JP3715422B2 - 音源装置およびこれを用いた電子楽器 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は音源装置およびこれを用いた電子楽器に関し、特に、基本のサイン波(基本波)に対して倍音関係にあるサイン波(高調波)を合成していくことによって任意の波形を生成するサイン合成方式の音源装置および電子楽器に用いて好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子ピアノ、電子キーボード、シンセサイザ等の電子楽器の音源部としては、PCM音源が多く用いられてきた。PCM音源は、現実の楽器音をサンプリングして収録し、PCM化してメモリに記憶しておき、演奏時に読み出す方式の音源であり、サンプリング音源の代表例である。例えばPCMシンセサイザは、現実音をサンプリングした波形、あるいは演算によって作られた波形をPCMデータとして内蔵し、それを音源波形として使用するものである。
【0003】
このようなPCM音源を持つ電子楽器(サンプラー)では、PCMデータとして記憶された現実音を任意に変形(エディット)できるものが多い。例えば、プリセットのPCM波形をフィルタで削ることにより、ユーザの希望する波形を作り出すことが可能である。
【0004】
また、近年では、上述のようなPCM音源の他に、基本のサイン波(基本波)に対して倍音関係にあるサイン波(高調波)を合成していくことによって任意の波形を生成するサイン合成方式(倍音加算方式)の音源部も提案されている。この方式では倍音で音を合成していくため、サンプリングのように音程による音色変化もなく、音を重ねても濁らないという特性を持っている。また、現実音の波形の変形ではなく、任意の波形を最初から作ることができるので、PCM音源に比べて変化に富んだ音作りが可能である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のサイン合成方式では、1倍音、2倍音、3倍音、……のような整数倍音の波形しか利用することができず、ノイズ性の音色が作りにくいという問題があった。すなわち、現実の楽器音には必ずノイズ成分(整数倍以外の高調波成分)が含まれているが、従来のサイン合成方式ではこのような非整数倍の高調波は合成できず、ノイズ性の音色を作るのは困難であった。また、サイン合成方式では決まりきった音になりがちという問題もあった。
【0006】
また、従来のサイン合成方式を採用した電子楽器では、実際に電子楽器を演奏する演奏家にとって、イメージ通りの波形を合成するのは非常に困難であるという問題もあった。すなわち、演奏家にとって求める音のイメージはあっても、どのような高調波をどのように合成すればそのイメージ通りの音となるのかの相関関係が演奏家には掴みにくく、また、合成のための操作も複雑であり、そのため、音色編集を行うのが非常に困難であった。
【0007】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、ノイズ性の音色や電子楽器特有の音色など、より多彩な音色を創造することができるようにするとともに、そのための波形編集を演奏家のイメージ通りに容易に行えるようにすることを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の音源装置は、基本波に対して倍音関係にある高調波を合成していくことによって任意の波形を生成することができる音源部と、上記波形合成の調整を行うための第1及び第2の操作子と、上記第1の操作子の操作により個々に設定された基本波および各高調波のレベル値をそれぞれ各高調波用の記憶領域に一時記憶する第1の一時記憶手段と、各倍音のレベル値に対して加算する相対値を種々の発音イメージに合わせて各倍音毎に設定したテーブル情報をあらかじめ記憶して成る記憶手段と、上記第2の操作子の操作状態に応じた第1の操作子の操作および上記記憶手段のテーブル情報に基づいて加算値を演算し、その加算値を各高調波用の記憶領域に一時記憶する第2の一時記憶手段と、上記第1の一時記憶手段に記憶された各倍音のデータと上記第2の一時記憶手段に記憶された各倍音のデータとを各倍音毎に加算し、その加算結果を上記音源部に設定するようにする合成手