JP3723592B2 - 塩化アルカリ金属水溶液の精製方法およびそのプラント - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、塩化ナトリウムの塩水のような塩化アルカリ金属水溶液の精製に関する。本発明は、より詳しくは、ヨウ素含有化合物を除去する塩化アルカリ金属水溶液の精製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
海水から又は岩塩を水に溶かすことによって得られた塩化ナトリウム水溶液は、種々の不純物を含有する。この不純物のなかには、特に、アンモニア化合物(アンモニア、塩化アンモニウム)、ヨウ素含有化合物(ヨウ化金属)、臭素含有化合物(臭化金属)だけでなく、カルシウム、マグネシウム、鉄がある。このような不純物は、塩素及び水酸化ナトリウムを生成するために塩化ナトリウム溶液を電解セルで処理するときに、有害である。特に、塩素および水酸化ナトリウム水溶液生成に用いられる陽イオン交換膜を収容した電解セルでは、塩化ナトリウム水溶液中のヨウ素イオンの存在が収率損失の原因であることが分かっている。
【0003】
EP-A-0,399,588の特許出願[Solvay(Societe Anonyme)] には、ヨウ素イオンを除去する塩水の精製方法が開示され、これによれば、活性塩素によってヨウ素イオンを分子状ヨウ素に酸化し、次に、これにより生じたヨウ素を、塩基性ハロゲン化陰イオン交換樹脂で塩水から取り除く。この既知の方法では、活性塩素を、塩素又は次亜塩素酸アルカリ金属の流れの形で導入する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述した既知の方法では、活性塩素での塩水の処理は、ヨウ素酸陰イオンIO3 - の形成に至ってしまうヨウ素イオンの過剰な酸化を防止するために、細心の注意を必要とする。この状況は、ヨウ素酸陰イオンが、一般的に、処理に用いられる樹脂に吸着されないという事実による。
本発明は、ヨウ素イオンの酸化の制御を容易にし、その結果、ヨウ素酸陰イオンの不適当な形成の恐れを減少させる改良した方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
したがって、本発明は、ヨウ素イオンを含有する塩化アルカリ金属水溶液の精製方法に関し、これによれば、ヨウ素イオンを活性塩素により酸化してヨウ素にし、このヨウ素を塩基性ハロゲン化陰イオン交換樹脂で除去する方法において、その場で活性塩素を発生させるために溶液を電気分解することを特徴とする。
【0006】
本発明の方法では、水溶液のヨウ素イオンは、一般的に、ヨウ化金属、特にヨウ化アルカリ金属の形である。これらは、塩化アルカリ金属水溶液が塩化ナトリウム水溶液であるときに、海水又は岩塩の中に天然に存在する。
【0007】
活性塩素での溶液の処理は、ヨウ素イオンを分子状ヨウ素に酸化する作用がある。本発明によれば、塩化アルカリ金属水溶液を電気分解することによって、塩化アルカリ金属水溶液中で活性塩素を発生させる。ハロゲン化アルカリ金属水溶液(特に、塩化ナトリウム水溶液)の電気分解はこの技術において周知である。本発明の方法では、直流電源の陽極端子と陰極端子とに夫々接続された金属の陽極と金属の陰極とを有する、隔膜の無いセルで電気分解を行うのが好ましい。電気分解中、発生期の塩素が塩化アルカリ金属水溶液内に発生し、直ちに、溶液のヨウ素イオンと反応する。
【0008】
本発明の方法の好ましい実施例では、溶液中に、ヨウ素イオンを活性塩素で分子状ヨウ素にする酸化反応、つまり
I- + Cl0 → I0 + Cl-
の酸化還元電位と実質的に等しい電位を生じさせるように、電気分解が調整される。
【0009】
この目的のために、500mVないし700mVの電位、好ましくは、550mVないし600mVの電位を選択するのが有利である。選択された電位は、所定値の電解電流を流すことによって得られる。本発明の好ましい実施例によれば、溶液中にヨウ素酸陰イオンの不適当な形成の恐れを無視し得る値まで減少させることができる。
【0010】
