JP3720907B2 - 車両用の自動変速制御装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、勾配のきつい路面を走行する際のドライバビリティの向上を図る変速制御システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のCVTシステムにおいては、変速ショックや伝達ロスが抑制されるように、ECUにより、図9(a)に示すような変速スケジュールに従う無段式変速機(以下、CVTと呼ぶ)の変速制御が行われている。車両が勾配のきつい下り坂にさしかかった場合、ドライバは、通常、車速が加速しないように、アクセルペダルの踏み加減を調節する。その結果、アクセルペダルに連動してスロットル弁が閉じるため、図9(a)の変速スケジュールにおいて、車両の走行状態が、坂道にさしかかった際の動作点イよりも更にトップ側の動作点ロ次いで動作点ハへと推移していくため、車両は、加速していくことになる。そこで、運転に熟練したドライバであれば、このとき、一般にスポーツモードと呼ばれている、エンジン回転数を高めに設定したモードにレンジをタイミング良く切り換えて、エンジンブレーキを効果的に使って車両の加速を抑止することができる。即ち、レンジをスポーツモードに設定すると、図9(b)のO−A−B−C−E−F−A−Oで囲まれた領域内で車両の走行状態が推移することになるため、結果として、車両の走行状態は、動作点ハから、より変速比の大きな動作点ニへと推移していく。従って、車両は、効果的なエンジンブレーキを効かせながら、下り坂を走行していく。
【0003】
ところが、タイミング良くレンジの切り換えを行うことができない運転に不慣れなドライバは、下り坂を走行中に、積極的にレンジの切り換えを行うよりは、むしろ、頻繁にフットブレーキを使用する傾向にある。その結果、ブレーキの摩耗を促進することになる。
【0004】
一方、上り坂を走行する際にアクセルペダルの踏み増しを行えば、下り坂走行中とは反対の現象が起こる。即ち、図8(a)の変速スケジュールにおいて、車両の走行状態が、坂道にさしかかった際の動作点よりもロー側の動作点へと推移していくが、アクセルの相当の踏増またはレンジの切り換えを行わなければ、車両は、意図した加速を行わない。
【0005】
そこで、このような問題を解決するために、勾配のある路面を走行する際のエンジンブレーキ性能と加速性能の改善を図る特開昭63−121537号公報記載の車両用無段変速機の制御装置が提案されている。この特開昭63−121537号公報記載の車両用無段変速機の制御装置は、出力軸回転センサで検出された車速とスロットル弁開度センサで検出されたスロットル弁開度とから算出した無段変速機の目標変速比を、車両傾斜角度センサで逐次検出される車体の傾斜角により定まる速度比修正量を用いて適宜補正する。従って、無段変速機の目標速度比には、車両の走行路の勾配に適した値が設定されるので、下り坂走行時においては、優れたエンジンブレーキ性能が自動的に発揮され、上り坂走行時中においては、優れた加速性能が自動的に発揮される。即ち、本制御装置を車両に搭載すれば、車両の走行安全性と走破性とを共に確保することができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記特開昭63−121537号公報記載の車両用無段変速機の制御装置を車両に搭載すると、車両の走行路の勾配を検出するための車両傾斜角度センサを車両に取付ける必要がある。つまり、このような新たな要素の付加は、車両の製造コストの増加に直結する。
【0007】
そこで、本発明は、車両に新たなセンサを搭載することなく、下り坂走行時には優れたエンジンブレーキ性能を、上り坂走行時には優れた加速性能を自動的に発揮させる自動変速機の制御装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
車両に搭載された無段式変速機の変速比を、平坦路面における変速スケジュールに基づき定めた目標変速比を用いて制御する変速制御装置であって、
前記車両の走行抵抗トルクと加速トルクと前記無段式変速機の出力軸トルクとを検出する検出手段と、
路面の勾配に対して変速比を一意に対応付ける対応情報を、前記平坦路面における変速スケジュールとは独立の情報として保持する記憶手段と、
前記車両の走行する路面の勾配を、前記検出手段の検出結果から推定する勾配推定手段と、
前記勾配推定手段が推定した前記勾配が、坂道に該当する勾配の範囲にあるか否かを判断する判定手段と、
前記勾配推定手段が推定した前記勾配が前記範囲にあると判断された場合には、前記勾配推定手段が推定した前記勾配に対応付けられた前記変速比を前記対応情報から獲得し、前記無段式変速機の目標変速比を、前記平坦路面における変速スケジュールに基づき定めた目標変速比から、前記獲得した変速比に切り替える変速比算出手段と、
を備えることを特徴とする変速制御装置を提供する。
また、本発明は、
車両に搭載された無段式変速機の変速比を、平坦路面における変速スケジュールに基づき定めた目標変速比を用いて制御する変速制御方法であって、
前記車両の走行抵抗トルクと加速トルクと前記無段式変速機の出力軸トルクとを検出する検出処理と、
前記車両の走行する路面の勾配を、前記検出処理における検出結果から推定する勾配推定処理と、
前記勾配推定処理で推定した前記勾配が、坂道に該当する勾配の範囲にある場合には、前記推定した勾配に対応付けられた目標変速比を、前記平坦路面における変速スケジュールとは独立した、路面の勾配に対して目標変速比を一意に対応付けた対応情報から獲得し、前記無段式変速機の目標変速比を、前記平坦路面における変速スケジュールに基づき定めた目標変速比から、前記獲得した目標変速比に切り替える変速比算出処理と、
を含むことを特徴とする変速制御方法を提供する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明に係る実施の一形態を、CVTシステムに適用した場合を例に挙げて説明する。
【0013】
最初に、図1により、本実施の形態に係るCVTシステムの制御系のハードウエア構成について説明する。
【0014】
本CVTシステムは、エンジン1と、ドライブシャフト7とデファレンシャルギア6とプロペラシャフト5とを介してエンジン1の出力を車輪8に伝達する無段変速機式自動変速機(以下、CVTと呼ぶ)2と、車両の走行状態を検出する各種センサと、前記各種センサの出力に応じてCVT2を制御するCVTコントロールユニット(以下、CVT用ECUと呼ぶ)40と、前記各種センサの出力等に応じてエンジン1を制御するエンジンコントロールユニット(以下、エンジン用ECUと呼ぶ)30とを備えている。尚、本実施の形態における車両の走行状態を検出する各種センサとは、CVT2のプライマリプーリ(入力側プーリ)19の回転数(以下、プライマリ回転数と呼ぶ)Npを検出するプライマリ回転センサ29と、CVT2のセカンダリプーリ(出力側プーリ)20の回転数(以下、セカンダリ回転数と呼ぶ)Nsを検出するセカンダリ回転センサ26と、吸気マニホルド11を通過するエアクリーナ10で浄化された空気の流量Qaを検出するエアーフローセンサ21と、スロットル弁12の開度(以下、スロットル弁開度と呼ぶ)TVOを検出するスロットル開度センサ22と、エンジン1のクランクシャフトの回転数(以下、エンジン回転数と呼ぶ)Neを検出するクランク角センサ23と、排気マニホルド14から排出される排気ガス中の酸素濃度Mを検出する酸素センサ28と、サスペンション(不図示)に取付けられた車体重量を検出する車重センサ27等のことである。
【0015】
