JP3692887B2 - 角形鋼管部材の内ダイアフラム形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、一対の溝形鋼を用いて角形断面とした角形鋼管部材における内ダイアフラムの形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の内ダイアフラムの形成方法としては、図7の(a) および(b) に示すように、一対の溝形鋼30, 30を角形断面に仮組みし各溝形鋼30, 30のフランジ先端どうしをシーム溶接31して角形鋼管部材32とする前の段階で、一対の溝形鋼30, 30の内側面の対向位置に、それぞれダイアフラム33を固着しておくものが一般に知られている。
【0003】
そして、この形成方法では、ダイアフラム33を固着した一対の溝形鋼30, 30をシーム溶接31にて角形鋼管部材32とすることで、一対の溝形鋼30, 30の各ダイアフラム33, 33が同一平面上で並んだ状態となり、内ダイアフラム34となる。
また、この形成方法における、各溝形鋼内側面の対向位置への各ダイアフラム33, 33の固着は、各ダイアフラム33, 33の溝形鋼内側面側の三辺である外周面に、図7の(c) に示すように、CO2 溶接に代表される多層盛り溶接35を実施することで行われている。
【0004】
このような従来の形成方法では、予めそれぞれの内側面にダイアフラムを固着した一対の溝形鋼を角形断面に仮組みして角形鋼管部材とするので、角形鋼管部材への内ダイアフラムの形成を容易に行うことができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前述した従来の形成方法では、ダイアフラムを溝形鋼の内側面に固着する多層盛り溶接を、ダイアフラムの溝形鋼内側面側の三辺に対して行うので、三回の溶接工程が必要となる。
【0006】
従って、一対の溝形鋼を角形断面とする角形鋼管部材では、各溝形鋼にダイアフラムを固着するので、計六回の溶接工程が必要となる。
このように、前述した従来の形成方法では、内ダイアフラムを形成するのに際して、多くの溶接工程が必要となり、施工効率が劣るものであった。
【0007】
また、前述した従来の形成方法において、ダイアフラムの溝形鋼内側面側の三辺に多層盛り溶接で形成された溶接部への超音波探傷検査は、仮組みが完了して角形断面(閉鎖断面)となった後では精度良く溶接欠陥を検出することが困難となるので、一対の溝形鋼を角形断面に仮組みする前の段階で、各ダイアフラムの溶接部に実施することとなる。
【0008】
ところが、一対の溝形鋼を角形断面とする時のシーム溶接部も、超音波探傷検査を実施する必要があるので、探傷検査の工程が二回に分断されてしまうこととなる。このことも、従来の形成方法を施工効率の劣るものとしていた。
一方、前述した従来の形成方法では、図7の(a) に示したように、角形鋼管部材の断面中央部において、各ダイアフラムの間に間隙部(スリット部)が生じているので、各ダイアフラムが内ダイアフラムとして完全に一体化していない。
【0009】
そのため、この従来の形成方法で各ダイアフラムを設けた角形鋼管部材を柱とし、この角形鋼管部材に梁を取付けるような場合には、各ダイアフラム間の間隙部(スリット部)によって、梁からの応力伝達が不十分となってしまう。
従って、前述した従来の形成方法で各ダイアフラムを設けた角形鋼管部材を、大きな断面の梁を取付ける柱としては使用することができない。
【0010】
このような応力の伝達不足を解消するためには、各ダイアフラムの板厚を大きくして、各ダイアフラムの強度や剛性を向上させることが考えられる。
しかし、このダイアフラムの板厚を大きくする場合は、溝形鋼の内側面側三辺に行う多層盛り溶接毎に、パス回数が増え溶接工数が増大することにより、経済性が大きく損なわれることとなる。しかも、この溶接工数が増大することは、施工性を劣るものともしてしまう。
【0011】
なお、このダイアフラムの強度や剛性を向上させる方法としては、特開平1─275817号公報(図8参照)に、溝形鋼30の長手方向における各ダイアフラム33, 33の近傍位置で、角形の閉鎖断面とした一対の溝形鋼30, 30に長締めボルト36を貫通させて締付けるものが示されている。
