JP4035656B2 - 防水コネクタ用ゴム栓 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、防水コネクタに用いられるゴム栓に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、防水コネクタに用いられるゴム栓として以下の特許文献1に記載のものが知られている。このゴム栓1は、図6に示すように、被覆電線2を密着状態で挿通保持するとともに、コネクタハウジング3の後面に設けられたキャビティ4内に挿入可能とされており、その外周には、キャビティ4の内壁と密着可能な外周リップ5が複数条設けられている。そして、ゴム栓1の外周の前端側は、端子金具6のインシュレーションバレル7によってかしめ固定されている。
このような構成からなるゴム栓1は、コネクタハウジング3のキャビティ4内に挿入されると、端子金具6がキャビティ4内に設けられた撓み可能なランス8に抜け止め状態で係止されることにより、キャビティ4内に水密状に取り付けられることとなる。
【0003】
【特許文献1】
実開昭63−3074号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、ヒートサイクル環境下で被覆電線の被覆樹脂2が膨張、伸縮を繰り返すことにより、被覆電線2がキャビティ4内を後方へ向けて変位することがある。そうすると、この被覆電線2に密着されたゴム栓1も被覆電線2に追従してキャビティ4内を後方へ変位することがあり、外周リップ5の一部がキャビティ4から抜け出したりしてシール性が損なわれる懸念がある。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、ゴム栓のシール性を維持することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、電線挿通孔に被覆電線を挿通し、その被覆電線とともに端子金具の電線圧着部により圧着されるとともに、コネクタハウジングのキャビティ内に挿入され、このキャビティの内壁と前記被覆電線との間を水密状に密閉する防水コネクタ用ゴム栓において、前記キャビティの内壁との間に生じる摩擦抵抗を前記被覆電線との間に生じる摩擦抵抗よりも大としてあり、且つ、外周に前記キャビティの内壁と密着可能な複数条の外周リップが前後方向に間隔を空けて設けられる一方、前記電線挿通孔の内周に前記被覆電線と密着可能な複数条の内周リップが前後方向に間隔を空けて設けられており、前記外周リップと前記内周リップの各位相が揃うように設定され、自然状態における前記内周リップの内径を前記被覆電線の外径と略同一の寸法とすることで、前記キャビティ内に挿入されたとき、前記外周リップの潰れ量が前記内周リップの潰れ量よりも大となるように設定されており、前記被覆電線との間に生じる摩擦抵抗は、前記被覆電線の長さ方向への熱による膨張、収縮を生じたときに前記ゴム栓と前記被覆電線との間で相対移動が許容されるように設定されている構成としたところに特徴を有する。
【0007】
請求項の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記キャビティの内壁との接触面には、微細な凹凸模様が施されているところに特徴を有する。
【0008】
【発明の作用及び効果】
<請求項1の発明>
本発明のゴム栓は、自然状態における内周リップの内径が被覆電線の外径と略同一の寸法となるようにし、外周リップの潰れ量が内周リップの潰れ量よりも大きくなるように設定したから、外周リップとキャビティの内壁との間で大きな摩擦抵抗を得ることができる一方、内周リップと被覆電線との間に生じる摩擦抵抗を小さくすることができる
このため、被覆電線に長さ方向への熱による膨張、伸縮が生じた場合に、本発明のゴム栓は、被覆電線の相対移動を許容するものの、キャビティの内壁との間に生じる摩擦抵抗が被覆電線との間に生じる摩擦抵抗よりも大となっているため、被覆電線に連られてゴム栓がキャビティ内を移動するのが抑えられる。その結果、ゴム栓の抜脱が阻止されて良好なシール性が維持される。
【0009】
<請求項2の発明>
