JP3746373B2 - 鍵盤楽器の鍵盤装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子ピアノなどに用いられる鍵盤楽器の鍵盤装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の電子ピアノの鍵盤装置では一般に、1個の金属製のシャーシ(フレーム)上に多数の鍵が左右方向に並んで取り付けられている。このシャーシには、多数の溝や孔などが形成されており、各鍵は、これらの溝および孔に係合した状態で、シャーシに揺動自在に取り付けられている。また、シャーシは、1枚の金属板(例えば鋼板)にプレス金型を用いた打ち抜き加工を施すとともに、曲げ金型を用いた曲げ加工などを施すことによって、一体に製作されている。また、金属製のシャーシに代えて合成樹脂製のシャーシを用いた鍵盤装置も知られている。このような合成樹脂製のシャーシは一般に、金型を備える射出成形機によって、一体的に射出成形されている。
【0003】
さらに、電子ピアノなどの鍵盤装置には、鍵の押鍵情報を検出するための鍵スイッチが設けられている。この鍵スイッチは、シャーシに取り付けられたプリント基板と、複数の鍵に対応してプリント基板上に設けられた、ゴムスイッチなどから成る複数のスイッチ本体とで構成されており、押鍵時、スイッチ本体が鍵などで押下されることによって、各鍵の押鍵の有無や押鍵速度などの押鍵情報が検出されるようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の鍵盤装置によれば、1個のシャーシ上にすべての鍵が取り付けられているため、シャーシは、これらの鍵全体の幅(左右方向の長さ)以上の大きなサイズにならざるを得ない。このため、シャーシの加工に使用される、プレス金型、曲げ金型および射出成形用の金型や、プレス機および射出成形機を含めた製造設備が大型になり、製造コストを大きく増大させる原因になっている。これに加えて、シャーシの試作段階において、シャーシに形成される孔や鍵ガイドの位置などが、金型の製造誤差などによってずれてしまうことがあり、これらの位置を整えるための金型調整が必要になる場合がある。この場合、金型が大型であることにより、溝や孔の位置ずれを調整すべき範囲が広くなることによって、金型の調整作業に手間がかかり、その結果、製造コストをさらに増大させるという問題がある。
【0005】
また、鍵盤装置には、通常の88鍵に限らず、様々な鍵数のものがある。しかし、従来の鍵盤装置では、全体として1個のシャーシを用いているため、例えば88鍵用のシャーシの金型を、76鍵用のシャーシの加工に転用することは不可能である。このため、鍵数の異なる鍵盤装置を製造する場合、それぞれの鍵数用のシャーシの金型を別々に製作しなければならず、製造コストが一層、増大してしまう。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、シャーシの製作コストの大幅な削減により製造コストを大幅に削減することができ、組立を容易に行えるとともに、シャーシおよび鍵スイッチの組立に関連する部品点数や組立工数の削減による製造コスト減をも図ることができる鍵盤楽器の鍵盤装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するため、本発明の鍵盤楽器の鍵盤装置は、棚板と、棚板上に左右方向に並べられた複数のシャーシと、複数のシャーシ上に左右方向に並べられ、シャーシに回動自在に設けられた複数の鍵と、複数のシャーシの下側に配置され、複数のシャーシの左右方向の全体にわたって延びるプリント基板を有し、複数の鍵の押鍵情報を検出する鍵スイッチとを備え、複数のシャーシ複数のシャーシに固定されたプリント基板のみによって互いに連結されるとともに、棚板に直接、固定されていることを特徴とする。
【0008】
この鍵盤楽器の鍵盤装置によれば、鍵盤装置のシャーシが複数に分割されていて、それらを別々に製作できるので、1つの鍵盤装置に対して1個のシャーシを製作する従来の場合と比べて、シャーシ1個当りのサイズを小型化できる。これによって、シャーシの製作に用いる、金型やプレス機などを含む製造設備を小型化できるとともに、試作段階の金型調整も容易になるので、シャーシの製作コスト、したがって、鍵盤装置の製造コストを大幅に削減することができる。
