JP3562040B2 - 電動パワ−ステアリング装置の制御装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、電動パワ−ステアリング装置の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両用の電動パワ−ステアリング装置には、操向ハンドルの操作によりステアリングシヤフトに発生する操舵トルクその他を検出し、その検出信号に基づいてモ−タの制御目標値である操舵補助指令値を演算し、電流フイ−ドバツク制御回路において、前記した制御目標値である操舵補助指令値とモ−タ電流の検出値との差を電流制御値として求め、電流制御値によりモ−タを駆動して操向ハンドルの操舵力を補助するものがある。
【0003】
このような電動式パワ−ステアリング装置では、図7に示すように、4個の電界効果型トランジスタFET1 〜FET4 をブリツジに接続して第1及び第2の2つのア−ムを備えたHブリツジ回路を構成し、その入力端子間に電源Vを、出力端子間に前記モ−タMを接続したモ−タ制御回路が使用されている。
【0004】
そして、前記モ−タ制御回路を構成するHブリツジ回路の互いに対向する2つのア−ムを構成する2個1組のFETのうち、第1のア−ムのFET1 (或いは第2のア−ムのFET2 )を電流制御値に基づいて決定されるデユ−テイ比DのPWM信号(パルス幅変調信号)で駆動することにより、モ−タ電流の大きさが制御される。
【0005】
また、前記電流制御値の符号に基づいて第2のア−ムのFET3 をON、第1のア−ムのFET4 をOFF(或いは第2のア−ムのFET3 をOFF、第1のア−ムのFET4 をON)に制御することにより、モ−タMの回転方向が制御される。
【0006】
FET3 が導通状態にあるときは、電流はFET1 、モ−タM、FET3 を経て流れ、モ−タMに正方向の電流が流れる。また第2のア−ムのFET4 が導通状態にあるときは、電流はFET2 、モ−タM、FET4 を経て流れ、モ−タMに負方向の電流が流れる。
【0007】
このモ−タ制御回路は、同一ア−ム上のFETが同時に駆動されることがないのでア−ムが短絡される可能性が低く、信頼性が高いため、広く利用されている(一例として特公平5−10270号公報参照)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
図8は、モ−タ電流I(モ−タに実際に流れる電流であり、検出電流iとは異なる)とPWM信号のデユ−テイ比Dとの関係を示すものである。即ち、操向ハンドルが操作されて操舵トルクが発生している状態では、モ−タ電流Iとデユ−テイ比Dとの関係は、図8において線(a)で示すように変化し、制御回路において操舵トルクの検出信号に基づいてモ−タの制御目標値である操舵補助指令値Iref が演算され、操舵補助指令値Iref とフイ−ドバツクされるモ−タ電流の検出値Iとの差の電流制御値Eがモ−タ駆動回路に出力されるから、モ−タ駆動回路の半導体素子を制御するデユ−テイ比Dは或る値をとり、格別の支障は生じない。
【0009】
しかしながら、操向ハンドルを切つた後、セルフアラインメントトルクにより操向ハンドルが直進走行位置に戻るとき(以下、ハンドル戻り時という)は、操舵トルクが発生していない状態にあるから、モ−タの制御目標値である操舵補助指令値Iref は零となるが、モ−タに逆起電力が発生するため、モ−タ電流Iとデユ−テイ比Dとの関係は、図8において線(b)で示すように、逆起電力に相当するだけ上方に移動変化し、デユ−テイ比Dの値が零の付近でモ−タ電流Iとデユ−テイ比Dとの関係に不連続部分が生じる。
【0010】
一方、フイ−ドバツク制御回路は電流制御値Eを演算しようとするが、操舵補助指令値Iref に対応するデユ−テイ比Dがないため、図8において線(c)で示すように、モ−タ電流Iの不連続部分にほぼ対応した振幅の振動電流が電流制御値Eとして出力される。
【0011】
このような振動電流の発生は、雑音の発生源となるほかフイ−ドバツク制御の安定性を阻害する原因ともなるので、その対策が求められていた。この発明は上記課題を解決することを目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
