JP3735943B2 - L−アスパラギン酸の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はL−アスパラギン酸の製造方法に関するものである。更に詳しくは、フマル酸及びアンモニアを原料とし、酵素反応によりL−アスパラギン酸を製造するための工業的有利なプロセスに関するものである。L−アスパラギン酸は医薬、食品添加物として需要が増加している。
【0002】
【従来の技術】
従来、L−アスパラギン酸の製造法としては、フマル酸及びアンモニアを原料とし、これらを用いてアスパルターゼ又はこれを産生する微生物の作用によりL−アスパラギン酸アンモニウムとし、これに無機酸を添加してL−アスパラギン酸を得るという方法が知られている。
しかしながら、この方法は、酵素処理後のL−アスパラギン酸アンモニウムを硫酸又は塩酸により酸析するため、経済的価値の低い無機酸アンモニウム塩を大量に副生し、結果的にL−アスパラギン酸の製造コストを高めることとなる。
【0003】
上記欠点を改良する方法として、酵素処理後のL−アスパラギン酸アンモニウムをフマル酸により酸析する方法が提案されている(特開平8−33492、同8−33493、同6−234713各号公報)。
また、L−アスパラギン酸アンモニウムをアルコール性フマル酸により酸析する方法も提案されている(特開平7−285919号公報)。これらの方法によれば、原料であるフマル酸を用いるので、安定した連続操作が行えれば所望のL−アスパラギン酸を工業的に非常に有利に製造する方法となり得る。
【0004】
しかし、特開平8−33492号公報の提案の場合、酵素反応原料中のフマル酸濃度が低い濃度に限られているため、処理液量の割に得られるL−アスパラギン酸の量が少なく、全系を通して生産効率の悪いプロセスとなっている。
また、特開平8−33493号公報に提案される方法では、晶析工程において添加するフマル酸の量がほとんどの条件に於いてその溶解度を越えているため、L−アスパラギン酸と共にフマル酸も沈殿し、得られるL−アスパラギン酸は純度の低いものとなっている。また、高純度L−アスパラギン酸を得ようとすれば、温水リンスが必要となり、リンス後のL−アスパラギン酸を含む水の再使用等が必要となりプロセス的に煩雑であり、且つ経済的に不利となる。
【0005】
また、特開平6−234713号公報に記載の方法は、晶析工程において添加するフマル酸の量は適当であるが、そこで得られる晶析母液を反応原料としてリサイクル利用する際の方法等についての記載が無く、工業生産に必要な安定した連続操作を継続的に行うことが可能かどうか不明であった。
更に、特開平7−285919号公報記載の方法の場合、高価なアルコールを使用すること、また使用したアルコールを回収するための設備が必要なことから経済的に不利である。
要するに、公知の方法では、晶析母液をリサイクル利用して工業的に安定した連続操作が行え、全体プロセスとして反応、晶析効率が良く、且つ晶析にて高純度なL−アスパラギン酸を得ることは未だ不充分なものであった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、フマル酸及びアンモニアを原料とした酵素反応の場合に、生成したL−アスパラギン酸アンモニウム水溶液をフマル酸を用いて晶析し、晶析後のフマル酸アンモニウムを含む母液を反応系にリサイクルしても、バランスのとれた安定した連続操作が可能なL−アスパラギン酸の製造プロセスを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記実情に鑑み鋭意検討した結果、原料として用いるフマル酸について、晶析時に添加するフマル酸量を存在するアスパラギン酸アンモニウムに対しモル比0.1以上0.85未満(通常、晶析条件におけるフマル酸溶解度以下)とし、連続運転に必要な全体バランスとして不足するフマル酸は少なくとも反応工程あるいはリサイクル工程に添加するという、フマル酸の分割添加方法を採用することによって、晶析効率を最大限に発揮でき、全体プロセスとして効率よく、安定して連続操作が行え、かつ高純度なL−アスパラギン酸の製造が可能となるということを見いだし本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は下記の通りである。
