JP3716796B2 - 車両用故障診断装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子制御装置(ECU)などの故障診断を行う車両用故障診断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
エンジンの制御装置や自動変速機の制御装置など、車両には複数の電子制御装置が使用されている。これら電子制御装置の故障診断には、故障診断装置が用いられる。故障診断装置は、電子制御装置が搭載された車両と接続して当該電子制御装置との間で通信リンクを確立し、電子制御装置内に記憶されている自己診断データや制御データなどを読み出して故障診断を行う。読み出したデータは、故障診断装置内に記録されたり、故障診断装置の表示画面に表示されたりする。
【0003】
電子制御装置は、その制御対象や車両によって複数の種類が存在し、また、通信プロトコルも複数存在する。したがって、車両と故障診断装置とを結ぶ通信回線は、車両ごとに異なる場合がある。一方で、車両に故障診断装置を接続するコネクタは、全ての車両に同じタイプで同じ端子数のコネクタを使用するとコスト面で有利になる。そこで、各車両に同じコネクタを使用し、各車両間で共通の通信回線にコネクタの同一番号の端子を割り当て、各車両ごとに異なる通信回線には他の番号の端子が割り当てられる。このため、車両と故障診断装置とを接続するハーネスは、車両のコネクタの端子番号の割り当てに応じて端子間の配線を変えた変換ケーブルまたは変換コネクタが使用される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
変換ケーブルを用いる方法では、電子制御装置の種類が増加し、各車両間の電源および信号を共通にできない場合には、車両ごとに異なる変換ケーブルが必要になる。変換ケーブルの数が増えると、その管理が複雑になるという問題がある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、それぞれあらかじめ定められたプロトコルで通信を行う複数の電子制御装置、電子制御装置に接続された通信回線、および通信回線に接続された端子を備えたコネクタを有する車両にコネクタを介して接続し、複数の電子制御装置のうち少なくとも1つの電子制御装置と通信回線を介して通信を行う通信手段と、コネクタの端子に車両側で割り当てられている通信回線の通信プロトコルを識別する識別手段とを備え、識別手段によって識別された通信回線の通信プロトコルに基づいて通信回線を介して電子制御装置と通信を行うことによって故障診断を行う車両用故障診断装置に適用される。そして、コネクタの端子のそれぞれに電圧を印加する電圧印加回路と、端子のそれぞれの電圧を検出する電圧検出回路とを有し、電圧印加回路から第1の印加電圧を印加した状態で電圧検出回路によって検出される第1の検出電圧、および電圧印加回路から第1の印加電圧より低い第2の印加電圧を印加した状態で電圧検出回路によって検出される第2の検出電圧をそれぞれ第1の判定閾値および第2の判定閾値と比較することにより、端子に割り当てられている通信回線の通信プロトコルを識別するように識別手段を構成したものである。
【0007】
【発明の効果】
本発明によれば、車両と接続するコネクタの端子へ電圧印加時に検出される端子電圧と判定閾値との比較結果に応じて車両側の通信プロトコルを識別するので、変換ケーブルを不要にする車両用故障診断装置において、車両との間の通信プロトコルを簡単に識別することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施の形態による車両用故障診断装置を車両に接続した状態を示す図である。図1において、車両用故障診断装置1が車両33に通信ハーネス32を介して接続されている。車両用故障診断装置1には、端子識別/接続切替部31が設けられている。端子識別/接続切替部31に通信ハーネス32の一端が接続され、通信ハーネス32の他端に標準コネクタ3aが設けられている。標準コネクタ3aは、後述する車両33側の標準コネクタ3bと嵌合する。ここでは、標準コネクタ3aおよび標準コネクタ3bを総称してコネクタ3と呼ぶ。また、車両用故障診断装置1には、液晶表示パネルなどによって構成される表示部60が備えられている。
【0009】
車両33には、6つの電子制御装置(ECU)21〜26が搭載されている。ECU25およびECU26は、第1のCAN(Controller Area Network)プロトコル回線29によって接続されている。ECU23およびECU24は、標準プロトコル回線11によって接続されている。ECU21およびECU22は、第2のCANプロトコル回線10によって接続されている。
