JP3713858B2 - 自動二輪車のアンチスキッドブレーキ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動二輪車の前輪側のアンチスキッドブレーキ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車や自動二輪車等の車両においては、制動中に車輪がロック状態で走行してしまう(スキッド状態)ことを防止するアンチスキッドブレーキ装置が用いられる場合がある。
【0003】
図4は、自動二輪車に設けられたアンチスキッドブレーキ装置の例を示すものである。図4のアンチスキッドブレーキ装置は、自動二輪車1の前輪2a、後輪2bに固定されている各ディスクブレーキ3a、3bには、キャリパー4a、4bが設けられている。各キャリパー4a、4bには、配管5a、5bの一端が連通されると共に、他端が油圧ユニット(モジュレータ)6に連通する。この油圧ユニット6には、配管5c、5dを介してマスタシリンダ7a、7bが連通し、一方のマスタシリンダ7aには、ハンドルレバー9aが接続され、他方のマスタシリンダ7bには、ブレーキペダル9bが連結される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来のアンチスキッドブレーキ装置は、ソレノイドバルブとポンプブロックとは一体式になった油圧ユニット(モジュレータ)を構成しており、油圧ユニットはその重量が比較的重いため車体中央にレイアウトされ、前輪についてみればマスターシリンダー7aから油圧ユニット6を介してキャリパー4aまでの配管5cおよび5aの長さは約2.0mにおよぶ。
【0005】
しかも、アンチスキッドブレーキ装置の効かない状態でも、このアンチスキッドブレーキ装置用の配管5cおよび5aを利用しており、ハンドルレバー9aを操作したときにマスタシリンダ7aから出力する油圧は上記のように長い配管5cおよび5aを通じてキャリパー4aへ送るので、長い管路中でマスが大きくなり圧力伝搬が遅れやすいのでブレーキ操作感が重くなりブレーキフィーリングが悪くなってしまう。
【0006】
この対策として、従来はフロントブレーキとリアブレーキの油圧ユニットを分離して管路を短くするようにした2モーター、2ポンプの形式のシステムにするのが主流であった(例えば特開平5−105174号参照)。
【0007】
しかしながら、フロントブレーキ用とリアブレーキ用の油圧ユニットを別体に設けた場合に、ポンプとモーターが一体式の油圧ユニットでは、それぞれの油圧ユニット用にポンプとモーターが独自に2個ずつ必要になり、重量が嵩むという問題点がある。例えば前記特開平5−105174号に開示されるように、油圧ポンプとモーターを含む前側の油圧ユニットをフロントフォーク回りに取り付けたのでは、重量バランスが悪くなり操舵性も悪くなる。
【0008】
したがって、油圧ユニットは、なるべく車体中央に置き、フロントとリアを別々に駆動したいのであるが、従来はこのような構成のアンチスキッドブレーキ装置はなかったものである。
【0009】
本発明は、前記従来の問題点を解消するべくなされたものであって、油圧ユニットを車体中央に設けるとともに、ブレーキ操作感を向上できる自動二輪車のアンチスキッドブレーキ装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記課題を解決するため次の構成を有する。
請求項1の発明は、車体フレームの前部にフロントフォークブラケットを介してフロントフォークが上部で支持され、このフロントフォークには、油圧作動のディスクブレーキ装置を備えた前輪を下端部で支持する一方、上方にハンドルに取り付けられたブレーキマスターシリンダーが設けられ、このブレーキマスターシリンダーから前記油圧作動のディスクブレーキ装置への経路の油圧を、バルブユニットの経路切り換えと油圧ポンプユニット発生油圧の作用により間欠的に変化させることにより前輪がロック状態になることを防止する自動二輪車のアンチスキッドブレーキ装置において、前記油圧ポンプユニットを車体中央部に搭載し、ブレーキマスターシリンダーから前輪の前記油圧作動のディスクブレーキ装置への経路には、前記油圧ポンプユニットの発生油圧をディスクブレーキ装置へ切り換え作用させるバルブユニットを設け、前記バルブユニットは、前記車体中央部に搭載した油圧ポンプユニットと別体に形成して、車体フレームの前部にフロントフォーク上部を支持するフロントフォークブラケットに固定したことを特徴とする自動二輪車のアンチスキッドブレーキ装置である。
