JP3717666B2 - 鍵盤楽器の鍵盤装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鍵に連動して回動するハンマーを備えたタイプの電子ピアノなどに用いられる鍵盤楽器の鍵盤装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の電子ピアノの鍵盤装置では一般に、1個の金属製のシャーシ(フレーム)上に多数の鍵が左右方向に並んで取り付けられている。このシャーシには、多数の溝や孔などが形成されており、各鍵は、これらの溝および孔に係合した状態で、シャーシに回動自在に取り付けられている。また、シャーシは、1枚の金属板(例えば鋼板)にプレス金型を用いた打ち抜き加工を施すとともに、曲げ金型を用いた曲げ加工などを施すことによって、一体に製作されている。また、金属製のシャーシに代えて合成樹脂製のシャーシを用いた鍵盤装置も知られている。このような合成樹脂製のシャーシは一般に、金型を備える射出成形機によって、一体的に射出成形されている。
【0003】
さらに、この種の鍵盤装置として、鍵のタッチ感をアコースティックピアノに近づけるために、鍵に連動して回動するハンマーを備えたタイプのものがある。その場合、ハンマーは、例えば特開昭63−128397号公報に開示されているように、シャーシに固定したハンマー支持部材に、回動自在に支持されるのが一般的である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の鍵盤装置によれば、1個のシャーシ上にすべての鍵が取り付けられているため、シャーシは、これらの鍵全体の幅(左右方向の長さ)以上の大きなサイズにならざるを得ない。このため、シャーシの加工に使用される、プレス金型、曲げ金型および射出成形用の金型や、プレス機および射出成形機を含めた製造設備が大型になり、製造コストを大きく増大させる原因になっている。これに加えて、シャーシの試作段階において、シャーシに形成される孔や鍵ガイドの位置などが、金型の製造誤差などによってずれてしまうことがあり、これらの位置を整えるための金型調整が必要になる場合がある。この場合、金型が大型であることにより、溝や孔の位置ずれを調整すべき範囲が広くなることによって、金型の調整作業に手間がかかり、その結果、製造コストをさらに増大させるという問題がある。
【0005】
また、鍵盤装置には、通常の88鍵に限らず、様々な鍵数のものがある。しかし、従来の鍵盤装置では、全体として1個のシャーシを用いているため、例えば88鍵用のシャーシの金型を、76鍵用のシャーシの加工に転用することは不可能である。このため、鍵数の異なる鍵盤装置を製造する場合、それぞれの鍵数用のシャーシの金型を別々に製作しなければならず、製造コストが一層、増大してしまう。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、シャーシの製作コストの大幅な削減により製造コストを大幅に削減することができ、組立を容易に行えるとともに、ハンマーの支持構成に関連する部品点数の削減による製造コスト減をも図ることができる鍵盤楽器の鍵盤装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するため、本発明の鍵盤楽器の鍵盤装置は、左右方向に並べられた複数のシャーシと、左右方向に延び、複数のシャーシを互いに連結する連結部材と、シャーシに回動自在に設けられた複数の鍵と、連結部材に回動自在に支持され、複数の鍵にそれぞれ連動して回動する複数のハンマーと、を備えていることを特徴とする。
【0008】
この鍵盤楽器の鍵盤装置によれば、鍵盤装置のシャーシが複数に分割されていて、それらを別々に製作できるので、1つの鍵盤装置に対して1個のシャーシを製作する従来の場合と比べて、シャーシ1個当りのサイズを小型化できる。これによって、シャーシの製作に用いる、金型やプレス機などを含む製造設備を小型化できるとともに、試作段階の金型調整も容易になるので、シャーシの製作コスト、したがって、鍵盤装置の製造コストを大幅に削減することができる。
【0009】
また、複数のシャーシが連結部材で互いに連結されるので、例えば、シャーシを楽器本体に取り付ける前に、複数のシャーシを連結部材で連結した状態で鍵やハンマーを取り付けることが可能になるなど、鍵盤装置の組立の自由度が高められる。そして、そのように、楽器本体への取付前に、例えば楽器本体外で、鍵盤装置を組み立てることによって、その組立作業、および複数のシャーシ相互間や鍵およびハンマー相互間の位置関係の調整作業などを容易に行うことができ、楽器本体にシャーシ、ハンマーや鍵などを順次、組み込んだ場合に生じやすい鍵の表面の損傷などを回避することができる。
