JP3719531B2 - 汚泥の脱水方法 - Google Patents
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【産業上の利用分野】
本発明は、汚泥の脱水方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、従来の方法では脱水処理が困難な、含有塩類濃度の高い汚泥を、優れた凝集性、脱水性にて脱水処理することができる汚泥の脱水方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、下水処理、屎尿処理、有機性産業廃水処理などで生じる有機性汚泥の脱水処理には、通常、カチオン性高分子凝集剤が使用されている。しかし、通常のカチオン性高分子凝集剤を用いる従来の方法では、近年の汚泥発生量の増加や汚泥性状の悪化などのために、含水率、SSの回収率、ケーキのろ布からの剥離性などの点で必ずしも満足した結果は得られず、その改善が求められている。また、その中でも特に屎尿の海水希釈汚泥、屎尿の消化処理汚泥、下水の消化処理汚泥などの塩類濃度の高い、すなわち電気伝導率の高い汚泥については、その改善が求められている。
屎尿自体塩濃度が高いものであるが、これを生物処理するに際しては希釈水として大量の水を必要とすることから、海水を希釈水として使用する場合がある。従って、このような海水を用いた処理系から排出される余剰汚泥は、高濃度に塩類を含有するものとなる。また、屎尿や下水の消化汚泥についても、汚泥を好気性消化又は嫌気性消化すると、菌体内から溶出する塩類及びアミノ酸由来の有機酸やアンモニアなどのために、汚泥中の塩類濃度は高くなる。このような高濃度に塩類を含有する汚泥は、従来のカチオン性高分子凝集剤を用いる脱水処理では、凝集性、SSの回収性、ケーキのろ布からの剥離性、ケーキ含水率の点で効果が悪く、改善が必要であった。
高濃度に塩類を含有する汚泥を脱水処理する方法の改良として、特公昭61−44559号公報に、ベンジルハライドで四級化したN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート型カチオン性高分子凝集剤を、無機塩含有汚泥の脱水処理に用いる方法が提案されている。この方法は、多量の無機塩を含む汚泥に対し有効な凝集剤を提案するものではあるが、その凝集剤の高分子自体の基本骨格は従来のカチオン性高分子凝集剤と変わらないため、性能面では特に改善されていない。
本発明者らは、先に特開平4−7100号公報において、海水希釈処理汚泥などの塩類濃度の高い汚泥の脱水処理に、四級化したN,N−ジアルキルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド単位を有するカチオン性高分子凝集剤を用いる方法を提案した。この方法は、電気伝導率が3,000μS/cm以上、とりわけ4,000μS/cm以上の高濃度塩類含有汚泥に極めて有効であるが、近年、汚泥性状の悪化が一層進むにしたがって、電気伝導率が10,000μS/cm以上のような、極めて高濃度に塩類を含有する汚泥の有効な脱水方法が求められるようになった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、電気伝導率が10,000μS/cm以上である塩類濃度の高い汚泥の脱水を、比較的少量の凝集剤の添加により行い、しかも十分な脱水性が得られ、ケーキの含水率を低下することができる汚泥の脱水方法を提供することを目的としてなされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、一級アミンをカチオン基として有する特定の構成単位を有するカチオン性高分子凝集剤が、電気伝導率が10,000μS/cm以上である塩類濃度の高い汚泥の脱水処理に極めて有効であることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)屎尿を海水希釈して生物処理する際に発生する汚泥であって、かつ電気伝導率が10,000μS/cm以上である塩類濃度の高い汚泥の脱水において、下記一般式[1]で表されるアミジン単位又は下記一般式[2]で表されるアミン単位を有するカチオン性高分子凝集剤を添加して脱水することを特徴とする汚泥の脱水方法、
【化3】
(ただし、式中、R1及びR2は水素又はメチル基であり、X-は塩形成性アニオンである。)、及び、
(2)屎尿を海水希釈して生物処理する際に発生する汚泥であって、かつ電気伝導率が10,000μS/cm以上である塩類濃度の高い汚泥の脱水において、下記一般式[3]で表されるアミジン単位又は下記一般式[4]で表されるアミン単位を有するカチオン性高分子凝集剤を添加して脱水することを特徴とする汚泥の脱水方法、
