JP3691935B2 - 光記録媒体とその記録/再生方法及び製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は情報記録媒体に関するものであって、特に光ビームを照射することにより、記録材料の透過率、反射率等の光学的な変化を応じさせ、情報の記録、再生を行い、かつ追記が可能な情報記録媒体、例えばデータ用追記光ディスク、追記型コンパクトディスク及びデジタルビデオディスク等の光記録媒体一般に適用可能な技術に関するものである。
本発明は、色素の塗布条件によってプリグルーブからのトラッキングエラー信号やプリピットからの情報信号が大きく変動する現象をなくし、生産性が高くコスト低減となるような、また高密度化に対応し研究・開発の大幅な効率向上が図れるような光情報記録媒体、その製造方法、及び、光情報記録媒体これを用いた記録/再生方法を提供する。
【0002】
【従来の技術】
現在パーソナルコンピュータのデータストレージメディアとして、いくつものリムーバブルディスクが登場している。これらのなかでも、過去のFDDがそうであったように、CD−ROMが1つの地位を完全に確立し、ほとんどのパーソナルコンピュータにCD−ROMドライブが標準搭載されつつある。
そしてこのCD−ROM系メディアに対する互換性ということが、リムーバブルメディアとしての差別化要件の1つにさえなっている。例えばCD系の追記型メディアである、いわゆるCD−RはCD−ROMで再生できるようにするため、未記録状態で60〜70%以上の反射率を有し、かつ記録により反射率を低下させることで記録を行えるようしている。この互換性により、CD−Rに記録した情報をCD−ROMドライブで読みだすことができるわけである。この追記が可能なCD−Rも従来オーサリング用等のプロユースであったものが、ドライブ価格の低下や互換性の高さから、データ配布用、ソフト作製用や一般のリムーバブルメディアと同様なデータ保存用のメディアとしても近年その需要が非常に高まってきている。そして、従来から640MBの容量を持つCD1枚でも74分のディジタル映像を蓄積することができる(ビデオCD)。このビデオCDには、MPEG1という映像の圧縮・符号化の技術が使われているが、再生時間は短く、また映像の画面解像度は通常のテレビ画像の半分である。また、CDの規格は音楽用のディジタル蓄積メディアとして誕生しているため、容量とデータ転送速度からディジタル映像蓄積用には適していない。
【0003】
そこで登場したのがDVDであり、1本の映画をテレビ並の品質でCDと同じサイズで再生を可能とする。この次世代のDVDはマルチメディアのキーテクノロジーとして期待を集めている。このDVDメディアにあっても先のCDがそうであったように、ユーザが1回だけ情報を書き込める追記型メディア(DVD−R)や書き替えが可能な(DVD−RAM)等の開発が望まれる。これらのCD−R、DVD−Rメディアは基本的に案内溝を有する基板上に色素をスピンコーティング法により形成し、その上に金属反射層を設けるというのが必須構成となっている。
【0004】
DVDに用いられる基板は厚さが0.6mmであり、自重でたわんでしまうため2枚の薄型基材の張り合わせ方法を用いて作製される。例えば図2に示すように再生専用DVDディスクの場合、単層ディスク(SL)と2層ディスク(DL)がある(参考資料:No.199 O plus E 1996年6月 P.80等)。そこで、DVD−RやDVD−Eとして具体的に提案されている層構成として、CD−RやCD−Eと同様に作製されたディスクとフラットなディスクを接着層により張り合わせたものがある。しかし、この2枚張り合わせの構成は、単に機械的強度達成のため、および付随的効果として容量向上のためのものあり、信号特性の改善、生産性の効率向上を目的としたものではなく、また、CD系メディアやその他光情報記録媒体として一般的に利用できるものでもない。
【0005】
エンハンス層を設けることもよく行われているが、エンハンス層は基板から入射したレーザ光から見た記録層、反射層、保護層、空気層等全体を含めた反射率を向上させるために用いられるものであって、位相差をコントロールする作用を持っている。したがって、必ずしも基板とエンハンス層界面、あるいはエンハンス層と記録層界面での反射率が大幅に高まるわけではない。
【0006】
光記録媒体においては、プリグルーブからのトラッキングエラー信号やプリピットからの情報信号が変動する。そこで、これを避けるための各種の提案がなされてきた。例えば特開昭56ー61047号公報には、トラック案内用の溝を設けた基板上に反射層を形成し、次いで溝部を埋めて平坦化した後、この上に情報記録層を形成したものが記載されており、特開昭56ー61048号公報には、情報トラック位置に溝が形成された透明な基体と、該基体の溝を基体と屈折率が異なる材料により埋めて平坦化し、その上に光学的記録層を設けて基体の光学的傷を埋めかつ入射角依存性をなくしS/N比を高いものとすることが記載されており、特開昭57ー74843号公報には、情報記録担体の内外の周縁および底面を覆う保護部材にトラッキング用溝を形成して、光記録媒体の構造を簡単にすると共に送り機構の負担を軽減することが記載されており、特開平2ー183443号公報には、互いに材質の異なるグルーブ基板とフラット基板例えばグルーブ基板をポリカーボネートとしフラット基板をアクリル樹脂としてこれを張り合わせることにより、フラット基板からの記録と再生と消去を可能とすることが記載されており、特開平4ー286684号公報には、色素を含有する記録層と金属の反射層からなる単板型光情報記録媒体において、記録層表面形状を所望の範囲にコントロールするように塗布することによりトラッククロス信号とプッシュプル信号の両者を最適化することが記載されており、特開平4ー337538号公報には、特定のフッ素化アルコールと特定のアルコールを所定割合で混合して色素を溶解することにより、ROM領域を持つ追記型CDを塗り分けを行わずに製造することが記載されており、特開平4ー370546号公報には、有機色素を含む記録層を持つ光記録媒体において、記録層の吸光度が記録層の作製直後の吸光度の99.5%以下になった後に反射層を作製することで、記録性のバラツキを低減することが記載されており、特開平5ー73964号公報には、色素の塗り分けを行わずに製造しうるROM領域を有する追記型CDに関する技術が記載されており、特開平5ー114178号公報には、2種以上の色素を含有する溶液をスピンコートすることにより、ピットおよび/または溝部での成膜形状を制御して光吸収層を形成し、ROM領域と記録可能領域の特性の両立を図る技術が記載されており、特開平5ー144098号公報には、ROM領域を有する追記型光情報記録媒体を塗り分けなしに製造を可能とするとともに、ROM領域と記録可能領域の記録信号特性を向上させる技術として、案内溝の溝幅が情報ピットのピット深さに比べ浅く設定されている基板を用い、この基板上に直接又は他の層を介して色素をコーティングにより設け、次いでその上に直接又は他の層を介して保護層を設けることが記載されている。
【0007】
また、特開平3ー22224号公報には、基板、色素記録層および反射層を基本構成とする情報記録媒体において、グルーブの形状を深さ800〜2000Åの範囲、グルーブの半値幅0.2〜0.7mmと特定することにより良好なトラッキング、かつ高い変調度の記録を可能とすることが記載されており、特開平4ー76836号公報には、グルーブ底部の光吸収層の光学的膜厚とランド部の光吸収層の光学的膜厚との差をλ/8以下にすることにより変調度および反射率が高いCD規格を満足する信号を得て、トラッキング特性を良好にすることが記載されており、特開平4ー111241号公報には、プレグルーブが形成された円盤状の基板上に光吸収層、エンハンス層および反射層を順次設け、グルーブ底部の光吸収層の光学的膜厚とランド部の光吸収層の光学的膜厚との差をλ/8に特定したものが記載されており、特開平4ー132027号公報には、ピット部の色素層の光学的膜厚とビット間部の色素層膜厚との差をλ/8以下に特定したものが記載されており、特開平4ー146537号公報には、基板の特定形状のプレピット(半値幅0.2〜1.4μm、深さ150〜400nm)を形成し、かつピット底部における基板と色素層との合計の光路長が、ピット間部における基板と色素層との合計の光路長よりもλ/8以上長くすることが記載されている。
【0008】
さらに、特開平4ー172635号公報には、記録可能領域だけに記録層を、再生専用域だけに第1の反射層を設け、記録層および再生専用域上に連続的に第2の反射層を設けることにより、スピンコート法を適用可能とすることが記載されており、特開平4ー178932号公報には、ピット深さをλ/3.8n〜λ/2.7n(n=屈折率)に、グルーブ深さをλ/5.0n〜λ/4.0nに、それぞれ特定したものが記載されており、特開平4ー286684号公報には、色素を含む記録層と金属反射層からなる単板型光情報記録媒体において、ランド部の記録層がグルーブ部の記録層よりも500オングストローム以上高くすることが記載されており、特開平4ー2907954号公報には、プリグルーブおよびプリピットが設けられた基板上に記録層、金属反射層を積層した情報記録媒体において、記録層をフタロシアニン系色素又はナタロシアニン系色素の蒸着で形成したものが記載されており、特開平5ー46995号公報には、光吸収層としての色素層表面に、基板に形成されたグルーブおよびランド部に対応して所定の凹凸を形成したものが記載されており、特開平5ー101440号公報には、グルーブ部およびランド部の記録層膜厚、記録層の表面形状を所定範囲にコントロールしたものが記載されており、特開平6ー119659号公報には、溝形成部の記録膜に形成するくぼみの深さを所定範囲となるように、溝形状、記録膜厚等の各種パラメータを決定することが記載されており、特開平5ー198012号公報には、あらかじめグルーブ部の形状を内周から外周に向けて変化させて、スピンコート法で記録層を形成することが記載されている。
【0009】
しかしながら、これら従来技術によれば、プリグルーブからのトラッキングエラー信号やプリピットからの情報信号の変動はある程度改善されるとはいうものの充分でないばかりでなく、加えて、各種の制約があり、実際問題として所望の目標を達成するのはかなり難かしいところがあった。
【0010】
すなわち、例えば色素を利用した追記型光ディスクの場合、色素を含む記録材料をあらかじめトラッキング用の溝(プリグルーブ)等が刻まれた基板上に、スピンコート法により形成するが、この基板上に刻まれたプリグルーブは、レーザスポットの記録/再生の位置決めをする上で非常に重要であり、この位置決めのために必要な、いわゆるトラッキングエラー信号が十分出力される必要がある。
【0011】
ところが、追記型のCD−R、DVD−Rなどではトラッキングエラー信号が基板と色素の界面反射率だけでは決まらず、主に色素と金反射層界面による反射率に支配されるため、スタンパ作製時に最適化したプリピットやプリグルーブ等の溝形状が何ら意味を持たなくなる可能性が高い。つまり、基板上に形成された溝に色素がどのように埋まるかが非常に重要となる。色素と金属反射層界面に大きく左右されるため、その制御が困難であり、生産コストに悪影響を与えるとともに、研究・開発効率を著しく低下させるものである。また従来は、溝の色素埋まり具合を、上記のように、溶剤や塗布条件、塗布環境により最適化を図っていたため、ディスク内での、特に内周と外周におけるトラッキングエラー信号等にバラツキが大きくなるという弊害も併せ持っていた。
【0012】