ゴム栓は、キャビティの内壁との接触面に微細な凹凸模様を施していることから、キャビティの内壁との間で大きな摩擦抵抗を得ることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態を図1ないし図3によって説明する。まず、本実施形態のゴム栓10の装着対象である防水コネクタ20について説明すると、この防水コネクタ20は、合成樹脂製のハウジング21(本発明のコネクタハウジング)を備え、このハウジング21内には、図2に示すように、樹脂ランス22を有するとともに、後端部(図2における右端部)の開口が端子挿入口23となっているキャビティ24が形成されている。キャビティ24内には、雌型の端子金具30が挿入されるようになっており、挿入された端子金具30は樹脂ランス33の係止によって抜け止めされる。なお、キャビティ24の内壁は、ゴム栓10のシール性を向上させる目的で鏡面仕上げされている。
【0011】
ここで、端子金具30は、端子挿入口23からキャビティ24内に挿入され、その前端部における箱形嵌合部31を樹脂ランス22に係止させることでキャビティ24内に抜け止め状態で保持されるようになっている。端子金具30が正規位置まで挿入された状態で図示しない相手側コネクタを嵌合させると、相手コネクタの雄タブが端子金具30の箱形嵌合部31内に差し込まれて導通接続される。端子金具30の後端部には、電線圧着部32が形成され、この電線圧着部32には、被覆電線40の前端部と、その被覆電線40の外周に対して水密状に外嵌されたゴム栓10の前端部とが、併せて圧着されている。この場合、ゴム栓10の保護のために、オーバーラップ圧着方式が採られている。
【0012】
さて、ゴム栓10は、シリコーン系の材質よりなり、その内側には、図1に示すように、電線挿通孔11が前後方向に貫通して設けられている。そして、ゴム栓10の外周面には、周方向に延びる複数条(本実施形態では3条)の外周リップ12が、夫々、前後方向に間隔を空けて形成されている一方、電線挿通孔11の内周面には、周方向に延びる複数条(同3条)の内周リップ13が、夫々、前後方向に間隔を空けて形成されている。本実施形態においては、外周リップ12と内周リップ13の各位相が揃っている。
【0013】
ここで、外周リップ12の外径は、対応するキャビティ24の内径よりも大きい寸法とされており、ゴム栓10がキャビティ24内に挿入されると、外周リップ12がキャビティ24の内壁に圧縮状態で密着するようになっている。これに対し、内周リップ13の内径は、被覆電線40の外径よりも僅かに小さい寸法に設定されているか、もしくは被覆電線40の外径と略同一の寸法に設定されている。これにより、ゴム栓10がキャビティ24内に挿入されたときに、外周リップ12の潰れ量は、内周リップ13の潰れ量よりも大きくなる。そして、内周リップ13と被覆電線40との間に生じる摩擦抵抗が低いことに起因して、被覆電線40は、熱による影響で長さ方向に膨張伸縮すると、ゴム栓10に対して相対移動するようになっている。
【0014】
次に、本実施形態の作用について説明する。
まず、ゴム栓10の電線挿通孔11に被覆電線40を挿通保持させ、その状態でゴム栓10を、端子金具30が先方となるようにしてキャビティ24内に嵌入させる。端子金具30が樹脂ランス22によって係止される正規の挿入位置までゴム栓10を挿入すれば、挿入作業は完了する。この状態では、図3に示すように、外周リップ12がキャビティ24の内壁に密着状態で圧縮されるとともに、内周リップ13が被覆電線40に密接することとなり、もって被覆電線40とゴム栓10との間およびゴム栓10とキャビティ24との間で良好なシール性が発揮されるようになる。
【0015】
ところで、従来の場合、外周リップ12の潰れ量と内周リップ13の潰れ量は略等しく設定されていたため、外周リップ12とキャビティ24との間の接触面積と、内周リップ13と被覆電線40との間の接触面積との面積差はさほどなかった。しかるに、本実施形態の場合には、外周リップ12の潰れ量を内周リップ13の潰れ量よりも大とすることで外周リップ12とキャビティ24との間の接触面積が、内周リップ13と被覆電線40との間の接触面積よりも圧倒的に大きくなっており、その結果、外周リップ12とキャビティ24との間の摩擦抵抗が内周リップ13と被覆電線40との間の摩擦抵抗よりも大となっている。なお、本発明において潰れ量とは、自然状態におけるリップの突出高さと、キャビティ24に挿入され圧縮されたときのリップの突出高さとの差を言うものとする。
【0016】
ここで、防水コネクタ20がヒートサイクル環境下に晒されると、被覆電線40の被覆部分を構成するポリエチレン系の樹脂が長さ方向に膨張、収縮するようになる。すると、内周リップ13の被覆電線40に対する摩擦抵抗が低いことから、被覆電線40は、ゴム栓10に対して相対移動するようになる。一方、外周リップ12のキャビティ24の内壁に対する摩擦抵抗が高いことから、被覆電線40が移動する間、外周リップ12は、キャビティ24の内壁に密着した状態を維持している。