【化4】
(ただし、式中、R1及びR2は水素又はメチル基である。)、
を提供するものである。
【0005】
本発明方法は、塩類濃度が高いために、従来の高分子凝集剤によっては凝集性、脱水性が悪く、脱水処理が困難とされていた、電気伝導率が10,000μS/cm以上の汚泥を処理対象とする。電気伝導率が10,000μS/cm以上の汚泥としては、具体的には、例えば、屎尿の海水希釈汚泥や下水消化汚泥などが挙げられる。本発明方法の対象は、特に限定されるものではないが、電気伝導率の高い高塩類濃度の汚泥に特に好適に適用することができる。本発明方法においては、塩類濃度の高い汚泥に、一般式[1]若しくは[3]で表されるアミジン単位又は一般式[2]若しくは[4]で表されるアミン単位を有するカチオン性高分子凝集剤を添加する。
本発明方法に用いるアミジン単位を有するポリマーは、一般式[5]で表されるN−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−イソプロペニルホルムアミド又はN−イソプロペニルアセトアミド及び一般式[6]で表される(メタ)アクリロニトリルを必須モノマー成分としてなるポリマーを、加水分解及びアミジン化して得ることができる。本発明方法に用いるアミン単位を有するポリマーは、一般式[5]で表されるN−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−イソプロペニルホルムアミド又はN−イソプロペニルアセトアミドを必須モノマー成分としてなるポリマーを、加水分解して得ることができる。
【化5】
(ただし、式中、R1、R2及びR3は水素又はメチル基である。)
【0006】
さらに、これらの加水分解及びアミジン化に供するポリマーは、必須モノマー成分以外に他の共重合可能なビニルモノマー成分などを有していてもよい。このような共重合可能なビニルモノマーなどとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、酢酸ビニル、スチレン、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、その三級塩、その四級アンモニウム塩、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、その三級塩、その四級アンモニウム塩、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド、アリルアミンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明において、上記の加水分解及びアミジン化反応に供するポリマーを得るための重合方法には特に制限はなく、使用するモノマー及び生成するポリマーの溶解性などに応じて、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などを選ぶことができる。例えば、使用するモノマーも生成するポリマーも水溶性であれば、水溶液重合が可能であり、モノマーを水に溶解し、不活性ガスにより雰囲気を置換し、所定温度まで昇温したのち水溶性重合開始剤を添加することによってポリマーを得ることができる。水溶液重合により得られたポリマーは、そのまま、又は単離したのち、加水分解及びアミジン化反応に供することができる。また、使用するモノマーの水への溶解度が小さいときは、懸濁重合、乳化重合などを用いることができる。乳化重合においては、水中にモノマー、乳化剤、水溶性の重合開始剤などを加え、不活性ガス雰囲気中で撹拌下に加熱することによりポリマーを得ることができる。重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩など、公知の重合開始剤を用いることができるが、アゾ系化合物が特に好ましい。
【0007】
上記のポリマーの水溶液又は水分散液を酸の存在下に加熱することにより、ポリマー中の酸アミド単位を加水分解して一般式[2]で表されるアミン単位とし、さらに(メタ)アクリロニトリルと共重合したコポリマーの場合には、アミン単位と隣接するニトリル単位の反応により一般式[1]で表されるアミジン単位を生成するアミジン化反応を行う。加水分解及びアミジン化反応は2段階で行うことができるが、通常は1段階で行うことが好ましい。ポリマーの構造と目的の加水分解率及びアミジン化率に応じて、反応条件を選択することが可能である。通常は上記のポリマーを5〜80重量%の水溶液又は水分散液とし、酸アミド単位に対し1〜5当量倍の酸を加え、40〜100℃に加熱することにより加水分解及びアミジン化反応を行うことができる。加水分解及びアミジン化反応に使用する酸には特に制限はなく、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、酢酸などを使用することができる。また、上記のポリマーの水溶液の加水分解及びアミジン化反応は、アルカリの存在下に加熱することによっても同様に行うことができるが、このときはアミジン単位及びアミン単位は一般式[1]及び[2]で表されるアンモニウム塩型ではなく、一般式[3]及び[4]で表されるアミン型となる。アルカリの存在下に加水分解及びアミジン化反応を行って得られたカチオン性高分子凝集剤も、本発明方法に使用することができる。
