JP3712614B2 - チタン基複合材料、その製造方法およびエンジンバルブ - Google Patents

チタン基複合材料、その製造方法およびエンジンバルブ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種機械の高強度部材に利用できるチタン基複合材料およびその製造方法に関するものである。詳しくは自動車等のエンジンバルブのように、耐熱性の要求される部材に好適なチタン基複合材料およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
チタン合金は、高い比強度及び優れた靱性を有するため、各種の機械部材に用いられている。例えば、米国ならびに英国を中心に、軍事、宇宙及び航空機分野を主として、チタン合金が利用されてきた。また、これらの分野では耐熱性に優れた耐熱チタン合金の開発も盛んである。但し、このような耐熱チタン合金は性能を重視して開発されたため、コスト高で量産性に欠けた。また、耐熱チタン合金は、溶解及び成形が難しく、歩留りも低かった。従って、このようなチタン材料は、限られた分野においてのみ使用されてきた。
【0003】
ところが、最近、機械の高性能、軽量化の要求が増すにつれ、チタン材料、特に耐熱性に優れたチタン材料が、自動車等の一般的な機械の分野で見直されている。このような耐熱性に優れたチタン材料の一例として、自動車用のエンジン・バルブについて、以下説明する。
【0004】
従来、自動車用のエンジン・バルブは、エンジンの吸気口及び排気口に設けられており、エンジンの性能、例えば燃費、効率及び出力などの特性を左右する重要な部品である。また、エンジンのバルブは、600℃を超える高温になる。特に、排気系のバルブ(エキゾースト・バルブ)は、吸気系のバルブ(インテーク・バルブ)より遙かに高い温度になる。例えば、量産エンジンであってもエキゾースト・バルブは高温の排気にさらされるため、800℃前後にもなる場合もある。従って、エキゾースト・バルブは、優れた耐熱性が要求されるのである。従来の量産用エキゾースト・バルブは、JIS規格SUH35などの耐熱鋼を使用していた。
【0005】
しかし、SUH35などの耐熱鋼をバルブのような往復運動部品に用いると、比重が大きいため、その慣性重量が大きくなる。このため、最高回転数が制限され、またスプリング荷重を高くする必要があるからフリクションが増加することにもなり、エンジンの高性能化の妨げとなる。
【0006】
そこで、比強度等にすぐれたチタン材料をエンジン・バルブへ利用することが考えられる。チタン材料は、軽量であり、かつ機械的性質に優れるため、非常に魅力的な材料である。チタン材料をエンジン・バルブに適用すると、慣性重量の低減、高出力化及び燃費の向上が可能となる。このため、レーシングカー用エンジン・バルブには、早くからチタン材料が採用されてきた。
【0007】
しかし、コスト面から、チタン材料は量産用エンジン・バルブへ採用されなかった。特に、従来のチタン材料は、その使用限界温度が600℃程度であり、エキゾースト・バルブのように高温域で使用される部材には、採用が困難であった。
【0008】
次に、チタン材料の耐熱性について検討する。一般に、チタン合金の耐熱性は、組織構造によって支配される。組織構造は、合金組成、加工温度、加工度及び加工後の熱処理条件によって決定される。特に、加工温度による組織構造への影響が大きい。
【0009】
例えば、ケイ素をチタン合金に含有させて、チタン材料の耐熱性を高める場合がある。この場合、β変態点とケイ素化合物(シリサイド)の固溶温度との関係を考慮して、加工温度を決定する必要がある。具体的には、β変態点がシリサイドの固溶温度より高い場合、β変態点以上の高温でチタン合金(例えば、Ti−Al−Sn−Zr−Nb−Mo−Si系のチタン合金)を熱間加工すると、粗大な針状組織が形成されてしまう。この針状組織は、鍛造割れ、延性の低下及び低サイクル疲労特性の悪化の原因となって好ましくない。
【0010】
一方、β変態点以下での加工は、変形抵抗が大きく、一般に困難である。この例からも解るように、チタン材料の耐熱性向上を図ると加工性が低下する。従って、耐熱性と加工性の両立を図るのは困難である。このような課題を解決し、チタン材料の耐熱性等を一層向上させるべく、種々の提案が為されており、例えば、下記特許文献等がある。
【0011】
a.特許文献1には、微量のCを含有させたAl−Sn−Zr−Nb−Mo−Si系チタン合金が開示されている。このチタン合金は、Cを微量添加することにより、熱処理及び熱間加工の温度範囲であるα+β領域を拡大させ、耐熱性、熱処理性及び熱間加工性を高めている。
【0012】
しかし、このチタン合金の場合、十分な高温引張強度および疲労特性が得られる温度(使用限界温度)は600℃程度である。また、このチタン合金は、溶解、鋳造及び鍛造を基本プロセスとして製造される。このため、高コストになり、自動車部品のように低コストが要求される量産品には適さない。
【0013】
また、α+β領域が拡大しているものの、シリサイドの固溶温度はβ変態点より低い。このため、β変態点より高温で熱間加工を行うと、粗大な針状組織が形成されてしまう。これを回避するため、その公報では、結局、β変態点以下の温度で加工を行っている。従って、そのチタン合金は、材料特性においてバランスのとれたbi−modal組織を形成しているものの、依然として加工抵抗が大きく、熱間加工性が十分に改善されていない。
【0014】
b.特許文献2には、Al−Sn−Zr−Nb−Mo−Si系チタン合金で、特にMoを多量に添加したものが開示されている。これにより、合金の耐熱性を610℃程度まで向上させている。
【0015】
しかし、この場合でも、特許文献1のチタン合金と同様、耐熱性が不十分である。しかも、多量のMoの添加は、高温引張強度の低下を招くので好ましくない。
【0016】
さらに、C、Y、B、希土類元素及びSの少なくとも1種を総計で1%含有させたチタン合金が開示されている。これにより、耐熱性、具体的にはクリープ特性を向上させている。この場合でも、十分なクリープ特性を得ることができるのは転位クリープが支配的な600℃ぐらいまでであり、耐熱性が不十分である。特に、拡散も関与し始める800℃前後の高温域では十分なクリープ特性が得られない。
【0017】
また、何れの場合も、溶解、鋳造及び鍛造を基本プロセスとしているため、高コストになり、量産部品等には適する材料ではない。
【0018】
c.非特許文献1には、溶解法と急冷凝固法を用いた、ホウ化チタンウイスカーを複合化させたチタン基複合材料も報告されている。この文献によれば、このチタン基複合材料により、強度、剛性及び耐熱性について優れた特性が得られるとされている。
【0019】
しかし、ホウ化チタンウイスカーの分散が不均一であり、高温域における高サイクル疲労特性が低い。この高温域における高サイクル疲労特性は、高温クリープ特性と共に自動車用エンジンのエキゾースト・バルブ等の材料に要求される重要な特性である。従って、エキゾースト・バルブ等には適する材料ではない。
【0020】
また、このチタン基複合材料は、溶解法あるいは急冷凝固法を基本プロセスとしているため、高コストになる。従って、このチタン基複合材料も、耐熱性、コストの面から自動車部品等の量産部品への利用は困難である。
【0021】
d.特許文献3には、α型、α型+β型、β型のチタン合金からなるマトリックスと、5〜50体積%のホウ化チタン固溶体とからなるチタン基複合材料が開示されている。このチタン基複合材は、チタン合金と本質的に反応しにくいホウ化チタン固溶体を強化粒子として選定し、強度、剛性、疲労特性、耐摩耗性及び耐熱性を向上させている。
【0022】
しかし、この場合も、チタン基複合材料の610℃を超える高温域での特性については記載されていない。
【0023】
e.特許文献4には、熱間加工温度と熱処理温度を最適化して、ステム部、フィレット部及びヘッド部を成形加工したチタン・バルブが開示されている。このチタン・バルブは、熱間加工と熱処理とをうまく組合せて所望の組織構成を得ている。これにより、エンジンバルブに要求される耐熱性等を満足させている。
【0024】
しかし、600℃を超える高温域での耐熱性が不足している。また、耐疲労性が重要視されるステム部は、β変態点より低い温度で熱間加工成形されているため、変形抵抗の高いα相の存在により、熱間加工が困難で量産性に欠ける。
【0025】
【特許文献1】
特公平4−56097号公報(登録1772182号)
【特許文献2】
特開平4−202729号公報
【特許文献3】
特開平5−5142号公報
【特許文献4】
特許2523556号公報
【非特許文献1】
Preparing Damage−Tolerant Titanium−Matrix Composites、JOM、Nov.1994、P68
【0026】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものである。つまり、熱間加工性、強度、クリープ特性、疲労特性及び耐摩耗性に優れるチタン材料を提供することを目的とする。特に、610℃を超えるような高温域での耐熱性に優れた従来にないチタン材料を提供することを目的とする。さらに具体的には、熱間加工性、耐熱性、量産性等に優れたチタン基複合材料およびその製造方法を提供するものである。
【0027】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、この課題を解決すべく鋭意研究し、各種系統的実験を重ねた結果、本発明を為すに至った。つまり、本発明者らは、チタン合金からなるマトリックスと、該マトリックス中に分散されるチタン化合物粒子ならびに希土類化合物粒子とからなるチタン基複合材料において、マトリックスの組成およびチタン化合物粒子ならびに希土類化合物粒子の占有量の最適化を図り、熱間加工性、耐熱性、量産性等に優れるチタン基複合材料を発明するに至ったものである。
【0028】
すなわち、本発明のチタン基複合材料は、3.0〜7.0質量%のアルミニウム(Al)と2.0〜6.0質量%のスズ(Sn)と2.0〜6.0質量%のジルコニウム(Zr)と0.1〜0.4質量%のケイ素(Si)と0.15〜0.5質量%の酸素(O)と残部がチタン(Ti)および不可避不純物とからなるマトリックスと、該マトリックス中に分散された1〜10体積%を占めるチタン化合物粒子とからなることを特徴とする。