CVT用ECU40の制御対象であるCVT2は、エンジン1のクランクシャフトに直結したトルクコンバータ3と、トルクコンバータ3の出力軸に直結した無段式変速機構4とから構成されている。そして、トルクコンバータ3は、エンジン1のクランクシャフトに直結したポンプ3aと、トルクコンバータ3の出力軸に直結したタービン3bと、エンジン1のクランクシャフトの回転に伴うポンプ3aの回転を増幅するようにポンプ3aとタービン3bとの間を循環するオイルの流れを制御するステータ3cとから構成されており、ポンプ3aの回転に伴って圧送されるオイルでタービン3bを回転させることによって、エンジン1のクランクシャフトからの伝達トルクを増幅し出力軸へと伝達するようになっている。一方、無段式変速機構4は、トルクコンバータ3のタービン3bに連結した入力側プーリ(以下、プライマリプーリと呼ぶ)19と、プライマリプーリ19と金属製のベルト(若しくはチェーン)9で連結された出力側プーリ(以下、セカンダリプーリと呼ぶ)20とから構成されており、プライマリプーリ19の径が油圧回路17の油圧に応じて変化して、任意の変速比が達成できるようなっている。尚、油圧回路17の油圧を制御する変速制御弁18は、後述のCVT用ECU40の変速操作指令出力部49によって制御されている。
【0016】
エンジン用ECU30及びCVT用ECU40は、それぞれ、図5に示すように、後述の各種処理を実行するCPU71と、後述の各種処理を定義したプログラムや後述の各種特性マップ等を格納するROM72と、後述の各種処理実行時に前記プログラムや各種特性マップ等のデータを一時的に格納するRAM73と、各種センサの出力の受信や後述の制御信号の出力等を制御する入出力インターフェース回路75と、自身とLANで接続された他のコントロールユニットとの間のデータ転送を制御するLAN制御回路76と、これら各部を相互に接続するバス74とを備える。
【0017】
以上で、本CVTシステムの制御系のハードウエア構成の説明を終る。
【0018】
以下、エンジン用ECU30の主要な機能構成について簡単に説明する。尚、ここでいう機能構成とは、RAM73に格納されたデータとCPU71とにより実現されるプロセスのことである。
【0019】
本エンジン用ECU30は、各種センサからの出力に応じてエンジンの状態を制御する各種制御部、例えば、エンジンの各気筒内に燃料を噴射する燃料噴射弁15の開度と吸気マニホルド11に設けられたアイドルスピード弁13の開度とを制御することによりエンジンの吸気側の空燃比を最適化する燃料噴射制御部と、吸気マニホルド11をバイパスする空気量を制御することによりエンジン1のアイドル回転速度を最適化するアイドル回転制御部と、イグナイタの点火進角の制御することによりエンジン1の点火時期を最適化する点火時期制御部等を備えている。
【0020】
以上で、エンジン用ECU30制御の主要な機能構成の説明を終る。
【0021】
以下、図2により、本CVTシステムが特徴とするCVT用ECU40の機能構成を詳細に説明する。尚、ここでいう機能構成とは、RAM73に格納されたデータとCPU71とにより実現されるプロセスのことである。
【0022】
本CVT用ECU40は、各種センサの出力に応じて車両の加速度αを算出する車速微分演算部44と、車速微分演算部44が算出した車両の加速度αと各種センサの出力とを用いて車両の加速抵抗トルクを算出する加速トルク演算部45と、各種センサの出力を用いてCVT2の出力軸トルクを算出するトルク算出部42と、各種センサの出力を用いて車両の平地抵抗トルクを算出する走行抵抗検出部43と、各種センサの出力と上記各部44,45,42,43の出力を用いて車両の走行路の勾配を算出する勾配算出部47と、勾配算出部47が算出した車両の走行路の勾配θに応じてCVT2の目標変速比を算出する目標変速比算出部48と、目標変速比算出部48で最終的に算出された目標変速比を用いてCVT2の変速比を制御する変速操作指令出力部49とを備える。以下、これら各部42,43,44,45,47,48,49が行う各処理を説明する。
【0023】
まず、車速微分演算部44が行う処理について説明する。
【0024】
車速微分演算部44は、セカンダリ回転センサ26で検出されたセカンダリ回転数Nsを車輪速度Vへと変換した後、更に、時間で微分することによって車両の加速度αを算出する。
【0025】
次に、図4を参照しながら加速トルク演算部45が行う処理をについて説明する。
【0026】
加速トルク演算部45は、ブロック84及びブロック45において、車速微分演算部44が算出した加速度αと、車重センサ27で逐次検出される車体重量Wと、数式1とを用いて、加速抵抗トルクTαを算出する。
【0027】
Tα=(W+Wr)・α・Rt/g…数式1
ここで、Wrは回転慣性重量であり、Rtは走行時の車輪(タイヤ)の半径であり、gは重力加速度である。
【0028】
尚、本実施の形態では上記演算によって演算した加速度αを用いて加速抵抗トルクTαを算出しているが、既存の加速度センサ(若しくは、新たに取付けた加速度センサ)で検出された実際の加速度αを用いて加速抵抗トルクTαを算出するようにしても構わない。また、本実施の形態では、車重センサ27で逐次検出される車体重量Wを用いて加速抵抗トルクTαを算出しているが、普通乗用車であれば、走行時の車体重量の変化が少ないので、必ずしも、このように車重センサ27で実際に検出される車体重量Wを用いる必要はない。例えば、規格等により定められた車両の標準車体重量(乗車定員2名)を用いるようにしても構わないし、或いは、車両が一定の勾配の路面を一定の駆動トルクで走行している場合に車速微分演算部44で算出される加速度αから車体重量を推定し、これを用いるようにしても構わない。尚、以下に説明する他の各部が行う処理においても、ここに例示した方法で推定した車体重量を用いるようにすれば、車体重量を検出するために特別なセンサを車両に搭載する必要はなくなる。
【0029】
次に、図3を参照しながらトルク算出部42が行う処理について説明する。
【0030】
トルク算出部42は、ブロック56において、プライマリ回転センサ29で検出されたプライマリ回転数Npと、セカンダリ回転センサ26で検出されたセカンダリ回転数Nsと、数式2とを用いて、CVT2の減速比ipを算出する。
【0031】
ip=Np/Ns…数式2
また、ブロック82において、予めRAM73に格納された特性マップ(Ne−Te特性図)によって、スロットル開度センサ22で検出されたスロットル開度Tvoと、クランク角センサ23で検出されたエンジン回転数Neとに対応付けられているエンジントルクTeを獲得する。尚、ここでいう特性マップ(Ne−Te特性図)とは、スロットル開度Tvo毎に、エンジン回転数NeとエンジントルクTeとを一対一に対応付けた対応情報のことである。
【0032】
一方、ブロック57において、クランク角センサ23で検出されたエンジン回転数Neと、プライマリ回転センサ29で検出されたプライマリ回転数Npと、数式3とを用いて、トルクコンバータの速度比eを算出する。
【0033】
e=Np/Ne…数式3
そして、ブロック52において、予めRAM73に格納された特性マップ(e−t特性図)によって上記トルクコンバ−タの速度比eに対応付けられているトルク比tを獲得すると共に、ブロック53において、予めRAM72に格納された特性マップ(e−Cp特性図)によって上記トルクコンバータの速度比eに対応けられているトルクコンバ−タのポンプ容量係数Cpを獲得する。尚、ここでいう特性マップ(e−t特性図)とは、トルクコンバータの速度比eとトルク比tとを一対一に対応付けた対応情報のことであり、特性マップ(e−Cp特性図)とは、トルクコンバータの速度比eとポンプ容量係数Cpとを一対一に対応付けた対応情報のことである。
【0034】
そして、ブロック55において、上記ポンプ容量係数Cpと、クランク角センサ23で検出されたエンジン回転数Neと、数式4とを用いて、トルクコンバ−タへの入力トルクTp’(以下、ポンプトルクと呼ぶ)を算出する。
【0035】
Tp’=Cp・Ne・Ne…数式4