一般式[5]で表されるN−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−イソプロペニルホルムアミド又はN−イソプロペニルアセトアミドと、一般式[6]で表される(メタ)アクリロニトリルのコポリマーを加水分解及びアミジン化したとき、加水分解によって生成したアミン単位のうち、ニトリル単位に隣接しないものは、アミジン単位を形成することができないので、アミン単位のままで残存する。
【0008】
本発明方法に使用するカチオン性高分子凝集剤において、一般式[1]又は[3]において、R1及びR2は水素又はメチル基であり、それらは互いに同一であっても異なっていてもよく、またポリマーのR1又はR2がすべて水素又はメチル基のいずれかであってもよく、あるいは、ポリマーのR1又はR2の一部が水素であって残部がメチル基であってもよい。一般式[2]又は[4]において、R1は水素又はメチル基であり、ポリマーのR1がすべて水素又はメチル基のいずれかであってもよく、あるいは、ポリマーのR1の一部が水素であって残部がメチル基であってもよい。一般式[1]又は[3]において、R1又はR2が炭素数2以上のアルキル基であると、一般式[1]又は[3]の構造を有するポリマーの親水性が不足するおそれがあり、一般式[2]又は[4]において、R1が炭素数2以上のアルキル基であると、一般式[2]又は[4]の構造を有するポリマーの親水性が不足するおそれがある。一般式[1]又は[2]中、X-は塩形成性アニオンであり、塩形成性アニオンとしては、例えば、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硝酸イオン、酢酸イオンなどを挙げることができる。
本発明方法に使用するカチオン性高分子凝集剤において、アミジン単位を有するポリマーの全構造単位中に占めるアミジン単位の割合は35〜95モル%であることが性能上好ましく、アミジン単位を有するポリマーが同時にアミン単位を有する場合には、アミジン単位とアミン単位の合計量が全構造単位に対して35〜95モル%であることが性能上好ましい。また、アミジン単位を有せずアミン単位のみを有するポリマーの全構造単位中に占めるアミン単位の割合は35〜95モル%であることが性能上好ましい。
本発明方法に使用するアミジン単位又はアミン単位を有するカチオン性高分子凝集剤は、高分子量であることが好ましく、分子量の指標となる1N塩化ナトリウム水溶液を溶媒として30℃で測定した固有粘度が1dl/g以上であることが性能上好ましく、3dl/g以上であることがより好ましい。
【0009】
本発明方法においては、一般式[1]若しくは[3]で表されるアミジン単位又は一般式[2]若しくは[4]で表されるアミン単位を有するカチオン性高分子凝集剤を水溶液などとして処理対象汚泥に添加し、撹拌し、十分に凝集処理した後、脱水機で脱水する。カチオン性高分子凝集剤の添加量には特に制限はないが、処理対象汚泥の固形分に対して0.2〜3.0重量%となるように添加することが好ましい。
本発明方法においては、一般式[1]若しくは[3]で表されるアミジン単位又は一般式[2]若しくは[4]で表されるアミン単位を有するカチオン性高分子凝集剤を単独で汚泥に添加するほか、これらのカチオン性高分子凝集剤を任意の組み合わせで混合して汚泥に添加することができ、これらのカチオン性高分子凝集剤とアニオン性高分子凝集剤を併用することができ、必要に応じて、他のカチオン性ポリマー、ノニオン性ポリマー、アニオン性ポリマーを加えて混合一液としたり、あるいは、硝酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、スルファミン酸などの脱水処理に悪影響を及ぼさない他の成分と併用することができる。さらに、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム、塩化第一鉄、硫酸第一鉄、ポリ硫酸鉄などの無機凝集剤と併用することができる。
