JP3705457B2 - アルミニウム材の陽極酸化処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、長尺のアルミニウムまたはその合金の帯板状、線状、または箔状等の陽極酸化処理方法に関し、特に、アルミニウムまたはその合金の表面に一度生成された陽極酸化皮膜面に、さらに後段として給電する時に発生する問題点を解決することができる陽極酸化処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、長尺のアルミニウムまたはその合金(以下、アルミニウム材と略記する。)の連続電解処理は、平版印刷版用支持体、アルマイト電線、電解コンデンサーの製造などに用いられる陽極酸化処理を始めとして電解着色処理、電解研磨処理、電解エッチング処理など広い範囲に実用化されている。
従来、アルミニウム材の連続電解処理は、特開昭48ー26638号、特公昭58ー24517号、特開昭47ー18739号の各公報等に示されている電解処理方法で行われており、この方法はいわゆる液中給電方式と呼ばれている。
【0003】
この液中給電方式による電解処理装置としては、例えば、図5に示す装置でありこの電解処理装置は、直流を用いた陽極酸化のためのもので、アルミニウム材1を負に帯電するための給電部2、その負に帯電したアルミニウム材1を陽極酸化処理するための電解部3および給電部2と電解部3間の液中での電流短絡を防止するために設けられた中間部4の三つの部分によって構成されている。そして、給電部2と電解部3には、給電電極5と電解電極6が電解液中に配置され、これらの給電電極5と電解電極6は直流電源7を介して接続されている。
【0004】
このような陽極酸化処理装置において、直流電源7からの電流は、給電部2で給電電極5から電解液を介してアルミニウム材1に流れ、その電流がアルミニウム材1内を電解部3方向に流れ、電解部3においてアルミニウム材1から電解液を介して電解電極6に流れる。これにより、電解部3においてアルミニウム製品1の表面に陽極酸化皮膜が生成する。この液中給電法によれば、直接給電法のように被処理物を電極などに接触させることがないので、給電時のスパークの発生、キズ故障の発生などが防止でき、安定性の高いラインを実現できる。
【0005】
しかしながら、このような陽極酸化処理装置には種々の問題がある。
第一に、電解ラインの高速化、陽極酸化皮膜量の増加等を安定に行うことができなかった。すなわち、生産性を向上させるために陽極酸化処理ラインを高速化する際や、品質性能を向上させるために陽極酸化皮膜量を増加する際には、供給電流量を上げなければならず、供給電流量を上げるとアルミニウム材でのオーム損による電圧降下が増加する。従って電源の電解電圧を増大させることが必要となった。
【0006】
そして、このように電源の電解電圧を増大させると、供給電力量が増大するので、ランニングコストが増加し、かつ、電源能力を大きくする必要があるので設備コストも増加することになる。また、電解電圧が大きくなることから、給電電極5と電解電極6の間におけるアルミニウム材内のジュール熱の発生量が大きくなるので、アルミニウム材および電解液を定常の規定温度にまで冷却するための冷却費も増加することになる。以上のようにこの装置で電解処理ラインの高速化を図ろうとすると、極めて高価なものになる。
【0007】
第二に、断面積の小さいアルミニウム材では、陽極酸化処理ラインの高速化等が困難である。すなわち、給電部と電解部の間の中間部では、供給される全電流がアルミニウム材に流れるため、供給電流量が大きい場合、線状、箔状、薄物の帯板状等の断面積の小さいアルミニウム材は必要以上に発熱し、溶断する。従って、断面積の小さいアルミニウム材の場合は、供給電流量に限界があり、陽極酸化処理ラインの高速化、酸化皮膜量の増加等を行うことは困難である。
【0008】
第三に、陽極酸化処理装置の前処理装置に、腐食、漏電等の防止対策を採らねばならない。すなわち、陽極酸化処理の後工程として、塗装工程のような有機溶剤を使用する工程を持つ場合など、これらの後工程におけるアルミニウム材の電位が高くなることによる引火、爆発などの発生を防止するため、一般的に、陽極酸化処理工程後のアルミニウム製品を、例えばアースロールなどの手段により接地することが行われる。
【0009】
しかし、この方法では、陽極酸化処理槽より後処理側のアルミニウム材の電位は、ほぼアース電位に保たれるが、陽極酸化処理槽より前処理側のアルミニウム材の電位はそれに比べ高くなる。このために、陽極酸化処理槽よりアルミニウム材内を通過してラインの前方向へ流れ、陽極酸化処理槽の前処理装置および後処理装置を経て、直流電源に戻ってくる電流の回路が発生する。この電流のために、陽極酸化処理装置の前処理として行われている各種の処理装置において、配管や送液ポンプに用いられている金属部品の腐食、スパーク故障、漏電の発生等様々な弊害が生じる。
【0010】
