JP3719838B2 - 廃プラスチックの脱塩素処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラスチック廃棄物である廃プラスチックを脱塩素処理する方法に関するものであり、より具体的には、廃プラスチックを脱塩素処理して微小な固形廃プラスチック燃料を製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
廃プラスチックは、それが高カロリー可燃物であることから、埋め立て処分や焼却処分される他、燃料化してエネルギ源として利用されている。
【0003】
しかし、廃プラスチックには、塩化ビニルを代表として塩素含有プラスチックが含まれており、塩素化合物が大量に含まれている。したがって、廃プラスチックを固形燃料又は粉体燃料として燃焼させると、高濃度の塩化水素を含む燃焼ガス(排ガス)が発生することになる。この塩化水素を含む排ガスは、鉄に対して激しい腐食性を示し、ボイラ水管の腐食等により排ガスボイラ等での熱利用に制約を受けることになる。
【0004】
したがって、廃プラスチックを燃料化するに当たっては、これに含まれる塩素成分を除去しておくことが好ましい。そこで、従来からも、特開平5−245463号公報に開示される如く、廃プラスチックをプラスチックの熱特性を利用して脱塩素処理することが提案されている。すなわち、粉砕した廃プラスチックを常温から330℃の範囲で且つ最高到達温度が290〜330℃となるように段階的に昇温熱分解して、ガス生成物と融解固体物とに分離し、発生した塩化水素を水に溶解させて、塩酸として回収するのである。また、社団法人プラスチック処理促進協会発行の「各種プラスチックの熱的諸性質及び燃焼・熱分解時の生成物について」(以下「文献」という)には、ポリ塩化ビニル中の塩化水素を効果的に除去するためには、300℃で30分、350℃で10分以上保持する必要があると教示されており、廃プラスチックをかかる条件で加熱することによって良好な脱塩素処理を行いうることが示唆されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記した公報や文献に開示,示唆された脱塩素処理方法は、小型装置を使用する実験レベルでの廃プラスチック処理においてはともかく、大型装置である実機(反応機等)を使用した実際の廃プラスチック処理においては、加熱温度の制御が困難である等の理由から採用し難いものであり、廃プラスチック燃料を製造するような場合には実用できないものであった。
【0006】
すなわち、実用的な大型反応機を使用して大量の廃プラスチックを加熱する場合、加熱温度を脱塩化水素反応が効果的に行なわれる温度範囲に設定して当該設定温度に厳格に管理したとしても、反応機内における廃プラスチックの加熱温度をムラなく当該設定温度に維持させておくことは実際上困難であり、部分的に当該設定温度から外れた低温部分又は高温部分が発生するため、熱分解による脱塩化水素反応が充分に行なわれないし、一旦放出された塩化水素が反応機内で留まって廃プラスチックに取り込まれることもある。
【0007】
したがって、熱分解による脱塩化水素反応のみでは、廃プラスチックの脱塩素処理を充分に行なうことができず、処理後の廃プラスチックにはある程度以上の塩素成分が残留することになり、燃料等として好適に使用できるものを得ることは困難である。すなわち、反応機から取り出される廃プラスチックは、塩素成分が或る程度除去されているものの、かなりの量の残留塩素成分が含まれており、これを燃料として高温燃焼させた場合には、塩化水素が発生することになる。しかも、上記した如く設定温度から逸脱した高温部分が生じることから、上記した文献に開示される如く350℃に加熱した場合、反応機内における廃プラスチックの加熱温度が局部的に350℃を超えて発火点に達し、廃プラスチックが発火する虞れがある。このような廃プラスチックの発火は、危険であることは勿論、当該廃プラスチックを燃料等として利用できなくなるといった問題を生じる。
【0008】