【0012】
この図8に示した方法によれば、各ダイアフラム33, 33の板厚を増大させることなく、各ダイアフラム33, 33の強度や剛性を向上させることはできる。
しかし、この図8に示した方法では、一対の溝形鋼30, 30を角形の閉鎖断面とした角形鋼管部材32(鋼管柱)に形成したボルト孔37により、最も作用応力が厳しいダイアフラム近傍の鋼管断面に欠損を生じさせることになる。
【0013】
そのため、このように、角形の閉鎖断面である角形鋼管部材(鋼管柱)とした一対の溝形鋼に長締めボルトを貫通させて締付けても、角形鋼管部材(鋼管柱)に作用する軸力およびモーメントに効率よく抵抗することができずに、結局、不経済となってしまう。
【0014】
この発明は前述した事情に鑑みて創案されたもので、その目的は角形鋼管部材への内ダイアフラムの形成を容易に行えると共に、その内ダイアフラムの力学性能を優れたものにすることのできる角形鋼管部材における内ダイアフラムの形成方法を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
この発明は、角形鋼管部材の内ダイアフラムの形成を容易に行える方法であり、予めそれぞれの内側面にダイアフラムを固着した一対の溝形鋼を角形断面に仮組みし、各ダイアフラムで角形鋼管部材の内ダイアフラムを形成する方法を用いることとする。
【0016】
即ち、この発明(請求項1に係る発明)では、予め一対の溝形鋼の内側面対向位置に半割内ダイアフラムを、溝形鋼の内側面に沿って表裏に裏当材を取付けた状態で仮止めしておく。
その後、一対の溝形鋼を角形断面に仮組立した後に、内ダイアフラムの外周面と表裏の裏当材および前記溝形鋼の内側面とで囲まれる間隙を溶接孔部として利用して溝形鋼の内側面全周に渡ってエレクトロスラグ溶接することにより、内ダイアフラムを角形鋼管部材の内側に固着している。
【0017】
この方法では、一対の溝形鋼を角形断面の角形鋼管部材に仮組みした後、各半割内ダイアフラムで形作った内ダイアフラムの全周四辺にエレクトロスラグ溶接を実施するので、四回の溶接工程で溶接による固着が完了できるようにしている。
【0018】
従って、従来の形成方法では、一対の溝形鋼を角形鋼管部材に仮組みする前に、各半割内ダイアフラム毎に三辺(三回)の多層盛り溶接が必要で計六回の溶接工程が必要となるのに対して、この発明は、前述したように最小の溶接工程数で済むので、施工効率の優れた形成方法となっている。
【0019】
また、この発明の形成方法では、エレクトロスラグ溶接によって半割内ダイアフラムを溝形鋼の内側に固着しているので、従来の多層盛り溶接による形成方法と比較して、ダイアフラムの板厚が大きい場合でも溶接工程数の低減を可能としている。
【0020】
さらに、この発明の形成方法で用いたエレクトロスラグ溶接は、超音波探傷による溶接欠陥の検出が、一対の溝形鋼である角形鋼管部材の外面から可能なものである。
そのため、一対の溝形鋼を角形鋼管部材として一体化する時のシーム溶接を含めた全ての溶接行程が完了した後に、溶接検査を一度にまとめて実施できるようになり、このことも、この発明を施工効率の優れた形成方法としている。
【0021】
一方、請求項2に係る発明では、一対の溝形鋼を角形断面に仮組立する際に、両溝形鋼間で対向する半割内ダイアフラムのこば面間および表裏の裏当材のこば面間が密着または近接するようにしている。
この方法では、半割内ダイアフラムのこば面間および表裏の裏当材のこば面間が密着または近接することにより、その密着または近接させた部分にエレクトロスラグ溶接での溶着部が形成できるようにしている。
【0022】
そして、この溶着部は、各半割内ダイアフラム間の応力伝達面積を増やすことができ、固着した各半割内ダイアフラムからなる内ダイアフラムの力学性能を優れたものにすることができる。
請求項3に係る発明は、一対の溝形鋼を角形断面に仮組立する際に、両溝形鋼間で対向する半割内ダイアフラムのこば面の溝形鋼内側面と近接する部分に切欠き部を設けるようにしている。
【0023】