従って、これらの弊害の発生を防止する対策を採らねばならず、非腐食性の材料を用いたり、絶縁材を用いたりする必要があるので、設備が複雑になり、設備コストやメンテナンスコストが増大する。また、生産性向上のために陽極酸化処理ラインを高速化する際や品質性能を向上させるために陽極酸化皮膜量を増加する際は、供給電流量を上げる必要があり、陽極酸化処理槽より前側のアルミニウム材の電位がより高くなるので、特に顕著な問題となる。
【0011】
以上のような問題点を解決し、電力コストや冷却のための工程コスト等のランニングコストを大幅に低減でき、かつ設備コストも低減できる電解処理装置は、米国特許第5、181、997号公報、特開平4ー280997号公報(米国特許第5、207、881号に対応)に示されている電解処理方法がある。
【0012】
これらの方法は、電解部の前後の処理部から電流を供給し、電解処理を行う方法であるので、前後給電電解処理法と呼ぶことにするが、この方法による電解処理装置としては、例えば電源共通法や電源分離法と呼ぶ方法を使用する電解処理装置がある。さらに従来の図5に示す装置を1ユニットとして二つ以上の複数のユニットを長手方向に連続的に、あるいは間をおいて連結させた装置(2ユニット)もある。
【0013】
これらの電解処理装置は、直流を用いた陽極酸化のためのものであり、アルミニウム材を陽極酸化処理するための電解部、該電解部の前段および後段に(アルミニウム材の走行方向を基準とする)設けられ、アルミニウム材に電流を供給するための前段給電部および後段給電部、それらの間の前段中間部および後段中間部で構成されている。電解部ならびに前段および後段給電部には電解液が満たされており、板状のアルミニウム材がこの電解液中を走行するように構成されている。
この電解部には電解電極が設けられ、各々の給電部には前段給電電極および後段電極が設けられている。そして、前段および後段給電電極が直流電源の(+)側に接続されるとともに、電解電極が直流電源の(−)側に接続され、直流電源の接続の違いによって、上述のように電源共通法と電源分離法とがある。
【0014】
電源共通法では、電源から前段給電部および後段給電部に流れる電流は、アルミニウム材、電解液等の電気抵抗からなる電解処理装置全体の電気抵抗が最小となるように自動的に振り分けられる。
電源分離法では、前段給電電極と電解部の前半電解電極からなる電流経路、および後段給電電極と電解部後半電解電極からなる電流経路が構成されるので、電源共通法におけるような電気抵抗を最小とする現象は起こらない。しかし、前段給電部と後段給電部へ給電する複数の電源からの電流を最適に振り分けることにより、電源共通法には及ばないが、電解処理装置全体の電気抵抗が最小となるように近づけることが可能である。
【0015】
一方、図5の装置を連結させた装置は多段給電電解処理法と呼ぶことにするが、例えば、第一給電部、第一中間部、第一電解部の順で配置される1セットの後に、第二給電部、第二中間部、第二電解部の順で配置される1セットが続く構成としている。
各セットにおいて、電解部ならびに給電部には電解液が満たされており、各々の電解部には電解電極が各々の給電部には給電電極が各々設けられている。そして、第一給電電極が直流電源の(+)側に接続され、第一電解電極がその直流電源の(−)側に接続されている。同様に、第二給電電極が他の直流電源の(+)側に接続され、第二電解電極がその直流電源の(−)側に接続されている。
【0016】
以上のような連続電解処理装置で連続電解処理を行うには、アルミニウム材を走行させるとともに、直流電源を投入する。すると、直流電流は、給電部の給電電極から電解液を介してアルミニウム材へと流れる。次に、電解部において電解液を介して電解電極へと流れ、電源に戻る。従って、アルミニウム材は、電解部において陽極として働き、表面に陽極酸化皮膜が生成される。
【0017】
これらの連続電解処理装置では、電解部へ電流を供給するのに、前段給電部あるいは、第一給電部を介するルートと、後段給電部あるいは、第二給電部を介するルートの二つのルートで行うので、それぞれのルートでの供給電流量を等しくすれば、一つのルートで行う場合に比べて1/2の電流量でよく、従って、電解時の電圧が減少する。また、二つのルートで給電することにより、各ルートでのアルミニウム材の電流が流れる距離が短くなり、従って、電圧が小さくともよいことになる。さらに、電解処理装置に入る時のアルミニウム材の電位は、一つのルートで給電する場合に比べて低くなるので、配管や送液ポンプに用いられる金属部品の腐食、スパーク故障の発生、漏電の発生等の弊害を少なくすることができる。
【0018】
なお、陽極酸化皮膜表面から給電する例としては、以下のものがある。すなわち、アルミニウムあるいはその合金からなる平版印刷版用支持体の摩耗性、現像性、腐食性を改良するため、粗面化されたアルミニウム板を初めに硫酸電解液中で陽極酸化し、次に硫酸とリン酸からなる電解液中で陽極酸化する二段電解処理法が米国特許第4,396,470号公報に示されている。
【0019】