【0009】
また、複数のシャーシが、その左右方向の全体にわたって延びる、鍵スイッチのプリント基板のみで互いに連結されるので、例えば、シャーシを棚板上に取り付ける前に、プリント基板で連結した複数のシャーシに鍵を取り付けることが可能になるなど、鍵盤装置の組立の自由度が高められる。そして、そのように、棚板への取付前に、例えば楽器本体外で、鍵盤装置を組み立てることによって、その組立作業、および複数のシャーシ相互間やそれらに取り付けられた鍵相互間の位置関係の調整作業などを容易に行うことができ、棚板上にシャーシや鍵などを順次、組み込んだ場合に生じやすい鍵の表面の損傷などを回避することができる。
【0010】
さらに、シャーシ同士の連結を、電子ピアノなどに通常、設けられる鍵スイッチのプリント基板を利用して行うので、シャーシを連結するための別個の連結部材が不要となり、その分の部品点数の削減によって、製造コストをさらに削減することができる。また、このようなプリント基板によるシャーシの連結は、同時にシャーシへの鍵スイッチの取付を意味し、すなわちシャーシの連結と鍵スイッチの取付とを同時に行えるので、鍵盤装置の組立作業の簡素化をさらに進めることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。図1および図2は、本発明の第1実施形態による電子ピアノの鍵盤装置を示している。両図に示すように、この鍵盤装置1は、複数のシャーシ2と、シャーシ2上に回動自在に取り付けられ、左右方向に並設された多数の鍵3と、各鍵3の押鍵情報を検出するための鍵スイッチ13と、を備えている。
【0012】
複数のシャーシ2は、棚板7上に左右方向に並設されており、中央の7個(図1には2個のみ図示)のシャーシと、図示しない最低音部用および最高音部用のシャーシの、計9個のシャーシで構成されている。このうち、中央の7個のシャーシ2は、互いに同じ寸法および形状を有しており、各シャーシ2に、1オクターブ分の鍵3、すなわち7個の白鍵3aおよび5個の黒鍵3bから成る計12個の鍵3が取り付けられている。また、最低音部用および最高音部用のシャーシには、最低音部の3個の鍵3および最高音の1個の鍵3がそれぞれ取り付けられている。このように、鍵盤装置1は、全部で88個の鍵3を備えている(図1には2オクターブ分のみ図示)。
【0013】
中央の7個のシャーシ2はそれぞれ、同じ金型で製作された、例えばABS樹脂の射出成形品で構成され、矩形の平面形状を有している。図2に示すように、シャーシ2の下面には、棚板7への取付用の3つのボス2a、2a、2aが、下方に突出し且つ前後方向(図2の左右方向)に1列に等間隔に並ぶように、形成されている。これら1列のボス2aは、シャーシ2の左右端部にそれぞれ設けられている(1列のみ図示)。各ボス2aには、補強用の4つのリブ2bが前後左右に延びるように一体に形成されている(3つのみ図示)。また、中央のボス2aから後方に延びるリブ2bの上端部には、前記鍵スイッチ13の後述するプリント基板14が係合する係合溝2cが、左右方向に延びるように形成されている。
【0014】
一方、最低音部用および最高音部用のシャーシはそれぞれ、上記シャーシ2用の金型に入子型を用いることによって、V字形の溝付きのシャーシを射出成形し、この溝付きシャーシを溝に沿って切断することにより、製作されている。
【0015】
以上の計9個のシャーシ2は、鍵スイッチ13のプリント基板14によって、互いに連結されている。この鍵スイッチ13は、プリント基板14と、その上面に設けられた多数のスイッチ本体15とを備えている。プリント基板14は、図1に示すように、シャーシ2の左右方向の全体に渡る長さを有し、シャーシ2の中央部に配置され、その前端部がシャーシ2の係合溝2cに係合した状態で、前後方向の中央部が各シャーシ2の左右端部に、下方からねじ8で固定されている。これにより、シャーシ2がプリント基板14によって互いに連結されると同時に、鍵スイッチ13がシャーシ2に取り付けられる。
【0016】
