JP3712625B2 - 振動源を有する機器の防振取付構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術の分野】
本発明は、振動源を有する機器を壁面に取り付けるための防振取付構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
給湯器等のように内部にポンプ等の振動源を有する機器を壁面に取り付ける場合、当該機器の振動が壁面に伝わらないように図6(a)に示す防振取付構造21を用いて取り付けることが行われている。この防振取付構造21は、図6(b)に示すように、図1に示す給湯器2等を壁面Wに吊り下げることにより取り付けるものである。
【0003】
従来の防振取付構造21は、図6(a)及び(b)に示すように、壁面Wに取り付けられるボルト27と、このボルト27の周囲を囲む円形の取付孔24を備え機器2側に取り付けられる板状の機器取付部材23と、前記ボルト27の周囲に設けられる円筒状のスリーブ26と、このスリーブ26と前記取付孔24との間に介在される略円筒形の弾性部材25とを備えている。また、図6(b)に示すように、ワッシャ28を介してナット29をボルト27に螺着することによってスリーブ26が壁面Wに固定される。このような従来の防振取付構造21によれば、機器2は前記機器取付部材23によって弾性部材25及びスリーブ26を介してボルト27に支持されるため、前記弾性部材25が前記機器2の振動を吸収し、壁面Wに伝わる前記機器2の振動が低減される。
【0004】
上記構成においては、機器2の重量による荷重はボルト27を介して前記機器取付部材23と前記スリーブ26との間の弾性部材25にかかる。しかしながら、前記取付孔24が前記弾性部材25と接触する面積は前記機器取付部材23の板厚分のみであり、前記ボルト27が前記弾性部材25と接触する面積は前記ボルト27の上端部のみである。このため、機器2の重量は、前記弾性部材25の前記機器取付部材23の板厚と前記ボルト27の上端部とが対向する点に集中する。
【0005】
従って、従来の防振取付構造21では取付孔24とスリーブ26との間の弾性部材25は両部材の対向する点で強く圧縮されるため、弾性部材25の防振効果が減少して機器2の振動が壁面Wに伝わるおそれがある。また、このように狭い点に機器2の荷重が集中すると、取付孔24とスリーブ26との間の弾性部材25が破損するおそれがあり、弾性部材25の耐久性に問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、振動源を有する機器を壁面に取り付けるための防振取付構造の改良を目的とし、さらに詳しくは前記不都合を解消するために、機器の振動が壁面へ伝達されるのを確実に防止すると共に、弾性部材の耐久性を向上させる防振取付構造を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明の防振取付構造は、振動源を有する機器を壁面に取り付けるための防振取付構造であって、前記機器に取り付けられ前後方向に貫通する取付孔を有する機器取付部材と、前記壁面から突出して該壁面に取り付けられ前記取付孔に挿通される棒状の係止部材と、前記取付孔と前記係止部材との間に介在される弾性部材と、前記係止部材と前記弾性部材との間に介在され前記係止部材よりも左右方向に幅広に形成された平面部を有する筒状のスリーブとを備え、前記取付孔は少なくとも上方の内周面に前記係止部材よりも左右方向に幅広で水平に形成された平面状のフランジ部を有し、前記弾性部材が筒状に形成され前記取付孔の少なくとも前記壁面側で外側に突出する突出部が設けられ、前記スリーブの前記壁面側で外側に突出し該スリーブの後端部よりも前方に配設された抜け止め部が設けられ、前記弾性部材が前記取付孔に嵌合されると共に前記突出部によって前記取付孔に係合され、前記スリーブが前記弾性部材に嵌合されると共に前記抜け止め部によって前記弾性部材に係合され、前記機器取付部材と前記弾性部材と前記スリーブとが一体に組み付けられ、前記機器取付部材が前記取付孔の前記フランジ部と前記弾性部材と前記スリーブとを介して前記係止部材に係止されて壁面に取り付けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明の防振取付構造によれば、前記機器は前記機器取付部材の取付孔と前記係止部材との間に介在される前記弾性部材を介して壁面に取り付けられる。また、前記取付孔の上方の内周面は前記係止部材よりも幅広に形成された直線部が形成されている。また、前記係止部材と前記弾性部材との間には前記係止部材よりも幅広に形成された平面部を有する支持部材が介在されている。このため、前記弾性部材にかかる前記機器の荷重は、前記係止部材よりも幅広の直線部と平面部との間で支持されるため、該弾性部材の一部が強く圧縮されることがない。従って、前記弾性部材により十分な防振効果を得ることができ、機器の振動を壁面に伝えないようにすることができる。また、前記弾性部材の狭い箇所に荷重が集中することがないため、弾性部材の耐久性を向上させることができる。