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明の他の態様では、基本波に対して倍音関係にある高調波を合成していくことによって任意の波形を生成することができる音源部と、所望の音色を選択するための操作子と、各倍音のレベル値に対して加算する相対値を種々の発音イメージに合わせて各倍音毎に設定したテーブル情報をあらかじめ記憶して成る第1の記憶手段と、音色毎に、上記基本波および各高調波のレベル値を各倍音毎に記憶するとともに、上記レベル値に対して加算する相対値の加算度合を種々の発音イメージに合わせて記憶して成る第2の記憶手段と、上記操作子の操作により選択された音色に対応して上記第2の記憶手段から読み出された上記基本波および各高調波のレベル値をそれぞれ高調波用の記憶領域に一時記憶する第1の一時記憶手段と、上記操作子の操作により選択された音色に対応して上記第2の記憶手段から読み出された加算度合の情報および上記第1の記憶手段のテーブル情報に基づいて加算値を演算し、その加算値を各高調波用の記憶領域に一時記憶する第2の一時記憶手段と、上記第1の一時記憶手段に記憶された各倍音のデータと上記第2の一時記憶手段に記憶された各倍音のデータとを各倍音毎に加算し、その加算結果を上記音源部に設定するようにする合成手段とを備えたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の電子楽器は、上記のような構成の音源装置と、少なくとも鍵盤部およびMIDI送受信部の一方とを備えたことを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて詳しく説明する。
図1は、本発明による音源装置の一実施形態であるシンセサイザ用の音源モジュールの概略的な構成を示すブロック図である。図1において、CPU1、ROM2、RAM3、A/D変換部4、操作パネル部5および音源部6は、それぞれアドレスバス、データバス、コントロール信号ライン等の信号バス7に接続されて、相互にデータの送受信が行われるように構成されている。
【0016】
ここで、操作パネル部5は、音色の選択、各倍音の波形パラメータ(後述するハーモニクスデータ)の設定、あるいは操作者の希望する音色イメージ(後述するキャラクタデータ)の設定などを行うための各種操作子(例えば、スイッチやボリューム、フェーダーなど)と、これらの選択および設定状態を表示するためのLCD(液晶表示装置)またはLED(発光ダイオード)から成る表示装置とを有している。
【0017】
操作パネル部5の一部構成例を図2に示す。図2において、21はフェーダー(スライダー)であり、本実施形態では16個設けられている。このフェーダー21は、モード選択スイッチ22,23によって機能(ハーモニクスモードとキャラクタモード)が切り換えられるようになっている。すなわち、ハーモニクススイッチ22が押されたときは、フェーダー21は、1倍音から16倍音の各波形レベルを個々に設定するための操作子として機能する。また、キャラクタスイッチ23が押されたときは、オクターブ、5th、1オクターブダウン、2オクターブダウン等の様々な音イメージを設定するための操作子として機能する。
【0018】
24はLCD等の表示装置であり、音色の選択状態、各倍音の波形レベルの設定状態、あるいは音色イメージの設定状態等を表示する。図2の例では、表示画面の左から右方向へと順に各倍音の波形レベルが模式的に表示されている。25はその他のスイッチ群であり、これを操作することによって例えば任意の音色を選択することが可能なようになっている。
【0019】
再び図1に戻り、CPU1は、本実施形態の音源装置全体の制御を行うための中央処理装置であり、ROM2に格納されている制御プログラムに従って、RAM3をワークメモリとして利用しながら例えば次のような処理を行う。すなわち、CPU1は、操作パネル部5の音色選択スイッチやフェーダー等のスキャン処理を行って、設定された音色や倍音等のパラメータ情報に応じていわゆるサイン合成方式により波形合成の処理を行い、得られた結果を音源部6に設定する。
【0020】
上記ROM2は読み出し専用のメモリであり、上述のようなCPU1の制御プログラムの他、上述の波形合成処理に必要なパラメータデータ(テーブル情報等)など、種々のデータが格納されている。また、上記RAM3は読み書きが可能なメモリであり、CPU1のプログラム実行過程において各種の必要なデータを一時的に記憶したり、エディット可能なパラメータデータを記憶したりする記憶領域を有している。
