JP5359466B2 - ヨウ素の酸化析出方法 - Google Patents

ヨウ素の酸化析出方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5359466B2
JP5359466B2 JP2009084526A JP2009084526A JP5359466B2 JP 5359466 B2 JP5359466 B2 JP 5359466B2 JP 2009084526 A JP2009084526 A JP 2009084526A JP 2009084526 A JP2009084526 A JP 2009084526A JP 5359466 B2 JP5359466 B2 JP 5359466B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
iodine
electrode
oxidation
organic
electrolysis
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2009084526A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2010236008A (ja
Inventor
正起 倉光
健太 中西
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Daikin Industries Ltd
Original Assignee
Daikin Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Daikin Industries Ltd filed Critical Daikin Industries Ltd
Priority to JP2009084526A priority Critical patent/JP5359466B2/ja
Publication of JP2010236008A publication Critical patent/JP2010236008A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5359466B2 publication Critical patent/JP5359466B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Description

本発明は、ヨウ素の酸化析出方法、より詳細には、ヨウ素イオンおよび有機物を水性媒体中に含む液状物からヨウ素を酸化により析出させる方法に関する。
ヨウ素またはヨウ化物は、種々の有機合成プロセス、例えばフッ素樹脂や液晶ディスプレイ用偏向膜の製造などに幅広く利用されている。その製造排水中には、不要な有機物のほか、ヨウ素がイオンの形態で残留し得る。ヨウ素は貴重な資源であるので、再利用するために、そのような排水を処理してヨウ素を析出させて回収している。
代表的な従来のヨウ素回収プロセスでは、ヨウ素イオン(I)および有機物を水性媒体中に含む液状物を前処理に付して有機物を除去した後、ヨウ素を酸化により析出(または晶析)させ、これにより得られたヨウ素(I)の固体粒子を分離回収している。回収したヨウ素は、適宜、加熱溶融などによる精製操作に付されて、再利用される。
特開2006―169146号公報 特開平11―269686号公報
L.J.J. Janssen and M.H.A. Blijlevans, "Electrochemical oxidation of iodate to periodate", Electrochimica Acta, vol 48, p3959-3964 (2003)
上述した従来のヨウ素回収プロセスにおいて、ヨウ素の酸化析出は、塩素または次亜塩素酸ナトリウムなどの塩素系酸化剤を添加することにより行われている。しかしながら、塩素系酸化剤は、処理後、環境ホルモンや発ガン性物質を生成する可能性がある。
また、一般的に、工業排水中に含まれる有機物処理等のために、過酸化水素水やオゾン水、塩素系酸化剤などが利用されている。しかしながら、過酸化水素水やオゾン水は価格が高く、長期保存が不可能であるという難点がある。また、塩素系酸化剤は、上述のように、処理後、環境ホルモンや発ガン性物質を生成する可能性があり、特に例えば、塩素系酸化剤自身と有機物との反応の過程でトリハロメタン類などの有害物質を生成する可能性がある。更に、これらは輸送の際の安全性および汚染可能性などの問題も懸念される。
有機物のうち含フッ素有機化合物については、これを短鎖化することによって分解除去することが提案されている(特許文献1を参照のこと)。しかしながら、その分解率(分解された化合物量/分解処理前の化合物量×100(%))は、過酸化水素に加えて還元剤を用いても低く、効率的ではない(過酸化水素および還元剤を添加した実施例1および2でそれぞれ28.15%および6.4%、更にUV照射を行った実施例3で38.5%と記載されている)。また、比較的長い処理時間を要している(過酸化水素および還元剤を添加した実施例1および2では3時間、更にUV照射を行った実施例3では8時間と記載されている)。このため、処理設備が大規模になるという難点もある。
他方、過酸化水素の製造方法として、導電性ダイヤモンド構造を含んで成る陽極を用いて、水を電気分解することによって、酸素、オゾンおよび過酸化水素を生成する方法がある(特許文献2を参照のこと)。しかし、かかる方法は、あくまで過酸化水素(ならびに酸素およびオゾン)の製造方法として知られているに過ぎない。
本発明の目的は、ヨウ素イオンおよび有機物を水性媒体中に含む液状物からヨウ素を酸化により析出させる新規な方法を提供することにある。
本発明の1つの要旨によれば、酸素過電圧を有し、かつ化学的に安定な電極を陽極に用いて、ヨウ素イオンおよび有機物を水性媒体中に含む液状物を、電流密度0.1〜200A/dmにて電気分解処理することにより、有機物を分解すると共に、ヨウ素を酸化により析出(または晶析)させる方法が提供される。
尚、本発明において「電気分解処理」とは陽極および陰極の対を成す電極を処理対象物(本発明では「ヨウ素イオンおよび有機物を水性媒体中に含む液状物」)に浸漬し、これら電極に外部電源より電流を流す操作を言う。また、有機物の「分解」とは、有機物における化学結合が切断されて、元の有機物と異なる化合物を生じることを意味する。
このヨウ素の酸化析出方法では、酸素過電圧を有し、かつ化学的に安定な電極を陽極に用いて、ヨウ素イオンおよび有機物を水性媒体中に含む液状物を、電流密度0.1〜200A/dmで電気分解処理することによって、水性媒体中の水を電気分解し、その際、酸素過電圧によって陽極での酸素発生を回避し、かつ、過酸化水素およびオゾンなどによる陽極の消耗(または腐食)をその化学的安定性によって防止または低減しつつ、所定の電流密度によってOHラジカルを効率的に発生させることができ、これにより、有機物の分解とヨウ素の酸化(ヨウ素イオンを単体ヨウ素として析出させる反応)とを、単一の電気分解処理で同時に行うことが可能となる。
本発明は、上記電気分解処理において発生するOHラジカルが有機物およびヨウ素イオンに作用することによって、有機物を分解し、かつヨウ素を酸化するものと理解され得る。しかし、本発明はこれに限定されず、上記電気分解処理においては、通常、OHラジカルに加えて過酸化水素およびオゾンも発生し、これらOHラジカル、過酸化水素およびオゾンに起因して有機物が分解されていてよい。本発明において、「OHラジカル、過酸化水素およびオゾンに起因して」とは、OHラジカル、過酸化水素およびオゾンに直接的による場合のみならず、例えば電気分解処理時に液状物中に存在し得る成分とOHラジカルとの反応により生じ得るラジカル種(またはそのような反応により生じ得る酸化剤として機能し得るもの)による場合も含むことを意味する。
本発明を限定するものではないが、有機物の分解は、有機物におけるC−C結合を切断し、存在する場合には更にC−F結合をも切断し得る。C−F結合は極めて強固な結合であって通常は切断され難いが、本発明によれば、OHラジカルを効率的に(または多量もしくは高濃度に)発生させることができるので、C−F結合の切断が可能となるものと考えられる。
本発明において陽極に使用される電極は、酸素過電圧を有するものであり、かつ化学的に安定であればよい。水を電気分解すると陽極にて酸素発生が起こり得るが、電極が「酸素過電圧を有する」とは、適用される電気分解処理条件下、その電極(陽極)にて、酸素発生反応の平衡電位よりも高い電圧(その差が酸素過電圧に相当する)を印加しなければ、酸素発生が実質的に起こらないことを意味する。また、電極が「化学的に安定」であるとは、適用される電気分解処理条件下、その電極材料が液状物中の成分と化学的に反応しない(または反応し難い)ことを意味する。
例えば、そのような電極には、導電性ダイヤモンド構造を有する材料を含んで成る電極(以下、単に「導電性ダイヤモンド構造電極」とも言う)が好適に使用され得る。導電性ダイヤモンド構造電極は、酸素過電圧が大きく、OHラジカルを生成させるのに適している。更に、導電性ダイヤモンド構造電極は、化学的に極めて安定で、(水性媒体中に)溶出し難く、過酸化水素やオゾンなどに曝されても、電極の消耗(または腐食)が少ない。
ヨウ素イオンは、ヨウ化カリウムが水性媒体中に溶解して成るものであってよい。ヨウ化カリウムは有機物合成における副生成物であり得る。
このようにヨウ素イオンがヨウ化カリウムに由来するものである場合、電気分解処理において、液状物の酸化還元電位の実測値(水素基準換算、以下も同様とする)が400〜500mVの範囲内でほぼ定常に達する。尚、「酸化還元電位の実測値」は溶液(本発明では液状物)の酸化または還元の傾向を示す指標であり、例えば市販のORP測定器(白金電極、比較電極=飽和塩化銀電極)を用いて液状物の酸化還元電位を測定し、ORP測定器で使用している電極に応じて水素基準に換算することによって、経時的にモニターされる。また、酸化還元電位の実測値が「ほぼ定常に達する」とは、実測値の変位が±30mV/分以内となることを意味する。本発明はいかなる理論によっても拘束されず、また、酸化還元電位の実測値は温度、pH、および共存する他の成分などさまざまな因子によって影響を受けるものであるが、上記のように酸化還元電位が定常に達するのは、主にヨウ素イオン(I)の酸化反応より連鎖的に起こる反応がループするようになっているためであると考えられる。このように液状物の酸化還元電位の実測値が400〜500mVの範囲内でほぼ定常に達することにより、還元剤を使用することなく、ヨウ素を酸化するのに適した状態を維持できるという利点が得られる。