この発明は、上記課題を解決するもので、少なくともステアリングシヤフトに発生する操舵トルク信号に基づいて演算された操舵補助指令値と検出されたモータ電流値から演算した電流制御値に基づいてステアリング機構に操舵補助力を与えるモータの出力を制御するフイードバツク制御手段を備えた電動パワーステアリング装置の制御装置において、半導体素子4個をHブリツジに接続して構成したブリツジ回路の入力端子間に電源を、出力端子間に前記モータを接続したモータ駆動回路と、前記モータ駆動回路を構成するHブリツジ回路の互いに対向する2つのアームを構成する2個1組の半導体素子のうち、第1のアームの半導体素子を前記電流制御値に基づいて決定される第1のデューテイ比D 1 のPWM信号で駆動し、第2のアームの半導体素子を第2のデューテイ比D 2 のPWM信号で駆動する駆動制御手段とを備え、
前記第2のデューテイ比D 2 は、第1のデューテイ比D 1 の関数である以下の式(2)で定義されること
D 2 =a・D 1 +b・・・・・・・・・(2)
ここで、a、bは以下の式で表される定数
a=−K T ω ret /γV b
b=1+K T ω ret /V b
但し、V b :バッテリ電圧
K T :モータの逆起電力定数
ω ret :ハンドル戻り時のモータ角速度
γ:定数
を特徴とするものである。
【0013】
そして、前記フイードバツク制御手段にフイードバツクされるモータ電流の検出値は、前記第2のデューテイ比D 2 で補正するとよい。
【0014】
【作用】
モータ駆動回路を構成するHブリツジ回路の互いに対向する2つのアームを構成する2個1組の半導体素子のうち、第1のアームの半導体素子を前記電流制御値に基づいて決定される第1のデューテイ比D 1 のPWM信号で駆動し、第2のアームの半導体素子を第2のデューテイ比D 2 のPWM信号で駆動する。ここで、前記第2のデューテイ比D 2 は、第1のデューテイ比D 1 の関数である式(2)で定義される。
これにより、ハンドル戻り時などで操舵トルクが発生していない状態のときも、デューテイ比Dの値が零の付近でモータ電流Iとデューテイ比Dとの関係に不連続部分が生じることがなく、電流制御値Eとして振動電流が出力されるおそれがない。
【0015】
【実施例】
以下、この発明の実施例について説明する。まず、図1乃至図3により、この発明を実施するに適した電動パワ−ステアリング装置の概略を説明する。図1は電動パワ−ステアリング装置の構成の概略を説明する図で、操向ハンドル1の軸2は減速ギア4、ユニバ−サルジョイント5a、5b、ピニオンラツク機構7を経て操向車輪のタイロツド8に結合されている。軸2には操向ハンドル1の操舵トルクを検出するトルクセンサ3が設けられており、また、操舵力を補助するモ−タ10がクラツチ9、減速ギア4を介して軸2に結合している。
【0016】
パワ−ステアリング装置を制御する電子制御回路13は、バツテリ14からイグニツシヨンキ−11を経て電力が供給される。電子制御回路13は、トルクセンサ3で検出された操舵トルクと車速センサ12で検出された車速に基づいて操舵補助指令値の演算を行い、演算された操舵補助指令値に基づいてモ−タ10に供給する電流を制御する。
【0017】
クラツチ9は電子制御回路13により制御される。クラツチ9は通常の動作状態では結合しており、電子制御回路13によりパワ−ステアリング装置の故障と判断された時、及び電源がOFFとなつている時に切離される。
【0018】
図2は、電子制御回路13のブロツク図である。この実施例では電子制御回路13は主としてCPUから構成されるが、ここではそのCPU内部においてプログラムで実行される機能を示してある。例えば、位相補償器21は独立したハ−ドウエアとしての位相補償器21を示すものではなく、CPUで実行される位相補償機能を示す。
【0019】
以下、電子制御回路13の機能と動作を説明する。トルクセンサ3から入力された操舵トルク信号は、位相補償器21で操舵系の安定を高めるために位相補償され、操舵補助指令値演算器22に入力される。また、車速センサ12で検出された車速も操舵補助指令値演算器22に入力される。
【0020】
操舵補助指令値演算器22は、入力され位相補償された操舵トルク信号及び車速信号に基づいて所定の演算式によりモ−タ10に供給する電流の制御目標値である操舵補助指令値Iref を演算する。
【0021】
比較器23、微分補償器24、比例演算器25、積分演算器26、加算器27から構成される回路は、モ−タ電流が操舵補助指令値Iref に一致するようにフイ−ドバツク制御を行う回路である。
