JP3728684B2 - 塩化ビニル系樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は木粉を多量に配合した塩化ビニル系樹脂組成物に関する。詳しくは、均一微細な発泡セル構造と平滑な表皮とを有し、しかも木質感に富み、建材や家具材に適する成形品を与えることができる、加工性の良い塩化ビニル系樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
木材は光合成により繰返し生産ができるので、石油系樹脂とは異なる豊かな将来性のある資源として見直されている。成長の早い樹種で森林育成を行い、大気中に増大した炭酸ガス濃度を低減して健全な地球環境を再生しつつ、一方で計画的に伐採して木材を資源として人類の生活に役立てる試みが行われつつある。このような状況の下で、機械的強度が大きく成形加工の容易な汎用樹脂である塩化ビニル系樹脂に、木粉を配合して、建築用資材に多用される塩化ビニル系樹脂組成物を開発できれば、調和のとれた地球資源利用の道が大きく開拓されることになる。
従来、木材に似た外観や触感を現出する目的で、塩化ビニル系樹脂に木粉を配合して成形することがしばしば行われている。しかし、木粉を相当量配合した塩化ビニル系樹脂組成物は、引張り強さなどの機械的強度が大幅に低下することや、いまだ天然の木質感が実現できていない問題を有している。
【0003】
木目の明瞭化や加工のし易さを改善するため、木粉に加えて尿素樹脂を添加した塩化ビニル系樹脂組成物が提案されている(特開昭60−42007号公報、特開昭60−73807号公報、特開昭60−73808号公報)。また、木粉の他にマイカなどの無機充填剤と、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体またはABS樹脂を添加した塩化ビニル系樹脂組成物は、線膨張率が小さく、耐衝撃性および成形性に優れることが開示された(特開昭60−192746号公報、特開昭60−192747号公報)。しかし、これらによっても木粉の均一混合性に欠け、かつ、成形品の木質感の現出が不十分である。
無機粉末やプラスチック粉末を付着させた木粉をプラスチック加工時に配合することによって木粉の均一分散性は大幅に改善されるが(特開平5−177610号、特開平5−261708号)、単にこのような木粉を塩化ビニル系樹脂に配合するのみでは、特に木粉の配合量が多い場合や、薄肉の成形品を押出成形する場合に往々にして成形時の樹脂圧が変動し、一定の品質の成形品を安定に製造することが容易でない。そのため、均一微細な発泡セル構造と平滑な表面を有する成形品を、成形時の樹脂圧変動の少ない状態で製造することのできる、即ち加工性の良い木粉配合塩化ビニル系樹脂組成物の出現が待たれるようになった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記の状況に鑑み、本発明の目的は、均一微細な発泡セル構造と平滑な表面とを有し、しかも良好な機械的強度を保持し、かつ木質感に富み、窓枠などの建材や家具材に適する成形品を与えることのできる加工性の良い塩化ビニル系樹脂組成物を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題に対し、塩化ビニル系樹脂に、木粉とともに、加工助剤として、少なくとも異なる平均分子量を有する2種類のメチルメタクリレート系共重合体を併用して発泡成形することにより上記目的が達成されることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、(A)塩化ビニル系樹脂100重量部、(B1)メチルメタクリレート単位を60重量%以上含有し、共重合体のガラス転移点が50〜85℃で、かつ比粘度が1.5〜4.0であるメチルメタクリレート系高分子量共重合体5〜20重量部、(B2)メチルメタクリレート単位を60重量%以上含有し、共重合体のガラス転移点が50℃以上で、かつ比粘度が0.3〜1.0であるメチルメタクリレート系低分子量共重合体0.2〜10.0重量部、(C)熱分解型発泡剤0.1〜3.0重量部、(D)平均粒径50〜500μmの木粉20〜150重量部および(E)可塑剤1〜20重量部を含有してなる塩化ビニル系樹脂組成物を提供する。
上記塩化ビニル系樹脂組成物は、上記(A)、(B1)、(B2)、(C)、(D)および(E)成分の他に、さらに、(F)金属せっけん0.5〜10重量部および(G)ポリエチレンワックス0.1〜5.0重量部を含有することが好ましい。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明につき詳細に説明する。
本発明の組成物において(A)成分として使用される塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニルの単独重合体の他、塩化ビニル単位を50重量%以上、好ましくは70重量%以上含有する共重合体を含む。塩化ビニル共重合体の場合の共単量体としては、例えば、エチレン、プロピレンなどのオレフィン類;塩化アリル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、三フッ化塩化エチレンなどのハロゲン化オレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル類;イソブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;アリル−3−クロロ−2−オキシプロピルエーテル、アリルグリシジルエーテルなどのアリルエーテル類;アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メチルメタクリレート、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジエチル、無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸、そのエステルまたはその酸無水物類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル類;アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライドなどのアクリルアミド類;アリルアミン安息香酸塩、ジアリルジメチルアンモニウムクロライドなどのアリルアミンおよびその誘導体類などを挙げることができる。