化学的、機械的、および/あるいは電気化学的に粗面化された平版印刷版用支持体のアルカリ抵抗性を高め、現在のベルト式装置で比較的高速でかつ大きな費用をかけずに実施でき、酸化物の再溶解が少ないか、または起きず、硫酸溶液中での陽極酸化で生成された酸化物皮膜の公知の確固たる特性を維持する工程を提供するため、硫酸をベースにした電解液中で陽極酸化し、次にリンを含むアニオンからなる水溶性電解液中やヒ素、バナジウム、モリブデン等を含む水溶性電解液中で陽極酸化する二段電解処理法が米国特許第4,554,057号公報及び特開昭58ー153699号公報(米国特許第4,554,216号に対応)に示されている。
【0020】
機械的、化学的、および/あるいは電気化学的に粗面化された平版印刷版用支持体の染料等によるカブリの発生防止、印刷版の画像部と非画像部のコントラスト改良、耐アルカリ性の向上等の性能を向上を図るため、リン酸電解液中で陽極酸化し、次に硫酸電解液中で陽極酸化する二段電解処理法が特公平4ー37159号公報(米国特許第4,566,952号に対応)に示されている。
【0021】
機械的、化学的、および/あるいは、電気化学的に粗面化された平版印刷版用支持体が耐アルカリ性に優れ、現在の製造ラインで高速に多大な費用をかけずに製造できる工程を提供するため、リン酸-フリー電解液中で陽極酸化し、次に硫酸電解液中で陽極酸化する二段電解処理法が米国特許第4,606,975号公報に示されている。
【0022】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の液中給電方式電解処理法には、電解部で表面に陽極酸化皮膜が生成されたアルミニウム材を後段給電部あるいは複数の電解処理ユニットからなる電解処理装置の二段目ユニット以降の給電部に導き、給電(後給電と呼ぶことにする。)すると、陽極酸化皮膜の局部破壊や甚だしい時には剥離が起こる場合があり、アルミニウム材の表面に均一な皮膜を形成することが不可能となり、アルミニウム製品とはなり得ないと言う問題があった。
【0023】
また、板状のアルミニウム材の場合、電解部で陽極酸化皮膜が生成される時、電流がエッジ部へ集中したり、裏面へ廻り込んだりするので、表面および裏面エッジ部では、陽極酸化皮膜量が多くなると言う現象が発生し、給電部で後給電された時に、表面および裏面のエッジ部の陽極酸化皮膜は、アルミニウム材の中央部に比べ、破壊や剥離が起こり易くなる場合があり、同様に製品とはなり得ないと言う問題があった。一方、前述の陽極酸化皮膜面から給電する例には、この問題や解決法についての記述は見当たらない。
【0024】
後給電された電流は、皮膜面を通ってアルミニウム材に流れ、この時の電流の方向は、電解部でのそれとは逆となる。このような方向に電流を流すことを陽極酸化皮膜のカソード分極(Cathodic polarization)と呼ぶが、カソード分極は、陽極酸化皮膜の局部破壊と素地金属の溶解を発生させ、ピットを生成させると言われている。そのメカニズムは、「電解液中の水素イオンが陽極酸化皮膜中の欠陥部を通して皮膜のバリヤー層内に入り、金属素地/バリヤー層界面で放電し、水素ガスを発生させ、水素ガスの発生量が多くなると、皮膜が破壊され、破壊部分への電流集中が起こり、その部分のPHが増大し、局部溶解となる。」と考えられている。
【0025】
従って、皮膜の局部破壊・溶解を避けるため、皮膜を有しない面(裏面と呼ぶことにする。)からのみ給電を行うことも考えられる。しかしながら、様々な幅のアルミニウム材が電解処理される場合、給電電極の幅をアルミニウム材の最小幅以下にするとともに、長手方向に長くし、給電電極の必要面積を確保しようとすると、設備が複雑になるばかりでなく、設備コストが増大したり、また、給電部電極と電解部電極間の距離が長くなるので、オーム損による電圧降下が増加し、電源の電解電圧を増大させる結果、ランニングコストを上昇させたり、さらに、電解処理槽より前側のアルミニウム材の電位が高くなるので、漏電が多くなる等の問題が起こる。
【0026】
そして、たとえ、このような問題が解決できたとしても、液中給電方式では、アルミニウム材の、特にエッジ部では、電流がアルミニウム材の表面に廻り込み、皮膜面から給電され、さらに、電解処理装置によっては、電解部での陽極酸化において、電流の裏面への廻り込みが起こり、裏面エッジ部のみならず、中央部にも酸化皮膜が生成されるので、皮膜面からの給電を完全に防止することはできない。従って、給電電極をアルミニウム材の裏面側のみに設置するのは、特に有利とは言えない。
【0027】
本発明の目的は、上記の問題を解決し、前後給電電解処理法および/あるいは、多段給電電解処理法おいて、陽極酸化皮膜面から給電しても陽極酸化皮膜の局部破壊や剥離を起こすことなく皮膜を形成し、品質・性能を確保できるアルミニウム材の陽極酸化処理法を提供することにある。
【0028】
【課題を解決するための手段及び作用】
本発明は上記目的を、
アルミニウム又はその合金からなるアルミニウム材に対して陽極酸化処理する電解部と、前記アルミニウム材に電流を供給する給電部とを用い、前記アルミニウム材の表面を連続的に陽極酸化処理するアルミニウム材の陽極酸化処理方法であって、