しかしながら、本発明はこれに限定されず、ヨウ素イオンは、ヨウ化カリウム以外の他のヨウ素源、例えばカリウム以外のアルカリ金属、アルカリ土類金属および遷移金属(例えばFe、Cu、Agなどが挙げられるが、これらに限定されない)などのヨウ化物に由来するものであってもよい。
本発明によれば、酸素過電圧を有し、かつ化学的に安定な電極を陽極に用いて、ヨウ素イオンおよび有機物を水性媒体中に含む液状物を、所定の電流密度で電気分解処理することにより、水の電気分解によりOHラジカルを発生させて、水性媒体中に含まれる有機物を効率的に分解すると同時に、ヨウ素を酸化により析出させることができる。
本発明の方法は、有機物分解およびヨウ素酸化を行うのに、過酸化水素水やオゾン水を用いたり、塩素または塩素系酸化剤を用いる必要がなく、電気分解するだけでよいという極めてシンプルな方法であり、かつ、非常に効率的で、大規模な装置を要しない方法である。
まず、ヨウ素イオンおよび有機物を水性媒体中に含む液状物を準備する。
本実施形態においては、ヨウ化カリウムを水性媒体(典型的には水)中に溶解させてヨウ素イオンを生じさせたものを用いる。
有機物は、C−C結合を有する限り、特に限定されず、任意の炭素数を有し得る。有機物は、C−F結合を更に有する含フッ素有機化合物であってよいが、これに限定されず、フッ素を有していても、有していなくてもよい。有機物は、例えばダイオキシン、PCB(ポリ塩化ビフェニル)、PFOS(パーフルオロオクタンスルホン酸)、有機塩素系農薬、アクリル酸ポリマー、フッ素系のポリマー、PCP(ペンタクロロフェノール)などであってよいが、これらに限定されない。
水性媒体としては、水を含む液体であれば特に限定されず、例えば、水そのものであってもよいし、水および水と相溶性の有機液体の混合物であってもよい。「水と相溶性の有機液体」としては、例えば、アルコール、エーテル、ケトン、パラフィンワックス等の有機溶媒(好ましくはフッ素を含有しないもの)などが挙げられる。
ヨウ化カリウムの水への飽和溶解度が60重量%であることを考慮すると、液状物(有機物を含む)中のヨウ化カリウムの濃度は、およそ1〜60重量%となり得、好ましくは20〜40重量%である。ヨウ化カリウムの濃度は高い方が電気分解処理に要する電力は小さくなる。
電気分解処理を行うに際し、ヨウ素イオンに加えて、有機物も水性媒体中に含まれて液状物を構成している。有機物は、水性媒体中に溶解していてもよいし、水性媒体に分散していてもよい。換言すれば、液状物は溶液であっても、分散物であってもよい。有機物は、電流効率などの観点から、液状物全体の例えば約1重量ppm〜25重量%、好ましくは約1000重量ppm〜5重量%であるが、これに限定されない。
液状物は、ヨウ素イオン、有機物および水性媒体に加えて、その他の成分を更に含んでいてもよい。
本実施形態を限定するものではないが、液状物は、任意の有機合成プロセスにおいて生じるプロセス水または排水(廃水)であり得、副生したヨウ化カリウムに由来するヨウ素イオンと、有機合成により得られた目的化合物または副生成化合物に由来する有機物とを水性媒体中に含んで成るものであってよい。あるいは、かん水や海水などの天然由来の液状物であってもよい。
電気分解処理のための陽極には、酸素過電圧を有し、かつ化学的に安定な電極を使用する。
電極が酸素過電圧を有するかどうかは、酸素発生の標準電極電位を超える電圧(過電圧)を、酸素発生を実質的に起こさないで与え得るかどうかにより判断することができる。ヨウ素イオンおよびカリウムイオン存在下での水の電気分解に関連する反応の標準酸化還元電位(vs NHE(normal hydrogen electrode)、pH=7)を表1に示す。
Figure 0005359466
表1中、式No.1−1〜1−8で表わされる反応は、水に由来して起こり得る反応であり、式No.2−1〜2−9で表わされる反応は、ヨウ素イオンおよびカリウムイオンに関連して起こり得る反応である。
表1から理解されるように、酸素発生反応(表1中、式No.1−7)の標準酸化還元電位は1230mVであり、OHラジカル発生反応(表1中、式No.1−1)の標準酸化還元電位は2850mVである(但し、後述する過酸化水素およびオゾンから発生するOHラジカルは別である)ので、酸素過電圧が存在しないと、陽極にて酸素発生が起こり、OHラジカル発生に至らない。よって、陽極に使用する電極は、OHラジカル発生が起こり得るような酸素過電圧を有することが好ましい。尚、OHラジカル発生やその他の反応の電位も平衡電位からシフトし得るが、目安として、表1のOHラジカル発生反応(表1中、式No.1−1)の標準酸化還元電位を利用できる。