【0010】
各CANプロトコル回線に接続された電子制御装置は、各回線の電子制御装置間で相互にデータや故障情報などのデータ通信を行い、車両の総合制御を行うように構成されている。標準プロトコル回線11は、自動車業界によって標準化された通信プロトコルにしたがって通信を行う通信回線である。標準プロトコル回線11、第1のCANプロトコル回線29および第2のCANプロトコル回線10は、それぞれ上述した接続用標準コネクタ3bに接続されている。ここで、コネクタ3の端子は、標準プロトコル回線11で使用される端子と、第1のCANプロトコル回線29および第2のCANプロトコル回線10で使用される端子とが重複しないように割り当てられている。
【0011】
図2(a)は、標準コネクタ3の端子配列例を示す図である。図2(a)に記された番号は端子番号であり、本実施の形態による標準コネクタ3は端子1〜端子16の16端子を有する。ここで、標準コネクタ3の全16端子のうち、端子1〜5、端子7〜9、端子11および端子15〜16は、どの車両でも共通に使用する端子とする。そこで、標準プロトコル回線11を構成する通信回線には、これら共通に使用する端子が割り当てられる。
【0012】
図2(b)は、車両33の場合のコネクタ3bの端子割り当てを説明する図である。図2(b)において、「特殊」と記載されている端子1〜3、端子9および端子11は、それぞれ特殊用途信号に割り当てられている。特殊用途信号は、車両の開発時に使用される信号である。「GND」と記載されている端子4および端子5は、それぞれアースラインに割り当てられている。アースラインは、車両用故障診断装置1および車両33間のグランドレベルを共通(同電位)にする。「IGN」と記載されている端子8は、イグニション電源ラインに割り当てられている。イグニション電源ラインは、車両側のイグニションスイッチのオン/オフ操作に連動して電源供給がオン/オフされる。「Vb」と記載されている端子16は、バッテリ電源ラインに割り当てられている。バッテリ電源ラインは、車両のバッテリ電源が供給される。「K」および「L」と記載されている端子7および端子15は、それぞれ標準プロトコル回線11の通信回線に割り当てられている。以上説明した番号の端子は、車両33以外の他の車両でも同様に使用される。
【0013】
標準コネクタ3の全16端子のうち、端子6、端子10および端子12〜14は、各車両ごとに異なる通信回線を割り当てて使用する。車両33の例を示す図2(b)において、「CANH」および「CANL」と記載されている端子6および端子14は、それぞれ第1のCANプロトコル回線29を構成する通信回線に割り当てられている。「CAN2H」および「CAN2L」と記載されている端子12および端子13は、それぞれ第2のCANプロトコル回線10を構成する通信回線に割り当てられている。
【0014】
他の車両の例を図3を参照して説明する。図3において、車両33と異なる車両2が車両用故障診断装置1に接続されている。車両2には、4つの電子制御装置(ECU)4〜7が搭載されている。ECU4およびECU5は、第2のCANプロトコル回線10によって接続されている。ECU6およびECU7は、標準プロトコル回線11によって接続されている。なお、車両2では、第1のCANプロトコル回線は存在しない。標準プロトコル回線11および第2のCANプロトコル回線20は、それぞれ上述した接続用標準コネクタ3bに接続されている。
【0015】
図2(c)は、車両2の場合のコネクタ3bの端子割り当てを説明する図である。図2(c)において、「空き」と記載されている端子6および端子14は、それぞれ未使用端子である。端子6および端子14以外の番号の各端子は、それぞれ図2(b)と同様に使用されるので説明を省略する。図2(d)は、不図示の他の車両Xの場合のコネクタ3bの端子割り当てを説明する図である。不図示の車両Xは、標準プロトコル回線と不図示の専用プロトコル回線とを有する。図2(d)において、「TX」、「RX」および「CLK2」と記載されている端子12、端子13および端子14は、それぞれ専用プロトコル回線を構成する通信回線に割り当てられる。また、「特殊」と記載されている端子6は、上述した車両開発時の信号に割り当てられている。図2(e)は、さらに不図示の車両Yの場合のコネクタ3bの端子割り当てを説明する図である。不図示の車両Yは、CANプロトコル回線と不図示の専用プロトコル回線とを有する。図2(e)において、「CLK1」と記載されている端子10は、CANプロトコル回線用のクロック信号に割り当てられている。