【0022】
比較器23では、操舵補助指令値演算器22で演算された制御目標値である操舵補助指令値Iref と後述するモ−タ電流検出回路42で検出されたモ−タ電流値Iが比較され、その差の信号が出力される。
【0023】
比例演算器25では、操舵補助指令値Iref とモ−タ電流値Iとの差に比例した比例値が出力される。さらに比例演算器25の出力信号はフイ−ドバツク系の特性を改善するため積分演算器26において積分され、差の積分値の比例値が出力される。
【0024】
微分補償器24では、操舵補助指令値Iref に対するモ−タ電流値Iの応答速度を高めるため、操舵補助指令値Iref の微分値が出力される。
【0025】
微分補償器24から出力された操舵補助指令値Iref の微分値、比例演算器25から出力された操舵補助指令値Iref とモ−タ電流値Iとの差に比例した比例値、積分演算器26から出力された積分値は加算器27において加算演算され、演算結果である電流制御値Eがモ−タ駆動回路41に出力される。モ−タに流れる電流はモ−タ電流検出回路42により検出される。
【0026】
図3にモ−タ制御回路41の構成の一例を示す。モ−タ制御回路41は加算器27から入力された電流制御値Eに基づいてFET1 〜FET4 のゲ−トを駆動するゲ−ト駆動回路46、FET1 〜FET4 からなるHブリツジ回路等から構成される。なお、昇圧電源47はFET1 、FET2 のハイサイド側を駆動する電源である。
【0027】
FET1 とFET2 は前記した電流制御値Eに基づいて決定されるデユ−テイ比D1のPWM信号に基づいてゲ−トがON/OFFされ、実際にモ−タに流れる電流Iの大きさが制御される。
【0028】
FET3 とFET4 は、デユ−テイ比D1 の小さい領域では、前記したデユ−テイ比D1 のPWM信号の1次の関数式で定義されるデユ−テイ比D2 のPWM信号で駆動され、また、デユ−テイ比D1 の大きい領域では、従来の制御回路と同じくPWM信号の符号により決定されるモ−タの回転方向に応じてON/OFF駆動される。この点は、この発明の特徴部分であり、後で詳細に説明する。
【0029】
FET3 が導通状態にあるときは、電流はFET1 、モ−タ10、FET3 、抵抗R1 を経て流れ、モ−タ10に正方向の電流が流れる。また、FET4 が導通状態にあるときは、電流はFET2 、モ−タ10、FET4 、抵抗R2 を経て流れ、モ−タ10に負方向の電流が流れる。
【0030】
モ−タ電流検出回路42は、抵抗R1 の両端における電圧降下に基づいて正方向電流の大きさを検出し、また、抵抗R2 の両端における電圧降下に基づいて負方向電流の大きさを検出する。検出されたモ−タ電流値Iは比較器23にフイ−ドバツクして入力される(図2参照)。
【0031】
次に、この発明の特徴部分である、FET3 とFET4 を前記したデユ−テイ比D1 の1次の関数式で定義されるデユ−テイ比D2 のPWM信号で駆動する点について説明する。
【0032】
先に、発明が解決しようとする課題において説明したように、操向ハンドルを切つた後、セルフアラインメントトルクにより操向ハンドルが自動的に直進走行位置に戻るハンドル戻り時には、モ−タ電流Iとデユ−テイ比Dとの関係は、図8において(b)で示すように逆起電力に相当するだけ上方に移動変化する。即ち、デユ−テイ比Dの値が零の付近でモ−タ電流Iとデユ−テイ比Dとの間に不連続部分が生じ、不連続部分にほぼ対応した振幅の振動電流が電流制御値Eとして出力され、雑音の発生源となるほか、フイ−ドバツク制御の安定性を阻害する原因ともなる。
【0033】
この対策として、本発明では、前記したモ−タ電流Iとデユ−テイ比Dとの間の不連続部分を連続させるように制御して課題を解決するものである。即ち、図4に示すように、ハンドル戻り時におけるモ−タ電流Iとデユ−テイ比Dとの関係を示す線(b)の上で、デユ−テイ比D=γのときのモ−タ電流Iを示すp点と原点oと間を連続するように、モ−タ電流Iとデユ−テイ比Dとの関係を制御して、課題を解決するものである。
【0034】
ここで、まず、従来の駆動方法のようにFET3 (又はFET4 )を、PWM信号の符号により決定されるモ−タの回転方向に応じてON(又はOFF)に維持する制御をせず、FET1 (又はFET2 )と同時に、且つ異なるデユ−テイ比で駆動した場合を検討する。