OHラジカル発生を定量的に測定することは実用上、困難である。表1から理解されるように、陽極にてOHラジカル発生反応(表1中、式No.1−1)が起こる条件では、それより標準酸化還元電位の低い過酸化水素発生反応(表1中、式No.1−4)およびオゾン発生反応(表1中、式No.1−3および1−5)も起こり得る。一般的に、過酸化水素およびオゾンの発生量が多いと、OHラジカルの発生量も多いと考えられている。よって、陽極に使用する電極は、適用される電気分解処理条件下、酸素よりも過酸化水素およびオゾンを効率的に発生させ得るような電極であればよい。
あるいは、電極の電位窓がわかっている場合、その電位窓の範囲内に、OHラジカル発生反応(表1中、式No.1−1)の標準酸化還元電位が存在することは、陽極に使用する電極を選択する上での指標となり得るであろう。尚、電位窓は電極の材料のほか、支持電解質の種類および濃度(一般的には1モル/リットルの硫酸水溶液が用いられる)などにも依存する点に留意されたい。
また、電極が化学的に安定かどうかは、特に過酸化水素およびオゾンの水溶液によって腐食されないかどうかにより判断することができる。過酸化水素およびオゾンの水溶液は酸化性が強く、腐食が起こり易い環境を形成するため、少なくともこれらの水溶液に対して化学的に安定である(腐食されない)ことを要するからである。
そのような陽極には、導電性ダイヤモンド構造電極を使用できる。導電性ダイヤモンド構造電極は、sp構造を有するため化学的に極めて安定であり、かつ、酸素過電圧および水素過電圧がいずれも大きくて広い電位窓を有する上、過酸化水素およびオゾン生成の電流効率が非常に高く、よって、陽極での酸素発生を回避しつつ、OHラジカルを生成させるのに適している。例えば、白金やイリジウムなどの貴金属および炭素系材料の電極もOHラジカル生成に使用され、これらは過酸化水素やオゾンの水溶液によって腐食し、電極消耗および溶出による汚染が問題となり得るが、導電性ダイヤモンド構造電極ではそのような問題は無視可能な程度である。また、白金やイリジウムなどの貴金属および炭素系材料の電極に比べて、導電性ダイヤモンド構造電極は約2倍もの電位窓を有し、過酸化水素およびオゾン生成の電流効率は約10〜30倍にも達する。更に、ヨウ素の電気分解酸化に関しては、白金電極に比べて、導電性ダイヤモンド構造電極は、ヨウ素酸イオンからの過ヨウ素酸イオンの酸化反応(表1中の式No.2−1)における電流効率が約7倍であることが非特許文献1により報告されている。
より具体的には、導電性ダイヤモンド構造電極の材料としては、ホウ素(ボロン)、リンおよび/またはグラファイトなどの不純物をドープして導電性を付与したダイヤモンド、アモルファス酸化ホウ素などとダイヤモンドとの複合物質、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化タングステンなどが挙げられ、これらは市販で入手可能である。このうち、ボロンドープダイヤモンドは、窒素ドープなどの電極よりもラジカル発生効率が高い。
しかし、陽極に使用される電極は、導電性ダイヤモンド構造電極に限定されず、例えば、白金やイリジウムなどの貴金属、炭素系材料などを用いた電極を使用してもよい。但し、導電性ダイヤモンド構造電極と比較すると、白金やイリジウムなどの貴金属、炭素系材料の電極は化学的安定性がそれほど大きくなく、また、白金やイリジウムなどの貴金属の電極は高価である。
陰極に使用される電極は、陽極に使用される電極と同じものであっても、異なっていてもよい。後者の場合、陰極には、例えばDSE(Dimensionally Stable Electrode:寸法安定電極)、具体的には、例えばチタンなどの金属表面を酸化ルテニウムなどの金属酸化物で被覆したものなどが使用され得る。
本発明を限定するものではないが、陰極には、水素過電圧を有する電極を使用することが好ましい場合がある。水素過電圧を有する電極を陰極に使用すると、ヨウ素イオン(I)発生反応(表1中、式No.2−8および/またはNo.2−9)が起こりやすくなると考えられ得る。
これら陽極および陰極を上述の液状物に浸漬する。陽極および陰極は対を成して用いられるが、それらの数、配置、面積などは任意に選択され得る。電気分解装置全体の構成としては特に限定されず、無隔膜であっても、有隔膜(例えば2室型や3室型など)であってもよい。後述するように、還元剤を使用することなく、酸化還元電位の実測値をほぼ定常とする(安定化させる)には、無隔膜とされ得る。無隔膜の場合、陽極および陰極を定期的または不規則に反転させることも可能である。
そして、外部電源より陽極および陰極に電流を流して、電気分解処理する。この電気分解処理において、電流密度は、例えば0.1〜200A/dm、好ましくは1〜50A/dmである。その他の電気分解処理条件、例えば温度、圧力、pH、処理時間などは適宜設定し得る。最も簡便には、常温および常圧下、特段pH調整していない液状物を電気分解処理に付してよい。処理時間は、所望の分解率が得られるように設定され得る。本発明を限定するものではないが、例えば0〜100℃、pH1〜14、好ましくはpH1〜7であり得る。
