JP2765537B2 - L−アスパラギン酸の製造方法 - Google Patents

L−アスパラギン酸の製造方法

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JP2765537B2 JP31083195A JP31083195A JP2765537B2 JP 2765537 B2 JP2765537 B2 JP 2765537B2 JP 31083195 A JP31083195 A JP 31083195A JP 31083195 A JP31083195 A JP 31083195A JP 2765537 B2 JP2765537 B2 JP 2765537B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はL−アスパラギン酸
の製造方法に関するものであり、詳しくは、マレイン酸
及び/又は無水マレイン酸を原料とし、酵素作用により
L−アスパラギン酸を製造するための工業的有利なプロ
セスに関するものである。
【0002】
【従来の技術】L−アスパラギン酸は医薬、食品添加物
として需要が増加している。また、新たな用途開発も検
討されているが、現在のところ、経済的に優れた工業的
プロセスは確立されていない。従って、安価な製造コス
トで大量生産が可能となれば、L−アスパラギン酸の需
要は急増するものと予想される。
【0003】従来、L−アスパラギン酸の製造法として
は、フマル酸を原料とし、アンモニアの存在下、アスパ
ルターゼ又はこれを産生する微生物の作用によりL−ア
スパラギン酸を酵素法により得るという方法が知られて
いる。しかしながら、従来法は、酵素処理後のL−アス
パラギン酸アンモニウムを硫酸又は塩酸により酸析する
ため、経済的価値の低い無機酸アンモニウム塩を大量に
副生し、結果的にL−アスパラギン酸の製造コストを高
めることとなる。
【0004】一方、酵素処理後のL−アスパラギン酸ア
ンモニウムをマレイン酸又は無水マレイン酸により酸析
し、L−アスパラギン酸結晶を回収した後のマレイン酸
アンモニウムを含む母液を原料として利用する方法が提
案されている(EP127,940)。この方法によれ
ば、原料として大量に入手が容易で、しかも、安価な無
水マレイン酸を用いるので、安定した連続操作により所
望のL−アスパラギン酸を得ることができれば工業的に
非常に望ましい方法となり得る。
【0005】しかし、上記特許方法の場合、L−アスパ
ラギン酸アンモニウムの晶析に当り、大量のマレイン酸
を添加しないとL−アスパラギン酸結晶の回収率を高め
ることができない。従って、晶析工程で添加するマレイ
ン酸の量は、晶析すべきL−アスパラギン酸の量を超え
る条件となる。そのため、晶析後のマレイン酸アンモニ
ウムを含む母液を反応系にリサイクル使用すると、次第
に、系内のL−アスパラギン酸濃度が上昇することとな
り、安定した連続操作を継続的に行なうことができな
い。要するに、上記特許方法では、工業的な連続操作は
不可能である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明はマレイン酸を
原料とした場合に、生成したL−アスパラギン酸アンモ
ニウム水溶液を常に一定量のマレイン酸を用いて効率的
に酸析し、酸析後のマレイン酸アンモニウムを含む母液
を反応系にリサイクルしても、バランスのとれた安定し
た連続操作が可能なL−アスパラギン酸の製造プロセス
を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者等は上記実情に
鑑み鋭意検討した結果、L−アスパラギン酸アンモニウ
ムの晶析によって生成するマレイン酸アンモニウムはモ
ノアンモニウム塩であるが、一方、これを原料として得
られるL−アスパラギン酸アンモニウムはモノアンモニ
ウム塩とジアンモニウム塩との混合物であることを見い
出した。要するに、反応後のL−アスパラギン酸アンモ
ニウムを中和するためには、等モル以上のマレイン酸を
必要とし、これに対応する量のマレイン酸モノアンモニ
ウムが生成する。そして、これを原料としてL−アスパ
ラギン酸アンモニウムを製造すれば、更に等モル以上の
マレイン酸が酸析剤として必要となる。
【0008】そこで、本発明では、酵素処理後のL−ア
スパラギン酸アンモニウム水溶液を蒸留又はストリッピ
ングし、アンモニウム塩の実質的全てをモノアンモニウ
ム塩とした後、これをマレイン酸により酸析することに
より、長期間に亘り安定したL−アスパラギン酸の連続