【0009】
また、本発明の防振取付構造においては、前記取付孔の直線部に平面状のフランジ部を設け、前記機器取付部材を該フランジ部と前記弾性部材と前記支持部材とを介して前記係止部材に係止して壁面に取り付けている。このように前記取付孔に前記フランジ部を設けているので、前記弾性部材にかかる前記機器の荷重は平面状のフランジ部と平面部を有する支持部材とにより広い面積で支持される。従って、前記フランジ部と前記平面部とにより荷重が分散されてさらに防振効果が向上し、弾性部材の耐久性も向上する。
【0010】
また、本発明の防振取付構造は、前記弾性部材が筒状に形成され前記取付孔の少なくとも前記壁面側で外側に突出する突出部が設けられ、前記支持部材が筒状に形成されたスリーブで構成され、該スリーブの前記壁面側で外側に突出する抜け止め部が設けられ、前記弾性部材が前記取付孔に嵌合されると共に前記突出部によって前記取付孔に係合され、前記スリーブが前記弾性部材に嵌合されると共に前記抜け止め部によって前記弾性部材に係合され、前記機器取付部材と前記弾性部材と前記スリーブとが一体に組み付けられている。
【0011】
このように、前記機器取付部材と前記弾性部材と前記スリーブとを一体に組み付けることにより、前記機器取付部材を壁面に取り付ける際の作業が容易となる。また、前記弾性部材には前記突出部が設けられ、前記スリーブには前記抜け止め部が設けられているので、前記機器取付部材を壁面に設けられた係止部材に取り付ける際に前記スリーブが係止部材に当接した状態で前記機器取付部材を壁面側に移動させた場合であっても、前記弾性部材及び前記スリーブが前記機器取付部材から外れることがないので、機器を壁面に取り付ける作業が容易となる。
【0012】
また、前記スリーブの前記抜け止め部を該スリーブの後端部よりも前方に配設することにより、該抜け止め部が前記スリーブの後端部から突出しないため、該スリーブを壁面に取り付けた際に前記抜け止め部が壁面に当接することがない。従って、壁面には前記スリーブの後端部が当接するため、前記スリーブを壁面に安定して取り付けることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の防振取付構造の実施形態の一例について、図1乃至図5を参照して説明する。図1は本発明の一実施形態の防振取付構造を用いて機器を壁面に取り付ける状態を示す説明図、図2(a)は本実施形態の防振取付構造を示す正面図、図2(b)は壁面側から防振取付構造を見た場合の要部拡大図、図2(c)は図2(b)のc−c線断面図、図2(d)は防振取付構造の分解斜視図、図3は本実施形態の防振取付構造を壁面に取り付けた状態を示す説明的断面図、図4(a)乃至(c)は他の実施形態の防振取付構造を示す説明図、図5(a)は係止部材として木ねじを用いた状態を示す説明的断面図、図5(b)は係止部材として木ねじ及び埋込補強部材を用いた状態を示す説明的断面図である。
【0014】
本実施形態の防振取付構造1は、図1に示すように、給湯器(機器)2を壁面Wに取り付けるものであり、給湯器2の裏面の上下2箇所に設けられている。この給湯器2の内部には、温水を供給するためのポンプ(図示せず)が設けられており、当該ポンプを作動させると振動が発生するため、防振取付構造1により給湯器2の振動が壁面Wに伝達しないように給湯器2を壁面Wに取り付けている。
【0015】
防振取付構造1は、図2(a)に示すように、給湯器2に取り付けられる板状の取付金具(機器取付部材)3と、取付金具3の幅方向の左右2箇所に設けられた取付孔4に取り付けられているゴム製のブッシュ(弾性部材)5と、このブッシュ5の内周面に嵌合されるスリーブ(支持部材)6と、壁面Wに埋設されているボルト(係止部材)7とを備えている。
【0016】
