JP3691300B2 - 防水コネクタ - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コネクタハウジングと端子を接続した複数の電線との防水性を向上させた小型で多極の防水コネクタに関する。
【0002】
【先行技術】
この種の防水コネクタを、本出願人は特願平10−60096号において出願した。これを、図6〜図8によって具体的に説明すると、防水コネクタ10のコネクタハウジング11は、複数の端子収容室13を一体形成した合成樹脂製のインナハウジング12と、このインナハウジング12を内部に嵌め込む合成樹脂製のアウタハウジング17と、これらインナハウジング12とアウタハウジング17との間に介在され、該インナハウジング12の各端子収容室13に収容された雌端子14を保持する合成樹脂製のスペーサ28とで構成されている。
【0003】
図6,図7に示すように、インナハウジング12は上下面の後側がそれぞれ開口した箱部12aを有していて、中央の水平壁12bと仕切壁を兼ねた上下の各垂直側壁12cとで形成される空間内に上記各端子収容室13を形成してある。そして、この各端子収容室13内に雌端子14が収容されるようになっている。また、箱部12aの上下面の両側及び中央には係止爪15をそれぞれ一体突出形成してあると共に、その両側中央の前端にはフランジ部16をそれぞれ一体突出形成してある。尚、箱部12aの前壁の各端子収容室13に対向する位置には、図示しない相手側コネクタの雄端子が挿通する矩形の挿通孔12dを形成してある。さらに、雌端子14の箱部14aの後部の両側板部には各一対の圧接刃14b,14bを折り曲げ形成してある。
【0004】
図6,図7に示すように、アウタハウジング17は、略四角筒状の内壁部17aと、この内壁部17aを内包する略四角筒状の外壁部17bと、これら内,外壁部17a,17bの後部を連結した底壁部17cとで正面側が開口した二重の箱状になっている。この底壁部17cの中央は厚肉になっていて、その厚肉部の前側の各端子収容室13に対向する位置には、防水ゴム栓18が圧入等により収容される大径で断面円形のゴム栓収容凹部19をそれぞれ形成してあると共に、該厚肉部の後側には電線20が貫通する小径で断面円形の電線挿通孔21を対応するゴム栓収容凹部19に連通するようにそれぞれ形成してある。この防水ゴム栓18は内,外周面がそれぞれ凹凸状の略円筒状になっていて、内部に電線20が隙間なく貫通されるようになっている。
【0005】
また、アウタハウジング17の内壁部17aの上下壁の前両側には、インナハウジング12の箱部12aの上下面の両側の各係止爪15が係脱される矩形の係止孔22をそれぞれ形成してあると共に、該内壁部17aの上下壁の前側中央には、インナハウジング12の箱部12aの上下面の中央の各係止爪15が係脱される矩形で長尺の係止孔23をそれぞれ形成してある。さらに、アウタハウジング17の内壁部17aの外面側の奥には、環状でゴム製の防水パッキン24を受けるV字状のパッキン受部25を一体突出形成してある。尚、アウタハウジング17の内壁部17aの内面側の前縁の各係止孔22,23に対向する位置にはテーパ面26をそれぞれ形成してある。また、アウタハウジング17の外壁部17bの上下壁の前側には、図示しない相手側コネクタの可撓性係止アームが係脱される係止孔27をそれぞれ形成してある。
【0006】
図6,図7に示すように、スペーサ28は、アウタハウジング17の内壁部17aの内面側に嵌合される略四角筒状の胴体部28aと、この胴体部28aの前端より後方に折れ曲がるように一体形成され、アウタハウジング17の内壁部17aの外面側に嵌合される略四角筒状の鍔部28bと、上記胴体部28aの底壁部28cとで正面側が開口した箱状になっている。
【0007】
そして、スペーサ28の胴体部28aの内部にインナハウジング12の箱部12aが嵌合されるようになっている。このスペーサ28の胴体部28aの上下壁の内面にはインナハウジング12の箱部12aの後端縁及び各端子収容室13に収容された雌端子14の箱部14aの後端縁をそれぞれ係止するリブ状で端子脱落防止用の突起29をそれぞれ一体突出形成してある。
【0008】
また、スペーサ28の胴体部28aと鍔部28bとの連結部の前側のインナハウジング12の各係止爪15とフランジ部16に対向する位置には、切欠部30,31をそれぞれ形成してある。この上下側の各切欠部30,30間のスペーサ28の胴体部28aの上下壁の外面側には、アウタハウジング17の各係止孔23に係脱される係止爪32を一体突出形成してある。さらに、スペーサ28の鍔部28bの先端部は、アウタハウジング17への嵌合完了時に該アウタハウジング17の内壁部17aのパッキン受部25に係止したパッキン24を保持するようになっている。
【0009】
また、スペーサ28の底壁部28cのアウタハウジング17の各電線挿通孔21に対向する位置には電線挿通孔33をそれぞれ形成してある。また、スペーサ28の底壁部28cは、アウタハウジング17への嵌合完了時に該アウタハウジング17の底壁部17cの各ゴム栓収容凹部19に挿入されたゴム栓18を保持するようになっている。そして、図6に示すように、アウタハウジング17の各電線挿通孔21と各ゴム栓18及びスペーサ28の各電線挿通孔33を貫通した各電線20は、インナハウジング12の各端子収容室13に収容された各雌端子14の一対の圧接刃14b,14b間に圧接接続され、各端子収容室13と各電線20とは各ゴム栓18及びパッキン24によりそれぞれシールされるようになっている。
【0010】
上記構成の防水コネクタ10を組み付ける場合には、図8(a)に示すように、まず、コネクタハウジング11の外側を成すアウタハウジング17の底壁部17cの内側の各ゴム栓収容凹部19にコネクタハウジング嵌合方向よりゴム栓18をそれぞれ挿入してセットすると共に、パッキン24をアウタハウジング17の内壁部17aのパッキン受部25に挿入してセットする。
