JP3692660B2 - 電動パワ−ステアリング装置の制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、電動パワ−ステアリング装置の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両用の電動パワ−ステアリング装置は、操向ハンドルの操作によりステアリングシヤフトに発生する操舵トルクと車速を検出し、その検出信号に基づいて操舵補助指令値を算出し、算出された操舵補助指令値に応じてモ−タを駆動して操向ハンドルの操舵力を補助するものであり、操舵補助指令値の算出や操舵補助指令値に基づくモ−タの制御には、マイクロコンピユ−タを含む電子制御回路が使用されている。
【0003】
この種の電動パワ−ステアリング装置では、例えば操向ハンドルを一ぱいに切つてステアリング機構がその限界位置に達した場合、或いはタイヤが道路の縁石に当たり、操向ハンドルを回すことができない状態になつた場合(以下、これ等の状態を「端当て」という)には、操舵力を補助するモ−タは回転していないが操向ハンドルの操作により操舵トルクが発生しているから、モ−タには過大な電流が流れ続け、モ−タを焼損したり無駄に電力を消費することになる。このため、「端当て」状態を判定し、「端当て」状態の場合は、モ−タへ供給する電流を序々に減少させるように制御する構成が採用されている。
【0004】
「端当て」状態の判定では、操舵角速度センサにより直接に操舵角速度を検出して行う方法のほか、モ−タの角速度から判定することができる。モ−タの角速度を知るには、モ−タの回転速度を検出し、モ−タの回転速度からモ−タ角速度を推定する方法や、モ−タへ供給する電圧とモ−タ電流からモ−タの回転速度を推定し、推定したモ−タの回転速度からモ−タの角速度を推定する方法などが知られている。
【0005】
しかしながら、モ−タの角速度を得るためにモ−タの回転速度を検出する方法では回転速度センサ等の新たな部品を必要としてコストを増加させる結果となり、また、モ−タへの供給電圧とモ−タ電流からモ−タの回転速度を推定するときは、環境温度の変化やバツテリ電圧の変動により回転速度の推定値が変動して誤差が生じるという不都合がある。
【0006】
この対策として、本出願人はモ−タに発生する逆起電力、モ−タ端子間電圧及びモ−タ電流検出値に基づいてモ−タ角速度を推定する方法を提案した(特開平8−67262号公報参照)。
【0007】
即ち、モ−タに発生する逆起電力kT ωは、以下の式(1)により表わすことができる。
【0008】
kT ω=(VM−Ri) ・・・・・・・・・・・・・・・(1)
ここで、kT :逆起電力定数
ω:モ−タの角速度
VM:モ−タ端子間電圧
R:モ−タ端子間抵抗
i:モ−タ電流(検出値)
とする。
【0009】
従つて、モ−タの角速度ωは、以下の式(2)により表わすことができる。
【0010】
ω=(VM−Ri)/kT ・・・・・・・・・・・・・・(2)
即ち、逆起電力定数kT とモ−タ端子間抵抗Rはモ−タにより定まる固有の値であり、また、モ−タ端子間電圧VMはバツテリ電圧VBとモ−タを駆動パルスにより駆動するときのON/OFFの時間比率であるデユ−テイ比Dで決定(VM=VB×D)されるから、モ−タ電流検出値iを知ればモ−タの角速度ωを推定することができる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上記したモ−タの角速度ωの推定値の演算では逆起電力定数kT やモ−タ端子間抵抗Rを固有値として扱うが、これ等の値は設計仕様により定まるモデルモ−タの電気的特性により決まる値である。一方、実際に車両に装着されるモ−タの電気的特性である逆起電力定数kT やモ−タ端子間抵抗Rには、製造上の誤差などに基づくばらつきや、使用環境温度の変化による変動が生ずるから、上記したモデルモ−タの電気的特性との間に多少の誤差が生ずる。この結果、逆起電力定数kT にも誤差が生じ、モ−タの角速度ωの推定値には誤差が含まれる。この誤差をオフセツト誤差という。
【0012】