前記給電部は、前記アルミニウム材が走行する方向に対する前記電解部の前段に設けられた前段給電部と、後段に設けられた後段給電部とを有し、
前記電解部と前記前段給電部によって前記アルミニウム材の表面を陽極酸化処理し、
前記陽極酸化処理後のアルミニウム材の表面に、前記後段給電部によって、電流密度と、給電時間と、既に生成された陽極酸化皮膜量との関係式:
(電流密度)4/3×(給電時間)3/2×(陽極酸化皮膜量)2/3≦5100 ・・・・(1)
1≦給電時間≦10、 0.5≦陽極酸化皮膜量≦6.0 ・・・・(2)
但し、電流密度:[A/dm2]
給電時間:[秒]
陽極酸化皮膜量:[g/m2]
を満足させて給電することによって達成する。
【0029】
【発明の実施の形態】
本発明は給電部及び電解部によって陽極酸化処理されたアルミニウムまたはその合金に対して、更に、その陽極酸化処理された面から給電する形態となる陽極酸化処理方法を示すものである。
このような陽極酸化処理方法を実施する電解処理装置としては、図2および図3に示す装置がある。さらに従来の図5に示す装置を1ユニットとして二つ以上の複数のユニットを長手方向に連続的に、あるいは間をおいて連結させた図4に示すような装置(2ユニット)もある。
【0030】
まず、図2および図3に示した電解処理装置は、直流を用いた陽極酸化のためのものであり、アルミニウム材1を陽極酸化処理するための電解部3、該電解部3の前段および後段に(アルミニウム材の走行方向を基準とする)設けられ、アルミニウム材1に電流を供給するための前段給電部2aおよび後段給電部2b、それらの間の前段中間部4aおよび後段中間部4bで構成されている。
【0031】
電解部3ならびに前段および後段給電部2a、2bには電解液が満たされており、かつ電解部には電解電極6a、6b、6c、6dが、各々の給電部には前段給電電極5aおよび後段電極5bが設けられている。そして、前段および後段給電電極5a、5bが直流電源7a、7b、7c、7dの(+)側に接続されるとともに、電解電極6a、6b、6c、6dが直流電源7a、7b、7c、7dの(−)側に接続されている。アルミニウム材1は、板状であり、電解部3、前段および後段給電部2a、2bの電解液中で、図中右方向に走行するように設けられている。この直流電源7a、7b、7c、7dの接続の違いから、図2の方式を電源共通法、図3の方式を電源分離法としている。
【0032】
一方、図4については、前述のように図5の装置を連結させた形状の装置であり、多段給電電解処理法(図4では、二段給電電解処理法と呼ぶ)とであり、アルミニウム材1を陽極酸化処理するための第一電解部3a、第二電解部3b、該第一電解部3aおよび第二電解部3bの前段に各々設けられてアルミニウム材1に電流を供給するための第一給電部2aおよび第二給電部2b、それらの間の第一中間部4aおよび第二中間部4bで構成されている。図では2段であるが、この段数については特に限定する必要はない。
【0033】
電解部3a、3bならびに第一給電部2aおよび第二給電部2bには電解液が満たされており、かつ各々の電解部には電解電極6a、6b、6c、6dが各々の給電部には第一給電電極5aおよび第二電極5bが各々設けられている。そして、第一給電電極5aが直流電源7a、7bの(+)側に接続されると共に、第一電解電極6a、6bが直流電源7a、7bの(−)側に接続されている。同様に、第二給電電極5bが直流電源7c、7dの(+)側に接続されると共に、第二電解電極6c、6dが直流電源7c、7dの(−)側に接続されている。
【0034】
上記図の構成の電解処理装置において、各電解部で陽極酸化処理された後の面から給電する状態が後給電であり、上記のように陽極酸化処理の効率を上げるために、複数の給電部及び電解部の系列を繋ぐと、後給電となって陽極酸化皮膜からの給電が避けられず、この後給電では前述のような陽極酸化皮膜の破壊・剥離が発生しがちである。この現象は、水素ガスの発生量、発生した水素ガスの抜ける量および抜けるための皮膜構造、皮膜強度によってその程度が異なると考えられるので、皮膜の破壊・剥離について鋭意検討した。
【0035】
その結果、特に、後給電電流密度、後給電時間、及び、後給電処理までに形成された陽極酸化皮膜量に密接な関係があること、これらの条件を最適に選択すれば、陽極酸化皮膜の破壊・剥離が起こらないことを見い出した。
すなわち、後段(後給電)の電流密度が小さく、且つ、この後段の給電時間が短く、さらに前段(後給電処理前までで陽極酸化皮膜を形成する給電で前給電と呼ぶ)で形成した皮膜量が少ない場合は、皮膜の破壊・剥離は起こり難いが、後段電流密度が高くかつ後段給電時間が長く、さらに前段(前給電)で形成した皮膜量が多い場合は、容易に起こる傾向にあることが判った。
【0036】