【0029】
また、本発明のチタン基複合材料は、3.0〜7.0質量%のアルミニウムと2.0〜6.0質量%のスズと2.0〜6.0質量%のジルコニウムと0.1〜0.4質量%のケイ素と0.15〜0.5質量%の酸素と残部がチタンおよび不可避不純物とからなるマトリックスと、該マトリックス中に分散された3体積%以下を占める希土類化合物粒子とからなることを特徴とする。
【0030】
さらに、本発明のチタン基複合材料は、3.0〜7.0質量%のアルミニウムと2.0〜6.0質量%のスズと2.0〜6.0質量%のジルコニウムと0.1〜0.4質量%のケイ素と0.15〜0.5質量%の酸素と残部がチタンおよび不可避不純物とからなるマトリックスと、該マトリックス中に分散された1〜10体積%を占めるチタン化合物粒子および3体積%以下を占める希土類化合物粒子とからなることを特徴とする。
【0031】
本発明のチタン基複合材料のマトリックス中に含まれるアルミニウム、スズ、ジルコニウム、ケイ素および酸素は、その全量がチタンに固溶してチタン合金を形成していると、より好ましい。
【0032】
本発明のチタン基複合材料は、熱間加工性に優れる。しかも、強度、クリープ特性、疲労特性及び耐摩耗性は、室温ではもとより、610℃を超えるような高温域においても優れる。例えば、800℃という極めて高温域においても、これらの特性が優れることは、特筆すべきことである。このような優れた特性が得られる理由は必ずしも明らかではないが、次のように考えられる。
【0033】
アルミニウムは、マトリックスであるチタン合金のβ変態温度を上昇させて、高温域までマトリックス中のα相を安定に存在させる元素である。従って、アルミニウムは、チタン基複合材料の高温強度を向上させる元素である。また、アルミニウムは、マトリックス中のα相に固溶して、マトリックスであるチタン合金の高温強度やクリープ特性をより向上させる元素である。
【0034】
しかし、アルミニウムの含有量が3.0%未満であると、高温域で、チタン合金のα相が十分に安定化しない。またアルミニウムのα相への固溶量も不十分となる。従って、高温強度及びクリープ特性の向上があまり望めない。一方、アルミニウムの含有量が7.0質量%を超えると、Ti3Alが析出し、チタン基複合材料が脆化してしまう。
【0035】
なお、高温強度とクリープ特性を確実に向上させるため、アルミニウムの含有量は4.0〜6.5質量%であると、一層好適である。
【0036】
スズおよびジルコニウムはともに中性元素ではあるが、アルミニウムと同様に、高温においてもα相を安定に存在させる。しかも、α相に固溶して高温強度及びクリープ特性を向上させることができる。
【0037】
スズの含有量が2.0質量%未満であると、高温域までα相が十分に安定化せず、またスズのα相への固溶量も不十分となり、高温強度及びクリープ特性の向上はあまり望めない。また、スズの含有量が6.0質量%を超えると、チタン合金の高温強度及びクリープ特性を向上させる作用が飽和してしまうとともに密度が大きくなるため、効率的な配合でなくなる。高温強度及びクリープ特性を確実に向上させるべく、スズの含有量は2.5〜4.5質量%とすると、一層好適である。
【0038】
ジルコニウムの含有量が2.0質量%未満であると、高温域までα相が十分に安定せず、またジルコニウムのα相への固溶量も不十分となる。このため、高温強度及びクリープ特性の向上はあまり望めない。ジルコニウムの含有量が6.0質量%を超えると、チタン合金の高温強度及びクリープ特性を向上させる作用が飽和してしまうので、効率的な配合でなくなる。高温強度及びクリープ特性をより向上させるために、ジルコニウムの含有量は2.5〜4.5質量%とすると、一層好適である。
【0039】
ケイ素は、チタン合金中へ固溶することにより、クリープ特性を向上させることができる元素である。従来は、多量のケイ素を固溶させることにより、耐クリープ特性を確保していた。しかし、ケイ素を多量に含有したチタン合金を高温で長時間保持すると、ケイ素がチタンやジルコニウムと結合して微細なシリサイドが析出し、その後の室温靱性が低下していた。本発明のチタン基複合材料は、高温でも安定なチタン化合物粒子や希土類化合物粒子を有することにより、十分なクリープ特性を得るのに必要とされるケイ素の含有量を従来よりも少なくすることができたものである。
【0040】
ケイ素の含有量が0.1質量%未満であると、クリープ特性が十分に向上せず、0.4質量%を超えると、高温強度が低下してしまう。クリープ特性を確実に向上させるには、ケイ素の含有量を0.15〜0.4質量%とすると、一層好適である。
【0041】
酸素は、チタン合金のβ変態点を上昇させて、高温域で、α相を安定に存在させる元素である。また、α相に固溶して、高温強度及びクリープ強度を向上させることができる元素である。酸素の含有量が0.1質量%未満であると、α相が十分に安定化せず、酸素のα相への固溶量も不十分となり、高温強度及びクリープ特性の向上があまり望めない。酸素の含有量が0.5質量%を超えると、チタン基複合材料が脆化しやすくなってしまう。なお、α相を安定に存在させ、高温強度及びクリープ強度を確実に向上させるためには、酸素の含有量を0.15〜0.4質量%とすると、一層好適である。
【0042】
本発明のチタン基複合材料においては、マトリックスに含まれるアルミニウム、スズ、ジルコニウム、ケイ素及び酸素は、チタンに固溶すると、合金化することにより、上述の優れた作用を発揮すると考えられる。
【0043】
一方、チタン化合物粒子や希土類化合物粒子は、チタン合金と反応しにくく、チタン合金に対して熱力学的に安定な粒子である。従って、チタン化合物粒子や希土類化合物粒子は、高温域でも、チタン合金中に安定に存在することができる。
【0044】
ここで、チタン化合物粒子は、例えば、ホウ化チタン、炭化チタン、窒化チタンまたはケイ化チタン等の粒子等である。さらに具体的には、チタン化合物粒子は、TiB、TiC、TiB2、Ti2C、TiN、チタンシリサイドなどの化合物等の粒子からなる。これらの粒子は、チタン基複合材料中に分散した場合、性質が近似している。そして、これらの化合物粒子を、チタン基複合材料の強化材として、1種または組合わせて使用してもよい。
【0045】
また、希土類化合物粒子は、イットリウム(Y)、セリウム(Ce)、ランタン(La)、エルビウム(Er)若しくはネオジム(Nd)等の希土類元素の酸化物若しくは硫化物等からなる粒子である。さらに具体的には、希土類化合物粒子は、Y23等の化合物からなる粒子である。これらの粒子は、チタン基複合材料中に分散した場合、性質が近似している。これらの化合物粒子を、チタン基複合材料の強化材として、1種または組合わせて使用してもよい。なお、チタン化合物粒子や希土類化合物粒子は、マトリックスを構成する合金元素を含有するものでもよい。
【0046】
TiBをはじめとするチタン化合物と希土類の酸化物または硫化物等は、チタン合金中において、高温まで安定的に存在し得る化合物である。このような高温で安定に存在し得る化合物のみが、チタン合金のβ粒成長を抑制して熱間加工性を改善し、また常温や高温での強度、クリープ特性、耐疲労性および耐摩耗性を向上させることができる。
【0047】
例えば、ホウ化チタン粒子(TiB)を例に取上げると、ホウ化チタン粒子は高温強度及び延性向上に有効に働く。これは、特開平5−5142号公報等にも明らかにされている。従って、ホウ化チタン粒子をマトリックス中に分散させると、常温域のみならず、高温域でも、チタン基複合材料の強度、クリープ特性、疲労特性及び耐摩耗性を向上させることができる。
【0048】
ここで、本発明のチタン基複合材料の熱間加工性について付言しておく。通常、チタン合金を完全β領域まで加熱して熱間加工を施すとすると、β相の粒径が粗大化し、熱間加工時に割れ等が生じ易くなり、限界すえこみ率(すえ込み成形した場合に割れが発生する最小の圧下率)が低下する。これに対し、本発明のチタン基複合材料は、次の優れた特徴を有する。
【0049】
チタン化合物粒子や希土類化合物粒子が、マトリックス全体に微細にかつ均一に分散されているから、熱間加工された場合に、そのチタン化合物粒子や希土類化合物粒子が、マトリックスに含まれるβ相の結晶粒径の粗大化(粒成長)を効果的に抑制する。このため、本発明のチタン基複合材料は、β変態点以上の温度で、熱間加工を行っても、割れが発生せず、優れた熱間加工性を有することとなる。
【0050】
特に、本発明のチタン基複合材料を焼結法で得た場合には、チタン化合物粒子や希土類化合物粒子が、マトリックス中に微細にかつ均一に分散され、好都合である。そして、チタン化合物粒子や希土類化合物粒子が粒界に析出することはほとんどないから、本発明のチタン基複合材料は一層優れた熱間加工性を有するものとなる。
【0051】
勿論、本発明のチタン基複合材料の製造方法は、これに限定されるものではない。例えば、溶解鋳造法、急冷凝固法などもある。もっとも、焼結法を用いると、コスト、生産性、材料特性等のあらゆる面において優れている。
【0052】
このように、チタン基複合材料は、チタン化合物粒子や希土類化合物粒子が均一に分散されていることが好ましい。このため、チタン化合物粒子をマトリックス中に分散させる場合には、チタン基複合材料全体の体積を100体積%としたときに、チタン化合物粒子が1〜10体積%占めていることが必要である。
【0053】
チタン化合物粒子の占有量が1体積%未満であると、その占有量が少なすぎるので、チタン基複合材料は、十分な高温強度、クリープ特性、疲労特性及び耐摩耗性が得られない。一方、10体積%を越えると、その靱性が劣化する。
【0054】
また、希土類化合物粒子をマトリックス中に分散させる場合には、チタン基複合材料全体の体積を100体積%としたときに、希土類化合物粒子が3体積%占めていることが必要である。3体積%を超えると、靱性が劣化してしまうからである。
【0055】
従って、本発明のチタン基複合材料では、チタン化合物粒子若しくは希土類化合物粒子の体積占有量を、それぞれ、全体の1〜10体積%若しくは3体積%以下とした。これにより、本発明のチタン基複合材料は、靱性を劣化させることなく、高温強度、剛性、疲労特性、耐摩耗性及び耐熱性を十分に向上させることができた。