このような電気分解処理、特に上記電流密度範囲において、陽極にて、過酸化水素およびオゾンが発生し、また、OHラジカルが発生するものと考えられる。上述のように、OHラジカルを直接に定量分析することは困難であるが、一般的に、過酸化水素およびオゾンの発生量が多いと、OHラジカルの発生量も多いと考えられているので、過酸化水素およびオゾンを定量分析することにより、OHラジカルの発生量をおおよそ推察することができる。
また、OHラジカル(OH・)が実際にどのような反応を経て発生するかは必ずしも明らかになっておらず、いかなる反応により発生したものであってよい。例えば、(1)水の電気分解の陽極反応により発生する場合(上記表1中、式No.1−1に同じ)、(2)過酸化水素およびオゾンから発生する場合、(3)過酸化水素の電気分解の陰極反応により発生する場合が考えられ得る(それぞれ式(1)〜(3)として以下に示す)。
Figure 0005359466
式(1)の水の電気分解の陽極反応でOHラジカルが発生し得るが、式(2)のように過酸化水素およびオゾンの共存下では促進酸化が進行してOHラジカルが速やかに生成し得、また、式(3)のように過酸化水素の電気分解の陰極反応(還元反応)も起こり得るであろう。
OHラジカルは、過酸化水素およびオゾンより酸化力が高く、他の物質を無差別的に酸化することができる。このことは、水からのOHラジカル発生反応(表1中、式No.1−1)の標準酸化還元電位が、水からの過酸化水素発生反応(表1中、式No.1−4)および水からのオゾン発生反応(表1中、式No.1−3および1−5)の標準酸化還元電位より高いことからも理解され得る。よって、電気分解処理によりOHラジカルが発生すると、有機物のC−C結合が切断され得、存在する場合にはC−F結合も切断され得る。従来、C−F結合はC−C結合よりも強く、切断できないものとされていたが、本実施形態によればC−F結合をも切断することが可能となる。本発明はいかなる理論によっても拘束されないが、OHラジカルは、本来、C−F結合の結合エネルギーより高いエネルギーを有し、本実施形態のようにOHラジカルを多量に発生させることによって、C−F結合を切断できるものとなったと推察される。
また、OHラジカルは極めて短寿命である(代表的には1μMで寿命約0.2msであり、例えば式(1)の水の電気分解の陽極反応により発生する場合、陽極表面近傍にしか存在できないことになる)。しかし、OHラジカルが有機物を分解してラジカル種を生じ、更にそのラジカル種が水などと反応してOHラジカル(または新たなラジカル種)を生じるという連鎖反応によって、液状物の内部へと移動することが可能であると理解される。
この電気分解処理において、有機物の分解と共に、ヨウ素の酸化も同時に起こる。ヨウ素イオン(I)の電気分解酸化による析出(I)(みかけの反応は、表1中、式No.2−7で示す反応 2I=I+2e である)は、実施条件にもよるが、実際には、酸化還元電位の実測値500mV程度で起こることが本発明者らにより確認されている。本発明者はいかなる理論によっても拘束されないが、この理由は、表1中、式No.2−4、2−6および2−7で示す反応が混成され、その結果、酸化還元電位がシフトしたものと推察される。尚、酸化還元電位の実測値は温度、pH、および共存する他の成分などさまざまな因子によっても影響を受け得ることに留意されたい。
電気分解処理において、液状物(より詳細にはその水相)の酸化還元電位の実測値は、処理時間の経過と共に上昇し、やがて400〜500mVの範囲内でほぼ定常に達する。本発明はいかなる理論によっても拘束されず、また、酸化還元電位の実測値はさまざまな因子によって影響を受け得るが、このように定常に達する理由は以下のように推測され得る。ヨウ素(I)発生が進行すると、今度は、ヨウ素(I)の電気分解酸化(表1中、式No.2−2および2−3)のうち標準酸化還元電位がより小さいヨウ素酸イオン(IO )発生反応(表1中、式No.2−3)が優先的に進行する。そして、ヨウ素イオン(IO )発生が進行すると、今度は、ヨウ素イオン(IO )の電気分解酸化(表1中、式No.2−1)および電気分解還元(表1中、式No.2−8)のうち標準酸化還元電位(絶対値)がより小さいヨウ素イオン(I)発生反応(表1中、式No.2−8)が優先的に進行する。このようにして再びヨウ素イオンが生じ、これら連鎖反応がループとなっており、やがて定常に達するものと考えられる。
以上のようにして、電気分解処理によって、有機物が分解されると同時にヨウ素が酸化により析出する。
本実施形態によれば、過酸化水素水やオゾン水を用いたり、塩素または塩素系酸化剤を用いる必要がなく、水性媒体中に含まれる水を利用して、電気分解処理によって、有機物の分解とヨウ素の酸化析出(晶析)とを同時に実施することができる。
