JP3722245B2 - 汚泥の脱水方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、汚泥の脱水方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、フロックの凝集性及び凝集汚泥のろ過性に優れ、機械脱水した後、含水率の低い脱水ケーキを得ることができる汚泥の脱水方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、汚泥の脱水処理には、高分子量のカチオン性ポリマーや両性ポリマーが広く用いられている。このような高分子量のカチオン性ポリマーとしては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの3級塩、4級アンモニウム塩のホモポリマー、アクリルアミドとのコポリマーなどが挙げられる。また、高分子量の両性ポリマーとしては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの3級塩、4級アンモニウム塩とアクリル酸のコポリマーなどが挙げられる。
しかしながら、近年、下水道の整備などにより、汚泥発生量が増加し、汚泥中の有機物量の増加、腐敗などの汚泥性状の悪化が進んでいる。そのために、従来より使用されているカチオン性ポリマーには以下のような問題があり、処理方法の改善が求められている。すなわち、(1)凝集フロックは大きいが、強度が弱い。そのため、重力ろ過性が悪く汚泥の処理量が上がらず、汚泥のSSが分離液にリークし、ろ布からのケーキの剥離性が悪く、脱水機の運転トラブルを起こしやすい。(2)ケーキ含水率が下がらない。そのため、ケーキの埋め立て処分の場合には、ケーキの運搬費用が嵩み、焼却の場合には、焼却炉のトラブルを起こしやすく、焼却のための燃料費が嵩む。(3)汚泥の脱水処理が安定しない。
これらの問題を解決するため、特開平6−65329号公報には、両性高分子凝集剤として、ビニルアミン、N−ビニルホルムアミド、アクリル酸エステル及びアクリル酸単位を有するコポリマーが提案されているが、このような両性高分子凝集剤を単独で脱水処理に使用しても、満足すべき凝集汚泥の脱水性とケーキの含水率は得られていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ろ過性の良好な大きい凝集フロックを形成し、機械脱水により含水率が低い良好なケーキが得られ、安定して処理を行うことができる汚泥の脱水方法を提供することを目的としてなされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、汚泥に対して無機凝集剤を添加したのちに、ビニルアミン塩単位、N−ビニルホルムアミド単位及びアクリル酸単位を有するコポリマーからなる特定構造の両性高分子凝集剤を添加することにより、ろ過性の良好なフロックが形成され、含水率の低いケーキが得られることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)有機性排水の活性汚泥処理において生成した余剰汚泥に、活性汚泥処理の処理水を無機凝集剤で凝集処理した際に生成する無機凝集剤を含む凝集汚泥を添加し、さらに一般式[1]で表される構成単位を有する両性高分子凝集剤を添加して脱水することを特徴とする汚泥の脱水方法、
【化2】
(ただし、式中、R1、R2、R3及びR4は水素又はメチル基であり、Mは水素、ナトリウム又はカリウムであり、Xは酸残基であり、x、y及びzは各構成単位のモル%を表し、x=20〜90モル%、y=5〜75モル%、z=2〜40モル%である。)、及び、
(2)一般式[1]で表される両性高分子凝集剤の、1N塩化ナトリウム水溶液を溶媒として30℃で測定した固有粘度が、1dl/g以上である第(1)項記載の汚泥の脱水方法、
を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明方法は、有機性排水の活性汚泥処理において生成する余剰汚泥に適用することができる。有機性排水としては、例えば、下水、し尿、一般産業排水などであり、これらの排水の活性汚泥処理により発生する余剰汚泥は、通常2重量%前後のSSを含有している。