そして、ブロック57において、ブロック57で算出したトルクコンバ−タの速度比eの値に応じて、ブロック55で算出したポンプトルクTp’と、ブロック82で獲得したエンジントルクTeとの内のいずれか一方のトルクを選択し、これを正規のポンプトルクTtと推定する。具体的な例を挙げれば、トルクコンバ−タの速度比eが所定値E(例えば、0.9)より小さな場合には、エアコン等の付属器機によるトルク損失分を含んでいるエンジントルクTeではなく、数式4により算出したポンプトルクTp’を正規のポンプトルクTpと推定するが、トルクコンバ−タの速度比eが所定値Eを超えた場合には、特性マップ(e−Cp特性図)から獲得したポンプ容量係数Cpに含まれる誤差が増大し、むしろ、これに起因する誤差の方が上記トルク損失分を上回るため、数式4により算出したポンプトルクTp’ではなく、特性マップ(Ne−Te特性図)から獲得したエンジントルクTeを正規のポンプトルクTpと推定する。
【0036】
そして、ブロック58において、ブロック52で特性マップ(e−t特性図)から獲得したトルク比tと、ブロック57で推定した正規のポンプトルクTpと、数式5とを用いて、トルクコンバータのタービントルクTtを算出する。
【0037】
Tt=Tp・t…数式5
トルク算出部42は、最終的にブロック59及びブロック83において、ブロック58で算出したトルクコンバータのタービントルクTtと、ブロック56で算出したCVT2の減速比ipと、数式6とから、CVT2の出力軸トルクToを算出する。
【0038】
To=ip・ipf・Tt…数式6
ここで、ipfは、予めROM72に記憶されたCVT2の最終減速比である。 尚、本実施例では、上記演算によってCVT2の出力軸トルクToを算出しているが、必ずしも、これと同様な処理によってCVT2の出力軸トルクTdを算出する必要はない。例えば、ドライブシャフト7にトルクセンサを取り付けて、これにより実際のCVT2の出力軸トルクToを直接検出するようにしても構わない。
【0039】
次に、走行抵抗検出部43が行う処理について説明する。
【0040】
走行抵抗検出部43は、セカンダリ回転センサ26で検出されたセカンダリ回転数Nsに比例する車速Vと、車重センサ27で逐次検出される車体重量Wと、数式7とを用いて、平地抵抗トルクTrを算出する。
【0041】
Tr=(μ・W+ka・V・V)・Rt…数式7
ここで、μは転がり摩擦抵抗係数であり、Rtは走行時の車輪(タイヤ)の半径であり、kaは空気抵抗係数である。
【0042】
尚、本実施の形態では、車重センサ27で検出される車体重量Wを用いて平地抵抗トルクTrを算出しているが、加速トルク演算部45の説明において例示した方法により獲得した車体重量Wを用いて平地抵抗トルクTrを算出するようにしても構わない。
【0043】
次に、図4を参照しながら勾配算出部47が行う処理について説明する。
【0044】
勾配算出部47は、ブロック46a及びブロック46bにおいて、加速トルク算出部で算出された加速抵抗トルクTαと、走行抵抗算出部43で算出された平地走行抵抗トルクTrと、トルク算出部42で算出されたCVT2の出力軸トルクToと、数式8とを用いて、勾配トルクTθを算出する。
【0045】
Tθ=To−Tr−Tα…数式8
そして、ブロック86及びブロック85において、上記勾配トルクTθと、数式9と、一般道路において成立する近似(θ≒sinθ)とを用いて、車両の走行路の勾配θを算出する。
【0046】
θ≒sinθ=Tθ/(W・Rt)…数式9
尚、本実施の形態では、車重センサ27で検出される車体重量Wを用いて車両の走行路の勾配θを算出しているが、加速トルク演算部45の説明において例示した方法により獲得した車体重量Wを用いて車両の走行路の勾配θを算出するようにしても構わない。
【0047】
次に、目標変速算出部48が行う処理について説明する。
【0048】
目標変速算出部48は、勾配演算部47で算出された車両の走行路の勾配θが所定の範囲内(A<θ<B、例えば−0.03°<θ<0.03°)にある場合には、一般のCVTの変速制御において用いられる変速スケジュール(図9(a)参照)において、スロットル開度センサ22で検出されたスロットル弁開度TVOと、セカンダリ回転センサ26で検出されたセカンダリ回転数Nsとに対応付けられている目標プライマリ回転数Nptを獲得した後、目標変速比iptとして、目標プライマリ回転数Nptに対するセカンダリ回転数Nsの比(Ns/Npt)を算出する。尚、ここでいう変速スケジュールとは、スロットル開度Tvoと、車速V(又はセカンダリ回転数Ns)と、エンジン回転数Ne(又はプライマリ回転数Np)とを対応付けた対応情報のことである。尚、CVT2によれば、図9(a)の変速スケジュールのA−B−C−D−Aで囲まれた範囲において無段階に変速比を変更することができる。
【0049】
一方、走行抵抗検出部43で算出された車両の走行路の勾配θが上記所定の範囲にない場合(A≧θ又はθ≧B、上記例示の範囲に対応させるなら、−0.03°≧θ又はθ≧0.03)には、予めRAM73に格納された特性マップ(θ−ipt特性図)において、走行抵抗検出部43で算出された車両の走行路の勾配θに対応付けられている目標変速比iptを獲得する。尚、ここでいう特性マップ(θ−ipt特性図)とは、図6(a)に示すように、車両の走行路の勾配θとCVT2の目標変速比iptとを対応付けた対応情報のことである。
【0050】
次に、変速操作指令出力部49が行う処理について説明する。
【0051】
変速操作指令出力部49は、CVT2の実際の変速比IPTが、目標変速算出部48で上記条件に応じて算出されたCVT2の目標変速比iptとなるように、油圧回路17の油圧を制御する変速制御弁18の操作量を決定し、変速制御弁18を駆動する。結果として油圧回路17が供給することになる油圧によって、CVT2のプライマリプーリ20の径が、CVT2の変速比が上記目標変速比iptとなるように変化する。
【0052】
以上で、CVT用ECU40の機能構成についての説明を終る。
【0053】
ステップ100において、勾配算出部47が前述の処理に従って車両の走行路の勾配θを算出したら、ステップ101において、目標変速算出部48は、勾配算出部47が算出した車両の走行路の勾配θに基づいて、車両の走行路の状態を判定する。即ち、勾配算出部47が算出した車両の走行路の勾配θが所定の範囲内である場合(A<θ<B)には、車両の走行路を平常路と判定してステップ103の処理を実行し、勾配算出部47が算出した車両の走行路の勾配θが上記所定の範囲外である場合(A≧θ又はθ≧B)には、車両の走行路を坂路と判定してステップ102の処理を実行する。尚、ここでいうステップ103の処理とは、図9(b)の変速スケジュールから獲得した目標プライマリ回転数Nptを用いてCVT2の目標変速比iptを算出する前述の処理のことであり、ステップ102の処理とは、特性マップ(θ−ipt特性図)から獲得したCVT2の目標変速比iptを用いる前述の処理のことである。そして、ステップ104において、変速操作指令出力部49は、前述の処理に従って、目標変速算出部48が何れかの処理によって算出したCVT2の目標変速比iptを用いて変速制御弁18を駆動する。
【0054】
ステップ100において、勾配算出部47が前述の処理に従って車両の走行路の勾配θを算出したら、ステップ101において、目標変速算出部48は、勾配算出部47が算出した車両の走行路の勾配θに基づいて、車両の走行路の状態を判定する。即ち、勾配算出部47が算出した車両の走行路の勾配θが所定の範囲内である場合(A<θ<B)には、車両の走行路を平常路と判定してステップ103の処理を実行し、勾配算出部47が算出した車両の走行路の勾配θが上記所定の範囲外である場合(A≧θ又はθ≧B)には、車両の走行路を坂路と判定してステップ102の処理を実行する。尚、ここでいうステップ103の処理とは、図9(b)の変速スケジュールから獲得した目標プライマリ回転数Nptを用いてCVT2の目標変速比iptを算出する前述の処理のことであり、ステップ102の処理とは、目標変速比補正値マップから獲得した目標変速比iptの補正値ipcを用いて特性マップ(θ−ipt特性図)から獲得したCVT2の目標変速比iptを補正する前述の処理のことである。そして、ステップ104において、変速操作指令出力部49は、前述の処理に従って、目標変速算出部48が何れかの処理によって算出したCVT2の目標変速比iptを用いて変速制御弁18を駆動する。
【0055】