電気分解の結果、水溶液を陰イオン交換樹脂と接触させることができ、ヨウ素は樹脂に吸着される。陰イオン交換樹脂は、固定の陽イオン場所と、Br- 、Cl- 、I- のようなハロゲンイオンによって占有された交換可能な陰イオン場所とを有する塩基性樹脂である。本発明の方法に使用可能な陰イオン交換樹脂は、固定の陽イオン場所のそれがスチレン、ジビニルベンゼンコポリマーのような長鎖ポリマーに結合した第四アンモニウム基であるようなものである。この種の樹脂は、米国特許 A-2,900,352号に記載されている。極めて適切な樹脂は、Lewatit(登録商標) 樹脂(Bayer) 、Amberlite(登録商標) 樹脂(Pohm & Haas Co.) である。この樹脂は、一般的に、顆粒の形で提供され、溶液は、これと接触状態で移動させられる。本発明の方法に用いられる樹脂は、ハロゲン陰イオンで占有された交換場所を有していなければならない。塩素およびヨウ素の陰イオンが好ましい。溶液の遊離ヨウ素の樹脂への吸着は、好ましくは次の反応プロセスにより、ポリハロゲン化錯体の形成を伴って行われる。
【0011】
I2 + Cl- → (I2 Cl)-
R+ X- +(I2 Cl)- → R+ (I2 Cl)- + X-
ここに、
I2 は、水溶液の分子状ヨウ素を示し、
R+ は、樹脂の固定の陽イオン場所を示し、
X- は、樹脂の交換可能な陰イオン場所を占有するハロゲン化イオンを示す。
【0012】
樹脂は、その場所が(I2 Cl)- 陰イオンによって飽和されたときに、定期的に再生されなければならない。錯イオン(I2 Cl)- を分解して分子状ヨウ素を放出させるために、制御された条件で、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩)の溶液で樹脂を洗浄することによって再生することができる。放出されたヨウ素は、既知の方法で、洗浄溶液から回収することができる。
【0013】
本発明の方法では、溶液のpHが、精製の収率に関する重要な要因を構成する。この目的のために、本発明の方法の特定の実施例では、電気分解および樹脂での処理は、酸性のpH、好ましくは3よりも小さいpHで行なわれる。この目的のため、本発明によれば、溶液を電気分解する前に、溶液を、3よりも小さいpH、好ましくは 1.5ないし2のpHに酸性化する。
【0014】
本発明の方法を、カルシウム及びマグネシウムを予め除去した水溶液に適用するのが好ましい。この目的のために、電気分解に先立って、この技術では周知のように(J.S.Scone 「塩素、その製造、特性及び用途」Reinhold Publishing Corporation 1962年 -第 135頁及び第 136頁)、溶液を炭酸ナトリウム及び水酸化ナトリウムで処理するのがよい。
【0015】
本発明の方法の変形例では、樹脂での処理に続いて、EP-A-0,399,588の明細書に説明された技術によって、アンモニア化合物および臭素含有化合物を分離する溶液の精製処理が行なわれる。
【0016】
また、本発明は、本発明の方法を適用することによってアルカリ金属水溶液を精製するプラントに関し、このプラントは、一方では、電解セルからなる反応室を、他方では、塩基性ハロゲン化陰イオン交換樹脂を収容した容器を有する。
【0017】
本発明のプラントに設けられた電解セルは、塩化アルカリ金属水溶液の電気分解を行って、その中に塩素を発生させる作用をする。この種の電解セルは、この技術では周知である。使用される電解セルは、隔膜の無い形式のものであってもよく、塩化アルカリ金属水溶液が通過する室の中に陽極と陰極とを有する。変形例として、セルは、塩化アルカリ金属溶液が陽極室を通過するように、陽イオンを選択的に通す膜によって分離された陽極室(陽極を収容)と陰極室(陰極を収容)とを有する形式のものであればよい。上述したように、隔膜の無い形式の電解セルを用いるのが好ましい。
【0018】
電解セルにおいて、陽極および陰極は、塩化アルカリ金属水溶液に関して化学的に不活性であり且つ塩素イオン(陽極の場合)の酸化および陽イオンの還元(陰極の場合)に対して低い過電圧を有する導電材料で作られなければならない。ニッケル陰極を使用し、また、陽極として、白金属の金属の酸化物(例えば、酸化ルテニウム)の被覆を、任意であるが酸化チタンと組み合わせて、担持したチタン板を使用するのが有利である。
【0019】
本発明のプラントの有利な実施例では、電極セルは、隔膜の無い形式のものであり、また、垂直の陰極室と水平の陽極室とを有し、陽極と陰極とが透かし細工の設計のものである。本発明のプラントのこの実施例では、陽極で発生した塩素が陰極で出来た水素と反応する危険性を減ずる。