また、プリグルーブの形状は台形状であるが、色素がプリグルーブに埋まった状態での表面形状は、V字もしくはU字形状をしている。そのため、ジッタやクロストークの増加の原因ともなる。この解決方法としては、色素を蒸着する方法も考えられ提案されているが、有機材料のメリットはその成膜性(生産性)であり、スピンコートが可能である点であることを考えると、また色素材料の選択の幅が限定されることから実用的でない。
【0013】
そして一方、近年CD系メディアにおいては、あらかじめ情報が書き込まれたROM部とユーザが情報を書き込める追記部の両方を有する、いわゆるハイブリッドCD、ハイブリッドDVDメディアの要求も高まっており、この要求はディスク容量が高まるほど顕著になるとも考えられる。ここで、ROM部と追記部の両方を1枚のディスクに併せ持つCD系メディアを、ハイブリッドCD−R、あるいはハイブリッドDVD−Rと仮称することにする。このハイブリッドCD−R、あるいはハイブリッドDVD−Rは図1に示すようにROM部と追記部が分かれているが、ROM部に要求されるプリピット部の深さと、追記部に要求されるプリグルーブの深さは異なっている。一般的には、プリピット深さは変調度が最大になるようにλ/4n、プリグルーブ深さはトラッキングエラー信号が最大となるようにλ/8nとしている(但し、λは記録/再生波長、nは入射媒体、通常は基板の屈折率)。
【0014】
このように、ROM部のプリピット深さと、追記部のプリグルーブ深さが異なり、この基板上にスピンコーティング法によって色素膜を形成される場合、ROM部のプリピットに流れ込む色素と追記部のプリグルーブに流れ込む色素の量が異なり、ROM部のプリピットの色素埋まり具合と追記部のプリグルーブの色素埋まり具合は全く異なってしまう危険性が高い。ハイブリッドCD−R、ハイブリッドDVD−Rは色素塗布後に金反射膜を設けるのが一般的であるが、ROM部のプリピットからの信号、および追記部のプリグルーブからのトラッキングエラー信号は色素と金反射膜の界面で主に決まってしまうため、この色素埋まり具合は非常に重要となる。このハイブリッドCD−R、ハイブリッドDVD−Rでは、スピンコート法によってROM部のプリピットからの信号と追記部のプリグルーブからのトラッキングエラー信号の両方を最適化することは非常に困難である。
【0015】
したがってこの両者の最適条件の矛盾を軽減するために、通常のハイブリッドCD−R、ハイブリッドDVD−R作製時には、上記のように、ROM部と追記部の塗り分けを行ったり、色素のROM部のピット、および追記部のプリグルーブへの埋まり具合の差を考慮に入れて、スタンパを最適化したり、色素を溶解させる溶剤の種類や組成、塗布パターン等を調整する必要があった。この方法を用いていたため、温湿度等の作業環境や溶剤に混入している微少不純物や組成変動等によって、ROM部のプリピット、および追記部のプリグルーブへの色素の埋まり具合が全く変わってしまう場合が多くなる。
【0016】
さらに、ハイブリッドCD−R、ハイブリッドDVD−Rの研究・開発段階では何種類もの色素のディスク特性を評価する必要があるが、色素が異なるごとに色素溶液の粘度、最適溶剤、組成が異なるため、色素が変わるたびに最適スタンパが必要となったり、あるいは同一スタンパから得られた基板を用いて、色素が変わるたびに最適溶剤、組成、塗布パターンの条件を探し出す必要性があった。また、最適の溶剤、組成、塗布条件を設定しても、スタンパの設計が異なると、すなわち、プリピットやプリグルーブの幅や溝深さが変更になると、以前の最適の溶剤、組成、塗布条件が無意味となりかねない。このため、非常に研究・開発の効率が悪く、また生産性の大幅な低下を招くことになっていた。
【0017】
さらに従来の層構成、および製造方法では、上述したような観点からROM部と追記部をディスク上の任意の場所に設けたり、ディスク上にROM部、あるいは追記部を複数持たせることが困難であった。
【0018】
また、上記のようにスピンコート法による色素の塗れ方で光情報記録媒体の信号特性が変わってしまうため、この色素の成膜条件の変動は記録/再生波長の短波長化により許容される範囲が厳しくなる。これによって、短波長化を図る場合、生産性、コストの面で大幅な悪化も予想される。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、色素の塗布条件によってプリグルーブからのトラッキングエラー信号やプリピットからの情報信号が大きく変動する現象をなくし、生産性が高くコスト低減となるような、また研究・開発の大幅な効率向上が図れるような光情報記録媒体、およびその記録/再生方法を提供することにある。すなわち本発明は、色素の塗布条件によって、追記型光情報記録媒体の場合は、プリグルーブからのトラッキングエラー信号を、またはハイブリッド型光情報記録媒体の場合はROM部のピットからの信号と追記部のプリグルーブからのトラッキングエラー信号両者が同時に最適化され、かつこの最適化が色素塗布条件によって大きく変動する現象をなくし、生産性が高くコスト低減化となるような、また研究・開発の大幅な効率向上が図れるような、さらにはレーザ光に短波長化による高密度化に対応できる光情報記録媒体、およびその記録/再生方法を提供することを目的とする。本発明によれば、ハイブリッド型光情報記録媒体においては、複数のROM部と追記部をディスク上の任意の場所に設けることができるため、アプリケーションの幅が大幅に広がる。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は検討した結果、上記課題を特定の層構成とその製造方法とにより達成可能なことを見い出し本発明に至った。而して前記課題は、本発明の(1)「1枚の基板上にあらかじめ情報が記録されたROM部と、追記が可能な領域であって、レーザ光をトラッキングするための案内溝があらかじめ設けられた部分を併せ持つ第1の基板上に金属反射層、高分子誘電体層、色素を含有する記録層、第2の基板を順次積層してなることを特徴とする光情報記録媒体」、(2)「色素を含有する記録層がスピンコーティング法により形成されていることを特徴とする前記(1)項に記載の光情報記録媒体」、(3)「高分子誘電体層がホットメルト型接着材料よりなることを特徴とする前記(1)項又は(2)項のいずれかに記載の光情報記録媒体」、(4)「高分子誘電体層が紫外線硬化型接着材料よりなることを特徴とする前記(1)項乃至(3)項のいずれか1に記載の光情報記録媒体」により達成される。