【0056】
さらに、これらの特性をより向上させるには、チタン化合物粒子を3〜7体積%、若しくは希土類化合物粒子0.5〜2体積%とすると、より好ましい。
【0057】
上述してきたように、本発明のチタン基複合材料では、熱間加工性と共に、強度、クリープ特性、高サイクル疲労特性及び耐摩耗性について、優れた特性が得られる。特に、610℃を超える高温域においても、これらの特性が優れる。
【0058】
【発明の実施の形態】
(チタン基複合材料)
本発明のチタン基複合材料は、マトリックスの主成分であるチタン合金が、前記チタン基複合材料全体の重量を100質量%とすると、さらに0.5〜4.0質量%のモリブデン(Mo)と、0.5〜4.0質量%のニオブ(Nb)とを含有すると、一層好適である。
【0059】
モリブデンは、チタン合金のβ相を効果的に安定化させる元素である。特に、本発明のチタン基複合材料を焼結により得る場合、モリブデンは、焼結後の冷却過程において、α相を微細に析出させる作用を有する。つまり、モリブデンは、チタン基複合材料の中低温域での強度をより向上させ、特に、その疲労特性をより向上させる。
【0060】
もっとも、モリブデンの含有量が0.5質量%未満であると、チタン基複合材料の強度を十分に向上させることが難しい。一方、モリブデンの含有量が4.0質量%を超えると、β相が増加し、チタン基複合材料の高温強度、クリープ特性および靱性が低下してしまう。なお、中低温域での強度、疲労特性、高温強度、クリープ特性および靱性を確実に向上させるために、モリブデンの含有量を0.5〜2.5質量%とすると、一層好適である。
【0061】
次に、ニオブもモリブデンと同様に、β相を効果的に安定化させる元素である。ニオブの含有量が0.5質量%未満であると、高温強度が十分に向上しない。また、ニオブの含有量が4.0質量%を超えると、β相が増加して、高温強度、クリープ特性および靱性が低下してしまう。なお、高温強度、クリープ特性および靱性を確実に向上させるには、ニオブの含有量を0.5〜1.5質量%とすると、一層好適である。
【0062】
また、モリブデンとニオブとは、ともに、Ti3Alの析出を抑制する元素でもある。このため、これらの元素をチタン合金に含有させると、アルミニウム、スズおよびジルコニウムをチタン合金に多く含有させたとしても、チタン基複合材料の高温域での脆化を防ぐことができる。そして、チタン基複合材料の高温強度と延性がバランス良く向上し、また、その耐酸化性も向上する。
【0063】
また、本発明のチタン基複合材料のマトリックスの主成分であるチタン合金は、さらにタンタル(Ta)、タングステン(W)及びハフニウム(Hf)の少なくとも1種以上の金属元素を総計で5質量%以下含有すると、好適である。
【0064】
タンタルは、β安定化元素である。適量のタンタルは、チタン基複合材料の高温強度と疲労強度とのバランスを向上させる。チタン基複合材料がタンタルを必要以上に含有すると、その密度が上昇し、また、β相が増加して、その高温クリープ強度が低下する。
【0065】
タングステンも、β安定化元素である。適量のタングステンは、チタン基複合材料の高温強度と疲労強度とのバランスを向上させる。チタン基複合材料がタンタルを必要以上に含有すると、その密度が上昇し、また、β相が増加して、その高温クリープ強度が低下する。
【0066】
ハフニウムは、中性元素であり、ジルコニウムと同様の作用、効果をもつ。つまり、適量のハフニウムは、α相に固溶してチタン基複合材料の高温強度及びクリープ特性を向上させる。チタン基複合材料がハフニウムを必要以上に含有すると、その密度が上昇し、好ましくない。
【0067】
これらの元素は、マトリックスに付加的に含有させることが好ましい元素である。従って、マトリックス本来の特性を生かしつつ、チタン基複合材料の密度をあまり大きくしないために、それらの総計は5質量%以下とするのが良い。
【0068】
さらに、本発明のチタン基複合材料に含まれるチタン化合物粒子や希土類化合物粒子は、平均アスペクト比が1〜40にあり、かつ平均粒径が0.5〜50μmであると、一層好適である。
【0069】
ここで、平均アスペクト比とは、各粒子の長径D1と短径D2とを測定し、その比(D1/D2)を、測定の対象である全粒子で平均化した値を言う。また、平均粒径とは、各粒子の断面形状を面積の等価な円で表したときの直径を、測定対象となった全粒子で平均化した値を言う。なお、このときの測定対象粒子数はともに500〜600個とした。
【0070】
チタン化合物粒子や希土類化合物粒子の平均アスペクト比を1〜40とし、かつ平均粒径を0.5〜50μmとすることにより、本発明のチタン基複合材料の熱間加工性をさらに向上させることができる。また、その高温強度、クリープ特性、疲労特性及び耐摩耗性を向上させることができる。
【0071】
この理由は、必ずしも明らかではないが、次のように考えられる。ここでは、ホウ化チタン粒子を例にとり、その理由を説明する。
【0072】
ホウ化チタン粒子とチタン合金との界面におけるミスマッチは、図2および図3に示されるように、高々2.2%となっている。つまり、その界面での整合性は極めて高いものである。このため、ホウ化チタン粒子とチタン合金との界面エネルギーは小さく、微小なホウ化チタン粒子は、例え高温状態にあっても、チタン合金中で、粒成長することは難しい。従って、高温域でも、ホウ化チタン粒子とチタン合金との界面構造は変化せず、チタン基複合材料は、高強度特性を発揮する。
【0073】
しかし、ホウ化チタン粒子の平均粒径が0.5μm未満では、この作用が十分に得られない。また、平均粒径が50μmを超えると、その粒子分布が不均一となり、その粒子が応力分担を均一にすることができない。従って、チタン基複合材料の破壊が脆弱なマトリックスから進行することになる。
【0074】
また、その平均アスペクト比が40を超えると、その粒子分布の不均一を招く。このため、粒子が均一に応力を分担できず、チタン基複合材料の破壊が脆弱なマトリックスの部分から進行する。なお、平均アスペクト比が1に近づくほど、ホウ化チタン粒子は球状となり、粒子が均一に分散して、好ましい。
【0075】
以上、ホウ化チタン粒子を例にとり説明したが、他のチタン化合物粒子や希土類化合物粒子、例えば、ホウ化チタン粒子、炭化チタン粒子、窒化チタン粒子またはケイ化チタン粒子、イットリウム(Y)、セリウム(Ce)、ランタン(La)、エルビウム(Er)若しくはネオジム(Nd)の酸化物若しくは硫化物を主成分とする粒子等でも同様である。
【0076】
従って、チタン化合物粒子や希土類化合物粒子の平均アスペクト比が1〜40であり、かつ平均粒径が0.5〜50μmであると、微小なチタン化合物粒子や希土類化合物粒子を多量にかつ均一に分散したチタン基複合材料が得られる。こうして得たチタン基複合材料は、高温強度、クリープ特性、疲労特性及び耐摩耗性において優れた特性を持つこととなる。
【0077】
なお、チタン化合物粒子や希土類化合物粒子の平均アスペクト比を1〜20とし、かつ平均粒径を0.5〜30μmとすると、それらの粒子がより均一に分散し、前述のチタン基複合材料の特性がより向上するので、一層好ましい。
【0078】
さらに、本発明のチタン基複合材料のマトリックスであるチタン合金は、β相とβ相から析出した針状のα相とからなることが望ましい。β相から、この針状のα相が析出することにより、チタン基複合材料の高温クリープ特性を向上させることができる。
【0079】
(チタン基複合材料の製造方法)
このように優れた本発明のチタン基複合材料を得るための製造方法は、特に限定されるものではない。ここでは、その製造方法の一例として、もう一つの発明であるチタン基複合材料の製造方法について説明する。この製造方法は、本発明のチタン基複合材料を製造するにあたり、特に好適な製造方法である。
【0080】
本発明者らは、上述した優れたチタン基複合材料を得るのに、好適なチタン基複合材料の製造方法を確立するため、鋭意研究、努力した。そして、本発明者らは、本発明のチタン基複合材料の製造方法として、焼結を用いることを考えついた。次に、原料、成形・焼結方法、並びにその焼結温度等を重ねて検討した。その結果、β変態点以上の温度で焼結させ、マトリックスにα相とβ相とを生成して得たチタン基複合材料は、熱間加工性に優れるだけでなく、強度、クリープ特性、疲労特性及び耐摩耗性にも優れることを、本発明者らは確認した。しかも、そのチタン基複合材料は、室温はもとより、610℃を超えるような高温においても、そのような特性に優れることを、本発明者らは見出したのである。
【0081】
本発明のチタン基複合材料の製造方法はこのような知見に基づいてなされたものである。すなわち、本発明のチタン基複合材料の製造方法は、3.0〜7.0質量%のアルミニウムと2.0〜6.0質量%のスズと2.0〜6.0質量%のジルコニウムと0.1〜0.4質量%のケイ素と0.15〜0.5質量%の酸素と残部がチタンおよび不可避不純物とからなるマトリックスと、該マトリックス中に分散された1〜10体積%を占めるチタン化合物粒子および/または3体積%以下を占める希土類化合物粒子とからなるチタン基複合材料の製造方法であって、チタン粉末とアルミニウム、スズ、ジルコニウム、ケイ素および酸素が含まれる合金要素粉末とチタン化合物粒子および/または希土類化合物粒子を形成する粒子要素粉末とを混合する混合工程と、該混合工程で得られた混合粉末を用いて所定形状の成形体を成形する成形工程と、該成形工程で得られた成形体をβ変態点以上の温度で焼結させ、β相を生成させる焼結工程と、前記β相からα相を析出させる冷却工程と、を有することを特徴とする。
【0082】
本発明のチタン基複合材料の製造方法は、混合工程、成形工程、焼結工程及び冷却工程の一連の工程からなる。各工程を以下のように進めることができる。
【0083】
(1)混合工程
混合工程は、先ず、チタン粉末と、アルミニウム、スズ、ジルコニウム、ケイ素および酸素を含有する合金要素粉末と、チタン化合物粒子および/または希土類化合物粒子を形成する粒子要素粉末とを準備する。
【0084】
a.チタン粉末