下記工程(1) 〜(3) を実施してL−アスパラギン酸を製造する方法において、工程(1) に供給する原料フマル酸水溶液の濃度を10〜30wt%とし、且つ、原料フマル酸を下記工程(2) 及び少なくとも工程(1) あるいは工程(3) のいずれかの工程から各々、系内に供給すると共に、工程 (1) と工程 (2) との間に下記工程 (4) を実施し、更に、工程(2) で添加するフマル酸を工程(2) に存在するアスパラギン酸アンモニウムに対して(フマル酸/アスパラギン酸アンモニウム)モル比0.1以上0.85未満に調節することを特徴とするL−アスパラギン酸の製造方法。
【0009】
工程(1) :フマル酸とアンモニアを、アスパルターゼ又はこれを産生する微生物の存在下、反応させてL−アスパラギン酸アンモニウムを生成する工程
工程(2) :工程(1) で得た溶液にフマル酸を添加してL−アスパラギン酸結晶を析出させる工程
工程(3) :工程(2) で得たL−アスパラギン酸結晶を回収し、母液を工程(1) にリサイクルする工程
工程 (4) :工程 (1) で得た溶液から、アンモニアを除去して、実質的にL−アスパラギン酸モノアンモニウムを含有する溶液とする工程
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態につき詳細に説明するが、本発明はかかる実施態様のみに限定されるものではない。
(工程(1) ;酵素反応工程)
本発明ではフマル酸及びアンモニアを原料として使用するが、長期間の連続運転を実施する際には後述する工程(3) で得られるL−アスパラギン酸分離後の母液であるフマル酸アンモニウムを含む水溶液を工程(1) にリサイクルして酵素反応に供することによりL−アスパラギン酸アンモニウムを製造する。
【0011】
本発明に使用されるフマル酸アンモニウムをL−アスパラギン酸アンモニウムに変換するアスパルターゼあるいはアスパルターゼを産生する微生物は、公知のものが使用される。アスパルターゼを産生する微生物としては、フマル酸とアンモニアからL−アスパラギン酸を生成しうる能力を有する微生物であれば特に制限がなく、例えば、ブレビバクテリウム属、エシェリヒア属、シュードモナス属、バチルス属等の微生物が挙げられる。具体的には、ブレビバクテリウム・フラバム(Brevibacterium flavum)MJ−233(FERMBP−1497)、同MJ−233−AB−41(FERM BP−1498)、ブレビバクテリウム・アンモニアゲネス ATCC 6872、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)ATCC 11303、同ATCC 27325等を例示することが出来る。
【0012】
工程(1) の反応における原料水溶液濃度は、通常、後述する工程(3) から回収されるフマル酸モノアンモニウム水溶液の濃度により決定される。本発明においては、工程(1) における原料水溶液の濃度は、通常、フマル酸モノアンモニウム換算で、45〜700g/l、好ましくは90〜450g/l、更に好ましくは150〜250g/lである。
【0013】
工程(1) の反応は、アンモニアの存在下で実施される。この際の反応系内のpHは、通常、7.5〜10が好ましく、特にアンモニアを単独で使用する場合の使用量は、原料フマル酸モノアンモニウムに対して、1.05〜2.0モル倍、好ましくは1.1〜1.6モル倍である。なお、この際、pH調整のため、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ剤を併用してもよい。
【0014】