このように本実施の形態に係るCVTシステムによれば、車両の走行路の勾配を加味してCVT2の目標変速比を決定することができるので、走行路の起伏によらず、車両は、常に最適な走行状態を維持することができる。即ち、予め特性マップ(図6(a)参照)を適正に作成しておくことにより、車両が下り坂にさしかかった場合には、適度なエンジンブレーキが自動的に作用して車両の安全性が確保され、車両が上り坂にさしかかった場合には、走行路の勾配に応じた適度な駆動力が伝達されて優れた加速性能が発揮される。
【0056】
従って、勾配のきつい下り路を走行する際にタイミング良くレンジを切り換えることができなくても適度なエンジンブレーキが自動的に作用するので、運転に不慣れなドライバであっても、下り路を走行する時に、頻繁にフットブレーキを使用するということがなくなる。つまり、ドライバの運転技能の如何によって生じていたブレーキの摩耗を防止するという効果も期待できる。
【0057】
また、特別なセンサを新たに搭載せずに、既存のセンサの出力から車両の走行路の勾配を推定しているので、本CVTシステムを採用しても、車両の製造コストが増加することはない。尚、前述したように演算等により車体重量を推定するようにすれば、車体重量を検出するための車重センサも不要となり、製造コストを更に削減することができる。
【0058】
以上で、本発明に係る実施の形態についての説明を終る。尚、本発明に係る実施の形態は、CVTシステムだけでなく、有段式変速機を用いたATの制御システムに適用することも可能である。
なお、参考例として、図8に示すように、車両が坂路にさしかかった場合にも、変速スケジュールから獲得した目標プライマリ回転数Nptを用いてCVT2の目標変速比iptを算出し、更に、これを目標変速比補正値マップから獲得した補正値ipcで補正する処理を説明する。ここでいう目標変速比補正値マップとは、図6(b)に示すように、車両の走行路の勾配θとCVT2の目標変速比iptの補正値ipcとを対応付けた対応情報のことである。このようにする場合には、ステップ200で勾配算出部47が車両の走行路の勾配θを算出したら、目標変速算出部48が、ステップ201において、下り坂にさしかかった際に変速スケジュールから獲得した目標プライマリ回転数Nptを用いてCVT2の目標変速比iptを算出した後、更に、ステップ204またはステップ205のいずれかにおいて、ステップ206でCVT2の目標変速比iptを補正する際に用いる補正値ipcを設定するようにすればよい。即ち、ステップ203において、図7のステップ101と同様な判定基準によって車両の走行路を平常路と判定した場合には、ステップ205において、補正値ipcに0を設定するようにし、これとは反対に、ステップ203において、車両の走行路を坂道と判定した場合には、ステップ204で、補正値ipcに、図6(b)の目標変速比補正値マップから獲得した値を設定するようにすればよい。尚、本実施の形態にいう補正とは、CVT2の目標変速比iptに、図6(b)に示した目標変速比補正値マップから獲得したCVT2の目標変速比iptの補正値ipcを加算することである。
【0061】
【発明の効果】
本発明に係る車両用自動変速機制御装置によれば、車両の走行路の勾配を加味してCVTの目標変速比を決定することができるので、走行路の起伏によらず、車両は、常に最適な走行状態を維持することができる。即ち、走行路の勾配毎に適正な目標変速比を予め記憶させておき、走行路の勾配に応じて定めた目標変速比を用いてCVTの変速制御を行うことにより、車両が下り坂にさしかかった場合には、適度なエンジンブレーキが自動的に作用するので、車両の安全性が確保することができ、車両が上り坂にさしかかった場合には、走行路の勾配に応じた適度な駆動力が伝達されるので、優れた加速性能を自動的に発揮させることができる。
【0062】
従って、勾配のきつい下り路を走行する際にタイミング良くレンジを切り換えることができなくても適度なエンジンブレーキが自動的に作用するので、運転に不慣れなドライバであっても、下り路を走行する時に、頻繁にフットブレーキを使用するということがなくなる。つまり、ドライバの運転技能の如何によって生じていたブレーキの摩耗を防止するという効果も期待できる。
【0063】
また、特別なセンサを新たに搭載せずに、既存のセンサの出力から車両の走行路の勾配を推定しているので、本CVTシステムを採用しても、車両の製造コストが増加することはない。尚、前述したように演算等により車体重量を推定するようにすれば、車体重量を検出するための車重センサも不要となり、製造コストを更に削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るCVTシステムの基本的な構成を示した図である。
【図2】図1のCVT用ECU40の機能的な構成を示した図である。
【図3】図2のトルク算出部の処理を説明するためのブロック図である。
【図4】図1のCVT用ECU40によって車両の走行路の勾配が算出される迄の処理を説明するためのブロック図である。
【図5】図1のCVT用ECU40及びエンジン用ECU30の基本的な構成を示した図である。
【図6】(a)は、目標変速算出部48がCVT2の目標変速比を獲得するために用いる特性マップ(θ−ipt特性図)であり、(b)は、目標変速算出部48がCVT2の目標変速比の補正値を獲得するために用いる目標変速比補正値マップである。
【図7】図1のCVT用ECUが行う処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【図8】図1のCVT用ECUが行う処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【図9】(a)は、通常モードの変速スケジュールであり、(b)は、スポーツモードの変速スケジュールである。
【符号の説明】
1…エンジン,2…無段変速機式自動変速機(CVT),3…トルクコンバータ,3a…トルクコンバータ3のポンプ,3b…トルクコンバータ3のタービン,3c…トルクコンバータ3のステータ,4…無段式変速機構,5…プロペラシャフト,6…デファレンシャルギア,7…ドライブシャフト,8…車輪,9…CVT2のベルト,10…エアクリーナ,11…吸気マニホルド,12…スロットル弁,13…アイドルスピード弁、14…排気マニホルド,15…燃料噴射弁、17…油圧回路,18…変速制御弁,19…CVT2のプライマリプーリ,20…CVT2のセカンダリプーリ,21…エアーフローセンサ,22…スロットル開度センサ,23…クランク角センサ、25…プライマリ回転センサ,26…セカンダリ回転センサ,27…車重センサ,28…酸素センサ,30…エンジンコントロールユニット,40…CVTコントロールユニット,42…トルク算出部,43…走行抵抗検出部,44…車速微分演算部,45…加速トルク演算部,47…勾配算出部,48…目標変速比算出部,49…変速操作指令出力部
【発明の属する技術分野】
本発明は、勾配のきつい路面を走行する際のドライバビリティの向上を図る変速制御システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のCVTシステムにおいては、変速ショックや伝達ロスが抑制されるように、ECUにより、図9(a)に示すような変速スケジュールに従う無段式変速機(以下、CVTと呼ぶ)の変速制御が行われている。車両が勾配のきつい下り坂にさしかかった場合、ドライバは、通常、車速が加速しないように、アクセルペダルの踏み加減を調節する。その結果、アクセルペダルに連動してスロットル弁が閉じるため、図9(a)の変速スケジュールにおいて、車両の走行状態が、坂道にさしかかった際の動作点イよりも更にトップ側の動作点ロ次いで動作点ハへと推移していくため、車両は、加速していくことになる。そこで、運転に熟練したドライバであれば、このとき、一般にスポーツモードと呼ばれている、エンジン回転数を高めに設定したモードにレンジをタイミング良く切り換えて、エンジンブレーキを効果的に使って車両の加速を抑止することができる。即ち、レンジをスポーツモードに設定すると、図9(b)のO−A−B−C−E−F−A−Oで囲まれた領域内で車両の走行状態が推移することになるため、結果として、車両の走行状態は、動作点ハから、より変速比の大きな動作点ニへと推移していく。従って、車両は、効果的なエンジンブレーキを効かせながら、下り坂を走行していく。