オフセツト誤差が含まれるモ−タの角速度ωの推定値を使用してモ−タの回転状態を判定すると、例えば操向ハンドルを保持した状態、即ちモ−タが回転していない状態にあるのに、モ−タが回転中であるとする誤信号を出力する可能性がある。この対策として、図1に示すように、モ−タの角速度ωに一定の不感帯a、aを設け、逆起電力kT ωが小さい範囲では角速度ωを零として扱うことが考えられるが、これでは、逆起電力kT ωが小さい範囲では角速度ωを推定できないという不都合を生じる結果となる。
【0013】
【課題を解決するための手段】
この発明は上記課題を解決するもので、少なくともステアリングシヤフトに発生する操舵トルクに基づいてモ−タ電流指令値を演算し、前記演算されたモ−タ電流指令値に基づいてモ−タ電流を制御して操舵トルクに応じた操舵補助力をステアリング機構に与える電動パワ−ステアリング装置の制御装置において、モ−タに発生する逆起電力の推定値に基づいてモ−タ角速度を推定演算するモ−タ角速度演算手段と、モ−タに流れる電流を検出するモ−タ電流検出手段と、前記演算されたモ−タ電流指令値及びモ−タ角速度演算値に基づいてモ−タ電流を制御する制御手段とを備え、前記モ−タ角速度演算手段にはモ−タ角速度の推定値に対してモ−タ電流検出値或いはモ−タ電流指令値に基づいて決定される所定幅の不感帯が設置され、演算されたモ−タ角速度推定値が前記不感帯の範囲内にあるときは演算されたモ−タ角速度推定値に関係なくモ−タ角速度推定値として零を出力することを特徴とする。
【0014】
そして、前記モ−タ角速度推定手段に設定される不感帯は、モ−タの温度変化によるモ−タ端子間抵抗の変動により発生するモ−タ端子間電圧の変動及びモ−タの製造時に生ずるモ−タ端子間抵抗のばらつきにより発生するモ−タ端子間電圧の変動などに基づいて生ずるモ−タ角速度推定値の変動幅よりも大きく設定するとよい。
【0015】
また、前記制御手段は、前記モ−タ角速度推定手段から出力されるモ−タ角速度推定値に基づいてモ−タの回転方向を識別する回転方向識別信号を出力するようにし、さらに、前記モ−タの回転方向識別信号に基づいてモ−タのロストルク補正信号を出力するようにすることができる。
【0016】
また、前記制御手段は、前記モ−タ角速度推定手段から出力されたモ−タ角速度推定値に基づいてステアリング機構の粘性を補正する粘性補正信号を出力するようにすることができる。
【0017】
さらに、前記制御手段は、ハンドル戻し状態が検出されたときは前記モ−タ角速度推定手段に設定されている不感帯を無効とする処理を行うとよい。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の特徴と発明の実施の形態を説明する。まずこの発明によるモ−タの角速度が小さい範囲でのモ−タ角速度ωの推定方法について説明する。
【0019】
モ−タの電気的特性であるモ−タ端子間抵抗Rに着目して、モデルモ−タの電気的特性と実際のモ−タの電気的特性との相違を検討すると、実際のモ−タの端子間抵抗Rは以下の式(3)で表すことができる。
【0020】
R=RM+ΔRt +ΔRp ・・・・・・・・・・・・・・(3)
ここで、R:実際のモ−タの端子間抵抗
RM:モデルのモ−タの端子間抵抗
ΔRt :温度による実際のモ−タの端子間抵抗の変動
ΔRp :製造誤差による実際のモ−タの端子間抵抗の変動
とする。
【0021】
したがつて、実際のモ−タの端子間電圧VMは以下の式(4)で表すことができる。
【0022】
VM=kT ω+(RM+ΔRt +ΔRp )×i ・・・・・(4)
ここで、VM:実際のモ−タの端子間電圧
i:モ−タ電流(検出値)
kT ω:実際のモ−タの逆起電力
とする。
【0023】
また、モデルモ−タの端子間電圧(VM)M は以下の式(5)で表すことができる。
【0024】
(VM)M =(kT ω)M +RM×i ・・・・・・・・・(5)
ここで、(kT ω)M :モデルモ−タの逆起電力
とする。
【0025】
したがつて、逆起電力の推定誤差eは以下の式(6)で表すことができる。
【0026】