本発明方法においては、余剰汚泥に無機凝集剤を添加する。使用する無機凝集剤には特に制限はなく、例えば、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、ポリ硫酸鉄などを挙げることができる。添加する無機凝集剤の種類及び添加量は、処理すべき余剰汚泥の種類や性状に応じて適宜選定することができる。
本発明方法において、余剰汚泥に無機凝集剤を添加する方法には特に制限はなく、例えば、活性汚泥処理において生成した余剰汚泥に直接無機凝集剤を添加することができ、あるいは、活性汚泥処理の処理水にさらに高次凝集処理するために無機凝集剤を添加し、その際生成する無機凝集剤を含む凝集汚泥を返送して活性汚泥処理の余剰汚泥と混合することにより、余剰汚泥に無機凝集剤を添加することができる。
本発明方法においては、無機凝集剤を添加した余剰汚泥に、さらに一般式[1]で表される、ビニルアミン塩単位、N−ビニルホルムアミド単位及びアクリル酸単位を有する両性高分子凝集剤を添加する。
【化3】
一般式[1]において、R1、R2、R3及びR4は水素又はメチル基であり、Mは水素、ナトリウム又はカリウムであり、Xは酸残基であり、x、y及びzは各構成単位のモル%を表し、x=20〜90モル%、y=5〜75モル%、z=2〜40モル%である。一般式[1]は、各構成単位が、x、y及びzの比率で存在することを表すものであり、各構成単位がブロック状に結合していることを意味するものではない。
【0006】
一般式[1]において、xが20モル%未満であると、凝集処理において形成されるフロック径が小さく、凝集汚泥のろ過性が不良で、ろ液中へSSがリークするおそれがある。xが90モル%を超えると、一般式[1]で表される両性高分子凝集剤の両性ポリマーとしての性質が現れず、本発明の目的が達せられないおそれがある。一般式[1]において、yが5モル%未満であっても、yが75モル%を超えても、凝集処理において形成されるフロック径が小さく、凝集汚泥のろ過性が不良で、ろ液中へSSがリークするおそれがある。一般式[1]において、zが2モル%未満であると、凝集汚泥のろ過性が不良で、脱水ケーキの含水率が高くなるおそれがある。zが40モル%を超えると、凝集処理において形成されるフロック径が小さく、凝集汚泥のろ過性が悪く、脱水ケーキの含水率が高くなるおそれがある。
本発明方法において使用する一般式[1]で表される両性高分子凝集剤の合成方法には特に制限はなく、公知の方法により製造することができる。例えば、N−ビニルカルボン酸アミド又はN−イソプロペニルカルボン酸アミドと(メタ)アクリル酸又はその塩を共重合し、得られるコポリマーのN−ビニルカルボン酸アミド単位又はN−イソプロペニルカルボン酸アミド単位の一部を加水分解してビニルアミン塩単位又はイソプロペニルアミン塩単位とすることにより製造することができる。N−ビニルカルボン酸アミドとしては、N−ビニルホルムアミド及びN−ビニルアセトアミドを挙げることができ、N−イソプロペニルカルボン酸アミドとしては、N−イソプロペニルホルムアミド及びN−イソプロペニルアセトアミドを挙げることができる。また、(メタ)アクリル酸及びその塩としては、アクリル酸、メタクリル酸、それらのナトリウム塩及びカリウム塩を挙げることができる。
【0007】
本発明方法に使用する一般式[1]で表される両性高分子凝集剤は、x=20〜90モル%、y=5〜75モル%、z=2〜40モル%の範囲にある限り、他の共重合可能なモノマー単位を有することができる。他の共重合可能なモノマーとしては、適当なモノマー反応性比を有するものであれば制限なく使用することができ、例えば、(メタ)アクリルアミド、スチレン、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、N−ビニルピロリドンなどのノニオン性モノマー、ビニルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸などのスルホン基を有するモノマー又はそのアルカリ金属塩などのアニオン性モノマー、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどの3級塩若しくは4級アンモニウム塩などのカチオン性モノマーなどを挙げることができる。
