JP3725268B2 - 単結晶の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、昇華再結晶法あるいは化学反応による方法(CVD(化学的気相蒸着)等)等を用いて原料ガスを種結晶に供給することにより、種結晶上に炭化珪素等の単結晶を成長させる方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体素子の基板等に使用される炭化珪素(SiC)単結晶の製造方法として、昇華再結晶法が広く採用されている。昇華再結晶法では、反応容器として、通常、図5に示す黒鉛製ルツボ1が用いられ、該ルツボ1の底部にSiC原料粉末2を、原料粉末2に対向するルツボ1の蓋体12に種結晶3を固定して加熱し、原料粉末2の昇華ガスを種結晶3上で再結晶させることにより単結晶を成長させている。
【0003】
昇華再結晶法において成長に関与する気相種としては、Si、SiC2 、Si2 C等が挙げられる。これらの気相種は平衡蒸気圧がそれぞれ異なり、また、成長温度によってもその割合が変化する。従って、欠陥が少ない均質な高品質単結晶を得ようとした場合、単結晶成長中の温度変動、Si/C比の揺らぎや、ルツボ1表面が荒らされることによる黒鉛微粒子の混入を防いだ安定した条件下で結晶成長を行うことが重要である。
【0004】
ところが、上記従来の方法により、黒鉛製のルツボ1中で単結晶を成長させると、単結晶成長中に、(i)種結晶3近傍の上記ルツボ1側壁にSiC多結晶が堆積すること、および(ii)SiまたはSiを含む気相種とルツボ材料である炭素(C)が反応することから、温度分布やSi/C比が変動しやすく、これを起因とするSi液滴の生成、黒鉛微粒子や金属不純物の単結晶への混入を避けることが困難であった。これら混入物は各種欠陥を誘発する原因となり、欠陥の少ない高品質な単結晶の製造を困難にしていた。
【0005】
一方、黒鉛以外の材質の反応容器を用いた例としては、タンタル製ルツボを使用してSiC単結晶を成長させた例が報告されている。(A.O.Konstantinov and P.A.Ivanov,Inst.Phys.Conf.Ser.No137(1994)37−40)。しかしながら、この場合も、容器側壁へ多結晶が堆積することを防止することはできず、また、Cを含む気相種が反応容器のタンタルと反応して炭化タンタルとなり、Si/C比の変動の原因となることが予想される。しかも、タンタルは黒鉛に比較して非常に高価であるため、製造コストが大幅に増加する不具合がある。
【0006】
特開平6−333830号公報、特開平7−237999号公報には、黒鉛製ルツボ内に設置した種結晶近傍に珪素や炭化珪素粉末を充填した状態で結晶成長を行うことが記載されている。また、特開平5−306199号公報には、炭化珪素焼結体を生成させ昇華させる焼結・昇華帯と、単結晶を成長させる結晶成長帯を備えた単結晶製造装置を用いることで、黒鉛製ルツボを使用することなく高品質な炭化珪素を昇華法で製造することが記載されている。
【0007】
しかしながら、これらの方法によって、Si/C比の変動を若干緩和することはできるものの、いずれも種結晶近傍の反応容器側壁に堆積するSiC多結晶の生成を抑制することは難しい。こうしたSiC多結晶の堆積は、成長温度の揺らぎ、Si/C比の変動につながり、欠陥の少ない高品質な単結晶を製造することは、依然として困難であった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、単結晶成長中の温度分布の変動、原料ガス中のSi/C比の変動を抑制し、欠陥の少ない高品質な単結晶を製造する方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記実情に鑑みて鋭意検討を行い、反応容器内に配した種結晶に製造しようとする単結晶の原料ガスを供給し、該種結晶上に単結晶を成長させる単結晶の製造方法において、上記反応容器内に、上記種結晶の成長表面と原料供給部の間に形成される単結晶成長空間を取り囲むように、下端が開口し上端面に上記種結晶が配置される開口部を有する筒状部材を設置し、上記種結晶を配置しない状態で、上記原料供給部から上記筒状部材内に原料ガスを供給して上記筒状部材の少なくとも内表面を製造しようとする単結晶と同種の多結晶にて予め被覆し、しかる後に上記筒状部材上端面の上記開口部内に上記種結晶を位置させてその成長表面が上記単結晶成長空間を臨むようにし、次いで上記単結晶成長空間に上記原料供給部から原料ガスを供給して上記種結晶上に単結晶を成長させることにより、上記課題を解決できることを見出した(請求項1)。