【0020】
塩基性陰イオン交換樹脂は、先に説明した通りである。この樹脂を収容する容器は、一般的に、水処理技術で一般的に用いられる種類の垂直のカラムからなる。
【0021】
本発明のプラントの有利な実施例では、電解セルは、ポテンショスタットに接続され、このポテンショスタットの機能は、電解セルを通過中の溶液に所定の電位を維持するように電解セルの端子の電圧を調整することであり、この所定の電位は、一般的に、ヨウ素イオンを塩素によってヨウ素にする酸化反応の酸化還元電位である。
本発明のプラントの他の好ましい実施例では、プラントが、反応室の上流に、ハロゲン化アルカリ金属水溶液を酸性化する目的の室を有する。
【0022】
本発明は、アンモニアソーダ方法による炭酸ナトリウムの製造および電気分解或いは電解透析による水酸化ナトリウムの生産を目的とした塩化ナトリウム水溶液の精製に適用するのが有利である。
添付図面の単一の図の以下の詳細な説明から本発明の特定の特徴および詳細が分かるであろう。
【0023】
【実施例】
図1に概略的に示すプラントは、カルシウム化合物およびマグネシウム化合物(CaCl2 、MgCl2)及びヨウ化金属(ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化マグネシウム)が混入した塩化ナトリウム水溶液を精製するためのものである。
【0024】
プラントは、溶液からカルシウム及びマグネシウムを除去するための反応室1と、沈殿室2と、酸処理室3と、溶液のヨウ素イオンを酸化してヨウ素にするための反応室4と、交換可能な場所がハロゲン陰イオンで飽和された陰イオン交換樹脂のビーズを充填したカラム5とを連続的に有する。
【0025】
本発明によれば、反応室4は電解セルからなる。電解セルは、隔膜の無い形式のものである。電解セルは、L状であり、水平の筒状陽極室6と、垂直の筒状陰極室7とからなる。陽極室6は、酸化ルテニウム及び酸化チタンの活性化被覆を担持する、垂直の透かし細工のチタン板からなる陽極8を収容する。陰極室7は、水平の透かし細工のニッケル板からなる陰極9を収容する。陽極8と陰極9は、直流電源10の端子に接続されている。後にその作用を説明するポテンショスタット11が、電源10に接続され、また、陽極室6を樹脂カラム5に連結するパイプ13に配置した付加電極12に接続されている。
【0026】
図面に概略的に示すプラントの作動中、先ず、参照符号14で示す精製されるべき塩化ナトリウム水溶液から、そのカルシウムイオン及びマグネシウムイオンを除去する。この目的のために、カルシウムおよびマグネシウムを炭酸カルシウム及び水酸化マグネシウムの形で沈殿させるために、反応室1の中で塩化ナトリウム水溶液を炭酸ナトリウム15と水酸化ナトリウム16とで処理する。次いで、反応室1から懸濁水溶液17を取り出し、沈殿室2に移す。沈殿室2から以下のものを取り出す。一つは、炭酸カルシウム及び水酸化マグネシウムの沈殿物18であり、これは分離される。他は、酸処理室3に導入される塩化ナトリウム水溶液19である。
【0027】
酸処理室3では、十分な量の塩酸20を水溶液19に加えて、水溶液のpHを約 1.5乃至2にする。酸処理室3から取り出した酸性塩化ナトリウム溶液21を、任意であるが、予熱器(図示せず)で予熱し、次に、電解セル4の中に導入する。この水溶液は、セル4の陽極室6を通り、次いで連結パイプ13を通って樹脂カラム5の中に流入する。プラントでの塩化ナトリウム溶液の流れの静水圧を、溶液が完全にセル4の2つの室6、7を満たすように調整し、陽極8及び陰極9を沈める。電解セル4の中で溶液を一部電気分解して塩素を生成し、この塩素は、溶液のヨウ素イオンと直ちに反応する。陰極9で発生した水素22は、底から上方に陰極9を通って、セル4から流出する。水素の放出を容易にし、これにより、陽極8で生成した塩素との爆発的な反応を回避するために、空気の上昇流で陰極室7をパージするのが有効であることが分かった。
【0028】