一般式[1]で表される両性高分子凝集剤の原料となるコポリマーの重合方法には特に制限はなく、使用するモノマー及び生成するコポリマーの溶解性などに応じて、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などを選ぶことができる。多くの場合、使用する原料モノマーも生成するコポリマーも水溶性であるので、水溶液重合を好適に使用することができる。原料モノマーを水に溶解し、不活性ガスをバブリングし、所定温度まで昇温したのち水溶性重合開始剤を添加することによって重合し、コポリマーを得ることができる。水溶液重合により得られたコポリマーは、そのまま又は単離したのち、加水分解に供することができる。また、使用するモノマーの水への溶解度が小さいときは、懸濁重合、乳化重合などを用いることができる。重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩など、一般的な開始剤を用いることができるが、アゾ系化合物が特に好ましい。
【0008】
上記のコポリマーの水溶液を酸又はアルカリの存在下に加熱することにより、コポリマー中の酸アミド単位を加水分解してアミン塩単位とし、一般式[1]で表される両性高分子凝集剤を得ることができる。コポリマーの構造と目的の加水分解率に応じて、反応条件を選択することが可能である。通常は上記のコポリマーを5〜80重量%の水溶液又は水分散液とし、加水分解すべき酸アミド単位に対し1〜5当量倍の酸又はアルカリを加え、40〜100℃に加熱することにより加水分解を行うことができる。加水分解に使用する酸には特に制限はなく、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、ギ酸、酢酸などを挙げることができる。これらの酸の残基は、加水分解後にX-として対イオンとなる。加水分解に使用するアルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどを挙げることができる。
本発明方法に使用する両性高分子凝集剤は、高分子量であることが好ましく、分子量の指標となる1N塩化ナトリウム水溶液を溶媒として30℃で測定した固有粘度が1dl/g以上であることが好ましく、3dl/g以上であることがさらに好ましい。
本発明方法において、両性高分子凝集剤は、加水分解反応を終了した水溶液のまま又は濃縮若しくは希釈した水溶液として使用することができ、油中水型エマルションとして使用することができ、あるいは、加水分解後の水溶液をアセトンなどの有機溶媒と混合し、両性高分子凝集剤を沈殿せしめた後、分離、乾燥して粉末化して使用することができる。両性高分子凝集剤を水溶液として使用する場合は、劣化を防止するために酸性物質、例えば、塩酸、酢酸、スルファミン酸などを添加することが好ましい。
【0009】
本発明方法においては、一般式[1]で表される両性高分子凝集剤に、他のカチオン性ポリマー、アニオン性ポリマー、両性ポリマーなどを加えて併用することができ、これらを溶解の際にブレンドし、あるいは各々を別々に汚泥に添加して脱水に用いることができる。
本発明方法において、無機凝集剤及び一般式[1]で表される両性高分子凝集剤の添加方法には特に制限はなく、通常の汚泥脱水操作を適用することができる。無機凝集剤及び一般式[1]で表される両性高分子凝集剤は、いずれも短時間で余剰汚泥に急速に混合することが望ましいので、あらかじめ水溶液として添加することが好ましい。また、一般式[1]で表される両性高分子凝集剤は通常は高分子量であるため、0.1〜1重量%の水溶液として添加することが好ましい。本発明方法においては、余剰汚泥に無機凝集剤を添加して混合したのち、続いて一般式[1]で表される両性高分子凝集剤を添加して混合し、撹拌することにより強固で大きいフロックを形成せしめることができる。
本発明方法において、活性汚泥処理の処理水に無機凝集剤を添加して高次処理を行う場合には、その際に発生する無機凝集剤を含む凝集汚泥を返送して余剰汚泥に添加することにより、凝集汚泥中の無機凝集剤を利用することができ、余剰汚泥にあたらしく無機凝集剤を添加することが不要となる。