【0010】
本発明方法によれば、予め、単結晶が成長する空間の周囲に、製造しようとする単結晶と同種の多結晶を配置したので、反応容器の側壁に多種結晶が堆積することに起因する温度変動を減少することができる。また、反応容器の構成元素と原料ガスとの反応が抑制でき、それに起因する原料ガスの組成比の揺らぎや、単結晶への不純物の混入を防止できる。よって、反応容器の材質によらず、欠陥の少ない高品質な単結晶を製造することが可能であり、高価な反応容器を用いる必要がないので低コストにできる。
【0011】
上記多結晶を配置するには、具体的には、上記反応容器内に上記単結晶成長空間を取り囲むように設置される筒状部材の、単結晶成長過程において原料ガスが結晶化して多結晶の堆積が見込まれる表面を、予め製造しようとする単結晶と同種の多結晶で被覆すればよい。
【0012】
上記筒状部材の表面を多結晶で被覆する方法としては、昇華再結晶法またはCVD法を採用することができる。ここで、昇華再結晶法を用いる場合には、上記反応容器内に、予め単結晶の成長条件と同じ条件で原料ガスを供給して、上記筒状部材の、単結晶成長過程において原料ガスが結晶化して多結晶の堆積が見込まれる表面に上記多結晶を堆積させる。これにより上記表面が多結晶で被覆されるので、しかる後に、上記反応容器内に上記種結晶を設置して単結晶を成長させればよい。
【0013】
また、多結晶を配置することによる上記効果を得るために、上記筒状部材の被覆厚さは、1μm ないし5mmとすることが望ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明方法を炭化珪素(SiC)単結晶の製造を例にとって詳細に説明する。図1は、本発明で単結晶の製造に使用する装置の概略図で、図中、1は反応容器たる黒鉛製ルツボであり、該ルツボ1は容器体11と蓋体12からなっている。上記ルツボ1の容器体11底部にはSiC原料粉末2が収容してあり、この原料粉末2に対向する蓋体12の裏面中央部には、種結晶3が配置されている。上記種結晶3は、アチソン法や予め昇華再結晶法等により製造された単結晶であり、上記蓋体12と一体に設けた黒鉛製の台座13の形状に合わせて、例えば円板状に加工し、台座13に接着剤等を用いて接合してある。
【0015】
本発明方法では、上記ルツボ1を用いて昇華再結晶法でSiC単結晶を製造するに際し、上記種結晶3の成長表面31(その上に単結晶が成長する表面)と原料供給部である原料粉末2との間に形成される単結晶成長空間を取り囲むように、製造しようとする単結晶と同種の多結晶、すなわちSiC多結晶を配置し、その状態で単結晶を成長させる。あるいは、SiC多結晶の代わりにSiC焼結体またはSiC反応焼結体を配置することもできる。
【0016】
このうちSiC多結晶を配置するための具体例として、図1に示す方法では、上記種結晶3の下方に形成される単結晶成長空間を取り囲むように、予め内表面をSiC多結晶5で被覆した筒状部材4を設置している。該筒状部材4は、上端面の開口部内に上記種結晶3が位置するように上記ルツボ1内壁に固定され、その上端面および側面内表面、すなわち単結晶成長過程において原料ガスが結晶化して多結晶の堆積が見込まれる表面をSiC多結晶5で被覆している。なお、上記筒状部材4は下端が開口しており、原料粉末2の昇華ガスは、この下端開口より単結晶成長空間内に導入され、上記成長表面31上に到達するようになしてある。
【0017】
