JP3714753B2 - 化粧シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は化粧シートに関し、特に、建築物の内装、建具の表面化粧、車輛内装等に用いるのに適した化粧シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、上記のような用途に用いる化粧シートとしては、ポリ塩化ビニルフィルムを使用し、これに印刷、エンボス加工等で装飾した化粧シート(特公昭28−5036号公報、特公昭58−14312号公報等)が用いられてきたが、近年、これに代わるものとして、
(I)ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系フィルムを使用した化粧シートが提案され(特開昭54−62255号公報参照)、
(II)更に、(I)の改良仕様として、極性官能基をグラフト重合させたポリオレフィン系樹脂に、オレフィン系熱可塑性エラストマーを混合させたもの(特開平6−21080号公報、特表平4−504384号公報等)、あるいは、ポリオレフィン系樹脂に相溶化剤を用いてポリウレタン樹脂を混合させたもの(特開平7−26038号公報等)、等も提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、提案されている上記のようなポリオレフィン系樹脂シートを用いた化粧シートは必ずしも満足できるものではない。なすわち、建築物の内外装用、建具・家具等の表面化粧用、車輛内装用等に用いる表面化粧シートには、通常、下記(1) 〜(10)のような機能が要求される。
【0004】
(1) ポリ塩化ビニル並みの熱成形性。特に、温度変化にともなう一定荷重時伸度の変化がポリ塩化ビニルとほぼ同等の緩やかで連続的に変化すること。また、加熱→冷却にともなって、強度低下等の材料力学的特性の劣化か生じないこと。
【0005】
(2) 耐クリープ変形性。外装材や内装材には建具や家具による定荷重が長時間かけられる場合が多く、クリープ変形が生じると、荷重部分がめくれたり剥がれたりする。従って、極力クリープ変形が生じない材料であることが求められる。
【0006】
(3) 耐寒折り曲げ強度。寒冷時にVカット加工等の折り曲げ加工を行うと応力緩和が不十分な場合は、折り曲げ部に白化、亀裂、破断等が生じ易くなる。
(4) 耐有機溶剤性。化粧シートと被着体を接着する接着剤中の溶剤により化粧シートが膨潤・変形するのを防止する。多層構造の化粧シートを得る場合も同様である。
【0007】
(5) 破断時伸度、耐衝撃強度。Vカット加工時の折り曲げ部の亀裂を防止するために、この特性を求められる。
(6) 適度な曲げ弾性率を持つ。曲げ加工部での化粧シートの追従性が十分であるためには必要とされる。
【0008】
(7) 透明性が良好。
(8) エンボス加工等にともなう加熱と冷却が加わっても、再結晶による白化、濁りを生じない。
(9) 易接着性。
(10)耐候性に優れる。
【0009】
前記した前記(I)の仕様の化粧シートは、工業的に量産が難しく、かつ、ポリオレフィン系樹脂は結晶化度が高いため等の理由から、図1の曲線bに示すように、ポリ塩化ビニル樹脂に比べて融点前後の物性の変化が急峻であり、従来汎用のポリ塩化ビニルシートに比べ加工可能な条件範囲が狭い欠点を有しており、上記の条件の内、特に、(1) 、(5) 〜(10)の条件を十分には満足できないものであった。(II)の仕様のものは、オレフィン系熱可塑性エラストマーを混合させたことにより、(1) 、(5) 、(6) の条件は改善され、熱成形性、エンボス加工性等は向上したが、透明性、耐候性、及び耐熱性では不十分なものであった。
【0010】
本発明は、オレフィン系樹脂を用いた従来の化粧シートの持つ上記のような不都合を解消することを目的としており、具体的には、オレフィン系樹脂を用いながらポリ塩化ビニル系樹脂を用いた化粧シートと同等の熱成形性及び耐候性、透明性を持つ化粧シートを提供することにある。
【0011】
なお、図1は、定荷重下における温度の伸びの関係を示すグラフであり、曲線aは半硬質塩化ビニルシートを、曲線bは結晶性の高密度ポリエチレンをベースとするシートを、曲線cは後述する本発明による積層シートの場合を示している。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく多くの実験と研究を行うことにより、化粧シートを単層シートではなく、少なくとも、基材シートとそこに積層する表面シートの2層構造とし、それぞれのシートに前記した化粧シートに求められる諸条件を分担して持たせることにより、実用性の高いオレフィン系樹脂化粧シートが得られることを知見し、該知見に基づき新規な化粧シートを案出し先に出願している(特願平8−336960号)。
【0013】
そこにおいて、基材シートには前記条件における(1) 〜(6) 及び(9) を担わせることとし、基材シートの表面に積層する表面シートには条件(1) 〜(8) 及び(10)を担わせることとし、その前提として次のように試験を行った。先ず、基材シートの配合ベースとなるポリオレフィンとしては、基本的性能が優れるものとして高密度ポリエチレン(HDPE)を選択した。表1は高密度ポリエチレンの前記化粧シートに求められる(1) 〜(10)の条件の充足程度を示している。
【0014】
【表1】
【0015】
※1:融点前後の変化急峻。エンボス加工時、冷却による結晶化向上により、伸度低下。
※2:降伏点応力高い。
※3:曲弾性率高すぎる。
※4:微結晶粒による白濁の傾向。
【0016】