本発明方法において、凝集処理された余剰汚泥の脱水に用いる脱水機には特に制限はなく、通常の汚泥処理に使用される機器を使用することができる。このような脱水機としては、例えば、ベルトプレス脱水機、遠心脱水機、フィルタープレス脱水機、スクリュープレス脱水機、真空脱水機などを挙げることができる。本発明方法によれば、固い凝集フロックが得られ、処理された汚泥のろ過性が良好なため固液分離が容易であり、ろ液が清澄で含水率の低い脱水ケーキが得られ、汚泥種及び汚泥性状の変化に対して安定した処理効果が得られる。また、ろ布からのケーキの剥離性が良好で、そのため圧搾圧力を高めることが可能であり、その結果ケーキの含水率を一層低下し、汚泥の処理量を上げることができる。
【0010】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
製造例1(両性高分子凝集剤A)
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素導入管をつけた500mlフラスコに、N−ビニルホルムアミド63.9g(0.9モル)、アクリル酸ナトリウム9.4g(0.1モル)及び水310gを入れ、雰囲気を窒素で置換した。撹拌しつつ60℃に昇温し、2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩の10重量%水溶液1.0gを添加し、60℃を保ったまま5時間重合を続けた。その後、濃塩酸58.9g(塩化水素として0.6モル)を加え、加熱して還流しつつ4時間反応し、ポリマー中のビニルホルムアミド単位の0.6モル相当分を加水分解してビニルアミンの塩酸塩単位とした。得られたポリマー溶液を両性高分子凝集剤Aとして、以下の実施例に使用する。
得られたポリマー溶液の一部をアセトン中に添加し、析出したポリマーを真空乾燥した。この両性ポリマーの、1N塩化ナトリウム水溶液を溶媒として30℃で測定した固有粘度は、3.5dl/gであった。
製造例1と同様にして、高分子凝集剤B〜Pを合成した。実施例及び比較例において使用した高分子凝集剤の特性を、まとめて第1表に示す。また、実施例及び比較例において使用した汚泥の性状を、まとめて第2表に示す。
【0011】
【表1】
【0012】
【表2】
【0013】
参考例1
SS1.97重量%、VSS/SS79.5重量%、繊維分/SS16.3重量%、pH4.9、電導度1.7mS/cmである下水・混合生汚泥(1)200mlを300ml容のポリビーカーにとり、38重量%塩化第二鉄水溶液0.2mlを添加し、タービン羽根付き撹拌機を用いて、500rpmで20秒間撹拌した。混合物のpHは、5.0であった。
次に、この汚泥に0.2重量%濃度に調製した両性高分子凝集剤Aの水溶液7.9mlを添加し、同じ撹拌機を用いて、250rpmで30秒間撹拌した。
フロック径を測定したところ、3.5mmであった。ナイロンろ布を敷いたヌッチェロートに内径50mmの塩化ビニル樹脂製の円筒を置き、その中へ凝集汚泥を注ぎ込み、メスシリンダーで10秒後のろ液量を測定したところ80mlであった。ろ布上の凝集汚泥をベルトプレス脱水機用ポリエステルろ布に一定量とり、1.0kg/cm2で60秒圧搾を行い、ケーキをへらでかき取り、含水率を測定したところ73.9重量%であった。
なお、塩化第二鉄を添加することなく両性高分子凝集剤Aのみを用いて凝集したところ、フロック径は0.5mmと小さく、10秒後のろ液量は25mlであった。また、ろ布上の凝集汚泥の圧搾脱水試験はできなかった。
比較例1
両性高分子凝集剤Aの代わりに両性高分子凝集剤Hを用いた以外は、参考例1と同じ操作を繰り返した。フロック径は0.5mmであり、10秒後のろ液量は、30mlであった。また、ろ布上の凝集汚泥は、ベルトプレス脱水機用ポリエステルろ布に移すことができなかった。
比較例2
下水・混合生汚泥(1)200mlを300ml容のポリビーカーにとり、塩化第二鉄水溶液を添加することなく、0.2重量%濃度に調製した高分子凝集剤Iの水溶液7.9mlを添加し、タービン羽根付き撹拌機を用いて、250rpmで30秒間撹拌した。
フロック径を測定したところ、2.0mmであった。ナイロンろ布を敷いたヌッチェロートに内径50mmの塩化ビニル樹脂製の円筒を置き、その中へ凝集汚泥を注ぎ込み、メスシリンダーで10秒後のろ液量を測定したところ58mlであった。ろ布上の凝集汚泥をベルトプレス脱水機用ポリエステルろ布に一定量とり、1.0kg/cm2で60秒圧搾を行い、ケーキをへらでかき取り、含水率を測定したところ76.3重量%であった。