以上に例示した単量体は、共重合可能な単量体の一部に過ぎず、近畿化学協会ビニル部会編「ポリ塩化ビニル」日刊工業新聞社(1988年)75〜104ページに例示されている各種単量体が使用可能である。また、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、塩素化ポリエチレンなどの樹脂に、塩化ビニルまたは塩化ビニルと前記した共重合可能な単量体とをグラフト重合したような樹脂も含まれる。
【0007】
これらの塩化ビニル系樹脂は、懸濁重合、乳化重合、溶液重合、塊状重合など、従来から知られているいずれの製造法によって作られてもよい。塩化ビニル系樹脂の平均重合度はJIS K 6721規定の測定法で400〜1,500が好ましく、より好ましくは600〜1,100の範囲にあるものを好適に使用することができる。塩化ビニル系樹脂の平均重合度が400より小さいと、発泡倍率が上がりにくい傾向があり、逆に1,500より大きいと発泡セルに粗大なものが多く混在するおそれがある。
【0008】
本発明において(B1)成分および(B2)成分として、メチルメタクリレート単位を60重量%以上含有し、共重合体のガラス転移点がそれぞれ50〜85℃および50℃以上であるメチルメタクリレート系共重合体が用いられる。該共重合体の分子量の指標となる比粘度は、(B1)成分が1.5〜4.0であり、(B2)成分が0.3〜1.0である。(B1)成分として比粘度が1.5〜4.0の範囲である複数の重合体を組み合わせて用いても良いし、(B2)成分として比粘度が0.3〜1.0の範囲である複数の重合体を組み合わせて用いても良い。
メチルメタクリレートホモ重合体のガラス転移点は105℃であるので、(B1)成分および(B2)成分の共重合体を得るためには、メチルメタクリレートの共単量体としてこれよりガラス転移点が十分に低いホモ重合体を与える単量体を選定する必要がある。そのような単量体としては、メチルアクリレート(ホモ重合体のガラス転移点8℃)、エチルアクリレート(同−22℃)、n−プロピルアクリレート(同−52℃)、n−ブチルアクリレート(同−54℃)、イソブチルアクリレート(同−24℃)、n−オクチルアクリレート(同−65℃)、2−エチルヘキシルアクリレート(同−85℃)、n−ラウリルアクリレート(同15℃)、n−テトラデシルアクリレート(同20℃)、メトキシエチルアクリレート(同−85℃)、エトキシエチルアクリレート(同−50℃)、シクロヘキシルアクリレート(同15℃)、ベンジルアクリレート(同6℃)などのアクリレート類;n−アミルメタクリレート(同10℃)、n−オクチルメタクリレート(同−20℃)、n−デシルメタクリレート(同−65℃)、n−ラウリルメタクリレート(同−65℃)、n−セチルメタクリレート(同15℃)などのメタクリレート類;ブタジエン、イソプレンなどのジエン類などが挙げられる。これらの(メタ)アクリレートは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。特に、n−ブチルアクリレートが好ましい。
【0009】
また、(B1)成分および(B2)成分の共重合体は、メチルメタクリレート単量体単位を60重量%以上含有し、ガラス転移点が50〜85℃となる範囲であれば、メチルメタクリレートおよび上記の共単量体と共重合可能な単量体を第三の単量体単位として含有してもよい。このような共重合可能な単量体としては、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル系化合物;(メタ)アクリロニトリル、シアン化ビニリデンなどの不飽和ニトリル類;2−ヒドロキシエチルフマレート、ヒドロキシブチルビニルエーテル、モノブチルマレエート、グリシジルメタクリレート、ブトキシエチルメタクリレートなどが挙げられる。
【0010】
(B1)成分および(B2)成分のメチルメタクリレート系共重合体の粒子構造は、一段階の重合反応で得られる、粒子内がほぼ均一なポリマー組成であってもよいし、いわゆるコア−シェル構造のように断層毎に異なる重合体組成であってもよい。
(B1)成分または(B2)成分のメチルメタクリレート系共重合体の粒子構造がコア−シェル粒子の場合、コアとシェルの重量比は1/1〜15/1であることが好ましく、コアとシェルのガラス転移点の差は50℃以下であることが好ましい。
(B1)成分のメチルメタクリレート系高分子量共重合体のガラス転移点は50〜85℃であることが必要で、60〜83℃であることが好ましい。(B1)成分のガラス転移点が50℃未満であると夏期に倉庫などで保存中に粉末どうしが固着(ブロッキング)を起し易く、また、(B1)成分のガラス転移点が85℃より高いと成形品が発泡不良を起し易い。本発明において、ガラス転移点の測定は示差熱分析計で行なう。(B2)成分のメチルメタクリレート系低分子量共重合体のガラス転移点は50℃以上であることが必要で、60〜90℃であることが好ましい。(B2)成分のガラス転移点が50℃未満であると夏期にプロッキングを起こし易い。
【0011】
(B1)成分として用いられるメチルメタクリレート系高分子量共重合体は、その0.2grを溶解したクロロホルム溶液100mlの25℃における比粘度が1.5〜4.0であることが必要で、1.8〜3.7の範囲であることが好ましい。上記比粘度の値が1.5未満の場合は成形品の表面が荒れ、かつ、発泡倍率が上がらない。一方、上記比粘度の値が4.0を越えると均一溶融化に時間を要する。比粘度の調節には、重合反応温度の選定、t−ドデシルメルカプタン、四塩化炭素などの連鎖移動剤の使用などの一般的な方法を採用することができる。