本発明は、このような問題を生じることなく、廃プラスチックに含まれている塩素成分を効率よく略完全に除去しておくことができる脱塩素処理をした微小な固形廃プラスチック燃料の製造方法を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の脱塩素処理をした微小な固形廃プラスチック燃料の製造方法は、廃プラスチックを脱塩素処理して微細な固形廃プラスチック燃料を製造する方法において、一次処理反応機において、少なくとも100mm以下の大きさに破砕処理した廃プラスチックを空気中で250℃〜300℃の一次脱塩素処理温度に加熱することにより、当該廃プラスチックに含まれる塩素成分を熱分解による脱塩化水素反応により塩化水素として除去すると共に、発生した塩化水素ガスを一次処理反応機から排気させ、次に、前記一次処理反応機から排出された廃プラスチックを10mm以下の微小形状に粉砕又は成型したあと、当該微小形状の廃プラスチックを二次処理反応機において、水酸化ナトリウム若しくは炭酸ナトリウム又は両者の混合物を反応剤として添加しつつ、空気中で300℃〜330℃の二次脱塩素処理温度に加熱することにより、前記廃プラスチックに残留する塩素成分を反応剤との反応により塩化ナトリウムとして除去し、当該塩化ナトリウムを含有する廃プラスチックを燃料として利用する構成としたことを発明の基本構成とするものである。
【0010】
一次処理反応機においては、廃プラスチックを一次脱塩素処理温度(250〜300℃)に加熱することによって脱塩化水素反応を生ぜしめるようにしているため、以下に述べる如く、廃プラスチックの脱塩素処理を、発火等の問題を生じることなく、良好に行なうことができると共に、発生する塩化水素の再利用を有効に図ることができる。
【0011】
すなわち、周知のように、ポリ塩化ビニル等のプラスチックを加熱することによる熱分解反応は、一般に、200〜350℃(以下「脱塩化水素反応条件」という)における脱塩化水素反応を主体とした一次分解と、約350℃以上で生じる炭素主鎖の分裂による低級炭化水素やその誘導体の生成を主体とした二次分解とに分類される。また、廃プラスチックは、一般に、350℃を超える高温条件下では、発火する虞れがある。
【0012】
したがって、一次処理温度を、脱塩化水素反応条件の下限値(200℃)及び上限値(350℃)に対してかなりの余裕(50℃)をもった範囲(250〜300℃)としておくことにより、仮に、一次処理反応機における廃プラスチックの温度分布にバラツキがあり、一次処理温度を逸脱する低温部分又は高温部分が発生したとしても、低温部分での加熱温度が脱塩化水素反応条件を大きく下回ったり、高温部分での加熱温度が脱塩化水素反応条件を大きく上回ったりするようなことがなく、全体として廃プラスチックの脱塩化水素処理が良好に行なわれる。その結果、廃プラスチックに含まれる塩素成分を完全に除去し得ないまでも、その大部分を除去することができる。例えば、後述する如く90%前後まで除去することができる。しかも、高温部分での加熱温度が脱塩化水素反応条件を大きく上回ったりするようなことがないことから、つまり廃プラスチックが350℃を超えて加熱されるようなことがないから、廃プラスチックが発火するような虞れもない。
【0013】
また、脱塩化水素反応で生じる塩化水素の純度は、周知のように、温度条件によって異なり、つまり温度依存性があり、250〜300℃の温度条件下では発生する塩化水素の純度は極めて高く、98%を超えることになる。したがって、一次処理温度(250〜300℃)下では、極めて高純度の塩化水素が発生することになるから、これを塩酸として回収することにより、極めて高純度の塩酸を得ることができ、一次処理反応機で発生する塩化水素を有効に再利用することができる。
【0014】
ところで、一次処理反応機における脱塩化水素反応を効率的に行なうためには、廃プラスチックの反応表面積が可及的に大きくなるように、廃プラスチックの形状を小さくしておくことが好ましい。したがって、ペレットのような小形状のもののみを含む廃プラスチックを脱塩素処理する場合には、これをそのまま一次処理反応機に投入することができる。しかし、都市ごみや産業廃棄物等から選別された廃プラスチックには、一般に、ペレットのような小形状のものから器材のような大形状のものまで、種々の大きさのものが含まれていることから、通常は、廃プラスチックを、予め、約100mm以下となるような小形状のものに粉砕処理した上で、一次処理反応機に投入させるようにすることが好ましい。
【0015】