チタン粉末には、例えばスポンジチタン粉末、水素化脱水素粉末、水素化チタン粉末及びアトマイズ粉末などの粉末を使用することができる。チタン粉末の構成粒子の形状や粒径(粒径分布)などは、特に限定されるものではない。市販のチタン粉末は、約150μm(#100)以下、平均粒径で約100μm以下に調整されていることが多いので、そのまま用いても良い。また、チタン粉末の粒径が、45μm(#325)以下、平均粒径で約20μm以下のものを用いれば、緻密な焼結体を得ることが容易になる。
【0085】
なお、コストおよび焼結体の緻密性の観点から、チタン粉末の平均粒径は10〜200μmであることが望ましい。
【0086】
b.合金要素粉末
合金要素粉末は、マトリックスの主成分であるチタン合金を得るために必要な粉末である。そのチタン合金は、チタンの他、アルミニウム、スズ、ジルコニウム、ケイ素および酸素を含有するものであるから、合金要素粉末は、例えば、アルミニウム、スズ、ジルコニウム、ケイ素の単体(金属単体)や、アルミニウム、スズ、ジルコニウム、ケイ素および酸素の化合物や合金の粉末等からなる。それらの各元素の1種若しくは組合せによってできる合金や化合物の粉末でも良い。また、チタンとそれらの各元素の1種若しくは組合せによってできる合金や化合物の粉末でも良い。合金要素粉末の組成は、マトリックスの配合量に併せて適宜用意されるものである。
【0087】
また、アルミニウム、スズ、ジルコニウム、ケイ素および酸素の全部を組成にもつ合金の粉末を合金要素粉末としても良い。さらに、化合物の粉末と金属(単体若しくは合金)の粉末とを組み合わせて、合金要素粉末としても良い。例えば、アルミニウムの化合物の粉末と、スズ、ジルコニウム、ケイ素および酸素を組成にもつ合金の粉末とを合わせて合金要素粉末としても良い。
【0088】
c.粒子要素粉末
粒子要素粉末は、チタン化合物粒子や希土類化合物粒子を形成するために必要である。粒子要素粉末は、チタン化合物や希土類化合物そのものの粉末でも良い。また、マトリックスの成分元素(チタン、酸素等)と反応してチタン化合物粒子や希土類化合物粒子を形成するホウ素、炭素、窒素、ケイ素等や希土類元素の単体、合金若しくは化合物の粉末でも良い。さらには、そのような種々の粉末の組合わせでも良い。
【0089】
ここで、チタン化合物粒子には、例えば、ホウ化チタン粒子、炭化チタン粒子、窒化チタン粒子またはケイ化チタン粒子等がある。チタン化合物粒子は、これらの1種のみならず、それらの組合わせでも良い。希土類化合物粒子には、イットリウム(Y)、セリウム(Ce)、ランタン(La)、エルビウム(Er)若しくはネオジム(Nd)の酸化物若しくは硫化物等がある。希土類化合物粒子は、これらの1種のみならず、それらの組合わせても良い。また、それらのチタン化合物粒子の粉末と希土類化合物粒子の粉末とを複合して、粒子要素粉末としても良い。
【0090】
ここでは、粒子要素粉末の一例として、代表的なホウ化チタン粉末について説明する。ホウ化チタン粉末は、ホウ化チタン(TiB2など)を主成分とするものである。このホウ化チタン粉末は、マトリックスの合金元素を含有していてもよい。例えば、ホウ化チタン粉末がアルミニウム、スズ、ジルコニウム、ケイ素または酸素の化合物、合金等の粉末と、ホウ素の化合物、合金等の粉末とからなるものでも良い。
【0091】
このホウ化チタン粉末中のホウ素は、後述する焼結工程においてチタンと反応してホウ化チタン粒子を形成することとなる。また、合金要素粉末中に、ホウ素を含有する合金や化合物があると、ホウ化チタン粉末を別途用意する必要がなく、好都合である。
【0092】
なお、合金要素粉末および粒子要素粉末を構成する粒子の形状や粒径(粒径分布)等は、特に限定されるものではないが、合金要素粉末の平均粒径が5〜200μm、粒子要素粉末の平均粒径が1〜30μmであると、均一な組織をもつチタン基複合材料が得られ、一層好適である。
【0093】
比較的大きな粒径の粉末を入手した場合には、ボールミル、振動ミル及びアトライターなどの各種粉砕機で、所望の粒度まで粉砕等して調整すれば良い。
【0094】
d.混合
このようにして用意したチタン粉末、合金要素粉末及び粒子要素粉末を混合する。その混合方法は、V型混合機、ボールミル及び振動ミルなどを用いて混合することができるが、特にこれらに限定されるものではない。本工程では、周知の混合方法を採用し、なんら特殊な手段を講じることなく、各粉末粒子が均一に分散した混合粉末を得ることができる。従って、非常に安価に本工程を達成できる。
【0095】
但し、合金要素粉末や粒子要素粉末が、二次粒子などを激しく凝集する粒子である場合、アトライターなどの高エネルギーボールミルを用いて、不活性ガス雰囲気中で攪拌混合処理することが好ましい。このような処理を施すことにより、チタン基複合材料をより緻密化させることができる。
【0096】
(2)成形工程
成形工程は、前記の混合工程で得られた混合粉末を用いて、所定形状の成形体を成形する工程である。この所定形状は、目的物の最終的な形状でもよいし、焼結工程の後に加工を施す場合は、ビレット状でもよい。
【0097】
この成形工程における成形方法として、例えば、金型成形や、CIP成形(冷間静水圧プレス成形)、RIP成形(ゴム静水圧プレス成形)などの方法を用いることができる。勿論、これらに限定されるものではなく、その他の周知の粉末成形方法を利用することもできる。なお、金型成形や、CIP成形、RIP成形などの方法を用いる場合、所望の機械的性質が得られるように、それらの成形圧力等を調製すれば良い。
【0098】
(3)焼結工程
焼結工程は、成形工程で得られた成形体を、マトリックスのβ変態点以上の温度で焼結させる工程である。つまり、この焼結工程により、成形体中で接触している各粒子どうしが焼結される。この焼結時には、次のことが起こる。
【0099】
成形体をβ変態点以上に加熱すると、チタン粉末と合金要素粉末とが合金化してマトリックスであるチタン合金を形成する。これと同時に、チタン粉末と、粒子要素粉末との間で新たな化合物(例えば、TiB等)の粒子が形成される。
【0100】
このような成形体が焼結されることにより、チタン合金を主成分としたマトリックス中に、チタン化合物粒子および/または希土類化合物粒子が分散されたチタン基複合材料が形成されることとなる。
【0101】
焼結工程での焼結は、真空又は不活性ガスの雰囲気でなされることが好ましい。また、焼結温度は、β変態点以上の温度域で行われるが、その温度範囲1200℃〜1400℃であると、より好ましい。また、その焼結時間は2〜16時間であることが好ましい。1200℃未満若しくは2時間未満の焼結では、緻密化が必ずしも十分ではない。1400℃を越える温度若しくは16時間以上の焼結は、エネルギー的に不経済であり、生産性の点からも効率的ではない。
【0102】
従って、1200℃〜1400℃、2〜16時間の焼結条件で、焼結を行い、所望の組織を有するチタン基複合材料を得ることが好ましい。
【0103】
なお、マトリックスの主成分であるチタン合金が、アルミニウム、スズ、ジルコニウム、ケイ素および酸素の他に、ニオブ、モリブデン、タンタル、タングステン及びハフニウムを含有する場合も、同様に上述の製造方法を利用できる。
【0104】
つまり、それらの各種元素を含む粉末をあらかじめ用意しておき、混合工程でこの粉末を合金要素粉末として用いる。こうすれば、容易にニオブ、モリブデン、タンタル、タングステン及びハフニウムをマトリックスに含有させることができる。この場合も同様に、アルミニウム、スズ、ジルコニウム、ケイ素、酸素、ニオブ、モリブデン、タンタル、タングステン及びハフニウムの各元素の単体(金属)、合金、化合物の粉末を、各元素が所定量含まれるように用意すればよい。
【0105】
また、平均アスペクト比が1〜40で、平均粒径が0.5〜50μmのチタン化合物粒子や希土類化合物粒子が含まれる粒子要素粉末を用いて、混合、焼結させると、固相反応により、容易にこのようなチタン化合物粒子および/または希土類化合物粒子をマトリックス中に均一分散させることができる。
【0106】
(4)冷却工程
冷却工程は、焼結工程後のβ相から、針状のα相を析出させる工程である。β相中にα相を細かく分散させることにより、つまり、析出強化により、チタン基複合材の強度を著しく向上させることができる。
【0107】
具体的には、焼結後に所望の冷却速度で冷却することにより、β相から針状のα相を析出させることができる。この冷却速度は0.1〜10℃/sであると好ましい。特に、冷却速度が1℃/s程度であると、より好ましい。また、この冷却方法には、炉冷、制御冷却などがある。制御冷却には、アルゴンガスなどの不活性ガスによる強制冷却や炉の電圧を制御して冷却する方法などがあり、これらにより、冷却速度がコントロールされる。
【0108】
ここでは、ホウ化チタン(TiB2)を含むチタン化合物粉末(粒子要素粉末の1種)を用いたチタン基複合材料を例にとり、冷却工程について説明する。焼結工程後、チタン合金のβ相とTiB粒子(チタン化合物粒子)との2相組織が得られる。これを、上記の冷却速度で冷却すると、そのβ相から針状のα相が析出する。
【0109】
この結果、β相と針状のα相との混相が形成されることになる。このβ相、針状のα相およびTiB粒子との混相は、チタン基複合材料の高温域のクリープ特性および疲労特性を向上させるものである。なお、このTiB粒子は、チタン基複合材料が熱間加工されるとき、β相の粒径の粗大化を有効に抑制するものである。
【0110】
以上の工程は、入手の容易な原料粉末と既設の設備を用いることができる。加えて、工数も少なく、各工程は簡便である。よって、この製造方法は、本発明のチタン基複合材料を得るのに、格別好適である。
【0111】
従来、熱間加工性、高温強度、クリープ特性、疲労特性および耐摩耗性等に優れたチタン材料を得ることは、非常に困難であった。このため、そのようなチタン材料の生産性が極端に悪く、その使用は、特殊分野に限られていた。
【0112】
以上、述べてきたように、本発明のチタン基複合材料及びその製造方法は、見事にこの課題を解決したものである。
【0113】
(本製造方法の適応例)
本発明のチタン基複合材料が自動車用エンジンバルブに好適であることは先にも述べた。このような自動車用エンジンバルブは、本発明のチタン基複合材料の製造方法を用いて容易に製造することができる。この場合、成形工程で所望のバルブ形状に成形体を成形すれば、自動車用エンジンバルブの製造は一層容易になる。