【0012】
上記の比粘度の値は(B1)成分のメチルメタクリレート系高分子量共重合体の分子量の指標になるものである。すなわち、上記比粘度の範囲1.5〜4.0は、ミックスゲルカラムを用い、テトラヒドロフランを溶離液とする一定条件の下での高速液体クロマトグラフィで測定し、標準ポリスチレンに換算して求めた重量平均分子量Mwとして、約3,700,000〜約10,270,000に相当する。
後記実施例において調製した8種の高分子量のメチルメタクリレート共重合体A〜Hの比粘度と上記GPC法による標準ポリスチレン換算重量平均分子量との関係を図示すると図1に示すようになり、比粘度yと重量平均分子量xとは下記式
y=3.97×10-7x+0.02
で表わされる。
【0013】
(B1)成分のメチルメタクリレート系高分子量共重合体は、木粉を塩化ビニル系樹脂に均一に分散させ、発泡セルの膜強度を保持して破壊され難くする作用を有する。
本願発明のように比較的多量の木粉が配合された塩化ビニル系樹脂組成物を用いて発泡度の高い成形品を得るには、上記のような特定の組成と特定の高分子量を有するメチルメタクリレート系共重合体を配合することと、成形加工時における溶融流動性をより良くするために(B2)成分である特定の低分子量を有するメチルメタクリレート系共重合体を特定量添加することが肝要である。(B2)成分の添加により、成形時の樹脂圧の変動が少なくなり、均一な発泡セルと平滑な表面を有する成形品を、安定に操業性よく製造することが可能になる。
【0014】
本発明における(B1)成分の配合量は、前記(A)成分の塩化ビニル系樹脂100重量部当り5〜20重量部が必要で、好ましくは6〜15重量部、より好ましくは7重量部以上で10重量部未満である。(B1)成分の配合量が5重量部未満であると、発泡時の膜強度の保持力が弱くなって発泡セルが破壊され易い。また、配合量が20重量部を越えると溶融粘度が高くなり、発熱が大きくなって樹脂の熱劣化を起こし易くなったり、発泡セルの大きさが不均一になり易い。
【0015】
(B2)成分として用いられるメチルメタクリレート系低分子量共重合体は、その0.2grを溶解したクロロホルム溶液100mlの25℃における比粘度が0.3〜1.0であることが必要で、0.5〜0.8の範囲であることが好ましい。上記比粘度の値が0.3未満の場合は高発泡倍率時のセルの保持性が悪く、破壊されやすい。一方、上記比粘度の値が1.0を越えると、木粉の配合量が多い場合に成形時の樹脂圧が高低に変動しやすく、そのため成形品の表面が荒れる傾向がある。比粘度の調節には、重合反応温度の選定、t−ドデシルメルカプタン、四塩化炭素などの連鎖移動剤の使用などの一般的な方法を採用することができる。
【0016】
上記比粘度は(B2)成分のメチルメタクリレート系低分子量共重合体の分子量の指標になるものである。すなわち、上記比粘度の範囲0.3〜1.0は、上記のミックスゲルカラムを用いて、テトラヒドロフランを溶離液とする一定条件の下での高速液体クロマトグラフィで、標準ポリスチレンに換算して求めた重量平均分子量Mwとしては約520,000〜約2,400,000に相当する。後記実施例における2種の低分子量のメチルメタクリレート系共重合体IおよびKの比粘度と上記GPC法による標準ポリスチレン換算重量平均分子量との関係を図1に示すように上記式の関係を満足する。
本発明における(B2)成分の配合量は、前記(A)成分の塩化ビニル系樹脂100重量部当り0.2〜10.0重量部が必要で、好ましくは2〜7重量部である。(B2)成分の配合量が0.2重量部未満であると、成形時の樹脂圧が変動しやすく、そのため発泡むらが起きやすくなる。また、(B2)成分の配合量が5.0重量部を越えると、成形品の表面が荒れる傾向がある。
【0017】
本発明組成物の(C)成分である熱分解型発泡剤としては、熱分解型有機発泡剤または/および熱分解型無機発泡剤が用いられる。前者の例としては、N,N′−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N′−ジメチル−N,N′−ジニトロソテレフタルアミドなどのニトロソ化合物;アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物;ベンゼンスルホニルヒドラジド、p,p′−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、トルエンスルホニルヒドラジドなどのスルホニルヒドラジド類なとが挙げられる。また、後者の例としては、重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウムなどが挙げられる。本発明には、上記の有機または/および無機の熱分解型発泡剤の群から選択される1種または2種以上を用いることができる。
【0018】
本発明においては、ブタン、塩化メチル、トリクロロフルオロメタン、トリフルオロメタン、石油エーテルなどの低沸点の有機化合物を加熱、揮発させて発泡剤に用いることは不適当である。発泡セルが粗くなって成形品が釘止めやビス止めが利き難くなり、建材に向かないおそれがあるからである。
本発明における(C)成分の熱分解型発泡剤の配合量は、(A)成分の塩化ビニル系樹脂100重量部当たり0.1〜3.0重量部が必要で、好ましくは0.5〜1.5重量部である。(C)成分の配合量が0.1重量部未満であると発泡倍率が小さくて得られる成形品の内部が木質感に欠ける傾向があり、逆に3.0重量部より多いと成形品表面が荒れたり、表面硬度が低下する傾向がある。
【0019】