本発明方法において使用する脱水機には特に制限はなく、例えば、ろ布に付着させた汚泥中の水分を真空により吸引し脱水する真空脱水機、ろ布の間に汚泥を圧入し、さらに圧力をかけて圧搾することにより脱水するフィルタープレス脱水機、多数のロールの間に2枚のろ布を連続的に移動させ一台の機械で重力によるろ過と圧搾及び圧縮による脱水を行うベルトプレス脱水機、遠心力を利用した遠心脱水機、スクリュー羽根の回転搬送機構で汚泥を移送しスクリューの外側に設けた円筒スクリーンからろ液を排除しつつ圧搾脱水するスクリュープレス脱水機などを用いることができる。
本発明方法に使用するカチオン性高分子凝集剤の高濃度塩類含有汚泥に対する優れた凝集性能、脱水性能の作用機構の詳細は明らかではないが以下のように考えられる。すなわち、一般式[1]、[2]、[3]又は[4]で表されるカチオン性高分子凝集剤の構成単位のカチオン基はいずれも一級アミンであり、従来のカチオン性高分子凝集剤とは異なっている。このため、このカチオン性高分子凝集剤は従来のカチオン性高分子凝集剤と異なり、汚泥が有するアニオン基に対して強い引力を及ぼし、高濃度塩類含有汚泥に対して十分に汚泥中のアニオン成分と反応し、その結果、優れた凝集性能、脱水性能を発揮するものと考えられる。
【0010】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
製造例1(アミジン単位及びアミン単位を有するカチオン性高分子凝集剤)
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素導入管をつけた500mlフラスコに、N−ビニルホルムアミド28.4g(0.4モル)、アクリロニトリル31.8g(0.6モル)及び水310gを入れ、雰囲気を窒素で置換した。撹拌しつつ60℃に昇温し、2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩の10%水溶液1.0gを添加し、60℃を保ったまま5時間重合を続けた。水中にポリマーが析出した懸濁液に濃塩酸98.1g(塩化水素として1.0モル)を加え、加熱して還流しつつ4時間反応し、ポリマーをアミジン化した。得られたポリマー溶液をアセトン中に添加し、析出したポリマーを真空乾燥した。このカチオン性ポリマーは、アミジン単位35モル%、アミン単位8モル%、ホルムアミド単位11モル%、ニトリル単位46モル%を有していた。このカチオン性ポリマーの、1N塩化ナトリウム水溶液を溶媒として30℃で測定した固有粘度は、4.2dl/gであった。このポリマーを、凝集剤(I−1)とする。
製造例2(アミジン単位及びアミン単位を有するカチオン性高分子凝集剤)
製造例1と同様にして、N−ビニルホルムアミド35.1g(0.5モル)、アクリロニトリル26.5g(0.5モル)より、アミジン単位56モル%、アミン単位13モル%、ホルムアミド単位9モル%、ニトリル単位22モル%を有するカチオン性ポリマーを得た。このカチオン性ポリマーの固有粘度は、5.2dl/gであった。このポリマーを、凝集剤(I−2)とする。
製造例3(アミジン単位及びアミン単位を有するカチオン性高分子凝集剤)
製造例1と同様にして、N−ビニルホルムアミド49.7g(0.7モル)、アクリロニトリル15.9g(0.3モル)より、アミジン単位33モル%、アミン単位53モル%、ホルムアミド単位7モル%、ニトリル単位7モル%を有するカチオン性ポリマーを得た。このカチオン性ポリマーの固有粘度は、4.0dl/gであった。このポリマーを、凝集剤(I−3)とする。
製造例4(アミン単位を有するカチオン性高分子凝集剤)
製造例1と同様にして、N−ビニルホルムアミド71.0g(1.0モル)より、アミン単位75モル%及びホルムアミド単位25モル%を有するカチオン性ポリマーを得た。このカチオン性ポリマーの固有粘度は、5.2dl/gであった。このポリマーを、凝集剤(I−4)とする。
製造例5(アミン単位を有するカチオン性高分子凝集剤)
製造例1と同様にして、N−ビニルホルムアミド71.0g(1.0モル)より、アミン単位64モル%及びホルムアミド単位36モル%を有するカチオン性ポリマーを得た。このカチオン性ポリマーの固有粘度は、5.7dl/gであった。このポリマーを、凝集剤(I−5)とする。
製造例6(アミン単位を有するカチオン性高分子凝集剤)