比較例3
高分子凝集剤Iの代わりに高分子凝集剤Jを用いた以外は、比較例2と同じ操作を繰り返した。フロック径は2.0mmであり、10秒後のろ液量は54mlであり、ケーキの含水率は77.5重量%であった。
比較例4
両性高分子凝集剤Hの代わりに高分子凝集剤Kを用いた以外は、比較例1と同じ操作を繰り返した。フロック径は3.5mmであり、10秒後のろ液量は72mlであり、ケーキの含水率は75.2重量%であった。
参考例1及び比較例1〜4の結果を、まとめて第3表に示す。
【0014】
【表3】
【0015】
本発明方法により、塩化第二鉄水溶液及び両性高分子凝集剤Aを用いて下水・混合生汚泥を処理した参考例1では、フロック径が大きく、凝集汚泥のろ過性が良好で、ケーキの含水率が低い。これに対して、アクリル酸ナトリウム単位が50モル%である両性高分子凝集剤Hを用いた比較例1ではフロック径が小さく、凝集汚泥のろ過速度が極めて小さい。また、従来の両性高分子凝集剤であるジメチルアミノエチルメタクリレートの四級化物/アクリルアミド/アクリル酸のコポリマーKを用いた比較例4では、フロック径は参考例1と同じであったものの、凝集汚泥のろ過性がやや悪く、ケーキの含水率もやや高い。塩化第二鉄水溶液を添加することなく、アクリル酸ナトリウム単位を有しない高分子凝集剤Iを用いた比較例2、及び、同様に塩化第二鉄水溶液を添加することなく、カチオン性高分子凝集剤Jを用いた比較例3では、フロック径が小さく、凝集汚泥のろ過性が悪く、ケーキの含水率も高い。
参考例2
SS1.71重量%、VSS/SS66.4重量%、繊維分/SS11.6重量%、pH5.5、電導度2.1mS/cmである下水・混合生汚泥(2)200mlを300ml容のポリビーカーにとり、38重量%塩化第二鉄水溶液0.4mlを添加し、タービン羽根付き撹拌機を用いて、500rpmで20秒間撹拌した。混合物のpHは、4.7であった。
次に、この汚泥に0.2重量%濃度に調製した両性高分子凝集剤Bの水溶液17.1mlを添加し、同じ撹拌機を用いて、250rpmで30秒間撹拌した。
フロック径を測定したところ、10mmであった。ナイロンろ布を敷いたヌッチェロートに内径50mmの塩化ビニル樹脂製の円筒を置き、その中へ凝集汚泥を注ぎ込み、メスシリンダーで10秒後のろ液量を測定したところ156mlであった。ろ布上の凝集汚泥をベルトプレス脱水機用ポリエステルろ布に一定量とり、1.0kg/cm2で60秒圧搾を行い、ケーキをへらでかき取り、含水率を測定したところ70.0重量%であった。
比較例5〜8
高分子凝集剤H、I、J及びKを用い、第4表に示す条件で下水・混合生汚泥(2)の処理を行った。得られた結果を第4表に示す。
【0016】
【表4】
【0017】
本発明方法により、塩化第二鉄水溶液及び両性高分子凝集剤Bを用いて下水・混合生汚泥を処理した参考例2では、フロック径が大きく、凝集汚泥のろ過性が良好で、ケーキの含水率が低い。これに対して、アクリル酸ナトリウム単位が50モル%である両性高分子凝集剤Hを用いた比較例5ではフロック径が小さく、凝集汚泥のろ過性が悪く、ケーキの含水率が高い。従来の両性高分子凝集剤であるジメチルアミノエチルメタクリレートの四級化物/アクリルアミド/アクリル酸のコポリマーKを用いた比較例8では、フロック径は参考例2より大きいものの、凝集汚泥のろ過性が悪く、ケーキの含水率もやや高い。塩化第二鉄水溶液を添加することなく、アクリル酸ナトリウム単位を有しない高分子凝集剤Iを用いた比較例6、及び、同様に塩化第二鉄水溶液を添加することなく、カチオン性高分子凝集剤Jを用いた比較例7では、フロック径が小さく、凝集汚泥のろ過性が悪く、ケーキの含水率も高い。
実施例3
SS2.10重量%、VSS/SS75.5重量%、繊維分/SS2.6重量%、pH6.7、電導度1.4mS/cmであるし尿・3次混合汚泥(3)200mlを300ml容のポリビーカーにとり、38重量%塩化第二鉄水溶液0.2mlを添加し、タービン羽根付き撹拌機を用いて、500rpmで20秒間撹拌した。混合物のpHは、5.0であった。
次に、この汚泥に0.2重量%濃度に調製した両性高分子凝集剤Cの水溶液23.1mlを添加し、同じ撹拌機を用いて、250rpmで30秒間撹拌した。