前記反応の温度は、酵素反応が効率的に行なわれる温度が選定され、通常、10〜80℃、好ましくは15〜60℃であり、工程(1) の酵素反応の反応方式としては、通常、菌体を固定化した充填層に原料水溶液を通液する方法、又は、菌体自体又は固定化した菌体を懸濁した反応器中に原料水溶液を供給する一方、反応液を抜き出し、これを分離膜や遠心分離機を用いて菌体を分離し反応器に戻す方法等が挙げられる。
また、この工程(1) で得られる反応液中には未反応のフマル酸アンモニウムを含む場合もあるが、この場合、この含有量は5g/l以下、好ましくは2g/l以下、特に1g/l以下に制御することが望ましい。
【0015】
(工程(2) ;晶析工程)
上記の工程(1) で得られた液、もしくは後記工程(4) を経て得られた液にフマル酸を添加して、L−アスパラギン酸を晶析させる。添加するフマル酸は粉末でも、水溶液でも、またスラリーであってもよいが、フマル酸が水に対する溶解度が小さいことを考慮すると、粉末或いはスラリー状態で添加することが好ましい。
【0016】
工程(2) で添加されるフマル酸の量は、フマル酸/L−アスパラギン酸アンモニウムのモル比が、0.1以上0.85未満、好ましくは0.1以上0.8未満、更に好ましくは0.2以上0.8未満、特に好ましくは0.4以上0.8未満である。このモル比が小さすぎると、晶析回収でのL−アスパラギン酸の回収率が十分でなく、リサイクル系内のアスパラギン酸濃度が高くなるため、全体として効率の悪いプロセスとなる。また大きすぎると、フマル酸の水に対する溶解度が低いために、溶解度以上のフマル酸はL−アスパラギン酸と共に沈殿し、得られるL−アスパラギン酸の純度を低下させるばかりか、添加したフマル酸のモル数が、晶析回収されるL−アスパラギン酸のモル数を上回る場合、晶析回収で得られる母液をリサイクルする際、このモル数の差に相当するL−アスパラギン酸が濃縮され、リサイクル系のプロセスを安定して維持することができなくなる。
【0017】
また、フマル酸は、工程(2) と少なくとも工程(1) あるいは工程(3) に分割して添加するが、工程(2) での添加量は全添加量の40%以上100%未満、好ましくは50〜90%である。この工程(2) での添加量が小さすぎると、晶析回収でのL−アスパラギン酸の回収率が不十分で晶析効率が悪いばかりか、L−アスパラギン酸が濃縮され、リサイクル系のプロセスを安定して維持することができなくなる。また、この晶析においては、母液のpHは、通常、3〜6となる。
【0018】
晶析温度は、通常、0〜90℃、好ましくは20〜80℃である。あまり低温の場合、得られる結晶が細かくなりすぎ固液分離操作が面倒となる上、フマル酸アンモニウムが析出するため、得られるL−アスパラギン酸の純度が低くなる。すなわち、固液分離で得られる湿ケーキの母液保持量(含水液量)が多く、さらに充分なリンス効果が得られないため、結晶純度が低下するか、リンス量を増やしてL−アスパラギン酸の回収率を低下させるかの状況になる。一方、あまり高温では、L−アスパラギン酸の回収率が低いばかりか、フマル酸の熱劣化が生ずる恐れがあり、好ましくない。
【0019】
また、工程(2) の処理時間は通常0.5〜5時間程度である。
晶析は通常、攪拌槽タイプの晶析槽を用いて実施される。フマル酸の添加位置は、晶析槽又は工程(1) から工程(2) に通じる移送配管中のいずれでもよい。また、晶析は、前記の酵素反応工程で得られた水溶液もしくは後記の工程(4) を経て得られた水溶液と、フマル酸を連続的に供給する一方で、生成スラリーを連続的に抜き出す連続式が好ましいが、一部、間歇的操作で行なってもよい。
【0020】
(工程(3) ;リサイクル工程)
得られたスラリーを固液分離し、必要に応じて得られた結晶を水でリンスすることにより、L−アスパラギン酸結晶を回収する。得られた結晶は、常法により乾燥し、純度99%以上の製品として回収することができる。
【0021】