そして、この切欠き部は、溶接孔部の孔断面積を拡大することができ、溶着部(請求項2に係る発明)をより大きく形成できるようにしている。このことにより、固着した各半割内ダイアフラムからなる内ダイアフラムの力学性能をより優れたものにできる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の角形鋼管部材における内ダイアフラムの形成方法を、図示する一実施形態によって説明する。
この発明の形成方法(請求項1に係る発明)は、図1および図2に示すように、一対の溝形鋼2a,2bのフランジ先端どうしにシーム溶接3を実施して角形断面とする角形鋼管部材2における内ダイアフラム1の形成方法であって、一対の溝形鋼2a,2bの内側面2cの対向位置に半割内ダイアフラム1a,1bをそれぞれ設けて内ダイアフラムとする、所謂、スプリットダイアフラムを用いるものである。
【0025】
そして、内ダイアフラム1の形成に際しては、先ず、半割内ダイアフラム1a,1bを形成しておくと共に、この半割内ダイアフラム1a,1bにおける、溝形鋼2a,2bの内側面2c側となる外周面1cの部分の表裏に、裏当て材4を取付けておく。
次に、裏当て材4が溝形鋼2a,2bの内側面2cに接するようにした状態で、一対の溝形鋼2a,2bの内側面における対向位置のそれぞれに半割内ダイアフラム1a,1bを仮止めすると共に、この半割内ダイアフラム1a,1bを仮止めした一対の溝形鋼2a,2bを角形鋼管部材2に仮組みすることにより、各半割内ダイアフラム1a,1bが同一平面上で並んだ状態として内ダイアフラム1を形作る。
【0026】
次に、各半割内ダイアフラム1a,1bで形作った内ダイアフラム1の外周面1cと、各裏当て材4と、溝形鋼2a,2bの内側面2cとで囲まれた間隙を溶接用孔部5として利用しエレクトロスラグ溶接6を実施すると共に、このエレクトロスラグ溶接6を内ダイアフラム1の全周に渡って実施して、各半割内ダイアフラム1a,1bで形作った内ダイアフラム1を角形鋼管部材2の内側面2cに固着する。
【0027】
このようにして、一対の溝形鋼2a,2bを角形断面としてなる角形鋼管部材2への内ダイアフラム1の形成が完了する。
なお、この実施形態での溝形鋼2a,2bは、プレスまたは圧延等によって製造される市販の溝形鋼に限定されず、溶接組立て等を含む、略溝形鋼の鋼材一般をいうものとする。
【0028】
また、この実施形態(この発明の請求項2に係る発明)では、一対の溝形鋼2a,2bを角形鋼管部材2に仮組みする時に、各半割内ダイアフラム1a,1bにおける溝形鋼2a,2bの内側面2c側とならない外周面、即ち、各半割内ダイアフラム1a,1bのこば面1dどうしを密着させると共に、この密着させる半割内ダイアフラム1a,1bのこば面1d側である、裏当て材4のこば面4aどうしを密着させる。
【0029】
この各半割内ダイアフラム1a,1bのこば面1dどうしと、裏当て材4のこば面4aどうしとを密着させることにより、エレクトロスラグ溶接6の実施時に、溶接用孔部5のこば面1dおよびこば面4aの部分から、溶融金属が流出することを防止する。
【0030】
そして、この溶接用孔部5のこば面1dおよびこば面4aの部分から溶融金属が流出することを防止することにより、エレクトロスラグ溶接6の実施時に、各半割内ダイアフラム1a,1bのこば面1dどうしを密着させた部分(こば面密着部1e)の両端部に、溶融金属の流出がない溶着部10を形成する。
【0031】
このような、この発明の角形鋼管部材2における内ダイアフラム1の形成方法を、図面に基づいてより詳しく述べると、次の通りとなる。
即ち、図1は、この発明における内ダイアフラム1の形成方法の一実施形態を示すもので、図2の(a) は一対の溝形鋼2a,2bを角形断面に仮組みする前の状態を示すもので、図2の(b) はエレクトロスラグ溶接6が行われる前の溶接用孔部5の断面を示すもので、図1の(a) は仮組みが完了して、シーム溶接3やエレクトロスラグ溶接6の本溶接を実施する状態を示すもので、図1の(b) はエレクトロスラグ溶接6が完了した溶接用孔部5の断面を示すものである。
【0032】
そして、内ダイアフラム1の形成に際しては、前述したように、半割内ダイアフラム1a,1bにおける溝形鋼2a,2bの内側面2c側となる外周面1c(内側面2c側となる三辺)の部分の表裏に裏当て材4を隅肉溶接7で仮止めすると共に、この裏当て材4を溝形鋼2a,2bの内側面2cに隅肉溶接7にて仮止めする。