【0021】
上記A/D変換部4は、操作パネル部5上に設けられたフェーダー21の設定状態をディジタルの波形パラメータ値に変換する。また、音源部6は、演奏時に楽音を発生するために必要な音源データを保持するものであり、本実施形態では例えば64個の基本波および高調波のデータを保持する。上述のように、この音源データは、いわゆるサイン合成方式による各倍音の波形合成処理によって生成される。
【0022】
図1に示した構成から成る音源装置を図示しない鍵盤部あるいはMIDIキーボードコントローラと組み合わせて用いることにより、鍵操作あるいはMIDI信号の送受信に基づき演奏を行い、音源データに基づく楽音を発生させることが可能である。なお、ここでは音源装置だけを独立させたモジュールタイプの例を示しているが、音源装置と鍵盤部とが一体となった電子楽器に本発明を適用することも可能である。
【0023】
図3は、上記波形合成処理の概要を説明するための図である。図3に示すように、図1のRAM3は、パラメータデータの一時記憶領域としてHLA(Harmonics Level Absolute),HLR1〜16(Harmonics Level Relative)を有している。前者の一時記憶領域HLAには、ハーモニクスモードにおいて各フェーダー21で設定された各倍音の設定値(16個のフェーダー21の設定状態を各々A/D変換した絶対値)が保持される。
【0024】
また、後者の一時記憶領域HLR1〜16には、キャラクタモードにおいて各フェーダー21で各キャラクタ毎に設定された各倍音の設定値(後述のようにROM2から読み出されたデータに基づく相対値)が各キャラクタ毎に保持される。実際の楽音の発生に際しては、上記一時記憶領域HLA,HLR1〜16に保持されたデータを各倍音毎に全て加算し、それをハードウェア(音源部6)に供給する。
【0025】
図4は、操作パネル部5と音源部6との高調波次数の関係を示す図である。図4に示すように、本実施形態では、基本波の位置を他の高調波(例えば4倍音)の位置に設定、すなわち、音源部6における本来の4倍音を操作パネル部5のフェーダー21における1倍音(基本波)として設定するようにしている。これを言い換えると、操作パネル部5のフェーダー21で設定した1倍音〜16倍音の各基本波および高調波を、音源部6にセットするときにはそれぞれ4倍の高調波としてセットする処理を行う。
【0026】
このようにすることにより、図4に示すように、操作パネル部5の16個のフェーダー21で設定する1〜16倍音の各整数倍音の間にも高調波成分を発生させることができ、従来のサイン合成方式では実現し得なかった非整数倍音の高調波を利用しての波形合成を行うことができる。よって、ノイズ性の音色や、現実の楽器音にはない電子楽器特有の様々な音色を容易に作ることができるようになる。
【0027】
なお、本実施形態では16倍音までしか高調波を設定できないが、ここでは自然界の音を忠実に再現することを目的としているのではなく、電子楽器特有の音が出せるようにすることを目的としているので、必ずしも64倍音までの高い高調波は必要でない。
【0028】
図5は、フェーダー21による各高調波データ設定の処理内容を説明するための図である。図5に示すように、1倍音用のフェーダー21で設定した基本波のパラメータ値は、一時記憶領域HLA上の4倍音の記憶領域にセットする。また、2倍音用のフェーダー21で設定した波形のパラメータ値は、一時記憶領域HLA上の8倍音の記憶領域にセットする。以下同様に、3〜16倍音用のフェーダー21で設定した波形のパラメータ値は、一時記憶領域HLA上の4f(f=3〜16)倍音の記憶領域にセットする。
【0029】
また、図6は、フェーダー21による各キャラクタデータ設定の処理内容を説明するための図である。本実施形態では、キャラクタモードにおいて各キャラクタ毎に設定される64個の各倍音の相対値は、ROM2内にあらかじめ格納されているキャラクタテーブルから、操作されたフェーダー21に対応する部分のデータが読み出されて設定されるようになっている。例えば、図6のように5thのフェーダー21が操作されたときは、キャラクタテーブル内の5thの部分から読み出されたデータに基づき生成された相対値が、5thに対応する一時記憶領域HLR2に記憶される。