そこで、熱可塑性エラストマーを添加し、結晶化を阻害すると共に、応力の吸収・緩和を行った。その結果、表2に示すように各条件は変化した。
【0017】
【表2】
【0018】
それにより、条件(1) 、(5) 、(6) は満足するものとなったが、(2) の耐クリープ性が幾分低下した。それで、さらに無機質微粒子体質顔料を加えた。その結果、表3に示すように各条件は変化した。
【0019】
【表3】
【0020】
これにより、耐クリープ変形も良好となり、基材シートとしての性能(1) 〜(6) 、(9) を満足するものが得られることを確認した。
次に、基材シート表面に重ねる表面シートとしては、透明度が高くかつ耐候性に優れたアイソタクチックポリプロピレンシートを選択した。このシートについて前記(1) 〜(10)の条件の充足程度を調べた。表4にその程度を示す。
【0021】
【表4】
【0022】
※5:アイソタクチックポリプロピレンの結晶性が高いことによる。
※6:再結晶化による白濁が生じた。
【0023】
そこで、アイソタクチックポリプロピレンと結晶化率の低いアタクチックポリプロピレンとの混合系樹脂を用い、結晶化度を低下させて前記(1) 〜(10)の条件の充足程度を調べた。表5にその程度を示す。
【0024】
【表5】
【0025】
表5に示すように、アイソタクチックポリプロピレン+アタクチックポリプロピレンの混合系の樹脂を用いることにより、(1) 及び(3) の充足度が幾分低下したが、基材シートと積層することによってその分の補強は受けており、また、折り曲げ時の応力も基材シート層に一部分散されるため、積層シートの状態では白化、亀裂は目立たないものとなった。また、易接着性が完全には満たされないが、表面シートの場合には基材シートとの接着が良好であれば十分であり、化粧シートとして支承ないことを確認した。
【0026】
先の出願は、上記の実験結果に基づくものであり、基本的に、主原料が高密度ポリエチレン、熱可塑性エラストマー、着色剤、及び無機充填剤からなる基材シートとしての着色フィルムに、その上に、アイソタクチックポリプロピレンとアタクチックポリプロピレンの混合系からなる複合立体構造を有する表面シートとしての無色又は着色透明な軟質ポリプロピレン系樹脂フィルムを積層し、そして、必要に応じて基材シート又は表面シートのいずれか又は両方に模様を施してなることを特徴とする。
【0027】
本発明は、上記した表面シートを構成するアイソタクチックポリプロピレンとアタクチックポリプロピレンの混合系からなる複合立体構造を有する軟質ポリプロピレン系樹脂組成物が易接着性において不十分であることに鑑みてなされたものであり、本発明による化粧シートは、基本的に、表面シートである、アイソタクチィクポリプロピレンとアタクチックポリプロピレンの混合系からなる複合立体構造を有する無色又は着色透明な軟質ポリプロピレン系樹脂層と、アイソタクチィクポリプロピレンとアタクチックポリプロピレンの混合系からなる複合立体構造を有する軟質ポリプロピレン系樹脂とエチレン系不飽和単量体の1種又は2種以上との共重合体からなる易接着性ポリプロピレン系樹脂層と、主原料が高密度ポリエチレン、熱可塑性エラストマー、着色剤、及び無機充填剤からなる基材シートである着色フィルム、とを少なくとも有し、必要に応じて基材シート又は表面シートのいずれか又は両方に模様を施してなることを特徴とする。
【0028】
基材シートを構成する高密度ポリエチレンとしては、好ましくは、比重が0.94〜0.96のポリエチレンであって、低圧法で得られる結晶化度が高く分子に枝分かれ構造の少ない高分子である高密度ポリエチレンが用いられる。
【0029】
熱可塑性エラストマーとしては、ジエン系ゴム、水素添加ジエン系ゴム、オレフィンエラストマー等が用いられる。水素添加ジエン系ゴムは、ジエン系ゴム分子の二重結合の少なくとも一部分に水素原子を付加させてなるもので、ポリオレフィン系樹脂(本発明においては、高密度ポリエチレン)の結晶化を抑え、柔軟性をアップさせる。ジエン系ゴムとしは、イソプレンゴム、ブダジエンゴム、ブチルゴム、プロピレン・ブダジエンゴム、アクリロニトリル・ブダジエンゴム、アクリロニトリル・イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム等がある。オレフィンエラストマーとしては、2種類又は3種類以上のオレフィンと共重合しうるポリエンを少なくとも1種加えた弾性共重合体であり、オレフィンはエチレン、プロピレン、α−オレフィン等が使用され、ポリエンとしては、1,4ヘキサジエン、環状ジエン、ノルボルネン等が使用される。好ましいオレフィン系共重合体ゴムとしては、例えばエチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−非共役ジエンゴム、エチレン−ブタジエン共重合体ゴム等のオレフィンを主成分とする弾性共重合体が挙げられる。
【0030】
添加量としては、10〜60重量%、好ましくは30重量%程度である。10重量%より低いと一定荷重時伸度の変化が急峻になり過ぎ、また、破断時伸度、耐衝撃性の低下が生じ、60重量%より高いと透明性、耐候性及び耐クリープ性の低下が生じる。
【0031】
無機充填剤としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、タルク等の粉末が用いられる。添加量としては、5〜60重量%程度、好ましくは30重量%程度である。5重量%より低いと耐クリープ変形性及び易接着性の低下が生じ、60量%より高いと破断時伸度及び耐衝撃性の低下が生じる。
【0032】