【0003】
ところが、タイミング良くレンジの切り換えを行うことができない運転に不慣れなドライバは、下り坂を走行中に、積極的にレンジの切り換えを行うよりは、むしろ、頻繁にフットブレーキを使用する傾向にある。その結果、ブレーキの摩耗を促進することになる。
【0004】
一方、上り坂を走行する際にアクセルペダルの踏み増しを行えば、下り坂走行中とは反対の現象が起こる。即ち、図8(a)の変速スケジュールにおいて、車両の走行状態が、坂道にさしかかった際の動作点よりもロー側の動作点へと推移していくが、アクセルの相当の踏増またはレンジの切り換えを行わなければ、車両は、意図した加速を行わない。
【0005】
そこで、このような問題を解決するために、勾配のある路面を走行する際のエンジンブレーキ性能と加速性能の改善を図る特開昭63−121537号公報記載の車両用無段変速機の制御装置が提案されている。この特開昭63−121537号公報記載の車両用無段変速機の制御装置は、出力軸回転センサで検出された車速とスロットル弁開度センサで検出されたスロットル弁開度とから算出した無段変速機の目標変速比を、車両傾斜角度センサで逐次検出される車体の傾斜角により定まる速度比修正量を用いて適宜補正する。従って、無段変速機の目標速度比には、車両の走行路の勾配に適した値が設定されるので、下り坂走行時においては、優れたエンジンブレーキ性能が自動的に発揮され、上り坂走行時中においては、優れた加速性能が自動的に発揮される。即ち、本制御装置を車両に搭載すれば、車両の走行安全性と走破性とを共に確保することができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記特開昭63−121537号公報記載の車両用無段変速機の制御装置を車両に搭載すると、車両の走行路の勾配を検出するための車両傾斜角度センサを車両に取付ける必要がある。つまり、このような新たな要素の付加は、車両の製造コストの増加に直結する。
【0007】
そこで、本発明は、車両に新たなセンサを搭載することなく、下り坂走行時には優れたエンジンブレーキ性能を、上り坂走行時には優れた加速性能を自動的に発揮させる自動変速機の制御装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
車両に搭載された無段式変速機の変速比を、平坦路面における変速スケジュールに基づき定めた目標変速比を用いて制御する変速制御装置であって、
前記車両の走行抵抗トルクと加速トルクと前記無段式変速機の出力軸トルクとを検出する検出手段と、
路面の勾配に対して変速比を一意に対応付ける対応情報を、前記平坦路面における変速スケジュールとは独立の情報として保持する記憶手段と、
前記車両の走行する路面の勾配を、前記検出手段の検出結果から推定する勾配推定手段と、
前記勾配推定手段が推定した前記勾配が、坂道に該当する勾配の範囲にあるか否かを判断する判定手段と、
前記勾配推定手段が推定した前記勾配が前記範囲にあると判断された場合には、前記勾配推定手段が推定した前記勾配に対応付けられた前記変速比を前記対応情報から獲得し、前記無段式変速機の目標変速比を、前記平坦路面における変速スケジュールに基づき定めた目標変速比から、前記獲得した変速比に切り替える変速比算出手段と、
を備えることを特徴とする変速制御装置を提供する。
また、本発明は、
車両に搭載された無段式変速機の変速比を、平坦路面における変速スケジュールに基づき定めた目標変速比を用いて制御する変速制御方法であって、
前記車両の走行抵抗トルクと加速トルクと前記無段式変速機の出力軸トルクとを検出する検出処理と、
前記車両の走行する路面の勾配を、前記検出処理における検出結果から推定する勾配推定処理と、
前記勾配推定処理で推定した前記勾配が、坂道に該当する勾配の範囲にある場合には、前記推定した勾配に対応付けられた目標変速比を、前記平坦路面における変速スケジュールとは独立した、路面の勾配に対して目標変速比を一意に対応付けた対応情報から獲得し、前記無段式変速機の目標変速比を、前記平坦路面における変速スケジュールに基づき定めた目標変速比から、前記獲得した目標変速比に切り替える変速比算出処理と、
を含むことを特徴とする変速制御方法を提供する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明に係る実施の一形態を、CVTシステムに適用した場合を例に挙げて説明する。
【0013】
最初に、図1により、本実施の形態に係るCVTシステムの制御系のハードウエア構成について説明する。
【0014】
本CVTシステムは、エンジン1と、ドライブシャフト7とデファレンシャルギア6とプロペラシャフト5とを介してエンジン1の出力を車輪8に伝達する無段変速機式自動変速機(以下、CVTと呼ぶ)2と、車両の走行状態を検出する各種センサと、前記各種センサの出力に応じてCVT2を制御するCVTコントロールユニット(以下、CVT用ECUと呼ぶ)40と、前記各種センサの出力等に応じてエンジン1を制御するエンジンコントロールユニット(以下、エンジン用ECUと呼ぶ)30とを備えている。尚、本実施の形態における車両の走行状態を検出する各種センサとは、CVT2のプライマリプーリ(入力側プーリ)19の回転数(以下、プライマリ回転数と呼ぶ)Npを検出するプライマリ回転センサ29と、CVT2のセカンダリプーリ(出力側プーリ)20の回転数(以下、セカンダリ回転数と呼ぶ)Nsを検出するセカンダリ回転センサ26と、吸気マニホルド11を通過するエアクリーナ10で浄化された空気の流量Qaを検出するエアーフローセンサ21と、スロットル弁12の開度(以下、スロットル弁開度と呼ぶ)TVOを検出するスロットル開度センサ22と、エンジン1のクランクシャフトの回転数(以下、エンジン回転数と呼ぶ)Neを検出するクランク角センサ23と、排気マニホルド14から排出される排気ガス中の酸素濃度Mを検出する酸素センサ28と、サスペンション(不図示)に取付けられた車体重量を検出する車重センサ27等のことである。
【0015】
CVT用ECU40の制御対象であるCVT2は、エンジン1のクランクシャフトに直結したトルクコンバータ3と、トルクコンバータ3の出力軸に直結した無段式変速機構4とから構成されている。そして、トルクコンバータ3は、エンジン1のクランクシャフトに直結したポンプ3aと、トルクコンバータ3の出力軸に直結したタービン3bと、エンジン1のクランクシャフトの回転に伴うポンプ3aの回転を増幅するようにポンプ3aとタービン3bとの間を循環するオイルの流れを制御するステータ3cとから構成されており、ポンプ3aの回転に伴って圧送されるオイルでタービン3bを回転させることによって、エンジン1のクランクシャフトからの伝達トルクを増幅し出力軸へと伝達するようになっている。一方、無段式変速機構4は、トルクコンバータ3のタービン3bに連結した入力側プーリ(以下、プライマリプーリと呼ぶ)19と、プライマリプーリ19と金属製のベルト(若しくはチェーン)9で連結された出力側プーリ(以下、セカンダリプーリと呼ぶ)20とから構成されており、プライマリプーリ19の径が油圧回路17の油圧に応じて変化して、任意の変速比が達成できるようなっている。尚、油圧回路17の油圧を制御する変速制御弁18は、後述のCVT用ECU40の変速操作指令出力部49によって制御されている。
【0016】
エンジン用ECU30及びCVT用ECU40は、それぞれ、図5に示すように、後述の各種処理を実行するCPU71と、後述の各種処理を定義したプログラムや後述の各種特性マップ等を格納するROM72と、後述の各種処理実行時に前記プログラムや各種特性マップ等のデータを一時的に格納するRAM73と、各種センサの出力の受信や後述の制御信号の出力等を制御する入出力インターフェース回路75と、自身とLANで接続された他のコントロールユニットとの間のデータ転送を制御するLAN制御回路76と、これら各部を相互に接続するバス74とを備える。