【0010】
さらに、ハンマーが、連結部材に直接、支持されているので、そのために従来設けられていたハンマー支持部材を省略でき、その分の部品点数の削減によって、製造コストをさらに削減することができる。
【0011】
この場合、連結部材が、すべての複数のハンマーにわたって左右方向に延びる1個の連結部材で構成されていることが好ましい。
【0012】
この構成では、連結部材がすべてのハンマーにわたる1個の連結部材として構成されているので、複数のシャーシの組立精度などに影響されることなく、ハンマーの支点位置が鍵盤装置全体にわたって一様になることにより、ハンマーの高さ、相互間の間隔やストロークなどのばらつきが非常に小さくなり、それらの調整を極めて容易に行うことができる。
【0013】
この場合、連結部材は、シャーシに水平に取り付けられる取付部と、この取付部の一端から上方に延びるハンマー支持部とによって構成され、このハンマー支持部には、その長さ方向に沿って、複数のハンマーをそれぞれ係合・支持するための複数の係合凸部および係合凹部が交互にが形成されていることが好ましい。
【0014】
この構成では、連結部材が取付部とハンマー支持部とから断面L形のアングル状に形成されるとともに、ハンマー支持部に櫛歯状に形成した複数の係合凸部および係合凹部に、複数のハンマーが係合・支持される。このような比較的単純で安価な構成の連結部材によって、複数のハンマーを一様な支点位置で支持することができる。また、連結部材が断面L形であることで、比較的大きな剛性を有することにより、シャーシの補強機能を高めることもできる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。図1および図2は、本発明を適用した電子ピアノの鍵盤装置を示している。両図に示すように、この鍵盤装置1は、複数のシャーシ2と、複数のシャーシ2を互いに連結する前後および中央の計3つの連結部材4、4、5と、シャーシ2に回動自在に取り付けられた複数の鍵3と、中央の連結部材5(以下「中連結部材」という)に回動自在に取り付けられ、鍵3と連動して回動する複数のハンマー6と、を備えている。
【0016】
複数のシャーシ2は、棚板7上に左右方向に並べられており、中央の7個(図1には2個のみ図示)のシャーシと、図示しない最低音部用および最高音部用のシャーシの、計9個のシャーシで構成されている。このうち、中央の7個のシャーシ2は、互いに同じ寸法および形状を有しており、各シャーシ2に、1オクターブ分の鍵3、すなわち7個の白鍵3aおよび5個の黒鍵3bから成る計12個の鍵3が取り付けられている。また、最低音部用および最高音部用のシャーシには、最低音部の3個の鍵3および最高音の1個の鍵3がそれぞれ取り付けられている。このように、鍵盤装置1は、全部で88個の鍵3を備えている(図1には2オクターブ分のみ図示)。
【0017】
中央の7個のシャーシ2はそれぞれ、同じ金型で製作された、例えばABS樹脂の射出成形品で構成され、矩形の平面形状を有している。図2に示すように、シャーシ2の下面の四隅には、棚板7への取付用のボス2aが、下方に突出して形成されており(2つのみ図示)、各ボス2aには、補強用のリブ2bが一体に形成されている。また、シャーシ2の下面には、各ボス2aの外側に、前後の連結部材4、4を取り付けるためのボス2cが下方に突出して形成されている。
【0018】
一方、最低音部用および最高音部用のシャーシはそれぞれ、上記シャーシ2用の金型に入子型を用いることによって、V字形の溝付きのシャーシを射出成形し、この溝付きシャーシを溝に沿って切断することにより、製作されている。
【0019】
以上の計9個のシャーシ2は、前記連結部材4、4、5によって互いに連結されている。これらの連結部材4、4、5はそれぞれ、鍵盤装置1の左右方向の全体に渡る長さの細長い1本のアングル状のものであり、例えばアルミ合金の押出成形品で構成されている。前後の連結部材4、4は、図2に示すように、水平な取付部4aと、その前端または後端から上方に延びる鉛直部4bとにより、断面L字状および逆L字状にそれぞれ形成されており、シャーシ2の前後端部に配置され、取付部4aの部分で、各シャーシ2の下面から突出する前記ボス2cに、下方からねじ8で固定されている(図1参照)。
【0020】