【0016】
このように、車両ごとに異なる信号は、コネクタ3bの端子6、端子10、および端子12〜14のいずれかに割り当てられる。これにより、車両用故障診断装置1は、同じ通信ハーネス32を使用してどの車両にも接続が可能に構成される。
【0017】
一方で車両用故障診断装置1は、標準コネクタ3を介して車両に接続されると、端子6、端子10、および端子12〜14に割り当てられた通信回線の通信プロトコルを判別する。上述したように、端子6、端子10、および端子12〜14は車両ごとに異なる通信回線で使用されるので、各電子制御装置の故障診断を行うためには各端子を識別して当該端子がどの通信プロトコルに割り当てられているかを判別する必要がある。端子に割り当てられている通信回線の通信プロトコルを判別できると、判別した通信プロトコルで通信を行うことによって、当該通信回線に接続されている電子制御装置がわかる。車両用故障診断装置1は、その内部に故障診断を行う複数の電子制御装置の情報をあらかじめ有しており、判別した電子制御装置用の故障診断を行う。
【0018】
本発明は、車両用故障診断装置1が車両に搭載されている電子制御装置の通信プロトコルを判別し、判別した通信プロトコルに基づいて車両用故障診断装置1内の接続を切替え、当該電子制御装置に対する故障診断を行うことに特徴を有する。
【0019】
図4は、端子識別/接続切替部31の構成を説明する図である。図4において、通信ハーネス32内に端子1〜端子16に接続される通信回線が含まれている。これら通信回線のうち、コネクタ3の端子6、端子10、および端子12〜14に接続される通信回線が端子識別を必要とする通信回線である。端子1〜5、端子7〜9、端子11および端子15〜16に接続される通信回線は、通信プロトコルの識別の必要がない通信回線である。
【0020】
通信プロトコルの識別を必要とする通信回線は、それぞれリレー45〜50、ならびに入出力インターフェイス(以後I/Fとする)41〜43を介してCPU51に接続されている。これら通信回線はさらに、アナログ入出力I/F44を介してCPU51に接続されている。アナログ入出力I/F44は、接続されている通信回線のそれぞれに対して電圧を印加するとともに、接続されている通信回線の電圧を検出するように構成されている。端子識別/接続切替部31は、リレー45〜50およびアナログ入出力I/F44によって構成される。端子識別を必要としない通信回線は、それぞれ入出力I/F40を介してCPU51に接続されている。
【0021】
端子識別/接続切替部31は、上述した端子6、端子10、および端子12〜14のそれぞれに対して端子識別を行う。端子識別は、識別しようとする端子(通信回線)に所定の電圧を印加するとともに、電圧印加時の端子電圧を測定し、測定した端子電圧によって当該端子がどの信号で使用されているかを判定するものである。図5は、端子識別の判定表である。端子10に対する識別を例にあげて説明すると、CPU51がアナログ入出力I/F44を介して端子10に接続される通信回線に電圧VHを印加する。VHはたとえば5Vである。
【0022】
以下、端子に対応する通信プロトコルの判別方法を、端子10を例にあげて説明する。CPU51は、電圧VHを印加した状態で端子10に接続される通信回線の電圧v1をアナログ入出力I/F44を介して検出する。端子識別による判定は、次のように行われる。
▲1▼v1<1.5Vの場合に「CLK1」と判定する。
▲2▼1.5V≦v1<4.5Vの場合に識別エラー「E」と判定する。
▲3▼4.5V≦v1の場合に未接続「OPEN」もしくは識別エラー「E」と判定する。
【0023】
CPU51は、上記▲3▼における「OPEN」もしくは「E」の切り分けを次のように行う。CPU51は、アナログ入出力I/F44を介して端子10に接続される通信回線に電圧VLを印加する。VLはたとえば0Vである。CPU51は、電圧VLを印加した状態で端子10に接続される通信回線の電圧v2をアナログ入出力I/F44を介して検出する。切り分け判定は、次のように行われる。
▲4▼v2<1.5Vの場合に未接続「OPEN」と判定する。
▲5▼1.5V≦v2の場合に識別エラー「E」と判定する。
【0024】