本発明における(D)成分として、平均粒径50〜500μmの木粉が、塩化ビニル系樹脂(A)100重量部あたり20〜150重量部、好ましくは25〜120重量部、更に好ましくは30〜100重量部用いられる。該木粉の配合量が20重量部より少ないと成形品に木質感を発現しにくく、また、150重量部を越えると成形品が脆弱なものとなる。本発明においては、前記(B1)成分および(B2)成分を配合することにより、(E)成分の可塑剤の作用とあいまって木粉を20重量部より多量に配合しても塩化ビニル系樹脂に馴染みがよく、かつ均一に分散し得てしかも溶融樹脂の流動性が向上するので、発泡成形により、均一微細な発泡セルと平滑な表面とを有する、しかも木質感のある成形品を加工性良く製造できる。この溶融流動性の良さは、木粉配合が多い場合や薄肉成形品を押出成形する場合でも、溶融樹脂の圧力変動を少なくし、平滑な表面を有する成形品の製造を可能ならしめる。また、その上に、(F)成分と(G)成分を組合せて配合すると一層加工性がよくなり、得られる成形品の機械的強度も向上することができる。
【0020】
本発明に用いられる木粉の樹種は特に限定されず、杉、ツガ、ラワンなどの針葉樹や広葉樹の木材片、鉋屑、鋸屑などの木材を用い得る。これら木材から本発明の(D)成分を得るには、例えば、該木材を粉砕機により平均粒径が500μm以下の比較的丸味を帯びた木粉とするのが好ましい。
本発明に用いられる木粉は、特開平5−177610号公報および特開平5−261708号公報に開示されているような硬い小粒子を表面に付着させた木粉であってもよい。硬い小粒子としては、硬度が木粉より大きく、平均粒径が木粉の平均粒径より小さい粒子が用いられる。具体的には、例えば、金属、金属酸化物および金属塩、無機化合物ならびにプラスチック粒子などが挙げられる。好ましい小粒子は酸化チタン、ニッケル、炭酸カルシウム、シリカ、マイカなどの無機系または金属系粒子である。硬い小粒子が木粉表面に付着する態様は、木粉への硬い小粒子の喰い込みを含む抱き込み結合、喰い込み結合された複数の硬い小粒子の相互による挟み込み結合などの、硬い小粒子の木粉表面部に対する押しつけ外力による付着であってもよいし、あるいは木粉に接着剤により硬い小粒子を付着させてもよい。この場合は上記の木粉を硬い小粒子1〜50重量%と共にボールミルなどに仕込み、窒素雰囲気下など粉塵爆発が防止された条件下に処理する。
本発明に用いられる(D)成分の平均粒径は50〜500μm、好ましくは30〜100μmである。ここに平均粒径とは、粉末を篩分析して目開きに対する累積重量%曲線を得、その50重量%に該当する目開きの値の読みをいう。(D)成分の平均粒径が50μmより小さいと嵩比重が小さくなって組成物調製のための混合操作性が悪くなり、また500μmより大きいと成形品表面が荒れ、かつ発泡倍率が低下する。
(D)成分中の水分は10重量%以下であることが好ましく、より好ましくは5重量%以下である。
【0021】
(E)成分の可塑剤は、前記(B1)成分および(B2)成分の2種類のメチルメタクリレート系共重合体とあいまって、塩化ビニル系樹脂100重量部に対し40重量部以上の比較的多量の木粉が配合される場合でも木粉が均一に分散し、溶融樹脂の流動性を向上し、成形時の樹脂圧の変動を減少せしめ安定した加工操業を可能とさせ、ひいては、均一微細な発泡セルを有する木質感に富む、表面の平滑な成形品の提供を可能とさせるのである。可塑剤(E)の量は、塩化ビニル系樹脂(A)100重量部あたり0.1〜20重量部、好ましくは3〜10重量部である。可塑剤(E)が0.1重量部未満では、上記の効果を得るのに十分な溶融流動性を付与することができずに、発泡体表面が鮫肌状に荒れ易い。逆に、20重量部を超えると、発泡セルの保持能が落ち、また、成形品の剛性が低下し、建材や家具材には不向となってしまう。
【0022】
(E)成分の可塑剤としては特に制限はなく、従来塩化ビニル系樹脂の加工に可塑剤として慣用されているもの、例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−(2−エチルヘキシル)フタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジフェニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジトリデシルフタレート、ジウンデシルフタレート、ジヘプチルフタレート、ベンジルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジノニルフタレート、ジシクロヘキシルフタレートなどのフタル酸誘導体;ジメチルイソフタレート、ジ−(2−エチルヘキシル)イソフタレート、ジイソオクチルイソフタレートなどのイソフタル酸誘導体;ジ−(2−エチルヘキシル)テトラヒドロフタレート、ジ−n−オクチルテトラヒドロフタレート、ジイソデシルテトラヒドロフタレートなどのテトラヒドロフタル酸誘導体、ジ−n−ブチルアジペート、ジ(2−エチルヘキシル)アジペート、ジイソデシルアジペート、ジイソノニルアジペートなどのアジピン酸誘導体;ジ−(2−エチルヘキシル)アゼレート、ジイソオクチルアゼレート、ジ−n−ヘキシルアゼレートなどのアゼライン酸誘導体;ジ−n−ブチルセバケート、ジ−(2−エチルヘキシル)セバケートなどのセバシン酸誘導体;ジ−n−ブチルマレート、ジメチルマレート、ジエチルマレート、ジ−(2−エチルヘキシル)マレートなどのマレイン酸誘導体;ジ−n−ブチルフマレート、ジ−(2−エチルヘキシル)フマレートなどのフマル酸誘導体;トリ−(2−エチルヘキシル)トリメリテート、トリ−n−オクチルトリメリテート、トリイソデシルトリメリテート、トリイソオクチルトリメリテート、トリ−n−ヘキシルトリメリテート、トリイソノニルトリメリテートなどのトリメリット酸誘導体;テトラ−(2−エチルヘキシル)ピロメリテート、テトラ−n−オクチルピロメリテートなどのピロメリット酸誘導体;トリエチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリ−(2−エチルヘキシル)シトレートなどのクエン酸誘導体;モノメチルイタコネート、モノブチルイタコネート、ジメチルイタコネート、ジエチルイタコネート、ジブチルイタコネート、ジ−(2−エチルヘキシル)イタコネートなどのイタコン酸誘導体;ブチルオレート、グリセリルモノオレート、ジエチレングリコールモノオレートなどのオレイン酸誘導体;メチルアセチルリシノレート、ブチルアセチルリシノレート、グリセリルモノリシノレート、ジエチレングリコールモノリシノレートなどのリシノール酸誘導体;n−ブチルステアレート、グリセリンモノステアレート、ジエチレングリコールジステアレートなどのステアリン酸誘導体;ジエチレングリコールモノラウレート、ジエチレングリコールジペラルゴネート、ペンタエリスリトール脂肪酸エステルなどのその他の脂肪酸誘導体;トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ−(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(クロロエチル)ホスフェートなどのリン酸誘導体;ジエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ−(2−エチルブチレート)、トリエチレングリコールジ−(2−エチルヘキソエート)、ジブチルメチレンビスチオグリコレートなどのグリコール誘導体;グリセロールモノアセテート、グリセロールトリアセテート、グリセロールトリブチレートなどのグリセリン誘導体;エポキシ化大豆油、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジイソデシル、エポキシトリグリセライド、エポキシ化オレイン酸オクチル、エポキシ化オレイン酸デシルなどのエポキシ誘導体;アジピン酸系ポリエステル、セバシン酸系ポリエステル、フタル酸系ポリエステルなどのポリエステル系可塑剤などのいわゆる一次可塑剤;ならびに塩素化パラフィン、トリエチレングリコールジカプリレートなどのグリコールの脂肪酸エステル、ブチルエポキシステアレート、フェニルオレエート、ジヒドロアビエチン酸メチルなどの二次可塑剤が例示される。可塑剤は一種用いても、または二種以上を組合せ用いてもよい。しかし、二次可塑剤を用いる場合は、それと等重量以上の一次可塑剤を併用することが好ましい。
【0023】
本発明組成物には、上記の各成分に加えて、通常の塩化ビニル系樹脂の加工時に用いられる熱安定剤や滑剤のほか、紫外線吸収剤、耐衝撃強化剤、顔料、充填剤、帯電防止剤などが適宜添加される。
滑剤の具体例としては、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ストロンチウム、ステアリン酸バリウム、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸バリウム、2−エチルヘキソイン酸バリウム、リシノール酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、ラウリン酸カドミウム、ステアリン酸鉛、二塩基性フタル酸鉛などの金属せっけん類;n−ブチルステアレート、メチルヒドロキシステアレート、多価アルコール脂肪酸エステル、エステル系ワックスなどの脂肪酸エステル類;ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸などの脂肪酸類;ステアロアミド、オキシステアロアミド、オレイルアミド、ベヘンアミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド、N,N′−ジステアリルコハク酸アミドなどのアミド化合物;三塩基性硫酸塩、塩基性亜硫酸鉛、二塩基性亜リン酸鉛などの無機酸鉛類などが挙げられる。
特に、本発明の組成物に(F)成分として上記金属せっけんを塩化ビニル系樹脂100重量部当り0.5〜10重量部添加すると加工性が良くなるので好ましく、1.5〜7重量部添加することがより好ましい。これに加えて、さらに(G)成分としてポリエチレンワックス0.1〜5重量部添加することは一層加工性を向上し、かつ成形品の機械的強度が上がるので好ましく、0.3〜2重量部添加することがより好ましい。
【0024】
本発明組成物を調製するには、通常、先ず(C)成分の熱分解型発泡剤を除く(A)、(B1)、(B2)、(D)および(E)成分などを一括してヘンシェルミキサーなどの混合機に投入して、好ましくは激しく攪拌することによって、混合しつつ120〜160℃に昇温する。この混合の過程で木粉に吸収されている水分を揮散させる。上記温度に到達したら混合物をクーリングミキサーに移して温度が110〜80℃まで下がった時点で(C)成分の熱分解型発泡剤を添加してから混合しつつ冷却する。通常50〜60℃程度に温度を下げる。取出された粉末状の混合物をそのまま成形用のコンパウンドとすることができるが、通常、次いで、ペレット化する。ペレット作成の好ましい方法としては、二軸押出機を用い、150〜170℃にて、かつベント孔から木粉中の残留水分を排出しつつペレットを製造する方法が挙げられる。
【0025】
上記の本発明組成物の調製方法において、ヘンシェルミキサーなどでの当初の混合時に発泡剤を除く全成分を一括投入して混合することにより、嵩比重が大きく、また顔料などの添加剤が均一に分散した混合物を得ることができる。
本発明組成物を用いて、天然木材に似た塩化ビニル系樹脂成形品を得るための成形方法としては、特に制限はないが上記の粉末状コンパウンドまたはペレットを通常押出機にかけて成形する。押出成形の条件としては、一般の塩化ビニル系樹脂の押出成形と同様な条件が採られる。本発明組成物は加工性が良いので、木粉の多い配合の場合や薄肉成形品の成形の場合のように、成形ダイ内で溶融組成物が摩擦変動を受けやすい条件下でも、樹脂圧の変動が少なく、安定した加工操業を行うことができる。
【0026】