ここで、皮膜量はアルミニウム材によって異なり、アルマイト製品の場合は数10μm、平版印刷版用支持体の場合は最大約1.3μmである。陽極酸化皮膜の破壊・剥離は、前給電で形成された後の後給電時の皮膜量に関係があり、皮膜量が多い場合に起こり易く、少ない場合に起こり難いので、一般的には、皮膜量が少ない方が有利である。しかしながら、陽極酸化皮膜の破壊・剥離は、前給電で形成された後の後給電時の皮膜量のみで決まるものではなく、皮膜量以外に後給電電流密度、後給電時間に関係がある。
【0037】
例えば、前給電による皮膜量が多い場合、後給電時の電流密度が低くかつ後給電の給電時間が短い時は、破壊・剥離は起こり難く、前給電による皮膜量が少ない場合、後給電時の電流密度は高くかつ後給電の給電時間が長い時は、起こり易い。従って、一概に、皮膜量が少ない方が有利であるとは言えない。平版印刷版の皮膜量は、印刷性能等の品質設計の要求により、ほぼ一義的に決定されるので、その皮膜量において、皮膜の破壊・剥離が起こらない後給電電流密度、後給電時間を決めることができる。
【0038】
図2および図3の液中給電法においては、電解部で目標の皮膜量が生成された後に後給電がされるが、図4においては、目標の皮膜量の約1/2が生成された後に後給電される。従って、平版印刷用支持体の陽極酸化皮膜量は、アルマイト皮膜量に比べて少なく、現在の所、中央部において、最大約4.0g/m2〜5.0g/m2であるので、前後給電電解法の場合は最大約4.0g/m2〜5.0g/m2の皮膜、二段給電電解法の場合は最大約2.0g/m2〜2.5g/m2の皮膜を有する支持体に後給電することになる。しかし、エッジ部では、上記の中央部の皮膜量より多くなり、中央部と同じ給電時間、電流密度で後給電されると、エッジ部で破壊・剥離が起こり易くなるので、エッジ部の皮膜量を含めて、皮膜の破壊・剥離が起こらない電流密度および給電時間条件を探索する必要がある。また、電解部では、裏面エッジ部にも皮膜が生成されるので、この皮膜も含めて条件を探索する必要がある。
【0039】
後給電部電極の配置は、アルミニウム材の両側の面に対して配置する場合や、陽極酸化皮膜を有する面(表面と呼ぶことにする。)またはその反対の面(裏面と呼ぶことにする)である片側面のみに配置する場合があり、電流密度はアルミニウム材に対するこのような電極配置によって異なる。例えば、電極を板状のアルミニウム材の両側に配置した場合は、給電面積は、表面および裏面における電極の長さとアルミニウム材の幅との積を、表・裏で足し合わせたものとなり、片側に配置した場合は、表面または裏面の片側の電極の長さとアルミニウム材の幅との積となり、電流密度は、各々これらの面積で給電量を除したものになる。
【0040】
しかしながら、給電電極をアルミニウムの両側面に配置した場合は、表面の皮膜が電気抵抗となるため、表面と裏面の電流密度が異なる。表面の電流密度は、裏面のそれよりも低くなり、皮膜量が多くなるに従い、さらに低くなる。従って、表面および裏面の正確な電流密度を知るには、各皮膜量における表面および裏面への電流分配比を予め調べておく必要がある。特に、エッジ部で皮膜の破壊・剥離を起こさない後給電電流密度は、エッジ部の皮膜量、給電部での必要給電量、給電面積および給電時間によって決定される。前後給電電解法および二段給電電解法の給電条件が同じである場合は、後給電時の皮膜量が少ない二段給電電解法の方が、皮膜の破壊・剥離にとって有利である。
【0041】
後給電時間は、給電電極の長さおよびアルミニウム材の走行スピードによって設定される。ある量の皮膜を生成させる場合、給電電極が長い時や走行スピードが低い時は、給電時間は長くなり、一般的には陽極酸化皮膜の破壊・剥離には不利であるが、給電量が少なくかつ電流密度が低くなるので、必ずしも不利とは言えない。一方、給電電極が短い時や走行スピードが高い時は、給電時間は短くなり、一般的には有利であるが、給電量が多くなり、電流密度が高くなるので、必ずしも有利とは言えない。前後給電電解法および二段給電電解法の給電時間が同じである場合は、後給電時の皮膜量が少ない二段給電電解法の方が、皮膜の破壊・剥離にとって有利である。
【0042】
なお、後給電用の電解液としては、代表的なものに硫酸、燐酸、シュウ酸もしくはそれらの塩の水溶液、またはそれらの混合液などがあるが、所望の品質を得るために最適なものを選択する。電解液の濃度、温度も自由に選択できる。また、電解部と給電部の電解液の条件は同一でもよいし、それぞれ異なってもよい。また、電源波形としては、直流、交流波形、交直重畳波形など、所望の品質を得るために最適なものを選択する。
【0043】
さらに、アルミニウム材としては、陽極酸化皮膜の生成に供されるものであれば良く、特に、平版印刷版用支持体としては、JISA1050材、JISA1100材等の公知のアルミニウム板を用いることができる。上記アルミニウム材は、必要に応じて公知の技術を用い、前処理、エッチング処理および機械的、化学的、電気化学的な粗面化処理が行われてもよい。このようにして処理されたアルミニウム材は、本発明による陽極酸化処理が適用される。特に、平版印刷版用支持体の場合は、その後、必要に応じて公知の親水化処理等が施され、さらに従来より知られている下塗層、感光性樹脂層、マット層が必要に応じて設けられ、感光性平版印刷版とすることができる。