【0017】
このように本実施形態によれば、被覆電線40が熱によって膨張、伸縮するような事態が生じても、内周リップ13が被覆電線40の相対移動を許容し、外周リップ12とキャビティ24の内壁との間に生じる摩擦抵抗を内周リップ13と被覆電線40との間に生じる摩擦抵抗よりも大としてあるため、ゴム栓10が被覆電線40に連られてキャビティ24内を移動するのが抑えられる。その結果、ゴム栓10のキャビティ24からの抜脱が阻止されて良好なシール性が確保される。
【0018】
<第2実施形態>
図4は、本発明の第2実施形態を示す。第1実施形態が、上述したようにゴム栓10の外径を大きくすることで摩擦抵抗の増大を図っているのに対し、第2実施形態では、ゴム栓10の外周に摩擦抵抗を増大させる処理が施されている。より具体的には、第2実施形態では、少なくとも外周リップ12のうちキャビティ24の内壁と接触する部分に、所謂シボ加工と呼ばれる表面処理法によって微細な凹凸模様Qを施してある。これにより、外周リップ12とキャビティ24の内壁との間の摩擦抵抗を増大させ、被覆電線40に追従するゴム栓10の移動を抑えるようにしている。なお、図示実施形態では、ゴム栓10の外周面全体に微細な凹凸模様を施してある。
【0019】
<第3実施形態>
図5は、本発明の第3実施形態を示す。第3実施形態では、外周リップ12におけるキャビティ24の内壁との接触部分を長さ方向に増長し、接触面積を増大させる一方、内周リップ12における被覆電線40との接触部分を長さ方向に短縮し、接触面積を減少させている。これにより、内周リップ13と被覆電線40との間の摩擦抵抗が減少する一方、外周リップ12とキャビティ24の内壁との間の摩擦抵抗が増大するようになる。
【0020】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0021】
(1)ゴム栓は、複数の被覆電線を一括して挿通可能なように、各被覆電線ごとに複数の電線挿通孔を有する一括ゴム栓であっても構わない。
(2)ゴム栓は、内外で異なる材料によって2色成形されるものであっても構わない。
(3)ゴム栓の装着対象は、雄型端子金具であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態のゴム栓の断面図
【図2】キャビティ内に挿入された状態を示す断面図
【図3】要部拡大した断面図
【図4】第2実施形態のゴム栓の側面図
【図5】第3実施形態のゴム栓の要部拡大断面図
【図6】従来のゴム栓の側面図
【符号の説明】
10…ゴム栓(防水コネクタ用ゴム栓)
11…電線挿通孔
12…外周リップ
13…内周リップ
20…防水コネクタ
21…コネクタハウジング
24…キャビティ
30…端子金具
40…被覆電線

Claims (2)

  1. 電線挿通孔に被覆電線を挿通し、その被覆電線とともに端子金具の電線圧着部により圧着されるとともに、コネクタハウジングのキャビティ内に挿入され、このキャビティの内壁と前記被覆電線との間を水密状に密閉する防水コネクタ用ゴム栓において、
    前記キャビティの内壁との間に生じる摩擦抵抗を前記被覆電線との間に生じる摩擦抵抗よりも大としてあり、且つ、
    外周に前記キャビティの内壁と密着可能な複数条の外周リップが前後方向に間隔を空けて設けられる一方、前記電線挿通孔の内周に前記被覆電線と密着可能な複数条の内周リップが前後方向に間隔を空けて設けられており、前記外周リップと前記内周リップの各位相が揃うように設定され、
    自然状態における前記内周リップの内径を前記被覆電線の外径と略同一の寸法とすることで、前記キャビティ内に挿入されたとき、前記外周リップの潰れ量が前記内周リップの潰れ量よりも大となるように設定されており、
    前記被覆電線との間に生じる摩擦抵抗は、前記被覆電線の長さ方向への熱による膨張、収縮を生じたときに前記ゴム栓と前記被覆電線との間で相対移動が許容されるように設定されていることを特徴とする防水コネクタ用ゴム栓。
  2. 前記キャビティの内壁との接触面には、微細な凹凸模様が施されていることを特徴とする請求項1に記載の防水コネクタ用ゴム栓。
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