本実施形態によれば、比較的短時間の処理で、かつ従来より小規模な処理装置で、有機物を効率的に分解することができる。
また、本実施形態によれば、水性媒体中のヨウ素イオンの濃度を、例えば約1000重量ppm以下、好ましくは約600重量ppm以下にまで低減することができる。析出したヨウ素(I)は、任意の適切な固液分離操作(例えば濾過、遠心分離または沈降など)により、液状物から容易に分離できる。
本発明を実施例により更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1)
電気分解処理に付すべき液状物として、有機物が付着したヨウ化カリウムを純水に添加したものを準備した。液状物中のヨウ化カリウムの濃度は1重量%(全体基準)とした。有機物には、アクリル酸ポリマーおよびパーフルオロアルキルエチルアクリレートを用いた。有機物の含量は、TOC(全有機炭素:Total Organic Carbon)に基づいて評価するものとした(下表2を参照のこと)。
この液状物を2Lゴム栓付きデュラン瓶に移し、循環ポンプで電解セルへ送液し、循環バッチ式で電解処理を行った。この電解セルにおいて、アノード電極およびカソード電極には、ボロンドープダイヤモンド電極(シリコン基板上にボロンドープダイヤモンド膜をCVD法で製膜したもの)を用い、電極面積を73.1cmに規定し、両電極間距離を6mmに維持した。電解セルへ直流安定化電源から給電し、電流値を6Aにて一定とした。これら電極面積および電流値より、電流密度は82.1mA/cmと求められた。電気分解処理の間、液温は約40℃(温度制御なしで室温下にて放置)であった。電解反応で副生する水素ガスは、エアーポンプで1%以下に希釈した上、5℃に維持したリフラックスを介して排気した。
電気分解処理を行っている間の槽電圧(電気分解処理中のアノード電極およびカソード電極間の電圧)を測定したところ、約9.05V(平均測定値)であった。
電気分解処理の開始時(電力P=0kW/m)および電気分解処理を行っている間に、液状物の酸化還元電位ORP(水素基準)をORP測定器により測定した。また、電気分解処理の開始時(電力P=0kW/m)および電気分解処理を行っている間に液状物のサンプルを採取し、TOC濃度を、サンプル液中に含まれる有機炭素を燃焼酸化方式と呼ばれる方法で二酸化炭素に酸化させてその二酸化炭素量を赤外線分析計で分析する方法により測定し、Fイオン濃度をフッ素イオンメーターにより測定した。結果を表2に示す。尚、電力Pの値は、電気分解処理時間に比例することに留意されたい。
Figure 0005359466
表2より、電力Pが増加するにつれてTOC濃度が低下した。これは電気分解処理により有機物が次第に分解されていったことを示している。本実施例において、単位使用電気量あたりの有機物分解量を、表中に示したサンプル番号の値が1増える毎のΔTOC(減少量)をΔP(増加量)で除したものの平均値として求めたところ、0.61mg/Whであった。また、電力Pが増加するにつれてFイオン濃度が上昇した。これは電気分解処理により含フッ素有機化合物であるパーフルオロアルキルエチルアクリレートが次第に分解されたことによるものと考えられる。更に、電力Pが増加するにつれてORPの値が460mV程度で定常に達した。ヨウ素の回収率を、ORP値とヨウ素量との関係から推測したヨウ素生成量を原料ヨウ化カリウム(KI)量から精製し得る理論ヨウ素量で除した値として求めたところ、約90%であった。
(実施例2)
液状物中のヨウ化カリウム濃度を10重量%としたこと、および電流値を12Aとし、よって電流密度を164.2mA/cmとしたこと以外は、実施例1と同様の条件で電気分解処理に付した。
本実施例において、電気分解処理を行っている間の槽電圧(電気分解処理中のアノード電極およびカソード電極間の電圧)を測定したところ、約13.5V(平均測定値)であった。
液状物の酸化還元電位ORP(水素基準)、TOC濃度およびFイオン濃度を実施例1と同様にして測定した。結果を表3に示す。表3中、TOCのレベルが実施例1より高くなっているのは、添加したヨウ化カリウムが実施例1より増えたことに伴い、ヨウ化カリウムに付着してこれと一緒に添加された有機物の量も増えたことによるものである。
Figure 0005359466
本実施例において、単位使用電気量あたりの有機物分解量を、実施例1と同様にして求めたところ、2.85mg/Whであった。表2より、ORP値は400mVに達しなかった。ヨウ素の回収率を、実施例1と同様にして求めたところ、約90%であった。
本発明の方法は、ヨウ素酸化と有機物分解とを簡便な処理操作により同時に行うことができ、従来の方法よりも作業安全性を高め、環境への負荷を低減することができる。
かかる本発明の方法は、有機合成プロセスにより生じ得る排水の処理に利用可能である。この場合、本発明の方法はヨウ素の回収方法としても把握され得るであろう。
また、本発明の方法は、かん水や海水などからヨウ素を得る方法などにも利用可能である。この場合、本発明の方法は、ヨウ素の分離方法またはヨウ素の製造方法としても把握され得るであろう。