ヨウ素酸陰イオンを実質的に形成させないでヨウ素イオンを分子状ヨウ素に酸化するように、セル4で発生する塩素の量を、電源10の端子の電圧によって調整する。この目的のために、電源10をポテンショスタット11及び付加電極12によって制御し、パイプ13における水溶液の電気化学的電位を約550mVないし600mVで安定化させる。かくして、樹脂カラム5の中に入る水溶液は、分子状ヨウ素を含有する。カラム5において、水溶液は樹脂で濾過され、含有ヨウ素が樹脂に徐々に吸着される。カルシウム、マグネシウム及びヨウ素を除去した塩化ナトリウム水溶液をカラム5の出口から取り出す。任意であるが、続いて、EP-A-0,399,588の明細書に記載された技術によって、塩化ナトリウム水溶液を精製処理して、アンモニア化合物及び臭素含有化合物を除去することも可能である。
【0029】
本発明を例示するために、次の例を詳細に説明する。
この例では、塩化ナトリウムで実質的に飽和し(溶液1リットルあたり約300g の塩化ナトリウム)且つ前もってカルシウム及びマグネシウムを在来通りに除去した水溶液を、ヨウ素イオンを除去するために、本発明の方法で処理した。精製された溶液は、1リットルあたり3mgのヨウ素イオン(分子状ヨウ素の形で)を含有していた。
【0030】
使用した精製プラントでは、陽極が、酸化ルテニウムと二酸化チタンとの被覆を担持した、透かし細工のチタン板からなり、また、陰極がニッケル格子からなる、図面に概略的に示した形式の電解セルを使用した。樹脂として、Lewatit(Bayer)樹脂を使用した。
先ず、精製されるべき水溶液を酸性化してpH値約2にした。次に、これをプラントの中に流速0.7 l/h で流した。樹脂カラムから取り出した精製後の塩化ナトリウム溶液中に、0.220 mg/lに等しいヨウ素含有量が測定された。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のプラントの特定の実施例の図。
【符号の説明】
4 電解セル
5 カラム
6 陽極室
7 陰極室
8 陽極
9 陰極
11 ポテンショスタット
14 精製されるべき塩化ナトリウム水溶液
20 塩酸
Claims (10)
- ヨウ素イオンを含有する塩化アルカリ金属水溶液の精製方法であって、活性化塩素によってヨウ素イオンを酸化してヨウ素にし、このヨウ素を塩基性ハロゲン化陰イオン交換樹脂で除去することを含み、前記溶液を、隔膜も膜も含まない電解セル中で電気分解して、その中で活性化塩素を発生させることを特徴とする精製方法。
- 前記溶液を電気分解する前に、該溶液を酸性化する、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 前記溶液を、3よりも小さいpHに酸性化する、ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
- 前記溶液を、pH1.5ないし2に酸性化する、ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
- 前記電気分解が、前記溶液中に、活性化塩素によってヨウ素イオンを分子状ヨウ素にする酸化反応の酸化還元電位と実質的に等しい電位を作るように調整される、ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の方法。
- 前記電気分解が、前記溶液中に、550mVないし600mVの電位を生じさせるように調整される、ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
- 塩化ナトリウム水溶液に適用される、ことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の方法。
- ヨウ素イオンを含有する塩化アルカリ金属水溶液の精製プラントであって、反応室(4)と、塩基性ハロゲン化陰イオン樹脂を収容した容器(5)とを有し、前記反応室(4)が隔膜も膜も含まない電解セルからなる、ことを特徴とする精製プラント。
- 前記電解セル(4)が、ポテンショスタット(11)に接続されている、ことを特徴とする請求項8に記載のプラント。
- 前記電解セル(4)が、多孔陰極(9)を収容する垂直の筒状陰極室(7)と、多孔陽極(8)を収容し、また、前記樹脂を収容する前記容器(5)に接続された、水平の筒状陽極室(6)とを有する、ことを特徴とする請求項8又は請求項9に記載のプラント。
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