一次処理反応機において熱分解による脱塩化水素処理を施された廃プラスチックには、上述した如く、一部の塩素成分が脱塩化水素反応によって除去されずに残留しているが、この残留塩素成分は、二次処理反応機において、脱塩化水素反応条件の温度範囲であって一次脱塩素処理温度以上の温度である二次脱塩素処理温度(300〜330℃)で更に加熱しつつ水酸化ナトリウム等の反応剤を添加させることにより、塩化ナトリウムとして固定され、略完全に除去される。
【0016】
ところで、廃プラスチックには、種々のプラスチックが含まれており、その性状は一様ではなく区々である。例えば、熱可塑性プラスチックのように、加熱により軟化して流動したり、融解したりするものもあれば、逆に、熱硬化性プラスチックのように、加熱により硬化したりするものもある。したがって、一次処理反応機においては、廃プラスチックの一部が流動化,溶融化すること等により、廃プラスチック同士が結着一体化して、大形状化することがある。その結果、一次処理反応機に投入された廃プラスチックが予め上記した如く粉砕処理された小形状のものであっても、一次処理反応機から排出される廃プラスチックには大形状のものが含まれることになる。一方、二次処理反応機においては、これに投入される廃プラスチックの形状が大きい場合には、反応面積が小さくなることから、反応剤との反応を効果的に行なうことができない虞れがある。
【0017】
そこで、一次処理反応機から排出された廃プラスチックを、そのまま二次処理反応機に投入させず、その投入前において微小形状に粉砕又は成型するようにしている。例えば、粉砕処理を行なう場合には、廃プラスチックを3〜10mm程度に粉砕しておくことが好ましい。また、成型処理を行なう場合には、廃プラスチックを10mm程度に成型しておくことが好ましい。
【0018】
このように、一次処理反応機から排出された廃プラスチックは、粉砕,成型により微小形状化された上で、二次処理反応機に投入されることから、二次処理反応機における反応面積が増大し、一次処理反応機における熱分解によっては除去されずに廃プラスチック中に留まった残留塩素成分(塩化水素)の放出を促進することができ、これと反応剤との反応(塩化ナトリウムとして固定,除去する)も促進される。
【0019】
すなわち、二次処理反応機においては、微小形状に粉砕,成型された廃プラスチックを、反応剤と混合攪拌させつつ、一次処理温度以上の加熱条件(300〜330℃であり、以下「二次処理温度」という)で加熱することから、残留塩素成分と反応剤との反応が充分に行なわれる。この場合、反応剤としては、水酸化ナトリウム又は炭酸ナトリウムが使用される。必要に応じて、水酸化ナトリウム及び炭酸ナトリウムの混合物を使用することもできる。
【0020】
具体的には、二次処理反応機においては、反応剤の存在により、NaOH+HCl→NaCl+H2 O又はNa2 CO3 +2HCl→2NaCl+CO2 +H2 Oの反応が行なわれ、廃プラスチックの残留塩素成分は塩化ナトリウムに固定されて除去される。かかる反応に必要とされる反応剤の添加量は、当該廃プラスチックに含まれる塩素成分が僅かである(一次処理反応機において熱分解されずに残留した分)ことから、少量で足りる。
【0021】
而して、二次処理反応機に投入される廃プラスチックは、含有塩素成分の大半を一次処理反応機において除去されたものであること、二次処理温度を一次処理温度以上としていること、及び二次処理反応機には微小形状に粉砕,成型された廃プラスチックが投入されることから、廃プラスチックの加熱及び反応剤との攪拌,反応が充分に且つ均一に行なわれることになる。したがって、二次処理反応機においては、廃プラスチックの残留塩素成分が略完全に除去されることになる。すなわち、廃プラスチックに含まれる塩素成分を、一次処理反応機と二次処理反応機とで段階的に除去するようにしたことによって、脱塩素処理を効率よく略完全に行なうことができる。
【0022】
なお、二次処理温度も、一次処理温度と同様に、前記脱塩化水素反応条件の下限値(200℃)及び上限値(350℃)に対してかなりの余裕をもった範囲(300〜330℃)とされているから、二次処理反応機における廃プラスチックの温度分布にバラツキがあり、二次処理温度を逸脱する低温部分又は高温部分が発生したとしても、そのことが反応剤との反応を妨げたりするような虞れはない。しかも、高温部分での加熱温度が350℃を大きく超えて、廃プラスチックが発火するような虞れもない。