即ち、逆起電力の推定誤差eはモ−タ電流iに比例する。したがつて、逆起電力の推定値に基づいてモ−タ角速度ωを推定するとき、モ−タ電流に比例した幅のモ−タの角速度の不感帯(図1における幅aの不感帯)を設定するときは、モ−タ電流が小さいときは不感帯の幅も小さくなるので、モ−タ角速度が小さい領域でも角速度ωを推定することが可能となる。
【0027】
そこで、この発明では、モ−タ角速度の推定値に対する不感帯の幅aをモ−タ電流i(或いはモ−タ電流指令値、実施例ではモ−タ電流検出値)に比例した幅に設定するものとし、その比例係数をモ−タの端子間電圧の変動の最大値(ΔRt +ΔRp )よりも大きく設定する。即ち、不感帯の幅aは、 a=b×i で表わされるが、比例係数bを(ΔRt +ΔRp )よりも大きく設定する。
【0028】
これにより、逆起電力の推定誤差eに基づくモ−タ角速度推定値の誤差は常に不感帯の幅aの範囲内にあり、オフセツト誤差を無くすことができる。
【0029】
【実施例】
以下、この発明の実施例について説明する。図2はこの発明を実施するに適した電動パワ−ステアリング装置の構成の概略を説明する図で、操向ハンドル1の軸2は減速ギア4、ユニバ−サルジョイント5a、5b、ピニオンラツク機構7を経て操向車輪のタイロツド8に結合されている。軸2には操向ハンドル1の操舵トルクを検出するトルクセンサ3が設けられており、また、操舵力を補助するモ−タ10がクラツチ9、減速ギア4を介して軸2に結合している。
【0030】
パワ−ステアリング装置を制御する電子制御回路13は、バツテリ14からイグニツシヨンキ−11を経て電力が供給される。電子制御回路13は、トルクセンサ3で検出された操舵トルクと車速センサ12で検出された車速に基づいてモ−タ電流の制御目標値であるモ−タ電流指令値の演算を行い、演算されたモ−タ電流指令値に基づいてモ−タ10に供給する電流を制御する。
【0031】
クラツチ9は電子制御回路13により制御される。クラツチ9は通常の動作状態では結合しており、電子制御回路13によりパワ−ステアリング装置の故障と判断された時、及び電源がOFFとなつている時に切離される。
【0032】
図3は、電子制御回路13のブロツク図である。この実施例では電子制御回路13は主としてCPUから構成されるが、ここではそのCPU内部においてプログラムで実行される機能を示してある。例えば、位相補償器21は独立したハ−ドウエアとしての位相補償器21を示すものではなく、CPUで実行される位相補償機能を示す。
【0033】
以下、電子制御回路13の機能と動作を説明する。トルクセンサ3から入力された操舵トルク信号は、位相補償器21で操舵系の安定を高めるために位相補償され、電流指令値演算器22に入力される。また、車速センサ12で検出された車速信号も電流指令値演算器22に入力される。電流指令値演算器22は、入力されたトルク信号と車速信号に基づいて、モ−タ10に供給する電流の制御目標値であるモ−タ電流指令値Iを決定するものである。
【0034】
ハンドル戻し制御器23は、操舵トルク信号と車速信号、及び後述する角速度推定器32により推定演算されたモ−タ角速度に基づいてハンドル戻し状態を検出し、ハンドル戻し状態でないときは不感帯を設定するように制御する。また、ハンドル戻し状態であれば前記したオフセツト誤差は発生しないので、不感帯を設定しないように制御する。
【0035】
なお、ハンドル戻し状態とは、操向ハンドルを切つた後、ステアリング機構に設定されているセルフアライニングトルクにより操向ハンドルが自動的に直進位置に戻る状態で、操舵トルクは発生していないが、セルフアライニングトルクによりモ−タが回転力を受けている状態を言う。車速信号により走行中であること、及びトルクセンサから操舵トルクが検出されていない状態にも拘らずモ−タ角速度が検出(モ−タが回転している)されたとき、ハンドル戻し状態であると判定することができる。
【0036】
27は加算器で、電流指令値演算器22、ハンドル戻し制御器23、及び後述する収れん性制御器24、ロストルク補償器25、慣性補償器26からの出力を加算し、モ−タ電流指令値Iref を演算する。
【0037】
比較器28、比例演算器29、積分演算器30及び加算器31から構成される回路は、実際のモ−タ電流値iが電流指令値Iref に一致するようにフイ−ドバツク制御を行う回路である。