Claims (5)

  1. 酸素過電圧を有し、かつ化学的に安定な電極を陽極に用いて、ヨウ素イオンおよび有機物を水性媒体中に含む液状物を、電流密度0.1〜200A/dmにて電気分解処理することにより、有機物を分解すると共に、ヨウ素を酸化により析出させる方法。
  2. 電気分解処理において、OHラジカル、過酸化水素およびオゾンが発生し、これらに起因して有機物が分解され、かつヨウ素が酸化される、請求項1に記載の方法。
  3. 酸素過電圧を有し、かつ化学的に安定な電極が、導電性ダイヤモンド構造を有する材料を含んで成る、請求項1または2に記載の方法。
  4. ヨウ素イオンは、ヨウ化カリウムが水性媒体中に溶解して成るものである、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. 電気分解処理において、液状物の酸化還元電位の実測値(水素基準換算)が400〜500mVの範囲内でほぼ定常に達する、請求項4に記載の方法。
JP2009084526A 2009-03-31 2009-03-31 ヨウ素の酸化析出方法 Active JP5359466B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009084526A JP5359466B2 (ja) 2009-03-31 2009-03-31 ヨウ素の酸化析出方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009084526A JP5359466B2 (ja) 2009-03-31 2009-03-31 ヨウ素の酸化析出方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2010236008A JP2010236008A (ja) 2010-10-21
JP5359466B2 true JP5359466B2 (ja) 2013-12-04

