JP3709742B2 - 車両用空調装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、空調ユニットで熱交換された空調風を車室内の床に配索されたダクトにより車室内へ送風する車両用空調装置に関する。
【0002】
【従来技術】
いわゆるRV車両のように、車両前後方向に第1列〜第3列の座席が配置された車両においては、第2列および第3列の後部座席の乗員に対する空調装置(暖房装置あるいは冷暖房装置)の空調ユニットがたとえば車両後部右側壁内に設置されている。
【0003】
従来は、車両後部右側壁内に設置された空調ユニットの吹出口にダクトを接続し、このダクトを車室内の床上に配索して車両中央まで引き延ばしている。通常、車室内の床は、フロアパネル上に断熱および遮音のためにチップウレタンとカーペットとを敷設して構成されており、ダクトは後部座席の下のカーペット上に設けられている。ダクト先端は車室内中央まで延設され、ダクト先端には、第2列目の左右の座席の乗員の足下に車両後方からそれぞれ空調風を吹き出す2つの吹出口と、第3列目の左右の座席の乗員の足下に車両前方からそれぞれ空調風を吹き出す2つの吹出口が設けられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来の空調では次のような問題がある。
(1)車両左右方向に延設されたダクトが車室内の床の上に出っ張り、荷室がフラットにならない。
(2)車両左右方向に延設されたダクトが床の上に配索されているので、第2列および第3列の後部座席を車両前後にスライドさせることが困難である。すなわち、座席のスライドレールを車両前後方向に延設する際、スライドレールがダクトと干渉し、スライドレールを設置することができない。したがって、第2列および第3列の後部座席をスライドシートとすることができない。そこで、スライドレールを設置するために、空調ユニットで生成された空調風を側壁に設けた吹出口から車室内へ直接吹き出すようにすると、車両左右方向に温度が不均一となり、左側、すなわち下流側の座席の乗員への空調が十分ではなくなる。
【0005】
発明の目的は、第2列および第3列の左右乗員に対する空調が均等になるようにした車両用空調装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
一実施の形態の図に対応づけて本発明を説明する。
(1)請求項1の発明による車両用空調装置は、車両後部側壁の内部に配設された空調ユニット10と、後部車室で少なくとも左右2列に配列され、スライドレール4に沿ってそれぞれ車両前後方向にスライドする左右一対の後部座席2R,2L,3R,3Lと、スライドレール4と干渉しない位置に車両左右方向に延設され、空調ユニット10から吹出される空調風を車室内方に導く主ダクト21と、スライドレール4の間を車両前後方向に延設され、主ダクト21から導入された空調風を左右一対の後部座席3R,3Lの下方でそれぞれ開口された吹出口31bから吹き出す左右一対の副ダクト31R,31Lとを備え、左右一対の副ダクト31R,31Lから吹き出される空調風の風量が均等になるように、主ダクト21の下流側の空調風通路を狭くしたものである。
(2)請求項2の発明は、請求項1の車両用空調装置において、主および副ダクト21,31の厚みをフロアパネル41上に敷設した断熱層43,44と略同一となし、主および副ダクト21,31の配索軌跡に沿って断熱層43,44が取り除かれたフロアパネル41上に主および副ダクト21,31を配索したものである。
(3)請求項3の発明は、請求項1または2に記載の車両用空調装置において、左右一対の副ダクト31R,31Lの吹出口31bの下流側にダクト支持脚31eを設け、その支持脚31eの内部に吹出口と連通する空間31dを設けたものである。
(4)請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用空調装置において、主ダクト21および副ダクト31R,31L内にダクトが上下方向につぶれることを防止する部材21d,21e,31g,31hを所定間隔で設けたものである。
【0007】
【発明の効果】
(1)請求項1〜4の発明によれば、主ダクトをスライドレールとの干渉を避けるように配置し、左右一対の後部座席のスライドレールの間に副ダクトを車両前後方向に配索したので、後部座席をスライド式とした上で、左右乗員の足下へほぼ均等に空調風を吹き出すことができ、温度差が発生することがない。また、主ダクトの下流側の空調風通路を狭くしたので、下流側の副ダクトおよび上流側の副ダクトを流れる空調風の流量をほぼ均等にできる。