【0011】
その後で、図8(b)に示すように、アウタハウジング17の内壁部17aにスペーサ28の胴体部28aを嵌め込み、アウタハウジング17の内壁部17aの各係止孔23にスペーサ28の胴体部28aの各係止爪32を係止させる。このアウタハウジング17の内壁部17aの各係止孔23とスペーサ28の胴体部28aの各係止爪32との係止により、アウタハウジング17の底壁部17cにより各ゴム栓18が抜け止めされると共に、スペーサ28の鍔部28bの斜めの先端によりパッキン24が抜け止めされ、コネクタハウジング全体の防水性をより一段と向上させることができる。
【0012】
次に、図8(c)に示すように、アウタハウジング17の底壁部17cの各電線挿通孔21より各ゴム栓18とスペーサ28の底壁部28cの各電線挿通孔33に電線20を外側からそれぞれ貫通させる。次に、図8(d)に示すように、各電線20をコネクタハウジング11の内側を成すインナハウジング12の各端子収容室13に収容した雌端子14の一対の圧接刃14b,14bに圧接接続させる。
【0013】
次に、図8(e)に示すように、スペーサ28の胴体部28a内にインナハウジング12を嵌め込み、アウタハウジング17の内壁部17aの各係止孔23にインナハウジング12の箱部12aの各係止爪15を係止させることにより、防水コネクタ10の組み付けが完了する。この際に、スペーサ28の胴体部28aの上下壁の内面に突出した各突起29によりインナハウジング12の箱部12aの後端縁及び各端子収容室13に収容された雌端子14の箱部14aの後端縁がそれぞれロックされ、かつ各突起29が外側に変形することがないので、各端子収容室13からの雌端子14の脱落が確実に防止される。しかも、スペーサ28により各雌端子14の保持と各ゴム栓18の保持が同時にできるため、ゴム栓抜け止め専用部品が必要なく、構成部品の部品点数の削減を図って低コスト化を図ることができる。さらに、スペーサ28が該スペーサ28自身の各係止爪32のアウタハウジング17の各係止孔23への係止とインナハウジング12の各係止爪15のアウタハウジング17の各係止孔23への係止とにより二重にロックされるため、各ゴム栓18及びパッキン24の脱落を確実に防止することができ、防水の信頼性をより一段と向上させることができる。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記先行技術の防水コネクタ10では、図8(e)に示すように、各ゴム栓18はアウタハウジング17の底壁部17cと各ゴム栓収容凹部19の周りの周壁部17dとで完全に包囲されるように覆われているため、防水コネクタ10の組付時にゴム栓18のゴム栓収容凹部19への装着の有無(欠品)をアウタハウジング17の外部から確認することが難しく、ゴム栓収容凹部19にゴム栓18を装着し忘れた場合には防水コネクタ10の防水性能及び防水信頼性が悪くなる可能性があった。
【0015】
また、図8(b)に示すように、アウタハウジング17のゴム栓収容凹部19にゴム栓18を収容する装着工程が必要不可欠なため、防水コネクタ10の組付作業性が煩雑になると共に組み付けに時間がかかった。
【0016】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、組付作業性と防水性能及び防水信頼性の向上を図ることができる多極の防水コネクタを提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、コネクタハウジングの上下方向及び左右方向に複数の端子収容室と該各端子収容室に連通するゴム栓収容室をそれぞれ形成し、この各ゴム栓収容室に電線挿通孔を形成したゴム栓を配置すると共に、前記各端子収容室に電線を接続した端子を収容自在にして前記各端子収容室と前記電線とを前記ゴム栓でシール自在にした防水コネクタにおいて、前記コネクタハウジングの前記各ゴム栓収容室を形成する周壁及び仕切壁の上下方向と左右方向のいずれか一方の方向の各ゴム栓収容室の列毎に、栓材注入口と栓材通路及びガス抜き口を連なるようにそれぞれ形成し、この各列毎の栓材注入口より該各列毎の各ゴム栓収容室内に栓材を注入して前記電線の外周に密着当接するシール部を複数有する電線挿通孔が形成されたゴム栓をそれぞれ一体に形成(一体成形)したことを特徴とする。
【0018】
この防水コネクタでは、コネクタハウジングの各列毎の栓材注入口より該各列毎の各ゴム栓収容室内に、栓材を注入して電線の外周に密着当接するシール部を複数有する電線挿通孔が形成されたゴム栓をそれぞれ一体成形したので、ゴム栓の装着忘れがなくなって、コネクタハウジングの各ゴム栓収容室とゴム栓との間及びゴム栓と電線との間のシールが容易かつ確実に行われて防水性能及び防水信頼性が向上する。これにより、防水コネクタの組付時にコネクタハウジングへのゴム栓の装着工程が不要となり、シール性に優れた多極の防水コネクタが簡単かつ短時間で組み付けられて全体の組付作業性がより一段と向上する。
【0019】
請求項2の発明は、請求項1記載の防水コネクタであって、前記各列毎の各ゴム栓収容室内にそれぞれ一体に形成されたゴム栓の電線挿通孔内の前記複数のシール部の各位置を、該各列毎の前記栓材注入口と栓材通路及びガス抜き口の各位置と同位置にならないように配置したことを特徴とする。
【0020】