着色剤は基材シートに化粧シートとして必要な色彩を持たせるためのものであり、チタン白、亜鉛華、弁柄、朱、群青、コバルトブルー、チタン黄、カーボンブラック等の無機顔料、イソインドリノン、ハンザイエローA、キナクリドン、パーマネントレッド4R、フタロシアニンブルー等の有機顔料あるいは染料、アルミニウム、真鍮等の金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸亜鉛等の箔粉からなる真珠光沢顔料等が用いられる。着色は透明着色、不透明(隠蔽)着色いずれでも可であるが、一般的には、被着体を隠蔽するために不透明着色が好ましい。
【0033】
さらに、必要に応じて、熱安定剤、難燃剤、ラジカル捕捉剤等を添加する。熱安定剤は、フェノール系、サルファイト系、フェニルアルカン系、フォスファイト系、アミン系等公知のものであり、熱加工時の熱変色等の劣化の防止性をより向上させる場合に用いられる。
難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の粉末が用いられ、これらは、難燃性を付与する必要がある場合に添加する。
【0034】
これらの材料をブレンドしたものをカレンダー製法等の常用の方法により製膜して不透明着色基材シートを得る。前記のように、得られる基材シートは化粧シートの基材シートに求められる前記(1) 〜(6) 、(9) 、(10)の条件を満足する。基材シートの厚みは50〜200μm程度、好ましくは100μm程度である。
【0035】
基材シートの表面には、好ましくは、易接着層の塗布、コロナ放電処理、プラズマ処理等の易接着処理が施される。
易接着層(プライマー層、或いはアンカー層とも云う)としては、アクリル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリウレタン、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレンが使用されるが、特に、ポリウレタンが望ましい。
【0036】
アクリルとしては、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル・(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、(メタ)アクリル酸エチル・(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、スチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体等の(メタ)アクリル酸エステルを含む単独又は共重合体からなるアクリル樹脂(ただし、ここで(メタ)アクリルとはアクリル又はメタアクリルを意味する)等が用いられる。
【0037】
ポリウレタンとはポリオール(多価アルコール)を主剤とし、イソシアネートを架橋剤(硬化剤)とするポリウレタンである。
ポリオールとしては、分子中に2個以上の水酸基を有するもので、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等が用いられる。
【0038】
また、イソシアネートとしては、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシアネートが用いられる。例えば、2−4トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4−4ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、或いはヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族(ないしは脂環族)イソシアネートが用いられる。
【0039】
本発明による化粧シートにおいて、基材シートの表面に、表面シートである、アイソタクチィクポリプロピレンとアタクチックポリプロピレンの混合系からなる複合立体構造を有する無色又は着色透明な軟質ポリプロピレン系樹脂層と、その裏面に配置した、アイソタクチィクポリプロピレンとアタクチックポリプロピレンの混合系からなる複合立体構造を有する軟質ポリプロピレン系樹脂とエチレン系不飽和単量体の1種又は2種以上との共重合体からなる易接着性ポリプロピレン系樹脂層とを積層する。
【0040】
アイソタクチックポリプロピレンとアタクチックポリプロピレンの混合系からなる複合立体構造を有するポリプロピレンは、好ましくは、(A)(イ)マグネシウム、チタン、ハロゲン原子及び電子供与体を必須成分として含有する固体触媒成分、(ロ)有機アルミニウム化合物、及び、(ハ)一般式
【0041】
【化2】
【0042】
(式中のR1 は炭素数1〜20のアルキル基、R2 は炭素数1〜10の炭化水素基、水産基又はニトロ基、mは1〜6の整数、nは0又は1〜(6−m)の整数てある)で表されるアルコキシ基含有芳香族化合物の組み合わせからなる触媒の存在下、プロピレンを重合させることにより得られる、数平均分子量(Mn)が25000以上、かつ、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量Mnとの比Mw/Mnが7以下の沸騰ヘプタン可溶性ポリプロピレン(アタクチックポリプロピレン)10〜90重量%と(B)メルトインデックスが0.1〜4g/10分の沸騰ヘプタン不溶性ポリプロピレン(アイソタクチックポリプロピレン)90〜10重量%とからなる軟質ポリプロピレン系樹脂組成物である。
【0043】