(2)請求項2の発明によれば、ダクトの厚みを断熱層の厚みとほぼ等しくし、フロアパネルに接してダクトを配索しので、ダクトが車室内の床の上に出っ張ることがなく、車室内の床面や荷室の床面がフラットになる。
(3)請求項3の発明によれば、副ダクトの吹出口の下流側にダクト支持脚を設け、その支持脚の内部に吹出口と連通する空間を設けたので、空調風のゴミや水分をこの空間に貯めることができる。また、支持脚により副ダクトの安定性が向上する。
(4)請求項4の発明によれば、ダクトの内部につぶれ防止部材を設けたので、ダクトが乗員に踏まれてもつぶれることがない。
【0008】
以上の課題を解決するための手段の項では、実施の形態の図に用いた符号を使用したが、これにより本発明が実施の形態に限定されるものではない。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明によるダクト構造を備えた車両用空調装置の一実施の形態を図1〜図10により説明する。図1および図2に示すように、車両前後方向に3列の座席が配置されている。第1列には運転席1Rと助手席1Lが、第2列には左右にそれぞれ独立した後部座席2R,2Lが、第3列には左右にそれぞれ独立した後部座席3R,3Lが配設されている。第2列の座席2R,2Lおよび第3列の座席3R,3Lはそれぞれ、車両前後方向に延設された4本のスライドレール4に案内されて独立して車両前後方向にスライド可能とされている。図1および図2の車両の前ドア5R,5Lは開閉ドアであり、後ドア6R,6Lはスライドドアである。
【0010】
図2において、車両前部には空調装置7が設置されている。空調装置7は、図示しないブロアファンと、エバポレータと、ヒータコアとを有する空調ユニットを備えている。空調ユニットは、ブロアファンで吸い込まれた空気を車両内部や車両外部の熱負荷に応じて適宜、冷却、加熱して不図示の吹出口から空調風を吹き出す。空調装置7の左右の後席フット吹出口7a,7bにはそれぞれ後席フット吹出用ダクト8R,8Lが接続されている。後席フット吹出用ダクト8R,8Lは第1列の座席1R,1Lの下部まで引き回されており、後席フット吹出用ダクト8R,8Lの吹出口8FR,8FLから空調風が車両後席方向へ吹き出される。
【0011】
車両後部右のボディサイド9内には後席用空調装置10が設けられている。空調装置10も空調装置7と同様に、図示しないブロアファンと、エバポレータと、ヒータコアとを有する空調ユニットを備えている。この空調ユニットも、ブロアファンで吸い込まれた空気を車両内部や車両外部の熱負荷に応じて適宜、冷却、加熱して不図示の吹出口から空調風を吹き出す。後席用空調装置10の吹出口10aには主ダクト21が接続され、主ダクト21には一対の副ダクト31R,31Lが接続されている。副ダクト31R,31Lの先端の空調風吹出口31bは第3列の座席3R,3Lの下方に配置されている。
【0012】
主ダクト21は、図3に示されるように、後席空調装置10と接続される空調風導入口21aと、副ダクト31R,31Lが接続される空調風導出口21b,21cとを備えている。主ダクト21は、導入された空調風を副ダクト31R,31Lへ均等に吹き出すために下流側のダクト断面積を上流側に比べて小さくしている。このダクト構造については後述する。
【0013】
図4は主ダクト21の図3のIV−IV線断面図である。図4において、21d,21eはそれぞれ主ダクト21の上面および下面から突出して互いに接続されている補強突起である。この補強突起21d,21eにより主ダクト21の厚み方向のつぶれが防止される。また、21fはフロアパネル41の上面との間に所定の断熱空間42を確保するための突起であり、ダクト21の底面から突設されている。フロアパネル41上には断熱層であるチップウレタン43が敷き詰められており、このチップウレタン43と主ダクト21の上面にカーペット44が敷かれている。チップウレタン43は、主ダクト21の配索軌跡に沿って取り除かれている。主ダクト21の上面にはカーペット44が予め設けられている。主ダクト21はフロアパネル41に直接設置され、主ダクト21の上面はチップウレタン43とカーペット44の2層構造の床面と同一の平面に設定されている。換言すると、主ダクト21の厚みはチップウレタン43の厚みとほぼ同等とされる。その結果、副ダクト31Rがカーペット面から出っ張ることがない。