【0017】
以上で、本CVTシステムの制御系のハードウエア構成の説明を終る。
【0018】
以下、エンジン用ECU30の主要な機能構成について簡単に説明する。尚、ここでいう機能構成とは、RAM73に格納されたデータとCPU71とにより実現されるプロセスのことである。
【0019】
本エンジン用ECU30は、各種センサからの出力に応じてエンジンの状態を制御する各種制御部、例えば、エンジンの各気筒内に燃料を噴射する燃料噴射弁15の開度と吸気マニホルド11に設けられたアイドルスピード弁13の開度とを制御することによりエンジンの吸気側の空燃比を最適化する燃料噴射制御部と、吸気マニホルド11をバイパスする空気量を制御することによりエンジン1のアイドル回転速度を最適化するアイドル回転制御部と、イグナイタの点火進角の制御することによりエンジン1の点火時期を最適化する点火時期制御部等を備えている。
【0020】
以上で、エンジン用ECU30制御の主要な機能構成の説明を終る。
【0021】
以下、図2により、本CVTシステムが特徴とするCVT用ECU40の機能構成を詳細に説明する。尚、ここでいう機能構成とは、RAM73に格納されたデータとCPU71とにより実現されるプロセスのことである。
【0022】
本CVT用ECU40は、各種センサの出力に応じて車両の加速度αを算出する車速微分演算部44と、車速微分演算部44が算出した車両の加速度αと各種センサの出力とを用いて車両の加速抵抗トルクを算出する加速トルク演算部45と、各種センサの出力を用いてCVT2の出力軸トルクを算出するトルク算出部42と、各種センサの出力を用いて車両の平地抵抗トルクを算出する走行抵抗検出部43と、各種センサの出力と上記各部44,45,42,43の出力を用いて車両の走行路の勾配を算出する勾配算出部47と、勾配算出部47が算出した車両の走行路の勾配θに応じてCVT2の目標変速比を算出する目標変速比算出部48と、目標変速比算出部48で最終的に算出された目標変速比を用いてCVT2の変速比を制御する変速操作指令出力部49とを備える。以下、これら各部42,43,44,45,47,48,49が行う各処理を説明する。
【0023】
まず、車速微分演算部44が行う処理について説明する。
【0024】
車速微分演算部44は、セカンダリ回転センサ26で検出されたセカンダリ回転数Nsを車輪速度Vへと変換した後、更に、時間で微分することによって車両の加速度αを算出する。
【0025】
次に、図4を参照しながら加速トルク演算部45が行う処理をについて説明する。
【0026】
加速トルク演算部45は、ブロック84及びブロック45において、車速微分演算部44が算出した加速度αと、車重センサ27で逐次検出される車体重量Wと、数式1とを用いて、加速抵抗トルクTαを算出する。
【0027】
Tα=(W+Wr)・α・Rt/g…数式1
ここで、Wrは回転慣性重量であり、Rtは走行時の車輪(タイヤ)の半径であり、gは重力加速度である。
【0028】
尚、本実施の形態では上記演算によって演算した加速度αを用いて加速抵抗トルクTαを算出しているが、既存の加速度センサ(若しくは、新たに取付けた加速度センサ)で検出された実際の加速度αを用いて加速抵抗トルクTαを算出するようにしても構わない。また、本実施の形態では、車重センサ27で逐次検出される車体重量Wを用いて加速抵抗トルクTαを算出しているが、普通乗用車であれば、走行時の車体重量の変化が少ないので、必ずしも、このように車重センサ27で実際に検出される車体重量Wを用いる必要はない。例えば、規格等により定められた車両の標準車体重量(乗車定員2名)を用いるようにしても構わないし、或いは、車両が一定の勾配の路面を一定の駆動トルクで走行している場合に車速微分演算部44で算出される加速度αから車体重量を推定し、これを用いるようにしても構わない。尚、以下に説明する他の各部が行う処理においても、ここに例示した方法で推定した車体重量を用いるようにすれば、車体重量を検出するために特別なセンサを車両に搭載する必要はなくなる。
【0029】
次に、図3を参照しながらトルク算出部42が行う処理について説明する。
【0030】
トルク算出部42は、ブロック56において、プライマリ回転センサ29で検出されたプライマリ回転数Npと、セカンダリ回転センサ26で検出されたセカンダリ回転数Nsと、数式2とを用いて、CVT2の減速比ipを算出する。
【0031】
ip=Np/Ns…数式2
また、ブロック82において、予めRAM73に格納された特性マップ(Ne−Te特性図)によって、スロットル開度センサ22で検出されたスロットル開度Tvoと、クランク角センサ23で検出されたエンジン回転数Neとに対応付けられているエンジントルクTeを獲得する。尚、ここでいう特性マップ(Ne−Te特性図)とは、スロットル開度Tvo毎に、エンジン回転数NeとエンジントルクTeとを一対一に対応付けた対応情報のことである。
【0032】
一方、ブロック57において、クランク角センサ23で検出されたエンジン回転数Neと、プライマリ回転センサ29で検出されたプライマリ回転数Npと、数式3とを用いて、トルクコンバータの速度比eを算出する。
【0033】
e=Np/Ne…数式3
そして、ブロック52において、予めRAM73に格納された特性マップ(e−t特性図)によって上記トルクコンバ−タの速度比eに対応付けられているトルク比tを獲得すると共に、ブロック53において、予めRAM72に格納された特性マップ(e−Cp特性図)によって上記トルクコンバータの速度比eに対応けられているトルクコンバ−タのポンプ容量係数Cpを獲得する。尚、ここでいう特性マップ(e−t特性図)とは、トルクコンバータの速度比eとトルク比tとを一対一に対応付けた対応情報のことであり、特性マップ(e−Cp特性図)とは、トルクコンバータの速度比eとポンプ容量係数Cpとを一対一に対応付けた対応情報のことである。
【0034】
そして、ブロック55において、上記ポンプ容量係数Cpと、クランク角センサ23で検出されたエンジン回転数Neと、数式4とを用いて、トルクコンバ−タへの入力トルクTp’(以下、ポンプトルクと呼ぶ)を算出する。
【0035】
Tp’=Cp・Ne・Ne…数式4
そして、ブロック57において、ブロック57で算出したトルクコンバ−タの速度比eの値に応じて、ブロック55で算出したポンプトルクTp’と、ブロック82で獲得したエンジントルクTeとの内のいずれか一方のトルクを選択し、これを正規のポンプトルクTtと推定する。具体的な例を挙げれば、トルクコンバ−タの速度比eが所定値E(例えば、0.9)より小さな場合には、エアコン等の付属器機によるトルク損失分を含んでいるエンジントルクTeではなく、数式4により算出したポンプトルクTp’を正規のポンプトルクTpと推定するが、トルクコンバ−タの速度比eが所定値Eを超えた場合には、特性マップ(e−Cp特性図)から獲得したポンプ容量係数Cpに含まれる誤差が増大し、むしろ、これに起因する誤差の方が上記トルク損失分を上回るため、数式4により算出したポンプトルクTp’ではなく、特性マップ(Ne−Te特性図)から獲得したエンジントルクTeを正規のポンプトルクTpと推定する。
【0036】
そして、ブロック58において、ブロック52で特性マップ(e−t特性図)から獲得したトルク比tと、ブロック57で推定した正規のポンプトルクTpと、数式5とを用いて、トルクコンバータのタービントルクTtを算出する。
【0037】
Tt=Tp・t…数式5
トルク算出部42は、最終的にブロック59及びブロック83において、ブロック58で算出したトルクコンバータのタービントルクTtと、ブロック56で算出したCVT2の減速比ipと、数式6とから、CVT2の出力軸トルクToを算出する。
【0038】
To=ip・ipf・Tt…数式6
ここで、ipfは、予めROM72に記憶されたCVT2の最終減速比である。 尚、本実施例では、上記演算によってCVT2の出力軸トルクToを算出しているが、必ずしも、これと同様な処理によってCVT2の出力軸トルクTdを算出する必要はない。例えば、ドライブシャフト7にトルクセンサを取り付けて、これにより実際のCVT2の出力軸トルクToを直接検出するようにしても構わない。