スラリーの固液分離は、特に限定するものではないが、0〜80℃の温度範囲、好ましくは10〜50℃で行なう。低温下ではスラリーの粘性が高く取扱いが困難になり、高温下ではL−アスパラギン酸の溶解度が高くなり、回収率が低下してしまう。必要に応じて行なうリンス操作に用いる水の量は、特に限定するものではないが、湿ケーキに対して5重量倍以下、好ましくは3重量倍以下で行なう。リンス量が少なすぎるとリンス効果が充分でなく、多すぎるとL−アスパラギン酸の回収率が低下する。リンス水の温度についても特に限定されるものではない。
【0022】
分離操作は、限定されるものではないが、ヌッチェ、遠心分離等の常法により行なうことができる。
固液分離で得られる母液の主成分は、フマル酸アンモニウムであり、溶解度分のL−アスパラギン酸アンモニウムも含まれている。なお、この母液のpHは3〜6程度の酸性水溶液である。この母液は上記工程(1) にリサイクルされ、酵素反応に供される。
【0023】
母液のリサイクルに当たっては、必要に応じて濃縮工程により水を除去し、及び/又はアンモニアを加えて、pHを工程(1) の至適pH、即ち、好ましくはpH7.5〜10、に合わせることができ、全体バランスとして反応に不足しているフマル酸を添加して供給することもできる。なお、不足分フマル酸の添加は本工程にて添加してもよいが、工程(1) で行ってもよい。
【0024】
(工程(4) ;脱アンモニア工程)
必要により、工程(1) と工程(2) の間に以下の脱アンモニア工程を実施してもよい。脱アンモニア工程、即ち、工程(4) は、工程(1) で得た反応液を工程(2) の実施の前に蒸留又はストリッピングしてアンモニアの一部を除去することにより、酵素反応におけるpHを調整するために余剰に加えられていたアンモニアの内、モノアンモニウム塩として存在する以外のアンモニアを除去する工程である。工程(4) を実施することにより、L−アスパラギン酸アンモニウムの実質的全て、すなわち、全体のL−アスパラギン酸アンモニウム塩に対して90%モル以上、好ましくは95モル%以上、更に好ましくは98モル%以上、をL−アスパラギン酸モノアンモニウム塩とすることができる。そして、工程(4) を実施することにより工程(2) において添加するフマル酸を削減することができ、晶析以降の工程を縮小でき、更に効率的なバランスのとれた工業的プロセスが実現可能となる。
【0025】
蒸留操作又はストリッピング操作(以下、アンモニア除去操作ということがある)は、常圧下でも減圧下でもよく、30〜100℃の範囲で、好ましくは40〜80℃で行なう。低温下でアンモニア除去操作を行なうには、減圧度を高めなくてはならず操作上の制約が大きくなる。
一方、高温下では、液組成の熱劣化を招くので好ましくない。アンモニア蒸留塔の形式は通常の棚段塔又は充填塔が使用できる。
【0026】
工程(1) の酵素反応により得られたL−アスパラギン酸アンモニウム水溶液を、上記の方法でアンモニア除去操作することにより、蒸留釜にはL−アスパラギン酸に対するアンモニアのモル比が約1.0の、即ち、L−アスパラギン酸モノアンモニウム、を含む残液を得ることができる。
アンモニア除去操作で蒸気として分離されるのは、アンモニアおよび水のみであり、冷却管等を用いてこの蒸気を液として回収すれば、アンモニア水が得られる。この得られるアンモニア水の濃度は、アンモニア除去操作の温度、圧力および蒸気回収温度等に影響される。
【0027】
上記操作後の水溶液は、晶析工程(工程(2) )に送りL−アスパラギン酸結晶を回収するが、晶析工程に供給する水溶液中のL−アスパラギン酸アンモニウム濃度は、通常、50〜800g/l、好ましくは100〜500g/lである。この濃度があまり低いと結晶回収率が低くなり、逆にあまり高いと回収スラリーの濃度が高くなりすぎ、操作上好ましくない。
【0028】
(脱アンモニア工程からのアンモニア回収)
脱アンモニア工程を実施する場合、除去したアンモニア水は、以下の方法によって回収、再利用することができる。工程(4) のアンモニア除去操作で蒸気として分離し、冷却管等で回収されたアンモニア水は、上記の工程(3) あるいは工程(1) に必要に応じて加えられる。供給温度は、特に限定されないが、それぞれの反応温度を考慮して5〜80℃、好ましくは10〜50℃がよい。高温下では、アンモニアの蒸気圧が高くなり好ましくない。また、反応温度より低温で供給しても何ら問題ない。