【0030】
図7は、上記キャラクタテーブルの一例を示す図である。図7に示すように、本実施形態のキャラクタテーブルには、16個のフェーダー21に対応してオクターブ、5th、1オクターブダウン、2オクターブダウン、……等の16個のキャラクタ(音イメージ)データが記憶されている。それぞれのキャラクタデータは、64個の各倍音の個々についてフェーダー21の単位量の動きに対して加算される相対値から構成されている。
【0031】
例えば、1オクターブダウンのキャラクタデータは、2倍音(図4に示したように、基本波の設定値は音源部6の4倍音のところに設定されるので、その基本波より1オクターブダウンは2倍音のところに当たる)の部分に、相対値として“64”のデータが格納されている。また、2オクターブダウンのキャラクタデータは、基本波である4倍音の部分よりも2オクターブ低い1倍音の部分に、相対値として“64”のデータが格納されている。
【0032】
また、オクターブのキャラクタデータは、基本波およびこれとオクターブ関係にある高調波の部分に、相対値として“64”、“48”、“32”、…“8”のデータがそれぞれ格納されている。また、5thのキャラクタデータは、基本波およびこれとオクターブ関係にある高調波に対して5度上の関係にある高調波の部分に、相対値として“32”、“64”、“32”…のデータがそれぞれ格納されている。上述した4つのキャラクタデータにおいて、数値を示したところ以外の倍音のデータ値は皆“0”である。
【0033】
次に、上記のように構成した本実施形態による音源装置の動作を、図8および図9のフローチャートを用いて詳しく説明する。図8は、フェーダー21による設定値の取り込み処理を示す図である。図8において、ステップS1では、16個のフェーダー21のナンバーを示す値fに“1”を設定する。次のステップS2では、f番目のフェーダー21の設定状態の情報をA/D変換部4でディジタル変換することにより、フェーダー設定値Ad_fを得る。
【0034】
ステップS3では、得られたフェーダー設定値Ad_fを参照して、f番目のフェーダー21の設定状態に変化があったかどうかを判断する。この判断は、前回までの設定値を記憶しておき、これと現在の設定値とを比較することによって簡単に行うことができる。この判断の結果、f番目のフェーダー21の設定状態に変化があった場合は、ステップS4に進んで図9に示すようなフェーダー変化処理を実行する。一方、変化がなかった場合は、ステップS4の処理は行わずにステップS5へとジャンプする。
【0035】
ステップS5では、フェーダーナンバーfの値が16を越えているかどうかを判断し、越えていない場合にはステップS6でフェーダーナンバーfの値を1つインクリメントしてステップS2の処理に戻る。一方、フェーダーナンバーfの値が16を越えている場合には、フェーダー取り込み処理を終了する。
【0036】
図9は、図8のステップS4におけるフェーダー変化処理の内容を示す図である。図9において、ステップS11では、現在の設定モードがキャラクターモードか否かを判断する。ここで、キャラクタモードが設定されていない場合、すなわち、ハーモニクススイッチ22が押されることによってハーモニクスモードが設定されている場合は、ステップS12に進む。ステップS12では、f番目のフェーダー21のA/D変換値を、RAM3の一時記憶領域HLA中の4f番目の領域にセットし、ステップS18に進む。
【0037】
また、キャラクタスイッチ23が押されることによってキャラクタモードが設定されている場合は、ステップS13に進む。ステップS13では、ROM2のキャラクタテーブルの左からf番目(図7のテーブルの横軸)をポイントする。次に、ステップS14で、1〜64のハーモニクスナンバーを示す値nに“1”を設定した後、ステップS15で、上記ポイントした左からf番目のキャラクタデータ中の上からn番目のデータ値tbl_fnと、f番目のフェーダー21の現在の設定値を乗算し、その乗算結果をRAM3の一時記憶領域HLRf中のn番目の領域にセットする。
【0038】