本発明は、内表面を予めSiC多結晶5で被覆した筒状部材4を設置することで、上記種結晶3の周囲および下方の、単結晶成長過程において原料ガスが結晶化して多結晶の堆積が見込まれる領域をSiC多結晶5で覆い、単結晶成長中の多結晶の堆積による不具合を解消するものである。ここで、単結晶成長過程において原料ガスが結晶化して多結晶の堆積が見込まれる領域を保護し、十分な効果を得るために、筒状部材4の大きさを以下のように設定するのがよい。
【0018】
図2(a)に示される断面図において、種結晶3の直径をS、筒状部材4上端面(内表面)の幅をW、筒状部材4側面(内表面)の高さをHとしたときに、下記(1)式、
θ=tan-1〔H/(W+S)〕・・・(1)
で定義される角度θが、20°≦θ≦80°、好ましくは30°≦θ≦60°となるように、上記幅W、高さHを設定する。ここで、角度θが上記範囲より小さいと、SiまたはSiを含む気相種とルツボ材料である黒鉛が反応してしまい、Si/C比に影響を与えて良好な成長は望めない。また、角度θが上記範囲より大きいと、SiC多結晶で被覆する領域が増加し、製造コストが上昇する。好ましくは、角度θが、30°≦θ≦60°の範囲となるようにするのがよい。
【0019】
さらに、筒状部材4上端面の幅Wは、0≦W≦5S、好ましくは0≦W≦2Sとなるようにすることが望ましい。幅Wが0であると、成長結晶の径の拡大が望めない。さらには周囲に配置されるSiC多結晶5と成長結晶がぶつかり、その結果接触箇所にストレスが堆積して成長結晶中に割れや歪みを生じさせるおそれがある。また、幅Wが上記範囲より大きい場合、SiC多結晶5で被覆する領域が増加し、コスト高となるため、製造上好ましくない。
【0020】
なお、筒状部材4の側壁が、図2(b)に示すように傾斜している場合、その高さHは、筒状部材4の上端面(内表面)より下端面に向けて下ろした垂線の高さとなる。
【0021】
上記筒状部材4の表面をSiC多結晶5で被覆する方法としては、昇華再結晶法またはCVD法等、公知の方法のいずれを採用してもよい。被覆方法として昇華再結晶法を用いる場合には、上記るつぼ1内に筒状部材4を設置し、種結晶3を設置しない状態で、実際の単結晶の成長条件と同じ条件で原料ガスを供給して、実際の単結晶製造時に多結晶の堆積が見込まれる上記筒状部材4の表面に、多結晶5を堆積させることができる。この場合、実際の単結晶製造時には、上記ルツボ1内に再度十分な量の原料粉末2を充填して、また、蓋体12を種結晶3の取付けられたものに取り換えることにより種結晶3上に単結晶を成長させる。
【0022】
上記筒状部材4は、必ずしも内表面の全面がSiC多結晶5で被覆されている必要はなく、少なくとも上記(1)式で表される角度θが上記範囲となるようにすればよい。また内表面以外の表面がSiC多結晶5で被覆されていてもよい。
【0023】
上記筒状部材4の被覆厚さは、1μm ないし5mmとすることが望ましい。被覆厚さが上記範囲より小さいと、成長のための温度、雰囲気圧等の設定(成長の初期)段階において、予め被覆したSiC多結晶が昇華してしまい、SiC多結晶で被覆した上記筒状部材4を設置する効果が望めない。また、被覆厚さが上記範囲より大きいと、被覆に用いるSiC多結晶の量が増加し、コスト高となるため望ましくない。
【0024】
予めSiC多結晶5で被覆した筒状部材4を設置する代わりに、図3(a)に示すように、ルツボ1の容器体11の上端縁を内方に屈曲してその端縁を種結晶3の外周に近接する位置まで延出し、該延出部を含む容器体11上端部11aの内表面をSiC多結晶5で被覆してもよい。このとき、上端部11aを容器体11と別部材で構成し、予めその内表面をSiC多結晶5で被覆した後、容器体11に組み付けるようにすれば、必要な部分のみ被覆することができ、コストが低減できる。このとき、上端部11a内表面の幅W、高さHが上記角度θで規定される範囲となるようにすることはもちろんである。
【0025】