この防水コネクタでは、各列毎の各ゴム栓収容室内にそれぞれ一体成形されたゴム栓の電線挿通孔内の複数のシール部の各位置を、該各列毎の栓材注入口等の位置と異ならせたので、ゴム栓の電線挿通孔内の複数のシール部に対する電線の防水性能の低下が防止され、防水コネクタの防水性能及び防水信頼性がより一段と向上する。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1(a)は本発明の一実施形態の防水コネクタの組み付け前の状態を示す断面図、図1(b)は同防水コネクタの組み付け完了状態を示す断面図、図2は同防水コネクタに用いられるアウタハウジングの断面図、図3は同アウタハウジングにゴム栓を一体成形した状態を示す断面図、図4は同ゴム栓を一体成形したアウタハウジングの背面図、図5(a)は同ゴム栓を一体成形したアウタハウジングの要部の部分断面図、図5(b)は同要部の比較例の部分断面図である。
【0023】
図1(a),(b)、図4に示すように、防水コネクタ1のコネクタハウジング2は、上下方向及び左右方向に複数(上下方向に2段でかつ左右方向に3段)の端子収容室4を一体形成した合成樹脂製のインナハウジング3と、このインナハウジング3を内部に嵌め込む合成樹脂製のアウタハウジング5とで構成されている。
【0024】
インナハウジング3は上,下面の後側が開口してアウタハウジング5の内壁部5aの内面側に嵌合される箱部3aとこの箱部3aの前端より後方に折れ曲がるように一体形成されて該アウタハウジング5の内壁部5aの外面側に嵌合される略四角筒状の鍔部3bを有していて、該箱部3aの中央の水平壁3cと仕切壁を兼ねた各垂直側壁3dとで形成される空間内に上記各端子収容室4を形成してある。そして、この各端子収容室4内に電線Wを接続する雌端子(端子)9が収容されるようになっている。
【0025】
インナハウジング3の箱部3aの両側面の中央にはアウタハウジング5の後述する各係止孔5fに係脱される係止爪(係止部)3eをそれぞれ一体突出形成してある。また、インナハウジング3の鍔部3bの先端部は、アウタハウジング5への嵌合完了時に該アウタハウジング5の内壁部5aの外面側に嵌め込まれたパッキンPを保持するようになっている。尚、箱部3aの前壁の各端子収容室4に対向する位置には図示しない相手側コネクタの雄端子が挿通する矩形の挿通孔3fを形成してある。さらに、雌端子9の箱部9aの後部の両側板部には電線Wが圧接接続される各一対の圧接刃9b,9bを折り曲げ形成してある。
【0026】
アウタハウジング5は、略四角筒状の内壁部5aと、この内壁部5aを内包する略四角筒状の外壁部5bと、これら内,外壁部5a,5bの後部を連結した底壁部(一壁部)5cとで正面側が開口した二重の箱状になっている。この底壁部5cの中央には内壁部5aに連なるように周壁5dを外側に一体突出形成してある。この周壁5dの前側の各端子収容室4に対向する位置には仕切壁5eを介して断面円形の端子収容室6Aをそれぞれ形成してあると共に、該周壁5dの後側には仕切壁5eを介して各端子収容室6Aと連通する断面円形のゴム栓収容室6Bをそれぞれ形成してある。
【0027】
図2〜図4に示すように、アウタハウジング5の各ゴム栓収容室6Bを形成する周壁5dと仕切壁5eの上下方向の各列(図4に示す左側と中央と右側の3つの上下方向の経路(ブロック)に分割された列)には、上から順に栓材注入口7Aと栓材通路7B及びガス抜き口7Cが連なるようにそれぞれ形成されている。そして、この各列毎の栓材注入口7Aより該各列毎の各ゴム栓収容室6B内には図示しない溶融ゴム材(栓材)を注入して電線Wの外周に密着当接するゴム栓8をそれぞれ一体成形してある。この各ゴム栓8の電線挿通孔8a内の前後には断面逆U字状に突出したシール部8bを環状に一体に形成してある。即ち、アウタハウジング5の各列毎の各ゴム栓収容室6B内にゴム栓8を一体成形する場合には、まず、アウタハウジング5を図2に示す形状にモールド成形した後、このアウタハウジング5の内壁部5aと外壁部5bと周壁5d及び仕切壁5eに図示しないゴム成形型を配置して、このゴム成形型のキャビティ内に各列の栓材注入口7Aより溶融ゴム材を流し込んでアウタハウジング5の各列毎の各ゴム栓収容室6B内にゴム栓8をそれぞれ一体成形する。
【0028】
図5(a)に示すように、アウタタハウジング5の各ゴム栓収容室6Bの内径をAとし、各ゴム栓8の電線挿通孔8a内の各シール部8bの内径をBとし、電線Wの外径をCとした場合に、A−B>Cの関係を満たすようにそれぞれ形成されている。さらに、各列毎の各ゴム栓収容室6B内にそれぞれ一体成形されたゴム栓8の電線挿通孔8a内の前後一対のシール部8b,8bの各位置は、該各列毎の栓材注入口7Aと栓材通路7B及びガス抜き口7Cの各位置と同位置にならないように配置してある。即ち、ゴム栓8の一対のシール部8b,8bは各列毎の栓材注入口7A等から略等距離隔てた位置に位置している。
【0029】
尚、アウタハウジング5の内壁部5aの前両側には、インナハウジング3の箱部3aの両側の各係止爪3eが係脱される矩形の係止孔(係止部)5fをそれぞれ形成してあると共に、アウタハウジング5の内壁部5aの外面側の奥には環状でゴム製の防水パッキンPが嵌め込まれるようになっている。
【0030】
以上実施形態の防水コネクタ1を組み付ける場合には、コネクタハウジング2の外側を成すアウタハウジング5の内壁部5aの外面側の奥にパッキンPを予め嵌め込んでセットしておく。次に、図1(a)に示すように、該アウタハウジング5の各ゴム栓収容室6B内に一体成形されたゴム栓8の電線挿通孔8aに外部(外側)より電線Wをそれぞれ貫通させる。次に、各電線Wをコネクタハウジング2の内側を成すインナハウジング3の複数の端子収容室4に収容した各雌端子9の一対の圧接刃9b,9bに圧接接続させる。
【0031】
次に、各電線Wをアウタハウジング5の外部の方向へ引いて該アウタハウジング5の各ゴム栓収容室6B内に一体成形されたゴム栓8の電線挿通孔8aに対して摺動させながら、図1(b)に示すように、インナハウジング3をアウタハウジング5の内壁部5a内に嵌合させる。この嵌合で、インナハウジング3の箱部3aの各係止爪3eとアウタハウジング5の内壁部5aの各係止孔5fとが係止されることにより、防水コネクタ1の組み付けが完了する。この組み付け完了時に、各雌端子9の圧接刃9b側はアウタハウジング5の各端子収容室6A内に収容される。