【0114】
次に、自動車用エンジンバルブの製造を例にとり、本発明のチタン基複合材料の製造方法を、具体的に説明する。
【0115】
a.成形工程で、適当な形状のビレットを成形する。その後、焼結工程で成形体を焼結させる。そして、得られた焼結体をα+β域またはβ変態点以上の温度でバルブ形状に熱間加工する熱間加工工程を加える。
【0116】
本発明のチタン基複合材料の製造方法により得られた焼結体は、β相と針状のα相とTiB粒子等のチタン化合物粒子および/または希土類化合物粒子との混相を有している。このため、α+β域またはβ変態点以上の温度で熱間加工しても、変形抵抗が低く、熱間加工性に優れる。この場合、既設の熱間加工設備を使用して、容易に熱間加工を行うことができるので、好ましい。
【0117】
ここで、その焼結体が良好な熱間加工性を有するのは、β変態点以上に加熱しても、TiB粒子等により、β粒の異常粒成長が抑制されるため(具体的には、β粒径を平均で50μm以下にコントロールできるため)、β変態点以上での熱間加工が可能となるからである。つまり、β変態点以上での熱間加工が可能となることにより、加工時の変形抵抗が小さく、β粒の異常粒成長もなく、またシワや割れもない健全な加工材が得られるからである。
【0118】
b.その熱間加工工程中において、次のようにすると一層好ましい。
先ず、その焼結体をα+β域またはβ変態点以上の温度での熱間押出加工し、所望形状のステム部を成形する。次に、α+β域またはβ変態点以上の温度で、熱間鍛造により所望形状のヘッド部を成形する。このとき、ステム部とヘッド部とを一体加工してエンジンバルブ素材としても良いし、このステム部とヘッド部とを溶接等により接合してエンジンバルブ素材としても良い。その後、この素材に仕上げ加工を施して、所望の仕様をもったエンジンバルブとすれば良い。
【0119】
このとき、ステム部及びヘッド部の成形時における加工温度は、双方とも900℃〜1200℃の範囲内にあることが好ましい。その加工温度が900℃未満であると、変形抵抗を十分に小さくすることが難しいからである。一方、その加工温度が1200℃を超えると、酸化が激しく、その後の材料特性に悪影響を与えたり、熱間加工時に表面に微細な割れを生じたりする可能性があるからである。
【0120】
c.さらに、成形工程において成形体の形状を所望のバルブ形状により近づけておくと、焼結体の熱間加工がより容易となり好ましい。このように、本製造方法は、本発明のチタン基複合材料からなるエンジン・バルブの製造に、特に好適である。しかも、高温強度、比強度等に優れるエンジン・バルブの量産が可能となり、そのようなエンジン・バルブが安価に得られるようになる。特に、本発明のチタン基複合材料からなるエンジン・バルブは、耐熱性を有し好ましい。
【0121】
【実施例】
以下、具体的な実施例と比較例とを挙げつつ、本発明を詳細に説明する。
(実施例1:試料1)
a.原料粉末として、市販の水素化脱水素チタン粉末(#100)、42.1Al−28.4Sn−27.8Zr−1.7Siの組成をもつ合金粉末からなる合金要素粉末(平均粒径:9μm:数値は含有元素の質量%である(以下同様である。))及び粒子要素粉末であるTiB2 粉末(平均粒径:2μm)をそれぞれ用意した。なお、含有酸素量の異なるチタン粉末を適宜選択して使用することにより、マトリックスの酸素量を調整した。これは、以下の各実施例および比較例においても同様である。ちなみに、0.1〜0.35質量%の酸素を含むチタン粉末を使用したが、合金要素粉末にも僅かながら酸素が含まれていた(0.1質量%程度)。
【0122】
これらの原料粉末をある割合で配合し、アトライターでよく混合した(混合工程)。こうして得られた混合粉末を用い、金型成形により筒状(φ16×32mm)のビレットを成形した(成形工程)。ここでの成形圧は6t/cm2とした。
【0123】
次いで、このビレットを1×10-5torrの真空中で加熱することにより、12.5℃/minの昇温速度(以下の実施例、比較例においても同様)で室温から1300℃の焼結温度に昇温させ、その焼結温度で4時間保持して焼結させた(焼結工程)。その後、1℃/sの冷却速度で冷却した(冷却工程)。こうして得られた焼結体から下記の測定で使用する測定用試料(試料1)を得た。
【0124】
試料1について、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)と湿式分析装置を使用することにより、マトリックスの組成およびホウ化チタン粒子(TiB粒子)の占有量を測定した。それらの測定結果を表1に示す。
【0125】
なお、表1に示したアルミニウム、スズ、ジルコニウム、ケイ素、酸素、ニオブおよびモリブデンの各元素の含有量は、試料全体の重量を100質量%したときの値であり、ホウ化チタン粒子の占有量は、試料全体の体積を100体積%としたときの値である。これは、以下の実施例及び比較例においても同じである。
【0126】
また、試料1の真密度に対する相対密度をアルキメデス法により測定した結果、相対密度は98.5%であることがわかった。このことから試料1は緻密性に優れていることがわかる。
【0127】
b.一方、上記の混合粉末を用いて次のようにしてバルブを作製した。
混合粉末を4t/cm2でCIP成形し、8mm(ステム径)×35mm(傘径)×120mm(全長)の形状をもつバルブ成形体を得た。このバルブ成形体の形状を図5Aに示す。次いで、このバルブ形状の成形体を1×10-5torrの真空中にて、1300℃で16時間の焼結及び冷却を行った。そして、この焼結体を所望の形状に仕上げ加工して、エンジンバルブを得た。このエンジンバルブの形状を図5Bに示す。このエンジンバルブを実機耐久試験に供して評価した。
【0128】
(実施例2:試料2)
a.原料粉末として、市販のスポンジチタン粉末(#100)、36.9Al−24.9Sn−24.4Zr−6.2Nb−6.2Mo−1.4Siの組成をもつ合金粉末からなる合金要素粉末(平均粒径:9μm)及び粒子要素粉末であるTiB2 粉末(平均粒径:2μm)をそれぞれ用意した。これらの原料粉末をそれぞれある割合で配合し、アトライターを用いてよく混合した(混合工程)。こうして得られた混合粉末を用い、CIP成形により所定形状の成形体を成形した(成形工程)。ここでの成形圧は4t/cm2とした。
【0129】
次いで、この成形体を1×10-5torrの真空中で加熱することにより、前記12.5℃/minの昇温速度で室温から1300℃の焼結温度に昇温させ、その焼結温度で16時間保持して、焼結させた(焼結工程)。その後、前記1℃/sの冷却速度で冷却した(冷却工程)。こうして得られた焼結体から、下記の測定で使用する測定用試料(試料2)を得た。
【0130】
試料2について、実施例1と同様にして、マトリックスの組成およびホウ化チタン粒子の占有量を測定した。それらの測定結果を表1に示す。
【0131】
また、実施例1と同様にして試料2の真密度に対する相対密度を測定した結果、相対密度が98.5%であった。このことから、試料2も緻密性に優れていることがわかる。
【0132】
b.一方、上記の混合粉末を用いて、実施例1と同様にしてバルブを作製した。
【0133】
(実施例3:試料3)
a.原料粉末として、市販の水素化脱水素チタン粉末(#100)、36.9Al−24.9Sn−24.4Zr−6.2Nb−6.2Mo−1.4Siの組成をもつ合金粉末からなる合金要素粉末(平均粒径:9μm)及び粒子要素粉末であるTiB2 粉末(平均粒径:2μm)をそれぞれ用意した。これらの原料粉末をある割合で配合し、アトライターでよく混合した(混合工程)。こうして得られた混合粉末を用い、金型成形により筒状(φ16×32mm)のビレットを成形した(成形工程)。ここでの成形圧は6t/cm2とした。
【0134】
次いで、このビレットを1×10-5torrの真空中で加熱することにより、前記12.5℃/minの昇温速度で室温から1300℃の焼結温度に昇温させ、その焼結温度で4時間保持した(焼結工程)。その後、前記1℃/sの冷却速度で冷却した(冷却工程)。こうして得られた焼結体から下記の測定で使用する測定用試料(試料3)を得た。
【0135】
試料3について、実施例1と同様にして、マトリックスの組成およびホウ化チタン粒子の占有量を測定した。それらの測定結果を表1に示す。
【0136】
また、実施例1と同様にして試料3の真密度に対する相対密度を測定した結果、相対密度が98.5%であった。このことから、試料3も緻密性に優れていることがわかる。
【0137】
b.一方、上記の混合粉末を用いて、実施例1と同様にしてバルブを作製した。
【0138】
(実施例4:試料4〜9)
a.原料粉末として、市販の水素化脱水素チタン粉末(#100)、36.9Al−24.9Sn−24.4Zr−6.2Nb−6.2Mo−1.4Siの組成をもつ合金粉末からなる合金要素粉末(平均粒径:9μm)及び粒子要素粉末であるTiB2 粉末(平均粒径:2μm)をそれぞれ用意した。これらの原料粉末をある割合でそれぞれ配合し、アトライターでよく混合した(混合工程)。
【0139】
なお、本実施例では、配合割合の異なる6種類の混合粉末を調製した。こうして得られた6種類の混合粉末をそれぞれ別々に用い、金型成形により各混合粉末からなる筒状(φ16×32mm)の成形体を6種類成形した(成形工程)。ここでの成形圧はいずれも6t/cm2とした。
【0140】
次いで、これらの成形体を1×10-5torrの真空中で加熱することにより、前記12.5℃/minの昇温速度で室温から1300℃の焼結温度に昇温させ、その焼結温度で4時間保持した(焼結工程)。その後、前記1℃/sの冷却速度で冷却した(冷却工程)。こうして得られた各焼結ビレットから下記の測定で使用する測定用試料(試料4〜試料9)をそれぞれ得た。
【0141】
試料4〜試料9について、実施例1と同様にして、各試料のマトリックスの組成、およびホウ化チタン粒子の占有量をそれぞれ測定した。それらの測定結果をそれぞれ表1に示す。なお、試料5においては、ホウ化チタン粒子の平均アスペクト比が35であって、かつ平均粒径が2μmであることがわかった。
【0142】