【0038】
比例演算器29では、モ−タ電流指令値Iref と実際のモ−タ電流値iとの差に比例した比例値が出力される。さらに比例演算器29の出力信号はフイ−ドバツク系の特性を改善するため積分演算器30において積分され、差の積分値の比例値が出力される。
【0039】
比例演算器29から出力された電流指令値と実際のモ−タ電流値との差に比例した比例値、及び積分演算器30から出力された積分値は、加算器31において加算演算され、演算結果である電流制御値Eがモ−タ駆動信号としてモ−タ駆動回路41に出力され、モ−タ10を駆動する。モ−タ10に流れるモ−タ電流iはモ−タ電流検出回路42により検出される。モ−タ駆動回路41及びモ−タ電流検出回路42については後述する。
【0040】
角速度推定器32は、電流制御値E、モ−タ電流i、及びバツテリ電圧に基づいてモ−タ角速度を推定演算する。即ち、電流制御値Eに含まれるモ−タを駆動するときのON/OFFの時間比率であるデユ−テイ比Dとバツテリ電圧VBに基づいてモ−タ端子間電圧VMを算出(VM=VB×D)し、前記式(2)に基づいて、モ−タの角速度ωを推定演算する。
【0041】
演算されたモ−タの角速度ω(推定値)は、ハンドル戻し制御器23に入力されるほか、収斂性制御器24、ロストルク補償器25、及び慣性補償器26に入力される。収斂性制御器24はモ−タ角速度ωと車速に基いて制御系の制御を収斂させ、安定性を高めるための信号を加算器27に出力する。ロストルク補償器25は、モ−タに発生するロストルクを補償するロストルク補償値を加算器27に出力する。
【0042】
なお、ロストルクとはモ−タの出力トルクのうちモ−タの構造に基く摩擦損失、及び磁気的要因に基く損失であり、このようなロストルクは、直進走行時に僅かな操舵が行なわれたときに操舵方向に対して意図しない力が付加されたり、反対方向の力が付加されたりして操舵感覚を悪化させるものである。この対策として、電流指令値をロストルクに相当する分だけ上乗せする方法も提案されているが、この方法では操舵トルクの検出値に僅かなドリフトがあると、操舵方向に対して反対方向の操舵補助力を与えたり、操向ハンドルが戻ろうとする場合に有効に作用しない。そこで、この発明では、ロストルクがモ−タの回転方向の関数(定数)であることに着目し、前記した本願方法により検出したモ−タの回転方向に対してロストルク補償値を電流指令値に加算するようにした。
【0043】
また、慣性補償器26はモ−タを含むステアリング機構の慣性モ−メントの影響を補償する補償値を電流指令値に加算するよう、加算器27に出力する。即ち、直進走行時に僅かな操舵が行なわれると、ステアリング機構の慣性モ−メントの影響により操舵方向に対して反対方向の力が付加され、操舵感覚を悪化させる。慣性モ−メントの大きさはモ−タ角速度ωの関数として表されるから、検出された角速度ωに応じた所定の補償値を電流指令値に加算し、慣性モ−メントの影響を補償する。
【0044】
図4にモ−タ駆動回路41の構成の一例を示す。モ−タ駆動回路41は加算器31から入力された電流制御値EをPWM信号と電流方向信号とに分離変換する変換部44、FET1 〜FET4 、及びそれ等FET1 〜FET4 のゲ−トを開閉駆動するFETゲ−ト駆動回路45等からなる。なお、昇圧電源46はFET1 、FET2 のハイサイド側を駆動する電源である。
【0045】
PWM信号(パルス幅変調信号)は、Hブリツジ接続されたFET(電界効果トランジスタ)スイツチング素子FET1 〜FET2 のゲ−トを駆動する信号で、加算器27において演算された電流制御値Eの絶対値によりPWM信号のデユ−テイ比(FETのゲ−トをON/OFFする時間比)が決定される。
【0046】
電流方向信号は、モ−タに供給する電流の方向を指示する信号で、加算器27で演算された電流制御値Eの符号(正負)により決定される信号である。
【0047】
FET1 とFET2 は前記したPWM信号のデユ−テイ比に基づいてゲ−トがON/OFFされるスイツチング素子で、モ−タに流れる電流の大きさを制御するためのスイツチング素子である。また、FET3 とFET4 は前記した電流方向信号に基づいてゲ−トがON或いはOFFされる(一方がONの時、他方はOFFとなる)スイツチング素子で、モ−タに流れる電流の方向、即ちモ−タの回転方向を切り換えるスイツチング素子である。