【0021】
また前記課題は、本発明の(5)「情報の記録/再生を第2の基板側から行うことを特徴とする前記(1)項乃至(3)項のいずれか1に記載の光情報記録媒体を用いた光情報記録媒体の記録/再生方法」により達成される。さらに、(6)「金属反射層を設けた第1の基板と、色素を含有する記録層を設けた第2の基板とを該層構成となるよう高分子誘電体により接着して形成することを特徴とする前記(1)項に記載の光情報記録媒体を製造する方法」により達成される。
【0022】
ここで前記(1)項、(2)項の内容は光記録媒体としての基本構造および材料構成を示すものであり、色素や溶剤材料、組成、塗布環境、塗布条件等が変化してもプリピットやプリグルーブなどの溝への埋まり具合、形状に再生信号やトラッキングエラー信号が大きく左右されない光情報記録媒体を主に提供するものであり、前記(3)項、(4)項はスピンコーティング法による成膜性の容易さを損なうことなく、生産性の高い光情報記録媒体を主として提供するためのものである。前記(5)項はその記録媒体に適した記録再生方法を主として提供し、前記(6)項はその生産性の高い製造法を主として提供する。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明での重要なポイントは、使用光の位相差即ち光路長差を利用する場合、ROM部のプリピット信号からの反射光量や追記部のプリグルーブからのトラッキングエラー信号光量は、最も大きな反射係数を持つ境界面で決定され(すなわち、この大きな反射係数を持つ境界面での記録部と非記録部、あるいはプリグルーブのある場所とない場所との間の位相変化量で決まる)、基板、色素を含む記録層、反射層、保護層等の従来から用いられている層構成材料を用いると、その最も大きな反射係数を持つ境界面が色素と金反射層の界面であることを利用することにある。
【0024】
したがって、この色素と金反射層の界面にはっきりとした、凹凸による位相変化を持たせることができるならば、色素のプリピット部やプリグルーブ部の溝埋まり具合をあまり気にしなくてよくなるわけである。
具体的に説明すると、従来技術で述べたように従来の再生方法では、プリピットやプリグルーブが刻まれた部分とプリピットやプリグルーブがない部分でそれぞれ反射された光の干渉によって記録情報やトラッキングエラー信号が発生する。その干渉の様子を示したのが図3(a)〜(e)であり、図中のくぼみはプリピット、もしくはプリグルーブである。くぼみ程度が(a)〜(e)の順に小さくなるにつれて位相差が少なくなる。
【0025】
色素記録層がない、CD−ROMあるいはDVD−ROMの場合は基板上に刻まれたプリピットもしくはプリグルーブの形状、深さがダイレクトに再生信号やトラッキングエラー信号に反映される。なぜなら入射光の反射が基板と反射層の界面で主に決まるためである。色素記録層を設けたCD−R、DVD−R、あるいはハイブリッドCD−R、ハイブリッドDVD−Rでは、入射光の反射が色素を含む記録層と反射層界面で主に決まる。
【0026】
そのため、プリピットやプリグルーブが刻まれた部分とプリピットやプリグルーブがない部分でそれぞれ反射された光の干渉は、基板上にあらかじめ設けられたプリピットやプリグルーブの溝形状や深さに依存せず、プリピットやプリグルーブの溝への色素の埋まり具合、埋まり形状に支配されることになる。
【0027】
一方、本発明の層構成、記録/再生は図4(a)〜(e)に示すとおりである。本発明では記録情報の再生、およびトラッキングに必要な信号を安定的に得るためには、基板上にあらかじめ刻まれたプリピットやプリグルーブの界面から主反射が得られればよく、このような条件を達成するため基本的にあらかじめプリピットやプリグルーブが刻まれた基板上に反射層、次いで高分子誘電体層、色素を含む記録層という構成をとり、記録層側から記録/再生をするものである。
本発明によればプリピットやプリグルーブからの主反射は、高分子誘電体層と反射層界面であり、この高分子誘電体層と反射層界面は反射層の形状に依存するが、この構成では反射層を設けた後のプリピット、もしくはプリグルーブの形状は基板のプリピット、もしくはプリグルーブの形状をほぼダイレクトに反映しており、くぼみ程度にさほど左右されない。
【0028】
すなわち、再生信号やトラッキングエラー信号は、反射層上に設けられた色素の形状、言い換えれば反射層が設けられたプリピットやプリグルーブの溝への色素の埋まり具合、形状に大きく依存しなくすることが可能となる。
【0029】
また、適度な再生信号トラッキングエラー信号を得るためには基板上に施されたプリピットやプリグルーブ界面で入射光の主反射が生じれば良いわけであるが、従来技術では以下のような問題点を有している。
【0030】
1.プリピットやプリグルーブの界面形状を保つためには、色素を含む記録層の膜厚を非常に薄くすれば良いが、色素膜厚を薄くすると記録コントラストが低下し、追記型としては利用できない。
2.逆に良好な記録コントラストを得るためにある程度以上の記録層膜厚を取ると、プリピットやプリグルーブに色素が必要以上に埋まってしまい、再生信号やトラッキングエラー信号が微弱化する恐れがある(位相差の変化が激しい)。