【0023】
二次処理反応機から排出される廃プラスチックは、上記した如く含有塩素成分を略完全に除去されたものであるから、そのまま、或いは適当な処理(成型処理,粉砕処理等)を施すことによって、廃プラスチック燃料として好適に使用することができる。すなわち、高温燃焼させたときにも塩化水素が殆ど発生することがなく、その燃焼ガス(排ガス)を廃熱ボイラ等の熱源として有効に利用することができる。
【0024】
ところで、上記した如く脱塩素処理された廃プラスチックには、二次処理反応機において生成した塩化ナトリウムが含まれているが、当該廃プラスチックを高温燃焼させた場合、この塩化ナトリウムが一部熱分解して、塩化水素を発生することになる(2NaCl+H2O→Na2O+2HCl)。
【0025】
しかし、このような廃プラスチックに含まれる塩化ナトリウムの熱分解反応によって生成する塩化水素は極く僅かであり、ボイラ水管等を腐食させる等の問題は生じない。表1は、塩化ナトリウムの熱分解反応による塩化水素の生成量(ppm)を当該反応の平衡論的な計算により求めたものであるが、この表からも塩化ナトリウムの熱分解反応による塩化水素の生成量が極めて少ないことが理解されるであろう。
【0026】
【表1】
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図1に基づいて具体的に説明する。
【0028】
図1はこの実施の形態において使用する脱塩素処理装置の一例を示したもので、この装置は、廃プラスチックの脱塩素処理を行う反応機を、上位の一次処理反応機1と下位の二次処理反応機2とに分離構成すると共に、両反応機1,2間に廃プラスチック細分化処理機3を配置してなる。なお、以下の説明においては、便宜上、前後とは図1における左右を意味するものとする。
【0029】
一次処理反応機1は、図1に示す如く、外部加熱式のスクリュー形反応機であり、反応容器11とスクリュー12と加熱機構13とからなる。反応容器11は、天井壁11aの前端部に被処理物投入口14を設けると共にその中央部に排気口15を設け、底壁11bの後端部に処理物排出口16を設けたものであり、これらの開口部14〜16を除いて密閉構造をなしているものである。スクリュー12は、底壁11b上に配置されて前後方向に延びる二軸スクリュー12aとこれを回転駆動する駆動モータ12bとからなり、被処理物投入口14から反応容器11内に投入された廃プラスチック4aを処理物排出口16に向けて攪拌しつつ移送させるものである。加熱機構13は、反応容器11の底壁11aに埋設されたヒーター13a…により反応容器11内の廃プラスチック4aを外部から間接加熱するものであり、ヒータ13a…による廃プラスチック4aの加熱温度を、温度制御器13bにより250〜300℃の範囲内で一定に制御,維持するように構成されている。なお、排気口15には、図示していないが、塩酸回収塔等からなる排ガス処理装置を設けた排気路が接続されている。
【0030】
二次処理反応機2は、図1に示す如く、一次処理反応機1と同様構造をなすものであり、反応容器21とスクリュー22と加熱機構23とからなる。反応容器21は、前壁の上端部に反応剤投入口27を設けた点を除いて、前記反応容器11と同一構造をなすものであり、天井壁21aの前端部及び中央部に被処理物投入口24及び排気口25を設けると共に底壁21bの後端部に処理物排出口26を設けてある。スクリュー22は、前記スクリュー12と同一構造をなすものであり、底壁11b上に配置されて前後方向に延びる二軸スクリュー22aを駆動モータ22bによる回転駆動させることにより、被処理物投入口24から反応容器21内に投入された廃プラスチック4cを処理物排出口26に向けて攪拌しつつ移送させるものである。加熱機構23は、前記加熱機構13と同一構造をなすものであり、反応容器21の底壁21aに埋設されたヒーター23a…により反応容器21内の廃プラスチック4cを外部から間接加熱するものであり、ヒータ23a…による廃プラスチック4cの加熱温度を、温度制御器23bにより300〜330℃の範囲内で一定に制御,維持するように構成されている。
【0031】