各スイッチ本体15は、例えばゴムスイッチで構成されており、シャーシ2に形成した孔2hを介して上方に突出するとともに、プリント基板14を介して、電子ピアノの発音を制御する制御装置(図示せず)に接続されている。一方、鍵3の中央部には、下方に突出するアクチュエータ部3dが形成されており、このアクチュエータ部3dは、スイッチ本体15の上面に常に当接している。そして、鍵3が押鍵されるのに伴い、アクチュエータ部3dがスイッチ本体15を押下し、オン動作させることによって、鍵3の押鍵の有無および押鍵速度などの押鍵情報が検出され、その検出結果に応じて、制御装置が電子ピアノの発音を制御するようになっている。
【0017】
鍵3(白鍵3aおよび黒鍵3b)はそれぞれ、例えばABS樹脂の射出成形品で構成されており、以下、白鍵3aを例にとり、その構成を説明する。白鍵3aの後端部には、下方に延びる可撓部3eと、この可撓部3eから後方に水平に延びる取付部3fとが形成されている。白鍵3aは、この取付部3fの部分で、ねじ9によりシャーシ2の上面後端部に取り付けられている。また、可撓部3eは、白鍵3aが押鍵されたときに、弾性変形して撓めるような厚さを有しており、この構成によって、白鍵3aは、取付部3fを中心として回動可能であるとともに、離鍵後は、可撓部3eの弾性力によって、離鍵方向(図2の時計方向)に復帰回動するようになっている。
【0018】
また、白鍵3aの前部には、フック状のストッパ部3cが形成されており、このストッパ部3cは、シャーシ2の孔2dを通って下方に突出している。一方、シャーシ2の上面および下面には、ゴム製の下限ストッパ2eおよび上限ストッパ2fが、それぞれ取り付けられている。以上の構成により、白鍵3aは、ストッパ部3cが上限ストッパ2fに当接する斜め後ろ下がりの離鍵位置(図2に示す位置)と、白鍵3aの下面が下限ストッパ2eに当接する押鍵位置(図示せず)との間で、回動可能であり、常時は、可撓部3eの弾性力によって離鍵位置に位置している。
【0019】
さらに、シャーシ2の前端部は、階段状に一段低くなっており、この部分に鍵ガイド2gが立設されている。白鍵3aは、その回動時に、この鍵ガイド2gによって、左右方向にぶれないように案内される。
【0020】
白鍵3aは、以上のように構成されており、説明は省略するが、黒鍵3bも白鍵3aとほぼ同様に構成されている。
【0021】
以上の構成の鍵盤装置1は、例えば、複数のシャーシ2間に鍵盤スイッチ13のプリント基板14を、前述したようにして取り付けることにより、シャーシ2相互間を連結し、次いで、連結されたシャーシ2に鍵3を取り付けることなどにより組み立てられ、さらにシャーシ2相互間や鍵3相互間の位置関係の調整を終えた後、棚板7に取り付けられる。この取付は、各シャーシ2に形成した前記ボス2aと、これに対応して棚板7に形成された図示しない孔とを介して、ねじ止めによって行われる(図示せず)。なお、この棚板7は、アルミ合金の押出成形品などで構成されている。
【0022】
以上のように構成された本実施形態の鍵盤装置1によれば、鍵3を取り付けるためのシャーシが、1オクターブ分用の7個のシャーシ2と、最低音部用および最高音部用の2個のシャーシとに分割構成されているので、シャーシ2の製作に用いる、射出成形用の金型や射出成形機を含めた製造設備を小型化できる。また、金型の小型化によって、試作段階の金型調整も容易になる。したがって、シャーシ2の製作コストを大幅に削減でき、鍵盤装置1の製造コストを大幅に削減することができる。
【0023】
また、複数のシャーシ2が鍵スイッチ13のプリント基板14で互いに連結されるので、例えば、シャーシ2を棚板7に取り付ける前に、プリント基板14で連結した複数のシャーシ2に鍵3を取り付けることが可能になるなど、鍵盤装置1の組立の自由度が高められる。そして、そのように、棚板7への取付前に、例えばピアノ本体外で、鍵盤装置1を組み立てることによって、その組立作業、および複数のシャーシ2相互間やそれらに取り付けられた鍵3相互間の位置関係の調整作業などを容易に行うことができ、棚板7にシャーシ2や鍵3などを順次、組み込んだ場合に生じやすい鍵3の表面の損傷などを回避することができる。
【0024】
さらに、シャーシ2同士の連結を、電子ピアノなどに通常、設けられる鍵スイッチ13のプリント基板14を利用して行うので、シャーシ2を連結するための別個の連結部材が不要となり、その分の部品点数の削減によって、製造コストをさらに削減することができる。また、このようなプリント基板14によるシャーシ2の連結は、同時にシャーシ2への鍵スイッチ13の取付を意味し、すなわちシャーシ2相互の連結と鍵スイッチ13の取付とを同時に行えるので、鍵盤装置1の組立作業の簡素化をさらに進めることができる。