表面シートである前記軟質ポリプロピレン系樹脂組成物は、破断伸び(TB )が400%以上、好ましくは500〜700%、100%伸長後の残留伸び(PS100 )が80%以下、好ましくは50〜75%、及び破断時応力(MB )と降伏時応力(MY )との比MB /MY が1.0以上、好ましくは1.5〜3.5の範囲である。これらの力学的特性が前記範囲を逸脱すると本発明の目的が十分達せられない。
【0044】
前記前記軟質ポリプロピレン系樹脂組成物において、(A)成分のアタクチックポリプロピレンとして、沸騰ヘプタンに可溶性であって、数平均分子量(Mn)が25000以上、好ましくは30000〜60000の範囲にあり、かつ、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比Mw/Mnが7以下、好ましくは2〜6の範囲にあるものが用いられる。このMnが25000未満のものやMw/Mnが7を超えるものでは得られる樹脂における該アタクチックポリプロピレンの力学的特性への寄与効果が十分に発揮されず、得られる樹脂の破断時応力(MB )と降伏時応力(MY )との比MB /MY が1.0未満になったり、100伸長後の残留伸び(PS100 )が80%を超えたりして、本発明の目的が達せられない。
【0045】
上記(A)成分のアタクチックポリプロピレンはプロピレンの単独重合体であってもよく、プロピレン単体と40重量%以下、好ましくは30重量%以下の他の炭素数2〜30のα−オレフィン単位とを含有するプロピレン共重合体であってもよい。また、このアタクチックポリプロピレンは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
このような(A)成分のアタクチックポリプロピレンは公知の方法(特公平6−23278号公報)によって製造することができる。具体的には、(イ)マグネシウム、チタン、ハロゲン原子及び電子供与体を必須成分として含有する固体触媒成分、(ロ)有機アルミニウム化合物、及び、(ハ)一般式
【0047】
【化3】
【0048】
(式中のR1 は炭素数1〜20のアルキル基、R2 は炭素数1〜10の炭化水素基、水産基又はニトロ基、mは1〜6の整数、nは0又は1〜(6−m)の整数てある)で表されるアルコキシ基含有芳香族化合物の組み合わせからなる触媒の存在下、プロピレンを重合させることにより、所望のアタクチックポリプロピレンを得ることができる。
【0049】
前記前記軟質ポリプロピレン系樹脂組成物において、(B)成分として、好ましくは、メルトインデックス(MI)が0.1〜4g/10分の沸騰ヘプタン不溶性の結晶性アイソタクチックポリプロピレンが用いられる。このメルトインデックスが0.1g/10分未満では溶融特性が低く、シート成形が困難になる。4g/10分越えると機械的強度が不十分となってVカット加工が良好に行えなくなる。
【0050】
この(B)成分のアイソタクチックポリプロピレンは、アイソタクチックの立体規則性を有するポリプロピレン単独重合体であってもよいし、該立体規則性を有するプロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体であってもよい。この共重合体に用いられる他のα−オレフィンとしては、炭素数2〜8のもの、例えば、エチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1等が好ましく、中でも、エチレン及びブテン−1が好適である。また、共重合体としては、前記の他のα−オレフィン単位を通常40重量%以下、好ましくは30重量%以下含有するブロック共重合体やランダム共重合体が用いられる。
【0051】
この(B)成分のアイソタクチックポリプロピレンの好ましいものとしては、プロピレン単独重合体、及びエチレン単位1〜30重量%、好ましくは3〜25重量%を含有するプロピレンとエチレンとのランダム共重合体又はブロック共重合体が挙げられる。このようなアイソタクチックポリプロピレンの製造方法については特に制限はなく、従来結晶性ポリプロピレンの製造に慣用されている方法の中から任意の方法を選択して用いることができる。
【0052】
本発明で使用する軟質ポリプロピレン系樹脂組成物において、この(B)成分のアイソタクチックポリプロピレンは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。また、前記(A)成分のアタクチックポリプロピレンと(B)成分のアイソタクチックポリプロピレンは、(A)成分の含有量が10〜90重量%、好ましくは25〜80重量%で、(B)成分の含有量が90〜10重量%、好ましくは75〜20重量%になるような割合で用いられる。該(A)成分の含有量が10重量%未満では、樹脂の降伏時応力(MY )が大きくなりすぎて、破断時応力(MB )と降伏時応力(MY )との比MB /MY が1.0未満となり、かつ100%伸長後の残留伸び(PS100 )も80%より大きくなつて、本発明の目的が達せられない。一方90重量%を越えると破断時応力(MB )が小さくなりすぎて、該MB /MY が1.0未満となり、かつ機械的強度が低下し、本発明の目的が達せられない。また、(B)成分の比率を高くすることにより、得られる軟質ポリプロピレンのヤング率は高くなる。(A)成分と(B)成分の特に好ましい比率は1:1である。
【0053】
表面シートの素材である軟質ポリプロピレン系樹脂組成物には、化粧シートの表面層として求められる機能を補強するために、所望により、各種添加剤、補強材、充填剤、例えば、紫外線吸収剤、光安定剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤等が添加される。