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素導入管をつけた500mlフラスコに、N−ビニルホルムアミド71.0g(1.0モル)及び水310gを入れ、雰囲気を窒素で置換した。撹拌しつつ60℃に昇温し、2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩の10%水溶液1.0gを添加し、60℃を保ったまま5時間重合を続けた。得られたポリマー溶液に40重量%水酸化ナトリウム水溶液100g(水酸化ナトリウムとして1.0モル)を加え、加熱して還流しつつ4時間反応し、ポリマーを加水分解した。加水分解したポリマーの水溶液をアセトン中に添加し、析出したポリマーを真空乾燥した。このカチオン性ポリマーは、アミン単位75モル%及びホルムアミド単位25モル%を有していた。このカチオン性ポリマーの、1N塩化ナトリウム水溶液を溶媒として30℃で測定した固有粘度は、6.4dl/gであった。このポリマーを、凝集剤(I−6)とする。
実施例に用いる製造例1〜6で製造した凝集剤(I−1)〜(I〜6)及び比較例に用いる公知のカチオン製高分子凝集剤(II−1)〜(II〜6)の組成及び1N塩化ナトリウム水溶液を溶媒として30℃で測定した固有粘度を第1表に示す。
【0011】
【表1】
【0012】
実施例1
凝集剤(I−1)を用いて、屎尿酸化処理海水希釈汚泥Aの脱水処理を行った。この汚泥は、pH7.3、電気伝導率29,000μS/cm、SS2.5重量%、VSS/SS60.3重量%、繊維分/SS7.3重量%であった。
300mlのビーカーに上記の汚泥200mlを採り、凝集剤(I−1)の0.2重量%水溶液を、凝集剤の添加量が320mg/リットルになるように加え、タービン羽根付撹拌機で500rpmにて60秒間撹拌し、汚泥を凝集させた。
凝集フロックの大きさを測定したところ、フロック径は7mmであった。その後、ろ布を敷いたブフナーロートに、この凝集汚泥を注ぎ込んだ。10秒後のろ液量は80mlであった。また、リークしたSS量から、SS回収率は99重量%以上であった。次いで、ブフナーロート上の汚泥を2枚のろ布ではさみ、0.5kg/cm2の圧力で60秒間圧搾したのち、ろ布からケーキを剥離した。ろ布から剥離したケーキ量は98重量%であり、ケーキ含水率は79.2重量%であった。なお、ろ布から剥離したケーキの量は、ヘラでケーキをかき取った後の上下2枚のろ布を高圧水で洗い出し、付着していた固形物量を測定することにより算出した。
実施例2〜6及び比較例1〜6
第1表に示す凝集剤(I−2)〜(I〜6)及び凝集剤(II−1)〜(II〜6)を用い、実施例1と同様にして、屎尿酸化処理海水希釈汚泥Aの脱水処理を行った。結果を第2表に示す。
【0013】
【表2】
【0014】
実施例7
凝集剤(I−1)を用いて、屎尿酸化処理海水希釈汚泥Bの脱水処理を行った。この汚泥は、pH7.5、電気伝導率32,000μS/cm、SS2.0重量%、VSS/SS78.3重量%、繊維分/SS4.2重量%であった。
凝集剤(I−1)の0.2重量%水溶液を、凝集剤の添加量が270mg/リットルになるように加え、その後実施例1と全く同じ操作を繰り返したところ、フロック径は6mm、10秒後のろ液量は85ml、SS回収率は99重量%以上、ろ布から剥離したケーキ量は98重量%、ケーキ含水率は82.3重量%であった。
実施例8〜12及び比較例7〜12
第1表に示す凝集剤(I−2)〜(I〜6)及び凝集剤(II−1)〜(II〜6)を用い、実施例1と同様にして、屎尿酸化処理海水希釈汚泥Bの脱水処理を行った。結果を第3表に示す。
【0015】
【表3】
【0016】
参考例13
凝集剤(I−1)を用いて、下水消化汚泥Cの脱水処理を行った。この汚泥は、pH7.4、電気伝導率18,000μS/cm、SS1.9重量%、VSS/SS65.4重量%、繊維分/SS4.8重量%であった。
凝集剤(I−1)の0.2重量%水溶液を、凝集剤の添加量が260mg/リットルになるように加え、その後実施例1と全く同じ操作を繰り返したところ、フロック径は6mm、10秒後のろ液量は90ml、SS回収率は99重量%以上、ろ布から剥離したケーキ量は98重量%、ケーキ含水率は77.3重量%であった。
参考例14〜18及び比較例13〜18
第1表に示す凝集剤(I−2)〜(I〜6)及び凝集剤(II−1)〜(II〜6)を用い、実施例1と同様にして、下水消化汚泥Cの脱水処理を行った。結果を第4表に示す。
【0017】
【表4】
【0018】
【発明の効果】
本発明の汚泥の脱水方法によれば、電気伝導率が10,000μS/cm以上の塩類濃度の高い汚泥を脱水処理するに際し、必要な凝集剤の添加量が少量であり、凝集性が良好で形成されるフロックの径が大きく、汚泥のろ過性が良好であり、SS回収率が高く、ケーキ含水率が低く、ろ布からのケーキの剥離状態も良好である。本発明方法により、塩類濃度が高い汚泥を、効率よく処理することが可能となる。
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