リサイクルするアンモニアを供給する方法は、特に限定するものではないが、工程(3) の固液分離後及び工程(1) の酵素反応に供給しても何ら問題にならない。
【0029】
(ブリード)
本発明のL−アスパラギン酸の製造方法では、リサイクルの工程を含むため不純物や反応副生成物の蓄積を考慮して、必要に応じてブリードを行なうことが望ましい。
ブリードする位置としては、特に限定するものではないが、ブリード液からL−アスパラギン酸を結晶として回収することが容易であるため、工程(1) と工程(2) の間、又は工程(1) と工程(4) の間で行なうのが好ましい。
【0030】
ブリード量は、通常、1〜30%、好ましくは5〜20%である。ブリード率が低いとその効果が小さく意味がなく、高ければ主工程と同じ程度の機器容積をブリード系がもつことになり、経済的に不利なプロセスを与える。ブリードする方法は、このブリード率を満足する範囲において連続的であっても、また、間歇的であっても良い。
【0031】
(ブリード工程からのL−アスパラギン酸回収)
ブリード液からL−アスパラギン酸を結晶として回収することができ、それは好ましいことであるが、その方法としては、通常、硫酸又は塩酸等の無機酸を添加して行なうのが好ましい。無機酸の添加量は、アスパラギン酸アンモニウムに対して当量以上である。すなわち、L−アスパラギン酸の等電点2.8になるようにブリード液に無機酸を加えるのが回収率を向上させるために望ましい。
【0032】
上記回収の際の晶析手法及び条件は、上述のメインラインの晶析と同様に実施でき、例えば晶析温度は10〜100℃、好ましくは20〜80℃である。
ブリード液を晶析して得たスラリーもメインラインと同様に固液分離し、次いで、得られた結晶を水でリンスした後乾燥し、製品とすることができる。従って、固液分離後の結晶は、リンスした後、メインラインの結晶と混合し一緒に乾燥処理してもよい。
【0033】
上述のブリード液の処理により、ブリード液中に含有されるL−アスパラギン酸アンモニウムは損失することなく回収でき、しかも、系内に蓄積する不純物はブリードによりパージされるので好ましい結果を与える。本発明は、工程(1) 〜(3) のメインライン及び好ましくは工程(4) の脱アンモニア工程及びそこからのアンモニア回収、また好ましくはブリード液処理工程、の各工程を連結することにより、バランスのとれた安定して連続運転可能な工業的に有利なプロセスを提供することができ、且つ高純度のL−アスパラギン酸の製造を可能とするものである。
【0034】
また、本発明は上記(1) 〜(3) 、必要に応じて工程(4) 他、の各工程の処理操作を逐次実施するが、各工程は回分法でも、連続法でもよい。例えば、全工程を回分法で実施する場合でも、本発明によれば、繰り返し反応を行なっても、各工程とも同一処理量で同一条件にて操作することが可能である。
もちろん、全工程を連続法で実施する場合には、バランスのとれた安定したプロセスとなるのである。
【0035】
【実施例】
本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、実施例の記述に限定されるものではない。
尚、L−アスパラギン酸(以下、ASPと略記する)、およびフマル酸(以下、FAと略記する)の分析は高速液体クロマトグラフィーにより、ASP結晶中のアンモニア(以下、NH3 と略記する)含量の分析はイオンクロマトグラフィーにより定量した。
【0036】
参考例1(ASPアンモニウム水溶液の調整)
通常の培養方法により得たアスパルターゼ活性を有するブレビバクテリウム・フラバム MJ−233−AB−41(FERM BP−1498)の限外濾過膜(旭化成社製−ACV−3050)による濃縮菌体2000g(湿菌体約50重量%)、原料液(FA 2000gおよび25%NH3 水 2950mlに水を加えて全量を10リットルとした水溶液、pH9)に添加して、45℃で24時間反応させた。反応終了後、限界濾過膜により菌体を除去し、得られたろ液を分析したところ、ASPが228g/l(理論収量の99%以上)、FA 1.0g/l、NH3 36.8g/l、NH3 /ASPモル比は1.26(すなわち、ASPアンモニウムに対するASPジアンモニウムの割合は26%)、pHは9であった。