また、実施例1と同様にして試料4〜試料9の真密度に対する相対密度をそれぞれ測定した結果、いずれの試料とも相対密度が98.5%であった。このことから、試料4〜試料9も緻密性に優れていることがわかる。
【0143】
b.上記の試料5,9の各焼結ビレットを用い、1150℃での熱間押出し加工により、ステム部をそれぞれ成形した。次いで、残りの部分を1150℃まで加熱して、鍛造によりヘッド部をそれぞれ成形した。このバルブ成形体は、図5Aに示す実施例1のバルブ成形体と同形状とした。
【0144】
試料5を得た焼結ビレットからなるエンジンバルブのステム部について、図1にその押出し方向における断面組織を示す。図1より、この組織は、マトリックスのα+β相中に、ホウ化チタン粒子が押出し方向に配向した組織を呈していることがわかる。
【0145】
(実施例5:試料10)
a.原料粉末として、市販の水素化脱水素チタン粉末(#100)、33.0Al−22.0Sn−22.0Zr−22.0Mo−1.0Siの組成をもつ合金粉末からなる合金要素粉末(平均粒径:3μm)及び粒子要素粉末であるTiB2 粉末(平均粒径:2μm)をそれぞれ用意した。これらの原料粉末をそれぞれある割合で配合し、よく混合して混合粉末を得た(混合工程)。この混合粉末を金型成形により筒状(φ16×32mm)に成形した(成形工程)。ここでの成形圧は6t/cm2とした。
【0146】
次いで、この成形体を1×10-5torrの真空中で加熱することにより、前記12.5℃/minの昇温速度で室温から1300℃の焼結温度に昇温させ、その焼結温度で4時間保持して、焼結させた(焼結工程)。その後、前記1℃/sの冷却速度で冷却した(冷却工程)。こうして得られた焼結体から下記の測定で使用する測定用試料(試料10)を得た。
【0147】
試料10について、実施例1と同様にして、マトリックスの組成およびホウ化チタン粒子の占有量を測定した。その測定結果を表1に示す。
【0148】
また、実施例1と同様にして試料10の真密度に対する相対密度を測定した結果、相対密度が98.5%であった。このことから、試料10も緻密性に優れていることがわかる。
【0149】
b.上記の焼結体を用い、1150℃の熱間押出し加工によりステム部を成形した。
【0150】
(実施例6:試料11)
a.原料粉末として、市販の水素化脱水素チタン粉末(#100)、36.9Al−24.9Sn−24.4Zr−6.2Nb−6.2Mo−1.4Siの組成をもつ合金粉末からなる合金要素粉末(平均粒径:9μm)及び粒子要素粉末であるTiC 粉末(平均粒径:3μm)をそれぞれ用意した。これらの原料粉末をそれぞれある割合で配合し、よく混合して混合粉末を得た(混合工程)。この混合粉末を金型成形により筒状(φ16×32mm)に成形した(成形工程)。ここでの成形圧は6t/cm2とした。
【0151】
次いで、この成形体を1×10-5torrの真空中で加熱することにより、前記12.5℃/minの昇温速度で室温から1300℃の焼結温度に昇温させ、その焼結温度で4時間保持して、焼結させた(焼結工程)。その後、前記1℃/sの冷却速度で冷却した(冷却工程)。こうして得られた焼結体から下記の測定で使用する測定用試料(試料11)を得た。
【0152】
試料11について、実施例1と同様にして、マトリックスの組成および炭化チタン粒子(TiC)の占有量を測定した。その測定結果を表1に示す。
【0153】
また、実施例1と同様にして試料11の真密度に対する相対密度を測定した結果、相対密度が98.5%であった。このことから、試料11も緻密性に優れていることがわかる。
【0154】
b.上記の焼結体を用いて実施例4の試料5と同様の方法によりエンジンバルブを製作し、これを耐久試験に供した。
【0155】
(実施例7:試料12)
a.原料粉末として、市販の水素化脱水素チタン粉末(#100)、36.9Al−24.9Sn−24.4Zr−6.2Nb−6.2Mo−1.4Siの組成をもつ合金粉末からなる合金要素粉末(平均粒径:9μm)及び粒子要素粉末であるTiC 粉末(平均粒径:3μm)とTiB2 粉末(平均粒径:3μm)とをそれぞれ用意した。これらの原料粉末をそれぞれある割合で配合し、よく混合して混合粉末を得た(混合工程)。この混合粉末を金型成形により筒状(φ16×32mm)に成形した(成形工程)。ここでの成形圧は6t/cm2とした。
【0156】
次いで、この成形体を1×10-5torrの真空中で加熱することにより、前記12.5℃/minの昇温速度で室温から1300℃の焼結温度に昇温させ、その焼結温度で4時間保持して、焼結させた(焼結工程)。その後、前記1℃/sの冷却速度で冷却した(冷却工程)。こうして得られた焼結体から下記の測定で使用する測定用試料(試料12)を得た。
【0157】
試料12について、実施例1と同様にして、マトリックスの組成および炭化チタン粒子、ホウ化チタン粒子の占有量を測定した。その測定結果を表1に示す。
【0158】
また、実施例1と同様にして試料12の真密度に対する相対密度を測定した結果、相対密度が98.5%であった。このことから、試料12も緻密性に優れていることがわかる。
【0159】
b.上記の焼結体を用い、1150℃の熱間押出し加工によりステム部を成形した。
【0160】
(実施例8:試料13)
a.原料粉末として、市販の水素化脱水素チタン粉末(#100)、36.9Al−24.9Sn−24.4Zr−6.2Nb−6.2Mo−1.4Siの組成をもつ合金粉末とからなる合金要素粉末(平均粒径:9μm)とタンタル粉末(平均粒径:9μm)とタングステン粉末(平均粒径:3μm)とからなる合金要素粉末及び粒子要素粉末であるTiB2 粉末(平均粒径:2μm)をそれぞれ用意した。これらの原料粉末をそれぞれある割合で配合し、よく混合して混合粉末を得た(混合工程)。この混合粉末を金型成形により筒状(φ16×32mm)に成形した(成形工程)。ここでの成形圧は6t/cm2とした。
【0161】
次いで、この成形体を1×10-5torrの真空中で加熱することにより、前記12.5℃/minの昇温速度で室温から1300℃の焼結温度に昇温させ、その焼結温度で4時間保持して、焼結させた(焼結工程)。その後、前記1℃/sの冷却速度で冷却した(冷却工程)。こうして得られた焼結体から下記の測定で使用する測定用試料(試料13)を得た。
【0162】
試料13について、実施例1と同様にして、マトリックスの組成およびホウ化チタン粒子の占有量を測定した。その測定結果を表1に示す。
【0163】
また、実施例1と同様にして試料13の真密度に対する相対密度を測定した結果、相対密度が98.5%であった。このことから、試料13も緻密性に優れていることがわかる。
【0164】
b.上記の焼結体を用い、1150℃の熱間押出し加工によりステム部を成形した。
【0165】
(実施例9:試料14)
a.原料粉末として、市販の水素化脱水素チタン粉末(#100)、30.7Al−24.9Sn−24.4Zr−6.2Nb−6.2Mo−6.2Hf−1.4Siの組成をもつ合金粉末からなる合金要素粉末(平均粒径:9μm)と粒子要素粉末であるY23粉末(平均粒径:3μm)とTiB2 粉末(平均粒径:2μm)とをそれぞれ用意した。これらの原料粉末をそれぞれある割合で配合し、よく混合して混合粉末を得た(混合工程)。この混合粉末を金型成形により筒状(φ16×32mm)に成形した(成形工程)。ここでの成形圧は6t/cm2とした。
【0166】
次いで、この成形体を1×10-5torrの真空中で加熱することにより、前記12.5℃/minの昇温速度で室温から1300℃の焼結温度に昇温させ、その焼結温度で4時間保持して、焼結させた(焼結工程)。その後、前記1℃/sの冷却速度で冷却した(冷却工程)。こうして得られた焼結体から下記の測定で使用する測定用試料(試料14)を得た。
【0167】
試料14について、実施例1と同様にして、マトリックスの組成およびホウ化チタン粒子の占有量を測定した。その測定結果を表1に示す。また、Y23粒子の占有量は約0.8体積%であった。
【0168】
また、実施例1と同様にして試料14の真密度に対する相対密度を測定した結果、相対密度が98.5%であった。このことから、試料14も緻密性に優れていることがわかる。
【0169】
b.上記の焼結体を用い、1150℃の熱間押出し加工によりステム部を成形した。
【0170】
[比較例]
(比較例1:試料C1)
a.原料粉末として、市販の水素化脱水素チタン粉末(#100)、Al−40V粉末(平均粒径:3μm)及びTiB2 粉末(平均粒径:2μm)をそれぞれ用意した。これらの原料粉末をある割合で配合し、アトライターでよく混合した。こうして得られた混合粉末を用い、金型成形により筒状(φ16×32mm)の成形体を成形した。ここでの成形圧は6t/cm2とした。
【0171】
次いで、この成形体を1×10-5torrの真空中で加熱することにより、前記12.5℃/minの昇温速度で室温から1300℃の焼結温度に昇温させ、その焼結温度を4時間保持して、焼結させた。その後、前記1℃/sの冷却速度で冷却した。こうして得られた焼結ビレットから下記の測定で使用する測定用試料(試料C1)を得た。
【0172】
試料C1について、実施例1と同様にして、マトリックスの組成およびホウ化チタン粒子の占有量を測定した。それらの測定結果を表2に示す。
【0173】
また、実施例1と同様にして試料C1の真密度に対する相対密度を測定した結果、その相対密度は96.5%であった。
【0174】
b.上記の焼結体を用いて、実施例5と同様に1150℃の熱間押出し加工によりステム部を成形した。次に残りの部分を1150℃まで加熱して鍛造によりヘッド部を成形した。これを加工して、実施例1と同様の図5Bに示すエンジンバルブを製作した。なお、本比較例では押出し後に割れが生じていた。
【0175】
(比較例2:試料C2)
a.原料粉末として、市販の水素化脱水素チタン粉末(#100)、36.9Al−24.9Sn−24.4Zr−6.2Nb−6.2Mo−1.4Siの組成をもつ合金粉末(平均粒径:3μm)及びTiB2 粉末(平均粒径:2μm)をそれぞれ用意した。これらの原料粉末をある割合で配合し、アトライターでよく混合した。こうして得られた混合粉末を用い、金型成形により筒状(φ16×32mm)の成形体を成形した。ここでの成形圧は6t/cm2とした。
【0176】
