又はこれに通じるブリード液の移送配管中のいずれでもよい。また、回収方法は、前記の反応液と上記鉱酸を連続的に供給する一方で、生成スラリーを連続的に抜き出す連続式が望ましいが、一部、間歇的操作又はバッチ式で行なうこともできる。鉱酸を添加して得られたスラリーを固液分離し、必要に応じて得られた結晶を水でリンスすることにより上記副生物をDL−アスパラギン酸の結晶からほぼ完全に除去することができ、純度95%以上のDL−アスパラギン酸の結晶を得ることができる。得られた結晶は常法により乾燥することにより、DL−アスパラギン酸の製品となる。
【0026】
上記スラリーの固液分離は、特に限定するものではないが、0〜80℃の温度範囲、好ましくは、10〜50℃で行なうことができる。低温に過ぎるとスラリーの粘性が高く取扱いが困難になり、高温に過ぎるとDL−アスパラギン酸の溶解度が高くなり、回収率が低下するので好ましくない。必要に応じて行なうリンス操作に用いる水の量は、特に限定するものではないが、湿ケーキに対して10重量倍以下、好ましくは5重量倍以下である。リンス量が少なすぎるとリンス効果が充分でなく、多すぎるとDL−アスパラギン酸の回収率が低下する。リンス水の温度についても特に限定されるものではない。
分離操作は、限定されるものではないが、例えばヌッチェ、遠心分離等の常法により行なうことができる。
【0027】
本発明においては、リサイクル液を含む水溶液を工程▲1▼で連続して反応させたところ、驚くべきことに、母液中に含まれるイミノジコハク酸とDL−リンゴ酸に関し、イミノジコハク酸はDL−アスパラギン酸−フマル酸或いはマレイン酸、またDL−リンゴ酸は水−フマル酸或いはマレイン酸の間に平衡が存在し、イミノジコハク酸とDL−リンゴ酸がほとんど増大しなくなることが見い出された。これにより本発明は、工程▲3▼からの母液をリサイクルしても連続運転が可能となり、また経済的に有利なプロセスとなった。
【0028】
【実施例】
本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、実施例の記述に限定されるものではない。
尚、DL−アスパラギン酸(以下、ASPと略記する)、DL−アスパラギン(以下、ASNと略記する)、マレイン酸(以下MAと略記する)、フマル酸(以下、FAと略記する)、リンゴ酸(以下、MLと略記する)、イミノジコハク酸(以下、IDSと略記する)の分析は高速液体クロマトグラフィーにより、アンモニア(以下、NH3 と略記する)の分析はイオンクロマトグラフィーにより定量した。
【0029】
(1回目反応)
電磁攪拌機付きオートクレーブにMA160gと水52.4gを加え、3℃に冷却した。これに25%NH3 水187.6g(MAに対して2モル当量)を1時間かけて滴下した。滴下終了後、攪拌しながら140℃、2kg/cm2 で6時間反応した。反応後、液体クロマトグラフィーで分析したところ、ASPアンモニウム、IDSアンモニウム、MLアンモニウム、ASNアンモニウムが、それぞれ仕込みのMA基準で68.5モル%、15モル%、15モル%、1.5モル%それぞれ生成していた。この反応液の内から、10重量%を抜きとり、残りの90重量%を80℃に維持しながら、68%MA水溶液145g(生成したASPと等モル)を1時間かけて滴下した。滴下終了後、30℃にゆっくりと冷却した。
【0030】
析出したASPの結晶はろ別し、水304.8g(析出したASPに対して3倍量)でリンスし、母液688.1gを回収した。得られたASP製品は、常法により乾燥したところ、92.5g(初期仕込みMAに対して50%)、純度98%であり、MAを0.8重量%含んでいた。尚、この時の母液のpHは4.3であった。
【0031】
(リサイクル)
上記母液をロータリーエバポレーター濃縮して水338.6gを除去した後、25%NH3 水51.0g、MA0.74g(ASPに取り込まれたMAと同量)を添加してpHを7.2とした。この水溶液を攪拌しながら140℃、2kg/cm2 で6時間反応した。反応後、液体クロマトグラフィーで分析したところ、ASPアンモニウム、IDSアンモニウム、MLアンモニウム、ASNアンモニウムが、それぞれ晶析時に添加したMA基準で93.8モル%、2.6モル%、2.6モル%、1モル%それぞれ生成していた。この反応液の内から10重量%を抜きとりブリード液とし残りの90重量%を80℃に維持しながら、68%MA水溶液144.5g(生成したASPと等モル)を1時間かけて滴下した。滴下終了後、30℃にゆっくりと冷却した。析出したASPの結晶はろ別し、水304g(析出したASPに対して3倍量)でリンスし、母液685.3gを回収した。得られたASP製品は、常法により乾燥したところ、93.8g(晶析時に添加されたMAに対して81.3%)、純度98.0%であり、MAを0.8重量%含んでいた。尚、この時、母液のpHは4.3であった。
上記リサイクル操作を合計9回繰り返し行った。結果を第1表に示す。
【0032】
【表1】
Figure 0003728804
【0033】
(ブリード液からのASP回収)
上記リサイクル実験の際に抜きとったブリード液39.9g(この水溶液中に含まれるASP12.5g)を80℃に維持しながら98%硫酸9.4g(水溶液中に含まれるASPに対して等モル)を添加してpH2.8とした。滴下終了後、30℃にゆっくりと冷却した。析出したASPの結晶はろ別し、水20g(析出したASPに対して2倍量)でリンスした。得られたASP製品は、常法により乾燥したところ、11.5g(先のMAで晶析したASPと合わせると92%)、純度98.0%であった。上記操作を合計9回繰り返し行った。結果を第2表に示す。
【0034】
【表2】
Figure 0003728804
【0035】
【発明の効果】
本発明によれば、無水マレイン酸、マレイン酸及び/又はフマル酸を原料としてDL−アスパラギン酸を製造する際、原料成分を有効に利用し、且つ特定位置でブリードするプロセスを採用することにより、工業的に安定した連続プロセスを組むことができる。

Claims (6)

  1. ▲1▼ 無水マレイン酸、マレイン酸及びフマル酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の有機酸とアンモニアを含む水溶液を加熱し、DL−アスパラギン酸を得る工程、
    ▲2▼ 工程▲1▼で得た溶液に、無水マレイン酸、マレイン酸及びフマル酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の有機酸を添加してDL−アスパラギン酸を晶析する工程、
    ▲3▼ 工程▲2▼で得た結晶含有スラリーから前記結晶を固液分離して回収し、母液を上記工程▲1▼に供給する工程、
    を含むDL−アスパラギン酸の製造方法において、前記工程の▲1▼と▲2▼のあいだで水溶液の一部をブリードすることを特徴とするDL−アスパラギン酸の製造方法。
  2. 工程▲1▼の水溶液に添加されるアンモニアの量が、工程▲3▼で得られる母液のpHを6.5〜8.5とする量である請求項1記載の方法。
  3. 工程▲1▼の加熱した水溶液の温度が、100〜170℃である請求項1又は2記載の方法。
  4. 工程▲2▼において添加される有機酸の量が、工程▲1▼で生成したDL−アスパラギン酸アンモニウムに対して0.6〜1.2モル当量である請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
  5. ブリードされる量が、ブリードする直前の水溶液の全量に対して0.1〜40重量%である請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
  6. ブリードされた水溶液に鉱酸を添加してDL−アスパラギン酸を回収することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
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