3.ROM部と追記部を併せ持つハイブリッド型では、プリピットとプリグルーブがそれぞれ最適溝深さが異なるため、スピンコーティングによるプリピットとプリグルーブへの色素埋まり具合を、両者が最適になるように制御することは非常に困難である。そのため色素の溝への埋まり具合、成膜条件等を考慮に入れて、あらかじめ溝形状、深さを最適化した基板を用いる必要がある。
【0031】
ところが、本発明を利用することで、色素の埋まり具合が再生信号やトラッキングエラー信号に与える影響を小さくすることができるため、色素の膜厚に神経を払う必要が軽減できる。また、ハイブリッド型においては、色素の埋まり具合がROM部のプリピット部と追記部のプリグルーブ部で、全く異なっていても問題の生じる可能性が少ない。
これにより従来問題となっていた上記1〜3の問題点は一挙に解決される。
従来の構成図3によれば、プリグルーブまたはプリピットの存在する部分とプリグルーブまたはプリピットが存在しない部分との位相差は、プリグルーブまたはプリピット部を基準とすれば、
(4π/λ){(n0d1+n1d2−n1(d1+d2−d3))}
=(4π/λ){(n0−n1)d1+n1d3} ・・・(1)
但し、λは記録/再生波長、n0は基板の複素屈折率、n1は色素を含む記録層の複素屈折率、d1、d2、d3は、図3に示すとおり、それぞれ、プリピット又はプリグルーブの溝深さ、ランド部における高分子誘電層の厚さ、ピット部又はグルーブ部の溝への色素および高分子誘電体層の埋まり程度、である。
一方、本発明の構成図4によれば、プリグループまたはプリピットの存在する部分とプリグループまたはプリピットが存在しない部分との位相差は、プリグループまたはプリピット部を基準とすれば、
(4π/λ){(n1d2−(n0d3+n1(d1+d2−d3))}
但し、λは記録/再生波長、n0は色素を含む記録層の複素屈折率、n1は高分子誘電体層の複素屈折率、d1、d2、d3は図4に示されるとおり、それぞれ、プリピット又はプリグルーブの溝深さ、ランド部における高分子誘電層の厚さ、ピット部又はグルーブ部の溝への色素および高分子誘電体層の埋まり程度、である。
【0032】
ところで、プリピットやプリグルーブの最適化を行う場合、つまりスタンパ作製時にはd1を設定するが、従来構成では位相差は(1)式を見てもわかるように、d1よりもむしろd3、つまり色素のプリピットやプリグルーブへの埋まり具合に大きく左右されることがわかる(明らかにd1、d3に係る係数は、n1〉(n1−n0))。
【0033】
他方、本発明では位相差は(2)式を見てもわかるように、d1によってほぼ決まり、d3、つまり高分子誘電体層のプリピットやプリグルーブへの埋まり具合にはあまり左右されないことがわかる。つまり、従来方法では、いくらスタンパ作製時にプリピットやプリグルーブを最適化しても、色素の塗布状態によって特性は大きく変動し、プリピットやプリグルーブの設計は何度となく繰り返され、あるいは塗布条件を最適化する必要性があるが、本発明ではスタンパ作製時に設定したプリピットやプリグルーブ深さがディスク化されてもそのまま生かされる。
【0034】
このことを可視化したものが図5、図6である。但し、計算においては、
n0=1.5、n1=2.7−i0.05、記録/再生波長を635(nm)とした。図5は従来方法によるもの、図6は本発明によるものであり、横軸にプリグルーブあるいはプリピットの溝深さd1を、縦軸にはプリグルーブあるいはプリピットの溝への色素および高分子誘電体層の埋まり具合を表すd3をとり、両者が変化した時のプリグルーブあるいはプリピットの存在する部分とプリグルーブあるいはプリピットの存在しない部分の位相差を計算した結果である。この結果を見ると、従来方法図5はプリグルーブあるいはプリピットの溝深さd1に対する位相差依存性とともに、プリグルーブあるいはプリピットの溝への色素の埋まり具合を表すd3の位相差へ寄与率が高いことがわかる。
一方、本発明による方法では、位相差へのプリグルーブあるいはプリピットの溝への色素の埋まり具合を表すd3が寄与する割合が大幅に低下していることがわかる。
【0035】
ところで、図5、6において、図中の左上は現実的でないd1、d3の組み合わせとして、今後も考えない。これは図7、8に示すように、図7がd1=d3でROM状態であって、このような状況は現実のスピンコーティングで形成できる極限と考え、図8のような状況は現実的になし得ないと考えられるからである。
通常のスピンコーティング法では、d3はd1よりも必ず小さくなる。したがって、所望の位相差、例えばプリピット部でπ(または−π)、プリグルーブ部でπ/2(または−π/2)の位相差を得るためには、d1、d3に制限が加えられる。つまり、スピンコーティング法の性格上、溝が浅いプリグルーブ部のd3gよりも溝が深いプリピット部のd3pのほうが必ず大きくなる。
【0036】
これによって、ハイブリッド型の光情報記録媒体において、プリピット部とプリグルーブ部の溝深さd1を最適に設定しても、プリグルーブ部のd3gとプリピット部のd3pには、スピンコーティングによるテクニックが要求される。
【0037】
この状況を示したのが、図9、10であり、従来方法では例えば、プリグルーブの溝深さを110(nm)とし、その時のd3を20(nm)だったとすると、プリピット部ではd3が20(nm)以上になってしまうため、プリピット部の溝深さが200(nm)程度も必要になってしまうが、本発明ではプリグルーブの溝深さを40(nm)とし、その時のd3を20(nm)だったとすると、プリピット部ではd3が20(nm)以上という条件を課しても、プリピット部の深さは70(nm)以上程度となり、浅い溝で所望の位相差を満足できるため高密度化にも有利となる。
図11、12には本発明と従来方法の位相差へ与えるd3の影響を示したもので、図3、4の溝埋まり状況に対応させてある.