【0054】
紫外線吸収剤、光安定剤は、樹脂により良好な耐候性(耐光性)を付与するためのものであり、その添加量は紫外線吸収剤、光安定剤とも通常0.5〜10重量%程度である。一般的には、紫外線吸収剤と光安定剤とを併用するのが好ましい。紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、サリチル酸エステル等の有機物、又は、0.2μm径以下の微粒子状の酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化チタン等の無機物を用いることができる。光安定剤としては、ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート等のヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤、ピペリジン系ラジカル捕捉剤等のラジカル捕捉剤を用いることができる。
【0055】
難燃剤は、基材シートの場合と同様であってよい。
これらの材料をブレンドした軟質ポリプロピレン系樹脂組成物の裏面に、アイソタクチィクポリプロピレンとアタクチックポリプロピレンの混合系からなる複合立体構造を有する軟質ポリプロピレン系樹脂(A)とエチレン系不飽和単量体(B)の1種又は2種以上との共重合体からなる易接着性ポリプロピレン系樹脂層が形成される。ここでの軟質ポリプロピレン系樹脂(A)は前記した表面シートの素材樹脂である軟質ポリプロピレン系樹脂と同じである。
【0056】
エチレン系不飽和単量体(B)は、例えばカルボン酸、カルボン酸塩、カルボン酸無水物、カルボン酸エステル、カルボン酸アミドないしイミド、アルデヒド、ケトン等に基づくカルボニル基を単独で、あるいはシアン基;ヒドロキシ基;エーテル基;オキシラン環等との組み合わせで有するエチレン系不飽和単量体であり、具体的には、
A.エチレン系不飽和カルボン酸:
アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸等、
B.エチレン系不飽和無水カルボン酸:
無水マレイン酸、無水シトラコン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸等、
C.エチレン系不飽和エステル:
アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、マレイン酸モノ又はジエチル、酢酸ビニル、プロビオン酸ビニル、γ−ヒドロキシメタクリル酸プロビル、β−ヒドロキシアクリル酸エチル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、β−N−エチルアミノエチルアクリレート等、
D.エチレン系不飽和アミドないしイミド
アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイミド等、
E.エチレン系不飽和アルデヒドないしケトン
アクロレイン、メタクロレイン、ビニルメタケトン、ビニルブチルケトン等、である。
【0057】
このエチレン系不飽和単量体の1種又は2種と前記アイソタクチィクポリプロピレンとアタクチックポリプロピレンの混合系からなる複合立体構造を有する軟質ポリプロピレン系樹脂との共重合体からなる易接着性ポリプロピレン系樹脂層が、前記表面層である無色又は着色透明な軟質ポリプロピレン系樹脂層の裏面に形成される。その際に、カレンダー製法等の常用の方法により製膜してそれぞれのシートあるいはフィルムを得、熱融着により積層化してもよく、2層を共押出しにより一体化してもよい。共押出しによる場合には、Tダイで押し出しの手法をとることができ、マルチマニホールド方法、フィードバック方法等で押し出し積層する。
【0058】
軟質ポリプロピレン系樹脂層と易接着性ポリプロピレン系樹脂層の厚みの割合は10:1〜5:1程度であってよく、総厚みは50〜200μm程度、好ましくは80〜100μm程度である。このようにして得られた積層フィルムあるいはシートは化粧シートの表面シートに求められる前記(1) 〜(8) 、特に、(7) 、(8) の条件を満足すると共に、基材シートに対しての接着力が向上し、軟質ポリプロピレン系樹脂層の持つ易接着性不良を解消する。
【0059】
前記着色フィルムである基材シートと表面シートである前記無色又は着色透明な軟質ポリプロピレン系樹脂層と易接着性ポリプロピレン系樹脂層との積層体は、通常の手段により積層される。積層方法としては、熔融押し出し塗工(エクストルージョンコート)、熱プレスによる融着、或いは、2液硬化型ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等の接着剤を用いたドライラミネート等であってよい。それにより、本発明による化粧シートは作られる。
【0060】
なお、必要に応じて基材シートの表面あるいは裏面又は表面シート表面のいずれか又は両方には好ましくは定法により易接着処理が施され模様が形成される。図2(A)で、1は基材シート、2は表面シート、2aは易接着性ポリプロピレン系樹脂層であり、この例では、易接着層4を表面シート2の表面に設け、そこに模様層3を設けている。模様処理としては、図2(A)に示すような模様4の印刷、図2(B)に示すようなエンボス加工(加熱プレス)、ヘアライン加工等による凹凸模様賦形5等であってよく、さらに、凹凸模様5の凹部に公知のワイピング法によって、着色インキ6を充填することもできる。図2(C)に示すように、基材シート1が被着体31に面する側に易接着層4を設ける場合もある。
【0061】