【0032】
このように、アウタタハウジング5の上下方向の各列毎の各栓材注入口7Aより該各列毎の各ゴム栓収容室6B内に、電線Wの外周に密着当接するゴム栓8をそれぞれ一体成形したので、ゴム材一体成形のサイクルを上げて成形時間を短縮させることができる。また、各ゴム栓収容室6Bと各ゴム栓8間はプライマーにて接着されるため、完全防水となり、さらに、アウタハウジング5の各ゴム栓収容室6Bに電線Wの外周に密着当接する一対のシール部8b,8bを有したゴム栓8が一体成形されるため、ゴム栓8の装着忘れがなくなって該ゴム栓8と電線Wとの間のシールを容易かつ確実に行うことができ、防水性能及び防水信頼性をより一段と向上させることができる。これらにより、防水コネクタ1の組付時にアウタハウジング5の各ゴム栓収容室6Bへのゴム栓8の装着工程が不要となって、シール性に優れた多極の防水コネクタ1を簡単かつ短時間で組み付けることができて全体の組付作業性をより一段と向上させることができる。
【0033】
また、図5(a)に示すように、アウタハウジング5の各列毎の各ゴム栓収容室6B内にそれぞれ一体成形されたゴム栓8の電線挿通孔8a内の一対のシール部8b,8bの位置を、該各列毎の栓材注入口7A等の位置と異ならせたので、各ゴム栓8の電線挿通孔8a内の一対のシール部8b,8bに対する電線Wの防水性能の低下を確実に防止することができる。即ち、図5(b)に示すように、各列毎の各ゴム栓収容室6B内にそれぞれ一体成形されたゴム栓8′の電線挿通孔8a内のシール部8bの位置を、各列毎の栓材注入口7A等の位置と一致させた場合には、ゴム栓8′の電線挿通孔8a内に電線Wを挿通する時に、シール部8bを介してゴム栓8′が栓材注入口7A等から図5(b)の矢印に示す方向に弾性変形してしまい、シール部8bの反発力が低下してシール性が低下するが、本実施形態ではこのようなことはなく、防水コネクタ1の防水性能及び防水信頼性をより一段と向上させることができる。
【0034】
尚、前記実施形態によれば、圧着端子に電線を圧着接続する場合について説明したが、端子は圧着端子に限らず、圧接端子に電線を圧接接続する場合にも前記実施形態を適用できることは勿論である。また、ゴム栓は純粋なゴム製に限られるものではなく、軟質の樹脂製等の弾性を有するものも含むものであることは勿論である。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、コネクタハウジングの各列毎の栓材注入口より該各列毎の各ゴム栓収容室内に、栓材を注入して電線の外周に密着当接するシール部を複数有する電線挿通孔が形成されたゴム栓をそれぞれ一体成形したので、ゴム栓の装着忘れがなくなって、コネクタハウジングの各ゴム栓収容室とゴム栓との間及びゴム栓と電線との間のシールを容易かつ確実に行うことができて防水性能及び防水信頼性を向上させることができる。これにより、防水コネクタの組付時にコネクタハウジングへのゴム栓の装着工程が不要となって、シール性に優れた多極の防水コネクタを簡単かつ短時間で組み付けることができて全体の組付作業性をより一段と向上させることができる。
【0036】
請求項2の発明によれば、各列毎の各ゴム栓収容室内にそれぞれ一体成形されたゴム栓の電線挿通孔内の複数のシール部の各位置を、該各列毎の栓材注入口等の位置と異ならせたので、ゴム栓の電線挿通孔内の複数のシール部に対する電線の防水性能の低下を確実に防止することができ、防水コネクタの防水性能及び防水信頼性をより一段と向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明の一実施形態の防水コネクタの組み付け前の状態を示す断面図、(b)は同防水コネクタの組み付け完了状態を示す断面図である。
【図2】上記防水コネクタに用いられるアウタハウジングの断面図である。
【図3】上記アウタハウジングにゴム栓を一体成形した状態を示す断面図である。
【図4】上記ゴム栓を一体成形したアウタハウジングの背面図である。
【図5】(a)は上記ゴム栓を一体成形したアウタハウジングの要部の部分断面図、(b)は同要部の比較例の部分断面図である。
【図6】先行技術の防水コネクタの組み付け前の状態を示す断面図である。
【図7】上記先行技術の防水コネクタの組み付け前の状態を一部断面で示す斜視図である。
【図8】(a)は上記先行技術の防水コネクタの組み付け前の状態を示す断面図、(b)は同防水コネクタのアウタハウジングにスペーサを嵌合した状態を示す断面図、(c)は同アウタハウジングとスペーサに電線を貫通させた状態を示す断面図、(d)は同電線をインナハウジングの端子収容室に収容された端子に接続した状態を示す断面図、(e)は同防水コネクタの組み付け完了状態を示す断面図である。
【符号の説明】
1 防水コネクタ
2 コネクタハウジング
4 端子収容室
5d 周壁
5e 仕切壁
6A 端子収容室
6B ゴム栓収容室
7A 栓材注入口
7B 栓材通路
7C ガス抜き口
8 ゴム栓
8a 電線挿通孔
8b シール部
9 雌端子(端子)
W 電線
【発明の属する技術分野】
本発明は、コネクタハウジングと端子を接続した複数の電線との防水性を向上させた小型で多極の防水コネクタに関する。
【0002】
【先行技術】
この種の防水コネクタを、本出願人は特願平10−60096号において出願した。これを、図6〜図8によって具体的に説明すると、防水コネクタ10のコネクタハウジング11は、複数の端子収容室13を一体形成した合成樹脂製のインナハウジング12と、このインナハウジング12を内部に嵌め込む合成樹脂製のアウタハウジング17と、これらインナハウジング12とアウタハウジング17との間に介在され、該インナハウジング12の各端子収容室13に収容された雌端子14を保持する合成樹脂製のスペーサ28とで構成されている。