Family

ID=43090612

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2009084526A Active JP5359466B2 (ja) 2009-03-31 2009-03-31 ヨウ素の酸化析出方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5359466B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN113461230B (zh) * 2021-06-11 2022-09-30 浙江工业职业技术学院 用于针对含碘有机废水的处理方法

Family Cites Families (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5512109B2 (ja) * 1973-09-18 1980-03-29
JPS5271396A (en) * 1975-12-12 1977-06-14 Ise Chem Ind Method of obtaining iodine from iodineecontaining brine
JPH01184293A (ja) * 1988-01-14 1989-07-21 Tanaka Kikinzoku Kogyo Kk ヨウ素及びヨウ素酸塩の製造方法
JP2569110B2 (ja) * 1988-03-03 1997-01-08 三井東圧化学株式会社 有機沃素化合物を含有する廃液から沃素を回収する方法
JPH06158372A (ja) * 1992-11-25 1994-06-07 Godo Shigen Sangyo Kk 有機沃素化合物を含有する廃液から沃素を回収する方法
IT1265291B1 (it) * 1993-12-17 1996-10-31 Solvay Procedimento e impianto per la depurazione di una soluzione acquosa di un cloruro di un metallo alcalino
JP4157615B2 (ja) * 1998-03-18 2008-10-01 ペルメレック電極株式会社 不溶性金属電極の製造方法及び該電極を使用する電解槽

Also Published As

Publication number Publication date
JP2010236008A (ja) 2010-10-21

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Tavares et al. Electrochemical oxidation of methyl red using Ti/Ru0. 3Ti0. 7O2 and Ti/Pt anodes
Lacasa et al. Electrochemical denitrificacion with chlorides using DSA and BDD anodes
Kraft Electrochemical water disinfection: a short review
Bonfatti et al. Electrochemical incineration of glucose as a model organic substrate. II. Role of active chlorine mediation
Stucki et al. Electrochemical waste water treatment using high overvoltage anodes Part II: Anode performance and applications
Palma-Goyes et al. The abatement of indigo carmine using active chlorine electrogenerated on ternary Sb2O5-doped Ti/RuO2-ZrO2 anodes in a filter-press FM01-LC reactor
Oh et al. Formation of hazardous inorganic by-products during electrolysis of seawater as a disinfection process for desalination
Sun et al. Selective oxidation of bromide in wastewater brines from hydraulic fracturing
Britto-Costa et al. Phenol removal from wastewaters by electrochemical oxidation using boron doped diamond (BDD) and Ti/Ti0. 7Ru0. 3O2 dsa® electrodes
Moraleda et al. Can the substrate of the diamond anodes influence on the performance of the electrosynthesis of oxidants?
JP2010234250A (ja) 含フッ素有機化合物の分解方法
US6761815B2 (en) Process for the production of hydrogen peroxide solution
EP1369384B2 (en) Method of decomposing organic compound in liquid to be treated
Naumczyk et al. Tannery wastewater treatment by anodic electrooxidation coupled with electro-Fenton process
JP5359466B2 (ja) ヨウ素の酸化析出方法
Petrucci et al. A feasibility study of hydrogen peroxide electrogeneration in seawater for environmental remediation
JP5057424B2 (ja) 次亜ハロゲン酸の低減機構及び低減方法
JP2012239927A (ja) 排水処理方法
JP2012040524A (ja) 電解処理装置及び電解処理方法
Yoon et al. Combination of H2O2-producing microbial desalination cells and UV/H2O2 advanced oxidation process: Water salinity reduction and microbial inactivation
Mayen-Mondragon et al. Simultaneous electrochemical oxidation and reduction of representative organic pollutants
JP4062690B2 (ja) 有機性排水の処理方法
JP4181170B2 (ja) 飲用電解水及びその製造方法
JP4038253B2 (ja) 酸性水及びアルカリ水製造用電解槽
Mogyoródy Influence of chlorine-water equilibria on the electrochemical destruction of thiocarbamate herbicides in NaCl solutions

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20120106

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20121203

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20130806

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20130819

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 5359466

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151