【0039】
次に、走行抵抗検出部43が行う処理について説明する。
【0040】
走行抵抗検出部43は、セカンダリ回転センサ26で検出されたセカンダリ回転数Nsに比例する車速Vと、車重センサ27で逐次検出される車体重量Wと、数式7とを用いて、平地抵抗トルクTrを算出する。
【0041】
Tr=(μ・W+ka・V・V)・Rt…数式7
ここで、μは転がり摩擦抵抗係数であり、Rtは走行時の車輪(タイヤ)の半径であり、kaは空気抵抗係数である。
【0042】
尚、本実施の形態では、車重センサ27で検出される車体重量Wを用いて平地抵抗トルクTrを算出しているが、加速トルク演算部45の説明において例示した方法により獲得した車体重量Wを用いて平地抵抗トルクTrを算出するようにしても構わない。
【0043】
次に、図4を参照しながら勾配算出部47が行う処理について説明する。
【0044】
勾配算出部47は、ブロック46a及びブロック46bにおいて、加速トルク算出部で算出された加速抵抗トルクTαと、走行抵抗算出部43で算出された平地走行抵抗トルクTrと、トルク算出部42で算出されたCVT2の出力軸トルクToと、数式8とを用いて、勾配トルクTθを算出する。
【0045】
Tθ=To−Tr−Tα…数式8
そして、ブロック86及びブロック85において、上記勾配トルクTθと、数式9と、一般道路において成立する近似(θ≒sinθ)とを用いて、車両の走行路の勾配θを算出する。
【0046】
θ≒sinθ=Tθ/(W・Rt)…数式9
尚、本実施の形態では、車重センサ27で検出される車体重量Wを用いて車両の走行路の勾配θを算出しているが、加速トルク演算部45の説明において例示した方法により獲得した車体重量Wを用いて車両の走行路の勾配θを算出するようにしても構わない。
【0047】
次に、目標変速算出部48が行う処理について説明する。
【0048】
目標変速算出部48は、勾配演算部47で算出された車両の走行路の勾配θが所定の範囲内(A<θ<B、例えば−0.03°<θ<0.03°)にある場合には、一般のCVTの変速制御において用いられる変速スケジュール(図9(a)参照)において、スロットル開度センサ22で検出されたスロットル弁開度TVOと、セカンダリ回転センサ26で検出されたセカンダリ回転数Nsとに対応付けられている目標プライマリ回転数Nptを獲得した後、目標変速比iptとして、目標プライマリ回転数Nptに対するセカンダリ回転数Nsの比(Ns/Npt)を算出する。尚、ここでいう変速スケジュールとは、スロットル開度Tvoと、車速V(又はセカンダリ回転数Ns)と、エンジン回転数Ne(又はプライマリ回転数Np)とを対応付けた対応情報のことである。尚、CVT2によれば、図9(a)の変速スケジュールのA−B−C−D−Aで囲まれた範囲において無段階に変速比を変更することができる。
【0049】
一方、走行抵抗検出部43で算出された車両の走行路の勾配θが上記所定の範囲にない場合(A≧θ又はθ≧B、上記例示の範囲に対応させるなら、−0.03°≧θ又はθ≧0.03)には、予めRAM73に格納された特性マップ(θ−ipt特性図)において、走行抵抗検出部43で算出された車両の走行路の勾配θに対応付けられている目標変速比iptを獲得する。尚、ここでいう特性マップ(θ−ipt特性図)とは、図6(a)に示すように、車両の走行路の勾配θとCVT2の目標変速比iptとを対応付けた対応情報のことである。
【0050】
次に、変速操作指令出力部49が行う処理について説明する。
【0051】
変速操作指令出力部49は、CVT2の実際の変速比IPTが、目標変速算出部48で上記条件に応じて算出されたCVT2の目標変速比iptとなるように、油圧回路17の油圧を制御する変速制御弁18の操作量を決定し、変速制御弁18を駆動する。結果として油圧回路17が供給することになる油圧によって、CVT2のプライマリプーリ20の径が、CVT2の変速比が上記目標変速比iptとなるように変化する。
【0052】
以上で、CVT用ECU40の機能構成についての説明を終る。
【0053】
ステップ100において、勾配算出部47が前述の処理に従って車両の走行路の勾配θを算出したら、ステップ101において、目標変速算出部48は、勾配算出部47が算出した車両の走行路の勾配θに基づいて、車両の走行路の状態を判定する。即ち、勾配算出部47が算出した車両の走行路の勾配θが所定の範囲内である場合(A<θ<B)には、車両の走行路を平常路と判定してステップ103の処理を実行し、勾配算出部47が算出した車両の走行路の勾配θが上記所定の範囲外である場合(A≧θ又はθ≧B)には、車両の走行路を坂路と判定してステップ102の処理を実行する。尚、ここでいうステップ103の処理とは、図9(b)の変速スケジュールから獲得した目標プライマリ回転数Nptを用いてCVT2の目標変速比iptを算出する前述の処理のことであり、ステップ102の処理とは、特性マップ(θ−ipt特性図)から獲得したCVT2の目標変速比iptを用いる前述の処理のことである。そして、ステップ104において、変速操作指令出力部49は、前述の処理に従って、目標変速算出部48が何れかの処理によって算出したCVT2の目標変速比iptを用いて変速制御弁18を駆動する。
【0054】
ステップ100において、勾配算出部47が前述の処理に従って車両の走行路の勾配θを算出したら、ステップ101において、目標変速算出部48は、勾配算出部47が算出した車両の走行路の勾配θに基づいて、車両の走行路の状態を判定する。即ち、勾配算出部47が算出した車両の走行路の勾配θが所定の範囲内である場合(A<θ<B)には、車両の走行路を平常路と判定してステップ103の処理を実行し、勾配算出部47が算出した車両の走行路の勾配θが上記所定の範囲外である場合(A≧θ又はθ≧B)には、車両の走行路を坂路と判定してステップ102の処理を実行する。尚、ここでいうステップ103の処理とは、図9(b)の変速スケジュールから獲得した目標プライマリ回転数Nptを用いてCVT2の目標変速比iptを算出する前述の処理のことであり、ステップ102の処理とは、目標変速比補正値マップから獲得した目標変速比iptの補正値ipcを用いて特性マップ(θ−ipt特性図)から獲得したCVT2の目標変速比iptを補正する前述の処理のことである。そして、ステップ104において、変速操作指令出力部49は、前述の処理に従って、目標変速算出部48が何れかの処理によって算出したCVT2の目標変速比iptを用いて変速制御弁18を駆動する。
【0055】
このように本実施の形態に係るCVTシステムによれば、車両の走行路の勾配を加味してCVT2の目標変速比を決定することができるので、走行路の起伏によらず、車両は、常に最適な走行状態を維持することができる。即ち、予め特性マップ(図6(a)参照)を適正に作成しておくことにより、車両が下り坂にさしかかった場合には、適度なエンジンブレーキが自動的に作用して車両の安全性が確保され、車両が上り坂にさしかかった場合には、走行路の勾配に応じた適度な駆動力が伝達されて優れた加速性能が発揮される。
【0056】
従って、勾配のきつい下り路を走行する際にタイミング良くレンジを切り換えることができなくても適度なエンジンブレーキが自動的に作用するので、運転に不慣れなドライバであっても、下り路を走行する時に、頻繁にフットブレーキを使用するということがなくなる。つまり、ドライバの運転技能の如何によって生じていたブレーキの摩耗を防止するという効果も期待できる。
【0057】
また、特別なセンサを新たに搭載せずに、既存のセンサの出力から車両の走行路の勾配を推定しているので、本CVTシステムを採用しても、車両の製造コストが増加することはない。尚、前述したように演算等により車体重量を推定するようにすれば、車体重量を検出するための車重センサも不要となり、製造コストを更に削減することができる。
【0058】