一方、中連結部材5は、図3(a)に示すように、水平な取付部5aと、その後端から上方に垂直に延びるハンマー支持部5bとによって、断面逆L字状に形成されている。この中連結部材5は、シャーシ2の前後方向の中央部に配置され、取付部5aの部分で、後述する鍵スイッチ13とともに、各シャーシ2に下方からねじ9で固定されている。また、図3(b)に示すように、中連結部材5のハンマー支持部5bには、その長さ方向に沿って、複数の係合凸部5cおよび係合凹部5dが、同じ高さおよび深さで交互に等間隔で櫛歯状に形成されており、各係合凸部5cおよび係合凹部5dにハンマー6が係合・支持されるようになっている。
【0021】
鍵3(白鍵3aおよび黒鍵3b)はそれぞれ、例えばABS樹脂の射出成形品で構成されており、以下、白鍵3aを例にとり、その構成を説明する。白鍵3aは、下面が開放した断面逆U字状のものであり、その後端部がシャーシ2の上面に設けられた回動支点10に回動自在に支持されている。
【0022】
また、白鍵3aの前部には、フック状のストッパ部3cが形成されており、このストッパ部3cは、シャーシ2の孔2dを通って下方に突出している。一方、シャーシ2の下面には、ゴム製の上限ストッパ2fが取り付けられている。この構成により、白鍵3aは、ストッパ部3cが上限ストッパ2fに当接することによって、上方への回動を規制され、常時は、斜め後ろ下がりの離鍵位置(図2に示す位置)に位置している。
【0023】
さらに、シャーシ2の前端部には、白鍵3aのストッパ部3cの付近に、鍵ガイド2gが立設されており、白鍵3aは、その回動時に、この鍵ガイド2gによって、左右方向にぶれないように案内される。白鍵3aは、以上のように構成されており、説明は省略するが、黒鍵3bも白鍵3aとほぼ同様に構成されている。
【0024】
ハンマー6は、前後方向に延びるアーム状のものであり、合成樹脂の一体成形品などで構成されている。ハンマー6の中央部よりも前側の部分には、係合孔6aが形成されており、ハンマー6は、この係合孔6aが中連結部材5のハンマー支持部5bの係合凸部5cに係合し、且つ係合孔6aの左右両側部が係合凹部5dに載った状態で、中連結部材5に回動自在に支持されている。
【0025】
また、ハンマー6は、その前端部の鍵当接部6bが鍵3の頂壁の裏面に当接しているとともに、係合孔6aよりも後ろ側の部分がシャーシ2の開口2hを通って、シャーシ2の下側に延びている。さらに、ハンマー6の後端部には、上方に延びる延出部6cが形成されていて、ハンマー6の回動時、この延出部6cが、シャーシ2に形成された開口2iを通って出入りするようになっている。
【0026】
また、ハンマー6の鍵当接部6bの下側には、アクチュエータ部6dが形成されていて、このアクチュエータ部6dは、後述する鍵スイッチ13のスイッチ本体15の上面に常時、当接している。なお、同図中の符号2j、2kは、ハンマー6の下限位置および上限位置をそれぞれ規制するための下限ストッパおよび上限ストッパである。以上の構成により、鍵3が押鍵されると、ハンマー6は、その鍵当接部6bが鍵3で押されることによって、これに連動して同図の反時計方向に回動し、この回動の際、アクチュエータ部6dが鍵スイッチ13のスイッチ本体15を押下する。また、鍵3が離鍵されると、ハンマー6はその自重により同図の時計方向に復帰回動し、これに伴い、鍵3も図2に示す離鍵位置に復帰する。
【0027】
上述した鍵スイッチ13は、プリント基板14と、その上面に設けられた多数のスイッチ本体15とを備えている。プリント基板14は、図2に示すように、シャーシ2の中央部に配置され、その前端部が、シャーシ2の前側のボス2aから後方に延びるリブ2bの係合溝2lに係合した状態で、中央部が中連結部材5を固定するねじ9で共締めされることによって、シャーシ2に取り付けられている。
【0028】
各スイッチ本体15は、例えばゴムスイッチで構成されており、シャーシ2に形成した孔2mを介して上方に突出するとともに、プリント基板14を介して、電子ピアノの発音を制御する制御装置(図示せず)に接続されている。前述したように、スイッチ本体15の上面には、ハンマー6のアクチュエータ部6dが常に当接している。そして、鍵3が押鍵されるのに伴い、アクチュエータ部6dがスイッチ本体15を押下し、オン動作させることによって、鍵3の押鍵の有無および押鍵速度などの押鍵情報が検出され、その検出結果に応じて、制御装置が電子ピアノの発音を制御するようになっている。
【0029】
以上の構成の鍵盤装置1は、例えば、複数のシャーシ2を連結部材4、4、5で互いに連結し、中連結部材5のハンマー支持部5bに前述したようにしてハンマー6を取り付け、さらに、鍵3を回動支点10に取り付けることなどにより組み立てられ、さらにシャーシ2相互間や鍵3およびハンマー6相互間の位置関係の調整を終えた後、棚板7に取り付けられる。この取付は、各シャーシ2に形成した前記ボス2aと、これに対応して棚板7に形成された図示しない孔とを介して、ねじ止めによって行われる(図示せず)。なお、この棚板7は、アルミ合金の押出成形品などで構成されている。