廃プラスチック細分化処理機3は、廃プラスチック4bを微小形状に粉砕又は成型する粉砕機又は成型機であり、図1に示す如く、被処理物供給口31及び処理物放出口32を、夫々、上下方向に延びる筒状のシュート33,34を介して一次処理反応機1の処理物排出口16及び二次処理反応機2の被処理物投入口24に連通接続してある。すなわち、廃プラスチック細分化処理機3は、被処理物供給口31から供給された廃プラスチック4bを微小形状に粉砕処理又は成型処理すると共に、処理された廃プラスチック4cを処理物放出口32から放出するように構成されている。被処理物供給口31からの廃プラスチック供給は、一次処理反応機1の処理物排出口16から排出された廃プラスチック4bがシュート33内を落下することにより行なわれ、処理物放出口32から放出された廃プラスチック4cは、シュート34を落下して、二次処理反応機2の被処理物投入口24から反応容器21内に投入されるようになっている。
【0032】
而して、この実施の形態にあっては、上記した脱塩素処理装置を使用して、本発明に係る廃プラスチックの脱塩素処理方法が次のように実施される。
【0033】
まず、廃プラスチック4aを、一次処理反応機1により一次脱塩素処理を行う。なお、廃プラスチック4aは、予め、金属類等を選別除去し、更に一次処理反応機1における反応表面積を増大させるべく100mm程度以下の大きさに粗粉砕しておくことが好ましい。勿論、廃プラスチック4aがペレットのような小形状プラスチックのみである場合には、このような事前の粉砕処理は必要とされないが、極めて稀なケースであろう。
【0034】
すなわち、粗粉砕された廃プラスチック4aを、被処理物投入口14から反応容器11内に投入させると、その廃プラスチック4aはスクリュー12により処理物排出口16へと攪拌されつつ移送されていく。この間において、廃プラスチック4aは加熱機構13より250〜300℃に加熱され、熱分解により塩化水素(塩化水素ガス)を放出する。この加熱時間つまり廃プラスチック4aの反応容器11内での滞留時間は、二軸スクリュー12aの回転速度を制御することによって、処理条件に応じて適宜に設定することができる。例えば、300℃に加熱する場合においては、通常、30分程度に設定しておくことが好ましい。
【0035】
かかる一次脱塩素処理(脱塩化水素処理)によって、廃プラスチック4aに含まれる塩素成分の大半は塩化水素として除去されることになる。
【0036】
そして、一次脱塩素処理された廃プラスチック4bは、スクリュー12により処理物排出口16へと排出される。この廃プラスチック4bには、前述した如く、反応容器11内での加熱による軟化,溶融等により廃プラスチック相互が接着一体化して、大型化したものが含まれる。一方、廃プラスチック4aから放出された塩化水素を含む排ガス6aは、排気口15から反応容器15外に排出され、排ガス処理装置により処理される。特に、排ガス6a中の塩化水素は、、塩酸回収塔により塩酸として回収されるが、前述した如く、当該一次処理温度(250〜300℃)下では高純度(98%以上)のものである。したがって、塩酸回収塔により回収された塩酸は、極めて高純度のものであり、有効に利用することができるものである。
【0037】
次に、一次処理反応機1から排出された廃プラスチック4bは、廃プラスチック細分化処理機3に供給されて細分化処理される。
【0038】
すなわち、スクリュー12により処理物排出口16から排出された廃プラスチック4bは、シュート33内を落下通過して、被処理物供給口31から廃プラスチック細分化処理機3に供給される。廃プラスチック細分化処理機3に供給された廃プラスチック4bは、粗粉砕形状より更に細かい微小形状に粉砕又は成型される。例えば、廃プラスチック細分化処理機3として粉砕機を採用して、廃プラスチック4bを3〜10mm程度に粉砕する。また、廃プラスチック4bが冷間時に硬度大となる性状のものである場合には、廃プラスチック細分化処理機3として成型機を採用して、10mm程度に成型する。
【0039】
このように細分化処理された廃プラスチック4bは、処理物放出口32から放出されて、シュート34内を落下通過し、二次処理反応機2の被処理物投入口24から反応容器21内に投入される。そして、一次処理反応機1において除去さずに残留した塩素成分は、反応容器21内における二次脱塩素処理によって略完全に除去される。
【0040】