請求項2の発明は、車体中央部に搭載された油圧ポンプユニットと車体前部のフロントフォークブラケットに固定されたバルブユニットとを弾性体からなるホースで接続したことを特徴とする請求項1に記載の自動二輪車のアンチスキッドブレーキ装置である。
【0011】
請求項1の発明においては、油圧ポンプユニットを車体中央部に搭載し、ブレーキマスターシリンダーから前輪油圧ブレーキへの経路には、前記油圧ポンプユニットの発生油圧を油圧作動のディスクブレーキ装置に切り換え作用させるバルブユニットを前記油圧ポンプユニットとは別体に設け、前記経路とバルブユニットはフロントフォーク回りに配設した。
【0012】
したがって、重量のある油圧ポンプユニットが車体中央に位置し、比較的重量の軽いバルブユニットをフロントフォーク回りに配設したので、車両の重量バランスがよく、かつ、前輪操舵部に重量があまりかからないので、操舵性を害することがない。
【0013】
また、ブレーキマスターシリンダーからブレーキキャリパーまでの油圧経路がフロントフォーク回りに配設しているので、ブレーキレバーを操作したときの経路長が短いので、油圧の伝搬がスムーズであり、操作感(ブレーキフィーリング)が向上する。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図1〜図4を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1〜図2に示すように、この実施形態にかかる自動二輪車は、車体フレーム10の前部のフロントフォーク12に前輪14が支持され、後部のスイングアーム16に後輪18が支持されており、前輪14と後輪18とに、それぞれ油圧作動のディスクブレーキ装置20、22が設けられる。
【0015】
これらの前輪14用のおよび後輪18用ディスクブレーキ装置20および22は、いずれもアンチスキッドブレーキ装置24でアンチスキッド制御されるようになっている。
【0016】
前輪用ディスクブレーキ装置(前輪ディスクブレーキ)20には、ハンドル26の右側端部のブレーキレバー28の操作で作動油圧を発生するブレーキマスターシリンダー30がブレーキレバー28の基部に設けられている。
【0017】
アンチスキッドブレーキ装置24は、ブレーキマスターシリンダー30から前輪ディスクブレーキ20への管路(フロント管路)32の油圧を、油圧ポンプユニット34発生油圧の作用により間欠的に変化させることによりブレーキ時に前輪14がロック状態になることを防止するものである。
【0018】
前記油圧ポンプユニット34は車体中央部に搭載しており、ブレーキマスターシリンダー30から前輪ディスクブレーキ20への管路32の途中には、前記油圧ポンプユニット34の発生油圧を前輪用ディスクブレーキ装置20に切り換え作用させるバルブユニット36を前記油圧ポンプユニット34とは別体に設けている(該管路32は、バルブユニット36を境に上側管路32Aと下側管路32Bともいう)。
【0019】
そして、前記管路32はフロントフォーク12にほぼ沿って設けられており、バルブユニット36はフロントフォーク12の回りに配設し(例えばライトハウスステーの内側でフロントフォークブラケット12Aに固定する)ものである。前輪ディスクブレーキ20は前輪14の両側にそれぞれディスク20A、20Aとキャリパー20B、20Bの設けられたいわゆるダブルディスク式になっていて、前記管路の下側32Bは、フロントフォーク12のブラケット12Aに3ウェイジョイント32Cを介してそれぞれのキャリパー20B、20Bに作動油を送り込むようになっている。
【0020】
前記バルブユニット36を電子制御する電子制御ユニット(ECU)38が車体の適宜位置に設けられ、このECU38には、フロントフォーク12下端部に設けられた前輪14用速度センサ40の検出する前輪速度信号が入力される。また、スイングアーム16の後端部に設けられた後輪18用速度センサ42の検出する前輪速度信号が入力される。また、前記ECU38の制御信号は、モータリレー44を介して油圧ポンプユニット34に向けて出力され、バルブリレー46を介してバルブユニット36に出力される。
【0021】