【0035】
図5はFET1 とFET3 を、同時に、且つ異なるデユ−テイ比で駆動した場合の動作を説明する図であり、また図6はFETの動作状態とモ−タ端子間電圧VM 、モ−タ端子間電圧VM からモ−タ逆起電力KT ωの影響を差し引いた値Ri、及びモ−タ電流Iの関係を説明する図である。
【0036】
今、FET1 をデユ−テイ比D1 で駆動すると共に、FET3 をFET1 のデユ−テイ比D1 よりも大きい(即ち、時間的に長い)デユ−テイ比D2 で駆動し、FET2 とFET4 はOFFに維持するものとする。図6の(a)及び(b)はFET1 及びFET3 の時間に対するON/OFFの状態を示している。
【0037】
このとき、モ−タ端子間電圧VM は図6の(c)のように変化する。即ち、まず、FET1 及びFET3 が共にON(この状態をモ−ドAと呼ぶ)のときは、モ−タMの端子間にはバツテリ電圧Vb が印加される。次に、FET1 がOFFでFET3 がON(この状態をモ−ドBと呼ぶ)のときはモ−タMの端子間電圧は零になる。さらにFET1 及びFET3 が共にOFF(この状態をモ−ドCと呼ぶ)のときは、モ−タMの端子間には負方向のバツテリ電圧−Vb が印加される。即ち、モ−ドCでは、FET1 及びFET3 が共にOFFであるため、モ−タMには図5(b)で示すように、抵抗RL →FET4 の回生ダイオ−ドDT4→モ−タM→FET2 の回生ダイオ−ドDT2→電源に至る電流回路が形成され、モ−タMの端子間電圧VM は負方向のバツテリ電圧−Vb となる。
【0038】
FET1 とFET3 を同時に、且つ異なるデユ−テイ比で駆動してモ−タ電流が平衡状態になつたとき、PWM信号の周期がモ−タの電気的時定数に比較して十分に短い場合には、モ−タ電流Iは近似的に以下の式(1)により表すことができる。
【0039】
I={(D1 +D2 −1)・Vb /R}−KT ω/R・・・・(1)
但し、D1 はデユ−テイ比D1 、D2 はデユ−テイ比D2 、
Vb はバツテリ電圧、Rはモ−タ端子間抵抗、
KT はモ−タの逆起電力定数、ωはモ−タ角速度を表す。
【0040】
デユ−テイ比D2 をデユ−テイ比D1 の1次の関数として表すため、以下の式(2)を定義する。
【0041】
D2 =a・D1 +b・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2)
但し、a、bは定数。
【0042】
定数a、bを求めるため、まず、以下の条件を設定する。
【0043】
(1) デユ−テイ比D1 =γのとき、デユ−テイ比D2 =1(100 %)、
但し、γは任意の設定値
(2) デユ−テイ比D1 =0、且つω=ωret のとき、I=0
但し、ωはモ−タ角速度、ωret はハンドル戻り時のモ−タ角速度
とする。
【0044】
上記条件(1) は図4においてデユ−テイ比D1 =γのときの線(b)上の点pの位置を決定する条件であり、条件(2) は図4において線(b)が原点oを通ることを決定する条件である。したがつて、上記条件を満たす定数a、bを求めることにより、点pと原点oを結ぶ1次の関数を決定することができる。
【0045】
なお、デユ−テイ比D1 がγよりも大きい領域では、従来の駆動方法、即ちFET3 (又はFET4 )が電流方向によりON又はOFFに制御される制御方法と変わらない。
【0046】
前記条件を満たす定数a、bは、以下の式(3)(4)で表される。
【0047】
a=−KT ωret /γVb ・・・・・・・・・・・・・・・・(3)
b=1+KT ωret /Vb ・・・・・・・・・・・・・・・・(4)
このときのモ−タ電流Iは、式(1)のD2 に式(2)を代入し、これに式(3)(4)で決定される定数a、bを代入して整理した以下の式(5)で表すことができる。
【0048】
I=Vb /R{1−(KT ωret /γVb )}・D1 +KT /R(ωret −ω)・・・・・・・・・・・・・・(5)
式(5)によれば、モ−タ電流Iとデユ−テイ比Dとの間の関係は、モ−タ角速度ωがハンドル戻り時のモ−タ角速度ωret よりも小さい領域においても不連続部分が無くなる。
【0049】
即ち、FET1 をデユ−テイ比D1 で駆動し、これと同時にFET3 をデユ−テイ比D1 とは異なるデユ−テイ比D2 で駆動することにより、モ−タ角速度ωがハンドル戻り時のモ−タ角速度ωret よりも小さい領域においても、モ−タ電流Iに対してデユ−テイ比D1 を連続して変化させることができ、本発明の課題を解決することができる。