模様印刷としては、グラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、転写シートからの転写印刷等公知の印刷法を用いインキ(或いは塗料)にて模様を形成する。模様としては、木目模様、石目模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、或いは全面ベタ等がある。
【0062】
インキ(或いは)塗料としては、バインダーとして、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル、酢酸ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、セルロース系樹脂、等を用い、一種又は二種以上混合して用いる。これに前記に列挙した様な公知の顔料を添加した物を用いる。
【0063】
基材シート1に直接印刷する場合は、バインダーとして塩素化ポリオレフィン、ポリウレタン等が接着性の点で好ましいが、易接着プライマーを適当に選択して層形成すれば、其の他のバインダーを用いても十分な接着性を与える。
【0064】
エンボス加工としては、基材シートを加熱軟化させ、エンボス版で加圧、賦形し、冷却固定して形成するもので、公知の枚葉、或いは輪転式のエンボス機が用いられる。凹凸形状としては、木目板導管溝、石板表面凹凸(花崗岩劈開面等)、布表面テクスチュア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等である。着色インキは前記と同様の物が可能である。但し、耐磨耗性の点で、2液硬化型ウレタン樹脂をバインダーとする物が好ましい。
【0065】
金属薄膜は、アルミニウム、クロム、金、銀、銅等の金属を用い、真空蒸着、スパッタリング等の方法で製膜する。或いはこれらの組み合わせでも良い。該金属薄膜は、全面に設けても、或いは、部分的にパターン状に設けても良い。
【0066】
好ましくは、模様3を施した表面シート2の上に、艶調整保護コート層を形成する。バインダーとして塩素化ポリオレフィン、2液硬化ポリウレタン等が好ましく、また、電離放射線硬化樹脂も用い得る。電離放射線硬化型樹脂は、具体的には、分子中に重合不飽和結合又はカチオン重合性官能基を有するプレポリマー、ポリマー及び/又はモノマーを適宜混合した電離放射線により硬化可能な組成物が好ましくは用いられる。なお、ここで電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられる。
【0067】
硬質塗膜を形成する電離放射線硬化性樹脂は、具体的には、分子中に(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等のラジカル重合性不飽和基、エポキシ基等のカチオン重合性官能基又はチオールを2個以上有する単量体、プレポリマー又はポリマーからなる。これら単量体、プレポリマー又はポリマーは単体で用いるか、あるいは複数種混合して用いる。なお、ここで、例えば、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタアクリロイル基の意味で用いている。
【0068】
ラジカル重合性不飽和基を有するプレポリマーの例としては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート等が使用できる。分子量としては、通常250〜10000程度のものが用いられる。ラジカル重合性不飽和基を有するポリマーとしては、上記ポリマーの重合度を10000程度以上としたものが用いられる。
【0069】
カチオン重合性官能基を有するプレポリマーの例としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等のエポキシ系樹脂、脂肪族系ビニルエーテル、芳香族系ビニルエーテル等のビニルエーテル系樹脂等のプレポリマーがある。
【0070】
ラジカル重合性不飽和基を有する単量体の例としては、(メタ)アクリレート化合物の単官能単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等がある。
【0071】
ラジカル重合性不飽和基を有する多官能単量体の例としては、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等がある。
【0072】
カチオン重合性官能基を有する単量体の例としては、上記カチオン重合性官能基を有するプリポリマーの単量体が利用できる。チオール基を有する単量体の例としては、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、ジペンタエリスリトールテトラチオグリコレート等がある。
【0073】
紫外線又は可視光線にて硬化させる場合には、電離放射線硬化樹脂中に光重合開始剤を添加する。ラジカル重合性不飽和基を有する樹脂系の場合は、光重合開始剤として、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等を単独又は混合して用いることができる。また、カチオン重合性官能基を有する樹脂系の場合は、光重合開始剤として、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタセロン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等を単独又は混合物として用いるこができる。なお、これらの光重合開始剤の添加量としては、該電離放射線硬化性樹脂100重量%に対して、0.1〜10重量%程度である。