【0044】
以上説明したように、後給電による陽極酸化皮膜の破壊・剥離は、給電時の皮膜量、電流密度および時間の条件に密接に関係があり、各条件が一義的に決まるものではない。従って、これらの条件の関係を明確にする必要がある。前処理、エッチング処理および機械的、化学的、電気化学的な粗面化処理が行われたアルミニウム板を用い、陽極酸化により皮膜量を変えた試料を作製し、次に、その試料に電流密度および時間を変えて給電し、後給電試料とした。そして、この後給電試料を解析し、皮膜の破壊・剥離を評価した結果、皮膜量、時間および電流密度の関係が、前述の実験式を満足すれば、皮膜の破壊・剥離は起こらないことを見い出した。
【0045】
すなわち、後給電時に皮膜の破壊・剥離が起きない条件は、(電流密度)4/3、(給電時間)3/2、(陽極酸化皮膜量)2/3の積(≦5100)で規定でき、皮膜の破壊・剥離への影響は、給電時間、電流密度、皮膜量の順に大きいと言える。そして、給電時間および皮膜量には範囲があるが、これは、特に、平版印刷版用支持体の場合、この条件を満たさない場合は、皮膜の破壊・剥離が発生することを意味する。
【0046】
平版印刷版用支持体の場合、品質設計上、皮膜量が優先的に決まるので、給電時間および後給電電流密度を最適に決定することができる。例えば、必要皮膜量が4.0g/m2の場合、前後給電電解法では後給電時の皮膜量は、4.0g/m2であるので、給電時間を8秒とすれば、皮膜面からの給電電流密度が、約29.1[A/dm2]以下で、給電時間を6秒とすれば、約40.2[A/dm2]以下で、給電時間を4秒とすれば、約63.4[A/dm2]以下で、皮膜の破壊・剥離は起こらないことを意味する。
【0047】
また、二段給電電解法では、電力コストを低減するためには、一段目および二段目電解部に給電する給電量を同じにすればよいが、一段目電解部で生成され、二段目電解部で後給電される時の皮膜量は、2.0g/m2であるので、給電時間を8秒とすれば、皮膜面からの給電電流密度が、約41.1[A/dm2]以下で、給電時間を6秒とすれば、約56.8[A/dm2]以下で、給電時間を4秒とすれば、約89.7[A/dm2]以下で、皮膜の破壊・剥離が起こらないことを意味する。後給電電流密度の点で見ると、二段給電電解法の方が、皮膜の破壊・剥離にとって、より安全側であると言える。
【0048】
このようにして目標とする皮膜量に対し給電時間と電流密度の関係を調べることにより、後給電における皮膜の破壊・剥離が起こらない最適な給電時間および電流密度を選択することができる。
以下、本発明によるアルミニウム材の陽極酸化処理方法の具体的な実施例及び比較例を図面に基づいて説明し、前述の関係式の根拠とするが、具体的実施例は、本発明の理解を深めるための記載で、本発明がこれら具体例によって制限されるものではない。
【0049】
【実施例】
図5に示す構造の陽極酸化装置(電解部長12m、給電部長3m)を利用し、その他機械的粗面化装置、エッチング装置および電気化学的粗面化装置等からなる板状アルミニウムの連続処理装置(詳細は省略)を用いて、厚さ0.24mm、幅1000mmのアルミニウム板を、搬送速度36m/分で搬送し、図5の陽極酸化装置で、給電量を変えて陽極酸化処理を行い、各々0.8g/m2、1.5g/m2、2.5g/m2、4.0g/m2および5.5g/m2の酸化皮膜を生成させた後、巻き取った。そして、これらの皮膜量を有するアルミニウム板を巻き戻しながら切り出し、一般的な陽極酸化処理を施した各々を試料−A、試料−B、試料−C、試料−D、試料−Eとした。
なお、電解液は、電解部、給電部ともに硫酸水溶液を使用し、陽極酸化装置以外の装置の処理条件は、同一とした。
【0050】
次に、これらの試料を図1に示すような電解処理装置を用い、給電量(電流密度)および給電時間を変えて処理し、後給電試料とした。
この電解処理装置は、カーボンからなる電極8、試料の取付部9および処理槽10で構成される電解処理槽11、直流電源12、電解液13を貯留する貯槽14および電解液13を循環するポンプ15からなり、電解液13は、供給配管16、処理槽10の電解液供給口17を通り、処理槽10に供給される。供給された電解液13は、電解液排出口18からリターン配管19を通り貯槽14に戻るが、電解液排出口18から排出されない電解液13は、オーバーフロー口20からオーバーフロー配管21を通り、貯槽14に戻る。貯槽14の電解液13は、コントローラー(図示せず)によって、一定温度に制御される。
【0051】
そして、電解処理槽11中の電極8は、直流電源12の(+)側に、試料は(−)側に接続されている。このような状態で直流電源12から電流を供給すると、電流は、電極8から電解液13を通り、試料22の絶縁テープ23で覆われていない部分(給電部分)の皮膜面から試料22の中に入り、直流電源12に戻る。また、電極8と試料22間の距離は、50mmであり、電解液13は、硫酸水溶液(硫酸濃度:150g/リットル、温度:35℃)を用いた。また、試料22の電解液13に浸漬される部分の内、給電部分を除いた部分は、プラスチック性の絶縁テープ23で覆われ、給電部分以外からの電流は流れないようにするとともに、給電部分の面積を25cm2とした。