【0038】
このように従来方法(図11)では、プリグルーブやプリピットへの溝の埋まり具合によって、所望の位相差を達成するためには、初期の溝深さd1を大きく変化させなければならず、色素の埋まり具合を調整できない場合、あるいは色素や溶剤の種類、組成比などを変えた場合等は、新たにスタンパの設計を行わなければならない。
他方、本発明の方法(図12)では、プリグルーブやプリピットへの溝の埋まり具合が多少変化しても、所望の位相差を達成するための溝深さは大きく変化しないため、たとえ色素や溶剤の種類、組成比などを変えた場合でも塗布条件によって位相差を調整することが可能となる。
【0039】
本発明において使用される色素としては、例えばポリメチン色素、ナフタロシアニン系、フタロシアニン系、スクアリリウム系、コロコニウム系、ピリリウム系、ナフトキノン系、アントラキノン(インダンスレン)系、キサンテン系、トリフェニルメタン系、アズレン系、テトラヒドロコリン系、フェナンスレン系、トリフェノチアジン系染料、および金属鎖体化合物などが挙げられ、上記の染料を単独で用いてもよいし、2種以上の組合わせにしてもよい。また上記染料中に金属、金属化合物、例えばIn、Te、Bi、Al、Be、TeO2、SnO、As、Cdなどを分散混合、あるいは積層の形態で用いることもできる。さらに、上記染料中に高分子材料、例えばアイオノマー樹脂、ポリアミド系樹脂、ビニル系樹脂、天然高分子、シリコーン、液状ゴムなどの種々の材料、もしくはシランカップリング剤などを分散混合して用いてもよいし、あるいは特性改良の目的で、安定剤(例えば遷移金属鎖体)、分散剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、可塑剤などと一緒に用いることができる。塗布法を用いる場合には、上記染料などを有機溶媒に溶解させて、スプレー、ローラーコーティング、ディッピングおよび、スピンコーティングなどの慣用のコーティング法によって行われるが、本発明の性格上スピンコーティングが最も好ましい。
【0040】
有機溶媒としては、一般にメタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、四塩化炭素、トリクロロエタンなどの脂肪族ハロゲン化炭素類、あるいは、ベンゼン、キシレン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの芳香族類、メトキシエタノール、エトキシエタノール等のセルソルブ類、ヘキサン、ペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの炭化水素類などを用いることができる。
記録層の膜厚は、100Å〜10μm、好ましくは200Å〜2000Åが適当である。
【0041】
本発明で使用される基板の必要特性としては、基板側より記録/再生を行う場合のみ使用レーザー光に対して透明でなければならず、記録層側から記録/再生を行う場合は透明である必要はない。したがって、本発明では、基板を1層しか用いない場合は、基板は透明である必要はなく、基板2枚をサンドイッチ状で用いる場合は、第2の基板のみが透明であれば、第1の透明、不透明は問わない。基板材料としては、例えば、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミドなどのプラスチック、あるいはガラス、セラミック、金属などを用いることができる。
なお、基板を1層しか用いない場合、あるいは基板2枚をサンドイッチ状で用いる場合は、請求項に記載の第1の基板の表面にトラッキング用の案内溝や案内ピット、さらにアドレス信号などのプレフォーマットが形成されている必要がある。
【0042】
本発明においては下引き層等を含め、基板、記録層、反射層、保護層以外に設けられた層をここでは中間層と呼ぶことにする。この中間層は(a)接着性の向上、(b)水、またはガスなどのバリアー、(c)記録層の保存安定性の向上、(d)反射率の向上、(e)溶剤からの基板や記録層の保護、(f)案内溝・案内ピット・プレフォーマット等の形成などを目的として使用される。(a)の目的に対しては高分子材料、例えばアイオノマー樹脂、ポリアミド樹脂、ビニル系樹脂、天然樹脂、天然高分子、シリコーン、液状ゴムなどの種々の高分子物質、およびシランカップリング剤などを用いることができ、(b)および(c)の目的に対しては、上記高分子材料以外に無機化合物、例えばSiO2、MgF2、SiO、TiO2、ZnO、TiN、SiNなどの金属、または半金属、例えばZn、Cu、Ni、Cr、Ge、Se、Au、Ag、Alなどを用いることができる。また(d)の目的に対しては金属、例えばAl、Ag等や、金属光沢を有する有機薄膜、例えばメチン染料、キサンテン系染料等を用いることができ、(e)および(f)の目的に対しては紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂、熱可塑性樹脂等を用いることができる。下引き層の膜厚は0.01〜30μm、好ましくは0.05〜10μmが適当である。
【0043】