【0037】
実施例1(リサイクル操作)
(A)予めジャケットに温水を流すことで60℃に保温しておいた2リットルジャケット付きセパラブルフラスコ内に、参考例1の方法で得られた酵素反応液(ASPアンモニウム水溶液)を1000ml/時間、40重量%FAスラリーを300g/時間(FA 120.0g/時間、H2 O 180.0g/時間)で連続的にフィードし、攪拌しながら、レベルを1000mlラインのところで保持しながら、晶析させた。この時添加するフマル酸は酵素反応液中のL−アスパラギン酸アンモニウムに対し(フマル酸/L−アスパラギン酸)モル比0.6になるよう添加した。晶析させた液は、予めジャケットに水を流すことで20℃に保温しておいた2リットルジャケット付きセパラブルフラスコへ連続的に抜き出し、ASPスラリーを回収した。この作業を10時間行った。
【0038】
(B)得られたスラリーは、ヌッチェで固液分離し、さらに蒸留水5400gでリンスし、減圧下、約60℃で乾燥したところ、1830gの白色固体を得た。
得られた固体は、ASPが99.3重量%で、FAアンモニウム0.7重量%を含んでいた。ASPの回収率は、79.7%であった。一方、固液分離で得られた母液は、ASP 29.53g/l、FA 75.6g/l、NH3 23.5g/lの組成であり、pHは約4.5、容量約15.6リットルであった。なお、ここで得られたFAアンモニウムはそのNH3 バランスからモノアンモニウム塩とジアンモニウム塩の混合物であった。
【0039】
(C)上記(B)で得られた母液の全量15.6リットルを、20リットルのナス型フラスコに仕込み、ラボ用エバポレーターを用いて、80℃、減圧(300〜400mmHg)下、水を飛ばし濃縮した。ここで得られる蒸気は、50wt%エチレングリコールの冷却水が0℃で循環する冷却管を取り付け、回収した。また、得られた濃縮液は、次の酵素反応原料としてリサイクル使用するため、反応必要分に対し不足しているフマル酸を添加するが、初期原料中のフマル酸モル数に対し、濃縮液中の未回収L−アスパラギン酸とフマル酸の合計モル数が等しくなるよう、不足分フマル酸を添加する。ここでは得られた濃縮液に不足分の粉末FA 400g、25%NH3 水を1285ml、および蒸留水を添加して、pH9.0、容量約10リットルの液を作成した。フマル酸の添加は、晶析工程及びリサイクル母液への分割添加方法で行ったが、分割比(晶析工程でのフマル酸添加量/フマル酸全添加量)は、ここでは0.75であった。この作成した液の組成は、ASP 44.5g/l、FA 158.3g/l、NH3 65.7g/lのであった。
【0040】
(D)上記(C)で得られた反応液を参考例1と同様の方法にてアスパルターゼにて酵素反応させたところ、ASP 226g/l(理論収量の99%以上)、FA 1.3g/l、NH3 36.7g/l、NH3 /ASPモル比は1.27(すなわち、ASPアンモニウムに対するASPジアンモニウムの割合は27%)、pHは9であった。
【0041】
(F)さらに上記と同様の操作を条件を変えずに3回繰り返した。結果を第1表に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
第1表に示されるとおり、晶析工程で存在するL−アスパラギン酸に対する添加フマル酸のモル比一定(実施例1ではモル比0.6)の条件では、晶析回収率、分割添加フマル酸の分割比、及び得られるL−アスパラギン酸の結晶純度はほぼ一定となり、本プロセスはリサイクル運転を行っても、全体プロセスとして効率よく、安定して連続操作が行え、且つ高純度なL−アスパラギン酸を得られることが確認できた。
【0044】
実施例2(NH3 除去操作の効果および晶析での添加FA量の影響)