製造が可能となることを想到し、本発明を完成するに至
った。
【0009】すなわち、本発明の要旨は、マレイン酸及
び/又は無水マレイン酸を原料としてL−アスパラギン
酸を製造するプロセスにおいて、 後記の晶析工程で回収したマレイン酸モノアンモニ
ウム水溶液を、場合により異性化した後、アンモニアの
存在下、アスパルターゼ又はこれを産生する微生物の作
用によりL−アスパラギン酸アンモニウムを生成する酵
素処理工程、 工程で得た反応液を蒸留又はストリッピングする
ことにより、生成したL−アスパラギン酸アンモニウム
の実質的全てをモノアンモニウム塩とする脱アンモニア
工程、 工程で得た溶液を酸析剤としてマレイン酸及び/
又は無水マレイン酸を用い晶析することによりL−アス
パラギン酸結晶を得る晶析工程、 工程で得た結晶含有スラリーから前記結晶を回収
する固液分離工程、 工程で得たマレイン酸モノアンモニウムを含む母
液を上記工程に反応原料として供給するリサイクル工
程、を包含することを特徴とするL−アスパラギン酸の
製造方法に存する。
【0010】
【発明の実施の態様】以下、本発明の構成につき詳細に
説明する。 (工程)本発明では後述する晶析工程で得られるマレ
イン酸モノアンモニウムを含む水溶液を用いて酵素処理
を施すことによりL−アスパラギン酸アンモニウムを製
造する。この反応はマレイン酸アンモニウムをフマル酸
アンモニウムに異性化した後、これを酵素処理してアス
パラギン酸アンモニウムを生成させる2段反応法、又
は、マレイン酸アンモニウムの異性化とアスパラギン酸
アンモニウムの生成とを同時に行なう1段反応法のいず
れでもよい。
【0011】マレイン酸アンモニウムをフマル酸アンモ
ニウムに異性化する反応及びフマル酸アンモニウムをア
スパラギン酸アンモニウムに変換する反応は公知であ
り、本発明はこれらの反応自体は公知法に準じて実施す
ることができる。また、異性化反応は化学反応でもよい
が、本発明の場合、酵素処理による異性化反応が望まし
い。
【0012】酵素処理により異性化反応を行なう場合、
マレイン酸イソメラーゼあるいは、マレイン酸イソメラ
ーゼを産生する微生物を用いる。マレイン酸イソメラー
ゼ活性を有する微生物としては、マレイン酸を異性化し
てフマル酸を生成しうる能力を有する微生物であれば特
に制限がなく、例えば、アルカリゲネス属、シュードモ
ナス属、キサントモナス属、バチルス属等の微生物が挙
げられる。具体的には、アルカリゲネス・フェカリス
(Alcaligenes faecalis)IFO
12669、同IFO 13111、同IAM 14
73、アルカリゲネス・ユウトロフス(Alcalig
enes eutrophus)、シュードモナス・フ
ルオレッセンス(Pseudomonas fluor
escens)ATCC 23728、キサントモナス
・マルトモナス(Xanthomonas marut
omonasu)ATCC 13270等を例示するこ
とが出来る。
【0013】一方、フマル酸アンモニウムをL−アスパ
ラギン酸アンモニウムに変換するには、アスパルターゼ
あるいはアスパルターゼを産生する微生物で酵素処理す
るが、この方法は通常知られている方法により行なうこ
とが出来る。アスパルターゼを産生する微生物として
は、フマル酸とアンモニアからL−アスパラギン酸を生
成しうる能力を有する微生物であれば特に制限がなく、
例えば、ブレビバクテリウム属、エシェリヒア属、シュ
ードモナス属、バチルス属等の微生物が挙げられる。具
体的には、ブレビバクテリウム・フラバム(Brevi
bacterium flavum)MJ−233(F
ERM BP−1497)、同MJ−233−AB−4
1(FERM BP−1498)、ブレビバクテリウム
・アンモニアゲネス ATCC 6872、エシェリヒ
ア・コリ(Escherichiacoli)ATCC
11303、同ATCC 27325等を例示するこ
とが出来る。
【0014】第1段反応及び第2段反応の原料水溶液濃
度は、通常、後述する晶析工程から回収されるマレイン
酸モノアンモニウム水溶液の濃度により決定される。す
なわち、マレイン酸アンモニウムがフマル酸アンモニウ
ムとなり、次いで、アスパラギン酸アンモニウムと変化
するが、その水溶液濃度はほぼ一定である。前記原料水
溶液の濃度は、通常、マレイン酸アンモニウムとして、
45〜700g/l、好ましくは90〜450g/lで
ある。
【0015】第1反応及び第2反応はアンモニアの存在
下で実施される。この際の反応系内のpHは通常、7.