すなわち、二次処理反応機2の反応容器21内には、シュート34を介して被処理物投入口24から廃プラスチック4cが投入されると共に、これと同時に反応剤投入口27から反応剤5が投入される。反応剤5としては、粉末状の水酸化ナトリウム若しくは炭酸ナトリウム又はこれらの混合物が使用される。
【0041】
そして、反応容器21内に投入された廃プラスチック4c及び反応剤5は、スクリュー22により攪拌混合されつつ、処理物排出口26に向かって移送されていき、この間において、廃プラスチック4cは加熱機構23により300〜330℃に加熱され、これに残留する塩素成分が加熱による脱塩化水素反応及び塩化水素と反応剤5との反応により、略完全に除去される。なお、廃プラスチック4cの加熱時間つまり反応容器21内での滞留時間は、二軸スクリュー22aの回転速度を制御することによって、処理条件に応じて適宜に設定することができる。例えば、330℃に加熱する場合においては、通常、30分程度に設定しておくことが好ましい。
【0042】
すなわち、反応容器21内に投入される廃プラスチック4cは、それが一次処理反応機1に投入される形状(粗粉砕形状)より微小な形状に粉砕又は成型されたものであること、一次処理反応機1における加熱温度を上回る温度(300〜330℃)で加熱されること、及び一次処理反応機1において含有塩素成分の大半を除去されたものであることから、熱分解による脱塩化水素反応が充分に行なわれ、残留する塩素成分が塩化水素(塩化水素ガス)として略完全に放出されることになる。そして、放出された塩化水素は、反応剤5である水酸化ナトリウム(NaOH)又は炭酸ナトリウム(Na2 CO3 )と反応して(NaOH+HCl→NaCl+H2 O,Na2 CO3 +2HCl→2NaCl+CO2 +H2 O)、塩化ナトリウム(NaCl)を生成する。すなわち、残留塩素成分は塩化ナトリウムとして固定されるのである。かかる反応は、上記した如く廃プラスチック4cが微小形状に粉砕,成型されたもので反応表面積が増大していることから、廃プラスチック4cと反応剤5とがスクリュー22により充分に混合攪拌されることとも相まって、促進され効果的に行われる。このように、廃プラスチック4cの脱塩化水素反応及び反応剤5との反応が同時に行なわれることから、廃プラスチック4cに残留する塩素成分は、塩化ナトリウムに固定されて、略完全に除去される。なお、反応剤5の使用量は、一次処理反応機1において除去されずに残留した僅かな塩素成分を処理するに必要且つ充分な量であればよく、極めて少量で足りる。
【0043】
このようにして残留塩素成分を除去された廃プラスチック4dは、スクリュー22により処理物排出口26から反応容器21外に排出される。二次処理反応機2から排出された廃プラスチック4dは、塩素成分を略完全に除去されたものであるから、高温での燃焼によっても塩化水素を殆ど発生しない(廃プラスチック4dに含まれる塩化ナトリムは、前述した如く、高温で燃焼しても塩化水素を殆ど発生しない)ものであり、燃料等として利用価値の極めて高いものである。なお、当該廃プラスチック4dは、そのまま燃料等として使用することができるが、用途に応じて、更に適当な処理(成型処理等)を施した上で使用に供することもできる。一方、反応容器21内で発生する排ガス6bは排気口25から排出されるが、この排ガス6b中には塩化水素が殆ど含まれていないことから、ボイラ水管腐食等の問題を生じることなく、廃熱ボイラの加熱源等として有効に利用することが可能である。
【0044】
ところで、本発明に係る脱塩素処理方法による脱塩素効果を確認するために、ポリエチレン、ポリスチレン及び塩化ビニルが混在する廃プラスチック4aを、予め、100mm程度に粉砕した上、各反応機1,2(前後幅:2500mm,左右幅:600mm,高さ:520mm)及びプラスチック細分化処理機(粉砕機又は成型機)として実機を使用した上記構成の脱塩素処理装置により、次のような脱塩素処理実験を行なった。
【0045】
すなわち、上記した如く粉砕した廃プラスチック4aを、一次処理反応機1の反応容器11に30kg/hの割合で投入し、投入された廃プラスチック4aを300℃で30分間加熱処理した。処理後、処理物排出口16から排出された廃プラスチック4bにおける塩素含有量を測定したところ、脱塩素率は約90%であった。
【0046】