取付金具3は、図2(c)及び(d)に示すように、金属板を2段に折り曲げて成形することにより、壁面W近傍に並行するように取り付けられる壁面取付部8と、壁面取付部8から前方に延設される段差部9と、この段差部9の前端縁から下方に延設され給湯器2の裏面に取り付けられる機器取付部10とを備えている。また、壁面取付部8にはその左右両端部近傍に設けられ、正面視で略長方形に形成された取付孔4が設けられており、この取付孔4には、図2(d)に示すように合計4箇所に前方に突出するフランジ部11が設けられている。このフランジ部11は、それぞれ平面状に形成されている。
【0017】
ブッシュ5は、ゴムを成形することにより大略角筒状に形成されている。また、ブッシュ5は、図2(c)及び(d)に示すように、フランジ部11の内周面に当接する角筒部12と、フランジ部11の前後端部から外側へ突出する突出部13を備えている。このように、ブッシュ5は、角筒状に形成された角筒部12の前後にその外側に突出する突出部13が設けられているため、図2(c)に示すように、突出部13が取付金具3のフランジ部11に係合することにより取付金具3に抜け止めされた状態で一体に組み付けられる。
【0018】
スリーブ6は、図2(b)乃至(d)に示すように、金属板を略角筒状に成形したものであり、上面に平面部6aを有し、ブッシュ5の内周面に嵌挿される。また、図2(c)に示すように、スリーブ6の前後方向の長さはブッシュ5の前後方向の長さよりも若干長めに形成されている。スリーブ6の後端部には、図2(b)乃至(d)に示すように、外側に突出してブッシュ5の後端面に係合するつめ部(抜け止め部)14が形成されている。このつめ部14は、スリーブ6の後端面よりも前方に配設され、この後端面から後方に突出しないように形成されている。そして、スリーブ6はブッシュ5の内周面にその後方から嵌挿されて、図2(c)に示すようにブッシュ5と共に取付金具3に一体に組み付けられる。
【0019】
次に、上記構成の防振取付構造1を用いて給湯器2を壁面Wに取り付ける手順について、図1及び図3を参照して説明する。まず、図1に示すように、防振取付構造1を壁面に取り付ける際の位置決めを行い、ボルト7を埋め込む箇所を決定し、ボルト7を壁面に埋め込んで固定する。また、図3に示すように、取付金具3の機器取付部10を給湯器2の裏面に取付ビス15を用いて取り付ける。次に、ボルト7にスリーブ6が係止されるように、防振取付構造1が取り付けられた給湯器2を壁面Wに仮止めする。このとき、ブッシュ5は突出部13によって取付金具3に係合しており、スリーブ6はつめ部14によってブッシュ5の後端部に係止されているため、例えば取付作業時にボルト7がスリーブ6やブッシュ5に当接した場合であっても、スリーブ6及びブッシュ5は取付金具3から外れることがない。そして、図3に示すように、ワッシャ16を介してボルト7にナット17を螺着することにより、壁面Wとワッシャ16との間にスリーブ6を固定して防振取付構造1を壁面に取り付ける。
【0020】
本実施形態の防振取付構造1によれば、上記手順により給湯器2が壁面Wに取り付けられる。このとき、図3に示すように、給湯器2の荷重はボルト7を介してフランジ部11とスリーブ6の平面部6aとの間のブッシュ5の角筒部12にかかる。ブッシュ5の角筒部12においては、その上下から荷重がかかる面積がフランジ部11及び平面部6aによって広くなっているので、角筒部12にかかる荷重が分散される。従って、ブッシュ5は部分的に強く圧縮されることがないため、給湯器2の振動を十分に吸収することができると共に、ブッシュ5の耐久性が向上する。
【0021】
また、スリーブ6のつめ部14はその後端部から突出していないため、壁面Wに取り付けられた際につめ部14が壁面Wに当接することがない。このため、スリーブ6は常に壁面Wに垂直に取り付けられるので、スリーブ6を常に水平に保つことができる。従って、フランジ部11とスリーブ6との間のブッシュ5の角筒部12には均等に給湯器2の荷重がかかるので、ブッシュ5による防振効果を安定して得られると共に、ブッシュ5の耐久性が向上する。
【0022】
さらに、スリーブ6の前後方向の長さをブッシュ5と同一にし、或いはブッシュ5の長さよりも長くしてブッシュ5の機器2側からその端面を突出させることにより、ナット17をボルト7に締め付けた場合であってもブッシュ5が圧縮されることがないので、ブッシュ5の防振効果を維持することができる。
【0023】