かくして、得られる押出発泡成形品は均一に分布した微細なセルを有する。通常、セルの平均直径は100μm以下である。また、押出発泡成形品の発泡倍率は1.8〜2.5であることが好ましい。発泡倍率が低過ぎると木質感に乏しいものとなり、逆に、発泡倍率が高過ぎると機械的強度が低下する。押出成形品の形態は、建材や家具材などの用途に応じたものとすればよく、一般に板状、シート状、角柱状、円柱状、異形などが挙げられる。
【0027】
下記(1)に記載される本発明の塩化ビニル系樹脂組成物の好ましい実施態様を下記(2)以下に示す。
(1)(A)塩化ビニル系樹脂100重量部、(B1)メチルメタクリレート単位を60重量%以上含有し、共重合体のガラス転移点が50〜85℃で、かつ比粘度が1.5〜4.0であるメチルメタクレート系共重合体7〜30重量部、(B2)メチルメタクリレート単位を60重量%以上含有し、共重合体のガラス転移点が50℃以上で、かつ比粘度が0.3〜1.0であるメチルメタクリレート系低分子量共重合体0.2〜5.0重量部、(C)熱分解型発泡剤0.1〜3.0重量部、(D)平均粒径50〜500μmの木粉20〜150重量部、および、(E)可塑剤1〜20重量部を含有してなる塩化ビニル系樹脂組成物。
【0028】
(2)塩化ビニル系樹脂(A)の平均重合度が400〜1,500である上記(1)に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
(3)メチルメタクリレート系高分子量共重合体(B1)の比粘度が1.8〜3.7である上記(1)または(2)に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
(4)メチルメタクリレート系高分子量共重合体(B1)のガラス転移点が60〜75℃である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
(5)メチルメタクリレート系低分子量共重合体(B2)の比粘度が0.5〜0.8である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
(6)メチルメタクリレート系低分子量共重合体(B2)のガラス転移温度が60〜90℃である上記(1)〜(5)のいずれかに記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
(7)平均粒径50〜500μmの木粉(D)の含有量が25〜120重量部である上記(1)〜(6)のいずれかに記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
【0029】
(8)上記(A)、(B1)、(B2)、(C)、(D)および(E)成分の他に、さらに、塩化ビニル系樹脂(A)100重量部あたり(F)金属せっけん0.5〜10.0重量部および(G)ポリエチレンワックス0.1〜5.0重量部を含有する上記(1)〜(7)のいずれかに記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
(9)金属せっけん(F)の量が1.5〜7重量部である上記(8)に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
(10)ポリエチレンワックス(G)の量が0.3〜2重量部である上記(8)または(9)に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
【0030】
【実施例】
次に実施例および比較例を挙げて、本発明の塩化ビニル系樹脂組成物について具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、部数および%は重量基準である。
メチルメタクリレート系共重合体A〜IおよびKを下記製造例1〜10に記載の方法により調製した。なお、共重合体の特性は下記の方法により評価した。
【0031】
ガラス転移点
示差熱分析計(SEIKO SSC/520 DSC220)にて測定した。
比粘度
共重合体0.2grを溶解したクロロホルム溶液100mlの25℃における比粘度を求めた。
【0032】
重量平均分子量
重量平均分子量Mwは、下記条件下に高速液体クロマトグラフィーにより測定し、標準ポリスチレンに換算して求めた。
高速液体クロマトグラフィー:TOSOH HLC−8020(東ソー(株)製)
カラム:ミックスゲル TOSOH TSKgel GMHHR−H(20)×2本(7.8mmID×30.0cmL)
溶離液:THF(和光純薬(株)製、GR級)
流速:1.0ml/min
カラム温度:40℃
注入量:サンプル150μリットル、0.1重量%THF溶液、標準ポリスチレン50μリットル
検出器:示差屈折計(35℃)
標準ポリスチレン:東ソー(株)製
F2000Mw2.0600×107 (0.025重量%THF溶液)
F700 6.7700×106 (0.1重量%THF溶液)
F128 1.0900×106 (0.1重量%THF溶液)
F20 1.9000×105 (0.1重量%THF溶液)
F4 3.7900×104 (0.1重量%THF溶液)
A5000 5.9700×103 (0.1重量%THF溶液)
【0033】
凝固性
凝固で得られた粉体50gにカーボン0.05gを添加し、ロータップ30分の篩分析を行い、下記3等級で評価する。
【0034】
凝固粉体の固着性
内径が直径77mm、長さ75mmの円筒に凝固粉体を自然落下にて充満し、その上に荷重を1分間かけて取り除き、容器を横に倒して1分間以内に粉体のまとまりが崩れるか否かを観察する。崩れる場合は順次荷重を増し、粉体が崩れずに固着する荷重を調べ、下記3等級で評価する。
A:1000gの荷重でも固着しない。
B:500〜1000gの荷重で固着する。
C:500gより小さな荷重で固着する。
【0035】
メチルメタクリレート系共重合体製造例1