【0014】
図5は主ダクト21の図3のV−V線断面図である、図5において、21TKは下流側空調風通路、21Dは空調風通路21TKと空間的に遮断されたダミー空間であり、このダミー空間21Dは閉鎖空間であって空調風は一切流れない。すなわち、図4に示す上流側空調風通路21TJは、図5に示す下流側空調風通路21TKと比べて断面積が大きくされている。これにより、下流側空調風通路21TKの流速が速くなり、車両左右の副ダクト31R,31Lから吹き出される空調風量がほぼ等しくなる。このダミー空間21Dが設けられた主ダクト21の厚みは空調風通路21Tの部分のダクト厚みと同一に設定する。
【0015】
図6〜図10により副ダクト31Lについて説明する。副ダクト31Lと31Rは左右勝手違いであり、ここでは副ダクト31Rについて説明する。図6において、副ダクト31Rは接続口31aを有する。図7に示すように、この接続口31aに主ダクト21の空調風導出口21b,21cが挿入されて、主ダクト21と副ダクト31とが互いに接続される。
【0016】
図6において、副ダクト31Rはその先端に、後席空調装置10から吹き出された空調風を吹き出す吹出口31bが設けられている。図7に示すように、吹出口31bのすぐ上流には、空調風が流れる方向に上り勾配の斜面31cが形成されている。この斜面31cにより副ダクト31Rから吹き出す空調風の向きが斜め前方上向きとなる。また、図7に示すように、吹出口31bの下流側には水分やゴミを貯める行き止まりの空間31dが形成されている。この空間31dは、いわゆるブロー成形で副ダクト31Rを成型する場合に必要な空間である。この空間31dを形成することにより支持脚31eも形成される。この支持脚31eにより副ダクト31Rの先端をフロアパネル41に接地させ、副ダクト31Rを安定させる。
【0017】
図8によく示されているように、吹出口31bの斜面31cには、吹き出される空調風を車両外方へ向ける整流板31fが突設されている。副ダクト31Rの整流板31fは空調風を車両右側へ、副ダクト31Lの整流板31fは空調風を車両左側へ向けるように傾けられている。
【0018】
図6および図7において、31g,31hはそれぞれ副ダクト31Rの上面および下面から突出して互いに接続されている補強突起である。この補強突起31g,31hにより副ダクト31Rの厚み方向のつぶれが防止される。副ダクト31Rの底にはフロアパネル41との間に所定の断熱空間42を設けるための突起31iが設けられている。図7に示すように、副ダクト31Rの配索軌跡に沿ってチップウレタン43が予め取り除かれており、また、副ダクト31Rをフロアパネル41に直接設置したとき、副ダクト31Rの上面に配設されたカーペット44と、チップウレタン43とカーペット44の2層構造のカーペット面とがほぼ同一の平面に設定される。換言すると、主ダクト21の厚みはほぼ断熱層であるチップウレタン43の厚みとほぼ同等とされる。その結果、副ダクト31Rがカーペット面から出っ張ることがない。
【0019】
図7に示すように、副ダクト31Rの空調風吹出口31bはカーペット44とほぼ同一面内で開口し、この吹出口31bに図10に示すグリル32が設けられる。グリル32は取付基板32aと、基板32aの中央部に開口する矩形開口32bと、開口32bに設けられ吹き出される空調風を斜め前方へ配風する固定ルーバ32cとを備えている。グリル32は副ダクト31Rの吹出口31bを覆うようにビスで固定される。図8の31jがビスネジ孔、図7の32dがビス孔である。
【0020】
このように構成された車両用空調調装置にあっては次のような作用効果がある。
(1)主ダクト21および副ダクト31R,Lの厚みを断熱層であるチップウレタン43の厚みとほぼ等しくし、フロアパネル41に接してこれらのダクトを配索した。したがって、ダクトが車室内の床の上に出っ張りることがなく、車室内の床や荷室内の床がフラットになる。
(2)主ダクト21をスライドレール4との干渉を避けるように車室内の最後方に配置し、副ダクト31R,31Lをスライドレール4の間で車両前後方向に配索した。したがって、第2列および第3列の後部座席をスライド式とした上で、左右乗員の足下へほぼ均等に空調風を吹き出すことができ、温度差が発生することがない。とくに、主ダクト31の下流側にダミー空間21Dを設けたので、下流側の副ダクト31Lおよび上流側の副ダクト31Rを流れる空調風の流量をほぼ均等にできる。