実施例1と同様の操作(繰り返しなし)を下記NH3 除去操作の有無(NH3 除去操作有;実験No.1、2、NH3 除去操作無;実験No.3、4)、晶析で添加するFAの量を変えて実施した。結果を第2表に示す。
【0045】
(NH3 除去操作):
参考例1の方法と同様の操作で得られた酵素反応液10リットルを、20リットルのナス型フラスコに仕込み、ラボ用エバポレーターを用いて、80℃、380mmHgの条件下、アンモニアを蒸留分離した。15分後、常圧に戻して、アンモニア除去操作を終了した。得られた蒸留釜の残液は、ASPが275g/l、NH3 が35.4g/lの組成で、8250mlの容量であった。この残液に蒸留水を加えて、ASPが230g/l、NH3 が29.2g/lの組成(NH3 /ASPモル比は1.0、すなわち、全てがASPモノアンモニウム塩)で8500mlの釜残液を作成した。これを晶析原料として用いた。
【0046】
【表2】
【0047】
第2表に示されるとおり、アンモニア除去操作を行うことにより、L−アスパラギン酸の晶析回収率が向上することが確認された。
【0048】
【発明の効果】
本発明により、晶析後のフマル酸アンモニウムを含む母液を反応系にリサイクルしても、バランスのとれた安定した連続操作で、L−アスパラギン酸を製造することができる。
Claims (4)
- 下記工程(1) 〜(3) を実施してL−アスパラギン酸を製造する方法において、工程(1) に供給する原料フマル酸水溶液の濃度を10〜30wt%とし、且つ、原料フマル酸を下記工程(2) 及び少なくとも工程(1) あるいは工程(3) のいずれかの工程から各々、系内に供給すると共に、工程 (1) と工程 (2) との間に下記工程 (4) を実施し、更に、工程(2) で添加するフマル酸を工程(2) に存在するアスパラギン酸アンモニウムに対して(フマル酸/アスパラギン酸アンモニウム)モル比0.1以上0.85未満に調節することを特徴とするL−アスパラギン酸の製造方法。
工程(1) :フマル酸とアンモニアを、アスパルターゼ又はこれを産生する微生物の存在下、反応させてL−アスパラギン酸アンモニウムを生成する工程
工程(2) :工程(1) で得た溶液にフマル酸を添加してL−アスパラギン酸結晶を析出させる工程
工程(3) :工程(2) で得たL−アスパラギン酸結晶を回収し、母液を工程(1) にリサイクルする工程
工程 (4) :工程 (1) で得た溶液から、アンモニアを除去して、実質的にL−アスパラギン酸モノアンモニウムを含有する溶液とする工程 - 工程(2) でのフマル酸添加量が、系内に供給するフマル酸全添加量の40%以上100%未満である請求項1記載の方法。
- 工程(1) 〜(3) 、工程(1) 〜(4) 又はこれらの工程の間のいずれかにおいてL−アスパラギン酸とアンモニアを含む液をブリードし、且つその量が全量の0.1〜30wt%である請求項1〜3いずれか1項記載の方法。
- 工程(2) において、フマル酸の添加が連続的に行われるものである請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
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JP14418996A JP3735943B2 (ja) | 1996-06-06 | 1996-06-06 | L−アスパラギン酸の製造方法 |
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JPH09322790A JPH09322790A (ja) | 1997-12-16 |
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1996
- 1996-06-06 JP JP14418996A patent/JP3735943B2/ja not_active Expired - Fee Related
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