ステンレス製反応器に水150部を入れて脱気後、メチルメタクリレート85部、n−ブチルアクリレート15部、炭素数12〜18のアルキル基を有するソジウムアルキルサルフェート1部および過硫酸カリウム0.1部を添加し、攪拌しつつ重合温度55℃にて乳化重合を行い、少量サンプリングした反応液の固形分濃度により重合率91%を確認してから反応を終了させ、ラテックスを得た。得られたラテックスを50℃の1重量%硫酸アルミニウム水溶液に攪拌下で添加し、更に90℃に加熱して塩析、凝固し、脱水、洗浄してから乾燥して共重合体Aを得た。共重合体Aの組成、ガラス転移点、比粘度、重量平均分子量、凝固性および固着性を表1に示す。
【0036】
メチルメタクリレート系共重合体製造例2
メチルメタクリレートを80部とし、n−ブチルアクリレート15部の代りにエチルアクリレート20部としたほかはメチルメタクリレート系共重合体製造例1と同様に行い、共重合体Bを得た。共重合体Bの組成などの試験結果を同様に表1に示す。
【0037】
メチルメタクリレート系共重合体製造例3
ステンレス製容器に水150部を入れて脱気し、炭素数12〜18のアルキル基を有するソジウムアルキルサルフェート0.8部、ラウリルアルコール0.8部、ラウロイルパーオキサイド0.2部、メチルメタクリレート60部、メチルアクリレート30部およびスチレン10部を仕込んで室温下で30分混合後ホモジナイザーで均質処理してステンレス製反応器に移送した。反応器を昇温して反応温度を55℃に維持して重合反応を行い、少量サンプリングした反応液の固形分濃度により重合率90%を確認してから反応を終え、ラテックスを得た。メチルメタクリレート系共重合体製造例1と同様に塩析、洗浄、乾燥して樹脂Cを得た。樹脂Cの組成などの試験結果を表1に示す。
【0038】
メチルメタクリレート系共重合体製造例4
メチルメタクリレートを90部とし、n−ブチルアクリレート15部の代りにエチルアクリレート10部としたほかはメチルメタクリレート系共重合体製造例1と同様に行い、共重合体Dを得た。共重合体Dの組成などの試験結果を同様に表1に示す。
【0039】
メチルメタクリレート系共重合体製造例5
メチルメタクリレートを65部とし、メチルアクリレートとスチレンの合計40部の代りに2−エチルヘキシルアクリレート35部とし、t−ドデシルメルカプタン0.3部を添加したほかはメチルメタクリレート系共重合体製造例3と同様に行い、共重合体Eを得た。共重合体Eの組成などの試験結果を同様に表1に示す。
【0040】
メチルメタクリレート系共重合体製造例6
メチルメタクリレートを40部とし、n−ブチルアクリレート15部の代りにメチルアクリレート60部としたほかはメチルメタクリレート系共重合体製造例1と同様に行い、共重合体Fを得た。共重合体Fの組成などの試験結果を同様に表1に示す。
【0041】
メチルメタクリレート系共重合体製造例7
メチルメタクリレートを70部とし、n−ブチルアクリレート15部の代りにエチルアクリレート30部とし、t−ドデシルメルカプタン0.3部を添加したほかはメチルメタクリレート系共重合体製造例1と同様に行い、共重合体Gを得た。共重合体Gの組成などの試験結果を同様に表1に示す。
【0042】
メチルメタクリレート系共重合体製造例8
n−ブチルアクリレートに替えてエチルアクリレートを用いたほかはメチルメタクリレート系共重合体製造例1と同様に行い、共重合体Hを得た。共重合体Hの組成などの試験結果を同様に表1に示す。
【0043】
メチルメタクリレート系共重合体製造例9
ステンレス製反応器に水150部を入れて脱気後、メチルメタクリレート75部、n−ブチルアクリレート25部、t−ドデシルメルカプタン0.5部、炭素数12〜18のアルキル基を有するソジウムアルキルサルフェート1部および過硫酸カリウム0.1部を添加し、攪拌しつつ重合温度55℃にて乳化重合を行い、少量サンプリングした反応液の固形分濃度により重合率91%を確認してから反応を終了させ、ラテックスを得た。
得られたラテックスを50℃の1重量%硫酸アルミニウム水溶液に攪拌下で添加し、更に90℃に加熱して塩析、凝固し、脱水、洗浄してから乾燥して共重合体Iを得た。共重合体Iの組成、ガラス転移点、比粘度、重量平均分子量、凝固性および固着性を表1に示す。
【0044】
メチルメタクリレート系共重合体製造例10
メチルメタクリレートを90部とし、メチルアクリレートとスチレンの合計40部の代りに2−エチルヘキシルアクリレート10部とし、t−ドデシルメルカプタン0.33部を添加したほかはメチルメタクリレート系共重合体製造例3と同様に行い、共重合体Kを得た。共重合体Kの組成などの試験結果を同様に表1に示す。
【0045】
発泡成形品の特性を下記の方法により調べた。
1)発泡セル状態
成形品の切断面を光学顕微鏡にて観察し、下記の4等級で評価する。
A:セルの径が100μm以下の微細でかつ均一な状態である。
B:破壊されて粗くなったセルが散見される。
C:破壊されて粗くなったセルが多い。
D:破壊されて粗くなったセルが大部分である。
2)成形品表面性状
成形品の表面から目視および指触し、下記の4等級で評価する。
A:滑らか
B:若干鮫肌状
C:鮫肌
D:粒状突起が多い。
【0046】
3)成形時の樹脂圧
シリンダー径40mmの一軸押出機で厚み1mm、幅40mmの薄肉ベルトを成形する際の、ダイス先端より15mm手前に設置した圧力計(Dyniso社製)を読む。圧が変動する場合は、その変動する圧力領域を読む。
4)真比重および成形品比重
JIS K 7112による水中置換法で測定。
5)成形品発泡倍率
上記測定による比重の値を用い、下式により求める。
発泡倍率=真比重/成形品比重
6)抗張力
JIS K 7113の1号試験片で引張速度10mm/minで測定する。
【0047】
実施例1〜5、比較例1〜12