保護層、または基板表面ハードコート層は(a)記録層(反射吸収層)を傷、ホコリ、汚れ等から保護する、(b)記録層(反射吸収層)の保存安定性の向上、(c)反射率の向上等を目的として使用される。これらの目的に対しては、前記下引き層に示した材料を用いることができる。また無機材料として、SiO、SiO2なども用いることができ、有機材料として、ポリメチルアクリレート、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、ポリスチレン、ポリエステル樹脂、ビニル樹脂、セルロース、脂肪族炭化水素樹脂、芳香族炭化水素樹脂、天然ゴム、スチレン−ブタジエン樹脂、クロロプレンゴム、ワックス、アルキッド樹脂、乾性油、ロジン等の熱軟化性、熱溶融性樹脂も用いることができる。上記材料のうち保護層、または基板表面ハードコート層に最も好ましい物質は、生産性に優れた紫外線硬化樹脂である。保護層、または基板表面ハードコート層の膜厚は、0.01〜30μm、好ましくは0.05〜10μmが適当である。本発明において、前記下引き層、保護層、および基板表面ハードコート層には、記録層の場合と同様に、安定剤、分散剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、可塑剤等を含有させることができる。
【0044】
本発明における金属反射層としては、単体で高反射率の得られる、腐食されにくい金属、半金属等が挙げられ、材料例としては、Au、Ag、Cu、Cr、Ni、Al等が挙げられ、好ましくはAu、Alがよい。これらの金属、半金属は単独で使用してもよく、2種以上の合金としてもよい。また、誘電体の多層膜を利用してもよい。
膜形成方法としては、蒸着、スパッタリング等が挙げられ、膜厚としては50〜3000Å、好ましくは100〜1000Åである。
【0045】
本発明においては高分子誘電体層のために透明な高分子化合物が使用できる。本発明で特に好ましいのは、ホットメルト型(熱溶融型)接着剤、もしくは紫外線硬化型接着剤である。
紫外線硬化型接着剤は、紫外線照射によってラジカル重合が開始して硬化する接着剤である。その組成は、一般的に(1)アクリル系オリゴマー、(2)アクリル系モノマー、(3)光重合開始剤、(4)重合禁止剤からなるもので、オリゴマーはポリエステル系、ポリウレタン系、エポキシ系アクリル酸エステル等で、光重合開始剤はベンゾフェノン、ベンゾインエーテル等が使用できる。
ホットメルト接着剤は液状接着剤が溶剤揮散や反応によって硬化し接着力が発現するのに対し、常温固体の熱可塑性樹脂が熱溶融、冷却個化の物理変化で接着力が発現するものである。ホットメルト接着剤は、EVA、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリウレタン系等を用いることができる。
なお、本発明の記録媒体の製造法としては、第1基板上に金属反射膜を設け、その上に高分子誘電体層、色素を含有する記録層、第2基板を順次、塗工法により形成してもよいが、最も生産性の高い製造法は、金属反射膜を設けた第1基板と、別途色素を含有する記録層を設けた第2基板を高分子誘電体(接着剤)で接着する方法である。
【0046】
【実施例】
本発明の層構成、記録/再生方法により、初期反射率がCD−ROMやDVD−ROMの規格を満足できるかどうかをシュミレーション結果を以下に示す。
計算にあたって、層構成は、基板、反射層、高分子誘電体層、色素を含む記録層、第2の基板とし、基板は複素屈折率がn=1.55+0iで厚さが0.6mm、高分子誘電体層が複素屈折率がn=1.50+0iで厚さが0.6mmであるとし、また反射層は金を用い、保護層側から再生することを仮定し、ROM互換の反射率(約70%)を得るために必要な反射層膜厚と色素を含む記録層膜厚を計算した。
結果は図13〜14に示す通りで、白い部分が初期反射率70%を達成する領域、ハッチした部分が初期反射率70%以下の領域である。
【0047】
ところで、従来構造では反射層は金で約100(nm)程度の膜厚を有しているが、本発明の層構成では、基板にあらかじめ刻まれたプリピットやプリグループの形状をダイレクトに反映させることに特徴があるため、反射層膜厚が厚くなると、蒸着やスパッタによっても基板にあらかじめ刻まれたプリピットやプリグループの形状からだれを持ち始めるため、好ましくない。
【0048】
しかしながら、本発明の層構成で、金反射層膜厚が比較的薄く、基板にあらかじめ刻まれたプリピットやプリグループの形状をダイレクトに反映できるような、金反射層膜厚でも(40nm程度)、また、記録コントラストを確保できるような記録層膜厚を有していても(50〜100nm程度)、初期反射率が70%以上となることが確かめられた。
深さ1400Å、半値幅0.65μm、トラックピッチ1.0μmの案内溝を有する厚さ0.6mmの射出成形ポリカーボネート基板(第1基板)上に、スパッタ法により金2000Åの反射層を設けた。他方、厚さ0.6mmの平滑な射出成形ポリカーボネート基板(第2基板)上に下記化合物を1−メチルシクロヘキサン、2−メトキシエタノール、混合溶液に溶解した液をスピンナー塗布し、記録体としたときの第2基板側からの反射率が70%となる膜厚に有機色素層を形成し、次いで、ホットメルト接着剤を用い、金膜と色素膜とを相対するように接着し記録媒体とした。
【0049】
比較例