【0074】
艶消しにする場合には、艶消(光拡散)剤を添加する。艶消剤としては、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、ウレタン樹脂ビーズ、ポリカーボネート樹脂ビーズ等の粒径1〜30μm程度の微粒子が有効である。膜厚は1〜100μm程度が好ましい。
【0075】
本発明において、得られる化粧シートは、延伸・未延伸いづれのシートも使用可能であるが、エンボス加工適性、Vカット加工等の成形加工適性の点からは未延伸シートの方が好ましい。
【0076】
図2(C)に示すように、本発明の化粧シートは、他の被着体(裏打材)31に積層することもできる。その場合に、化粧シート自体では被着体と接着しない場合は、適当な易接着層あるいは接着剤層4を介して積層する。被着体に化粧シート自体が(熱融点等で)接着可能な場合は、接着剤層は省いてもよい。
【0077】
被着体としては各種素材の平板、曲面板等の板材、シート(或いはフィルム)等の各種形状の物品が対象となる。板材或いはシート(フィルム)のいづれにも用いられる素材としては、木材単板、木材合板、パーチックルボード、中密度繊維板(MDF)等の木材板、木質繊維板等の木質板、鉄、アルミニウム等の金属、アクリル、ポリカーボネート、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレンビニルアセテート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリオレフィン、ABS、フェノール樹脂、ポリ塩化ビニル、セルロース系樹脂、ゴム等の樹脂、専ら板材、或いは立体形状物品として用いられる素材としては、硝子、陶磁器、等のセラミックス、ALC(発泡軽量コンクリート)等のセメント、硅酸カルシウム、石膏等の非セメント窯業系材料、専らシート(或いはフィルム)として用いられる素材としては、上質紙、和紙等の紙、炭素、石綿、チタン酸カリウム、硝子、合成樹脂等の繊維からなる不織布又は織布等がある。
【0078】
これら各種被着体への積層方法としては、例えば▲1▼接着剤層を間に介して板状基材に加圧ローラーで加圧して積層する方法、▲2▼特公昭50−19132号公報、特公昭43−27488号公報等に記載される様に、化粧シートを射出成形の雌雄両金型間に挿入して、両金型を閉じ、雄型のゲートから熔融樹脂を射出充填して後、冷却して樹脂成形品の成形と同時にその表面に化粧シートを接着積層する、所謂射出成形同時ラミネート方法、▲3▼特公昭56−45768号公報、特公昭60−58014号公報等に記載される様に、成形品の表面に化粧シートを間に接着剤層を介して対向ないしは載置し、成形品側からの真空吸引による圧力差により化粧シートを成形品表面に積層する、所謂真空プレス積層方法、▲4▼特公昭61−5895号公報、特公平3−2666号公報等に記載される様に、円柱、多角柱等の柱状基材の長軸方向に、化粧シートを間に接着剤層を介して供給しつつ、複数の向きの異なるローラーにより、柱状体を構成する複数の側面に順次化粧シートを加圧接着して積層してゆく、所謂ラッピング加工方法、▲5▼実公大15−31122号公報、特開昭48−47972号公報等に記載される様に、先ず化粧シートを板状基材に接着剤層を介して積層し、次いで板状基材の化粧シートとは反対側の面に、化粧シートと板状基材との界面に到達する、断面がV字状、又はU字状溝を切削し、次いで該溝内に接着剤を塗布した上で、該溝を折り曲げ箱体又は柱状体を成形する所謂、Vカット又はUカット加工方法、等がある。
【0079】
本発明の化粧シートは各種被着体に積層し、所定の成形加工等を施して、各種用途に用いる。例えば、壁、天井、床等建築物の内装、窓枠、扉、手摺等の建具の表面化粧、家具又は弱電・OA機器のキャビネットの表面化粧、自動車、電車等の車輛内装、航空機内装、窓硝子の化粧等である。
【0080】
【実施例】
以下、本発明の実施例について詳細に説明する。
【0081】
実施例
(1)高密度ポリプロピレン60重量%をベースに熱可塑性エラストマーとしてスチレン−ブタジエンゴムを30重量%、無機添加剤として炭酸カルシウム10重量%、また、着色顔料として弁柄とカーボンブラックを5重量%添加して、熱安定剤及びヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤を5重量%ブレンドしたものをカレンダー製法にて厚み100μmに成膜した不透明着色シートを成製した。
【0082】
(2)上記着色シートの表裏面にコロナ放電処理を施したあと、裏面側にウレタン系プライマーコート(ヘキサメチルイソシエネート+アクリルポリオール)(昭和インク株式会社:AFX)、表面側にウレタン系プライマーコート(同上)及び柾目柄印刷(昭和インク株式会社:化X)を施し、印刷シートを得た。
【0083】
(3)上記印刷シートの上に、厚さ100μmのアイソタクチックポリプロピレン(数平均分子量Mn:37000、重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn:4.7)50重量%とアタクチックポリプロピレン50重量%の混合系ポリプロピレンに紫外線吸収剤としてベンゾトリアゾール系紫外線吸収材を3000ppm、光安定剤としてヒンダーミント系ラジカル捕捉剤を5000ppm添加したことからなる軟質透明ポリオレフィンフィルムと、該軟質ポリオレフィンに無水マレイン酸1000ppmをグラフト重合したホモポリマーをTダイ押出し機により、2層共押出しし、(2)で得た印刷シートのプライマーコート及び印刷面にラミネートを行った。このときの厚みとして、表面樹脂層の厚みが70μm、易接着樹脂層の厚みが10μmであった。なお、前記軟質透明ポリオレフィンフィルムの物性値は、破断伸び(TB ):650%、100%伸長後の残留伸び(PS100 ):70%、及び、破断時応力(MB ):260kg/cm2 、降伏時応力(MY ):100kg/cm2 であり、その比MB /MY :2.6であった。その後、軟質透明ポリオレフィンフィルム側の表面に木目導管模様をエンボス加工した。