【0003】
図6,図7に示すように、インナハウジング12は上下面の後側がそれぞれ開口した箱部12aを有していて、中央の水平壁12bと仕切壁を兼ねた上下の各垂直側壁12cとで形成される空間内に上記各端子収容室13を形成してある。そして、この各端子収容室13内に雌端子14が収容されるようになっている。また、箱部12aの上下面の両側及び中央には係止爪15をそれぞれ一体突出形成してあると共に、その両側中央の前端にはフランジ部16をそれぞれ一体突出形成してある。尚、箱部12aの前壁の各端子収容室13に対向する位置には、図示しない相手側コネクタの雄端子が挿通する矩形の挿通孔12dを形成してある。さらに、雌端子14の箱部14aの後部の両側板部には各一対の圧接刃14b,14bを折り曲げ形成してある。
【0004】
図6,図7に示すように、アウタハウジング17は、略四角筒状の内壁部17aと、この内壁部17aを内包する略四角筒状の外壁部17bと、これら内,外壁部17a,17bの後部を連結した底壁部17cとで正面側が開口した二重の箱状になっている。この底壁部17cの中央は厚肉になっていて、その厚肉部の前側の各端子収容室13に対向する位置には、防水ゴム栓18が圧入等により収容される大径で断面円形のゴム栓収容凹部19をそれぞれ形成してあると共に、該厚肉部の後側には電線20が貫通する小径で断面円形の電線挿通孔21を対応するゴム栓収容凹部19に連通するようにそれぞれ形成してある。この防水ゴム栓18は内,外周面がそれぞれ凹凸状の略円筒状になっていて、内部に電線20が隙間なく貫通されるようになっている。
【0005】
また、アウタハウジング17の内壁部17aの上下壁の前両側には、インナハウジング12の箱部12aの上下面の両側の各係止爪15が係脱される矩形の係止孔22をそれぞれ形成してあると共に、該内壁部17aの上下壁の前側中央には、インナハウジング12の箱部12aの上下面の中央の各係止爪15が係脱される矩形で長尺の係止孔23をそれぞれ形成してある。さらに、アウタハウジング17の内壁部17aの外面側の奥には、環状でゴム製の防水パッキン24を受けるV字状のパッキン受部25を一体突出形成してある。尚、アウタハウジング17の内壁部17aの内面側の前縁の各係止孔22,23に対向する位置にはテーパ面26をそれぞれ形成してある。また、アウタハウジング17の外壁部17bの上下壁の前側には、図示しない相手側コネクタの可撓性係止アームが係脱される係止孔27をそれぞれ形成してある。
【0006】
図6,図7に示すように、スペーサ28は、アウタハウジング17の内壁部17aの内面側に嵌合される略四角筒状の胴体部28aと、この胴体部28aの前端より後方に折れ曲がるように一体形成され、アウタハウジング17の内壁部17aの外面側に嵌合される略四角筒状の鍔部28bと、上記胴体部28aの底壁部28cとで正面側が開口した箱状になっている。
【0007】
そして、スペーサ28の胴体部28aの内部にインナハウジング12の箱部12aが嵌合されるようになっている。このスペーサ28の胴体部28aの上下壁の内面にはインナハウジング12の箱部12aの後端縁及び各端子収容室13に収容された雌端子14の箱部14aの後端縁をそれぞれ係止するリブ状で端子脱落防止用の突起29をそれぞれ一体突出形成してある。
【0008】
また、スペーサ28の胴体部28aと鍔部28bとの連結部の前側のインナハウジング12の各係止爪15とフランジ部16に対向する位置には、切欠部30,31をそれぞれ形成してある。この上下側の各切欠部30,30間のスペーサ28の胴体部28aの上下壁の外面側には、アウタハウジング17の各係止孔23に係脱される係止爪32を一体突出形成してある。さらに、スペーサ28の鍔部28bの先端部は、アウタハウジング17への嵌合完了時に該アウタハウジング17の内壁部17aのパッキン受部25に係止したパッキン24を保持するようになっている。
【0009】
また、スペーサ28の底壁部28cのアウタハウジング17の各電線挿通孔21に対向する位置には電線挿通孔33をそれぞれ形成してある。また、スペーサ28の底壁部28cは、アウタハウジング17への嵌合完了時に該アウタハウジング17の底壁部17cの各ゴム栓収容凹部19に挿入されたゴム栓18を保持するようになっている。そして、図6に示すように、アウタハウジング17の各電線挿通孔21と各ゴム栓18及びスペーサ28の各電線挿通孔33を貫通した各電線20は、インナハウジング12の各端子収容室13に収容された各雌端子14の一対の圧接刃14b,14b間に圧接接続され、各端子収容室13と各電線20とは各ゴム栓18及びパッキン24によりそれぞれシールされるようになっている。
【0010】
上記構成の防水コネクタ10を組み付ける場合には、図8(a)に示すように、まず、コネクタハウジング11の外側を成すアウタハウジング17の底壁部17cの内側の各ゴム栓収容凹部19にコネクタハウジング嵌合方向よりゴム栓18をそれぞれ挿入してセットすると共に、パッキン24をアウタハウジング17の内壁部17aのパッキン受部25に挿入してセットする。
【0011】
その後で、図8(b)に示すように、アウタハウジング17の内壁部17aにスペーサ28の胴体部28aを嵌め込み、アウタハウジング17の内壁部17aの各係止孔23にスペーサ28の胴体部28aの各係止爪32を係止させる。このアウタハウジング17の内壁部17aの各係止孔23とスペーサ28の胴体部28aの各係止爪32との係止により、アウタハウジング17の底壁部17cにより各ゴム栓18が抜け止めされると共に、スペーサ28の鍔部28bの斜めの先端によりパッキン24が抜け止めされ、コネクタハウジング全体の防水性をより一段と向上させることができる。