端子識別/接続切替部31は、端子識別の結果に応じてリレー45〜50の切替えを行う。図4において、たとえば、端子10に接続される通信回線と端子14に接続される通信回線とが、それぞれリレー45および46を介してクロック入出力I/F41と接続されている。リレー45をオンするとともにリレー46をオフすると、クロック信号が端子10の通信回線に割り当てられる。リレー46をオンするとともにリレー45をオフすると、クロック信号が端子14の通信回線に割り当てられる。このとき、端子10の通信回線は未接続の状態「OPEN」になる。なお、図2(b)〜図2(d)では、このような未接続の状態が「空き」と記されている。
【0025】
CPU51は、端子10を「CLK1」と判定した場合に、クロック信号が端子10の通信回線に割り当てられるようにリレー45および46を切替え制御する。一方、CPU51は、端子10を「OPEN」と判定した場合に、端子10の通信回線を未接続にするようにリレー45および46を切替え制御する。
【0026】
端子6および端子12〜14に接続される通信回線は、リレー47〜49を介してCANプロトコル入出力I/F42と接続されている。端子12および端子13に接続される通信回線はさらに、それぞれ専用プロトコル入出力I/F43にも接続される。リレー47〜50を適宜切替えることにより、端子6、端子10、および端子12〜14に接続される通信回線に、図2(b)〜図2(e)に示される通信回線が割り当てられる。CPU51は、図5による判定結果にしたがってリレー47〜49を切り替え制御する。
【0027】
車両用故障診断装置1のCPU51で行われる故障診断処理の流れを、図6のフローチャートを参照して説明する。図6によるプログラムは、車両用故障診断装置1で診断処理開始操作が行われると起動する。図6のステップS10において、CPU51は、バッテリ電源ライン「Vb」の電圧を検出し、電圧が所定値以上か否かを判定する。CPU51は、端子16を介して入力される電圧が所定値以上の場合にステップS10を肯定判定してステップS20へ進み、電圧が所定値未満の場合にステップS10を否定判定して判定処理を繰り返す。肯定判定する場合は、車両用故障診断装置1が車両に接続され、車両側から電源電圧が印加されている場合である。否定判定する場合は、車両用故障診断装置1が車両に接続されていないか、車両側のバッテリが接続されていないなどの理由によって車両側から電源電圧が印加されない場合である。
【0028】
ステップS20において、CPU51は、車両側の不図示のイグニションスイッチがオフされている状態で第1の端子識別処理を行ってステップS30へ進む。通信プロトコル識別処理の詳細は後述する。ステップS30において、CPU51は、通信プロトコル識別を必要とする通信回線について、全ての識別が終了したか否かを判定する。CPU51は、全ての端子に対する識別結果がCPU51内に記憶されている場合にステップS30を肯定判定してステップS60へ進み、全ての端子に対する識別結果がCPU51内に記憶されていない場合にステップS30を否定判定してステップS40へ進む。
【0029】
ステップS40において、CPU51は、車両側の不図示のイグニションスイッチがオフからオンに変化したか否かを判定する。CPU51は、端子8を介して入力されるイグニション電源ライン「IGN」の電圧が所定値以上の場合にステップS40を肯定判定してステップS50へ進み、電圧が所定値未満の場合にステップS40を否定判定して判定処理を繰り返す。肯定判定する場合は、イグニションスイッチがオンされ、車両側からイグニション電源電圧が印加された場合である。
【0030】
ステップS50において、CPU51は、車両側のイグニションスイッチがオンされている状態で第2の端子識別処理を行ってステップS60へ進む。端子識別処理をイグニションスイッチのオフ状態とオン状態とで2回に分けて行うのは、電子制御装置の種類によってイグニションスイッチのオフ状態で識別するものと、イグニションスイッチのオン状態で識別するものとが存在するからである。
【0031】
ステップS60において、CPU51は、通信プロトコル識別を必要とする通信回線について、識別エラー「E」がないか否かを判定する。CPU51は、通信プロトコル識別による「E」判定がない場合にステップS60を肯定判定してステップS70へ進み、端子識別の結果1つでも「E」判定がある場合にステップS60を否定判定してステップS90へ進む。
【0032】
ステップS70において、CPU51は、通信プロトコル識別の結果に応じて端子切替えを行ってステップS80へ進む。端子切替えは、上述したリレー45〜50の切替えによって行う。ステップS80において、CPU51は、電子制御装置に対する故障診断処理を行い、図6による処理を終了する。故障診断処理の詳細については後述する。一方、ステップS60を否定判定して進むステップS90において、CPU51は、端子識別が正常に終了しなかったことを表示部60(図1)に表示し、図6による処理を終了する。