【0033】
このことにより、各溝形鋼2a,2bに半割内ダイアフラム1a,1bの仮止めが完了し、その各半割内ダイアフラム1a,1bにおける各溝形鋼2a,2bの内側面2c側となる三辺に、前述したように、エレクトロスラグ溶接6の溶接用孔部5が形成れることとなる。
【0034】
この時の裏当て材4と溝形鋼2a,2bの内側面2cとを仮止めする隅肉溶接7は、裏当て材4と溝形鋼2a,2bの内側面2cとの間に生じた寸法誤差に起因する隙間を埋めるように施工しておく。おおよその目安として、2mmを超える隙間は、隅肉溶接7で塞いでしまうのが好ましい。
【0035】
その後、半割内ダイアフラム1a,1bを仮止めした各溝形鋼2a,2bを角形断面に仮組みして、溝形鋼2a,2bの内側面2cに接していない半割内ダイアフラム1a,1bのこば面1dどうしと、溝形鋼2a,2bのフランジ内側面2cに接する半割内ダイアフラム1a,1bの外周面1cの部分に取付けた裏当て材4のこば面4aどうしとが、互いに密着(メタルタッチ)するようにする。
【0036】
即ち、二つの半割内ダイアフラム1a,1bの間の間隙が略ゼロとなるように、内側面対向位置に半割内ダイアフラム1a,1bを取付けた一対の溝形鋼2a,2bを角形断面に仮組みする。この場合、溶接用孔部5の近傍の密着面の隙間は、約2mm以下とすることが望ましい。
【0037】
このように、一対の溝形鋼2a,2bを角形断面に仮組みした時には、各半割内ダイアフラム1a,1bにおける溝形鋼2a,2bのフランジ内側面2cに接する二辺に形成した溶接用孔部5が連通して連続した一本の孔部となる。即ち、溶接用孔部5は、各溝形鋼2a,2bのフランジ側である二本と、各溝形鋼2a,2bののウエブ側である二本との四本となる。
【0038】
そして、この四本の溶接用孔部5に対して行うエレクトロスラグ溶接6と、仮組みした一対の溝形鋼2a,2bを角形鋼管部材2とすべく角形断面に固着するシーム溶接3との手順を、次に説明する。
先ず、エレクトロスラグ溶接6としては、図1の(a) に示すように、溝形鋼2a,2bからなる角形鋼管部材2の上面側(図面に向かって上側)に穿設した上側開口部8aより溶接用ワイヤー(図示せず)を導入すると共に、この溶接用ワイヤー(図示せず)を下側開口部8bの直下に設けたスタートタブ9から垂直に引き上げることで行われる。
【0039】
このエレクトロスラグ溶接6は、1パスにて、半割内ダイアフラム1a,1bの外周面1cと裏当て材4と溝形鋼2a,2bの内側面2cとで囲まれた空間(溶接用孔部5)を溶融金属で満たしていくこととなる。
そして、このようなエレクトロスラグ溶接6が完了すると、こば面密着部1eの両側に溶融金属の流出がない溶着部10が形成される。なお、図1の(a) において、こば面密着部1eにおける溶着部10の長さをLwで示すと共に、こば面密着部1eにおける未溶着部の長さをLnで示す。
【0040】
この垂直方向のエレクトロスラグ溶接6が終了したら、図示しないが、角形鋼管部材2を90°回転させて、溶接用ワイヤーを挿入するために上下端(90°回転させた状態での上下端)に新しい開口部を穿設し、前述のエレクトロスラグ溶接6と同様の手順でエレクトロスラグ溶接を実施する。
【0041】
即ち、各溝形鋼2a,2bのフランジ側である二本の溶接用孔部5と、各溝形鋼2a,2bののウエブ側である二本の溶接用孔部5とに対して、四回のエレクトロスラグ溶接6を実施する。
そして、最後に、溝形鋼2a,2bにおけるフランジ先端どうしの突き合わせ部分を、角形鋼管部材2の全長にわたりシーム溶接3を実施する。なお、このシーム溶接3は、エレクトロスラグ溶接6の前に実施してもよい。
【0042】
なお、エレクトロスラグ溶接の順序に関しては、溶接部の収縮により、メタルタッチさせたこば面密着部1eが開く可能性があるので、前述した手順のように行った方が良い。
即ち、先ず、溝形鋼2a,2bのフランジ側である半割内ダイアフラム1a,1bの外周面1c二辺のエレクトロスラグ溶接6を先に実施して、半割内ダイアフラム1a,1bを拘束した後、残る溝形鋼2a,2bのウエブ側である半割内ダイアフラム1a,1bの外周面1c一辺のエレクトロスラグ溶接6を実施するのが好ましい。