【0052】
なお、後給電した試料の皮膜の破壊剥離発生評価としては、以下のような方法を採用した。すなわち、角度が150度、Rが2mmのコーナー部を有する台を製作し、皮膜面を上にして台のコーナー部に押しつけ、30度折り曲げる。次に、試料を裏返し、試料の折り曲げ部分を台のコーナー部を合わせ、同様に台に押しつけ、60度折り曲げる。さらに、試料を裏返し、試料の折り曲げ部分を台のコーナー部に合わせ、試料がフラットになるまで30度折り曲げる。このようにして折り曲げた試料には亀裂が入る。
【0053】
この折り曲げ部分に、塗膜の付着性を試験する方法の一つであるARS(Aluminum Research Standard:アルミニウム表面処理技術研究組合試験規格)1411碁盤目試験に述べられているような貼り方で粘着テープを貼り、それを引き剥す。そして、折り曲げ部分を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、皮膜の破壊・剥離の発生を確認する。
【0054】
(実施例1)
試料(A、B、C、D、E)について、給電時間を1、3、5、8および10秒とした時の評価結果を各々、下記の表1、表2、表3、表4および表5に示す。比較試料として後給電のない試料を用いて評価した。表中の空欄は、試料作製および評価の未実施を意味する。なお、評価記号の意味は、次の通り。
○:剥離発生なし、△:剥離発生若干あり、×:剥離発生あり
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
【表4】
【0059】
【表5】
【0060】
上記結果の給電量(A)を電流密度(A/dm2)に換算した後、電流密度、給電時間(秒)および皮膜量(g/m2)の関係において、皮膜の破壊・剥離が発生しない領域を求め、前述の実験式で表した。
【0061】
(実施例2)
図3に示す構造の電源分離型前後給電電解処理法の陽極酸化装置(電解部長12m、前段給電部長3m、後段給電部長3m、前段および後段給電電極長2.4m)を有し、その他機械的粗面化装置、エッチング装置および電気化学的粗面化装置等からなる板状アルミニウムの連続処理装置(詳細は省略)を用いて、厚さ0.24mm、幅1000mmのアルミニウム板を、搬送速度36m/分で搬送しながら、この陽極酸化装置で、陽極酸化処理を行い、2.4g/m2の酸化皮膜を生成させた後、巻き取った。
【0062】
この時、陽極酸化装置においては、電源7aおよび7bからの電流は、前段給電部2aに設けられた前段給電電極5aに流れ、電解液を介して板状アルミニウムに流れ、電解部3で板状アルミニウムの表面に酸化皮膜を生成させ、電解部3に設けられた電解電極6a、6bを通り、電源に戻る。一方、電源7cおよび7dからの電流は、後段給電部2bに設けられた後段給電電極5bに流れ、同様に電解液を介して板状アルミニウムに流れ、電解部3で板状アルミニウムの表面に酸化皮膜を生成させるが、電源7aおよび7bから前段給電部2に給電される電気量と電源7cおよび7dから後段給電部2bに給電される電気量は同じにした。後段給電部2bにおける酸化皮膜面での給電電流密度は、約23(A/dm2)であり、後段給電部2bでは、2.4g/m2の酸化皮膜面から給電することになった。なお、電解液および陽極酸化装置以外の装置の処理条件は、実施例1と同じとした。
【0063】
次に、この試料を巻き戻しながら切り出し、試料−Fとした。実施例1と同様な方法で試料―Fの皮膜の評価を行ったが、試料の中央部およびエッジ部とも、皮膜の破壊・剥離は見られなかった。
【0064】
(実施例3)
図2に示すように電源7a、7b、7c、7dの(+)側を給電電極5a,5bに接続し、電流を前段給電電極5aおよび後段給電電極5bに供給する電源共通型前後給電電解処理法の陽極酸化装置(電解部長12m、前段給電部長3m、後段給電部長3m、前段および後段給電電極長2.4m)とした以外は、実施例2と同じようにして陽極酸化処理を行い、2.4g/m2の酸化皮膜を生成させた後、巻き取った。
【0065】
この時、陽極酸化装置においては、電源7a、7b、7c、7dからの電流は、陽極酸化処理装置全体の電気抵抗が最小になるように前段給電部2aおよび後段給電部2bに分配されるが、前段給電部2aに設けられた前段給電電極5aに流れ、電解液を介して板状アルミニウムに流れた電流は、電解部3で板状アルミニウムの表面に酸化皮膜を生成させ、電解部3に設けられた電解電極6a、6b、6c,6dのいずれかを通り、電源に戻る。
【0066】