【0050】
次に、上記したFETの駆動方法を採用した場合のモ−タ電流の検出について図5に示す回路図を参照して説明する。まず、モ−ドAでは、FET1 及びFET3 が共にONであるためモ−タMの端子間電圧VM はバツテリ電圧Vb となる。モ−タ電流は図5(a)で実線で示すように、FET1 →モ−タM→FET3 →抵抗RR の順に流れ、抵抗RR の両端の電圧降下を電流検出回路42のオペアンプOPR で検出することによりモ−タ電流i(A) が検出される。
【0051】
モ−ドBでは、FET1 がOFF、FET3 がONであるため、モ−タMの端子間電圧VM は零となる。このため、モ−タMに蓄えられていた磁気エネルギが電気エネルギに変換され、電流は図5(a)で鎖線で示すように、モ−タM→FET3 →抵抗RR →抵抗RL →FET4 の回生ダイオ−ドDT4→モ−タMの順に電流が流れる。抵抗RR の両端の電圧降下を電流検出回路42のオペアンプOPR で検出することによりモ−タ電流i(B) が検出される。このとき、抵抗RL の両端の電圧降下を検出するオペアンプOPL はユニポ−ラ電源(片電源)で、逆方向に流れる電流は検出することができないため、オペアンプOPL の検出電流値は零となる。
【0052】
モ−ドCでは、FET1 及びFET3 が共にOFFであるため、図5(b)で示すように、抵抗RL →FET4 の回生ダイオ−ドDT4→モ−タM→FET2 の回生ダイオ−ドDT2→電源に至る電流回路が形成され、モ−タMの端子間電圧VM は負方向のバツテリ電圧−Vb となる。このとき、モ−タMに蓄えられていた磁気エネルギは電気エネルギに変換されるから、その電流はモ−タMの端子間電圧−Vb に逆らう方向に電流i(C) が流れるが、抵抗RL の両端の電圧降下を検出する電流検出回路42のオペアンプOPL はユニポ−ラ電源(片電源)で、逆方向に流れる電流は検出することができず、オペアンプOPL の検出電流値は零となる。
【0053】
このため、PWM信号の1サイクル中において、モ−ドA、モ−ドB、モ−ドCの各段階を通してモ−タMに実際に流れるモ−タ電流Iは、以下の式(6)で表すことができる。
【0054】
I=i(A) +i(B) +i(C) ・・・・・・・・・・・・・・・(6)
一方、電流検出回路42で検出される検出電流i(dct) の総和は、電流i(C) が検出されないため、以下の式(7)のようになる。
【0055】
i(dct) =i(A) +i(B) ・・・・・・・・・・・・・・・・(7)
PWM信号の1サイクル中に検出電流i(dct) が検出される期間は、PWM信号の1サイクル中のモ−ドAとモ−ドBの期間で、これはデユ−テイ比D2 に相当する(図6参照)。よつて、検出電流i(dct) は以下の式(8)で表すことができる。
【0056】
i(dct) =D2 ・I・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(8)
したがつて、モ−タMに実際に流れるモ−タ電流Iは、式(8)を変形して、以下の式(9)で表すことができる。
【0057】
I=i(dct) /D2 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(9)
図6の(e)はモ−ドA、モ−ドB、モ−ドCの各段階におけるモ−タ電流Iの変化の状態を示す例であり、時間の経過とともに次第に平衡状態に近付く。
【0058】
次に、上記したFETの駆動方法を採用した場合のモ−タ角速度の推定について説明する。モ−タ端子間電圧VM 、実際にモ−タに流れる電流I、及びモ−タ角速度ωとの間には
V=(Ls +R)I+KT ω
但し、L=モ−タのインダクタンス、R=モ−タの端子間抵抗
s =ラプラス演算子、KT =モ−タの逆起電力定数
の関係があり、モ−タ端子間電圧VM とモ−タ電流Iを知れば、モ−タ角速度ωを求めることができる。
【0059】
従来の技術では、モ−タ角速度の推定に必要なモ−タ端子間電圧VM は、VM =D1 ・Vb (但し、Vb =バツテリ電圧)から求めていた。これに対し、この発明では、図6の(c)に示すように、モ−タ端子間電圧は、デユ−テイ比D1 で駆動されるモ−ドAの駆動時間t(A) 間に印加されるバツテリ電圧Vb と、デユ−テイ比D2 で駆動されるモ−ドCの駆動時間t(C) に印加される負方向のバツテリ電圧(−Vb )との和になる。