【0048】
FET4 が導通状態にあるときは、電流はFET1 、モ−タ10、FET4 、抵抗R1 を経て電流が流れ、モ−タ10に正方向の電流が流れる。FET3 が導通状態にあるときは、電流はFET2 、モ−タ10、FET3 、抵抗R2 を経て電流が流れ、モ−タ10に負方向の電流が流れる。
【0049】
モ−タ電流検出回路42は、抵抗R1 の両端における電圧降下に基づいて、正方向電流の大きさを検出し、また、抵抗R2 の両端における電圧降下に基づいて、負方向電流の大きさを検出する。検出された実際のモ−タ電流値iは、比較器28にフイ−ドバツクして入力される(図3参照)。
【0050】
次に、電子制御回路13で実行される、モ−タ角速度の推定演算、ハンドル戻し状態の判定、モ−タの回転方向の決定、ロストルク補償値の決定について、図5のフロ−チヤ−トにより説明する。
【0051】
まず、モ−タ電流検出回路42によりモ−タ電流iを検出し(ステツプP1)、また、バツテリ電圧VBとデユ−テイ比Dからモ−タ端子間電圧VMを算出する(ステツプP2)。次に、式(2)にモ−タ端子間電圧VM、モ−タ端子間抵抗R、及び検出されたモ−タ電流iを代入してモ−タ逆起電力KT ωを算出し、モ−タ固有の値である逆起電力定数KT で割り、モ−タ角速度ωを推定演算する(ステツプP3)。この処理は、図3における角速度推定器32の処理に対応する。
【0052】
モ−タ角速度ωが有限値を示すときは、車速センサ12により検出された車速信号とトルクセンサ3で検出された操舵トルクに基いてハンドル戻し状態を判定する(ステツプP4)。即ち、走行状態にあり、モ−タ角速度の方向と操舵トルクの方向とが一致しない場合に、ハンドル戻し状態と判定する。ハンドル戻し状態であると判定されたときは、演算されたモ−タ角速度ωの推定値に対して不感帯補正を行なわないように、即ち、逆起電力KT ωに対してモ−タ角速度ω(推定値)が比例するように制御する(ステツプP5)。
【0053】
また、ステツプP4の判定で、ハンドル戻し状態でないと判定されたときは、逆起電力KT ωがある範囲においては、モ−タ角速度ωが零になる電流値iに比例した幅の不感帯の処理を行なう。この処理は、図3におけるハンドル戻し制御器23の処理に対応する。即ち、逆起電力KT ω(推定値)の絶対値が不感帯(検出した電流値iに定数kを乗じた値(k・i))の絶対値との差が零より大きいか否かを判定し(|KT ω|−|k・i|≧0)(ステツプP6)、零より大きくない場合、即ち、逆起電力KT ω(推定値)が不感帯の範囲にあるときはモ−タ角速度ω(推定値)を強制的に零に設定し(ステツプP7)、また零より大きい場合は逆起電力KT ωの符号及び(|KT ω|−|k・i|)をモ−タ角速度ω(推定値)として設定する(ステツプP8)。
【0054】
モ−タ角速度ω(推定値)が零か否かを判定し(ステツプP9)、零の場合はモ−タが静止状態であるからロストルク補償値Ilsを零に設定する(ステツプP10)。また、ステツプP9の判定でモ−タ角速度ω(推定値)が零でない場合は、角速度ω(推定値)の符号が正か否か(ω>0)を判定し(ステツプP11)、正であればモ−タは例えば右方向に回転しているものと決定してロストルク補償値Ilsを予め設定されている値(a)に設定する(ステツプP12)。また、正でない場合、即ち負であればモ−タは例えば左方向に回転しているものと決定してロストルク補償値Ilsを予め設定されている値(−a)に設定する(ステツプP13)。
【0055】
【発明の効果】
以上説明したとおり、この発明の電動パワ−ステアリング装置の制御装置では、モ−タの角速度ωの推定値の演算において、設計仕様により定まるモデルモ−タの電気的特性と実際に車両に装着されるモ−タの電気的特性との差に基づくモ−タの角速度ωの推定値の誤差(オフセツト誤差)を補償するため、モ−タ角速度の推定値に対してモ−タ電流検出値或いはモ−タ電流指令値に基づいて決定される所定幅の不感帯を設置し、モ−タ角速度推定値が前記不感帯の範囲内にあるときは演算されたモ−タ角速度推定値に関係なくモ−タ角速度推定値を零とするものであるから、モ−タ角速度が小さい領域においてもモ−タ角速度を推定することができる。