次に、ステップS16で、ハーモニクスナンバーnの値が64を越えているかどうかを判断し、越えていない場合にはステップS17でハーモニクスナンバーnの値を1つインクリメントしてステップS15の処理に戻る。一方、ハーモニクスナンバーnの値が64を越えている場合には、ステップS18に進む。ステップS18では、上述の一時記憶領域HLA,HLR1〜16に保持されているデータを各倍音毎に全て加算し、その加算結果をハードウェア(音源部6)にセットする。
【0039】
以上詳しく説明したように、本実施形態では、音源部6における本来の4倍音を操作パネル部5のフェーダー21における1倍音(基本波)として設定するようにしたので、サイン合成方式においてPCM特有の非整数倍音を利用した波形合成を実現することができ、より多彩な楽音を得ることができる。しかも本実施形態では、非整数倍音はキャラクタデータの設定により性格付けを行ってまとめてコントロールしているので、技術内容や操作に疎い演奏家であっても音の編集をイメージ通りに極めて簡単に行うことができる。
【0040】
図10は、図1のROM2あるいはRAM3に格納される音色データの一例を示す図である。図10に示すように、1つの音色データは、16個のフェーダー21に対応して1〜16倍音のハモニクスデータ(何れも0〜100の何れかの絶対値)と、同じく16個のフェーダー21に対応して16個のキャラクタデータ(何れも−50〜+50の何れかの相対値)とを有している。そして、このような構成の音色データが、選択可能な音色の種類毎に複数格納されている。
【0041】
図11は、上記のような音色データを用いて音源セットを行う際の動作を示すフローチャートである。図11において、ステップS21で図2のスイッチ群25を操作することによって所望の音色が選択されると、ステップS22では、選択された音色データのハーモニクスレベルを読み込み、それをRAM3内の一時記憶領域HLAに設定する。このときも図5に示した動作と同様に、16個のフェーダー21に対応する1倍音〜16倍音の各ハーモニクスパラメータ値を、それぞれ4倍の高調波のところにセットするようにする。
【0042】
次に、ステップS23で、上記選択された音色データのキャラクタレベルを読み込み、それをRAM3内の一時記憶領域HLR1〜16に設定する。このとき、図9のステップS14〜S17のループ処理と同様に、図7のキャラクタテーブルを参照して得たデータ値tbl_fnと、上記音色データ中から読み込んだキャラクタレベルとを乗算し、その乗算結果を一時記憶領域HLR1〜16に設定する。
【0043】
なお、フェーダー21を図示しないモータによって個々に駆動可能な構成としておき、上記音色データのキャラクタレベルを読み込んだときに、そのキャラクタレベル(−50〜+50)に合致する位置にフェーダー21を自動的に移動させる。
【0044】
そして、ステップS24で、上述のようにRAM3の一時記憶領域HLA,HLR1〜16に保持されたハーモニクスデータとキャラクタデータとを各倍音毎に全て加算し、その加算結果をハードウェア(音源部6)にセットする。次のステップS25では、他のパラメータをハードウェア(音源部6)にセットする。このようにして楽音発生に必要な種々のパラメータが音源部6にセットされるた後、鍵盤操作あるいはMIDI信号の送受信によって実際に楽音の発生が実行される。
【0045】
このように、本実施形態では、図2のフェーダー21やモード選択スイッチ22,23を個々に操作することによって、各倍音の高調波を個別に生成し、任意の波形を合成することも可能であるし、スイッチ群25の操作により所望の音色を選択することによって各倍音の高調波を一括して設定し、音色に合った波形を極めて簡単な操作で得ることも可能である。
【0046】
さらに、音色の選択により一括的に設定した波形に対して、フェーダー21を使って個々の倍音を調整することも可能であり、このようにすれば、最初からフェーダー21だけで波形を合成する場合に比べて、任意の波形を生成する処理を更に簡単に行えるようになる。図10に示した音色データをRAM3に格納するようにした場合には、このようにして編集したデータを保存し、再利用することも可能である。
【0047】