次いで、この成形体を1×10-5torrの真空中で加熱することにより、前記12.5℃/minの昇温速度で室温から1300℃の焼結温度に昇温させ、その焼結温度で4時間保持して、焼結させた。前記1℃/sの冷却速度で冷却して焼結させた。こうして得られた焼結ビレットから下記の測定で使用する測定用試料(試料C2)を得た。
【0177】
試料C2について、実施例1と同様にして、マトリックスの組成およびホウ化チタン粒子の占有量を測定した。それらの測定結果を表2に示す。なお、試料C2においては、ホウ化チタン粒子の平均アスペクト比が52であって、かつ平均粒径が55μmであることがわかった。
【0178】
b.上記の焼結体を用いて、比較例1と同様のエンジンバルブを製作した。
【0179】
(比較例3:試料C3)
a.原料粉末として、市販の水素化脱水素チタン粉末(#100)、36.9Al−24.9Sn−24.4Zr−6.2Nb−6.2Mo−1.4Siの組成をもつ合金粉末(平均粒径:3μm)をそれぞれ用意した。これらの原料粉末をある割合で配合し、アトライターでよく混合した。こうして得られた混合粉末を用い、金型成形により筒状(φ16×32mm)の成形体を成形した。ここでの成形圧は6t/cm2とした。
【0180】
次いで、これらの成形体を1×10-5torrの真空中で加熱することにより、前記12.5℃/minの昇温速度で室温から1300℃の焼結温度に昇温させ、その焼結温度で4時間保持して、焼結させた。その後、前記1℃/sの冷却速度で冷却した。こうして得られた焼結ビレットから下記の測定で使用する測定用試料(試料C3)を得た。
【0181】
試料C3について、実施例1と同様にして、マトリックスの組成およびホウ化チタン粒子の占有量を測定した。それらの測定結果を表2に示す。
【0182】
また、実施例1と同様にして試料C3の真密度に対する相対密度を測定した結果、その相対密度が99%であった。
【0183】
b.上記の焼結体を用いて、比較例1と同様のエンジンバルブを製作した。
【0184】
(比較例4:試料C4)
a.原料粉末として、市販の水素化脱水素チタン粉末(#100)、36.9Al−24.9Sn−24.4Zr−6.2Nb−6.2Mo−1.4Siの組成をもつ合金粉末(平均粒径:3μm)及びTiB2 粉末(平均粒径:2μm)をそれぞれ用意した。これらの原料粉末をある割合で配合し、アトライターでよく混合した。こうして得られた混合粉末を用い、金型成形により筒状(φ16×32mm)の成形体を成形した。ここでの成形圧は6t/cm2とした。
【0185】
次いで、これらの成形体を1×10-5torrの真空中で加熱することにより、前記12.5℃/minの昇温速度で室温から1300℃の焼結温度に昇温させ、その焼結温度で4時間保持して、焼結させた。その後、前記1℃/sの冷却速度で冷却した。こうして得られた焼結ビレットから下記の測定で使用する測定用試料(試料C4)を得た。
【0186】
試料C4について、実施例1と同様にして、マトリックスの組成およびホウ化チタン粒子の占有量を測定した。それらの測定結果を表2に示す。
【0187】
また、実施例1と同様にして試料C4の真密度に対する相対密度を測定した結果、その相対密度が96.5%であった。先の比較例1における試料C1と同様に押出し後、割れが生じていた。これらのことから、ホウ化チタン粒子の占有量が10体積%を超えると、押出しにおいて割れが助長されると共に、延性が低下してしまうことがわかる。
【0188】
b.上記の焼結体を用いて、比較例1と同様のエンジンバルブを製作した。
【0189】
(比較例5:試料C5、C6)
a.溶製鍛造耐熱チタン合金(TIMETAL−1100)を用意し、試料C5とした。表2には試料C5の合金の組成を示す。
【0190】
試料C5については、1050℃で加熱して、溶体化した後、950℃で焼なまし処理を施した。
【0191】
b.このチタン材料を用いて、実施例1と同形状をもつエンジンバルブを製作した。
【0192】
c.溶製鍛造耐熱チタン合金(TIMETAL−834)を用意し、試料C6とした。
【0193】
試料C6については、1027℃で加熱して溶体化した後、700℃で時効処理を施した。
【0194】
(比較例6:試料C7)
a.耐熱鋼(SUH35)を用意し、試料C7とした。表2にその合金組成を示す。
【0195】
b.この耐熱鋼を用いて、実施例1と同形状をもつエンジンバルブを製作した。
【0196】
[強度、クリープ特性、疲労特性及び耐摩耗性の評価]
上記の実施例及び比較例で得られた各試料またはエンジンバルブについて、下記の試験をそれぞれ行って、室温強度及び610℃を超える高温強度、クリープ特性、疲労特性及び耐摩耗性をそれぞれ評価した。
【0197】
強度については、先ず試料が室温にある状態で引張試験を行い、引張強さ、0.2%耐力、伸びの値をそれぞれ測定した。次に、試料が800℃に加熱された状態で引張試験を行い、0.2%耐力の値を測定した。それらの結果を表3及び表4に示す。なお、室温での引張り試験は、インストロン引張り試験機R.T.を用いて、4.55×10-4/sの歪み速度で行った。また、高温での引張り試験は、800℃にて、0.1/sの歪み速度で実施した。
【0198】
表3及び表4から次のことが解る。
a.引張り強度
室温での0.2%耐力は、実施例の試料1〜10と、比較例の試料C1〜C6との間に大差はなかった。
【0199】
しかし、800℃における0.2%耐力に関し、試料1〜9は試料C1、C3、C5およびC6よりも高い値を示している。
【0200】
特に、試料2〜9は、800℃における0.2%耐力について、試料1よりも高い値を示すものが多い。これは、試料2〜9の各試料のマトリックスが、モリブデンを0.5〜4.0質量%、ニオブを0.5〜4.0質量%含有しているからであると考えられる。
【0201】
また、試料11〜14についても、400MPa以上の高温強度を有しており、バルブ材料として十分な強度特性を確保している。
【0202】
b.クリープ特性
乾燥空気中で、800℃の温度に加熱された試料に、50MPaの曲げ応力を加えるクリープ試験を行い、経過時間に対するクリープたわみを測定することにより、クリープ特性を評価した。図4に、実施例3(試料3)および比較例5(試料C6)についての測定結果を示す。図4より、試料3は、800℃におけるクリープ特性について、試料C6を上回っていることがわかる。
【0203】
また、ここでは図示していないが、他の試料1〜9のいずれもクリープ特性に優れていることがわかった。
【0204】
c.疲労特性
大気中かつ室温で回転曲げ疲労試験を行い、室温での疲労特性を評価した。その結果、実施例4の試料(試料5)では、約750MPaの107回疲労強度が得られた。一方、比較例2の試料(試料C2)では、480MPaの107回の疲労強度が得られた。これらより、本発明の実施例4は、室温での疲労強度に優れることが解る。
【0205】
また、大気中で850℃の温度に加熱して、回転曲げ疲労試験を行うことにより、高温疲労特性を評価した。その結果、実施例4の試料(試料5)では約175MPaの107回、比較例2の試料(試料C2)では約120MPaの107回、比較例5の試料(試料C5)では約100MPaの107回および比較例6の試料(試料C7)では約150MPaの107回疲労強度が得られた。これらより、本発明の実施例4は、高温での疲労強度にも優れることが解る。
【0206】
d.耐摩耗性
耐摩耗性は、ピンオンデイスク試験にて評価した。本試験では、ピン摩耗量が3mg/2×103m以下の結果のときに、耐摩耗性が優れているとして、表3及び表4に○を記した。また、ピン摩耗量が10mg/2×103m以上の結果のとき、耐摩耗性が劣っているとして、表3及び表4に×を記した。表3及び表4に記されるように、実施例の試料はいずれも耐摩耗性に優れていることがわかる。
【0207】
e.耐久性
実施例4(試料5)及び比較例3(試料C3)により得た焼結体から成形したエンジンバルブについて、エンジン台上全負荷高速耐久試験(実機耐久試験)を行った。そして、試験後のバルブの各部位における摩耗量を測定して耐摩耗性の耐久性を評価した。なお、本実機耐久試験は、平均7000rpm×200hrの試験条件で行った。
【0208】
本実機耐久試験では、所定の基準摩耗量以下のときに、耐久性に優れているとして、表3及び表4に○を記した。一方、基準摩耗量を超えたとき、あるいは軸伸び、折損という結果が得られたときには、耐摩耗性の耐久性に劣っているとして、表3及び表4に×を記した。
【0209】
表3に記されるように、本実施例の試料はいずれも耐摩耗性の耐久性に優れていることがわかる。これは、本実施例の試料では、ホウ化チタン粒子が微細にかつ均一に分散しているため、凝集摩耗が起こり難いためであると考えられる。
【0210】
[マトリックス中における分散粒子について]
上述のように本発明のチタン基複合材料を多面的に検討してきた結果、マトリックス中に分散される粒子について、さらに次のことが明らかとなった。つまり、本発明のチタン基複合材料に分散されるチタン化合物粒子や希土類化合物粒子は、何れもチタン材料の耐熱性等を向上させるのに有効であるが、特にTiB粒子が、チタン基複合材料の耐熱性の向上に有効であることが解った。
【0211】
a.例えば、上記の実施例4の試料(試料5)と実施例6の試料(試料11)とを比較すると、試料11の方がチタン合金のα安定化元素であるアルミニウムを試料5よりも多く含有する。このため、通常であれば試料11の方が試料5よりもチタン基複合材料の高温耐力は大きくなると考えられる。ところが、表3からも解るように、実際には試料5の方が高温耐力が大きかった。しかも、試料5の方は室温耐力にも優れていた。
【0212】
ここで両試料を比較すると、アルミニウムを除いて両者の組成にさほど大きな差はない。従って、マトリックス中に分散される粒子の相違、つまり試料5に分散されるTiB粒子と試料11に分散されるTiC粒子との相違により、試料5が試料11より優れた特性をもつと考えられる。換言すれば、チタン基複合材料の強度−延性バランスの点から、マトリックスに分散される粒子として、TiB粒子の方がTiC粒子より優れていると考えられる。
【0213】