深さ1400Å、半値幅0.35μm、トラックピッチ1.0μmの案内溝(螺旋方向が従来と逆)を有する厚さ0.6mmの射出成形ポリカーボネート基板上(第1基板)に、下記化合物例を1−メチルシクロヘキサン、2−メトキシエタノールの混合溶液に溶解した液をスピンナー塗布し、記録体としたときの第1基板側からの反射率が70%となる膜厚に有機色素層を形成し、次いで、スパッタ法により金2000Åの反射層を設け、さらにその上に厚さ0.6mmの平滑な射出成形ポリカーボネート基板(第2基板)をアクリル系フォトポリマーにて接着し記録媒体とした。
【0050】
この記録体に発振波長635nm、ビーム径1.0μmの半導体レーザー光を用い、実施例は第2基板側から、比較例は第1基板側からトラッキングしながらEFM信号(線速3.0m/sec、最短マーク長0.4μm)を記録し、同じレーザーの連続光(再生パワー0.7mW)で再生し、再生波形を観察した。結果は表1に示される
【0051】
【表1】
【0052】
【発明の効果】
以上、詳細かつ具体的な説明から明らかなように、本発明の光情報記録媒体、その製造方法及びこれを用いた光情報記録方法により、スピンコーティング法による成膜性の容易さを損なうことなく、生産性の高い光情報記録媒体が提供され、スピンコーティング法による色素のプリピットやプリグループ等の溝への埋まり具合、形状に再生信号やトラッキングエラー信号が大きく左右されない光情報記録媒体が提供され、色素や溶剤材料、組成、塗布環境、塗布条件等が変化しても光情報記録媒体の特性が大きく変化せず、スピンコーティングにより形成された記録層にディスク内バラツキがあっても、再生信号やトラッキングエラー信号等の信号特性バラツキは低減され、記録/再生波長が短波長化しても、十分製造マージンが得られ、製造バラツキの少ない光情報記録媒体が提供でき、また、基板成形の労力が大幅に軽減され、研究・開発の効率化が図れるという、極めて優れた効果が発揮される。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のROM部と追記部とを有する光情報記録媒体の表面を示す図である。
【図2】従来のDVD−ROMのディスク構造の種類を示す図である。
【図3】従来構造の光情報記録媒体における位相差発生の状況を説明する図である。
【図4】本発明の光情報記録媒体おける位相差発生の状況説明する図である。
【図5】従来構造における、プリピットあるいはプリグルーブの溝深さと色素の溝埋まり具合が位相差へ与える影響を示した図である。
【図6】本発明の構造における、プリピットあるいはプリグルーブの溝深さと色素の溝埋まり具合が位相差へ与える影響を示した図である。
【図7】プリピットあるいはプリグルーブへの最適な色素埋まり具合を示す図である。
【図8】プリピットあるいはプリグルーブへの色素埋まり具合の非現実的例を示す図である。
【図9】従来構造のハイブリッド型における、プリピットあるいはプリグルーブの溝深さと色素の溝埋まり具合の許容条件の1関係例を示した図である。
【図10】本発明の構造のハイブリッド型における、プリピットあるいはプリグループの溝深さと色素の溝埋まり具合の許容条件の1関係例を示した図である。
【図11】従来構造における、色素の溝埋まり具合が位相差に与える影響を示した図である。
【図12】本発明の構造における色素の溝埋まり具合が位相差に与える影響を示した図である。
【図13】本発明の実施例における計算結果を示す図(再生波長780nm)である。
【図14】本発明の他の実施例における計算結果を示す図(再生波長635nm)である。
【図15】本発明実施例における層構成を示す図である。
【符号の説明】
10 第1基板
11 反射層
12 高分子誘電体層
13 色素を含む記録層
14 第2基板
15 色素を含む記録層
15 中間層
17 第2基板
Claims (6)
- 1枚の基板上にあらかじめ情報が記録されたROM部と、追記が可能な領域であって、レーザ光をトラッキングするための案内溝があらかじめ設けられた部分を併せ持つ第1の基板上に金属反射層、高分子誘電体層、色素を含有する記録層、第2の基板を順次積層してなることを特徴とする光情報記録媒体。
- 色素を含有する記録層がスピンコーティング法により形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光情報記録媒体。
- 高分子誘電体層がホットメルト型接着材料よりなることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の光情報記録媒体。
- 高分子誘電体層が紫外線硬化型接着材料よりなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の光情報記録媒体。
- 情報の記録/再生を第2の基板側から行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の光情報記録媒体を用いた光情報記録媒体の記録/再生方法。
- 金属反射層を設けた第1の基板と、色素を含有する記録層を設けた第2の基板とを該層構成となるよう高分子誘電体により接着して形成することを特徴とする請求項1に記載の光情報記録媒体を製造する方法。
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