【0033】
通信プロトコル識別処理の詳細について図7のフローチャートを参照して説明する。図7は、通信プロトコル識別処理の流れを説明するフローチャートであり、上述したステップS20およびステップS50においてそれぞれ行われる。本実施の形態では、通信プロトコル識別が必要な端子6、端子10、および端子12〜14の5つの端子に対して識別を行うが、16端子全てについて行ってもよい。図7のステップS210において、CPU51は、カウンタNに0をセットして初期化し、ステップS220へ進む。カウンタNは、識別すべき端子数をカウントするものである。
【0034】
ステップS220において、CPU51は、Nが5未満か否かを判定する。CPU51は、N<5が成立する場合にステップS220を肯定判定してステップS230へ進み、N<5が成立しない場合にステップS220を否定判定し、図7による処理を終了する。肯定判定する場合は5つの端子全てについて通信プロトコル識別が終了していない場合であり、否定判定する場合は5つの端子全てについて通信プロトコル識別が終了している場合である。
【0035】
ステップS230において、CPU51は、カウンタNに1を加えてステップS240へ進む。ステップS240において、CPU51は、識別端子AをセットしてステップS250へ進む。Aには、6、10、12、13、14が順にセットされる。ステップS250において、CPU51は、端子Aに接続される通信回線にアナログ入出力I/F44を介して電圧VHを印加してステップS260へ進む。ステップS260において、CPU51は、端子Aに接続される通信回線の電圧v1をアナログ入出力I/F44を介して読み込み、ステップS270へ進む。
【0036】
ステップS270において、CPU51は、端子Aに接続される通信回線にアナログ入出力I/F44を介して電圧VLを印加してステップS280へ進む。ステップS280において、CPU51は、端子Aに接続される通信回線の電圧v2をアナログ入出力I/F44を介して読み込み、ステップS290へ進む。ステップS290において、CPU51は、図5の判定表にしたがって端子Aを識別し、ステップS300へ進む。
【0037】
ステップS300において、CPU51は、判定結果が識別エラー「E」か否かを判定する。CPU51は、判定結果が識別エラーでない場合にステップS300を否定判定してステップS310へ進み、判定結果が識別エラーの場合にステップS300を肯定判定してステップS320へ進む。ステップS310において、CPU51は、端子Aの識別結果を内部のメモリに記憶してステップS220へ戻る。識別結果は、識別した端子番号ごとに記憶される。ステップS320において、CPU51は、端子Aの識別結果としてエラーを内部のメモリに記憶してステップS220へ戻る。
【0038】
なお、以上説明した図7による通信プロトコル識別処理をイグニションスイッチオン後に行う場合(図6のステップS50)には、イグニションスイッチをオンする前(図6のステップS20)に行った通信プロトコル識別処理で識別エラー判定された端子についてのみ識別処理を行えばよい。
【0039】
故障診断処理の詳細について図8のフローチャートを参照して説明する。図8は、故障診断処理の流れを説明するフローチャートであり、上述したステップS80において行われる。なお、CPU51には、車両用故障診断装置1で故障診断診断を行う電子制御装置に関する情報があらかじめ記憶されている。電子制御装置装置に関する情報には、電子制御装置ごとのIDを示す情報、各電子制御装置が接続されるプロトコル回線の情報、および電子制御装置に対応する診断プログラムが含まれる。
【0040】
図8のステップS810において、CPU51は、専用プロトコル回線が接続されているか否かを判定する。CPU51は、端子識別処理の結果、たとえば、端子13による通信回線が「RX」と判定されている場合に、ステップS810を肯定判定してステップS820へ進み、端子13による通信回線が「RX」と判定されていない場合に、ステップS810を否定判定してステップS830へ進む。ステップS820において、CPU51は、専用プロトコル回線に対して専用プロトコルでIDを送信し、ステップS850へ進む。専用プロトコル回線に接続されている各電子制御装置は、それぞれにあらかじめ定められているIDを受信すると応答信号を返信する。CPU51は、応答信号を受信した場合には送信したIDに対応する電子制御装置が存在すると判定し、専用プロトコル回線に接続されている各電子制御装置を判別する。