そこで、その理由について、TiB粒子、TiC粒子およびTiN粒子の3種のチタン化合物粒子を取り上げて検討した。それら各粒子の特性を表5に示す。この表5から例えば、次のことが解る。
【0214】
チタン基複合材料の強度−延性バランスに大きく影響する、マトリックスとこれら強化粒子との相互固溶度を観てみると、TiB粒子とマトリックスであるチタンとの相互固溶度は、TiC粒子およびTiN粒子に較べ、格別に小さい。これからTiB粒子は、チタン合金中で非常に安定な粒子であることが解る。これにより、TiB粒子は、マトリックスを脆化させることなく、それ自身の特性を十分に発揮し、ほぼ複合則に沿ってチタン基複合材料を強化していると考えられる。一方、TiC粒子は、マトリックス中に多少固溶するため、TiB粒子に較べると、チタン基複合材料の室温延性が若干低くなる。
【0215】
b.希土類化合物粒子もTiB粒子と同様に、チタン合金中において安定であるが、3体積%より多く添加すると、焼結体密度が低下する。従って、上述したように、本発明のチタン基複合材料では、希土類化合物粒子の分散量を3体積%以下とすることが効果的である。
【0216】
しかし、この焼結性という観点からも、希土類化合物粒子よりチタン化合物粒子、特にTiB粒子は、マトリックス中に多量に分散できるから一層効果的である。
【0217】
c.もっとも、希土類化合物粒子もTiB粒子等のチタン化合物粒子も化学的特性は異なるものの、チタン合金中における安定性等に優れる点はいずれも共通し、チタン合金の耐熱性等を向上させることができる粒子であることに変りはない。従って、TiB粒子は勿論のこと、TiC粒子等のチタン化合物粒子や希土類化合物粒子をマトリックスに分散させたチタン基複合材料を、例えばエンジンバルブ等に用いると、軽量で耐熱性、耐久性等に優れたエンジンバルブが得られ、好都合である。
【0218】
本発明のチタン基複合材料は、上記のように優れた特性を有するため、自動車用エンジン部品、各種のレジャー・スポーツ用品及び工具類などに利用することができる。特に、本発明のチタン基複合材料によれば、800℃もの極めて高い温度においても、優れた強度、クリープ特性、疲労特性及び耐摩耗性が得られる。従って、例えば、自動車用エンジンバルブなどに好適な材料である。特に、本発明のチタン基複合材料は、エキゾースト・バルブのように、高温(例えば、800℃付近)で使用され、比強度、耐疲労性などが求められる部品に使用すると、一層好適である。
【0219】
【表1】
Figure 0003712614
【0220】
【表2】
Figure 0003712614
【0221】
【表3】
Figure 0003712614
【0222】
【表4】
Figure 0003712614
【0223】
【表5】
Figure 0003712614

【図面の簡単な説明】
【図1】光学顕微鏡で撮影した実施例4の試料5のエンジンバルブの組織である。
【図2】本発明のチタン基複合材料に含まれているホウ化チタン粒子の一例と、マトリックス(チタン合金)とホウ化チタン粒子との界面の様子とを示すTEM図である。
【図3】本発明のチタン基複合材料のマトリックス(チタン合金)とホウ化チタン粒子との界面の様子を拡大して示したTEM(Transmission Electron Microscope)図である。
【図4】実施例(試料3)及び比較例(試料C6)の試料について、800℃でのクリープ特性(経過時間とクリープたわみとの関係)を示すグラフである。
【図5】Aは、実施例1で製作したバルブ成形体の形状を示した図である。Bは、実施例1で製作したエンジンバルブの形状を示した図である。

Claims (23)

  1. 3.0〜7.0質量%のアルミニウム(Al)と2.0〜6.0質量%のスズ(Sn)と2.0〜6.0質量%のジルコニウム(Zr)と0.1〜0.4質量%のケイ素(Si)と0.15〜0.5質量%の酸素(O)と残部がチタン(Ti)および不可避不純物とからなるマトリックスと、
    該マトリックス中に分散した1〜10体積%を占めるチタン化合物粒子とからなることを特徴とするチタン基複合材料。
  2. 3.0〜7.0質量%のアルミニウムと2.0〜6.0質量%のスズと2.0〜6.0質量%のジルコニウムと0.1〜0.4質量%のケイ素と0.15〜0.5質量%の酸素と残部がチタンおよび不可避不純物とからなるマトリックスと、
    該マトリックス中に分散した3体積%以下を占める希土類化合物粒子とからなることを特徴とするチタン基複合材料。
  3. 3.0〜7.0質量%のアルミニウムと2.0〜6.0質量%のスズと2.0〜6.0質量%のジルコニウムと0.1〜0.4質量%のケイ素と0.15〜0.5質量%の酸素と残部がチタンおよび不可避不純物とからなるマトリックスと、
    該マトリックス中に分散した1〜10体積%を占めるチタン化合物粒子および3体積%以下を占める希土類化合物粒子とからなることを特徴とするチタン基複合材料。
  4. 前記マトリックスは、前記アルミニウムを4.0〜6.5質量%含有する請求項1〜3のいずれか1つに記載のチタン基複合材料。
  5. 前記マトリックスは、前記スズを2.5〜4.5質量%含有する請求項1〜3のいずれか1つに記載のチタン基複合材料。
  6. 前記マトリックスは、前記ジルコニウムを2.5〜4.5質量%含有する請求項1〜3のいずれか1つに記載のチタン基複合材料。
  7. 前記マトリックスは、前記ケイ素を0.15〜0.4質量%含有する請求項1〜3のいずれか1つに記載のチタン基複合材料。
  8. 前記マトリックスは、前記酸素を0.15〜0.4質量%含有する請求項1〜3のいずれか1つに記載のチタン基複合材料。
  9. 前記マトリックスは、さらに、0.5〜4.0質量%のモリブデン(Mo)と0.5〜4.0質量%のニオブ(Nb)とを含有する請求項1〜3のいずれか1つに記載のチタン基複合材料。
  10. 前記マトリックスは、前記モリブデンを0.5〜2.5質量%含有する請求項9に記載のチタン基複合材料。
  11. 前記マトリックスは、前記ニオブを0.5〜1.5質量%含有する請求項9に記載のチタン基複合材料。
  12. 前記マトリックスは、さらに、タンタル(Ta)、タングステン(W)及びハフニウム(Hf)の少なくとも1種の金属元素を総計で5質量%以下含有する請求項9に記載のチタン基複合材料。
  13. 前記チタン化合物粒子は、ホウ化チタン、炭化チタン、窒化チタン及びケイ化チタンの少なくとも1種からなる粒子であり、
    前記希土類化合物粒子は、イットリウム(Y)、セリウム(Ce)、ランタン(La)、エルビウム(Er)及びネオジム(Nd)の酸化物および硫化物の少なくとも1種からなる粒子である請求項1〜3のいずれか1つに記載のチタン基複合材料。
  14. 前記チタン化合物粒子は、TiBおよび/またはTiCからなる粒子であり、前記希土類化合物粒子は、Y23からなる粒子である請求項13に記載のチタン基複合材料。
  15. 前記チタン化合物粒子および/または希土類化合物粒子は、平均アスペクト比が1〜40であり、平均粒径が0.5〜50μmである請求項1〜3のいずれか1つに記載のチタン基複合材料。
  16. 前記チタン基複合材料は、800℃以上での0.2%耐力を400MPa以上とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のチタン基複合材料。
  17. 3.0〜7.0質量%のアルミニウムと2.0〜6.0質量%のスズと2.0〜6.0質量%のジルコニウムと0.1〜0.4質量%のケイ素と0.15〜0.5質量%の酸素と残部がチタンおよび不可避不純物とからなるマトリックスと、
    該マトリックス中に分散した1〜10体積%を占めるチタン化合物粒子および/または3体積%以下を占める希土類化合物粒子とからなるチタン基複合材料の製造方法であって、
    チタン粉末とアルミニウム、スズ、ジルコニウム、ケイ素および酸素が含まれる合金要素粉末とチタン化合物粒子および/または希土類化合物粒子を形成する粒子要素粉末とを混合する混合工程と、
    該混合工程で得られた混合粉末を用いて所定形状の成形体を成形する成形工程と、
    該成形工程で得られた成形体をβ変態点以上の温度で焼結させ、β相を生成させる焼結工程と、
    前記β相からα相を析出させる冷却工程と、
    を有することを特徴とするチタン基複合材料の製造方法。
  18. 前記焼結工程は、焼結温度を1200〜1400℃とし、焼結時間を2〜16時間とする請求項17に記載のチタン基複合材料の製造方法。
  19. 前記冷却工程は、冷却速度を0.1〜10(℃/s)とする冷却工程を含む請求項17に記載のチタン基複合材料の製造方法。
  20. 前記混合工程は、平均粒径が10〜200μmの前記チタン粉末と、平均粒径が5〜200μmの前記合金要素粉末と、平均粒径が1〜30μmの前記粒子要素粉末とを混合する工程である請求項17に記載のチタン基複合材料の製造方法。
  21. 3.0〜7.0質量%のアルミニウムと2.0〜6.0質量%のスズと2.0〜6.0質量%のジルコニウムと0.1〜0.4質量%のケイ素と0.15〜0.5質量%の酸素と残部がチタンおよび不可避不純物とからなるマトリックスと、
    該マトリックス中に分散した1〜10体積%を占めるチタン化合物粒子とからなるチタン基複合材料を用いたエンジンバルブ。
  22. 3.0〜7.0質量%のアルミニウムと2.0〜6.0質量%のスズと2.0〜6.0質量%のジルコニウムと0.1〜0.4質量%のケイ素と0.15〜0.5質量%の酸素と残部がチタンおよび不可避不純物とからなるマトリックスと、
    該マトリックス中に分散した3体積%以下を占める希土類化合物粒子とからなるチタン基複合材料を用いたエンジンバルブ。
  23. 3.0〜7.0質量%のアルミニウムと2.0〜6.0質量%のスズと2.0〜6.0質量%のジルコニウムと0.1〜0.4質量%のケイ素と0.15〜0.5質量%の酸素と残部がチタンおよび不可避不純物とからなるマトリックスと、
    該マトリックス中に分散した1〜10体積%を占めるチタン化合物粒子および3体積%以下を占める希土類化合物粒子とからなるチタン基複合材料を用いたエンジンバルブ。
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