車体フレーム10においては、ヘッドパイプ10Aから後方にタンクレール部10Bが後ろ下がり傾斜で延在し後端部で下方に向かうメインフレーム部10Cが繋がっている。メインフレーム部10Cの後端部の上部には後ろ上がり傾斜でシートレールフレーム部10Dが延設され、また、該後端部の下部にはスイングアーム16を軸支するピボット軸10Eが設けられる。
【0022】
前記油圧ポンプユニット34はメインフレーム部10Cにシートレールフレーム部10Dの固定されている箇所近傍に設けられ、前記バルブユニット36との間で油圧が行き来する管路(メイン管路)48は、タンクレール部10Bの下方でかつ沿って配設される。
【0023】
なお、後輪用ディスクブレーキ装置(後輪ディスクブレーキ)22用のブレーキマスターシリンダー50は、ピボット軸10E付近に配設され、それからは管路52でポンプユニット34に油圧が送られる。
【0024】
前輪ディスクブレーキ20とアンチスキッドブレーキ装置24との油圧経路図を図2に示す。図2に示すように、ブレーキマスターシリンダー30から上側管路32Aがソレノイドバルブ54の入り側に繋がり、ソレノイドバルブ54の出側が下側管路32Bに繋がる。また、ソレノイドバルブ54の入り側および出側間にバイパス経路56および逆止弁58が設けられ、前輪用ディスクブレーキキャリパ20Bからマスターシリンダー30へソレノイドバルブ54を介さずに油が戻れるようになっている。
【0025】
ソレノイドバルブ54は、電磁ソレノイド54Aにバルブリレー46からの制御信号の入力で弁体54Bが切り替え作動するものである。ソレノイドバルブ54においては、非作動時にはマスターシリンダー30からの油圧をそのまま前輪ディスクブレーキ20に送り、一方、作動時にはマスターシリンダー30からの油圧は遮断しかつ前輪ディスクブレーキ20の油圧はメイン管路48のIN側48Aを介して、ポンプユニット34のリザーバタンク60に送る。
【0026】
また、前記ポンプユニット34には、前輪のアンチスキッド用油圧を発生するポンプ34Aとその駆動用モーター34Bとが設けられており、該ポンプ34Aの吐出側は逆止弁62を介してメイン管路48のアウト側48Bからバルブユニット36に入力される。バルブユニット36では、このアウト側48B管路を逆止弁64を介してソレノイドバルブ54の入り側に繋いでいる。なお、メイン管路のIN側48Aおよびリザーバタンク60は、逆止弁66を介して、ポンプ34Aの吸込側に繋いでいる。
【0027】
次に、実施形態にかかるブレーキ装置およびアンチスキッドブレーキ装置の作動を説明する。
通常時には、ソレノイドバルブ54には作動信号が入力されないので、弁体54Bは図2の状態であり、ブレーキのマスターシリンダー30からの油圧発生は管路32の上側32Aからソレノイドバルブ54をそのまま伝わって前記ディスクブレーキ20の各キャリパ20B、20Bに伝わり、前輪14の制動を行う。
【0028】
この際に、ECU38は、前輪速度センサ40の検出前輪速度信号と、後輪速度センサ42検出信号およびその他の信号や条件から前輪をアンチスキッド作動をさせるか否かを判断する。ECU38が、前輪14のロック状態あるいはロックしそうな状態が生じてアンチスキッド作動をさせると判断したときには、ソレノイドバルブ54を切り換え作動させて、前輪ディスクブレーキ20の作動油圧を管路のIN側48からリザーバタンク60に一時的に戻す。これにより、前輪14の接地力を回復する。また、同時にポンプユニット34のモーター34Bがポンプ34Aを駆動して油圧を発生する。
【0029】
そして、ECU38は接地力が回復したと判断したときには、ソレノイドバルブ54を元に戻して、ポンプユニット34からの油圧をソレノイドバルブ54を介して前輪ディスクブレーキユニット20に供給し、これにより、ブレーキキャリパーの油圧を上昇させて、制動力を復活する。
【0030】
アンチスキッドブレーキ装置では、上記のようにソレノイドバルブ54の切り換えおよびポンプユニット34の作動でアンチスキッド作動をする。
【0031】
実施形態のアンチスキッドブレーキ装置24によれば、油圧ポンプユニット34とバルブユニット36が分離しており、ブレーキマスターシリンダー30からバルブユニット36さらには前輪ディスクブレーキ20が管路32で繋がれた状態でフロントフォーク12など前輪操舵機構周辺に設けられているので、前記マスターシリンダー30から前輪ディスクブレーキ20間での管路32(32Aおよび32B)が最短になる。しかも、管路32の長さは、従来のアンチスキッドブレーキ装置がない車両と同じ程度の長さになる。