表2に示す種類と量の各成分をヘンシェルミキサーにて次の要領でブレンドした。塩化ビニル樹脂、メチルメタクリレート系高分子量共重合体、メチルメタクリレート系低分子量共重合体(ただし、比較例11ではメチルメタクリレート系低分子量共重合体を添加しない)、木粉、可塑剤、熱安定剤、滑剤、充填剤および顔料を仕込んで混合しつつ水蒸気を揮発させた。温度が上昇して140℃になったら混合物をクーリングミキサーに移して混合し、100℃に温度が低下した時点で発泡剤を添加し、60℃まで温度を下げた。ただし比較例8では発泡剤を押出成形時に押出機に注入した。
得られた粉末状の混合物は、シリンダー径65mmの一軸押出機を用いて下記条件にてペレットにした。なお、ベント孔から木粉に残る水分を揮発させた。
【0048】
こうして得られたペレットを、シリンダー径40mmの一軸押出機により下記条件にて押出発泡成形した。なお、比較例8においては所定量のトリクロロフルオロメタンを高圧ポンプでシリンダーのベント孔から圧入した。成形品の特性を表2に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
注
MMA :メチルメタクリレート
MA :メチルアクリレート
EA :エチルアクリレート
n−BA :n−ブチルアクリレート
2−EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
ST :スチレン
【0051】
【表2】
【0052】
注
*1 ZEST700L、新第一塩ビ(株)製、塩化ビニル樹脂、平均重合度680
*2 メタブレンP−551A、三菱レーヨン(株)製、発明者らの分析では、メチルメタクリレート単位約85%およびn−ブチルアクリレート約15%の共重合体で(測定法は重水素化クロロホルム溶媒を使用したプロトンNMRによる)、ガラス転移点約81℃であり、かつ比粘度は0.74、Mwは1,700,000であった。
*3 酸化チタン粒付着木粉、ミサワテクノ(株)製、E60−T5−3、酸化チタン含有量5重量%、平均粒径60μm、含水率5%
*4 セルユント、(株)シマダ商会製、木粉、平均粒径80μm、水分5重量%
*5 ACPE6A、アライドケミカル社製
*6 三塩基性硫酸鉛/ステアリン酸鉛複合熱安定剤
*7 炭酸カルシウムCCR、白石カルシウム(株)製、平均粒径0.08μm
*8 カーボンブラック(TPH0012、東洋インキ製造株式会社製)/縮合アゾレッド(TXH4360、同社製)/ビスアゾイエロー(TXH2110、同社製)複合顔料
【0053】
厚み1mmの薄肉の板を押出成形して各種配合の組成物を比較評価した。本発明の要件を備えた組成物を用いて成形した実施例1〜5では、発泡セル状態および表面性状が良好で十分な発泡倍率を有する成形品を、成形時の樹脂圧が比較的低い状態でかつ圧力変動もなく、即ち加工性良く製造された。殊に滑剤としてステアリン酸鉛およびポリエチレンワックスを併用すると発泡倍率と抗張力が一層優れた成形品が得られた(実施例1および4)。
しかし、メチルメタクリレート系高分子量共重合体のガラス転移点が85℃を越える共重合体Dを用いた比較例1では破壊されて粗くなったセルが多くて若干鮫肌状の表面を有する発泡体が得られ、逆に、ガラス転移点が50℃未満の共重合体EまたはFを用いた比較例2および比較例3では発泡セル状態は良好であったが発泡体の表面は鮫肌状で不満足の結果となった。
メチルメタクリレート系高分子量共重合体の比粘度が規定より小さい共重合体EまたはGを用いた比較例2および比較例4も鮫肌状の発泡体表面を与えかつ、発泡倍率が低い。逆に、比粘度が規定より大きい共重合体Hを用いた比較例5は発泡体のセル状態がやや粗く、表面が粗く、発泡倍率も劣る結果を与えた。
【0054】
メチルメタクリレート系高分子量共重合体の配合部数が規定より小さい比較例6や、規定より大きい比較例7では、共にセル状態が粗く、かつ表面が荒れた成形品が得られた。
発泡剤として低沸点の有機化合物を用いた比較例8では発泡セルは破壊されて粗くなったものが多く、成形品表面も鮫肌状に荒れた。
(E)成分の可塑剤を欠く配合は表面が鮫肌状に荒れた成形品を与えた(比較例9)。
メチルメタクリレート系低分子量共重合体の比粘度が規定より大きいと、成形時の樹脂圧が変動して加工の安定性に欠ける(比較例10)。また、メチルメタクリレート系低分子量共重合体を添加しない比較例11は発泡セルの殆どが破壊された結果を与えた。可塑剤が多過ぎるとセルの保持が悪くなってセル状態が悪化し発泡倍率も低くなり、抗張力が低下する(比較例12)。
【0055】
【発明の効果】
本発明組成物を用いることにより、薄肉の成形品の押し出し成形をしても均一微細な発泡セル構造と平滑な表面とを有し、しかも木質感に富んだ、建材や家具材に適する塩化ビニル系樹脂成形品を加工性良く安定に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で使用するメチルメタクリレート系共重合体の比粘度yとGPC法による標準ポリスチレン換算重量平均分子量xとの関係を表わすグラフである。
Claims (2)
- (A)塩化ビニル系樹脂100重量部、(B1)メチルメタクリレート単位を60重量%以上含有し、共重合体のガラス転移点が50〜85℃で、かつ比粘度が1.5〜4.0であるメチルメタクリレート系高分子量共重合体5〜20重量部、(B2)メチルメタクリレート単位を60重量%以上含有し、共重合体のガラス転移点が50℃以上で、かつ比粘度が0.3〜1.0であるメチルメタクリレート系低分子量共重合体0.2〜10.0重量部、(C)熱分解型発泡剤0.1〜3.0重量部、(D)平均粒径50〜500μmの木粉20〜150重量部および(E)可塑剤1〜20重量部を含有してなる塩化ビニル系樹脂組成物。
- さらに、(F)金属せっけん0.5〜10.0重量部および(G)ポリエチレンワックス0.1〜5.0重量部を含有してなる請求項1記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
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