5〜10であり、アンモニアの使用量は原料マレイン酸
モノアンモニウムに対して、1.1〜1.6モル倍であ
る。第1反応及び第2反応の温度は10〜100℃、好
ましくは20〜80℃であり、酵素反応が効率的に行な
われる温度を選定する。
【0016】酵素反応の反応方式としては、通常、菌体
を固定化した充填層に原料水溶液を通液する方法、又
は、菌体自体又は固定化した菌体を懸濁した反応器中に
原料水溶液を供給する一方、反応液を抜き出し、これを
分離膜や遠心分離機を用いて菌体を分離し反応器に戻す
方法が挙げられる。なお、第1反応と第2反応とを酵素
反応により同時に行なう場合には、各々の性質を持つ菌
を併用し、両反応に適した条件を選定して行なうことが
できる。また、両方の性質を有するものであれば併用の
必要は必ずしもない。
【0017】第2反応で得られる反応液はL−アスパラ
ギン酸アンモニウムを主体として含むが、このアンモニ
ウム塩はモノアンモニウム塩とジアンモニウム塩の混合
物である。ジアンモニウム塩の割合は通常、10〜60
%モルである。また、この反応液中には未反応のフマル
酸アンモニウム及びマレイン酸アンモニウムを含む場合
もあるが、この含有量は2g/l以下、好ましくは1g
/l以下に制御することが望ましい。この含有量の制御
は上記した反応条件を最適化することにより行なうこと
ができる。 (工程)本発明では工程で得た反応液を蒸留又はス
トリッピングすることにより、L−アスパラギン酸アン
モニウムの実質的全て、すなわち、90%モル以上をモ
ノアンモニウム塩とすることを要件とするものである。
【0018】この脱アンモニア処理により、後記の晶析
工程で用いるマレイン酸又は無水マレイン酸の使用量が
抑制でき、バランスのとれた工業的プロセスが実現する
のである。蒸留操作又はストリッピング操作(以下、ア
ンモニア除去操作ということがある)は、常圧下でも減
圧下でもよく、30〜100℃の範囲で、好ましくは、
40〜80℃で行なう。低温下でアンモニア除去操作を
行なうには、減圧度を高めなくてはならず操作上の制約
が大きくなる。
【0019】一方、高温下では、液組成の熱劣化を招く
ので好ましくない。本発明で構成される全工程のうち、
最も高温で処理することを余儀なくされる本工程の温度
条件、特に上限温度については、この観点から上記の様
に規定されるべきである。アンモニア蒸留塔の形式は通
常の棚段塔又は充填塔でよい。酵素処理により得られた
L−アスパラギン酸アンモニウム水溶液を、上記の方法
でアンモニア除去操作することにより、蒸留釜にはL−
アスパラギン酸に対するアンモニアのモル比が約1.0
の残液を得ることができる。
【0020】アンモニア除去操作で蒸気として分離され
るのは、アンモニアおよび水のみであり、冷却管等を用
いてこの蒸気を液として回収すれば、アンモニア水が得
られる。この得られるアンモニア水の濃度は、アンモニ
ア除去操作の温度、圧力および蒸気回収温度等に影響さ
れる。上記操作後の水溶液は晶析工程に送りL−アスパ
ラギン酸結晶を回収するが、晶析工程に供給する水溶液
中のL−アスパラギン酸アンモニウム濃度は通常、50
〜800g/l、好ましくは100〜500g/lであ
る。この濃度があまり低いと結晶回収率が低くなり、逆
にあまり高いと回収スラリーの濃度が高くなりすぎ操作
上好ましくない。 (工程)上記のアンモニア除去工程で得られた液にマ
レイン酸及び/又は無水マレイン酸を添加して、L−ア
スパラギン酸を晶析させる。添加するマレイン酸、無水
マレイン酸は、粉末でも、溶融液でも、水溶液でも、ま
たスラリーであってもよい。この二種類の酸を任意の比
で混合することも何ら制限をうけるものでない。
【0021】(マレイン酸+無水マレイン酸)/L−ア
スパラギン酸モノアンモニウムのモル比としては、0.