【0012】
次に、図8(c)に示すように、アウタハウジング17の底壁部17cの各電線挿通孔21より各ゴム栓18とスペーサ28の底壁部28cの各電線挿通孔33に電線20を外側からそれぞれ貫通させる。次に、図8(d)に示すように、各電線20をコネクタハウジング11の内側を成すインナハウジング12の各端子収容室13に収容した雌端子14の一対の圧接刃14b,14bに圧接接続させる。
【0013】
次に、図8(e)に示すように、スペーサ28の胴体部28a内にインナハウジング12を嵌め込み、アウタハウジング17の内壁部17aの各係止孔23にインナハウジング12の箱部12aの各係止爪15を係止させることにより、防水コネクタ10の組み付けが完了する。この際に、スペーサ28の胴体部28aの上下壁の内面に突出した各突起29によりインナハウジング12の箱部12aの後端縁及び各端子収容室13に収容された雌端子14の箱部14aの後端縁がそれぞれロックされ、かつ各突起29が外側に変形することがないので、各端子収容室13からの雌端子14の脱落が確実に防止される。しかも、スペーサ28により各雌端子14の保持と各ゴム栓18の保持が同時にできるため、ゴム栓抜け止め専用部品が必要なく、構成部品の部品点数の削減を図って低コスト化を図ることができる。さらに、スペーサ28が該スペーサ28自身の各係止爪32のアウタハウジング17の各係止孔23への係止とインナハウジング12の各係止爪15のアウタハウジング17の各係止孔23への係止とにより二重にロックされるため、各ゴム栓18及びパッキン24の脱落を確実に防止することができ、防水の信頼性をより一段と向上させることができる。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記先行技術の防水コネクタ10では、図8(e)に示すように、各ゴム栓18はアウタハウジング17の底壁部17cと各ゴム栓収容凹部19の周りの周壁部17dとで完全に包囲されるように覆われているため、防水コネクタ10の組付時にゴム栓18のゴム栓収容凹部19への装着の有無(欠品)をアウタハウジング17の外部から確認することが難しく、ゴム栓収容凹部19にゴム栓18を装着し忘れた場合には防水コネクタ10の防水性能及び防水信頼性が悪くなる可能性があった。
【0015】
また、図8(b)に示すように、アウタハウジング17のゴム栓収容凹部19にゴム栓18を収容する装着工程が必要不可欠なため、防水コネクタ10の組付作業性が煩雑になると共に組み付けに時間がかかった。
【0016】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、組付作業性と防水性能及び防水信頼性の向上を図ることができる多極の防水コネクタを提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、コネクタハウジングの上下方向及び左右方向に複数の端子収容室と該各端子収容室に連通するゴム栓収容室をそれぞれ形成し、この各ゴム栓収容室に電線挿通孔を形成したゴム栓を配置すると共に、前記各端子収容室に電線を接続した端子を収容自在にして前記各端子収容室と前記電線とを前記ゴム栓でシール自在にした防水コネクタにおいて、前記コネクタハウジングの前記各ゴム栓収容室を形成する周壁及び仕切壁の上下方向と左右方向のいずれか一方の方向の各ゴム栓収容室の列毎に、栓材注入口と栓材通路及びガス抜き口を連なるようにそれぞれ形成し、この各列毎の栓材注入口より該各列毎の各ゴム栓収容室内に栓材を注入して前記電線の外周に密着当接するシール部を複数有する電線挿通孔が形成されたゴム栓をそれぞれ一体に形成(一体成形)したことを特徴とする。
【0018】
この防水コネクタでは、コネクタハウジングの各列毎の栓材注入口より該各列毎の各ゴム栓収容室内に、栓材を注入して電線の外周に密着当接するシール部を複数有する電線挿通孔が形成されたゴム栓をそれぞれ一体成形したので、ゴム栓の装着忘れがなくなって、コネクタハウジングの各ゴム栓収容室とゴム栓との間及びゴム栓と電線との間のシールが容易かつ確実に行われて防水性能及び防水信頼性が向上する。これにより、防水コネクタの組付時にコネクタハウジングへのゴム栓の装着工程が不要となり、シール性に優れた多極の防水コネクタが簡単かつ短時間で組み付けられて全体の組付作業性がより一段と向上する。
【0019】
請求項2の発明は、請求項1記載の防水コネクタであって、前記各列毎の各ゴム栓収容室内にそれぞれ一体に形成されたゴム栓の電線挿通孔内の前記複数のシール部の各位置を、該各列毎の前記栓材注入口と栓材通路及びガス抜き口の各位置と同位置にならないように配置したことを特徴とする。
【0020】
この防水コネクタでは、各列毎の各ゴム栓収容室内にそれぞれ一体成形されたゴム栓の電線挿通孔内の複数のシール部の各位置を、該各列毎の栓材注入口等の位置と異ならせたので、ゴム栓の電線挿通孔内の複数のシール部に対する電線の防水性能の低下が防止され、防水コネクタの防水性能及び防水信頼性がより一段と向上する。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1(a)は本発明の一実施形態の防水コネクタの組み付け前の状態を示す断面図、図1(b)は同防水コネクタの組み付け完了状態を示す断面図、図2は同防水コネクタに用いられるアウタハウジングの断面図、図3は同アウタハウジングにゴム栓を一体成形した状態を示す断面図、図4は同ゴム栓を一体成形したアウタハウジングの背面図、図5(a)は同ゴム栓を一体成形したアウタハウジングの要部の部分断面図、図5(b)は同要部の比較例の部分断面図である。
【0023】