あるいは、図3(b)に示すように、図3(a)と同様の形状とした容器体11の上端部内壁の一部11bのみを別部材としてもよく、図3(c)に示すように、筒状部材4´を両端開口の簡略な形状とし、その上端面を蓋体12に張り付けてもよい。この構成では、種結晶3も蓋体12に張り付けている。これらの場合も、別部材とする容器体11の一部11b、筒状部材4´の内表面の幅W、高さHが上記角度θで規定される範囲となるように構成する。このようにSiC多結晶5で被覆する部分を分割型としておけば、目的とする部材のみを被覆することができるので、被覆に要するコストを低減することができる。
【0026】
本発明では、上記筒状部材4表面をSiC多結晶5で被覆する代わりに、筒状部材4自体をSiC焼結体またはSiC反応焼結体で構成することもできる。上記図3に示した構成のルツボ1を用いる場合も同様で、上端部11a、容器体11の一部11b、筒状部材4´自体を製造しようとする単結晶と同種の焼結体または反応焼結体とすることで、多結晶で被覆した部材を配置するのと同様の効果が得られる。
【0027】
上記装置を用いて、単結晶を製造する場合には、上記ルツボ1内に、予めSiC多結晶5で被覆した上記筒状部材4および種結晶3を配置し、上記ルツボ1を加熱装置内で所定温度に加熱する。これにより、原料粉末2が昇華して、その昇華ガスが上記種結晶3表面に到達し、再結晶することにより単結晶を成長させる。
【0028】
この時、上記昇華ガスに晒される上記種結晶3近傍のルツボ1表面または部材表面が露出した状態であると、この表面にSiCの多結晶が堆積し、上述したSi/C比変動等の原因となるが、本発明では、上記種結晶3の成長表面31下方の単結晶成長空間を取り囲むように、予めSiC多結晶5で被覆した上記筒状部材4を設置し、あるいはルツボ1表面を予めSiC多結晶5で被覆しているので、SiC多結晶の堆積を抑制し、これに起因する温度変動を減少することが可能となる。また、ルツボ1のCとSiまたはSiを含む気相種との反応を抑制でき、それに起因するSi/C比の揺らぎや、それに伴うSi液滴の生成や、単結晶中への黒鉛微粒子の混入を防ぐことが可能になる。
【0029】
また、上記効果を最大限に得るために、単結晶成長過程において、その成長初期の単結晶成長空間(原料側から種結晶側へ)の温度勾配(種結晶側が低温となる温度勾配)を、10℃/cm以下、好ましくは1〜5℃/cmとすることが望ましい。温度勾配が10℃/cmより大きいと、Si/C比、過飽和度の揺らぎが大きくなり、Si液滴等を生じて良好な初期成長は望めない。また、1℃/cmより小さいと、成長端面で局所的に未飽和状態になり、部分的に種結晶が熱エッチングされるという不具合が生じるおそれがある。さらに、成長速度が極端に遅いので製造上好ましくない。また、5℃/cm以下では、Si/C比、過飽和度の揺らぎをより抑制して良好な初期成長を実現できる。
【0030】
上記温度勾配を設ける手段として以下の例が挙げられる。抵抗加熱方式の場合、例えば、図6に示すように、独立に制御可能な2段式の発熱体(ヒータ)6で温度勾配を設ける例(この例では2段式のヒータ6の間に断熱材8を設けると更に温度勾配をつけやすい)、あるいは1段式のヒータでは、反応容器(ルツボ)に対するヒータの相対位置の設定またはルツボの形状、材質の設定により温度勾配を設ける例がある。
【0031】
また、高周波加熱方式の場合、図7に示すように、コイル(高周波コイル)7の単位長さ当たりの巻き数の設定または反応容器(ルツボ)1の形状、材質の設定またはルツボ1に対するコイル7の相対位置の設定により温度勾配を設ける例がある。なお、ルツボ1とコイル7との間には石英二重管10が設けられ、その中を冷却水が導入される。
【0032】
上記抵抗加熱方式の場合でも高周波加熱方式の場合でも、反応容器の構造により種結晶部を冷却して効果的に温度勾配をつけることも可能である。例えば、図8のように反応容器(ルツボ)1にザクリ構造9を設けて、種結晶3の冷却効率を高める、あるいは図9のように反応容器(ルツボ)1内に冷却ガス(例えばHe)を導入し、種結晶3を冷却できるようにすることもできる。以上、原料をルツボ下部に、種結晶を上部に配置する例を説明したが、原料をルツボ上部に、種結晶を下部に配置する例もある。
【0033】