【0043】
図3は、この発明の形成方法における外周面密着部1d両側の溶着部10が、構造性能に及ぼす効果を確認した実験例を示すグラフである。
ここでの実験例とは、図4に示すように、角形鋼管部材2を柱部材としてその内ダイアフラム1の位置に梁フランジ11を取付けると共に、この梁フランジ11に漸増する引張力を与えるものである。
【0044】
そして、図3に示したグラフは、図4に示した内ダイアフラム1の変形増分δと作用荷重Pとの関係を、この発明の形成方法における内ダイアフラム1と、従来の形成方法におけるスプリットダイアフラム形式とで比較したものである。
なお、図4に示した実験例での、各半割内ダイアフラム1a,1bのこば面1dどうしの間隔寸法は、従来のスプリットダイアフラムが19mmであるのに対して、この発明の内ダイアフラム1は0mmである。
【0045】
また、こは面密着部1e両側の溶着部10の長さLw(図1の(a) 参照)は、従来のスプリットダイアフラムが0mmであるのに対して、この発明の内ダイアフラム1は10mmである。
この図3および図4から読み取れることは、次の通りである。即ち、この発明の形成方法における、こば面密着部1e両端の溶着部10の長さLw(図1の(a) 参照)は、角形鋼管部材2の鋼管板厚の約半分と比較的小さい。ところが、この溶着部10は、内ダイアフラム1の曲げ変形を拘束するので、図3のグラフに示すように、最大耐力で二割弱、初期剛性で一割強の向上が確認されている。
【0046】
図5は、この発明の請求項3に係る実施形態を示すものである。ここでは、一対の溝形鋼2a,2bを角形断面に仮組立する際に、両溝形鋼2a,2b間で対向する半割内ダイアフラム1a,1bのこば面1dの溝形鋼内側面2cと近接する部分に切欠き部12を設けるようにしている。
【0047】
そして、この切欠き部12によって、各半割内ダイアフラム1a,1bのこば面1dの近傍部分における溶接用孔部5の孔断面積を大きくしている。
即ち、切欠き部12によって、内ダイアフラム1の外周面1cと、表裏の裏当て材4と、溝形鋼2a,2bの内側面2cとで囲まれた間隙である溶接用孔部5のうち、溝形鋼2a,2bのフランジ内側面2cに接する溶接用孔部5の孔断面積を、こば面1dの部分において切欠き部12で拡大させている。
【0048】
この切欠き部12で溶接用孔部5の孔断面積を拡大することにより、各半割内ダイアフラム1a,1bにおけるこば面密着部1e両端の溶着部10の長さを増大させるものである。
具体的には、半割内ダイアフラム1aにおけるこば面1d(メタルタッチされる面)の角部に、図5の(a) または図5の(b) に示すような形態の切欠き部12を設けるなどして、この切欠き部12の部分により、溶接用孔部5の孔断面積を拡大させている。
【0049】
このように、こば面密着部1eの両側における溶着部10の長さ(Lw,図1の(a) 参照)を増大させることで、各半割内ダイアフラム1a,1bからなる内ダイアフラム1の曲げ変形に対する拘束力が増し、内ダイアフラム1の強度および剛性をさらに向上させることができる。
【0050】
図6は、内ダイアフラム1の別形態を示すものであり、角形鋼管部材2の内部にコンクリートを充填して、鋼管コンクリート柱とする場合のものである。ここでは、内ダイアフラム1の中央部に、コンクリート打設用の開口部13を設けている。
【0051】
【発明の効果】
(1) この発明の内ダイアフラム形成方法では、一対の溝形鋼を角形断面である角形鋼管部材に仮組みした後に、内側4辺のエレクトロスラグ溶接を実施するので、4回の溶接工程で、各半割内ダイアフラムの溶接による固着が完了することとなる。
【0052】
従って、仮組前の一対の溝形鋼の段階で、それぞれの溝形鋼に対してダイアフラムの溶接を行う場合、各ダイアフラム毎に三辺の計6辺、即ち、6回の溶接工程が必要となるのに対し、この発明の形成方法では、前述したように最小の溶接工程数で済むため、効率がよい。
【0053】