図1(a),(b)、図4に示すように、防水コネクタ1のコネクタハウジング2は、上下方向及び左右方向に複数(上下方向に2段でかつ左右方向に3段)の端子収容室4を一体形成した合成樹脂製のインナハウジング3と、このインナハウジング3を内部に嵌め込む合成樹脂製のアウタハウジング5とで構成されている。
【0024】
インナハウジング3は上,下面の後側が開口してアウタハウジング5の内壁部5aの内面側に嵌合される箱部3aとこの箱部3aの前端より後方に折れ曲がるように一体形成されて該アウタハウジング5の内壁部5aの外面側に嵌合される略四角筒状の鍔部3bを有していて、該箱部3aの中央の水平壁3cと仕切壁を兼ねた各垂直側壁3dとで形成される空間内に上記各端子収容室4を形成してある。そして、この各端子収容室4内に電線Wを接続する雌端子(端子)9が収容されるようになっている。
【0025】
インナハウジング3の箱部3aの両側面の中央にはアウタハウジング5の後述する各係止孔5fに係脱される係止爪(係止部)3eをそれぞれ一体突出形成してある。また、インナハウジング3の鍔部3bの先端部は、アウタハウジング5への嵌合完了時に該アウタハウジング5の内壁部5aの外面側に嵌め込まれたパッキンPを保持するようになっている。尚、箱部3aの前壁の各端子収容室4に対向する位置には図示しない相手側コネクタの雄端子が挿通する矩形の挿通孔3fを形成してある。さらに、雌端子9の箱部9aの後部の両側板部には電線Wが圧接接続される各一対の圧接刃9b,9bを折り曲げ形成してある。
【0026】
アウタハウジング5は、略四角筒状の内壁部5aと、この内壁部5aを内包する略四角筒状の外壁部5bと、これら内,外壁部5a,5bの後部を連結した底壁部(一壁部)5cとで正面側が開口した二重の箱状になっている。この底壁部5cの中央には内壁部5aに連なるように周壁5dを外側に一体突出形成してある。この周壁5dの前側の各端子収容室4に対向する位置には仕切壁5eを介して断面円形の端子収容室6Aをそれぞれ形成してあると共に、該周壁5dの後側には仕切壁5eを介して各端子収容室6Aと連通する断面円形のゴム栓収容室6Bをそれぞれ形成してある。
【0027】
図2〜図4に示すように、アウタハウジング5の各ゴム栓収容室6Bを形成する周壁5dと仕切壁5eの上下方向の各列(図4に示す左側と中央と右側の3つの上下方向の経路(ブロック)に分割された列)には、上から順に栓材注入口7Aと栓材通路7B及びガス抜き口7Cが連なるようにそれぞれ形成されている。そして、この各列毎の栓材注入口7Aより該各列毎の各ゴム栓収容室6B内には図示しない溶融ゴム材(栓材)を注入して電線Wの外周に密着当接するゴム栓8をそれぞれ一体成形してある。この各ゴム栓8の電線挿通孔8a内の前後には断面逆U字状に突出したシール部8bを環状に一体に形成してある。即ち、アウタハウジング5の各列毎の各ゴム栓収容室6B内にゴム栓8を一体成形する場合には、まず、アウタハウジング5を図2に示す形状にモールド成形した後、このアウタハウジング5の内壁部5aと外壁部5bと周壁5d及び仕切壁5eに図示しないゴム成形型を配置して、このゴム成形型のキャビティ内に各列の栓材注入口7Aより溶融ゴム材を流し込んでアウタハウジング5の各列毎の各ゴム栓収容室6B内にゴム栓8をそれぞれ一体成形する。
【0028】
図5(a)に示すように、アウタタハウジング5の各ゴム栓収容室6Bの内径をAとし、各ゴム栓8の電線挿通孔8a内の各シール部8bの内径をBとし、電線Wの外径をCとした場合に、A−B>Cの関係を満たすようにそれぞれ形成されている。さらに、各列毎の各ゴム栓収容室6B内にそれぞれ一体成形されたゴム栓8の電線挿通孔8a内の前後一対のシール部8b,8bの各位置は、該各列毎の栓材注入口7Aと栓材通路7B及びガス抜き口7Cの各位置と同位置にならないように配置してある。即ち、ゴム栓8の一対のシール部8b,8bは各列毎の栓材注入口7A等から略等距離隔てた位置に位置している。
【0029】
尚、アウタハウジング5の内壁部5aの前両側には、インナハウジング3の箱部3aの両側の各係止爪3eが係脱される矩形の係止孔(係止部)5fをそれぞれ形成してあると共に、アウタハウジング5の内壁部5aの外面側の奥には環状でゴム製の防水パッキンPが嵌め込まれるようになっている。
【0030】
以上実施形態の防水コネクタ1を組み付ける場合には、コネクタハウジング2の外側を成すアウタハウジング5の内壁部5aの外面側の奥にパッキンPを予め嵌め込んでセットしておく。次に、図1(a)に示すように、該アウタハウジング5の各ゴム栓収容室6B内に一体成形されたゴム栓8の電線挿通孔8aに外部(外側)より電線Wをそれぞれ貫通させる。次に、各電線Wをコネクタハウジング2の内側を成すインナハウジング3の複数の端子収容室4に収容した各雌端子9の一対の圧接刃9b,9bに圧接接続させる。
【0031】
次に、各電線Wをアウタハウジング5の外部の方向へ引いて該アウタハウジング5の各ゴム栓収容室6B内に一体成形されたゴム栓8の電線挿通孔8aに対して摺動させながら、図1(b)に示すように、インナハウジング3をアウタハウジング5の内壁部5a内に嵌合させる。この嵌合で、インナハウジング3の箱部3aの各係止爪3eとアウタハウジング5の内壁部5aの各係止孔5fとが係止されることにより、防水コネクタ1の組み付けが完了する。この組み付け完了時に、各雌端子9の圧接刃9b側はアウタハウジング5の各端子収容室6A内に収容される。
【0032】