したがって、管路32の経路が短くマスが小さいのでブレーキ操作油圧がダイレクトにキャリパー20B,20Bに伝わり、よって、ブレーキ操作フィーリングを阻害することがない。
【0032】
また、アンチスキッドブレーキ装置が作動した場合には、ポンプユニット34からの油圧はソレノイドバルブ54の切り換えでブレーキキャリパの外にマスターシリンダー30へも断続的にかかり、ブレーキレバー28は押し戻される。
ここで、ポンプユニット34は車体中央に設けられて、管路48を介してバルブユニット36に油圧を送っているので、管路48の長さが長く、その長さ自体でダンピング効果が期待できる。管路48がゴム製など弾性体からなるホースであれば、そのフレキシビリティで圧力変動を弱めることができ、ブレーキレバー28の反力を押さえることができる。
【0033】
また、図3(a)に示すような、通常のアンチスキッドブレーキ装置24では、ポンプユニット34の吐出脈動が強くなるため、ダンピングチャンバー70を設ける必要も考えられるが、管路48が弾性体からなるホースであれば、そのフレキシビリティでダンピングチャンバーの代わりを効果的にすることができ、図3の(b)に示すように、ダンピングチャンバーを省略することができ、つまり、簡素化、小型化、コストダウンがさらに可能になる。
【0034】
ポンプユニット34においては、後輪用アンチスキッドブレーキの油圧も発生している。すなわち、駆動モータ34Bでポンプ34Aを駆動する外、該モータ34Bは後輪のアンチスキッドブレーキ用のポンプ34Cも駆動するので、モータはひとつで済む。したがって、ポンプユニットを小型化できる。
【0035】
【発明の効果】
以上説明した通り本発明によれば、バルブユニットを前記油圧ポンプユニットとは別体に設け、前記経路とバルブユニットはフロントフォーク回りに配設し、しかも、重量のある油圧ポンプユニットが車体中央に位置し、比較的重量の軽いバルブユニットをフロントフォーク回りに配設したので、車両の重量バランスがよく、かつ、前輪操舵部に重量があまりかからないので、操舵性を害することがない。
また、ブレーキレバーを操作したときの経路長が短いので、油圧の伝搬がスムーズであり、操作感(ブレーキフィーリング)が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態にかかるアンチスキッドブレーキ装置が搭載された自動二輪車を示す説明図である。
【図2】図1のアンチスキッドブレーキ装置の油圧系統説明図である。
【図3】(a)、(b)はそれぞれ図1のアンチスキッドブレーキ装置の作用説明図である。
【図4】従来のアンチスキッドブレーキ装置の説明図である。
【符号の説明】
12 フロントフォーク
14 前輪
20 前輪ディスクブレーキ
30 ブレーキマスターシリンダー
32 管路(フロント側)
34 油圧ポンプユニット
36 バルブユニット
48 管路(メイン管路)
54 ソレノイドバルブ
Claims (2)
- 車体フレームの前部にフロントフォークブラケットを介してフロントフォークが上部で支持され、このフロントフォークには、油圧作動のディスクブレーキ装置を備えた前輪を下端部で支持する一方、上方にハンドルに取り付けられたブレーキマスターシリンダーが設けられ、
このブレーキマスターシリンダーから前記油圧作動のディスクブレーキ装置への経路の油圧を、バルブユニットの経路切り換えと油圧ポンプユニット発生油圧の作用により間欠的に変化させることにより前輪がロック状態になることを防止する自動二輪車のアンチスキッドブレーキ装置において、
前記油圧ポンプユニットを車体中央部に搭載し、
ブレーキマスターシリンダーから前輪の前記油圧作動のディスクブレーキ装置への経路には、前記油圧ポンプユニットの発生油圧をディスクブレーキ装置へ切り換え作用させるバルブユニットを設け、
前記バルブユニットは、前記車体中央部に搭載した油圧ポンプユニットと別体に形成して、車体フレームの前部にフロントフォーク上部を支持するフロントフォークブラケットに固定したことを特徴とする自動二輪車のアンチスキッドブレーキ装置。 - 車体中央部に搭載された油圧ポンプユニットと車体前部のフロントフォークブラケットに固定されたバルブユニットとを弾性体からなるホースで接続したことを特徴とする請求項1に記載の自動二輪車のアンチスキッドブレーキ装置。
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