【0041】
ステップS850において、CPU51は、第1のCANプロトコル回線が接続されているか否かを判定する。CPU51は、端子識別処理の結果、たとえば、端子14による通信回線が「CANL」と判定されている場合に、ステップS850を肯定判定してステップS860へ進み、端子13による通信回線が「CANL」と判定されていない場合に、ステップS850を否定判定してステップS870へ進む。ステップS860において、CPU51は、第1のCANプロトコル回線に対してCANプロトコルでIDを送信し、ステップS870へ進む。第1のCANプロトコル回線に接続されている各電子制御装置は、それぞれにあらかじめ定められているIDを受信すると応答信号を返信する。CPU51は、応答信号を受信した場合には送信したIDに対応する電子制御装置が存在すると判定し、第1のCANプロトコル回線に接続されている各電子制御装置を判別する。
【0042】
ステップS870において、CPU51は、標準プロトコル回線に対して標準プロトコルでIDを送信し、ステップS880へ進む。標準プロトコル回線に接続されている各電子制御装置は、それぞれにあらかじめ定められているIDを受信すると応答信号を返信する。CPU51は、応答信号を受信した場合には送信したIDに対応する電子制御装置が存在すると判定し、標準プロトコル回線に接続されている各電子制御装置を判別する。
【0043】
ステップS880において、CPU51は、専用プロトコル回線、第1のCANプロトコル回線、第2のCANプロトコル回線、および標準プロトコル回線ごとに、接続されている電子制御装置の名称を表示部60(図1)に表示してステップS890へ進む。ここで、電子制御装置の名称の代わりに、電子制御装置を特定する装置番号などを表示部60に表示するようにしてもよい。
【0044】
ステップS890において、CPU51は、作業者の操作入力によって指示された電子制御装置を選択し、車両用故障診断装置1と選択した電子制御装置との間を当該電子制御装置が接続されているプロトコル回線によって通信リンクを確立し、当該電子制御装置に対する故障診断を行って図8による処理を終了する。電子制御装置の選択は、車両用故障診断装置1に備えられる選択操作部材を作業者が操作し、表示部60に表示されている電子制御装置の名称の中から故障診断すべき装置名を選択することによって行う。なお、CPU51内には各電子制御装置に対する故障診断に必要な診断プログラムが個別に記憶されている。車両用故障診断装置1は、電子制御装置から読み出したデータを診断情報と比較したり、電子制御装置自身で行われた自己診断データを電子制御装置から読み出したりする。電子制御装置から読み出したデータおよび診断結果は、表示部60に表示するとともに、CPU51内に記憶する。
【0045】
上述したステップS810を否定判定して進むステップS830において、CPU51は、第2のCANプロトコル回線が接続されているか否かを判定する。CPU51は、端子識別処理の結果、たとえば、端子12による通信回線が「CAN2H」と判定されている場合に、ステップS830を肯定判定してステップS840へ進み、端子12による通信回線が「CAN2H」と判定されていない場合に、ステップS830を否定判定してステップS850へ進む。ステップS840において、CPU51は、第2のCANプロトコル回線に対してCANプロトコルでIDを送信し、ステップS870へ進む。第2のCANプロトコル回線に接続されている各電子制御装置は、それぞれあらかじめ定められているIDを受信すると応答信号を返信する。CPU51は、応答信号を受信した場合には送信したIDに対応する電子制御装置が存在すると判定し、第2のCANプロトコル回線に接続されている各電子制御装置を判別する。
【0046】
上述した第2のCANプロトコル回線を用いて、CPU51が端子12および端子13による通信回線で電子制御装置と通信を行う場合、CPU51には、図4のCANプロトコル入出力I/F42を介してデータが入力される他に、専用プロトコル入出力I/F43からもデータが入力される。しかしながら、CPU51は第2のCANプロトコルによって通信している場合に他の通信プロトコル回線による通信データを無視するため、CANプロトコルによる通信に何ら影響はない。
【0047】