【0030】
以上のように構成された本実施形態の鍵盤装置1によれば、鍵3を取り付けるためのシャーシが、1オクターブ分用の7個のシャーシ2と、最低音部用および最高音部用の2個のシャーシとに分割構成されているので、シャーシ2の製造に用いる、射出成形用の金型や射出成形機を含めた製造設備を小型化できる。また、金型の小型化によって、試作段階の金型調整も容易になる。したがって、シャーシ2の製作コストを大幅に削減でき、鍵盤装置1の製造コストを大幅に削減することができる。
【0031】
また、複数のシャーシ2が連結部材4、4、5で互いに連結されるので、前述したように、シャーシ2を棚板7などに取り付ける前に、複数のシャーシ2を連結部材4、4、5で連結した状態で鍵3やハンマー6を取り付けることが可能になるなど、鍵盤装置1の組立の自由度が高められる。そして、そのように、棚板7への取付前に、例えばピアノ本体外で、鍵盤装置1を組み立てることによって、その組立作業、および複数のシャーシ2相互間や鍵3およびハンマー6相互間の位置関係の調整作業などを容易に行うことができ、棚板7にシャーシ2、ハンマー6や鍵3などを順次、組み込んだ場合に生じやすい鍵3の表面の損傷などを回避することができる。
【0032】
さらに、ハンマー6が、中連結部材5に直接、支持されているので、そのために従来設けられていたハンマー支持部材を省略でき、その分の部品点数の削減によって、製造コストをさらに削減することができる。また、この中連結部材5がすべてのハンマー6にわたる1個の連結部材として構成されているので、複数のシャーシ2の組立精度などに影響されることなく、ハンマー6の支点位置が鍵盤装置1全体にわたって一様になることにより、ハンマー6の高さ、相互間の間隔やストロークなどのばらつきが非常に小さくなり、それらの調整を極めて容易に行うことができる。
【0033】
さらに、中連結部材5は、取付部5aとハンマー支持部5bとからアングル状に形成されるとともに、ハンマー支持部5bに複数の係合凸部5cと係合凹部5dを櫛歯状に形成しただけのものであり、そのような単純で安価な構成によって、複数のハンマー6を一様な支点位置で支持することができる。また、中連結部材5が断面L形であることで、比較的大きな剛性を有することにより、シャーシ2の補強機能を高めることもできる。
【0034】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の鍵盤楽器の鍵盤装置は、シャーシの製作コストの大幅な削減により製造コストを大幅に削減することができ、組立を容易に行えるとともに、ハンマーの支持構成に関連する部品点数の削減による製造コスト減をも図ることができるなどの効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による電子ピアノの鍵盤装置の平面図である。
【図2】図1の鍵盤装置の側断面図である。
【図3】図1の鍵盤装置の中連結部材の(a)側面図、および(b)背面図である。
【符号の説明】
1 鍵盤装置
2 シャーシ
3 鍵
4 前後の連結部材
5 中連結部材
5a 取付部
5b ハンマー支持部
5c 係合凸部
5d 係合凹部
6 ハンマー
Claims (3)
- 左右方向に並べられた複数のシャーシと、
左右方向に延び、前記複数のシャーシを互いに連結する連結部材と、
前記シャーシに回動自在に設けられた複数の鍵と、
前記連結部材に回動自在に支持され、前記複数の鍵にそれぞれ連動して回動する複数のハンマーと、
を備えていることを特徴とする鍵盤楽器の鍵盤装置。 - 前記連結部材が、すべての前記複数のハンマーにわたって左右方向に延びる1個の連結部材で構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の鍵盤楽器の鍵盤装置。
- 前記連結部材は、前記シャーシに水平に取り付けられる取付部と、この取付部の一端から上方に延びるハンマー支持部とによって構成され、このハンマー支持部には、その長さ方向に沿って、前記複数のハンマーをそれぞれ係合・支持するための複数の係合凸部および係合凹部が交互に形成されていることを特徴とする、請求項2に記載の鍵盤楽器の鍵盤装置。
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