このように、アウタタハウジング5の上下方向の各列毎の各栓材注入口7Aより該各列毎の各ゴム栓収容室6B内に、電線Wの外周に密着当接するゴム栓8をそれぞれ一体成形したので、ゴム材一体成形のサイクルを上げて成形時間を短縮させることができる。また、各ゴム栓収容室6Bと各ゴム栓8間はプライマーにて接着されるため、完全防水となり、さらに、アウタハウジング5の各ゴム栓収容室6Bに電線Wの外周に密着当接する一対のシール部8b,8bを有したゴム栓8が一体成形されるため、ゴム栓8の装着忘れがなくなって該ゴム栓8と電線Wとの間のシールを容易かつ確実に行うことができ、防水性能及び防水信頼性をより一段と向上させることができる。これらにより、防水コネクタ1の組付時にアウタハウジング5の各ゴム栓収容室6Bへのゴム栓8の装着工程が不要となって、シール性に優れた多極の防水コネクタ1を簡単かつ短時間で組み付けることができて全体の組付作業性をより一段と向上させることができる。
【0033】
また、図5(a)に示すように、アウタハウジング5の各列毎の各ゴム栓収容室6B内にそれぞれ一体成形されたゴム栓8の電線挿通孔8a内の一対のシール部8b,8bの位置を、該各列毎の栓材注入口7A等の位置と異ならせたので、各ゴム栓8の電線挿通孔8a内の一対のシール部8b,8bに対する電線Wの防水性能の低下を確実に防止することができる。即ち、図5(b)に示すように、各列毎の各ゴム栓収容室6B内にそれぞれ一体成形されたゴム栓8′の電線挿通孔8a内のシール部8bの位置を、各列毎の栓材注入口7A等の位置と一致させた場合には、ゴム栓8′の電線挿通孔8a内に電線Wを挿通する時に、シール部8bを介してゴム栓8′が栓材注入口7A等から図5(b)の矢印に示す方向に弾性変形してしまい、シール部8bの反発力が低下してシール性が低下するが、本実施形態ではこのようなことはなく、防水コネクタ1の防水性能及び防水信頼性をより一段と向上させることができる。
【0034】
尚、前記実施形態によれば、圧着端子に電線を圧着接続する場合について説明したが、端子は圧着端子に限らず、圧接端子に電線を圧接接続する場合にも前記実施形態を適用できることは勿論である。また、ゴム栓は純粋なゴム製に限られるものではなく、軟質の樹脂製等の弾性を有するものも含むものであることは勿論である。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、コネクタハウジングの各列毎の栓材注入口より該各列毎の各ゴム栓収容室内に、栓材を注入して電線の外周に密着当接するシール部を複数有する電線挿通孔が形成されたゴム栓をそれぞれ一体成形したので、ゴム栓の装着忘れがなくなって、コネクタハウジングの各ゴム栓収容室とゴム栓との間及びゴム栓と電線との間のシールを容易かつ確実に行うことができて防水性能及び防水信頼性を向上させることができる。これにより、防水コネクタの組付時にコネクタハウジングへのゴム栓の装着工程が不要となって、シール性に優れた多極の防水コネクタを簡単かつ短時間で組み付けることができて全体の組付作業性をより一段と向上させることができる。
【0036】
請求項2の発明によれば、各列毎の各ゴム栓収容室内にそれぞれ一体成形されたゴム栓の電線挿通孔内の複数のシール部の各位置を、該各列毎の栓材注入口等の位置と異ならせたので、ゴム栓の電線挿通孔内の複数のシール部に対する電線の防水性能の低下を確実に防止することができ、防水コネクタの防水性能及び防水信頼性をより一段と向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明の一実施形態の防水コネクタの組み付け前の状態を示す断面図、(b)は同防水コネクタの組み付け完了状態を示す断面図である。
【図2】上記防水コネクタに用いられるアウタハウジングの断面図である。
【図3】上記アウタハウジングにゴム栓を一体成形した状態を示す断面図である。
【図4】上記ゴム栓を一体成形したアウタハウジングの背面図である。
【図5】(a)は上記ゴム栓を一体成形したアウタハウジングの要部の部分断面図、(b)は同要部の比較例の部分断面図である。
【図6】先行技術の防水コネクタの組み付け前の状態を示す断面図である。
【図7】上記先行技術の防水コネクタの組み付け前の状態を一部断面で示す斜視図である。
【図8】(a)は上記先行技術の防水コネクタの組み付け前の状態を示す断面図、(b)は同防水コネクタのアウタハウジングにスペーサを嵌合した状態を示す断面図、(c)は同アウタハウジングとスペーサに電線を貫通させた状態を示す断面図、(d)は同電線をインナハウジングの端子収容室に収容された端子に接続した状態を示す断面図、(e)は同防水コネクタの組み付け完了状態を示す断面図である。
【符号の説明】
1 防水コネクタ
2 コネクタハウジング
4 端子収容室
5d 周壁
5e 仕切壁
6A 端子収容室
6B ゴム栓収容室
7A 栓材注入口
7B 栓材通路
7C ガス抜き口
8 ゴム栓
8a 電線挿通孔
8b シール部
9 雌端子(端子)
W 電線
Claims (2)
- コネクタハウジングの上下方向及び左右方向に複数の端子収容室と該各端子収容室に連通するゴム栓収容室をそれぞれ形成し、この各ゴム栓収容室に電線挿通孔を形成したゴム栓を配置すると共に、前記各端子収容室に電線を接続した端子を収容自在にして前記各端子収容室と前記電線とを前記ゴム栓でシール自在にした防水コネクタにおいて、
前記コネクタハウジングの前記各ゴム栓収容室を形成する周壁及び仕切壁の上下方向と左右方向のいずれか一方の方向の各ゴム栓収容室の列毎に、栓材注入口と栓材通路及びガス抜き口を連なるようにそれぞれ形成し、この各列毎の栓材注入口より該各列毎の各ゴム栓収容室内に栓材を注入して前記電線の外周に密着当接するシール部を複数有する電線挿通孔が形成されたゴム栓をそれぞれ一体に形成したことを特徴とする防水コネクタ。 - 請求項1記載の防水コネクタであって、
前記各列毎の各ゴム栓収容室内にそれぞれ一体に形成されたゴム栓の電線挿通孔内の前記複数のシール部の各位置を、該各列毎の前記栓材注入口と栓材通路及びガス抜き口の各位置と同位置にならないように配置したことを特徴とする防水コネクタ。
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