尚、上記実施形態では、取付孔4を略長方形とし、スリーブ6を角筒状としているが、これに限らず、上方のフランジ部11を平面状にすることができ、スリーブ6の上面に平面部6aを形成することができればその他の形状としてもよい。例えば、スリーブ6の端面形状を図4(a)に示すように略三角形状とすると共に取付孔4(図示せず)をスリーブ6の形状に対応して略三角形状としてもよい。また、同様に、スリーブ6の端面形状を図4(b)に示すように上方が平面に形成された円形状としてもよく、図4(c)に示すように略六角形状としてもよい。さらに、上記実施形態では支持部材としてスリーブ6を用いているが、このように筒状の部材ではなく金属等で形成された平面状の板材としてもよい。この場合、ブッシュ5の角筒部12の内部上面に当該板材を固着することにより、上記スリーブ6と同様の効果を得ることができる。
【0024】
また、上記実施形態では、フランジ部11を取付金具3に一体に形成しているが、これに限らず、フランジ部11を筒状の別部材で形成して取付孔4に嵌合させてもよい。また、上記実施形態ではフランジ部11を設けているが、取付金具3がの板厚が厚いものであれば、フランジ部を設けることなく取付孔4の上方の内周面を直線状にするだけでよい。このように板厚の厚い取付金具3において取付孔4の上方の内周面が直線状となっていれば、当該直線状の部分とスリーブ6との間に介在されるブッシュ5の狭い箇所に応力が集中することがないので、フランジ部11を設けることなくブッシュ5の防振効果を維持することができる。
【0025】
また、本実施形態の防振取付構造1においては、取付金具3を壁面Wに取り付ける際に係止部材としてボルト7を用いているが、これに限らず、壁面Wの内部が木材により形成されているときは、図5(a)に示すように木ねじ18を用いてもよい。また、壁面Wがコンクリートにより形成されている場合や木質パネル等で形成されている場合は、図5(b)に示すように木ねじ18と埋込補強部材(オールプラグ)19を用いてもよい。この場合、まず壁面Wに埋込補強部材19を打ち込むための下穴を開け、この下穴に埋込補強部材19を打ち込み、木ねじ18あるいはボルト(図示せず)を埋込補強部材19に螺着させる。これにより、防振取付構造1を確実に壁面Wに取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の防振取付構造を用いて機器を壁面に取り付ける状態を示す説明図。
【図2】(a)は本実施形態の防振取付構造を示す正面図、(b)は壁面側から防振取付構造を見た場合の要部拡大図、(c)は(b)のc−c線断面図、(d)は防振取付構造の分解斜視図。
【図3】本実施形態の防振取付構造を壁面に取り付けた状態を示す説明的断面図。
【図4】本発明の他の実施形態の防振取付構造を示す説明図。
【図5】(a)は係止部材として木ねじを用いた状態を示す説明的断面図、(b)は係止部材として木ねじ及び埋込補強部材を用いた状態を示す説明的断面図。
【図6】従来の防振取付構造の正面図及びb−b線断面図。
【符号の説明】
1…防振取付構造、2…給湯器(機器)、3…取付金具(機器取付部材)、4…取付孔、5…ブッシュ(弾性部材)、6…スリーブ(支持部材)、6a…平面部、7…ボルト(係止部材)、11…フランジ部(直線部)、W…壁面。
Claims (1)
- 振動源を有する機器を壁面に取り付けるための防振取付構造であって、
前記機器に取り付けられ前後方向に貫通する取付孔を有する機器取付部材と、前記壁面から突出して該壁面に取り付けられ前記取付孔に挿通される棒状の係止部材と、前記取付孔と前記係止部材との間に介在される弾性部材と、前記係止部材と前記弾性部材との間に介在され前記係止部材よりも左右方向に幅広に形成された平面部を有する筒状のスリーブとを備え、前記取付孔は少なくとも上方の内周面に前記係止部材よりも左右方向に幅広で水平に形成された平面状のフランジ部を有し、
前記弾性部材が筒状に形成され前記取付孔の少なくとも前記壁面側で外側に突出する突出部が設けられ、前記スリーブの前記壁面側で外側に突出し該スリーブの後端部よりも前方に配設された抜け止め部が設けられ、前記弾性部材が前記取付孔に嵌合されると共に前記突出部によって前記取付孔に係合され、前記スリーブが前記弾性部材に嵌合されると共に前記抜け止め部によって前記弾性部材に係合され、前記機器取付部材と前記弾性部材と前記スリーブとが一体に組み付けられ、前記機器取付部材が前記取付孔の前記フランジ部と前記弾性部材と前記スリーブとを介して前記係止部材に係止されて壁面に取り付けられていることを特徴とする防振取付構造。
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