【0056】
これにより、直進走行時など僅かな操舵が行われた場合においてもモ−タ角速度の推定ができ、モ−タの静止状態や回転方向を正確に検出することができるから、モ−タ角速度の符号により判定されたモ−タの回転方向に応じてロストルク補償値を電流指令値に加算(減算)するなど、直進走行時における僅かな操舵が行なわれたときなどの操舵感覚を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】モ−タが回転するときにモ−タに発生する逆起電力とモ−タ角速度との関係を説明する図。
【図2】電動パワ−ステアリング装置の構成の概略を説明する図。
【図3】電子制御回路のブロツク図。
【図4】モ−タ駆動回路の構成示すブロツク図。
【図5】モ−タ角速度の推定演算、ロストルク補償どを説明するフロ−チヤ−ト。
【符号の説明】
3 トルクセンサ
10 モ−タ
12 車速センサ
22 電流指令値演算器
23 ハンドル戻し制御器
24 収れん性制御器
25 ロストルク補償器
26 慣性補償器
27 加算器
28 比較器
29 比例演算器
30 積分演算器
31 加算器
32 角速度推定器
41 モ−タ駆動回路
42 モ−タ電流検出回路
Claims (6)
- 少なくともステアリングシヤフトに発生する操舵トルクに基づいてモ−タ電流指令値を演算し、前記演算されたモ−タ電流指令値に基づいてモ−タ電流を制御して操舵トルクに応じた操舵補助力をステアリング機構に与える電動パワ−ステアリング装置の制御装置において、
モ−タに発生する逆起電力の推定値に基づいてモ−タ角速度を推定演算するモ−タ角速度演算手段と、
モ−タに流れる電流を検出するモ−タ電流検出手段と、
前記演算されたモ−タ電流指令値及びモ−タ角速度演算値に基づいてモ−タ電流を制御する制御手段とを備え、
前記モ−タ角速度演算手段にはモ−タ角速度の推定値に対してモ−タ電流検出値或いはモ−タ電流指令値に基づいて決定される所定幅の不感帯が設置され、演算されたモ−タ角速度推定値が前記不感帯の範囲内にあるときは演算されたモ−タ角速度推定値に関係なくモ−タ角速度推定値として零を出力すること
を特徴とする電動パワ−ステアリング装置の制御装置。 - 前記モ−タ角速度推定手段に設定される不感帯は、モ−タの温度変化によるモ−タ端子間抵抗の変動により発生するモ−タ端子間電圧の変動及びモ−タの製造時に生ずるモ−タ端子間抵抗のばらつきにより発生するモ−タ端子間電圧の変動などに基づいて生ずるモ−タ角速度推定値の変動幅よりも大きく設定されることを特徴とする請求項1記載の電動パワ−ステアリング装置の制御装置。
- 前記制御手段は、前記モ−タ角速度推定手段から出力されるモ−タ角速度推定値に基づいてモ−タの回転方向を識別する回転方向識別信号を出力することを特徴とする請求項1記載の電動パワ−ステアリング装置の制御装置。
- 前記制御手段は、前記モ−タの回転方向識別信号に基づいてモ−タのロストルク補正信号を出力することを特徴とする請求項3記載の電動パワ−ステアリング装置の制御装置。
- 前記制御手段は、前記モ−タ角速度推定手段から出力されたモ−タ角速度推定値に基づいてステアリング機構の粘性を補正する粘性補正信号を出力することを特徴とする請求項1記載の電動パワ−ステアリング装置の制御装置。
- 前記制御手段は、ハンドル戻し状態が検出されたときは前記モ−タ角速度推定手段に設定されている不感帯を無効とする処理を行うことを特徴とする請求項1記載の電動パワ−ステアリング装置の制御装置。
Priority Applications (4)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP28287496A JP3692660B2 (ja) | 1996-10-07 | 1996-10-07 | 電動パワ−ステアリング装置の制御装置 |
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