上記部材と上記温度勾配の範囲で成長を行うことにより、成長初期に顕著である温度変動、Si/C比の揺らぎに起因した、Si液滴の生成や積層の揺らぎや黒鉛微粒子の混入を防止できる。そのため、主に成長初期に発生する欠陥を防止して、欠陥の少ない高品質な炭化珪素単結晶を再現性よく製造することができる。単結晶を成長させる方法としては、前述の昇華再結晶法の他にCVD法などの気相種同士の化学反応による方法等にも適用可能である。
【0034】
なお、本発明に基づいて製造可能な単結晶としては、SiC以外に、例えば、ZnSe、ZnS、CdS、CdSe、AlN、GaN、BN等があり、昇華再結晶法により成長できる単結晶であればいずれに適用しても同様の効果が得られる。
【0035】
(参考例1)
上記図1に示した黒鉛製ルツボ1を反応容器として用い、本発明方法に基づいてSiC単結晶の成長実験を行った。まず、ルツボ1の容器体11内に配置される筒状部材4の内表面を、予め、昇華法を用いてSiC多結晶5で被覆した。この時、種結晶3の直径S=10mm、筒状部材4の上端面(内表面)の幅W=20mm、側面(内表面)の高さH=24mmとし、上記図2で示した角度θ=38.7°の領域がSiC多結晶5で被覆されるようにした。この筒状部材4および種結晶3をルツボ1内に配置し、SiC原料粉末2を充填して、不活性雰囲気ガス減圧下:約1Torr、ルツボ温度:約2300℃、成長初期の温度勾配4℃/cmの条件で、約24時間加熱して、単結晶の成長を行った。その際、成長速度を向上させるために、温度勾配を徐々に大きくした。成長量は約10mmであった。
【0036】
得られた単結晶インゴットを成長方向に平行に切断、研磨を行って、断面顕微鏡観察を行った。断面観察の結果、成長初期に多く発生する欠陥の発生が抑えられ、成長開始から終了まで均質な単結晶が得られた。また筒状部材4の被覆方法としてCVD法を採用し、それ以外は同様の条件で単結晶の成長実験を行ったところ、成長初期の欠陥の発生が抑えられ、成長開始から終了まで均質な単結晶が得られるという同様の結果が得られた。さらに、筒状部材4を多結晶で被覆する代わりにこれをSiC焼結体、SiC反応焼結体で構成し、同様な単結晶成長実験を行った場合にも、同様の効果が認められた。
【0037】
(参考例2)
上記図1と同じ黒鉛ルツボ1を用い、筒状部材4の内表面を、予め昇華法を用いてSiC多結晶5で被覆した。この筒状部材4及び種結晶3をルツボ1内に配置して、SiC原料粉末2を充填して、不活性ガス減圧下:約1Torr、ルツボ温度:約2300℃、温度勾配:12℃/cm一定の条件で、約24時間加熱して、単結晶成長を行った。成長量は約12mmであった。得られた単結晶の断面観察の結果、主に成長初期に管状、クラック状欠陥が多く観察された。こうした欠陥は成長後期にも伝播しており、均質な単結晶を得る事が出来なかった。この原因は温度勾配が大き過ぎたために、特に成長初期に温度変動、Si/C比の揺らぎに起因したSi液滴の生成や積層の揺らぎや黒鉛微粒子の混入を防止する事が困難であったためと考えられる。
【0038】
(参考例3)
上記図1と同じ黒鉛ルツボ1を用い、筒状部材4の大きさを変更して、上記図2における角度θが、θ=49.6°となる範囲が多結晶5で被覆されるようにした。このとき、種結晶3の直径S=10mm、筒状部材4の上端面(内表面)の幅W=7mm、側面(内表面)の高さH=20mmとした。上記参考例1と同様の条件で種結晶3上に単結晶を成長させる実験を行い、得られた単結晶の断面観察を行った。その結果、成長初期に多く発生する欠陥の発生が抑えられ、成長開始から終了まで均質な単結晶が得られた。また、被覆法として昇華法、CVD法のいずれを用いた場合も、被覆する代わりにSiC焼結体、SiC反応焼結体を用いた場合も同様の効果が得られた。
【0039】
(実施例1)