以上説明した実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)車両用故障診断装置1と車両33(車両2)とを接続するコネクタ3において、車両ごとに異なる通信プロトコルをコネクタ3の端子6、端子10、および端子12〜14のいずれかに割り当てる。車両用故障診断装置1の端子識別/接続切替部31は、上記端子6、端子10、および端子12〜14に割り当てられている通信プロトコルに応じてリレー45〜50の切替えを行い、車両用故障診断装置1側の通信プロトコルを車両側の通信プロトコルに合わせて切替え接続する。この結果、車両用故障診断装置1は、同じ通信ハーネス32を介してどの車両にも接続が可能になり、従来技術で用いられた変換ケーブルを必要としない。これにより、変換ケーブルの管理を簡単にできる上に、変換ケーブルを間違えて誤った信号接続をすることが防止される。さらに、端子6、端子10、および端子12〜14を各車両が車両ごとに異なる信号でそれぞれ使用することができるから、各車両にそれぞれ異なる端子を割り当てる場合に比べて、コネクタ3の端子数の増加が抑えられ、コネクタ3の大型化およびコスト上昇を防止できる。
(2)車両用故障診断装置1は、コネクタ3の端子6、端子10、および端子12〜14を端子識別してこれら各端子に割り当てられている通信プロトコルを識別し、識別した通信プロトコルに応じて端子識別/接続切替部31でリレー45〜50を切替えるようにした。この結果、操作者が切替え操作しなくても、車両および車両用故障診断装置1間の通信プロトコルが自動的に正しく切替えられるようになる。
(3)車両用故障診断装置1は、通信プロトコル識別結果から接続されている通信プロトコル回線を判別し、各プロトコル回線ごとにIDを送信し、このIDに応答して返信された応答信号によって当該プロトコル回線に接続されている電子制御装置を判別する。判別したプロトコル回線に対してのみ当該プロトコルでIDを送信するようにしたので、接続されていないプロトコル回線の通信プロトコルでIDを送信する場合に比べて、無駄な処理を省略して全体の判別処理時間を短縮できる。
(4)判別された電子制御装置は、その名称が表示部60に表示されるようにしたので、どの電子制御装置が車両に搭載されているかが自動的に操作者に報知される。
(5)表示部60に表示されている電子制御装置の中から故障診断の対象とする電子制御装置を作業者が選択し、選択された電子制御装置に対して故障診断を行うようにしたので、操作性のよい故障診断装置1が得られる。
【0048】
以上の説明では、CPU51が各プロトコル回線ごとに各電子制御装置ごとにあらかじめ定められたID信号を送信し、このID信号に応答して返信された応答信号によって接続されている電子制御装置を判別するようにした。この代わりに、CPU51が各プロトコル回線ごとに呼び出し信号を送信し、この呼び出し信号に応答して電子制御装置から送信された各電子制御装置ごとにあらかじめ定められたID信号によって接続されている電子制御装置を判別してもよい。
【0049】
上述した説明では、回路切替えをリレー45〜50を切替えることによって行うようにしたが、リレーの代わりにアナログスイッチを用いるようにしてもよい。
【0050】
また、回路切替えは、双方向バッファ回路を用いて入力および出力を切替えるものでもよい。
【0051】
さらにまた、回路切替えは、入力および出力を切替える他に、入力インピーダンスや出力インピーダンス、論理レベルの変換を行うものであってもよい。
【0052】
特許請求の範囲における各構成要素と、発明の実施の形態における各構成要素との対応について説明する。電子制御装置は、たとえば、ECU4〜7、21〜26によって構成される。通信回線は、たとえば、第2CANプロトコル回線10、標準プロトコル回線11、第1CANプロトコル回線29、および専用プロトコル回線がそれぞれ対応する。通信手段は、たとえば、入出力I/F40、クロック入出力I/F41、CAN入出力I/F42、および専用プロトコル入出力I/F43によって構成される。識別手段は、たとえば、CPU51および端子識別/接続切替部31によって構成される。電圧印加回路および電圧検出回路は、アナログ入出力I/F44によって構成される。電子制御装置判別手段、通信制御手段、およびプロトコル判別回路は、たとえば、CPU51によって構成される。なお、本発明の特徴的な機能を損なわない限り、各構成要素は上記構成に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態による車両用故障診断装置を車両に接続した状態を示す図である。
【図2】 (a)標準コネクタの端子配列例を示す図、(b)車両33のコネクタの端子割り当てを説明する図、(c)車両2のコネクタの端子割り当てを説明する図、(d)他の車両の場合のコネクタの端子割り当てを説明する図、(e)他の車両の場合のコネクタの端子割り当てを説明する図である。