なお、上記実施形態において示した構成および動作は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化のほんの一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。つまり、本発明はその精神、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0048】
例えば、上記実施形態では各倍音のレベル調整のための操作子としてフェーダー21を用いたが、調整のための操作子はこれに限定されるものではない。例えば、どの倍音あるいはキャラクタを調整するかを選択するためのスイッチと、レベル値を調整するためのダイヤルとの組み合わせによって構成しても良い。ただし、個々の倍音あるいはキャラクタ毎にフェーダー21を設けた方が、調整のための操作が複雑にならず、好ましい。
【0049】
また、ハーモニクスデータの調整を行うモードとキャラクタデータの調整を行うモードとをモード選択スイッチ22,23によって切り換えるようにしているが、フェーダー21を32個設ければ、このようなモード選択スイッチ22,23は不要である。なお、上記実施形態ではキャラクタデータの例として4つを挙げているが、これ以外にも、明るいイメージの音、暗いイメージの音など様々なキャラクタを任意に設定することが可能である。
【0050】
また、上記実施形態では、音源部6(ハードウェア)にセットされる波形が64個であるのに対して、ハーモニクスモード時にフェーダー21によって個々に調整できる高調波は1〜16倍音の16個である。このようにフェーダー21によって直接調整できる整数倍音以外の非整数倍音の高調波は、キャラクタデータによって調整されるが、フェーダー21を64個設ければ、非整数倍音もフェーダー21によって個々に調整することが可能である。フェーダー21を64個設ける代わりに、上述のようなスイッチとダイヤルとの組み合わせによって構成しても良い。このように非整数倍音も個々に調整可能とした場合には、キャラクタデータによる調整機能の有無は設計上自由に選択可能である。
【0051】
また、上記実施形態ではハーモニクスデータとキャラクタデータとを加算することによって各倍音の高調波を合成しているが、キャラクタデータのみから波形合成を行うようにしても良い。また、フェーダー21の基本波を音源部6の他の高調波として設定する手段を設けず、1〜64倍音に対する相対値を記憶したキャラクタテーブルのみから波形合成を行うようにしても良い。後者の例の場合には、非整数倍音が発生しなくなるが、演奏家が自分のイメージ通りに音の編集を極めて簡単に行うことができる点で、従来のサイン合成方式による音源装置と比べて優れたメリットを有している。
【0052】
また、上記実施形態ではキャラクタテーブルを1個のみ設けたが(図7)、図10の音色データとセットで持たせることにより、音色の種類毎に複数設けるようにしても良い。ただし、この場合には、図2のようにキャラクタ名を操作パネル面に直接書くのではなく、LCD等に表示できるようにする。
【0053】
さらに、上記実施形態では、キャラクタデータの内容として、図7に示すように倍音毎に異なる値を設定することによって各高調波に重み付けをした例を示したが、図12に示すように、各高調波に重み付けをしないようにすることも可能である。図12中に示した○印は、キャラクタパラメータ値として加算する値が存在することを示しており、この部分のデータ値tbl_fnは“1”であり、その他の部分は“0”である。よって、この例の場合は、フェーダー21の現在の設定値Ad_fがそのままRAM3の一時記憶領域HLR1〜16に記憶されることになる。
【0054】
また、上記実施形態では、音源部6における本来の4倍音を操作パネル部5のフェーダー21における1倍音(基本波)として設定するようにしたが、例えば音源部6における本来の2倍音、8倍音などを操作パネル部5のフェーダー21における1倍音として設定するなど、基本波の位置を他の高調波の位置に設定するのであれば、どのような形態でも構わない。
【0055】
【発明の効果】