【0060】
図6から明らかなように、PWM信号の1サイクル中におけるモ−ドAの比率はD1 であり、モ−ドCの比率は(1−D2 )で表すことができるから、モ−タ端子間電圧VM は以下の式(10)で表すことができる。
【0061】
式(10)を用いることにより、バツテリ電圧Vb とデユ−テイ比D1 、D2 から容易にモ−タ端子間電圧VM を求めることができ、モ−タ印加電圧を検出する手段を必要としない。
【0063】
【発明の効果】
以上説明したとおり、この発明の電動パワーステアリング装置の制御装置は、モータ駆動回路を構成するHブリッジ回路の互いに対向する2つのアームを構成する2個1組の半導体素子のうち、第1のアームの半導体素子を前記電流制御値に基づいて決定される第1のデューテイ比D 1 のPWM信号で駆動し、第2のアームの半導体素子を第2のデューテイ比D 2 のPWM信号で駆動する。ここで、前記第2のデューテイ比D 2 は、第1のデューテイ比D 1 の関数である式(2)で定義される。
【0064】
これにより、ハンドル戻り時などで操舵トルクが発生していない状態のときも、デユ−テイ比の値が零の付近でモ−タ電流とデユ−テイ比との間に不連続部分がなくなるので、振動電流が発生せず、雑音の発生や、フイ−ドバツク制御の安定性を阻害することがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】電動式パワ−ステアリング装置の構成の概略を説明する図。
【図2】電動式パワ−ステアリング装置の電子制御回路のブロツク図。
【図3】モ−タ駆動回路の構成を示す回路ブロツク図。
【図4】この発明によるモ−タ制御回路におけるモ−タ電流とPWM信号のデユ−テイ比との関係を説明する図。
【図5】FET1 とFET3 を、同時に、且つ異なるデユ−テイ比で駆動した場合の動作を説明する図。
【図6】FETの動作状態、モ−タ端子間電圧VM 、モ−タ電流Iなどの関係を説明する図。
【図7】従来のFET1 で構成したHブリツジ回路からなるモ−タ駆動回路図。
【図8】従来のモ−タ制御回路におけるモ−タ電流とPWM信号のデユ−テイ比との関係を説明する図。
【符号の説明】
3 トルクセンサ
10 モ−タ
11 イグニツシヨンキ−
12 車速センサ
13 電子制御回路
14 バツテリ
21 位相補償器
22 操舵補助指令値演算器
23 比較器
24 微分補償器
25 比例演算器
26 積分演算器
27 加算器
41 モ−タ制御回路
42 モ−タ電流検出回路
Claims (2)
- 少なくともステアリングシヤフトに発生する操舵トルク信号に基づいて演算された操舵補助指令値と検出されたモータ電流値から演算した電流制御値に基づいてステアリング機構に操舵補助力を与えるモータの出力を制御するフイードバツク制御手段を備えた電動パワーステアリング装置の制御装置において、
半導体素子4個をHブリツジに接続して構成したブリツジ回路の入力端子間に電源を、出力端子間に前記モータを接続したモータ駆動回路と、
前記モータ駆動回路を構成するHブリツジ回路の互いに対向する2つのアームを構成する2個1組の半導体素子のうち、第1のアームの半導体素子を前記電流制御値に基づいて決定される第1のデューテイ比D 1 のPWM信号で駆動し、第2のアームの半導体素子を第2のデューテイ比D 2 のPWM信号で駆動する駆動制御手段とを備え、
前記第2のデューテイ比D 2 は、第1のデューテイ比D 1 の関数である以下の式(2)で定義されること
D 2 =a・D 1 +b・・・・・・・・・(2)
ここで、a、bは以下の式で表される定数
a=−K T ω ret /γV b
b=1+K T ω ret /V b
但し、V b :バッテリ電圧
K T :モータの逆起電力定数
ω ret :ハンドル戻り時のモータ角速度
γ:定数
を特徴とする電動パワーステアリング装置の制御装置。 - 前記フイードバツク制御手段にフイードバツクされるモータ電流の検出値は、前記第2のデューテイ比D 2 で補正されることを特徴とする請求項1記載の電動パワーステアリング装置の制御装置。
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