【図3】車両用故障診断装置を他の車両に接続した状態を示す図である。
【図4】端子識別/接続切替部の構成を説明する図である。
【図5】端子識別の判定表を示す図である。
【図6】車両用故障診断装置のCPUで行われる故障診断処理の流れを説明するフローチャートである。
【図7】端子識別処理の詳細を説明するフローチャートである。
【図8】故障診断処理の詳細を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
1…車両用故障診断装置、 2、33…車両、
3、3a、3b…コネクタ、 4〜7、21〜26…電子制御装置、
10…第2CANプロトコル回線、 11…標準プロトコル回線、
29…第1CANプロトコル回線、 31…端子識別/接続切替部、
32…通信ハーネス、 40…入出力I/F、
41…クロック入出力I/F、 42…CAN入出力I/F、
43…専用プロトコル入出力I/F、44…アナログ入出力I/F、
45〜50…リレー、 51…CPU、
60…表示部

Claims (6)

  1. それぞれあらかじめ定められたプロトコルで通信を行う複数の電子制御装置、前記電子制御装置に接続された通信回線、および前記通信回線に接続された端子を備えたコネクタを有する車両に前記コネクタを介して接続し、前記複数の電子制御装置のうち少なくとも1つの電子制御装置と前記通信回線を介して通信を行う通信手段と、
    前記コネクタの端子に車両側で割り当てられている前記通信回線の通信プロトコルを識別する識別手段とを備え、
    前記識別手段によって識別された前記通信回線の通信プロトコルに基づいて前記通信回線を介して前記電子制御装置と通信を行うことによって故障診断を行う車両用故障診断装置において、
    前記識別手段は、前記コネクタの端子のそれぞれに電圧を印加する電圧印加回路と、前記端子のそれぞれの電圧を検出する電圧検出回路とを有し、
    前記電圧印加回路から第1の印加電圧を印加した状態で前記電圧検出回路によって検出される第1の検出電圧、および前記電圧印加回路から前記第1の印加電圧より低い第2の印加電圧を印加した状態で前記電圧検出回路によって検出される第2の検出電圧をそれぞれ第1の判定閾値および第2の判定閾値と比較することにより、前記端子に割り当てられている前記通信回線の通信プロトコルを識別することを特徴とする車両用故障診断装置。
  2. 請求項1に記載の車両用故障診断装置において、
    前記複数の電子制御装置に対して、前記識別手段によって識別された通信プロトコルで前記電子制御装置ごとにそれぞれあらかじめ定められた第1のIDを送信し、前記複数の電子制御装置から前記第1のIDに応答してそれぞれ返信される応答信号を受信し、受信した応答信号に基づいて前記通信プロトコルに対応する電子制御装置を判別する電子制御装置判別手段をさらに備えることを特徴とする車両用故障診断装置。
  3. 請求項1に記載の車両用故障診断装置において、
    前記複数の電子制御装置に対して、前記識別手段によって識別された通信プロトコルで前記電子制御装置ごとにそれぞれあらかじめ定められた第2のIDの送信を要求するID要求を送信し、前記複数の電子制御装置から前記ID要求に応答してそれぞれ返信される前記第2のIDを受信し、受信した第2のIDに基づいて前記通信プロトコルに対応する電子制御装置を判別する電子制御装置判別手段をさらに備えることを特徴とする車両用故障診断装置。
  4. 請求項2または3に記載の車両用故障診断装置において、
    前記識別手段によって識別された通信プロトコルでのみ通信を行うように前記通信手段を制御する通信制御手段をさらに備えることを特徴とする車両用故障診断装置。
  5. 請求項2〜4のいずれか一項に記載の車両用故障診断装置において、
    前記電子制御装置判別手段による判別結果を表示する表示部をさらに備えることを特徴とする車両用故障診断装置。
  6. 請求項5に記載の車両用故障診断装置において、
    前記表示部は、判別された電子制御装置を示す情報を表示し、
    前記表示部に表示された情報のうち故障診断の対象とする電子制御装置を示す情報を選択する選択手段をさらに備え、
    前記通信制御手段は、前記選択手段で選択された情報に対応する電子制御装置と通信を行うように前記通信手段を制御することを特徴とする車両用故障診断装置。
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