次に、この廃プラスチック4bを、粉砕機である廃プラスチック細分化処理機3により大きさ10mmの微小片4cに粉砕した上、二次処理反応機2の反応容器21に投入させた。
【0047】
そして、二次処理反応機2において、反応剤5として水酸化カルシウムを投入しつつ、微小片とされた廃プラスチック4cを330℃で30分間加熱処理し、二次処理反応機2の処理物排出口26から排出された廃プラスチック4dにおける塩素含有量を測定した。
【0048】
その結果、当該廃プラスチック4dにおける脱塩素率は99%に達しており、本発明に係る脱塩素処理方法によれば、廃プラスチックの脱塩素処理を略完全に行ないうることが確認された。また、当該廃プラスチック4dを高温燃焼させたところ、塩化水素の発生は殆ど認められなかった。
【0049】
なお、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の基本原理を逸脱しない範囲において、適宜に改良,変更することができる。
【0050】
【発明の効果】
以上の説明から容易に理解されるように、本発明によれば、廃プラスチックの脱塩素処理を一次処理反応機における脱塩化水素処理と二次処理反応機における反応剤との反応による塩化ナトリウム固定処理との2段階に亘って行い、廃プラスチック中の塩素成分の大半を一次処理反応機で脱塩化水素処理により除去し、一次処理反応機で除去されずに残留する塩素成分を二次処理反応機で反応剤との反応により塩化ナトリウムに固定させて除去するようにしたから、廃プラスチックの脱塩素処理を効率よく良好に行なうことができ、塩素成分を殆ど含まない廃プラスチックを容易に得ることができる。したがって、本発明によって処理された廃プラスチックは、二次処理反応機において生成し廃プラスチックに含まれる塩化ナトリウムが熱分解によって塩化水素を殆ど発生しないものであることとも相俟って、高温燃焼によっても強腐食性の塩化水素を殆ど発生しない燃料等として種々の用途に好適に使用することができ、その実用的価値極めて大なるものである。また、二次処理反応機においては、一次処理反応機により含有塩素成分の大半を除去された廃プラスチックを脱塩素処理するにすぎないから、その処理を行なうに必要とされる反応剤の使用量が少量で足り、少量の反応剤により脱塩素処理を効率良く且つ経済的に行なうことができる。さらに、一次処理反応機で発生する塩化水素は、極めて高純度の塩酸として回収され、好適に再利用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る廃プラスチックの脱塩素処理方法を実施するための装置の一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1…一次処理反応機、2…二次処理反応機、3…廃プラスチック細分化処理機、4a…一次処理反応機に投入された廃プラスチック、4b…一次処理反応機から排出された廃プラスチック、4c…二次処理反応機に投入された廃プラスチック、4d…二次処理反応機から排出された廃プラスチック、5…反応剤、6a…塩化水素を含む排ガス、6b…排ガス、11,21…反応容器、12,22…スクリュー、13,23…加熱機構。
Claims (1)
- 廃プラスチックを脱塩素処理して微細な固形廃プラスチック燃料を製造する方法において、一次処理反応機において、少なくとも100mm以下の大きさに破砕処理した廃プラスチックを空気中で250℃〜300℃の一次脱塩素処理温度に加熱することにより、当該廃プラスチックに含まれる塩素成分を熱分解による脱塩化水素反応により塩化水素として除去すると共に、発生した塩化水素ガスを一次処理反応機から排気させ、次に、前記一次処理反応機から排出された廃プラスチックを10mm以下の微小形状に粉砕又は成型したあと、当該微小形状の廃プラスチックを二次処理反応機において、水酸化ナトリウム若しくは炭酸ナトリウム又は両者の混合物を反応剤として添加しつつ、空気中で300℃〜330℃の二次脱塩素処理温度に加熱することにより、前記廃プラスチックに残留する塩素成分を反応剤との反応により塩化ナトリウムとして除去し、当該塩化ナトリウムを含有する廃プラスチックを燃料として利用する構成としたことを特徴とする脱塩素処理をした微細な固形廃プラスチック燃料の製造方法。
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