一方、後段給電部2bに設けられた後段給電電極5bに流れ、同様に電解液を介して板状アルミニウムに流れた電流は、電解部3で板状アルミニウムの表面に酸化皮膜を生成させ、電解部3に設けられた電解電極6a、6b、6c,6dのいずれかを通り、電源に戻る。電源7aおよび7bから前段給電部2に給電される電気量と電源7cおよび7dから後段給電部2bに給電される電気量は同じにした。後段給電部2bにおける酸化皮膜面での給電電流密度は、約23(A/dm2)と推定するが、正確ではない。後段給電部2bでは、2.4g/m2の酸化皮膜面から給電することになった。
【0067】
次に、この試料を巻き戻しながら切り出し、試料−Gとした。実施例1と同様な方法で試料―Gの皮膜の評価を行ったが、試料の中央部およびエッジ部とも、皮膜の破壊・剥離は見られなかった。
【0068】
(実施例4)
図4に示す構造の二段給電電解処理法の陽極酸化装置(第一および第二電解部長各6m、第一給電部長3m、第二給電部長3m、第一および第二給電電極長各2.4m)を有し、その他機械的粗面化装置、エッチング装置および電気化学的粗面化装置等からなる板状アルミニウムの連続処理装置(詳細は省略)を用いて、厚さ0.24mm、幅1000mmのアルミニウム板を、搬送速度36m/分で搬送しながら、この陽極酸化装置で、陽極酸化処理を行い、2.4g/m2の酸化皮膜を生成させた後、巻き取った。
【0069】
この時、陽極酸化装置においては、電源7aおよび7bからの電流は、第一給電部2aに設けられた第一給電電極5aに流れ、電解液を介して板状アルミニウムに流れ、第一電解部3aで板状アルミニウムの表面に酸化皮膜を生成させ、第一電解部3に設けられた電解電極6a、6bを通り、電源に戻る。
【0070】
一方、電源7cおよび7dからの電流は、第二給電部2bに設けられた第二給電電極5bに流れ、同様に電解液を介して板状アルミニウムに流れ、第二電解部3bで板状アルミニウムの表面に酸化皮膜を生成させるが、電源7aおよび7bから第一給電部2aに給電される電気量と電源7cおよび7dから第二給電部2bに給電される電気量は同じであり、第二給電部2bにおける酸化皮膜面での給電電流密度は、約23(A/dm2)であった。第二給電部2bでは、1.2g/m2の酸化皮膜面から給電することになった。なお、電解液および陽極酸化装置以外の装置の処理条件は、実施例1と同じとした。
【0071】
次に、この試料を巻き戻しながら切り出し、試料−Hとした。実施例1と同様な方法で試料―Hの皮膜の評価を行ったが、試料の中央部およびエッジ部とも、皮膜の破壊・剥離は見られなかった。
【0072】
【発明の効果】
本発明は、後段給電部において、陽極酸化皮膜面から給電する時、電流密度、皮膜量および給電時間の条件を最適化することにより、陽極酸化皮膜の局部破壊や剥離が起こらないので、均一な皮膜を形成でき、品質・性能を満足したアルミニウム製品とすることができる。また、この方法によって供給電力の低減が可能であり、冷却負担やランニングコストを減らし、かつ、電源の昇電能力の大きなものを必要としないので、設備費の少ない電源設備とすることができる。また、腐食、スパーク故障、漏電等の発生を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による後段陽極酸化の実験用電解処理装置の概略図。
【図2】本発明が適用可能な電源共通型前後給電電解処理法における電解処理装置の概略図。
【図3】本発明が適用可能な電源分離型前後給電電解処理法における電解処理装置の概略図。
【図4】本発明が適用可能な二段給電電解法における電解処理装置の概略図。
【図5】従来法による電解処理装置の概略図。
【符号の説明】
1 アルミニウム材
2 給電部
3 電解部
4 中間部
5 給電電極
6 電解電極
7 電源
8 電極
9 試料取付部
10 処理槽
11 電解処理槽
12 電源
14 貯槽
15 ポンプ
16 供給配管
17 電解液供給口
18 電解液排出口
19 リターン配管
20 オーバーフロー口
21 オーバーフロー配管
22 試料
23 絶縁テープ
Claims (1)
- アルミニウム又はその合金からなるアルミニウム材に対して陽極酸化処理する電解部と、前記アルミニウム材に電流を供給する給電部とを用い、前記アルミニウム材の表面を連続的に陽極酸化処理するアルミニウム材の陽極酸化処理方法であって、
前記給電部は、前記アルミニウム材が走行する方向に対する前記電解部の前段に設けられた前段給電部と、後段に設けられた後段給電部とを有し、
前記電解部と前記前段給電部によって前記アルミニウム材の表面を陽極酸化処理し、
前記陽極酸化処理後のアルミニウム材の表面に、前記後段給電部によって、電流密度と、給電時間と、既に生成された陽極酸化皮膜量との関係式:
(電流密度)4/3×(給電時間)3/2×(陽極酸化皮膜量)2/3≦5100 ・・・・(1)
1≦給電時間≦10、 0.5≦陽極酸化皮膜量≦6.0 ・・・・(2)
但し、電流密度:[A/dm2]
給電時間:[秒]
陽極酸化皮膜量:[g/m2]
を満足させて給電することを特徴とするアルミニウム材の陽極酸化処理方法。
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