フロック径を測定したところ、4.0mmであった。ナイロンろ布を敷いたヌッチェロートに内径50mmの塩化ビニル樹脂製の円筒を置き、その中へ凝集汚泥を注ぎ込み、メスシリンダーで10秒後のろ液量を測定したところ108mlであった。ろ布上の凝集汚泥をベルトプレス脱水機用ポリエステルろ布に一定量とり、1.0kg/cm2で60秒圧搾を行い、ケーキをへらでかき取り、含水率を測定したところ77.2重量%であった。
比較例9〜12
高分子凝集剤H、I、J及びKを用い、第5表に示す条件でし尿・3次混合汚泥(1)の処理を行った。得られた結果を第5表に示す。
【0018】
【表5】
【0019】
本発明方法により、塩化第二鉄水溶液及び両性高分子凝集剤Cを用いてし尿・3次混合汚泥を処理した実施例3では、フロック径が大きく、凝集汚泥のろ過性が良好で、ケーキの含水率が低い。これに対して、アクリル酸ナトリウム単位が50モル%である両性高分子凝集剤Hを用いた比較例9ではフロック径が小さく、凝集汚泥のろ過性が悪く、ケーキの含水率がやや高い。従来の両性高分子凝集剤であるジメチルアミノエチルメタクリレートの四級化物/アクリルアミド/アクリル酸のコポリマーKを用いた比較例12では、フロック径は実施例3より大きいものの、凝集汚泥のろ過性が悪く、ケーキの含水率もやや高い。塩化第二鉄水溶液を添加することなく、アクリル酸ナトリウム単位を有しない高分子凝集剤Iを用いた比較例10、及び、同様に塩化第二鉄水溶液を添加することなく、カチオン性高分子凝集剤Jを用いた比較例11では、フロック径は実施例3と同程度の大きさであるが、凝集汚泥のろ過性がやや悪く、ケーキの含水率が高い。
実施例4
SS1.80重量%、VSS/SS77.4重量%、繊維分/SS0.9重量%、pH6.6、電導度2.4mS/cmであるし尿・3次混合汚泥(4)200mlを300ml容のポリビーカーにとり、0.2重量%濃度に調製した両性高分子凝集剤Dの水溶液25.2mlを添加し、タービン羽根付き撹拌機を用いて、250rpmで30秒間撹拌した。
フロック径を測定したところ、6mmであった。ナイロンろ布を敷いたヌッチェロートに内径50mmの塩化ビニル樹脂製の円筒を置き、その中へ凝集汚泥を注ぎ込み、メスシリンダーで10秒後のろ液量を測定したところ128mlであった。また、このろ液は、完全に清澄であった。ろ布上の凝集汚泥をベルトプレス脱水機用ポリエステルろ布に一定量とり、0.5kg/cm2で60秒圧搾を行い、ケーキをへらでかき取り、含水率を測定したところ80.4重量%であった。
実施例5〜7
両性高分子凝集剤E、F及びGを用い、実施例4と同様にして、し尿・3次混合汚泥(2)の処理を行った。処理条件及び得られた結果を第6表に示す。
比較例13〜17
高分子凝集剤L、M、N、O及びPを用い、実施例4と同様にして、し尿・3次混合汚泥(2)の処理を行った。処理条件及び得られた結果を第6表に示す。
【0020】
【表6】
【0021】
本発明方法により、両性高分子凝集剤D、E、F又はGを用いてし尿・3次混合汚泥を処理した実施例4〜7では、凝集汚泥のろ過性が良好で、ろ液はすべて完全に清澄であり、ケーキの含水率が低い。これに対して、N−ビニルホルムアミド単位が80モル%である両性高分子凝集剤Lを用いた比較例13及びアクリル酸ナトリウム単位が1モル%である両性高分子凝集剤Mを用いた比較例14は、いずれもフロック径がやや小さく、凝集汚泥のろ過性が悪く、ろ液がかすかに濁っていて、ケーキの含水率がやや高い。従来のカチオン性高分子凝集剤であるジメチルアミノエチルメタクリレートの四級化物ポリマーNを用いた比較例15、ジメチルアミノエチルメタクリレートの四級化物/アクリルアミドのコポリマーO又はPを用いた比較例16及び比較例17では、凝集汚泥のろ過性が悪く、ケーキの含水率が高い。
【0022】
【発明の効果】
本発明方法によれば、固いフロックを形成し、含水率の低い脱水ケーキが得られる。また、ろ布からのケーキの剥離性が良く、圧搾圧力を高くすることができ、その結果、よりケーキの含水率が下がるので、汚泥の処理量が向上する。
Claims (2)
- 一般式[1]で表される両性高分子凝集剤の、1N塩化ナトリウム水溶液を溶媒として30℃で測定した固有粘度が、1dl/g以上である請求項1記載の汚泥の脱水方法。
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