5〜1.1、好ましくは0.6〜1.0である。このモ
ル比が小さすぎると、晶析回収でのL−アスパラギン酸
の回収率が充分でなく、リサイクル系内のアスパラギン
酸濃度が高くなり、また大きすぎると、添加したマレイ
ン酸および無水マレイン酸の合計のモル数が、晶析回収
されるL−アスパラギン酸のモル数を上回り、晶析回収
で得られる母液を異性化してリサイクルする場合に、こ
のモル数の差に相当するL−アスパラギン酸が濃縮さ
れ、リサイクル系のプロセスを安定して維持することが
できなくなる。なお、この晶析においては、母液のpH
は通常、3〜6となる。
【0022】晶析温度は通常、0〜90℃、好ましく
は、10〜80℃である。あまり低温の場合、得られる
結晶が細かくなりすぎ、固液分離操作が面倒となる上、
リンス効率も悪化する。すなわち、固液分離で得られる
湿ケーキの母液保持量(含水液量)が多く、さらに充分
なリンス効果が得られないため、結晶純度が低下する
か、リンス量を増やしてL−アスパラギン酸の回収率を
低下させるかの状況になる。一方、あまり高温では、L
−アスパラギン酸の回収率が低いばかりか、マレイン酸
の熱劣化が生ずる恐れがあり、好ましくない。
【0023】また晶析工程の処理時間は通常0.5〜5
時間程度である。晶析は通常、撹拌槽タイプの晶析槽を
用いて実施される。マレイン酸及び/又は無水マレイン
酸の添加位置は晶析槽又はこれに通じる移送配管中のい
ずれでもよい。また、晶析は、前記の脱アンモニア後の
水溶液と、マレイン酸及び/又は無水マレイン酸とを連
続的に供給する一方で、生成スラリーを連続的に抜き出
す連続式が望ましいが、一部、間けつ的操作もしくは回
分式で行なってもよい。 (工程)得られたスラリーを固液分離し、必要に応じ
て、得られた結晶を水でリンスすることによりL−アス
パラギン酸結晶を回収する。得られた結晶は常法により
乾燥し純度99%以上の製品として回収することができ
る。
【0024】固液分離で得られる母液の主成分は、マレ
イン酸モノアンモニウムであり、溶解度分のL−アスパ
ラギン酸アンモニウムも含まれている。この母液は上記
工程にリサイクルする。そして、異性化反応により、
フマル酸アンモニウムとなり、これを酵素反応に付して
L−アスパラギン酸アンモニウムとなる。スラリーの固
液分離は、特に限定するものではないが、0〜80℃の
温度範囲、好ましくは、10〜50℃で行なう。低温下
ではスラリーの粘性が高く取扱いが困難になり、高温下
では、L−アスパラギン酸の溶解度が高くなり、回収率
が低下してしまう。必要に応じて行なうリンス操作に用
いる水の量は、特に限定するものではないが、湿ケーキ
に対して5重量倍以下、好ましくは、3重量倍以下で行
なう。リンス量が少なすぎるとリンス効果が充分でな
く、多すぎるとL−アスパラギン酸の回収率が低下す
る。リンス水の温度についても特に限定しない。
【0025】分離操作は、限定するものではないが、ヌ
ッチェ、遠心分離等の常法により行なうことができる。 (工程)固液分離で得られる母液は、主にマレイン酸
モノアンモニウムが含まれ、pHが3〜6程度の酸性水
溶液である。必要に応じて濃縮工程により水を除去し、
アンモニアを加えて工程に供給する。 (脱アンモニア工程からのアンモニア回収)工程のア
ンモニア除去操作で蒸気として分離し、冷却管等で回収
されたアンモニア水は、上記の工程あるいは工程に
必要に応じて加えられる。供給温度は、特に限定されな
いが、それぞれの反応温度を考慮して5〜80℃、好ま
しくは、10〜50℃がよい。高温下では、アンモニア
の蒸気圧が高くなり好ましくない。また、反応温度より
低温で供給しても何ら問題ない。
【0026】リサイクルするアンモニアを供給する方法
は、特に限定するものではないが、工程の異性化反応
及び酵素反応の二つの反応に適当に分配しても、またい