参考例1で用いたのと同様の黒鉛ルツボ1を用い、該ルツボ1内に筒状部材4およびSiC原料粉末2を配設した後、種結晶3を蓋体12に貼付する前に、参考例1と同様の結晶成長条件で加熱を行って、筒状部材4表面およびルツボ1内壁にSiC多結晶を堆積させた。その後、SiC種結晶3を貼付し、さらに原料粉末2を新品と交換して、上記参考例1と同様の条件で種結晶3上に単結晶を成長させた。得られた単結晶の断面観察の結果、成長初期に多く発生する欠陥の発生が抑えられ、成長開始から終了まで均質な単結晶が得られた。
【0040】
(比較例1)
参考例1と同様の黒鉛ルツボ1において、上記筒状部材4を配置することなく、上記参考例1と同様の条件で種結晶3上に単結晶を成長させる実験を行った。成長量は約10mm/24時間と同程度であったが、得られた単結晶を断面観察した結果、主に成長初期に致命的な管状、クラック状欠陥が多く観察された。こうした欠陥は成長後期にも伝播しており、均質な単結晶を得ることができなかった。この原因は、成長初期に顕著である温度変動、Si/C比の揺らぎに起因したSi液滴の生成や成長端面の局所的にSiCを含む気相種の未飽和状態による炭化層形成や黒鉛微粒子の混入を防止することが困難であったためと考えられる。これに対して本発明方法によれば、主に成長初期に発生する致命的な欠陥を防止でき、従って、欠陥の少ない高品質な炭化珪素単結晶を再現性よく製造することができる。
【0041】
(比較例2)
参考例1と同様な黒鉛ルツボ1において、上記筒状部材4を配置することなく、上記参考例2と同様な条件で種結晶3上に単結晶を成長させる実験を行った。成長量は約12mm/24時間であった。得られた単結晶の断面観察の結果、主に成長初期に致命的な管状、クラック状欠陥が多く観察された。こうした欠陥は成長後期にも伝播しており、均質な単結晶を得る事が出来なかった。この原因は温度勾配が大き過ぎたために、特に成長初期に温度変動、Si/C比の揺らぎに起因したSi液滴の生成や積層の揺らぎや黒鉛微粒子の混入を防止する事が困難であったためと考えられる。これに対して本発明によれば、主に成長初期に発生する致命的な欠陥を防止でき、従って、欠陥の少ない高品質な炭化珪素単結晶を再現良く製造する事が出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明方法に用いられる反応容器構造を示す全体概略断面図である。
【図2】図2(a)、(b)は本発明方法に基づき多結晶で被覆される領域を説明するための図である。
【図3】図3(a)〜(c)は本発明方法に用いられる反応容器構造の他の例を示す全体概略断面図である。
【図4】図4は本発明実施例において使用した反応容器構造を示す全体概略断面図である。
【図5】図5は従来方法に用いられる反応容器の全体概略断面図である。
【図6】図6は本発明方法に用いられる反応容器構造の他の例を示す全体概略断面図である。
【図7】図7は本発明方法に用いられる反応容器構造の他の例を示す全体概略断面図である。
【図8】図8は本発明方法に用いられる反応容器構造の他の例を示す全体概略断面図である。
【図9】図9は本発明方法に用いられる反応容器構造の他の例を示す全体概略断面図である。
【符号の説明】
1 ルツボ(反応容器)
11 容器体
12 蓋体
13 台座
2 原料粉末(原料供給部)
3 種結晶
31 成長端面
4 筒状部材
5 SiC多結晶
Claims (1)
- 反応容器内に配した種結晶に製造しようとする単結晶の原料ガスを供給し、該種結晶上に単結晶を成長させる単結晶の製造方法において、上記反応容器内に、上記種結晶の成長表面と原料供給部の間に形成される単結晶成長空間を取り囲むように、下端が開口し上端面に上記種結晶が配置される開口部を有する筒状部材を設置し、上記種結晶を配置しない状態で、上記原料供給部から上記筒状部材内に原料ガスを供給して上記筒状部材の少なくとも内表面を製造しようとする単結晶と同種の多結晶にて予め被覆し、しかる後に上記筒状部材上端面の上記開口部内に上記種結晶を位置させてその成長表面が上記単結晶成長空間を臨むようにし、次いで上記単結晶成長空間に上記原料供給部から原料ガスを供給して上記種結晶上に単結晶を成長させることを特徴とする単結晶の製造方法。
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