【0084】
該エンボス加工面にコロナ処理を施した後、エンボス面に着色インキ(昭和シンク株式会社:PE−12)を充填し、艶調整コート(昭和シンク株式会社:OP−A4)を施して化粧シートを得た。
【0085】
(4)得られた化粧シートから、幅5mm×長さ10mmのサンプルを得、荷重5g、上昇温度毎分20℃で170℃まで上昇させつつ延びを測定したところ(TMA測定)、図1(c)に示すように、半硬質塩化ビニルシートより約15℃温度域の高いところで、同様の挙動を示すことがわかった。
【0086】
比較例1
(1)実施例の表面シート及び基材シートとして、延伸倍率3倍の2軸延伸アイソタクチックポリプロピレンの厚さ100μmのシートを用いた。その他は実施例と同様にした。
【0087】
(2)得られた化粧シートのTMA測定を行ったところ、図1(b)に示すように、温度変化に対する物性値の変化が急峻であり、熱成形条件がきわめて限られることがわかった。
【0088】
〔性能評価試験〕
実施例の化粧シートと比較例1の化粧シートとを諸物性において比較した結果を表6に示す。
【0089】
〔試験法〕
1.透明性
ヘイズ値を東洋精機株式会社製の直読式ヘイズメーターにて測定する。
装飾処理無しのポリオレフィン樹脂シート層単層で測定する。
【0090】
2.耐候性
アイスーパーUVテスターにて、100時間の暴露試験を行った後、カッターで化粧シートの表面をこすり、表面シートの剥離を目視にて評価する。プラックパネル温度63℃。
【0091】
3.耐熱性
80°C雰囲気中で3分間加熱し、その前後での変色状態を目視で確認する。
4.Vカット時のシート破断・亀裂
化粧シートの基材シート側を、エチレン・酢酸ビニル共重合体エマルジョンの接着剤を用い、厚さ10mmのラワン合板に接着、積層し、該合板の化粧シート側と反対側に、合板と接着剤層との界面に迄達する断面V字型の条溝を切削し、該条溝内にエチレン・酢酸ビニル共重合体エマルジョンの接着剤を塗布し、該条溝を閉じる様にして合板を折り曲げて合板をL字型(断面)に折り曲げた。
加工時の雰囲気温度は10°Cであった。
【0092】
5.凹凸模様の再現
目視で評価した。
6.接着力
基材シート/表面シートの積層体を幅1cmに切り抜いたサンプルを幅方向と直交する方向に引張速度50mm/min、雰囲気温度20°Cで、両サンプルの引張方向が互いに180°になる様に引張試験を行い、層間界面の剥離時の張力を測定した。
【0093】
7.加熱寸法収縮率
化粧シートを100°C雰囲気中で30分間加熱して、
〔(加熱後の寸法)−(加熱前の寸法)〕×100/(加熱前の寸法)=加熱寸法収縮率(%) を長手方向(MD)、及び幅方向(TD)各々について求めた。
【0094】
【表6】
【0095】
【発明の効果】
本発明の化粧シートの温度−伸び依存性は、約15℃程度温度領域が高いものの、現在用いられている塩化ビニルシートを主材とする化粧シートと同様な温度−伸び依存性を有する。それにより、
▲1▼Vカット加工可能な伸び率、耐引き裂き抵抗、柔軟性を有しており、耐熱性も良好で、印刷を施すことにより、意匠性もアップするという効果を奏する。
▲2▼一般のオレフィン系フィルムに比べて、エンボス加工適性に優れている。
さらに、表面シートの裏面に易接着性ポリプロピレン系樹脂層を配置したことにより、基材シートとの接着性は大幅に改善される。
【図面の簡単な説明】
【図1】素材の違う各種化粧シートの温度−伸びの関係を示すグラフ。
【図2】本発明による化粧シートを説明する断面図である。
【符号の説明】
1…基材シート
2…表面シート
2a…易接着性ポリプロピレン系樹脂層
3…模様
4…易接着層(プライマー層)
5、7…エンボス等の凹凸模様
6…着色インキ
31…被着体(平板)
Claims (3)
- 表面シートである、アイソタクチィクポリプロピレンとアタクチックポリプロピレンの混合系からなる複合立体構造を有する無色又は着色透明な軟質ポリプロピレン系樹脂層と、
アイソタクチィクポリプロピレンとアタクチックポリプロピレンの混合系からなる複合立体構造を有する軟質ポリプロピレン系樹脂とエチレン系不飽和単量体の1種又は2種以上との共重合体からなる易接着性ポリプロピレン系樹脂層と、
主原料が高密度ポリエチレン、熱可塑性エラストマー、着色剤、及び無機充填剤からなる基材シートである着色フィルム、
とを少なくとも有し、基材シート又は表面シートのいずれか又は両方に模様を施してなる化粧シート。 - 前記軟質ポリプロピレン系樹脂が、(A)(イ)マグネシウム、チタン、ハロゲン原子及び電子供与体を必須成分として含有する固体触媒成分、(ロ)有機アルミニウム化合物、及び、(ハ)一般式
- 前記軟質ポリプロピレン系樹脂層として、破断伸び(TB)が400%以上、100%伸長後の残留伸び(PS100)が80%以下、及び破断時応力(MB)と降伏時応力(MY)との比MB/MYが1.0以上である軟質ポリプロピレン系樹脂組成物を用いたことを特徴とする請求項1又は2記載の化粧シート。
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