ずれかの反応に一括して供給しても何ら問題にならな
い。また、異性化反応と酵素反応を同一反応器内で行な
う場合、工程に記載の母液に供給してもよい。 (ブリード)本発明のL−アスパラギン酸の製造方法で
は、リサイクルの工程を含むため不純物や反応副生成物
の蓄積を考慮して、必要に応じてブリードを行なうこと
が望ましい。
【0027】ブリードする位置としては、特に限定する
ものではないが、ブリード液からL−アスパラギン酸を
結晶として回収することが容易である工程で得た釜残
水溶液からが好ましい。ブリード量は、通常、釜残水溶
液の容量ベースで1〜20%、好ましくは3〜17%で
ある。ブリード率が低いとその効果が小さく意味がな
く、高ければ主工程と同じ程度の機器容積をもつことに
なり、経済的に不利なプロセスを与える。ブリードする
方法は、このブリード率を満足する範囲において連続的
であっても、また、間歇的であっても良い。
【0028】ブリード液からL−アスパラギン酸を結晶
として回収する方法としては、通常、硫酸又は塩酸等の
無機酸を添加して行なうのが好ましい。無機酸の添加量
はアスパラギン酸アンモニウムに対して当量以上であ
る。すなわち、L−アスパラギン酸の等電点2.8にな
るようにブリード液に無機酸を加えるのが回収率を向上
させるために望ましい。なお、ここで無機酸塩が副生す
るが、この量は全体的に見れば少量である。
【0029】晶析手法及び条件は上述のメインラインの
晶析と同様であり、例えば晶析温度は10〜100℃、
好ましくは、20〜80℃である。ブリード液を晶析し
て得たスラリーもメインラインと同様に固液分離し、次
いで、得られた結晶を水でリンスした後、乾燥し製品と
なる。従って、固液分離後の結晶はリンス後、メインラ
インの結晶と混合し一緒に乾燥処理してもよい。
【0030】本発明では、ブリード液の晶析の際に、晶
析系内にL−リンゴ酸を0.5g/l以上、好ましくは
2.0〜50g/l共存させるのが好ましい。要する
に、無機酸の添加によるL−アスパラギン酸アンモニウ
ムの晶析においては、析出する結晶が細かくなる傾向が
あるが、特定量のL−リンゴ酸が存在することにより、
取り扱い性の良い柱状結晶が得られるのである。
【0031】L−リンゴ酸の供給方法としては、晶析槽
にL−リンゴ酸を添加してもよいが、アスパラギン酸ア
ンモニウム水溶液に必要量添加するのが好ましい。な
お、フマル酸アンモニウムまたはマレイン酸アンモニウ
ム水溶液からアスパラギン酸アンモニウム水溶液を得る
ときに、反応条件によってL−リンゴ酸が副生すること
があるが、通常の晶析法では系内のL−リンゴ酸の共存
量は上記範囲に達することはない。しかし、この副生L
−リンゴ酸量を調節したり、また、副生L−リンゴ酸を
濃縮したりして晶析系内のL−リンゴ酸濃度を調節して
もよい。
【0032】上述のブリード液の処理により、含有され
るL−アスパラギン酸アンモニウムは損失することなく
回収でき、しかも、系内に蓄積する不純物は晶析母液中
に残留しパージされる。本発明では工程〜のメイン
ライン及び脱アンモニウ工程からのアンモニア回収、ブ
リード液処理の各工程を連結することにより、バランス
のとれた安定した工業的プロセスを維持することがで
き、一定品質のL−アスパラギン酸を低コストで製造す
ることができる。
【0033】また、本発明は上記〜の各工程の処理
操作を順番に実施するが、〜の各工程は回分法で
も、連続法でもよい。例えば、全工程を回分法で実施す
る場合でも、本発明によれば、繰り返し反応を行なって
も、各工程とも同一処理量で同一条件にて操作すること
が可能である。もちろん、全工程を連続法で実施する場
合には、バランスのとれた安定したプロセスとなるので
ある。
【0034】
【実施例】本発明を実施例により更に具体的に説明する