本発明は上述したように、各倍音のレベル値に対して加算する相対値を種々の発音イメージに合わせて各倍音毎に設定しておき、この設定情報に基づいて波形合成を行うようにしたので、技術内容や操作に疎い演奏家であっても音の編集をイメージ通りに極めて簡単に行うことができる。特に、操作子の操作により設定される基本波および各高調波のレベル値をそれぞれ音源部における他の高調波のレベル値として設定する構成と組み合わせた場合には、非整数倍音の高調波は、上記発音イメージのデータにより性格付けを行ってまとめてコントロールすることが可能となり、非整数倍音を含んだより多彩な楽音のイメージ通りの編集を極めて簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態である音源装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示した操作パネル部の一部構成例を示す図である。
【図3】本実施形態による波形合成処理の概要を説明するための図である。
【図4】本実施形態の操作パネル部と音源部との高調波次数の関係を示す図である。
【図5】本実施形態のフェーダーによる各高調波データ設定の処理内容を説明するための図である。
【図6】本実施形態のフェーダーによる各キャラクタデータ設定の処理内容を説明するための図である。
【図7】本実施形態のキャラクタテーブルの一例を示す図である。
【図8】フェーダー設定値の取り込み処理を示すフローチャートである。
【図9】図8のステップS4におけるフェーダー変化処理の内容を示すフローチャートである。
【図10】図1のROMに格納される図7とは別のテーブル情報である音色データの一例を示す図である。
【図11】音色選択処理の動作を示すフローチャートである。
【図12】本実施形態のキャラクタテーブルの他の例を示す図である。
【符号の説明】
1 CPU
2 ROM
3 RAM
4 A/D変換部
5 操作パネル部
6 音源部
7 信号バス
21 フェーダー(スライダー)
22 ハーモニクススイッチ
23 キャラクタスイッチ
24 表示装置
25 スイッチ群

Claims (3)

  1. 基本波に対して倍音関係にある高調波を合成していくことによって任意の波形を生成することができる音源部と、
    上記波形合成の調整を行うための第1及び第2の操作子と、
    上記第1の操作子の操作により個々に設定された基本波および各高調波のレベル値をそれぞれ各高調波用の記憶領域に一時記憶する第1の一時記憶手段と、
    各倍音のレベル値に対して加算する相対値を種々の発音イメージに合わせて各倍音毎に設定したテーブル情報をあらかじめ記憶して成る記憶手段と、
    上記第2の操作子の操作状態に応じた第1の操作子の操作および上記記憶手段のテーブル情報に基づいて加算値を演算し、その加算値を各高調波用の記憶領域に一時記憶する第2の一時記憶手段と、
    上記第1の一時記憶手段に記憶された各倍音のデータと上記第2の一時記憶手段に記憶された各倍音のデータとを各倍音毎に加算し、その加算結果を上記音源部に設定するようにする合成手段とを備えたことを特徴とする音源装置。
  2. 基本波に対して倍音関係にある高調波を合成していくことによって任意の波形を生成することができる音源部と、
    所望の音色を選択するための操作子と、
    各倍音のレベル値に対して加算する相対値を種々の発音イメージに合わせて各倍音毎に設定したテーブル情報をあらかじめ記憶して成る第1の記憶手段と、
    音色毎に、上記基本波および各高調波のレベル値を各倍音毎に記憶するとともに、上記レベル値に対して加算する相対値の加算度合を種々の発音イメージに合わせて記憶して成る第2の記憶手段と、
    上記操作子の操作により選択された音色に対応して上記第2の記憶手段から読み出された上記基本波および各高調波のレベル値をそれぞれ高調波用の記憶領域に一時記憶する第1の一時記憶手段と、
    上記操作子の操作により選択された音色に対応して上記第2の記憶手段から読み出された加算度合の情報および上記第1の記憶手段のテーブル情報に基づいて加算値を演算し、その加算値を各高調波用の記憶領域に一時記憶する第2の一時記憶手段と、
    上記第1の一時記憶手段に記憶された各倍音のデータと上記第2の一時記憶手段に記憶された各倍音のデータとを各倍音毎に加算し、その加算結果を上記音源部に設定するようにする合成手段とを備えたことを特徴とする音源装置。
  3. 請求項1又は2記載の音源装置と、少なくとも鍵盤部およびMIDI送受信部の一方とを備えたことを特徴とする電子楽器。
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