(3)ダミー空間21Dの部分のダクト厚みをチップウレタン43の厚みと同等としたので、ダミー空間21Dの部分にはチップウレタン43を敷き詰める必要がなく、チップウレタンの使用量を低減できるのでコスト低減に寄与する。
【0021】
(4)副ダクト31の吹出口には整流板31fを設けて空調風が後部座席の乗員の左右の足に吹き出されるようにしたので、より一層均等な空調が行われる。
(5)主ダクト21の内部には突起21d,21eを、副ダクト31R,31Lの内部には突起31g,31hを設けたので、ダクト21,31が乗員に踏まれてもつぶれることがない。
(6)副ダクト31の吹出口31bの下流側にダクト支持脚31eを設け、その支持脚31eの内部に吹出口31bと連通する空間31dを設けたので、空調風のゴミや水分をこの空間31dに貯めることができる。また、支持脚31eにより副ダクト31の安定性が向上する。
【0022】
以上では、RV車両の第2,第3列の後部座席へ空調風を導くダクトについて説明したが、空調装置7の後席吹出用ダクト8R,8Lについても同様に、ダクト8R,8Lが車室内の床とほぼフラットになるようにしても良い。後部座席が第2列だけのRV車両、第2列、第3列がスライド式でないRV車両、あるいはRV以外の車両にも本発明を適用して、ダクトが床面とほぼフラットになるようにすることができる。後部座席が左右方向に3列設けられ、それぞれが単独でスライドする場合には、スライドレールは6本設けられるので、副ダクトを3本設ければよい。
【0023】
主ダクト21と副ダクト31R,31Lを分割構造にしたが、一体型にしてもよい。断熱層としてチップウレタンを敷き詰めたが、その他の断熱材料を使用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による車両用空調装置が適用されるRV車両を側方から見た内部構造図
【図2】図1を上方から見た図
【図3】主ダクトの斜視図
【図4】図3のIV−IV線断面図
【図5】図3のV−V線断面図
【図6】副ダクトの斜視図
【図7】図6のVII−VII線断面図
【図8】副ダクトの吹出口の拡大斜視図
【図9】図6のIX−IX線断面図
【図10】副ダクト先端の吹出口グリルの斜視図
【符号の説明】
2R,2L:第2列後部座席 3R,3L:第3列後部座席
4:スライドレール 9:ボディサイド
10:後席空調装置 21:主ダクト
21a:導入口 21b,21c:導出口
21D:ダミーダクト 31R,31L:副ダクト
31b:吹出口 41:フロアパネル
42:断熱空間 43:チップウレタン
44:カーペット
Claims (4)
- 車両後部側壁の内部に配設された空調ユニットと、
後部車室に少なくとも左右2列に配列され、スライドレールに沿ってそれぞれ車両前後方向にスライドする左右一対の後部座席と、
前記スライドレールと干渉しない位置で車両左右方向に延設され、前記空調ユニットから吹出される空調風を車室内方に導く主ダクトと、
前記スライドレールの間を車両前後方向に延設され、前記主ダクトから導入された空調風を前記左右一対の後部座席の下方でそれぞれ開口された吹出口から吹き出す左右一対の副ダクトとを備え、
前記左右一対の副ダクトから吹き出される空調風の風量が均等になるように、前記主ダクトの下流側の空調風通路を狭くしたことを特徴とする車両用空調装置。 - 請求項1の車両用空調装置において、
前記主および副ダクトの厚みをフロアパネルに敷設された断熱層と略同一となし、前記主および副ダクトの配索軌跡に沿って前記断熱層が取り除かれた前記フロアパネル上に前記主および副ダクトを配索したことを特徴とする車両用空調装置。 - 請求項1または2に記載の車両用空調装置において、
前記左右一対の副ダクトの前記吹出口の下流側にダクト支持脚を設け、その支持脚の内部に前記吹出口と連通する空間を設けたことを特徴とする車両用空調装置。 - 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の車両用空調装置において、
前記主ダクト、前記副ダクト内にダクトが上下方向につぶれることを防止する部材を所定間隔で設けたことを特徴とする車両用空調装置。
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