が、本発明はその要旨を超えない限り、実施例の記述に
限定されるものではない。尚、L−アスパラギン酸(以
下、ASPと略記する)、マレイン酸(以下、MAと略
記する)およびフマル酸(以下、FAと略記する)の分
析は高速液体クロマトグラフィーにより、ASP結晶中
のアンモニア(以下、NH3と略記する)含量の分析は
イオンクロマトグラフィーにより定量した。 参考例 ASPアンモニウム水溶液の調整 通常の培養方法により得たアスパルターゼ活性を有する
ブレビバクテリウム・フラバム MJ−233−AB−
41(FERM BP−1498)の限外ろ過膜(旭化
成社製−ACV−3050)による濃縮菌体200g
(湿菌体約50重量%)、および通常の培養方法により
得たMAイソメラーゼ活性を有するアルカリゲネス・フ
ェカリス IFO−12669の限界ろ過膜(旭化成社
製−ACV−3050)による濃縮菌体60g(湿菌体
約50重量%)を、原料液(MA150gおよび、25
%NH3水 220mlに水を加えて全量を1000m
lとした水溶液、pH9)に添加して、30℃で24時
間反応させた。反応終了後、限界ろ過膜により菌体を除
去し、得られたろ液を分析したところ、ASPが171
g/l(理論収量の99%以上)、FA 1.0g/
l、NH3 27.5g/l、NH3/ASPモル比は
1.26(すなわち、ASPアンモニウムに対するAS
Pジアンモニウムの割合は26%)、pHは9であっ
た。 実施例1 リサイクル操作 (A)参考例の方法で得られた酵素反応液1Lを、2L
のナス型フラスコに仕込み、ラボ用エバポレーターを用
いて、80℃、380mmHgの条件下、アンモニアを
蒸留分離した。得られる蒸気の回収を目的に、50wt
%エチレングリコールの冷却水が0℃で循環する冷却管
をとりつけた。15分後、常圧に戻して、アンモニア除
去操作を終了した。
【0035】蒸留釜の残液は、ASPが207g/l、
NH3が26.5g/lの組成で、825mlの容量で
あった。この残液に蒸留水を加えて、ASPが200g
/l、NH3が25.9g/lの組成(NH3/ASPモ
ル比は1.0、すなわち、全てがASPモノアンモニウ
ム塩)で850mlの釜残液をメイクアップした。冷却
管で得られた回収液は、NH3が27g/lのNH3水1
85mlであった。 (B)(A)で得られたASPモノアンモニウム水溶液
850mlを1000mlジャケット付きセパラブル
フラスコ内でジャケットに温水を流すことで60℃に保
温し、撹拌しながらMA 119g(MA/ASPモル
比は0.80)を添加し、晶析した。MAの添加後、撹
拌を続けながら30分間60℃で保温した後、1時間か
け、20℃まで冷却し、さらに30分間保温した。 (C)得られたスラリーは、ヌッチェで固液分離し、さ
らに蒸留水 400gでリンスし、減圧下、約60℃で
乾燥したところ、138.5gの白色固体を得た。
【0036】得られた固体は、ASPが99.3重量%
で、MAアンモニウム 0.6重量%、FAアンモニウ
ム 0.1重量%を含んでいた。ASPの回収率は、8
0.9%であった。一方、固液分離で得られた母液は、
ASP 27.1g/l、MA 98.6g/l、NH
3 18.6g/lの組成であり、pHは約4.5、容
量1.2Lであった。なお、ここで得られたMAアンモ
ニウムはそのNH3バランスから見て実質的全てがモノ
アンモニウム塩であった。 (D)(C)で得られた母液 1.2Lを、(A)と同
様の方法により80℃、減圧(300〜400mmH
g)下、水を飛ばし濃縮した。得られた濃縮液に25%
NH3水、(A)で回収したNH3水185ml、および
蒸留水を添加して、pH9.0、容量約1Lの液をメイ
クアップしたところ、ASP 32.9g/l、FA
0.9g/l、MA 119.6g/l、NH3 44.