(2) また、この発明の内ダイアフラム形成方法では、半割内ダイアフラムをエレクトロスラグ溶接によって溝形鋼の内側に固着しているので、従来の多層盛り溶接と比較して、ダイアフラムの板厚が大きい場合でも溶接工程数の低減が可能となる。
【0054】
(3) この発明におけるエレクトロスラグ溶接は、角形鋼管部材の内側面に沿って行われるため、超音波探傷による溶接欠陥の検出を角形鋼管部材の外面から比較的容易に行うことができる。そのため、一対の溝形鋼どうしを角形鋼管部材として一体化する時のシーム溶接等を含め、全ての溶接行程が完了した後に、溶接検査を一度にまとめて実施するといったことが可能となる。
【0055】
(4) 請求項2に係る発明では、一体化される両溝形鋼間で対向する半割内ダイアフラムのこば面間および表裏の前記裏当材のこば面間が密着または近接することで、エレクトロスラグ溶接の際に、溶接孔部からの溶融金属の流出を防止し、確実で信頼性に富む溶接が可能となる。また、対向する溝形鋼間でエレクトロスラグ溶接が連続することによる接合部の補剛,補強効果も期待できる。
【0056】
(5) 請求項3に係る発明では、対向する溝形鋼どうしが接合される位置近傍で、エレクトロスラグ溶接のための溶接用孔部の孔断面積が大きくなるため、さらに接合部の補剛,補強効果が大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a) はこの発明の形成方法による角形鋼管部材への内ダイアフラムの形成状態を示す断面図で、(b) は(a) のA−A線拡大部分断面図である。
【図2】 (a) はこの発明の形成方法における角形鋼管部材の形成状態を示す断面図で、(b) は(a) のB−B線部分断面図である。
【図3】この発明の形成方法で形成した内ダイアフラムと従来の形成方法で形成したスプリットダイアフラムとにおける変形増分と作用荷重との関係を比較したグラフである。
【図4】柱部材とした角形鋼管部材の内ダイアフラム位置に梁を設けた状態を示す概略図である。
【図5】 (a) および(b) はこの発明の形成方法の別形態であり、溶接用孔部の孔断面積を大きく形成した状態を示す概略図である。
【図6】この発明の形成方法によって形成する内ダイアフラムの別形態を示す断面図である。
【図7】 (a) は従来の形成方法での内ダイアフラムの形成状態を示す断面図で、(b) は(a) のC−C線断面図で、(c) は(a) のD−D線拡大部分断面図である。
【図8】従来の形成方法での内ダイアフラムの形成状態を示す断面図である。
【符号の説明】
1…内ダイアフラム、1a,1b…半割内ダイアフラム、1c…外周面、1d…こば面、1e…こば面密着部、2…角形鋼管部材、2a,2b…溝形鋼、2c…内側面、3…シーム溶接、4…裏当て材、4a…端面、5…溶接用孔部、6…エレクトロスラグ溶接、7…隅肉溶接、8a…上側開口部、8b…下側開口部、9…スタートタブ、10…溶着部、11…梁フランジ、12…切欠き部、13…開口部。
Claims (3)
- 一対の溝形鋼のフランジ先端どうしを溶接して角形断面とする角形鋼管部材の内ダイアフラム形成方法であって、予め前記一対の溝形鋼の内側面対向位置に半割内ダイアフラムを、溝形鋼の内側面に沿って表裏に裏当材を取付けた状態で、該表裏の裏当材を溝形鋼の内側面に仮止めすることで、仮止めしておき、前記一対の溝形鋼を角形断面に仮組立した後に、前記内ダイアフラムの外周面と表裏の裏当材および前記溝形鋼の内側面とで囲まれる間隙を溶接孔部として利用し溝形鋼の内側面全周に渡ってエレクトロスラグ溶接することにより、前記内ダイアフラムを角形鋼管部材の内側に固着することを特徴とする角形鋼管部材の内ダイアフラム形成方法。
- 前記一対の溝形鋼を角形断面に仮組立する際に、両溝形鋼間で対向する前記半割内ダイアフラムのこば面間および表裏の前記裏当材のこば面間が密着または近接するようにする請求項1記載の角形鋼管部材の内ダイアフラム形成方法。
- 前記一対の溝形鋼を角形断面に仮組立する際に、両溝形鋼間で対向する前記半割内ダイアフラムのこば面の前記溝形鋼内側面と近接する部分に切欠き部を設けるようにする請求項2記載の角形鋼管部材の内ダイアフラム形成方法。
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