以上で、本発明に係る実施の形態についての説明を終る。尚、本発明に係る実施の形態は、CVTシステムだけでなく、有段式変速機を用いたATの制御システムに適用することも可能である。
なお、参考例として、図8に示すように、車両が坂路にさしかかった場合にも、変速スケジュールから獲得した目標プライマリ回転数Nptを用いてCVT2の目標変速比iptを算出し、更に、これを目標変速比補正値マップから獲得した補正値ipcで補正する処理を説明する。ここでいう目標変速比補正値マップとは、図6(b)に示すように、車両の走行路の勾配θとCVT2の目標変速比iptの補正値ipcとを対応付けた対応情報のことである。このようにする場合には、ステップ200で勾配算出部47が車両の走行路の勾配θを算出したら、目標変速算出部48が、ステップ201において、下り坂にさしかかった際に変速スケジュールから獲得した目標プライマリ回転数Nptを用いてCVT2の目標変速比iptを算出した後、更に、ステップ204またはステップ205のいずれかにおいて、ステップ206でCVT2の目標変速比iptを補正する際に用いる補正値ipcを設定するようにすればよい。即ち、ステップ203において、図7のステップ101と同様な判定基準によって車両の走行路を平常路と判定した場合には、ステップ205において、補正値ipcに0を設定するようにし、これとは反対に、ステップ203において、車両の走行路を坂道と判定した場合には、ステップ204で、補正値ipcに、図6(b)の目標変速比補正値マップから獲得した値を設定するようにすればよい。尚、本実施の形態にいう補正とは、CVT2の目標変速比iptに、図6(b)に示した目標変速比補正値マップから獲得したCVT2の目標変速比iptの補正値ipcを加算することである。
【0061】
【発明の効果】
本発明に係る車両用自動変速機制御装置によれば、車両の走行路の勾配を加味してCVTの目標変速比を決定することができるので、走行路の起伏によらず、車両は、常に最適な走行状態を維持することができる。即ち、走行路の勾配毎に適正な目標変速比を予め記憶させておき、走行路の勾配に応じて定めた目標変速比を用いてCVTの変速制御を行うことにより、車両が下り坂にさしかかった場合には、適度なエンジンブレーキが自動的に作用するので、車両の安全性が確保することができ、車両が上り坂にさしかかった場合には、走行路の勾配に応じた適度な駆動力が伝達されるので、優れた加速性能を自動的に発揮させることができる。
【0062】
従って、勾配のきつい下り路を走行する際にタイミング良くレンジを切り換えることができなくても適度なエンジンブレーキが自動的に作用するので、運転に不慣れなドライバであっても、下り路を走行する時に、頻繁にフットブレーキを使用するということがなくなる。つまり、ドライバの運転技能の如何によって生じていたブレーキの摩耗を防止するという効果も期待できる。
【0063】
また、特別なセンサを新たに搭載せずに、既存のセンサの出力から車両の走行路の勾配を推定しているので、本CVTシステムを採用しても、車両の製造コストが増加することはない。尚、前述したように演算等により車体重量を推定するようにすれば、車体重量を検出するための車重センサも不要となり、製造コストを更に削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るCVTシステムの基本的な構成を示した図である。
【図2】図1のCVT用ECU40の機能的な構成を示した図である。
【図3】図2のトルク算出部の処理を説明するためのブロック図である。
【図4】図1のCVT用ECU40によって車両の走行路の勾配が算出される迄の処理を説明するためのブロック図である。
【図5】図1のCVT用ECU40及びエンジン用ECU30の基本的な構成を示した図である。
【図6】(a)は、目標変速算出部48がCVT2の目標変速比を獲得するために用いる特性マップ(θ−ipt特性図)であり、(b)は、目標変速算出部48がCVT2の目標変速比の補正値を獲得するために用いる目標変速比補正値マップである。
【図7】図1のCVT用ECUが行う処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【図8】図1のCVT用ECUが行う処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【図9】(a)は、通常モードの変速スケジュールであり、(b)は、スポーツモードの変速スケジュールである。
【符号の説明】
1…エンジン,2…無段変速機式自動変速機(CVT),3…トルクコンバータ,3a…トルクコンバータ3のポンプ,3b…トルクコンバータ3のタービン,3c…トルクコンバータ3のステータ,4…無段式変速機構,5…プロペラシャフト,6…デファレンシャルギア,7…ドライブシャフト,8…車輪,9…CVT2のベルト,10…エアクリーナ,11…吸気マニホルド,12…スロットル弁,13…アイドルスピード弁、14…排気マニホルド,15…燃料噴射弁、17…油圧回路,18…変速制御弁,19…CVT2のプライマリプーリ,20…CVT2のセカンダリプーリ,21…エアーフローセンサ,22…スロットル開度センサ,23…クランク角センサ、25…プライマリ回転センサ,26…セカンダリ回転センサ,27…車重センサ,28…酸素センサ,30…エンジンコントロールユニット,40…CVTコントロールユニット,42…トルク算出部,43…走行抵抗検出部,44…車速微分演算部,45…加速トルク演算部,47…勾配算出部,48…目標変速比算出部,49…変速操作指令出力部
Claims (4)
- 車両に搭載された無段式変速機の変速比を、平坦路面における変速スケジュールに基づき定めた目標変速比を用いて制御する変速制御装置であって、
前記車両の走行抵抗トルクと加速トルクと前記無段式変速機の出力軸トルクとを検出する検出手段と、
路面の勾配に対して変速比を一意に対応付ける対応情報を、前記平坦路面における変速スケジュールとは独立の情報として保持する記憶手段と、
前記車両の走行する路面の勾配を、前記検出手段の検出結果から推定する勾配推定手段と、
前記勾配推定手段が推定した前記勾配が、坂道に該当する勾配の範囲にあるか否かを判断する判定手段と、
前記勾配推定手段が推定した前記勾配が前記範囲にあると判断された場合には、前記勾配推定手段が推定した前記勾配に対応付けられた前記変速比を前記対応情報から獲得し、前記無段式変速機の目標変速比を、前記平坦路面における変速スケジュールに基づき定めた目標変速比から、前記獲得した変速比に切り替える変速比算出手段と、
を備えることを特徴とする変速制御装置。 - 車両に搭載された無段式変速機の変速比を、平坦路面における変速スケジュールに基づき定めた目標変速比を用いて制御する変速制御方法であって、
前記車両の走行抵抗トルクと加速トルクと前記無段式変速機の出力軸トルクとを検出する検出処理と、
前記車両の走行する路面の勾配を、前記検出処理における検出結果から推定する勾配推定処理と、
前記勾配推定処理で推定した前記勾配が、坂道に該当する勾配の範囲にある場合には、前記推定した勾配に対応付けられた目標変速比を、前記平坦路面における変速スケジュールとは独立した、路面の勾配に対して目標変速比を一意に対応付ける対応情報から獲得し、前記無段式変速機の目標変速比を、前記平坦路面における変速スケジュールに基づき定めた目標変速比から、前記獲得した目標変速比に切り替える変速比算出処理と、
を含むことを特徴とする変速制御方法。 - 請求項1記載の変速制御装置であって、
前記検出手段は、
前記車両の走行中に検出された車速と、車体重量とを用いて、前記車両の加速トルクと前記車両の走行抵抗トルクとを算出することを特徴とする変速制御装置。 - 請求項1または3記載の変速制御装置であって、
前記検出手段は、
前記車両の走行中に検出されたエンジン回転数と、前記車両の走行中に検出されたアクセル開度と、前記車両の走行中に検出された前記無段式変速機の変速比とを用いて、前記無段式変速機の出力軸トルクを算出する、
ことを特徴とする変速制御装置。
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