6g/lの組成であった。 (E)(D)で得られた反応液を参考例と同様の方法に
てアスパルターゼ及びMAイソメラーゼにて酵素処理し
たところ、ASP 169g/l(理論収量の99%以
上)、FA 1.1g/l、MA 0.7g/l、NH
3 27.5g/l、NH3/ASPモル比は1.27(す
なわち、ASPアンモニウムに対するASPジアンモニ
ウムの割合は27%)、pHは9であった。 (F)さらに上記と同様の操作を条件を変えずに3回繰
り返した。結果を第1表に示す。
【0037】
【表1】 第 1 表 ─────────────────────────────── 繰り返し アスパルターゼ 晶析回収率 固液分離で得た 回数 反応回収率 % % 結晶純度 % ─────────────────────────────── 0 99以上 80.9 99.3 1 99以上 80.1 99.0 2 99以上 79.8 99.4 3 99以上 81.0 99.2 ─────────────────────────────── 実施例2 NH3除去操作の効果および晶析での添加M
A量の影響 実施例1と同様の操作(繰り返しなし)をNH3除去操
作の有無(NH3除去操作有;実験NO.1〜4、NH3
除去操作無;実験NO.5、6)、晶析で添加するMA
の量を変えて実施した。結果を第2表に示す。
【0038】
【表2】 第 2 表 ─────────────────────────────── 実験 NH3/ASP MA/ASP 晶析回折率 NO モル比 晶析時添加酸モル比 % ─────────────────────────────── 1 1 0.4 45 2 1 0.6 64 3 1 0.8 81 4 1 1.0 95 5 1.3 0.5 30 6 1.3 0.9 70 ─────────────────────────────── 実施例3 ブリード回収 実施例1の(A)と同様の操作で得られた釜残液の10
重量%に対し、第3表に示す無機酸を用い、しかも系内
に表に示す量のL−リンゴ酸の存在下、実施例1の
(B)と同様の晶析操作にて処理した。結果を第3表に
示す。
【0039】
【表3】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の各工程のフローの一例を示す工
程図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 渡辺 尚之 三重県四日市市東邦町1番地 三菱化学 株式会社四日市総合研究所内 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C12P 13/20

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 マレイン酸及び/又は無水マレイン酸を
    原料としてL−アスパラギン酸を製造するプロセスにお
    いて、 後記の晶析工程で回収したマレイン酸モノアンモニ
    ウムを含む水溶液を異性化した後、アンモニアの存在
    下、アスパルターゼ又はこれを産生する微生物の作用に
    よりL−アスパラギン酸アンモニウムを生成する酵素処
    理工程、 工程で得た反応液を蒸留又はストリッピングする
    ことにより、生成したL−アスパラギン酸アンモニウム
    の実質的全てをモノアンモニウム塩とする脱アンモニア
    工程、 工程で得た溶液を酸析剤としてマレイン酸及び/
    又は無水マレイン酸を用い晶析することによりL−アス
    パラギン酸結晶を得る晶析工程、 工程で得た結晶含有スラリーから前記結晶を回収
    する固液分離工程、 工程で得たマレイン酸モノアンモニウムを含む母
    液を上記工程に反応原料として供給するリサイクル工
    程、を包含することを特徴とするL−アスパラギン酸の
    製造方法。
  2. 【請求項2】 上記工程の予備反応である異性化処理
    がアンモニアの存在下、イソメラーゼ又はこれを産生す
    る微生物の作用により行なう酵素処理法であることを特
    徴とする請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】 マレイン酸及び/又は無水マレイン酸を
    原料としてL−アスパラギン酸を製造するプロセスにお
    いて、 後記の晶析工程で回収したマレイン酸モノアンモニ
    ウムを含む水溶液をアンモニアの存在下、イソメラーゼ
    及びアスパルターゼ又はこれらを産生する微生物の作用
    により、直接、L−アスパラギン酸アンモニウムを生成
    する酵素処理工程、 工程で得た反応液を蒸留又はストリッピングする
    ことにより、生成したL−アスパラギン酸アンモニウム
    の実質的全てをモノアンモニウム塩とする脱アンモニア
    工程、 工程で得た溶液を酸析剤としてマレイン酸及び/
    又は無水マレイン酸を用い晶析することによりL−アス
    パラギン酸結晶を得る晶析工程、 工程で得た結晶含有スラリーから前記結晶を回収
    する固液分離工程、 工程で得たマレイン酸モノアンモニウムを含む母
    液を上記工程の反応原料として供給するリサイクル工
    程、を包含することを特徴とするL−アスパラギン酸の
    製造方法。
  4. 【請求項4】 上記工程から抜き出されるL−アスパ
    ラギン酸アンモニウム水溶液中の全アンモニウム塩に対
    するジアンモニウム塩の割合が10〜60%モルである
    請求項1又は3記載の方法。
  5. 【請求項5】 上記工程から抜き出されるL−アスパ
    ラギン酸アンモニウム水溶液中の未反応フマル酸アンモ
    ニウム及びマレイン酸アンモニウムの含有量が2g/l
    以下である請求項1又は3記載の方法。
  6. 【請求項6】 上記工程における母液中のpHが3〜
    6である請求項1又は3記載の方法。
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