【0025】
図3は、本発明の第2実施形態による電子ピアノの鍵盤装置を示している。この鍵盤装置21は、鍵3に連動して回動するハンマー22を備えたタイプのものである。鍵3は、後端部がシャーシ2に回動自在に支持されている。ハンマー22は、その中央部よりも前側の部分で、シャーシ2の回動支点23に回動自在に支持されている。また、ハンマー22は、その前端部の鍵当接部22aが鍵3の頂壁の裏面に当接しているとともに、回動支点23よりも後ろ側の部分がシャーシ2の開口2iを通って、シャーシ2の下側に延びている。
【0026】
さらに、ハンマー22の鍵当接部22aの下側には、アクチュエータ部22bが形成されていて、このアクチュエータ部22bは、鍵スイッチ13のスイッチ本体15の上面に常時、当接している。なお、同図中の符号2j、2kは、ハンマー22の下限位置および上限位置をそれぞれ規制するための下限ストッパおよび上限ストッパである。以上の構成により、鍵3が押鍵されると、ハンマー22は、その鍵当接部22aが鍵3で押されることによって、同図の反時計方向に回動し、この回動の際、アクチュエータ部22bが鍵スイッチ13のスイッチ本体15を押下することによって、鍵3の押鍵情報が検出される。
【0027】
鍵盤装置21の他の構成は、前述した第1実施形態による鍵盤装置1と同じであり、すなわち、シャーシ2が9個のシャーシで分割構成されていることや、シャーシ2同士が鍵スイッチ13のプリント基板14によって互いに連結されていることなどは、第1実施形態と同様である。したがって、本実施形態の鍵盤装置21においても、第1実施形態と同様の効果を得ることができ、すなわち、シャーシ2の製作コストの削減により鍵盤装置21の製造コストを大幅に削減でき、組立の自由度が高められるとともに、シャーシ2および鍵スイッチ13の組立に関連する部品点数や組立工数の削減による製造コスト減をも図ることができる。
【0028】
なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態は、本発明を電子ピアノに適用した例であるが、本発明は、これに限らず、鍵の押鍵情報を検出するためのプリント基板を有する他の電子楽器(例えばシンセサイザなど)や、自動演奏や消音演奏が可能なアコースティックピアノなどに広く適用することが可能である。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することができる。
【0029】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の鍵盤楽器の鍵盤装置は、シャーシの製作コストの大幅な削減により製造コストを大幅に削減することができ、組立を容易に行えるとともに、シャーシおよび鍵スイッチの組立に関連する部品点数や組立工数の削減による製造コスト減をも図ることができるなどの効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態による電子ピアノの鍵盤装置の、一部を省略した底面図である。
【図2】図1の鍵盤装置の側断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態による電子ピアノの鍵盤装置の側断面図である。
【符号の説明】
1 鍵盤装置
2 シャーシ
3 鍵
13 鍵スイッチ
14 プリント基板
21 鍵盤装置

Claims (1)

  1. 棚板と、
    当該棚板上に左右方向に並べられた複数のシャーシと、
    当該複数のシャーシ上に左右方向に並べられ、前記シャーシに回動自在に設けられた複数の鍵と、
    前記複数のシャーシの下側に配置され、当該複数のシャーシの左右方向の全体にわたって延びるプリント基板を有し、前記複数の鍵の押鍵情報を検出する鍵スイッチとを備え、
    前記複数のシャーシ当該複数のシャーシに固定された前記プリント基板のみによって互いに連結されるとともに、前記棚板に直接、固定されていることを特徴とする鍵盤楽器の鍵盤装置。
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